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Yard Act

英国内だけではなく、アメリカツアーを始め、昨年から快進撃を続けているリーズ出身のポストパンクバンド、Yard Actが昨年2月に発売し、ソールドアルトとなったデビューEP「Dark Days」の装いを新たにリミテッド・シルバー・エディションとして再発を行うと発表しました。

 

このEPには、1stフルアルバム「The Overload」には収録されなかったタイトルトラック「Dark Days」を含め、全4曲が収録。新たな再発盤「Dark Days」EPは、カセットテープ/Vinyl形式で2022年7月3日に発売される予定です。ヤード・アクトファンはマストアイテム。


 

Yard Act 「Dark Days」EP 再発盤

 


 

Release : 2022年7月3日 


Tracklist

 

1.Dark Days

2.Peanuts

3.Fixer Upper

4. The Trapper's Pelts


 


Pianos Become the Teethがニュー・アルバム『Drift』を発表しました。ポストハードコアグループの2018年のアルバム『Wait For Love』に続くこの作品は、8月26日にEpitaphからドロップされる。新作の告知に併せてシングル「Geneviere」が公開、MVも同時に到着しています。


『Drift』は、バンドの最初の2つのプロジェクト、2009年の『Old Pride』と2011年の『The Lack Long After』を手掛けたプロデューサー、Kevin Bernstenと共にレコーディングされた。

 

バンドのフロントマンのKyle Durfey(カイル・ダーフィー)はプレスリリースを通じて「Kevinは僕らが昔どうだったかを知っているし、今の僕らを知っているから、彼はスタジオで実験的に何でも試して、それがどう機能するかを確認することにとても前向きだった」と述べている。

 

 

 

 

 

 

Pianos Become The Teeth 「Drift」

 

 


Label: Epitaph 


Release Date:  2022年8月26日

 

Tracklist

 

1.Out of Sight

2.Generieve

3.The Tricks

4.Easy

5.The Days

6.Mouth

7.Skiv

8.Hate Chase

9.Buckley

10.Pair


 

 

Rise Against  Photo:Nedda Afsari


アメリカ、シカゴで結成されたポストハードコア/エモーショナル・ハードコアバンド、Rise Against(ライズ・アゲインスト)は、昨年の9枚目のアルバム『Nowhere Generation』の続編となる五曲収録の新作EP『Nowhere Generation II』をデジタル配信を通じてサプライズリリースしました。引き続いて、Loma Vistaからフィジカル盤が6月15日にドロップされる予定です。

 

新作EP『Nowhere Generation II』は、2021年にリリースされたフルアルバム『Nowhere Generation』と並行して作曲と録音がなされており、Bill Stevenson(ビル・スティーヴンソン)がプロデュースしています。カバーアートとトラックリストにつきましては、下記をご参照下さい。


また、EPのデジタル配信に伴い、シングル「Last Man Standing」のRyan Valdez(ライアン・ヴァルデス)監督によるミュージックビデオも同時公開されています。ヴァルデス氏は、以下のようにこのミュージックビデオについて説明しています。

 

この曲は、"搾取、公共の疎外、人間の不平等に関して、我々の世界に対するフラストレーションを表現する方法だっ。

 

ビデオで見たように、私たちは生存競争の中で食べさせられている。私たちの成功や努力に関係なく、ただ倒されるだけなんだ。それは、まるでゲームが不正に操作され、私たちを失敗に陥れるように設計されているかのように・・・



Rise Againstは、現在、ヨーロッパでツアー中で、7月からは、The Used(ザ・ユースド)、Senses Fail(センスフォール)と共に夏の北米ツアーを行う予定。8月9日には、ピア17のザ・ルーフトップでのニューヨーク公演も予定されています。 

 




Rise Against 「Nowhere Genaerations Ⅱ」EP

 


Tracklist



1. The Answer
2. Last Man Standing
3. This Time It’s Personal
4. Pain Mgmt
5. Holding Patterns

 

 

Flogging Molly Photo: Katie Hovland


ケルティック・パンクの偉大なヒーロー、フロッギング・モリーがいよいよ再始動。彼らは5年ぶりのファン待望の楽曲「These Times Have Got Me Drinking / Tripping Up the Stairs」を先日リリースし、ニューアルバム「Anthem」を9月9日にRise Recordsからリリースすると発表しました。

 

通算7枚目となる本作は、2000年のデビュー作『Swagger』を手掛けたエンジニア、Steve Albini(スティーヴ・アルビニ)と再びタッグを組んだ作品です。フロントマンのデイヴ・キングは、「このアルバムでは、20年以上一緒に演奏していなかったら、できなかったと思うほど、基本に立ち返ったんだ」と語っている。

 

「シカゴに戻り、スティーブと一緒にこのレコードを作ることで、とても楽しい経験ができたと思うし、このレコードでそれを聴くことができると本当に信じている。


アルバムは「These Times Have Got Me Drinking」で始まり、ニューシングル「The Croppy Boy '98」も収録されている。

 

デイヴ・キングは「伝統的なアイルランド音楽への陽気な頌歌」と呼んでいるが、この曲は古いアイルランド民謡のようで、前シングルの盛り上がるパンクに比べ、マイナーキー/メランコリックに傾いた、バンドのトラッドサイドを確かに聞くことが出来るだろう。また、この曲にはライブ映像が収録されており、先日のセント・パトリックス・デイでのパフォーマンスや、ハリウッド・パラディアムでの恒例フェスティバルの模様が収められています。下記よりご覧ください。


また、フロッギング・モリーとのコラボレーションにより、300枚限定で "オリーブ・イン・クリア "のレコード盤が発売されます。

 

 

 

Flogging Molly 「Anthem」

 


Label: Rise Records

Release Date: 2022年9月9日

 

 

Tracklist


1. These Times Have Got Me Drinking / Tripping Up The Stairs
2. A Song Of Liberty
3. Life Begins And Ends (But Never Fails)
4. No Last Goodbyes
5. The Croppy Boy ’98
6. This Road Of Mine
7. (Try) Keep The Man Down
8. Now Is The Time
9. Lead The Way
10. These Are The Days
11. The Parting Wave




 

ビースティ・ボーイズが30周年記念アルバム『Check Your Head』を今年6月24日にUMeからリイシューする。

 

『Check Your Head』は、1992年リリースのビースティーのサードアルバム。前作『Paul’s Boutique』でのサンプリング中心のプロダクションから一転、本作では、前作でエンジニアを務めたマリオ・カルダート・ジュニアをプロデューサーに迎え、カバー写真からもうかがえるようにハードコアバンド出身のビースティ・ボーイズがふたたび楽器を手に取り、ヘヴィでファンキーなバンドアンサンブルとやんちゃなラップで押し切る仕上がりになった。さらに、その後長くビースティ・ボーイズ第4のメンバーとして名を馳せる鬼才キーボーディスト、マニー・マークも参加、唯一無二のラップロック/パンクラップアルバムとなった。音響的な仕掛けも随所に散りばめられている。音楽的振り幅の広さは、当時隆盛を極めるオルタナティブロックとは一線を画する。3人の揺るぎないフリーキーな魂をありありと浮かび上がらせたハードボイルドな一作だ。


1992年にリリースされたオリジナル盤の『Check Your Head』には、「Jimmy James」、「So What'cha Want」、「Professor Booty」といった人気楽曲が収録されている。新たに再編集される4xLP版には、以上のフルアルバムのオリジナル曲に加えて、リミックス、ライブテイク、B面のトラックも追加収録されている。


また、今回の豪華4枚組LPは、2021年に発売された再発EP『Aglio E Olio』のリイシューに続く作品となる。 

 

 

 

 

リイシューの6月24日のリリースに先立ち、Check Your Headの予約はこちらからどうぞ。ボックス・セットとトラックリストの詳細は以下で御確認下さい。




Beastie Boys 

Check Your Head in 30th anniversary edition




Tracklist:

Side A

1. Jimmy James
2. Funky Boss
3. Pass The Mic
4. Gratitude
5. Lighten Up

Side B

1. Finger Licking’ Good
2. So What’ Cha Want
3. The Biz Vs The Nuge (featuring Biz Markie)
4. Time For Livin’
5. Something’s Got to Give

Side C

1. The Blue Nun
2. Stand Together
3. Pow
4. The Maestro
5. Groove Holmes

Side D

1. Live at P.J.’s
2. Mark On The Bus
3. Professor Booty
4. In 3’s
5. Namaste

Side E

1. Dub The Mic (Instrumental)
2. Pass The Mic (PT. 2, Skills To Pay The Bills)
3. Drunken Praying Mantis Style
4. Netty’s Girl

Side F

1. The Skills To Pay The Bills (Original Version)
2. So What’ Chat Want (Soul Assassin Remix Version) – DJ Muggs
3. So What’ Cha Want (Butt Naked Version)
4. Groove Holmes (Live VS The Biz) Featuring Biz Markie

Side G

1. Stand Together (Live At French’s Tavern, Sydney Australia)
2. Finger Licking’ Good (Government Cheese Remix)
3. Gratitude (Live At Budokan)
4. Honky Rink

Side H

1. Jimmy James (Original Original Version)
2. Boomin’ Grammy
3. Drinkin’ Wine
4. So What’ Cha Want (All The Way Live Freestyle Version)


 

The Linda Lindas

LAのティーンネイジャーパンクロックバンド、サマーソニック2022で来日公演が決定しているThe Linda Lindasは、、Bikini KillのErica Dawn LyleとVice Coolerとコラボした曲「Lost In Thought」をリリース。このトラックは、6月3日発売の「Land Trust」のチャリティアルバムに収録されています。


 "Lost In Thought "は、Bikini Killのメンバーとして知られるKathi Wilcox(カティ・ウィルコックス)もギターで参加している。この新曲について、The Linda Lindasは以下のように語っています。


この素晴らしいプロジェクトに、たくさんの素晴らしい友人や未来の友人と一緒に参加できるなんて、本当に素晴らしい! エリックからトラックを受け取ったのも嬉しかった。Erica、Vice、Kathiからトラックを受け取って、Viceと一緒に歌詞を書いたり、ボーカルを録音したり、ビデオを作ったりするのはとても楽しい経験だった。


 

コンピレーションアルバム「Land Trust」には、Kim Gordon、Kathleen Hanna、The Raincoats、Kelley Deal、Alice Bag、Rachel Aggsも参加しています。アルバムの収益金は、NEFOC(Northeast Farmers Of Color Landtrust)のために寄付される予定です。


”NEFOC”は、先住民族とPOCが主導する草の根組織であり、POC(概念実証)を行う農家と土地を結びつけ、人々のコミュニティのために、健康食品と医薬品を育てることを目指す団体。土地を獲得して先住民族国家に返し、先住民族の主権を中心にして尊重しながら、ブラック、アジア、ラテン系などのPOC農家、土地管理者と、その土地を結びつけることを目的としている。

 


The Linda Lindasは、スペイン・バルセロナで開催中のライブフェスティヴァル”Primavera Sound”に出演したばかりで、近々、北米ツアーに参加する予定。2回目のニューヨークでのヘッドライナー公演を追加し、7月22日に、Music Hall of Williamsburgの公演を行う。(7月19日のBowery Ballroom公演はソールドアウト)さらに、The Linda Lindasは、今秋に、ニューヨークとロサンゼルスでYeah Yeah Yeahsのライブのオープニングアクトを務める予定です。

 

 

2018年に中心人物であるピート・シェリーが亡くなり、パンクファンは大いに悲しんだと思われますが、BUZZCOCKSが遂に復活します。彼らはニューアルバム「Sonics In The Soul」を9月23日にリリースすると発表しました。バンドは4月の「Senses Out Of Control」EPで新曲をプレビュー、その後、イギリス全国で公演を行った。スティーヴ・ディグルは、2014年の「The Way」以来のフル・アルバムのために、伝説的なグループをスタジオセッションに連れ戻しています。

 

2022年9月23日にリリースされる「Sonics In The Soul」は、シンガーのピート・シェリーを失ってから初のバズコックスのフルアルバムとなる。彼らはこの新しいLPで、シェリーの功績を称えることを目指しています。作品は、ロンドンのStudio 7でレコーディングが行われ、さらに、ローレンス・ラブレスと共にスティーヴ・ディグルが共同プロデュースを手掛けています。

 

 

Buzzcocks  「Sonics In The Soul」

 


 
 
Tracklisting:
 

1 Senses Out Of Control
2 Manchester Rain
3 You’ve Changed Everything Now
4 Bad Dreams
5 Nothingless World
6 Don’t Mess With My Brain
7 Just Got To Let It Go
8 Everything is Wrong
9 Experimental Farm
10 Can You Hear Tomorrow
11 Venus Eyesa

 

TurnStile ザ・トゥナイト・ショーでの劇的なパフォーマンスを披露

 

メリーランド州ボルチモアのニュースクール・ハードコアバンド、ターンスタイルは、5月23日に、ジミー・ファロン主演の「The Tonight Show」に出演し、最新アルバム「Glowon」に収録されている「Black Out」を取り上げ、ライブパフォーマンスを行っています。

 

ターンスタイルは、現在、昨年リリースした最新アルバムをサポートするため、北米ツアーに乗り出しています。

 

カナダ・バンクーバーでの滞在中、ボルチモアのハードコアバンド、Nardwuarとネプチューンレコードを訪れており、このインタビューの模様も以下で御覧になることが出来ます。また、ターンスタイルは、以前、「Glowon」のトラックをジミー・キメルの番組中で披露しています。

 

 

 

 


 

今年1月以来、エモシーンの黎明期を象徴するバンド、シアトルのサニー・デイ・リアル・エステイトの再結成の噂がまことしやかに囁かれていました。しかし、これについては、ウィキペディアに活動状態の追加情報が書き込まれたに過ぎず、信ぴょう性に乏しく、確定情報ではありませんでした。

 

しかし、サニー・デイ・リアル・エステイトは、イリノイ州シカゴのダグラスパークで9月16日から三日間開催される”Riot Fest”に出演が決定となり、2014年以来となる再結成を果たし、ライブパフォーマンスを行うことが明らかとなりました。現時点では、Riot Festに出演が決定したに留まり、他のライブ、新作情報については未定。フルラインナップを記したフライヤーは以下の通り。

 


 

サニー・デイ・リアル・エステイトは、シカゴで開催されるRiot Festの二日目の日程において、ライブパフォーマンスを行う予定です。他にも、二日目のタイムテーブルには、The Get Up Kids、Bauhaus、7 Seconds、Fearといった伝説的なパンク/ニューウェイヴバンドの出演が予定されています。


今年初めのSPINの報告によると、サニー・デイ・リアル・エステイトの再結成ライブには、ボーカリスト/ギタリストのジェレミー・エニグ、ギタリストのダン・ヘルナー、ドラマーのウィリアム・ゴールドスミスが出演する予定であり、フー・ファイターズに所属するベーシストのネイト・メンデルは不参加のようです。メンデルは、2009年から翌年にかけて行われた再結成ツアーには帯同しており、さらに、バンドの90年代後半から2000年代初頭にかけての活動にも参加していました。

 

先述しましたように、サニー・デイ・リアル・エステイトのRiot Fes以後の活動情報については明らかになっていないものの、いよいよ再活動の機運が高まったことをファンにお伝え致します。

 

 

 

英国・ブライトンのご機嫌な七人組ポストパンクバンド、ロック/パンクの要素にとどまらず、クラシック、ジャズにも深いルーツを持つKEGは、9月2日に新作EP「Girders」のリリースを発表しました。彼らは、ブライトンの海岸で結成され、ヨーロッパを旅する内にバンドメンバーを集いました。

 

この作品は、お馴染みの”アルコポップ!”からリリースされる予定で、昨年の劇的なデビューEP「Assembly」に続く二作目となります。

 

今回、KEGは、新たなEPの発売の知らせと共に、先行シングル「Kids」をリリース。バンドは以下のように述べています。

 

「例えば、あなたの子供があなたとは正反対の性質に成長したらどう思うでしょう? 彼らがマイケル・マッキンタイアが好きで、健康食品だけを好き好んでバカスカ食べるとしたら? そういった疑問がこのシングル"Kids"では呈されています・・・」

 

 

 

 

 

KEG 「Girders」 EP



 

Label Alcopop!

Release:September 2th,2022


Tracklist:

 

1.5/4

2.Girders

3.Sing Again

4.Elephant

5.Kids

6.NPC


 


KEGは、英、ブライトンを拠点に活動する要注目の7ピースのポスト・パンクバンド。アルコポップ!レコードと契約を結び、10月22日にデビューEP「Assembly」をVinyl盤としてリリースしました。

 

 

「Assembly EP」 Arcopop! Records 


 

 

TrackListing

1.Presidental Walk

2.Breaking Rocks

3.Heyshaw

4.Farmhands

5.Kilham

 

 

KEGは、ヨークシャーの海辺の街ブリドリントンで生まれ育った幼馴染を中心に、アルバート、ジョエル・ウィッチカー、ウイル・ウィッフェンを中心に結成された。学校を卒業したのちに地元を離れ、様々な都市を経巡り、現在のバンドメンバーを見出したのち、何と7人組のロックバンドを結成。


ディーヴォやトーキング・ヘッズの実在したポスト・パンクの未来を行く前衛的なアプローチを図っています。ギターのソリッドな音色、シンセサイザーの飛び型としての使用、トロンボーンがその疾走感のある躁的なサウンドの中に整合性をもたらす。


彼等のサウンドはどのような暗鬱な空気も躁状態により吹き飛ばしてみせる。底抜けに元気なドライブ感あふれるサウンドが魅力だ。なにより、男性のみで結成された暑苦しいほどの七人組のバンドとしての分厚いグルーブ感、その熱量もまた最大の魅力だ。

 

そして、KEGのサウンドは、いかにもイギリスのバンドらしく、イングリッシュジョークに彩られている。奇妙なほどのジョークに。ポスト・パンク、ニューウェイブの流れを汲み、アメリカのディーヴォのようなSFチックな音楽性をパンク的に処理し、独特なユニークさを付けくわえている。


KEGはこれまで二作のシングル作をリリースしている。2021年に「Heyshaw」でアルコ!ポップレコードからデビューを飾る。続いて「Presidential Walk」をリリースしている。

 

この男七人衆のサウンドは、ポストパンクの流れにありながら、全然懐古的ではない。ブラック・ミディ、ブラックカントリー、ニューロードのようにポスト・ロック的な雰囲気も存分に感じられるはず。それは、間違いなく、この七人衆の音楽の面白すぎるバックグラウンドからくるものだろう。


ギタリストのフランク・リンゼイは、ヒップホップに音楽的背景を持つミュージシャン、プリミティヴな質感を持つリフを弾き、KEGの音楽に癖になるグルーブ感を与える。

 

さらに、KEGのバンドサウンドの面白さは、トロンボーン奏者、チャリー・キーンがジャシーな雰囲気を卒なく添えていること。


チャリー・キーンのもたらすジャジーなサウンドは、クラシックを体系的に学んだからこそ、無尽蔵に創造的なエネルギーを押し広げていくこのパンクロックバンドのサウンドに説得力のある整合性をもたらしている。

 

また、ドラマーのジョニー・パイクも、リンゼイと同じように、クラシックの教育を受けたパーカション奏者、ジャズのバッククランドを持つミュージシャン。これらのそれぞれ異なる素地を持つミュージシャンが七人集ったがゆえのエネルギーのすさまじい爆発により、魅力的なポストパンクサウンドが生み出される。


また、このKEGのフロントマン、ボーカリストのアルバート・ハッデンハムは、このEP発売前にリリースされた「Heyshaw」について、DEVOからの影響を公言しており、レコーディングの最中にDEVOを聴いていたそう。


「このオハイオ州の先駆者に感謝している」と、アルバート・ハッデンハムはこの作品におけるアメリカという存在の大きさについて語る。


往年のポスト・パンク/ニューウェイヴ・サウンドを現代に引き継いだ英ブライトンの7人組、ポスト・パンク好きは要チェックのロックバンド。これは、まさに、七人の男達の暑苦しい青春とロマンが凝縮された2020年代最高峰のロックンロールである。

 


ロカビリーの後継者 サイコビリーの面妖な世界

 

サイコビリーは1980年代、ロカビリー音楽の後継者としてイギリスのシーンに誕生した。そのカルチャーとしての始まりは、イギリスのThe Meteorsというパンク・ロックバンドにある。また、このジャンルを一番最初の音楽として確立したのは、アメリカのNYを拠点に活動していたThe Crampsである。

 

The Cramps at Mabuhay Gardens in 1978


New Wave Punkの後に誕生したこのサイコビリーは、パンクロックのジャンルの系譜に属するものの、音楽性としては、ハンク・ウィリアムズやジョニー・キャッシュのロカビリーの延長線上にあたる大人向けの激渋サウンドにより彩られている。


実際の演奏にも特徴があり、メテオーズのベーシストは最初期にウッドベースを使用し、スラップ奏法(指で弦をびんと弾く)により軽快なビートを生み出す。


また、ギターの演奏としても面白い特徴があり、グレッチを始めとするネオアコを使用、ピックアップにはハウリングに強いEMGが使用され、リバーブを効かせたような独特な音色を特色とし、ロカビリー音楽の基本的な音楽の要素、ホットリックと呼ばれるギャロップ奏法を用いたりもする。


サイコビリーの音楽性のルーツは、「ロカビリー」、さらには、その祖先に当たる「ヒルビリー」という音楽にあるようだ。このヒルビリーというのは、アメリカの二十世紀の初頭、 アメリカのアパラチア、オザークという山間部で盛んだった音楽である。この周辺は、おそらく二十世紀初めに、アパラッチ、つまり、ネイティヴアメリカンが多く住んでいた地域であると思われる。


そして、この山間部で発生した音楽、これは、アパラチアン・ミュージック、マウンテン・ミュージックと呼ばれ、その後、アメリカのカントリー・ミュージックの一部として吸収されていく。それほど、学のない、山出しのワイルドな白人の男達の奏でるナチュラルで陽気な音楽が、アメリカのカントリー音楽の地盤を作り、その後、ハンク・ウイリアムズやジョニー・キャッシュといった、幾らか都会的に洗練された雰囲気を持つミュージシャンに引き継がれゆくようになる。その後、これらのカントリーやブラックミュージックの融合体として、ロックンロールというジャンルを、リトル・リチャーズやエルヴィス・プレスリーが完成させたのである。


その後、Rock 'n Rollというジャンルは複雑に分岐していき、その本来の「踊れる音楽」という要素は、その後、70年代、80年代になると、失われていき、ロールの要素は失われ、ロックのみとなり、ロックンルールのリズムとしての特徴が徐々に失われ、メロディーに重きを置く音楽性が主流となっていく。


そして、このサイコビリー/パンカビリーというジャンルに属するバンドは、アンダーグラウンドシーンにおいて、古い時代のカントリーやロカビリーに内在する踊れる要素を抽出し、そのマテリアルを追求し、さらにそれを1980年代のロンドンで復刻しようと試みた。そして、サイコビリーシーンの中心地は、ロンドンの”Klub Foot”というナイトクラブを中心に発展し、1980年初めから終わりにかけて、このシーンは盛り上がりを見せた。 


サイコビリーのファッション

 

サイコビリーのファッションについては、以前のロンドンのパンクロックと親和性が高い。それ以前のオールドスクールパンクに流行したスタイルを引き継ぎ、トップだけを残し、サイドを刈り上げたカラフルで過激なモヒカンヘアはサイコ刈りという名称で親しまれている。


また、鋲を打ったレザージャケットを身につけるという面では、DischargeやGBHあたりのイギリスのハードコア・パンクのファッション性を継承している。オーバーオールを着たりもするのは、カントリーの影響が垣間見える。


そして、もう一つ、このサイコビリーファッションには面白い特徴がある。ゴシックロックの風味が付け加えられ、けばけばしく、毒々しい印象のある雰囲気が見受けられる。これらはJoy Division、Bauhausのようなゴシック的な世界観、もしくは、スージー・アンド・ザ・バンシーズのような暗鬱なグラムロック的な世界観が絶妙に合わさって出来上がったように思われる。


それは、アメリカンコミック、SFの往年の同人ファンジンで描かれるようなコミカルなキャラクター、 もしくは、B級ホラー映画からそのまま飛び出してきたような色物的な雰囲気がある。このゴシック的な要素は、サイコビリーの後のジャンル、ゴスビリーというのに引き継がれていった。


このサイコビリーというジャンルには、ライブパフォーマンスにおける観客同士の音楽に合わせて殴りあいのような過激なスタイルがある。俗に”レッキング”と呼ばれ、笑顔で殴り合うという互いの親しみを込めた雰囲気と言える。このレッキングの生みの親The Meteorsのライブ会場における観客の激しい踊り、これが音楽フェスティヴァルで有名な”モッシュピット”の始まりであると言われている。


又、これらのバンドは、表面上では、コミカルでユニークなイメージを持ち合わせているが、その核心には強固な概念があり、レイシズムに対し反駁を唱える政治的主張を持ち合わせている。


音楽としては、エルヴィス・プレスリーやリトル・リチャーズ時代を彷彿とさせるコテコテの味の濃いお好み焼きのようなロックンロールだが、往年のコンフリクトやザ・クラスのように、それまでのタブーに対する挑戦、社会通念や固定観念の打破といった、いかにもパンクロック・バンドらしいスピリットを持ち合わせているのが特徴である。 

 


サイコビリーの名盤


1.The Meteors

 

後に、サイコビリーの代名詞のような存在となり、イギリスでのその地位を不動のものとするメテオーズである。活動期間は現在まで41年にも渡るわけで、このロックバンドの胆力には本当に頭が下がる。


メテオーズの最初期の出発は、The DamedやUK Subsのような荒削りなロンドンパンクフォロワーとしてであった。


つまり、1970年代終盤から隆盛をきわめた当世風のパンクバンドとして出発したメテオーズは、徐々にロカビリー色を打ち出し、他のバンドとの差別化を図っていく。一作目はどちらかというなら、Eddie&The Hot RodsやThe Skullsのような、激渋のパブロックサウンドに近い音の方向性ではあったが、二作目「Stampede!」から、ギターにリバーブを効かせた独特の唯一無二のサイコビリーサウンドを確立。


メテオーズのサウンドの醍醐味は、ウッドベースと、シンプルではあるが妙に癖になるギターのギャロップ奏法である。実際のライブはかなり過激な要素を呈し、血の気の多いパンクスが彼らの活動を支えている。 


 

「The Lost Album」

 

 


メテオーズの名盤はその活動期が長いがゆえに多い。おそらくサイコビリー愛好家ならすべてコレクトせずには済まされないだろうが、純粋に、ロカビリー、パンカビリー、サイコビリーのサウンドの雰囲気を掴みたいのなら2007年の「The Lost Album」をレコメンドしておきたい。

 

ここには、ウッドベースの軽快なスラップ、やボーカルのスタイル、ギターのジャンク感の中に全て50、60年代のロカビリーサウンドの旨みが凝縮されている。ギャロップのような飛び跳ねるようなリズムも痛快で、なんだか踊りだしたく鳴るような衝動に駆られるはずだ。


既に見向きもされなくなったエルビス・プレスリーの音楽性を蘇らせてみせた物好きな連中で、なんともカウボーイのようなダンディさ。いやはや、メテオーズの意気込みに敬服するよりほかなし!!


2.The Cramps 

 

B級ホラー映画からそのまんま飛び出してきたようなキャラクター性、世界のロックシーンを見渡しても一、二を争うくらいのアクの強さを誇るザ・クランプス。サイコビリーはこのバンドを聴かずしては何も始まらない。

 

このクランプスの強烈なバンドカラーを支えているのは、このバンドの発起人でもある世界でもっとも個性的といえるラックスインテリア(Vo)、そしてポイズン・アイビー(Gu)という謎めいたステージネームを掲げる仲良し夫婦の存在である。ゴシック的な趣味を打ち出し、息の長い活動を続け、世の中の悪趣味さを凝縮した世界観を追求しつづけてきたクランプス、それは夫婦の互いの悪趣味さを認め合っていからこそこういった素晴らしいサウンドが生み出し得た。残念ながら2009年に、ラックス・インテリアは62歳でなくなり、バンドは解散を余儀なくされた。


しかし、あらためて、このロカビリーとホラーをかけ合わせた独特なサウンドの魅力は再評価されるべきだろう。ロンドンパンク、New WaveあたりはThe Adictsや X Ray Specsなど独特なサイコビリーに近いバンドキャラクターを持つロックバンドがいたが、正直、このクランプスの個性を前にしては手も足もでない。50.60年のロカビリーサウンドをあろうことか80年代になって誰よりも深く追求した夫婦。上記のメテオーズと同じようにその時代を逆行する抜群のセンスには脱帽するよりほかない。 

 


「Phycedelic Jungle」

 

 

 

クランプスのアルバムの中で最も有名なのは、デビュー・アルバム「SongsThe Lord Tought Us」もしくは「A Date With Elvis」、「Stay Sick」を挙げておきたいところだが、サイコビリーとしての名盤としては1981年の「Phychedelic Jungle」をオススメしておきたい。アルバムの中の「Voodoo Idol」「Can't Find My Mind」の未だ色褪せない格好良さは何だろう。


これらの楽曲は、サイコビリーというジャンルが、音楽的にはサイケデリックとロカビリーの融合体として発生したものであると証明付けているかのよう。他にも、アルバムのラストに収録されている妙に落ち着いたロカビリー曲「Green Door」も独特な格好良さがある。言葉では表せない変態性を追求しつくしたからこそ生まれた隠れた名ロックバンドのひとつだ。この夫婦の持つ独特なクールさのあるホラーチックな森の中に迷い込んだら最後、二度と抜け出ることは出来ない!!

 


3.BatMobile

 

バットモービルもまたメテオーズと共にサイコビリー界で最も長い活躍をしているロックバンドである。


1983年Jeroen Haamers,Eric Haamers、Johnny Zudihofによって結成。オランダのアムステルダムで結成され、 イギリス、ロンドンの”Klub Foot”というサイコビリーシーンの最重要拠点で最初にライブを行ったロックバンドとしても知られている。


バットモービルは、チャック・ベリー、エルビス、ジェーン・ヴィンセントからそのまま影響を受けたド直球サウンドを特徴とする。最初期は、モーターヘッドのAce Of Spadesのカバーをリリースしていたりとガレージロックの荒削りさも持ち合わせている。そこに、ロンドンのニューウェイブシーンのロックバンドに代表されるひねくれたようなポップセンスが加わったという印象。 

 

「Bail Set At $6,000,000」

 

 

 

バットモービルのB級感のあるロカビリーサウンドを体感できる一枚として、「Bail Set Art $6,000,000」1988を挙げておきたい。


アルバムジャケットのアホらしい感じもまさにB級感満載。実際のサウンドもそれに違わず、愛すべきB級感が漂いまくっている。本作では、特にごきげんなチャック・ベリー直系のロカビリーサウンドが味わえる。Jeroren Hammersのギタープレイも意外に冴え渡っており、通好みにはたまらない。


ハマーズのボーカルというのもユニークさ、滑稽みがたっぷりで味がある。難しいことは考えずただ陽気に踊れ、そんな単純な音楽性が最大の魅力といいたい。また、最奥には、奇妙なパブロックのような激渋さも滲んでおり、何となく抜けさがなさが込められている秀逸なスタジオアルバムである。

 


4.Horrorpops   

 

ホラーポップスは、デンマークコペンハーゲンにて1996年に結成。エピタフレコードを中心に作品リリースを行っている。


これまで、サイコビリーの大御所、ネクロマンティックスやタイガーズアーミと共同作品をリリースしている。紅一点のベースボーカルのパトリカ・デイのキャラクター性はクランプスのイメージをそのまま継承したものであるが、ポイズン・アイビーとは異なるクールさを持ちあわせている。


ホラーポップスのバンドサウンドの特徴としては、疾走感のあるパンカビリーにライオット・ガール風のガレージロックの荒削りさが加味されたとような印象である。つまり、ロカビリーといよりは、エピタフ所属のバンドであることからも分かる通り、ストレートなパンクロック寄りのバンドといえるだろう。また、ロカビリー色だけではなく、シンガロング性の色濃い、ライブパフォーマンス向きの迫力もこのロックバンドの魅力である。キャッチーではあるものの、ウッドベースのブンブン唸るスラップベースがこのバンドのサウンドのクールな醍醐味のひとつ。

 


「Hell Yeah!」

 

 

 

ホラーポップスの作品の中で聴き逃がせないのが2004年の「Hell Yeah!」である。パワーコードを特徴としたドロップキック・マーフィーズのようなシンガロングの魅力もさることながら、パトリカ・デイのボーカルの妙感じが前面に出た良作である。


アルバム全編を通して体現されるのは痛快な疾走感のあるパンクサウンド。ここで体感できるライオット・ガール風のサウンドはパンカビリー、サイコビリーの先を行くネオ・サイコビリー/ロカビリーといえるはず。


また、「Girl in a Cage」ではスカ寄りのサウンドを追求。サイコビリーの雰囲気を持ってはいるが、一つのジャンルに固執せず、非常にバラエティに富んだどことなく清々しさのあるパンクロックバンドだ。 

 


5.The Hillbilly Moon Explosion 

 

他のサイコビリーバンドに比べると、かなり最近のアーティストと言っても良さそうなヒルビリー・ムーンエクス・プロージョン。このバンドは、スイスのチューリッヒで、1998年に結成された。


ロカビリーサウンドに奇妙な現代的な洗練性、オシャレさを付け加えたようなロックサウンドが特徴である。


まさに、ジョニー・キャッシュのようなロカビリーサウンドをそのまま現代に蘇らせてみせたような激渋な感じ。ただ、イタリア系スイス人のオリーバ・バローニの本格派のシンガーとしての特徴があるゆえか、あまりB級然とした雰囲気が漂ってこない。これまでヨーロッパツアーを敢行、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、フィンランド、クロアチア、ハンガリー、スロヴェニア、ポーランド、オーストリア、UKといった国々を回っている。

 

一応、サイコビリーに位置づけられるロックバンドではあるものの、音楽性のバックグランドは幅広く、ロカビリーのみならず、ブルース、カントリー、スイング・ジャズを下地とし、どことなく哀愁のや漂うロックサウンドが魅力だ。その中にも、ギターサウンドはサーフ・ロックのような雰囲気もあり、エレクトーンが曲中に取り入れられている。ボーカルは男女のツインボーカル形式を取り、そのあたりの一風異なる風味にもわずかに哀愁が込められている。こういったロックバンドが、スイスから出てくるのは興味深いように思える。 

 

「Buy,Beg or Steel」


 

 

The Hillbilly Moon Explosionの推薦盤としてはロックサウンドとしての真骨頂である2016年の「With Monsters And Gods」に収録されている「Desperation」というのが名曲で、まずこの楽曲を挙げておきたい。


しかし、サイコビリーとしてのオススメは、2011年の「Buy,Beg And Steel」が最適といえるはず。ここでの渋みのあるロカビリーサウンドは時を忘れされる力があ。アルバムの全体の印象としては、古い時代に立ち戻ったかのような懐古風サウンドで、そこにはサーフロックのようなトレモロを効かせたギターサウンドというのも魅力。特に、「My Love For Everyone」のカントリー、ロカビリーに傾倒した激渋なサウンドは聞き逃がせない。


また、このアルバム「Buy,Beg Or Steel」で、歌物としての魅力が感じられる楽曲がいくつかある。それが「Natascia」や「Imagine a World」である。


ここでは、独特なエスニック的な和音進行に彩られた音楽が味わえる。古い、スパニッシュ、フラメンコ、あるいは、ジプシーサウンド風の哀愁が滲んでいる。スイス人のアーティストであることを忘れさせ、無国籍のロカビリーアーティストのような雰囲気が漂う。トレンドに背を向け、独自色を突き出す格好良さというのは筆舌に尽くしがたい。サイコビリーのシーンにおいて再注目のアーティストとして是非オススメしておきたい。 



追記


今回、なぜ、サイコビリーの名盤を紹介しようと思ったかは謎めいてます。昔、中古レコード屋でパンクのいちジャンルわけに属していたこのジャンル。実は、ちょっと怖いイメージがあったので、ザ・クランプス以外は購入しませんでした。けれども、そういったコアで、アングラで、ミステリアスな感じが、このサイコビリーの最大な魅力。このあたりの音楽にピンと来た方は、是非、他にも、Peacocksや、Necromatrixといったサイコビリー関連の名パンク・ロックバンドも聴いてみて下さい。

ライオットガールの系譜

 

 

 

これまで、歴代の女性パンクロッカー達は、その大多数が男性の文化の中で、どことなくむさ苦しさすらあるパンクシーンにおいて、強い異彩を放ち、実際に多くのファンを魅了し続けてきた。 

 

 

こういった女性ロックミュージシャンは、常に強いメッセージを内側に抱え、シーンに対し勇猛果敢に女性という存在のありかを示し、そして、みずからの思想を音楽に込め、それを恐れることなく発信し続けて来たのだ。

 

 

音楽活動ーー、しかし、それはただ単なる憂さ晴らしか、音遊びのようなものであったのだろうか?

 

 

いや、決してそうではない。それは、非常に強固な概念に支えられた世間という目に見えない社会構造にたいする強烈なアンチテーゼを意味し、そして、その一表現形態としてパンクロックが存在していたのである。それは、まだ、人権意識という概念が希薄な時代において、女性という存在の権利を、我が手に取り戻すための女性人権運動と言っても良かった。現在は、実際の社会での発言力もまだまだといえるが、徐々に認められるようになってきたことはとても喜ばしいと思う。

 

しかし、およそ、数十年前、女性の社会での立ち位置というのはどうだったろう? 近代、女性が何らかの思想を発信することは、非常に困難をきわめた。例えば、NYのライブハウスで、パンク・ロッカーとして活躍することは、相当な勇気がいることだっただろうし、また、それなりに、決死の覚悟で挑まなければならなかったはずである。

 

このニューヨーク・パンクロックシーンの渦中には、パティ・スミスという現代詩人、そして、以後になると、ソニック・ユースのフロントマンであるキム・ゴードンという、強い個性を持つアーティストが活躍した。とくに、キム・ゴードンは、その後のアメリカでの人権運動にまで発展する”ライオット・ガール”という概念の先駆者ともいえる、重要なロックアーティストである。

 

もちろん、前者、パティ・スミスは、ボブ・ディランに引けを取らない実力派の女性詩人であり、後者、キム・ゴードンは、インディー・ロック界のカリスマとして、現在もミュージックシーンに、その名を轟かせている。しかし、この二人がいまだ多くの目利きのファンから熱狂的な支持を受けつづける理由は、彼女等の際立った個性にとどまらず、女性としての存在感を音楽という表現において、あるいは、ステージパフォーマンスでタフに示し続けてきた後に獲得した勝利であり、難しい社会構造内での権利を獲得しようという痛切な歴史があったからこそなのだ。

 

現在のように、Facebook、Twitterといったソーシャルメディアがまだ存在しない夜明け前の時代において、女性がなんらかの強いメッセージを発信するためには、文学、アート、あるいは、音楽という表現形態が必要だった。

 

とりわけ、時を遡ると、古典音楽でも女性の扱いは目も当てられないほどで、クララ・シューマンは、ロベルト・シューマンに比するピアノ曲の才能があったのにもかかわらず、生前、真っ当な評価を受けることはなかった。

 

この音楽というのは、女性の最後の精神的な抵抗の拠り所のようなものだったろうかと思う。音楽を介してなら、日頃伝えられないこともどのようなことも、ストレートに伝えられる。このパンク・ロックという感情表現は、、女性のアーティスティックな表現方法に明るい活路を与えたのである。 

 

そして、同時代には、ロンドンパンクの後に勃興したポスト・パンク/ニューウェイヴにもX-Ray Specs、そして、Slitsという女性中心の秀逸なバンドが徐々に台頭し、活躍するようになった。ようやく、オーバーグラウンドとは異なる形で、女性がパンク・ロックを通して市民権を獲得するに至ったのだ。

 

そして、こういった男性中心のメンバーで構成されるパンク・ロックバンドの女性ボーカリストは、”ライオット・ガール”と呼ばれる要因となった。これは、後のロックバンドのメンバーの構成、つまり、男性中に、キャラクターの強い女性メンバーが、フロントマンとして前面に立ち、他の男性たちをミューズのごとく先導する役を担うスタイルが浸透していく。

 

比較的新しい2000年代あたりの例を挙げると、ガレージ・ロック、そのリバイバルシーンのバンドには、この”ライオット・ガール”と呼ばれる象徴的なメンバーが在籍する事が多く、そのことは、White Stripes、Yeah Yeah Yeahs、Blonde Redhead等をあげればより分かりやすいかと思う。 

 

 


ガールズバンドの原点

 

 

 

また、現在の意味でいう、ガールズ・バンド、つまり、「女性のみで構成された可愛らしいイメージのあるロックバンド」という括りで語るなら、多分、その原点は、アメリカの”The Ronettes”という三人組のオールディーズというジャンルを代表するポップシンガーグループに求められる。

 

このザ・ロネッツというバンドは、六十年代の米国のニューヨークを拠点として活躍したザ・ビートルズの女性版三人組といえる良質なポップ/ロックバンドである。

 

ザ・ロネッツは、「Be My Baby」「Baby I Love You」「Sleigh Ride」をはじめとする、オールディーズの伝説的な名曲をリリースしている。R&Bなどのブラックミュージックの雰囲気を持ち、ビートルズ、ビーチボーイズに引けをとらないポップセンスが魅力のガールズバンドの先駆者的存在である。NYのブロードウェイ文化を象徴する華やかなロックバンドとして挙げておきたい。

 

 

六十年代から、後の七十年代に入ると、近代からアメリカ車の主要な生産地として大きな経済発展を遂げたミシガン州デトロイトの”Nikki And The Corvettes”というバンドが音楽シーンに台頭した。

 

 

この”コルベッツ”というロックバンドは、実に可愛らしく、若々しいキャラクターを持ったバンドであり、ニューヨーク・シーンの伝説、Ramonesのように、つかみやすくて、万人受けする音楽性を擁していた。

 

ザ・コルベッツは、上記のパティ・スミスのような強い際立った思想性というのはないものの、誰にでも理解できるようなポップ性を持ちわせた稀有なロックバンドだった。そして、このバンドの持つ。

 

この時代から、なんとなく、”Cute”というイメージが、ガールズ・バンドの主要な印象として定着していったように思える。もちろん、日本にも、後年、”少年ナイフ”というニルヴァーナのカート・コバーンに重要な影響を与えた名ガールズ・ロックバンドが活躍するようになった。

 

 

1970~80年代以降のガールズ・バンドという形態には、この”キュートさ”というイメージが一般的に浸透するようになっていったのは、自然の道理だといえる。ひとつだけ、惜しむらくは、Nikki And The Covettesは、一部カルト的人気を獲得しただけで、アルバム・リリースも一作で解散してしまった幻のロックバンドとなった。

 

しかし、このバンドの「Nikki And The Covettes」1980という作品は、RAMONESの1st「Ramones」に比するポップチューンの連続であり、パワーポップの隠れた名盤でもある。気になる方は、是非一度チェックして貰いたい。 

 

 

 

 

 The Linda Lindas

 

 

そして、今回、御紹介するThe Linda Lindasというロサンゼルスを拠点として活動する四人組ガールズ・バンドは、往年のNikki And The Covettesが、現代にあざやかな復活を果たしたような痛烈なロックバンドだ。そして、また、そのボーカルスタイルというのも、強くシャウトするニュアンスがあり、これまでのライオット・ガールという概念の延長線上にあるように思える。

 


 

 

このThe Linda Lindasというバンド名は、日本のパンク・ロックバンドのThe Blue Heartsでなくて、日本の映画、山下敦弘監督の2005年の作品「リンダ リンダ リンダ」に由来するという。

 

同作品の音楽を担当しているのは、オルタナティヴ・ロック界の伝説バンド、The Smashing Pampkinsの日系アメリカ人ギタリスト、James Iha ”ジェームズ・イハ”である。(因みに、同監督の作品「天然コケッコー」では、くるり、レイ・ハラカミが音楽を担当している。山下監督は、青春色の色濃い、ティーンネイジャーの淡い情感を描くことに長じた素晴らしい日本人映画監督である。サウンド・トラックもインストゥルメンタル曲ばかりではあるものの、センチメンタルな名曲が多い。ここでは、レイ・ハラカミの劇伴作曲家としての才覚を十分堪能できる)

 

 

リンダ・リンダズは、Bela Salazar,Eloise Wong,Lucia de la Garza,Mila de la Garzaの四人によって2018年にLAで結成された。 

 

 

ティーンネイジャーの姉妹と従兄弟、そして、その友人により構成されている。今、流行りの"ファミリーツリー"を描くかのような、新鮮さのあるロックバンドである。日系アメリカ人、ジェームズ・イハがサントラを担当する映画「リンダ リンダ リンダ」にバンド名を因むのは、 このバンドの中心メンバーである、de la Garza姉妹がアジア系アメリカ人のルーツを持つからだろう。

 

 

また、リンダ・リンダズは、今、LAで、最も勢いのあるガールズパンクバンドといえる。これからがとても楽しみな期待のバンドである。

 

 

彼女たちリンダ・リンダズの音楽性というのは、音を聴けば、すぐにその意図が手にとるように理解できるはずだ。往年のオールド・スクールのパンクを下地にしつつ、そこには現代的な質感もふんだんに込められている。キャッチーで、痛快さのあるド直球パンクを惜しみなく放り込んでくるバンドで、往年のラモーンズのような若々しさ、フレッシュさのあふれる音楽を、そのまま現代にあざやかさをもって再現したような感がある。また、ガールズ・バンド、又は、ライオット・ガールとしての、これまでの社会通念の延長線上に存在するロックバンドである。

 

 

リンダ・リンダズの「Spotify Playlist」を見てみると、この四人のティーンネイジャーが、一体、どのような音楽に影響を受けてきたのか、その背景が手にとるように理解できるはずだ。このプレイリストには、ポスト・パンク/ニューウェイブシーンで活躍したバンド名がずらりと列挙されていて、何故だかしれないが、微笑ましくなるようなところがある。The Go-Go's、X-Ray Specsといった往年の素晴らしい名ガールズ・バンドがそこにはずらっと並んでいる。このプレイリストを見ているだけでも、音楽フリークには眼福をもたらすことは必須と思われるが、彼女たちの実際の音楽を聴けば、さらに微笑ましくなり、喜ばしいものが感じられるはずだ。

 

 

このバンドの実際の音楽性は、全く嘘偽りがない真正直なガールズ・パンク・ロックである。それは、一種の痛快さを聞き手の感情にもたらす。

 

かつてのThe Go-Go'の音楽性と同じように、底抜けに明るい雰囲気、人を楽しませるエンターテインメント性、楽曲自体キャッチーさ、弾けるようなポップ感、この四つの要素が、その音楽性を背後から盤石に支えている。また、そこに、音楽通らしい捻りのような要素が付加されているところも見逃せない点である。例えば、Yeah Yeah Yeahsに代表されるガレージ・ロック本来のプリミティブな要素であったり、また、痛快なライオット・ガールのボーカルスタイル、マイク越しに「ガブッ!!」と、噛み付くような雰囲気が加味されたという印象を受ける。

 

 

これまでリンダ・リンダズは、 これまでの三年間の活動期間で、自前のレーベル、”Linda Linda Records”を中心として、シングル、EP作品をリリースしている。 デビュー・シングル「Claudia Kishi」2020においては、X-Ray Specsの音楽性を引き継いでいて、まさに、このあたりのロンドン・ニューウェイブシーンを知る往年の愛好者にとっては殆ど感涙ものの音楽を奏でている。

 

 

また、ミニアルバム形式の「The Linda Lindas」2020 は、ロックバンドとしての真価を発揮し、Go-Go'sに近いアプローチを図り、より、バンドとしての結束力が増した痛快味あふれる作品となっている。

 

 

ここで繰り広げられるキャッチーで痛快な音楽性、そして、カルフォルニアのバンドらしいポップ・パンクシーンの音楽性を存分に引き継いだポピュラー・ソングというのは、パンクロックの伝道師としての音の体現といえ、このバンドの魅力をより多くのファンに知らしめる作品である。 

 

 

 

 

The Linda Lindas 2020

 


 




 

 

 

 

1.Monica

2.No Clue

3.Missing You

4.Never Say Never



 

 

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「Moxie (Music From Netflix Film)」2021においては、伝説的アメリカのポップ・パンクバンド、Off With Their Headsのスタジオ・アルバム「All Things Move Toward Their End」2007に収録されている「Big Mouth」の名カバーを堪能できる。

 

ここで、リンダ・リンダズは、原曲よりもはるかに、一般的で親しみやすいアレンジを施し、ガールズバンドという特質によって、新鮮でフレッシュな味わいをもたらす。もしかすると、原曲よりも良い出来栄えかもしれない。そして、何より、この知る人ぞ知るパンク・ロックバンド、”Off With Their Heads”の作品を、カバー楽曲に選んでいるあたりに、リンダ・リンダズというバンドのメロディック・パンクに対する強い情熱、一方ならぬ造詣のようなものが伺える。 

 

 

 

 

Epitaphからリリースされた最新シングル作「Oh!」2021は、リンダ・リンダズの現時点の最高傑作といっても良い作品である。

 

 

これまでのパンク色を少し弱め、ロックバンドよりのアプローチを図っている。また活動初期には感じられなかった往年のアイドルポップ、あるいは、ダンス・ポップの要素をふんだんに取り入れている作品で、バンドサウンドとしても非常に磨きがかかった痛快な楽曲となっている。 

 

 

 

「Oh!」2021

 

 


 

 

 

 

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そして、このリンダ・リンダズというアーティストは、それほど難解さのない痛快なポップ性を表立ったサウンドの特長にしている。しかし、表面上から見えづらいような形で、独自の主張性を持ったロックバンドでもある。その音の背後に、自身のアジア系としてのルーツ、レイシズムにたいする強烈なアンチテーゼも、ライブ盤「Racist,Sexist Boy」という作品において滲ませている。このあたりに、バンドサウンドしての力強さが感じられる要因があるように思える。

 

 

このリンダ・リンダズというバンドは、表向きには、人を選ばないキャッチーさをイメージとして持つガールズ・ポップバンドでありながら、そのバンドサウンドの内奥の精神性には、非常に強い光が放たれており、ライオット・ガール、ニューヨークパンク時代から続く、女性パンクロッカーの精神の系譜に連なる強固な概念が貫かれている。

 

 

最新作「Oh!」はシングル作ではならいながら、アメリカのインディー・シーンで話題を呼びそうな気配のある作品といえる。おそらく、これから後、この「Oh!」を収録した1stスタジオ・アルバム、あるいは、EP形式のミニアルバムがリリースされるかだろうと思う。あまり無責任な放言は差し控えたいものの、どのような作品になるのか、非常に楽しみに首をなが〜くして待ちたいと思う。

 

 

この跳ねるようなフレッシュな音の味わいを見ると、非常に感慨深いものがある。往年のポスト・パンク/ニューウェーブの名ガールズバンドの面影が感じられる。しかし、今や、遠ざかった幻影が、2021になってこのリンダ・リンダズの音楽により見事に復刻されたわけである。現在、アメリカのロックバンドの中で、最も勢いが感じられ、リンダ・リンダズが漠然と”来る”かもという気がします。

 

日本で、このバンドのブームがやって来る以前に、是非、音楽通として、チェックしておきたいアーティストです。

 

 

 

参考サイト

 

Last.fm  

The Linda Lindas https://www.last.fm/music/The+Linda+Lindas?album_order=most_popular

 

Wikipedia 

リンダ リンダ リンダ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%80_%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%80_%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%80

 山下敦弘 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%8B%E6%95%A6%E5%BC%98

 


The Garden

 

 

カルフォルニア州北部、LAの南に位置するオレンジカウンティは、80年代には、ブラッグ・フラッグを輩出した土地であった。90年代に入ると、メロディック・パンクの発祥の地となった。

 

そして、この地域から、NOFX、オフスプリングを始めとする様々なパンク・ロックバンドが登場し、USチャートを席巻した。このムーブメントはアメリカから日本まで波及し、相当長く続いた。



 

そして、ハードコア、メロディックパンクの一大音楽ムーブメントを巻き起こしたオレンジ・カウンティから飛び抜けて風変わりなアーティストが2010年代になって出てきた。それが今回紹介する”The Garden”です。

 

2013年にEP「Rules」でデビュー、2019年、マック・デマルコとの共作シングル「Thy Mission」、2021年にはスタジオ・アルバム「Kiss My Super Bowl Ring」では、Ariel Pinkをゲストに招いている。

 

近年、米国内のインディーズ・ミュージック界隈で、徐々に知名度を上げつつあるバンドである。



 

The Gardenは、音楽性にしても、ミュージシャンとしてのキャラクターにしても、世間的常識を痛快に笑い飛ばす不敵さがある。なおかつ、中性的なクイアの概念を強固に捧持しているアーティストでもある。その内の一人は、イヴ・サンローランのモデルという背景を持ち、双子の兄弟で結成されたバンドというのもかなり興味深い。 

 

The Gardenは、Music Videoにおいて、風変わりで特異な一面を見せる。それは、言い換えれば、奇矯というべきなのかもしれない。

 

「Vada Vada」という奇妙な黒旗を、バンドシンボルとして掲げる2人の強大の痛快な演技力は、役者顔負けの雰囲気がある。結構、アクション俳優さながらに体を張ってPV撮影に挑んでいる。そのあたりがシニカルでブラックな笑いを誘う場合もある。 

 

しかし、シアーズ兄弟が提示する笑い。それは、どちらかというと、からりとした痛快な笑いというより、どことなく、ザ・シンプソンズのような引きつったようなジメッとした笑いに近い。これは、カルフォルニアの澄んだ青空からは想像しえない不可解な印象を聞き手に与えるはずだ。カルフォルニアの太陽ですら照らし出しえない「何か」があるのだろうか? 日本人としては、それが何なのかまでは指摘出来ない。



 

 

しかし、そのような暗示めいたものを、The Gardenは、自らの産み落とす音楽にスタイリッシュに込める。


一見して、その音楽性には、軽佻浮薄な印象を受けるかもしれないが、実は、彼らのサウンドの深奥には、80年代のブラック・フラッグの時代から伝わるオレンジカウンティのクールなパンク・スピリットが込められている。それは、ブラッグ・フラッグや、ヘンリー・ロリンズの提示するアメリカ社会に対する奇妙な風刺、ブラック・ジョーク、はたまた、アメリカ人にしか理解出来ない「何か」が、The Gardenの音楽性、ひいては、このシアーズ兄弟の根本的な価値観の背後に潜んでいるように思える。

 

もちろん、概念上だけでなく、時に、この音楽ユニットの音楽性についても同じことが言えるはずだ。彼等の音楽には、ニューヨークのSwans、あるいはJoy Divisionのイアン・カーティスのような、奇妙なおどろおどろしさ、スタイッシュでクールな重苦しさもうっすらと滲んでいる。



 

彼らの音楽には、どことなく大胆不敵さが込められ、奇妙で、抜けさがなさがある。このあたりは、七十年代のサンフランシスコの音楽シーン、ザ・ポップ・グループ、ザ・レジデンツあたりの奇妙なブラックなシニカルさを現代に受け継いだと言えるかもしれない。

 

また、The Gardenの音楽性については、往年のポスト・パンク/ニューウェイブ風のサウンドを基調とし、ハードコア・パンク、サーフ・ロック、サイケデリック・ロック、ドリーム・ポップ、近年流行のクラブ・ミュージック、ヒップ・ホップ辺りの要素を多種多様に取り入れているという印象を受ける。

 

 

一見すると、無鉄砲にもおもえるような音楽性。

 

まるで、闇鍋のなかに食べ物ではないものまでをも放り込んでみせたというような感じも見受けられる。そこには、よく、いわれる”ミクスチャーロック”という概念を、2010年代のアーティストとして、新たに解釈しなおしたような雰囲気もなくはない。

 

そして、ユニットという編成のための弱点を、彼等は、それをスペシャリティに代え、往年のサーフロックサウンドのような通好みの洗練性をもたらしている。ベース、ドラムだけのシンプルな編成であるのに、きわめて手数の多い鋭いドラミングにより、時には、重低音のヘヴィ・ロックバンドとしての同等たる風格も覗かせる場合もある。



 

 

 

 

 

「Haha」2015

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TrackLisiting

 

1.All Smiles Over Her :)

2.Jester's Game

3.Red Green Yellow

4.Everything Has a Face

5.Crystal Clear

6.I'll Stop By Tomorrow Night

7.Haha

8.Vexation

9.I Guess We'll Never Know

10.The Could Built Us a Home

11. Cells Stay Clean

12.Cloak

13.Egg

14.Devour

15.Together We are Great

16.We Be Grindin'

17.Gift

 

 

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2019年のシングル作品「Thy Mission」で、The Gardenは、ドリーム・ポップ寄りのアプローチを見せているが、The Gardenの痛快きわまりない最高傑作として挙げておきたいのは「Haha」である。

 

スタジオアルバム「Haha」2015は、アメリカのメロディック・パンクムーブメントの重要な立役者であるBad Religionのブレット・ガーヴィッツが主宰するEpitaphレコードに移籍しての第一作となる。

 

#1「All Smiles Over Here:)」のシンガロング性の強い、疾走感のある鋭いトラックから、#5「Crystal Clear」に至るまで、以前のバンドサウンドとして荒削りな雰囲気が薄れ、音に纏まりと張りが加味され、ロックバンドとして、よりシンプルでクールに洗練された印象を受ける。


もちろん、The Gardenの特質である宅録感満載のジャンク感、ローファイらしい荒削りさもありながら、理解しやすい形でのロック、クラブ・ミュージックの醍醐味が味わえるはず。

 

また、#13「Egg」では、彼等の持ち味、サーフ、サイケともつかない音楽性も独特で、ベッドルーム・ポップに近い雰囲気を感じる。そして、聞き逃すことができないのが、#8「Vexation」。ここには懐かしさすらあるサーフサウンドがローファイ風の彩りによって現代に蘇りを果たしている。



 

また、今回、The Gardenを取り上げることにしたのは他でもない理由があって、それは、彼等二人が、日本にも造詣を持っているから。 フレッチャー、ワイアット兄弟は、揃って、幽遊白書のファンであることは結構有名である。

 

信じがたいことに、幽遊白書の作中キャラ、”浦飯、桑原”のコスプレに挑戦しているほど。また、スタジオアルバム「Haha」の一曲目、All Smile Over Here:)に見られる格闘アクション風の掛け声というのも、日本のアニメーション、格闘ゲームからの影響を何となく伺わせるかのよう。



 

ここでは、シアーズ兄弟のクオリティーの高いコスプレを掲載するのは遠慮させてもらうけれども、今後の活動にも非常に期待したい、オレンジカウンティの双子兄弟の音楽ユニットである。

 

 

追記

 

ワイアット、フレッチャー兄弟は、”Enjoy”と”Puzzle”という名義でソロ活動も行っている。そこではバンド形態とは異なる、ベッドルーム・ポップ、ドリーム・ポップ寄りの新鮮なアプローチに触れる事ができる。