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 John Cale-  『POPtical Illusion』 

 


 

Label: Domino Recordings

Release: 2024/06/15

 

 

Review  理想的なポップとはなにか?

 

驚くべきことに、ジョン・ケールは何歳であろうとも清新な感覚を持つミュージシャンでありつづけることが可能であると示している。

 

古賀春江のシュールレアリズムやアンディー・ウォーホールのポップアート、そしてカットアップ・コラージュを組み合わせたアートワークもおしゃれで惚れ惚れするものがあるが、実際の音楽も、それに劣らず魅力的である。アーティスティックな才覚が全篇にほとばしっている。

 

思えば、「Shark Shark」のミュージックビデオはケール自身が出演し、アグレッシヴなダンスを披露し、エキセントリックなイメージを表現していた。このアルバムからのメッセージは明確で、岡本太郎の言葉を借りると、生きることが芸術、アートでもある。色褪せない感覚、古びない感性、最前線の商業音楽。これらは、1960年代にアンディー・ウォーホールのファクトリーに出入りしていた年代から続くケール氏の生き方を反映している。アートをどのように見せるのか? そしてそれは商業的な価値を生み出せるのか? その挑戦の連続なのだ。

 

『Mercy』でケールはヒップホップやエレクトロニック等の影響を織り交ぜて、重厚感のある作風に焦点を絞っていた。ボーカルとしての印象も多少、重苦しくならざるを得なかったが、『POPtical Illusion』は、前作の系譜にある収録曲もありながら、全体的な印象は驚くほど軽やかで明るい。ソロアーティストとしてのクリエイティブな苦悩を超えた吹っ切れたような感覚に満ち溢れ、 アートワークに象徴付けられるように色彩的な旋律のイメージに縁取られている。


前作では、ピーター・ガブリエルやイーノの最新の作風に近いものがあったが、今回、ケールは、デヴィッド・ボウイの全盛期を彷彿とさせる''エポックメイキングなアーティスト''に生まれ変わった。旧来からプロデューサーとしても活躍するケールは、培われてきた録音の経験や音楽的な蓄積を活かし、現代的な質感を持つエクスペリメンタルポップ/ハイパーポップを制作している。


しかし、『POPtical Illusion』は、Domino Recordingsの他の録音と同様に、前衛性や斬新さだけが売りのアルバムではない。モダンとクラシックを13曲でひとっ飛びするようなエポックメイキングなポピュラーアルバム。デヴィッド・ボウイのベルリン三部作、それと並行して、80年代のAOR/ソフト・ロック、さらには2010年代以降のエレクトロ・ポップと、70年代からのポピュラー音楽の流れを捉えながら、それらを最終的にシンプルで親しみやすい形式に落とし込む。

 

「#1 God Made Me Do It(don't ask me again」は、シンセ、ギター、ドラムを組み合わせたモダンなポピュラー音楽として楽しめる。旧来になくケールのメロディアスな才覚がほとばしり、彼自身のコーラスワークを配置し、夢想的なテイストを散りばめる。エレクトロニックとポピュラーを組み合わせ、摩訶不思議な安らぎーーポプティカル・イリュージョンーーを生み出す。


続く「#2 Davies and Wales」は、70年代のニューウェイブや80年代のAORに依拠したポピュラーソングで、エレクトリックピアノが小気味よいビートを刻み、組み合わされるシンセベースがグルーブ感を生み出す。負けじと、ケールはハリのある歌声を披露する。彼のボーカルは軽やかで、高い精妙な感覚を維持している。そしてタイトルのフレーズの部分では、コーラスを織り交ぜながらアンセミックなフェーズを作り出す。ソングライターとしての蓄積が曲に色濃く反映され、どのようにしてサビを形成するポピュラリティを作り出すか、大まかなプロセスが示される。この曲にも、ケール氏のポピュラー音楽に対する考えがしっかりと反映されている。自分の好きなものを追求した上で、それらにどのようにして広告性と商業性を付与するのか。


続く「#3 Calling You Out」は、ジャンルというステレオタイプの言葉ではなかなか言い表しづらいものがある。男性シンガーとしての内省的センチメンタルな感覚をエレクトロニックで表現し、それをジャズのテイストで包み込む。


そしてそれらの現代性を与えるのが、モダンなエレクトロやヒップホップを通過したリズムトラックだ。しかし、前衛的な要素を織り交ぜながらも、曲自体は、ボウイやそれ以後の十年間にあるポピュラー性に重きが置かれている。いわば古典派としての音楽家の表情、現代派としての芸術家の表情、それらのアンビバレントな領域を絶えず揺れ動くかのようなナンバーである。


そしてケール氏は、古典的なものに敬意を示しながらも、現代性に対しても理解を示している。曲の終盤にかけて、コラボレーターのボーカルにオートチューンをかけていることも、彼が新しいウェイヴに期待を掛けている証なのである。


かつて、60年代後半に無名だったVUの音楽に理解を示してくれたファンがいたことと同様に、ジョン・ケール自身のこれらの新たな表現性に対する理解や肯定、あるいは次にやってくる潮流に対する期待感は、本作の中盤の流れを決定付ける「#4  Edge Of Reason」において、シカゴ・ドリル/ニューヨーク・ドリルの系譜にあるリズムトラックというカタチで明瞭に反映される。


2000年代のドイツ等で盛んだったグリッチを散りばめたトラックは、やがてエレクトロニックを反映させた2010年代以降のシカゴやニューヨークのドリルに受け継がれた。ケールはそれらの影響を踏まえ、ドレイクのような現代性を意識し、無理のない範囲で独自のポピュラリティに置き換えようとしている。これらは、キム・ゴードンの最新アルバムとも連動する性質でもある。かつてラップの中にポピュラー性を取り入れたように、現代的なポピュラー性の中にラップの要素を取り入れることが、今ではそれほど珍しくなくなっていることを暗示している。


「#5  I'm Angry」のイントロは、アンビエントがいまだアンダーグラウンドのチルウェイブの一貫として勃興した時代の作風を彷彿とさせる。オルガンの演奏に合わせてコール・アンド・レスポンスの形で歌い上げられるケールのボーカルはタイトルとは正反対である。フレーズを繰り返すうち生み出される怒りを冷静さや慈しみで包みこむ感じは、直情的な感覚とは対極に位置している。それに続く「#6 How We See The Light」は、連曲のようなニュアンスが含まれる。ダンサンブルなリズムとシンセ・ポップを組み合わせ、ボウイの系譜にあるナンバーを作り出す。


続く「#7  Company Commander」は、アルバムのアートワークに象徴づけられるコラージュのサウンド、ミュージック・コンクレートを導入している。2010年代のアイスランドのエレクトロニカ、ニュアンスとスポークンワードの中間にあるケイルのボーカルは、「Abstract Pop」という、ニューヨークの最前線のヒップホップシーンへのオマージュの考えも垣間見ることが出来る。

 

 

前半部では一貫してミュージシャンによる「理想的なポップとは何か?」という考えが多角的に示される。それは、多少、録音のイリュージョンというジョークのような意味も込められているのかもしれない。一方、後半部では、アーティストとしての瞑想的な感覚と感性が組み合わされ、アストラルとメンタルの間の領域にあるポピュラリティへと近づく場合がある。肉体の感覚と魂の感覚ーー一般的に、これらは、年を経るごとにバランスが変わると言われているが、人間が単に肉体の存在ではなくて、霊に本質があるというレフ・トルストイが『人生論』で書いていたこと、つまり、人々は、ある年代で生きることの本質に気づき始めるというのだ。


それは、録音作品を語る上で、商業音楽としての霊妙な感覚に近づく瞬間もある。つまり音楽というのが必ずしも、旋律やリズム、和音や対旋律、ないしは作曲技法の範疇にある旋法やメチエといった技法に縛られるものではないことを示唆している。これは意外と、10代や20代の始めの頃には、肌身でなんとなく知っていることなのに、以降の年代、肉体的な感覚が優勢になるにつれ、忘れさられていく。ケールは、長い音楽活動の経験を踏まえ、感覚的な音楽を制作し始めており、それは音楽の本質が表されていると言ってもさしつかえないかもしれない。

 

サウンドについて言えば、「#8 Setting Fires」はベテランアーティストによるチルウェイブへの親和性が込められている。これは、例えば、Toro y Moiのような安らぐ音楽は、何歳になっても気軽に楽しめることを示唆する。 また、「#9 Shark Shark」には、気鋭のロックアーティストとしての性質が立ち現れる瞬間が捉えられる。ここには、ダンスという人間的な表現下における生命力の発露が音楽として表れる。そして、霊妙な感覚、人間の本質を表す魂の在り処をポピュラリティとして刻印した「#10 Funkball the Brewster」は、この世の中のどの音楽にも似ていない。それも当然のことで、彼はすでに存在する鋳型に何かを注ぐのではなく、自らの内側にある魂の揺らめきを、音階や脈動が織りなす流れとして捉え、それらを音楽にしているだけなのだ。

 

ジョン・ケールは、『POPtical Illusion』において外側に表出せざるを得ないもの、表さずにはいられないものをスタジオ録音を通じて記録というシンプルな形で残している。これらのアーカイブが果たしてポピュラーやレコーディングの歴史における「記憶」となるかどうかは定かではない。


ただ、「All To The Good」、「Laughing In My Soup」とユニークな印象がある軽快なダンスポップが続いた後、シンセピアノを活かした美しいバラードがクライマックスを飾る。クローズ曲「#13 There Will Be No River」は、ビートルズのような古典的なテイストを放つ。シンセサイザーのストリングスを込めたミニマル音楽を基にしたバラードは、シンプルであるがゆえ心に残る。

 

 

 

86/100




「God Made Me Do It(don't ask me again)」

 



Mustafa(ムスタファ)はニューシングル「Gaza is Calling (ガザは呼ぶ)」をjagujaguwarから発表し、その収益をパレスチナ児童救済基金に充てると発表した。

 

この曲は 2020年に書かれ、ムスタファの幼少期の友人関係が、世界中の労働者階級のコミュニティに対する暴力や、パレスチナ人特有の苦境に影響を受けたというストーリー。自分の幸福を追求するのはもちろんであるが、他者の幸福についてもシンガーは念頭に置かざるを得ない。友人の苦難はムスタファにとっての苦難を意味している。


「『Gaza is Calling』は、私が初めて経験した友情における失恋について歌っています。11歳のとき、ガザから来た少年と出会いました。私たちは切っても切れない関係だった。彼はトロントの住宅街で私と一緒に育った。そして、この愛さえも、我々が直面した暴力には勝てなかった。新しい家での暴力、ガザから冷たい風のように彼を追いかけてきた暴力......」とムスタファ。


「結局、涙を流さずに会うことができなかったのは、我々の間に起こった流血沙汰のせいでした。ストリングスのサンプルは、私達が共有しているアラブの郷愁を、私が歌うオートチューニングのアラビア語は、小さなフードの中で文化帝国の少年である私たちが到達しようとしたバランスについて、そしてウードは私たちの祖国のスーダンとパレスチナの楽器を意味しています」


Gaza is Callingのビデオは、パレスチナ人モデルのベラ・ハディッドと10代のガザン・ラッパーのMCアブドゥルを起用し、2021年ムスタファとハディッドによって構想された。ビデオの大半は2023年4月に撮影されたが、ジェニンの現地で撮影された直近の映像も使用されているという。


ムスタファはビデオについて付け加えた。「私は、どんな土地に逃げようとも、出会うことを免れない悲しみの物語を書いています。ビデオでは、ガザのベラ・ハディッドとマク・アブドゥルが、各々の苦悩を乗り越えて旅をする姿を克明に追っている。イスラー・アフメッドと弟の物語も並行して描かれる。イスラーと弟は、パレスチナの難民キャンプで危険に身を投じ、更にベラとアブドゥルは、西側世界の記憶の数々と罪悪感に身を投じた。ヒアム・アッバス監督作品。イスラアと彼女の弟は現在もパレスチナのジェニンにあるこのキャンプにいる」

 


「Gaza is Calling」

 Clarissa Connelly 『World Of Work』

 

Label: Warp

Release: 2024/04/12




Review



クラリッサ・コネリーはスコットランド出身で、現在デンマーク/コペンハーゲンを拠点に活動するシンガーソングライター。近年、Aurora(オーロラ)を始め、北欧ポップスが脚光を浴びているが、コネリーもその一環にある北欧の涼やかなテイストを漂わせる注目のシンガーである。


それほど音楽そのものに真新しさがあるわけではないが、親しみやすい音楽性に加え、ABBAやエンヤのような北ヨーロッパのポピュラーの継承者でもある。おそらく、コネリーは、デンマークを中心とするポピュラーソングに日常的に触れているものと思われるが、シンガーが添えるのはスコットランドのフォーク・ミュージック、要するにケルト民謡のテイストなのである。

 

このリリースに関しては過度な期待をしていなかったが、素晴らしいアルバムなので、少し発売日から遅れたものの、レビューとしてご紹介したいと思います。Warpはこのリリースに際して特集を組み、クラリッサ・コネリーは、アメリカの音楽学者でアメリカン・パラミュージック学博物館の館長でもあるマット・マーブルさんとの対談を行い、以下のように述べています。

 

「私は新しいメロディーやコードを書きながら、こうした無意識の状態に陥るようにしている。長いメロディーを書き続けて、調性が変わるところに出てきて、また戻ってくることがよくある。そして、その輪が終わったとき、輪が短すぎたり、曲の中で新しいパートを導入したいと思ったりすると、夢うつつの状態に陥ることがよくある。そして、それが私に与えられる」


音楽学者のマット・マーブルはこの対談のなかで、コネリーの音楽について次のように話している。

 

ーークラリッサが初めて私に自分の「思考の下の聴取」について語ったとき、私はロシアの詩人、オシップ・マンデルスタムを思い出さずにはいられなかった。マンデルスタムは自分の実践を 『秘密の聴覚』と呼びならわし、それを彼は 『聞く行為と言葉を伝える行為の間にある中間的な活動』と表現したことがあるーー

 

ーー聴くことをある哲学的な雰囲気を通してフィルターにかける一般的なクレアウディエントの伝統と同様に、クラリッサは、『自分の作曲のプロセスを、特に願望的な静寂に導かれている』と述べた。これは、祈りと静寂に満ちた傾聴が効果的でインスピレーションを与えてくれることを証明し、セルフケアのための内なる必要性から発展したものである。いずれにせよ、クラリッサの音楽の多くは、この静謐な雰囲気の中で、まるで夢の中にいるかのように生まれるーー

 

この対談はさすがとも言え、音楽そのものが表面的に鳴り響くものにとどまらず、聞き手側の思考下になんらかの主張性をもたらし、そしてまた心の情感を始め、科学的には証明しがたい効果があることの証となる。つまり、ヒーリングミュージックに象徴されるように、人間の傷んだ魂を癒やすような力が音楽には存在することになる。もうひとつ気をつけたいのは、音楽はそれとは正反対に、把捉者の聴覚を通して、その魂を傷つける場合があるということである。これは、アンビエントが治癒の効果を持つように、クラリッサ・コネリーのデビュー・アルバムもまた、ポピュラー・ミュージックを介しての治癒の旅であることを示唆している。クラリッサ・コネリーのソングライティングは、ギター、ピアノを中心におこなわれるが、それに独特なテイストを添えているのが、北欧の言語にイントネーションを置いたシラブルである。

 

多分、英語で歌われるのにも関わらず、デンマーク語の独特なイントネーションを反映させた言葉は、アメリカン・パラミュージック博物館の館長のマット氏がロシアの詩人の警句を巧みに引用したように、『聞く行為と言葉を伝える行為の間にある中間的な活動』を意味している。ひとつ補足しておくと、それはもしかすると「伝達と受動を超越した別の表現形態」であるかもしれない。これはまた「伝達」と「受動」という2つの伝達行為の他にも別の手段があることを象徴づけている。例えば、米国のボーカル・アーティスト、メレディス・モンクは古くから、このことをパフォーミングアーツという形態で伝えようとしていた。また、オーストラリアの口笛奏者のモリー・ルイスは、「口笛がみずからにとって伝達の手段である」と語っていることを見ると更に分かりやすい。つまり人間は、近代から現代への機械文明に絡め取られたせいで、そういった高度な伝達手段を失ってきたとも言えるのだ。SNSやメディアの発展は人間の高い能力を退化させている。これは時代が進んでいくと、より退化は顕著になっていくことだろう。そしてクラリッサ・コネリーのボーカルは、単なる言葉の伝達手段なのではなくて、神秘的な意味を持つ「音や声のメッセンジャーである」ということが言えるかもしれない。

 

 

コネリーが説明しているように、デビューアルバムの冒頭の収録曲の音楽は、絶えず移調や転調を繰り返し、調性はあってないようなもので、ミュージック・セリエルの範疇にあるメチエが重視されている。しかし、完全な無調音楽とも言い難く、少なからず、その中にはドビュッシーやラヴェルのような転化による和声法が重視されている。色彩的なタペストリーのように織りなされる旋律の連続やアコースティックギターやピアノ、ストリング、ドラム、シンセサイザーのテクスチャーという複合的な要素は、最終的にデンマーク語のシラブルを踏まえたボーカルと掛け合わされ、美しいハーモニーを作り出す。クラリッサ・コネリーの作曲の手腕にかかると、床に散らばった破片が組み合わされていき、最終的に面白いようにピタリとはまっていく。

 

ここには、ビョークが最新アルバムで見落としたポピュラーの理想的なモダニズムが構築されている。アルバムの冒頭部「Into This, Called Lonelines」にはこのことが色濃く反映されている。音楽的には、北ヨーロッパのフォークミュージックを踏まえ、それらを柔らかい質感を持つポップスとして昇華させる。


いわば、アルバムのオープナーは、未知の扉を開くような雰囲気に縁取られている。アルバムの中には、サンプリングの導入によってストーリーが描かれるが、それらは多くの場合、他の曲と繋がることが非常に少なく、分離した状態のままにとどまってしまっている。しかし、このアルバムはその限りではなく、「The Bell Tower」は、木目を踏みしめる足音と教会の鐘の音のサンプリングを組み合わせ、次の曲の導入部の役割を担う。まるで、音楽の次のページをめくったり、次の物語の扉を開けるかのように、はっきりと次の音楽の雰囲気の予兆となっている。

 

また、良いことなのかはわからないにせよ、クラリッサ・コネリーのソングライティングは、時代性とは距離を置いていて、流行り物に飛びつくことはほとんどない。「An Emboridery」はタイトルの通りに、刺繍を組み合わせるようにギターの演奏がタペストリーのように縫い込まれ、長調と短調の間を絶えず行き来する。これらの感覚的なトラックに対し、コネリーのボーカルは、より情感的な効果を付け加える。たとえ現代的なノイズを交えたエクスペリメンタル・ポップの音響効果が組み込まれても、それらの感覚的な旋律や情感が失われることがない。そして、曲のアウトロでは、前の曲の鐘の音が予兆的なものであったことが明らかになる。

 

「Life of Forbidden」は、北欧ポップスの王道にあるナンバーで、この音楽の象徴的な特徴である清涼感を味える。構成にはコールアンドレスポンスの技法が取り入れられ、北欧の言語やフォーク・ミュージックにだけ見出される特性ーー喉を細かく震わせるようなファルセットとビブラートの中間にある特異な発声法ーーがわかりやすく披露されている。この曲は、単なるフォーク・ミュージックやポピュラー・ソングという意味で屹立するのではなく、上記の対談で語られた伝達や受動とは異なり、その中間域にある別の伝達手段としてボーカルが機能している。

 

これは例えば、メレディス・モンクが『ATLAS』で追い求めたボーカルアーツと同じような前衛的な形式が示されている。アートというと、ややこしくなるが、クラリッサ・コネリーの曲は、耳障りの良く、リーダビリティの高い音楽として表側に出てくる。山の高地の風を受けるかのような、軽やかで爽やかなフォーク・ミュージックとして楽しめる。それに続く「Wee Rosebud」も同様に、メレディス・モンクがコヨーテのような動物の声と人間のボーカルを同化させたように、声の表現として従来とは異なる表現形式を探求している。それはデビュー作であるがゆえ、完全なカタチになったとまでは言いがたいが、ボーカルだけで作り上げられるテクスチャーは、アコースティック・ギターの芳醇な響きと合わさり、特異な音響性を作り上げる。

 

アルバムの前半部では、北欧のポップスの醍醐味が堪能出来るが、それ以降、クラリッサ・コネリーの重要なルーツであるスコットランドのケルト民謡をもとにしたフォーク・ミュージックがうるわしく繰り広げられる。ソングライターは、ギターを何本も重ねて録音することで、アコースティックの重厚なテクスチャーを作り出して、曲の中に教会の鐘の音をパーカッシヴに取り入れながら、ケルト民謡の神秘的な音楽のルーツに迫ろうとする。この曲は、他の曲と同じように、聞き手にイメージを呼び覚ます力があり、想像力を働かせれば、奥深い森の風景やそれらの向こうの石造りの教会を思い浮かべることもそれほど難しくはないかもしれない。これはベス・ギボンズの最新作「Live Outgrown」と同じような面白い音響効果が含まれている。


優しげな響きを持つ「Turn To Stone」もソングライター/ボーカリストとしての力量が表れている。ピアノのシンプルな弾き語り、そしてやはり北欧の言語のイントネーションを活かした精妙なハーモニーをメインのボーカルと交互に出現させ、柔らかく開けたような感覚を体現させる。その後、「Tenderfoot」では、スティール弦の硬質なアコースティックギターのアルペジオを活かして、やはり緩やかで落ち着いたフォーク・ミュージックを堪能出来る。それほど難しい演奏ではないと思うが、ギターと対比的に歌われるコネリーのボーカルがエンヤのような癒やしを生み出す。この曲でも、ボーカルをテクスチャーのように解釈し、それらをカウンターポイント(対位法)のように組み合わせることで、制作者が上記のWarpの対談で述べたように、「願望的な静寂」に導かれる。これはまた深層の領域にある自己との出会いを意味し、聞き手にもそのような自らの原初的な自己を気づかせるようなきっかけをもたらすかもしれない。

 

制作者は複合的な音の層を作り上げることに秀でており、シンセの通奏低音や、ギターの断片的なサンプリング、 コラージュのような手法で音を色彩的に散りばめ、それらをフォークミュージックやポピュラーミュージックの形に落とし込んでいく。上記の過程において「Crucifer」が生み出されている。この曲は、アルバムでは珍しく、セッションのような意味合いが含まれていて、旋律の進行やどのようなプロセスを描くのかを楽しむという聞き方もあるかも知れない。


アルバムは意外にも大掛かりな脚色を避けて、シンプルな着地をしている。クローズ「S,O,S Song of The Sword」は、編集的なサウンドはイントロだけにとどめられていて、演出的なサウンドの向こうからシンプルな歌声が現れるのが素敵だと思う。これらの10曲は、表面的な華美なサウンドを避けていて、音楽の奥深くに踏み入れていくような楽しさに満ちあふれている。
 



82/100




 「Life of The Forbidden」


 

ビリー・アイリッシュが新しいビデオを公開した。これは『HIT ME HARD AND SOFT』からのカットである「CHIHIRO」の自主制作映像。このアルバムは、フィニアスと共作・プロデュースされ、先月、Darkroom/Interscope/Polydor Recordsから発売されたばかりである。

 

MVについては、プレスリリースを介して次のように説明されている。「ビデオは、ビリー・アイリッシュが監督している。長く暗い廊下と閉ざされたドアが心の様々なコーナーを象徴する、夢のような物語を思い描きました。共演のナット・ウルフとともに、彼女は逃れられないつながりの中に転がり込んでいく。恐怖、愛、欲望といった私たちの心の奥底にある感情が、どんなに逃げようとしても追いつかざるを得ないという、内面的な押し引きの外面的表現である」

 



©︎BLACKSOCKS


・アルフィー・テンプルマンのニューシングル「Just a Dance feat. Nile Rodgers」が本日リリース ナイル・ロジャースをフィーチャー


楽曲の総再生回数は3億回を超える、シンガーソングライター、マルチインストゥルメンタリストであり音楽の才人でもあるアルフィー・テンプルマンが、「Just a Dance feat. Nile Rodgers」をリリースしました。「Eyes Wide  Shut」、タイトル曲「Radiosoul」「Hello Lonely」に続くシングルです。

 

マドンナ、デヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロス、デュラン・デュラン、ミック・ジャガー等、数々の大物アーティストを手がけ、1980年代の音楽シーンを席巻する名プロデューサーと言われるレジェンドギタリスト、ナイル・ロジャースをフィーチャリングした注目曲です。


ダンサブルなビートにギターのカッティングが響き渡り、ポップなインタールードでサウンドのユニークさが際立つ今作は、レジェンド ナイル・ロジャースの参加により、今まで以上にエッジの効いたアルフィーの得意とするインディーポップの最高潮を極めた作品となりました。


Nile Rogers


アルフィー・テンプルマンのコメント。


「インディーポップのギタースタイルというひとつのジャンルを発明したと言っても過言ではない、ナイル・ロジャースと一緒に仕事ができて幸運でした!」

 


・新作アルバム『Radiosoul』が6月7日(金)に発売


全体のコンセプトやアートワークは最初から決めていたわけではなく、アルバムが出来上がる過程で徐々にまとまったという。引っ越しや成長、ティーンエイジャーから大人になる過程などをテーマに、”実験的なサウンドを試したい”という理由で、1st アルバム『Mellow Moon』のインディーポップから少し離れたグルーヴィーでダンサブルなアルバムになった。


サウンド面では、ビーチ・ボーイズからも深く影響を受けている」とアルフィーは述べています。音楽的には非常に幸せそうな音を持ちつつ、歌詞を聞くと誰かが苦悩したり、自分の感情を整理しようとしている様子が描かれているところが自分自身の心情に重なり、『Radiosoul』にも反映されているという。大きなポップシンフォニーのようなサウンドの反面、深い苦悩を描く「Hello Lonely」、不安な心境から自分を救い落ち着かせるためのガイドとして書かれたアルバム最後の曲「Switch」など、人々を楽しませつつ、深く考えさせる音楽の数々が詰まっている。


今作はまた、自分1人で部屋にこもって制作するスタイルだった前アルバムとは真逆のスタイルに挑戦している。自分の欠点を受け入れることや自分ひとりでは解決できないこともあると考え直し、音楽仲間や一緒に働きたいと思っていた人たちとコラボレーションすることを目指したという。自分ひとりで完結するのではなく誰かと共作することで、むしろ一歩引いて他の人とのコラボレーションを楽しむことができたと話す。


さらにアルバムタイトル『Radiosould』についてアルフィーは次のように話している。


「これは言葉の混ざり合いのようなものです。アルバム全体を通して、どの世代でも起こるジェネレーションギャップはあるけれど、今の世代と昔の世代とでは明らかに異なることなどを観察に基づいて書いています」


「祖父母がラジオをよく聞いていたのを見ていて、その当時はそれが普通だったんだけど、今では誰もそれを本当に大切にしていないし、みんな物事をなんでも当たり前のように思ってしまうことが多いです。そんなことを歌詞にしました」


「それに対して、ソーシャルメディアが非常に多くのパラソーシャルな関係や表面的な人々がインターネットに常に存在するという、混沌とした場所になっていることについても書きました。だから、もっと本来の人間になり、自分自身に忠実であることにトライする。そこから魂(soul)の部分が生まれました。そして、この二つの言葉が何故か一緒になり、響きも良かったので、このタイトルになりました」


弱冠21歳にして、ベック、ピーター・ガブリエル、プリンス、トーキング・ヘッズ、スティーブ・レイシー、テーム・インパラなどレジェンドから現行のオルタナアーティストまで、多様な音楽的影響を受け、あらゆるジャンルや音楽的要素を貪欲に融合させ、独自のユニークなスタイル「ビッグ・ウィアード・ポップ (巨大で摩訶不思議なポップ)」を生み出し、「音楽を作る上で、何でも試してみることが目標」としている若き天才音楽家アルフィー・テンプルマン。既に次のアルバムは「''もっと反対の方向”に向かうだろう」と話すアルフィーの音楽ジャーニーはまだまだ続く。



 ・Alfie Templeman-『Just a Dance feat. Nile Rodgers(ジャスト・ア・ダンス・フィーチャリング・ナイル・ロジャース)』 -  New Single



レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT

形態:ストリーミング&ダウンロード


Pre-save/Pre-add(配信リンク) :https://asteri.lnk.to/AT_JustaDance 



 Alfie Templeman-『Radiosoul』 -  New Album



レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT

形態:ストリーミング&ダウンロード


 Pre-save/Pre-add(配信リンク):https://asteri.lnk.to/AT_radiosoul_al 


*収録曲は現時点では未公開。

Katy Kirby

 

ニューヨークを拠点に活動するソングライター、Katy Kirby(ケイティ・カービー)が、セカンドアルバム『Blue Raspberry』の拡大版を発表した。デラックスエディションはANTIから7月12日にリリースされる。

 

セカンドアルバム『Blue Raspberry』の新拡張版には、「ヘッドライト」と「ネーパービル」を含む2曲の未発表曲が収録されている。ブルー・ラズベリー』は、2021年2月に発売されたカービーのデビュー・アルバム『クール・ドライ・プレイス』に続く作品である。

 

「実は、『Headlights』はアルバムの収録されたどの曲よりも開放的な曲ではない」とケイティ・カービーは説明する。

 

「この曲は、すべての人間の人生に付随する、蓄積された低レベルの苦しみへの賛歌と呼ぶこともできる。)あるいは疲れたことを歌った、少し生意気なバラードと言うこともできるかもしれない」

 

 

「Headlight」

 

 

 

 

 Katy Kirby 『Blue Raspberry』 - Deluxe Version

https://res.cloudinary.com/epitaph/image/upload/v1/anti/releases/KatyKirby_BlueRaspberry_2 

 

Label: ANTI-  

Release: 2024/ 07/12

 

Tracklist:

1.Redemption Arc

2.Fences 

3.Cubic Zirconia
 
4.Hand to Hand
   
5.Wait Listen
   
6.Drop Dead

7.Party of the Century
    
8.Alexandria
   
9.Salt Crystal  
    
10.Blue Raspberry   
    
11.Table
    
12.Headlights
    
13.Naperville  


 
ーーニューヨークを拠点に活動するソングライター、ケイティ・カービーは、セカンドアルバム『ブルー・ラズベリー』で、親密さの作為に真っ向から挑んだ。

 

『ブルー・ラズベリー』は、カービーが初めて経験したクィアな関係の釈義であり、新しい愛の絶頂と崩壊を、ロック・キャンディや割れたガラスの破片の輝きを味わいながら辿っていく。

 

『Blue Raspberry』は、カービーの高評価を得たデビューアルバム『Cool Dry Place』に続く作品で、同じくナッシュビルでレコーディングされ、2021年2月にリリースされた。

 

そのアルバムに収録された曲は、カービーが自分の声を見つける中で展開されたが、『ブルー・ラズベリー』は洗練された自信に満ちた2作目で、『クール・ドライ・プレイス』を通して湧き上がった、人と人とのつながりが陥没するあらゆる危険地帯があるにもかかわらず、人はいかにして互いに連絡を取り合うことができるのかという問いを深めている。

 

©︎Hannah Baker

SASAMIがニューシングル「Honeycrash」をリリースした。アンドリュー・トーマス・ファン監督によるミュージックビデオも公開された。以下で視聴できる。


「19世紀のクラシック・オペラのようなドラマを持ちながら、2024年にセラピーを受けている人のような忍耐と理解を持った曲を書きたかったのです」とササミ・アシュワースは声明で説明している。


「この曲は、19世紀のクラシック・オペラのようなドラマがありながら、2024年のセラピーのような忍耐強さと理解力のある曲を書きたかったのです」とササミ・アシュワースは声明を発表した。


「情熱と欲望の頂点のために戦いたいと思いながらも、他人の気持ちや居場所を変えたり急かしたりすることはできないとわかっている。しかし、ギターを剣とし、馬とする。アンドリューというコラボレーターを見つけることができて本当に幸運だった。「Honeycrash」のビデオは、私がステージで作り上げてきた新しい世界を覗き見ることができる。メロドラマ、ロマンス、そしてもちろんフックの時代に、このたくさんの新曲のうちの最初の曲を発表できることに本当にワクワクしている」



『Honeycrash』を初めて聴いた時、SASAMIの新しいサウンドの方向性が持つ轟くようなロマンティシズムと映画的な広がりに感動しました」とアンドリューは声明を通じて述べている。


「彼女の新しいアルバムのポップな焦点について長い間話し合った後、私は彼女のために、作品のハイライトとして彼女のパフォーマンスを紹介しながら、大きくて、広くて、セクシーな感じのビデオを作りたいと思った。暴走する逃亡者、悪党の姉妹愛、ディストレスド・デニム、荒々しい自然、原始的な怒り、テルマ&ルイーズ、津波、竜巻、燃えるような夕日、アメリカ西部のSF的黙示録的ビジョン、あなたのためなら死ねるレベルの情熱的なロマンスといったテーマやイメージを喚起させるビデオを作りたかった」


「予算内でこのビジョンを達成するのは野心的でしたが、ボリュームLEDステージで撮影し、ささみの新しい宇宙の背景を設定するために壮大なストック映像を使用することで可能になりました。この新しい旅で再びSASAMIとコラボレーションできることを光栄に思うとともに、彼女の新しいサウンドとビジョンが告げる世界に魅了されている」


「Honeycrash」は、SASAMIが2022年にセカンド・アルバム『Squeeze』をリリースして以来の新曲となる。


「Honeycrash」


ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズが新曲「Frogs」を公開した。彼らの輝かしいキャリアにおける18枚目のアルバムとなる「Wild God」が8月30日にリリースされる。ケイヴとウォーレン・エリスがプロデュース、デヴィッド・フリッドマンがミックスを担当した本作は、バンドを再び新鮮な方向へと導いている。


新曲「Frogs」は、陰鬱な感情の力強い作品。ニック・ケイヴの歌詞は、旧約聖書にインスピレーションを得ている。


光と闇の間を行き来するこの曲は、感情の激しさからソングライターの個人的なお気に入りとなっている。ニック・ケイヴのコメントはシンプルだ。「"Frogs "のような曲の高揚感は、僕の顔に大きな笑みを浮かべる」



「Frogs」

 

©Dusdin Condren

 

アメリカのシンガーソングライター、シャロン・ヴァン・エッテン(Sharon Van Etten)が4thアルバム『Are We There』の10周年を記念し、jagujaguwarからスペシャル・エディションを5月31日(金)にリリースする。

 

リリースには「Every Time the Sun Comes Up」の7インチが同梱され、この曲の別ヴァージョンとシドニー・オペラハウスでのライヴ音源が収録される。別バージョンの試聴は以下から。


この「Every Time the Sun Comes Up」のヴァージョンは、バンドと私が自分たちのサウンドに磨きをかけている時に生まれた」とヴァン・エッテンは声明の中で説明している。

 

「私たちはWe've Been Going About This All Wrongのツアーのリハーサルをしていて、自分たちが影響を受けたものを取り入れて、その時の私たちのクリエイティヴな状況により近づけるようにしました。ライブで披露したら、ジョイ・ディヴィジョンのような新しいアレンジに観客がすごく反応してくれた。Are We Thereの10周年を記念してこの曲をリリースし、新たな生命を吹き込むというアイデアが浮かんだんです」


「”Are We There”を作っている間、私はずっと市内のアパートからホーボーサウンドに通っていて、電車でバス・ターミナルまで行き、リンカーン・トンネルからニュージャージー州ウィーホーケンのスタジオまで徒歩で歩いてました」(ニューヨークからニュージャージーに続くトンネルのこと)

 

「このレコードを作ることで、バンド仲間(ダグ・キース、ヘザー・ウッズ・ブロデリック、ジーク・ハッチンス)はすぐに私のファミリーになり、私はスタジオにシェルターを求めていることに気づきました。スタジオは、私が育まれたと感じる場所だった。自分のホームのように感じていました。私は自分自身を見つけることができたし、このアルバムのコラボレーションを通して、その弱さと強さがとらえられた気がします。このアルバムの名前は、私にとって、旅立った場所でありながら、いまだ到着していないことを認めていることを表しています」

 

 

「Every Time the Sun Comes Up」

 

 

ジェイムス・ブレイクが自主レーベルからシングル「Thrown Around」を発表した。秀逸なナンバーで、強固なビートを反映したクラブミュージックとブレイク特有のポップネスが融合している。昨年までの気負いはほとんどなく、音楽そのものは楽しさと喜びに満ちあふれている。

 

「『Thrown Around』は、私がイギリスで聴いて育った音楽のいくつかにちなんだものだ。ドム・メイカーと一緒に作ったアンビエント作品から始まったんだ」とブレイクは声明で語った。

 

「この曲は反抗的な曲なんだ。それが私たちの人生に何をもたらすのか。この曲は、仕事に多くの時間を費やしすぎることの欠点を扱っている。私たちには共同体への原動力はない。私たちは皆、成功に向かって突き進んでいる。そして私たちは孤独を感じる。この曲は人々をひとつにする。それは反抗を通じたつながりでもあるんだ」

 

 

 

「Thrown Around」

 

 

 

James Blake:

 

ロンドン、エンフィールド出身のシンガーソングライター、プロデューサーとして活躍するアーティスト。フランク・オーシャンの『Blonde』、ケンドリック・ラマーの『DAMN』、JAY-Zの『4:44』、ビヨンセの『Lemonade』など数多くの作品にプロデューサーやゲストとして参加しており、影響力のあるアルバムの制作を支えるミステリアスな存在としても知られている。

 

トラビス・スコットの大作『ASTRROWORLD』でスティービー・ワンダーやキッド・キューディと共演した「Stop Trying to Be God」や、チャートを席巻した『ブラックパンサー』でジェイ・ロック、ケンドリック・ラマー、フィーチャーと共演した「King’s Dead」など、さまざまな作品にもクレジットされている。「King’s Dead」はトリプル・プラチナを獲得しただけでなく、第61回グラミー賞でジェイムス・ブレイクはベスト・ラップ・パフォーマンス部門で自身初のグラミー賞を受賞した。


ジェイムス・ブレイクはソロ作品でもポップ界で最も有名な異端児として認知されるようになった。2011年にリリースしたデビューアルバム『ジェイムス・ブレイク』では独特のサウンドが話題となり、ピッチフォークは、このアルバムに10点満点中9.0点という高評価を与え、「10年間で最も優れアルバム100枚(2010年-2014年)」の一つに挙げられた。

続く2ndアルバム『オーヴァーグロウン』(2013)で第56回グラミー賞の最優秀新人賞にノミネート、マーキュリー賞を受賞するなど、ジャンルを超越した深遠なるエレクトロ・サウンドで世界から高い評価を得る。

3rdアルバム『ザ・カラー・イン・エニシング』(2016)は批評家から絶賛の声が上がり、その後リリースした4thアルバム『アシューム・フォーム』(2019)では、ビルボードトップ200の21位にランクインし、これまでの最高順位を記録、リリースから1年以内に3億回の累積ストリーミングを記録した。

このアルバムは第62回グラミー賞の最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞にノミネートし、タイム誌やビルボードなど多くのメディアから「2019年のベストアルバム」のリストに選ばれるなど評価された。自身5作目となるアルバム『フレンズ・ザット・ブレイク・ユア・ハート』を10月にリリースし、ジェイムス・ブレイクのポピュラー音楽への影はますます拡大している。

 

©Michal Pudelka

イギリス/ブライトンは、美しい砂浜の景観を持ち、いつでも有望なミュージシャンを輩出する準備が整っている。同地のシンガーソングライター、バット・フォー・ラッシーズ(Bat For Lashes)は、今週末にニューアルバムの発売を控えている。


ナターシャ・カーンは基本的にボーカリストであるが、その他にもマルチ奏者の表情を持ち、ギター、シンセ等を変幻自在に操り、個性的なポピュラー・ワールドを構築する。先週末、シンガーソングライターは4枚目のシングル「At Your Feet」を発表した。この曲には、34分に及ぶビジュアル作品『The Dream Of Delphi - A New Transmission』から抜粋されたビデオが付属している。以下よりチェックしてみよう。


最終シングル「At Your Feet」は、ピアノやチェロの音源をベースに平穏な感覚が表現されたインストゥルメンタル曲。長いイントロの後、バット・フォー・ラッシーズのメディエーション風のボーカルが加わる。ナターシャ・カーンは、このシングルでポスト・クラシカルとポピュラーを融合させ、リスナーに心地よい時間を提供する。静けさが轟音を上回る例は少なくない。

 

この曲のサウンドの中には、眠りの前のまどろみのような心地よさがある。ミュージックビデオの長いイントロは、シュールな感覚を醸し出しており、インストを背後にナターシャ・カーンは控えめな振り付けを披露する。2分近い長いイントロの後、ナターシャは、ようやくレコーディングマイクに向かい、ボーカルを歌い始める。歌う瞬間を長らく待ち望んでいたかのように歌われるナターシャのボーカルは、ユニークな印象もあるが、着実に神妙な感覚に近づいていく。

 

「この曲は、ピアノとヴォコーダーのパートを全て、最初から最後まで即興で作りました」とナターシャ・カーンは声明を通じてこのように説明している。「この曲のリリックは、夜中に睡眠不足になり、母乳を与え、赤ん坊を揺すっている時の幻のような状態について歌っています」


世界の音楽のトレンドは刺激性や即効性から平和や癒しにシフトチェンジしつつあるのを感じる。新作アルバム『The Dream of Delphi-  デルフィの夢』はMercury KXより5月31日発売されます。


 

「At Your Feet」

Beth Gibbons - Lives Outgrown  

 

 

Label: Domino

Release: 2024/05/17

 

 

Review      ベス・ギボンズの音楽家としての多彩な表情

 

ケンドリック・ラマーの最新作『Mr. Morale & The Big Steppers』の「Mother I Sober」へのボーカル提供や、ヘンリク・グレツキの交響曲第3番等をライブで演奏し、最近では、ほとんどジャンルにとらわれることのないボーカルアートの領域へと挑戦を試みてきたベス・ギボンズの最新作『Live Outgrown』は、ストリングスやオーケストラヒットを頻繁に使用した多角的なポピュラー・ミュージックだ。これらの収録曲にPJ Harveyのような現代詩のような試みがあるのかは寡聞にして知らない。

 

少なくとも、冒頭の楽曲「Tell Me What Who You Are Today」ではヴェルヴェットアンダーグラウンドのようなオーケストラヒットとストリングスが重なり合い、やや重苦しい感じの音楽で始まる。それはバロックポップの現代版ともいえ、もちろん、それは90年代以降のトリップ・ホップの形とはまったく異なる。メインプロジェクトを離れたミュージシャンにとっては、定冠詞のようなグループ名は重荷になることがあるかもしれない。そういった意味では、このアルバムはソロアーティストとしての従来とは異なる音楽性を捉えることが出来る。しかし、以前からの音楽的な蓄積を投げ打ったと見ることも賢明ではないだろう。そこには、”ブリストルサウンド”ともいうべきアンニュイなボーカルのニュアンスを捉えることも出来、ある意味では、アルバムの最初のイメージは、やはり旧来のギボンズの音楽的な感性の上に構築されていると見るべきか。

 

アルバムの冒頭のオープナーは、鈍重とも、暗鬱とも、重厚感があるとも、複数の見方や解釈が用意されている。続く「Floating A Moment」では、オルタナティヴフォークともエクスペリメンタルフォークともつかないアブストラクトな作風へと舵を取る。そのギターサウンドに載せられるギボンズのボーカルも明るいとも暗いともつかない、微妙な感覚が背景となるギターの繊細なアルペジオに重なる。それは''瞬間性''という得難い概念の中にあり、熟練のボーカリストが自らの声の表現性を介して、その時々の感覚を形がないものとして表するかのようである。


いわば曲そのものを聴く時、多くのリスナーは、明るいとか、暗いとか、それとも扇動的であるとか、正反対に瞑想的であるとか、一つの局面を捉えることが多いように思われるが、ギボンズのボーカルはそういった一面性を遠ざけて、人間の感情の持つ複雑で多彩な側面を声という表現において訪ね求める。しずかな印象で始まった曲は、その後、オーケストラヒットやストリングスの音響的な効果を用い、ダイナミックなサウンドに近づくが、これらの曲の流れを重視した音楽性に関しては、今後開かれるロイヤル・アルバートホールでの公演を見据え、ライブでどのような効果が求められるのかを重視した作風である。音源での音楽性とライブでの音楽性は、再現性に価値があるわけではなく、それぞれ異なる音楽の異なる側面を示すことが要請されるが、その点において、ギボンズの曲は音源に最大の魅力が宿るというよりも、むしろ、ライブステージの演出の助力を得ることにより、真価が発揮されるといえるかもしれない。



アルバムのプレスリリースでは、アーティストによる絶望や諦観の思いが赤裸々に語られていた。「#2 Burden Of Life」はいわば、理想主義に生きるアーティストやミュージシャンがどこかの時代の節目において何らかの絶望性を捉えることを反映している。それはオーケストラヒットとストリングスを併用したオーケストラポップという形で昇華されている。ギボンズの楽曲性は、内面に溢れる軋轢を反映するかのように、不協和音を描き、それに対して、嘆きや祈りのような意味を持つ奥深いボーカルのニュアンスへと変化することもある。そして、それらは、背後のストリングスとパーカッションの効果を受け、リアリティに充ちた音楽性へと続いている。これらの現実的な感覚は、弦楽器のクレッシェンドや巧みなレガート、ボーカルを器楽的に見立てたギボンズの声によって、柔らかくも強固な印象を持つサウンドが形作られていく。


「#3  Lost Change」もオーケストラのパーカッションをアンビエンスとしてトラックの背景に配置し、それらの音響効果の中でマイナー調の憂いに充ちたバラードへと昇華させている。多少、ギボンズの歌声には重苦しさもあるが、ボーカルの中には、何かしら不思議な癒やしの感覚がにじみ出て来る場合もある。


映画「オペラ座の怪人」のテーマ曲を思わせるアコースティックギター、ダブの録音を意識した前衛的な音響効果の中で、ベテラン・ボーカリストはまるで道しるべのない世界を歩くような寂しさを表現している。哀感もあるが、同時に憐憫もある。どのような存在に向けられるのか分からないが、それらの感情は、90年代のアーティストの楽曲のようにどこに向かうとも知れず、一連の音楽世界の中に構築された奇妙な空間を揺らめきつづける。答えのない世界……、さながらその果てなき荒野の中をボーカリストとして何かに向かい訪ね歩くような不思議さ。


ギボンズが、たとえポピュラリティという側面にポイントを置いているとしても、アーティストの音楽性の中には、不思議とオルタナティヴな要素が含まれている。それは私見としては、ルー・リードやその系譜にあるようなメインから一歩距離を置いたような表現性である。そして、それは続く「Rewind」に捉えることが出来、エキゾチックな民族音楽、かつてルー・リードがオルタナティヴロックの原点を東欧のフォーク・ミュージックに求めたように、それらの異国性を探求し、最終的にはロックともフォークとも付かないアンビバレントな音楽性に落とし込んでいる。これらはややノイジーなギターと相まって、Velvet Undergroundの名曲「White Light」のような原始的なニューヨークのプロトパンクの源流に接近する。しかし、旧来のルー・リードが示したようなロックのアマチュアリズムにとどまらず、自らの音楽的な経験を活かしながら、プロフェッショナリティの中にあるアマチュアリズムをギボンズは探求しているのである。なおかつオーケストラポップとも称すべき形式は「Reaching Out」にも見いだせるが、本曲ではアクション映画のようなユニークさを押し出し、「007」のテーマ曲のような演出効果的なポピュラーミュージックが繰り広げられる。スリリングかどうかは聴いてのお楽しみ。

 

そして、意外にも従来のポーティスヘッドでの活動経験が活かされることもある。もちろん、ヒップホップやブレイクビーツではなくエクスペリメンタルポップという形で。「Oceans」はボーカルのダブーーダビングの要素を効果的に用いて、新たなポピュラー・ミュージックの領域に差し掛かる。しかし、以前のような新奇性のみを訪ねるような先鋭的な表現ではなくて、より古典を意識したマイルドで聞きやすさのある音楽性を重視しながら、ストリングのレガートを背後にシネマティックなポップソングを形作る。オーケストラ風のポップスという側面ではアメリカのソロシンガーが最近よくフィーチャーすることがあるが、ギボンズの場合は、それらをR&B/ソウルの観点から昇華させるべく試みる。ここにアルバムのアートワークに見て取れるようなギボンズの''複数の表情''を捉えられる。背後のトラックはモダンオーケストラで、演出は映画音楽のようで、さらにギボンズの声は、R&Bに近い感覚に満ちている。それはアーバンなソウルではなく、サザン・ソウルのような渋さに満ちている。これらのクロスオーバーの要素は、現代の2020年代のミュージック・シーンの流れを見据えての音楽と言えるかも知れない。

 

 

シネマティックな音楽性の要素は続く「For Sale」でも引き継がれている。具体的な映画名は、よく分からないが、シネマのあるワンシーンに登場するような印象的なサウンドスケープをシンプルなフォーク・ソングという形で昇華させている。そして曲の途中では、バグパイプのような音響効果を持つ管楽器を導入することで、セルティック・フォークに近い牧歌的な感覚を引き出す。個人的には、牧歌的な風景、霧がかった空、古典的なイギリスの家屋、玄関の前にプラカードでぶら下げられる「売出し中」というシーンが想起された。これはたぶん、BBCの『Downton Abbey- ダウントン・アビー』のような人気ドラマにも見出されるワンシーン。言うなれば、誰かの記憶のワンカットを、ギボンズは音楽による物語で描写すべく試みるのだ。この曲には、タイトルから引き出される複数のイメージがサウンドスケープに変わり、それらが一連のストーリーのように繰り広げられる。もちろん、そういったイメージを引き起こすのは聞き手側の体験による。そう、聞き手がいかなる情景を思い浮かべるかは、もちろん聞き手次第なのだ。同時に、想像性をもたらさない音楽は、それ以上の意味を持つことは稀有なのである。

 

本作の終盤では、アヴァンギャルド・ジャズとワールド・ミュージックへの傾倒が見いだせる。「Beyond The Sun」では、オーネット・コールマンが探し求めたニュージャズの対極にある原始的なアヴァンジャズの魅力をとどめたサクスフォーンやクラリネットの演奏を基底にして、ギボンズは唯一無二のボーカルアートを探求している。分けてもドラムのリズムに関しては、クラシックなジャズドラマーが演奏したような民族音楽とジャズの合間にある表現性を重視している。これらは、本作の気品に充ちた音楽性の中でスリリングな印象をもたらす。以上の9曲を聴いていると、意外性に満ち溢あふれ、最後にどんな曲が来るのか容易に想像出来ない。意外にも最後は、マイルドな感覚を持つポップソングで『Lives Outgrown』は締めくくられる。この最終曲は、言い知れない安心感と信頼感に満ちている。鳥の声の平らかなサンプリングが脳裏から遠ざかる時、アルバムの音楽から何を読み取るべきなのかがあらわとなる。この段階に来てようやく、ベス・ギボンズが何を表現しようとしていたのかが明らかになるのである。

 

 

 

88/100

 

 

 

「Wispering Love」

 

 

ポピュラーミュージック界の最高のスター、ビリー・アイリッシュが3枚目のスタジオ・アルバム『HIT ME HARD AND SOFT』をリリースした。来年度のグラミー賞ノミネートが有力視される作品である。また、このアルバムには「Chihiro」という謎めいたトラックが収録されている。アルバムの発売と同時に収録曲「Lunch」のミュージックビデオ(日本語字幕付き)が公開された。


2021年のアルバム『Happier Than Ever』でポピュラーシンガーとして世界的な成功を収めたアイリッシュ。また、このアルバムでシンガーソングライターはグラミー賞の記録をいくつも塗り替えてみせた。三作目となるフルアルバム『HIT ME HARD AND SOFT』は、Darkroom/Interscope/Polydor Recordsより今週末(5月17日)にリリースされた。2024年のポップスの最大の話題作で、アイリッシュが彼女の弟であるフィニアスと一緒に共作・プロデュースしている。


ビリーは、2024年初めにインスタグラムでこのニュースを発表し、プレビュー動画を公開し、先行シングルをリリースせず発売日を迎えることをソーシャルメディアで公表していた。先行シングルをリリースしない理由は、ファンにアルバムの衝撃を発売日に味わってもらいたかったからという理由。特に、ビリーは兄のフィニアスの貢献への謝意を示しており、なおかつ音楽的な貢献を称えていた。つまり、このアルバムは兄妹の強固なフレンドシップが表れている。

 

サードアルバムのプレスリリースと紹介文の内容は以下の通りです。「『HIT ME HARD AND SOFT』は、彼女のこれまでで最も大胆な作品であり、多様でありながらまとまりのある曲のコレクションである。このアルバムは、まさしくタイトルが示す通り、ジャンルを曲げ、流行を覆しながら、リリック的にもサウンド的にもハードに、そしてソフトにあなたを打ちのめす」

 

『HIT ME HARD AND SOFT』は、ポピュラー・ミュージックの可能性を示す作品である。古典的なポピュラー・ソングのスタイルもあるが、エクスペリメンタルポップの領域を新たに切り開いたトラックも収録されている。アイリッシュはこの三作目で広大で広がりのあるオーディオ・ランドスケープを旅しながら、リスナーをあらゆる感情に浸らせる。これは、グラミー賞やアカデミー賞をたびたび受賞しているビリー・アイリッシュが最も得意とすることであり、彼女が2020年代で最もエキサイティングなソングライターであることを証立てようとしている。

 


 

 

 「Lunch」

 

 



 

 


Omar Apollo(オマー・アポロ)が2ndアルバム『God Said No』の詳細とニューシングル「Dispose of Me」を発表しました。2022年の『Ivory』に続くアルバムは、ワーナーミュージックから6月28日にリリースされる。

 

リードシングル「Dispose of Me」のライブ・パフォーマンス・ビデオ、さらにはアルバムのジャケットとトラックリストは下記よりチェックしてみて下さい。


米国の人気シンガー、オマー・アポロはロンドンのアビーロード・スタジオで、プロデューサーのテオ・ハルム、カーター・ラング、ブレイク・スラットキンとともに新作の制作に取り組んだ。その後、2023年末にかけてロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミのスタジオで編された。

 

Omar Apollo(オマー・アポロ)は今年のフジロックフェスティバルに出演する。

 

 

「Dispose of Me」




Omar Apollo 『God Said No』

 

Label: Warner

Release: 2024/06/28


Tracklist:


1. Be Careful With Me

2. Spite

3. Less of You

4. Done With You

5. Plane Trees [feat. Mustafa]

6. Drifting

7. Empty

8. Life’s Unfair

9. Against Me

10. While U Can

11. Dispose of Me

12. How

13. Pedro

14. Glow

 

 

Omar Apollo Biography:

 

アメリカ出身のポップシンガー、オマー・アポロ。2018年にEP『Stereo』でデビューを果たしたアメリカ・インディアナ州出身のシンガーソングライター/プロデューサーのオマー・アポロ。
 

2019年にEP『Friends』をリリースし、ワーナー・レコーズと契約を果たした23歳のアポロは、今年の2月に初の単独来日公演も果たし、ネクスト・ポップ・スターとして注目を集めている。
 

の最新EP『Apolonio / アポロニオ』では、Kali UchisやRuelともコラボレーションしている。以前リリースされた「Kamikaze」や「Dos Uno Nueve」も収録されている。
ここ数年で最も話題になっている新人アーティストのひとりであるオマー・アポロに注目したい。

 



アイルランド・ダブリン出身の若きシンガーソングライター、Lucy Blue(ルーシー・ブルー)は昨年末デビューアルバム『Unsent Letters- (送られなかった手紙)』をリリースし、同地のミュージック・シーンにその名を知らしめることになった。ミュージシャンの音楽はその時々の感情をシンプルにポップスに込めるというもの。純粋な感覚であるため、琴線に触れるものがある。

 

今年始めに発表されたシングル「The End Of The World」に続く「Home」は3年以上前に書き下ろされた曲であるという。心のこもった優しい曲で、クリエイティブな結実を果たしている。ノスタルジックなインディーフォークトラックについて、ルーシー・ブルーはこう語っている。

 

「この曲を書いてから、幸運にも家についていろいろなバージョンがあることを見つけました。いつも住んでいた家ではなく、出会った人々だったこともあります。このところ、私は3年間家を離れて暮らしていたけれど、これほどまでに家とのつながりを感じたことはありませんでした。この家は私のことをよく分かってくれているし、この家を”私の家”と呼べることを幸運に思っています」

 

ルーシー・ブルーはニューシングル「Home」の発売を記念するリリースパーティーをロンドンの"Jazz After Dark"で5月21日に開催します。

 


「Home」



TikTokのカバー動画が瞬く間に話題となり、弱冠18歳にして今や世界中に100万人以上のフォロワーを誇る日系アメリカ人シンガーソングライター、Hana Effron(ハナ・エフロン)は”アデルの再来”とも称されている。本日、アーティストは先月公開された「Let's Talk」のオリジナルバージョンに続いて、日本語のテイクを配信した。正統派シンガーの伸びやかなビブラートは感動的で、言葉の節々には温かな感情と普遍的な愛情が示唆されている。先月のオリジナル・バージョンのレコーディング映像と合わせて、日本語バージョンのテースターもチェックしてみよう。


アメリカで育ち英語ネイティブな生活を送りつつも自宅では母と日本語で話したり、祖父母に会うために毎年日本を訪れるなど、日本は彼女にとって第二の母国。自身のアイデンティティや思いを込めて歌う日本語ver.は、芯があり力強くその中に豊かさを感じられるハナの歌声の魅力を存分に引き出している。ジャケットにはアーティスト名が日本語で記載されたスペシャル仕様となっている。


本作は「決して恋愛に限った話ではなくて、自分の人生の中に当たり前に存在していた人と疎遠になってしまうことへの寂しさだったり、親しかった頃を思い出してもう一度話したいと思うような、そんな言葉にならない感情を歌にした。」とハナが語るように、現代人がオンラインとオフラインの乖離から抱える寂しさとも重なり、多くのリスナーが共感できる内容を歌っている。


ルーツにある日本と、生まれ育った南カリフォルニアのカルチャーが融合され、唯一無二の感性を持ったシンガーソングライター ハナ・エフロン。日を追うごとに要注目人物として世界中から注目を集めるハナの飛躍する姿をお見逃しなく!

 

 

「Let's Talk」- Original Version

 

 

「Let's Talk」- Japanese Version (Best New Tracks)

 

 


Hana Effron(ハナ・エフロン)  -  「Let's Talk」  NEW SINGLE




レーベル(国内):ASTERI ENTERTAINMENT (アステリ・エンタテインメント) 

形態:ストリーミング&ダウンロード 

 

Pre-save/Pre-add(配信リンク):https://asteri.lnk.to/HE_letstalk_JP



Hana Effron Biography:


日本にもルーツを持ち、南カルフォルニアで生まれ育った弱冠18歳のシンガーソングライター、ハナ・エフロン。

5歳のころにピアノを習い始めステージで演奏するようになったことがきっかけで、音楽活動に興味を持つ。

最初は趣味で投稿していたTikTokのカバー動画だったが、2020年にアップした動画が瞬く間に注目を集め、現在では約100万人のフォロワーと2000万以上の “いいね” を獲得。

高校卒業後はアーティストとしての自身の音楽とアイデンティティを追求する道に進むことを決める。

自身が好きなアーティストとして名を挙げるアデルやビリー・ジョエルといったアーティストから音楽的なインスピレーションを得て、それに《耳から入る音を元に作曲する能力》を組み合わせることで、ハナは唯一無二のスタイルを確立した。

フルートやギター、ピアノなどを演奏するマルチ・インストゥルメンタリストとしての一面も。

現在、BTS, Jung Kook, Jonas Brothersらのプロデュースで知られる超一流プロデューサー、デヴィッド・スチュワートとデビュー・アルバムの制作に取り組んでいる。

Cassandra Jenkins

Dead Oceansとの契約を発表したばかりのCassandra Jenkins(カサンドラ・ジェンキンス)はこのレーベルの新たな看板アーティストに目され、エレクトロニックとポップスを融合させ、新しいフェーズへと進めるシンガーである。カサンドラ・ジェンキンスの楽曲は、エクスペリメンタルポップやアヴァン・ポップ、あるいはアートポップに該当すると思われるが、実際のトラックを聴くとわかるように、ジャンルという概念を超越した音楽的な表現性が含まれている。

 

カサンドラ・ジェンキンスの「Delphinium Blue」は、ダイナミックなスケールを持つアートポップソングである。シンセサイザーのシネマティックな背景を駆使し、ジェンキンスはそれを舞台の書き割りのように見立て、フローレンス・ウェルチのような壮大なスケールを持つポップネスを体現させる。その合間にスポークンワードも織り交ぜられている点を見るかぎり、ジェンキンスは現代のポップソングの最前線に歩み出ようとしている。シンガーは言語と花という二つの得難い概念を基に、最終的にそれを音楽というもう一つの語法として昇華させる。驚くべきことに、それは、フラワーショップの店員という個性的な仕事から得られた産物であった。


ソングライターが2021年に発表したブレイク・アルバム「An Overview On Phenomenal Nature」に続き、以後2年間にわたる大規模なツアーが開催された。スタジオに戻ったジェンキンスは、事実上、彼女を蝕んだアルバムの後を追う仕事を任された。この期間、ジェンキンスは精神的な疲弊を感じていた。しかし、傑出したアーティストにとって活力を取り戻す方法は、因果なことに、以前よりも良い曲を書き、みずからを納得させるということだった。


「デルフィニウム・ブルー」はカサンドラ・ジェンキンスを世界の構築者として包み込んでいる。この曲の制作についてのメモの中で、彼女はこう語っている。


「どこに向かえばいいのかわからなくなったとき、確実に美しいものを探すことがある。地元のフラワーショップの仕事に応募したとき、生存本能が働いたような気がした。その仕事は、私の人生で最も青かった時期を乗り切らせてくれた。花に囲まれていると、その重みに耐えるのが楽になるだけでなく、花と自分自身を十全に理解できた。花は私の潜在意識の言語となった。花々は、私が耳を傾けようと思えば鍵を握っているような、私の悲しみを運ぶポーターであり、気づきへの繊細なポータルであるような、すべてを知り尽くしているような質を帯びていた。

 

カサンドラ・ジェンキンスのアルバム「My Light, My Destroyer」は7月12日にリリースが予定されている。プロデューサー、エンジニア、ミキサーのアンドリュー・ラッピン(L'Rain, Slauson Malone 1)を含む、親密なコラボレーターと共に制作された。スラウソン・マローンはWarpに所属するエレクトロニック・プロデューサーで、最も先鋭的な作風で知られている。



「Delphinium Blue」

 


Jessica Pratt(ジェシカ・プラット)は今週金曜日、メキシカン・サマーからリリースされる『Here In The Pitch』のサード・シングルを公開しました。アルバムのエンディング・トラック。


ロサンゼルスを拠点とするミュージシャンは、ブルックリンのゲーリーズ・エレクトリック・スタジオでレコーディングを行った。


彼女は以前からのコラボレーターであるマルチ・インストゥルメンタリスト/エンジニアのアル・カールソンとキーボーディストのマット・マクダーモットと仕事をしました。ベーシストのスペンサー・ザーンとパーカッショニストのマウロ・レフォスコ(デヴィッド・バーン、アトムス・フォー・ピース)もセッションに参加。ライリー・ウォーカー、ピーター・マッジ(マック・ミラー、J.I.D.)、アレックス・ゴールドバーグもアルバムに貢献しています。


「このアルバムを制作している間に、カリフォルニアの夢のダークサイドを象徴する人物に夢中になった」と、プラットは以前のプレスリリースで『Here in the Pitch』について語っています。


プラットはこのアルバムを2020年から2023年までの3年間に渡ってレコーディングした。アルバムとアルバムの間の5年間の空白について、彼女は次のように語っています。「こんなに長くかかるとは思わなかった。私は本当に完璧主義者なの。私はただ正しい感覚を得ようとしていただけなのよ。


 

©Eloïse Labarbe-Lafon


フランスを代表するシンガー、クリスティン・アンド・ザ・クイーンズがニューシングル「rentrer chez moi」をリリースした。クリスが作詞、作曲、プロデュースしたこの曲は、プルミエ・クリがプロデュース、パリとハンシュで撮影されたサーシャ・モンガン監督のビデオと合わせて公開された。


クリスはこのシングルについて次のように語っている。


「この曲は真実だから泣けるんだ。私が君に対して抱いているたくさんの愛、いつも正直でいようとするこの深い決意、そしてダンスが共有される瞬間、喜びの祝典になるように。一瞬を共に。健全な降伏。このビデオのために踊る前に、私はバーバラを聴いた」

 

私は覚えている

リビングルームで踊っていた彼女の動きを

祝福、 

分かち合い 

詩のように、自分の内面を表現するダンス


「rentrer chez moi」は2023年のアルバム『PARANOÏA, ANGELS, TRUE LOVE』に続く作品。今年初め、クリスティン&ザ・クイーンズはMGMTとの史上初のデュエット曲「Dancing in Babylon」に参加した。

 


「rentrer chez moi」

 



St. Vincentがニューアルバム『All Born Screaming』の最終シングル「Big Time Nothing」を配信した。ムーグ・シンセを導入したダンサンブルなポップナンバーだ。

 

マイケル・ジャクスンの『Thriller』のサウンドに対するオマージュが示されている。勢いを失った商業音楽にもう一度、MTVの全盛期の繁栄を取り戻すべく、クラークは奔走する。一つの反復的なベースラインを元にして、渦巻くようなファンクソウルがエナジーを上昇させ、無から炎を作り出す。それはアーティスト自身の存在性を焦がすような強烈な熱量を包含しているのである。

 

セント・ヴィンセントはファーストシングル「Broken Man」、デイヴ・グロールをドラムに、ジャスティン・メルダル=ジョンセンをベースに迎えたセカンド・シングル「Flea」を公開した。


アニー・クラークはこのアルバムをセルフ・プロデュースし、ミックスはシアン・リオーダンが担当した。このアルバムには、ケイト・ル・ボン、レイチェル・エクロース、ジョシュ・フリース、マーク・ギリアナ、ステラ・モグザワ、デヴィッド・ラリッケも参加している。


クラークは以前のプレスリリースで、アルバムについてややミステリアスに語っている。「感情的には、自分の心が本当は何を言っているのかを知るために、一人で森の中を長く歩かなければ辿り着けない場所がある。このアルバムがリアルに聞こえるのは、それがリアルだからなの」

 

St.Vincentの新作アルバム『All Born Screaming』は今週末、4月26日にVirgin Musicからオンセール。


 

「Big Time Nothing」-Best New Tracks



St.Vincent    『All Born Screaming』


Label: Virgin Music

Release:  2024/04/26


Tracklist:

1. Hell is Near
2. Reckless
3. Broken Man
4. Flea
5. Big Time Nothing
6. Violent Times
7. The Power’s Out
8. Sweetest Fruit
9. So Many Planets
10. All Born Screaming [feat. Cate Le Bon]


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https://link.fans/st-vincent