Superchunkは、13枚目のスタジオ・アルバム『Songs in the Key of Yikes』を発表した。 Mergeから8月22日にリリースされるこのアルバムには、先にリリースされたロザリとのコラボ曲「Bruised Lung」に加え、新たに公開されたオープニング・トラック「Is It Making You Feel Something」が収録されている。 アルバムのジャケット・アートワークとトラックリストは以下より。


『Songs in the Key of Yikes』は、2022年の『Wild Loneliness』に続くアルバム。長年のドラマーであったジョン・ワースターが翌年にバンドを脱退して以来のアルバムとなる。 ローラ・キングがツアー・ドラマーとして2年間活動した後、現在はパーマネント・メンバーとなっており、アルバムにはクイヴァーズのベラ・クインランとホリー・トーマス、ツアー・ベーシストのベッツィー・ライトも参加している。 

 

エンジニアはポール・ヴォラン(ザ・メンジンガーズ、リフ・ラフ万歳)とイーライ・ウェブ、ミックスはマイク・モンゴメリー(ザ・ブリーダーズ、プロトマーティア)が担当した。


「バンドのマック・マコーガンはプレスリリースの中で、"誰もが自分では気づかないような何かを経験しているものだ。 「これは現在、かつてないほど真実であるが、同時に、私たち全員が一緒に何かを経験しているということでもある。 そのような状況の中で、芸術は何の役に立ち、幸せはどこにあるのだろうか? (私は知らない)」


この曲は、言葉や音楽を書くという非常に二の足を踏みやすいプロセスにおいて、自分自身を二の足を踏まないことについて歌っている。 この曲は、"誰がこれを必要としているのか、何の役に立つのか "という正当な疑問について歌っている。 何かを感じさせてくれるか? それがスタート地点なんだ」



「Is It Making You Feel Something」






Superchunk 『Songs in the Key of Yikes』


Label: Merge

Release: 2025年8月22日


Tracklist:


1. Is It Making You Feel Something

2. Bruised Lung

3. No Hope

4. Care Less

5. Climb the Walls

6. Cue

7. Everybody Dies

8. Stuck in a Dream

9. Train on Fire

10. Some Green


 

オリヴィア・ディーンがニューシングル『Nice To Each Other』をリリースした。複数のBRIT賞とマーキュリー賞にノミネートされたアーティストのソウルフルなヴォーカルを、爽やかなギターに乗せたこの曲は、リアン・ラ・ハヴァスやピンク・パンテレスなどのアーティストとの仕事で知られるマット・ヘイルズとザック・ナホームと共にレコーディングされ、ジェイク・アーランドが監督したワンテイクショット・ビデオは以下の通り。 ディーンはこう語っています。


"Nice To Each Other "は、デートにおける自分の自立を探ることの押しと引きについて歌った曲だ。 この曲は、今現在の誰かを楽しむこと、そしてそれが軽快で有意義なものになることを歌っているんだ。 この曲とビデオは、私の中の遊び心を表していると思う。


「Nice To Each Other」は、キャピトル・レコードから9月26日にリリースされるディーンのセカンド・アルバム『The Art of Loving』に収録されます。 


ディーンはこの夏、ロンドン、ニューカッスル、マンチェスター、エディンバラで開催されるサム・フェンダーのUK公演をサポートし、6月11日にはロンドンのO2シェパーズ・ブッシュ・エンパイアで故郷を祝う新たなギグを行なう。 チケットは6月9日(月)午前10時より一般発売開始。 また、7月6日にはロンドンのBSTハイド・パークでサブリナ・カーペンターをサポートする。 その後、彼女は夏のAcross The Atlantic北米ツアーに出発する。


「Nice To Each Other」



『The Art of Loving』は、2023年のデビュー作『Messy』に続く作品となる。 デビュー・アルバムはイギリスのオフィシャル・アルバム・チャートで4位を記録し、同年のマーキュリー・プライズにノミネートされたが、最終的にエズラ・コレクティヴの『Where I'm Meant to Be』に敗れた。 


今年初め、ディーンは『ブリジット・ジョーンズ』でフィーチャーされた「It Isn't Perfect But It Might Be」をリリース。 マッド・アバウト・ザ・ボーイ』でフィーチャーされ、オフィシャルシングルチャート36位にランクインしました。 この曲が今度のアルバムに収録されるかは未定です。


Olivia Dean  『The Art of Living』


Label: Capital

Release: 2025年9月26日


*収録曲は未公開



 チャート上位のミュージシャン、委嘱作曲家、作家、受賞歴のある教師、講演者、スタジオ・オーナーであるコーリー・カリナンが、ミュージシャンでシンガーソングライターのライリー・マックスをフィーチャーした新しいアヴァンギャルドで実験的な音楽と映像の体験「2025 Alive」をお送りします。  ハイテクの即興音楽は、「2025年に生きているために起こっているすべてのクレイジーなこと」に影響されているとコーリーは宣言している。 


このショート・ミュージカル・フィルムは、グラミー賞受賞者などを起用したミュージックビデオの監督、作曲家・編集者として環境ドキュメンタリーの制作、米国グリーン商工会議所のソーシャルメディア・デザイン、世界最大の環境非営利団体(ネイチャー・コンサーバンシー)史上最大のエンゲージメントを確保したキャンペーンやソーシャルメディア・コンテンツの制作など、高い評価を得ているクリエイター、シドニー・カリナンが監督・制作した。


コーリー・カリナンは、チャート上位のミュージシャン、委嘱作曲家、作家、受賞歴のある教師、講演者、スタジオ・オーナーである。 彼の新作は、『2025 Alive』と題されたカタルシスをもたらす多世代マルチメディア・コラボレーションだ。 ストリーミング・サウンドトラックは、彼と彼の娘でシンガーソングライターとして高く評価されているライリー・マックスによるハイテク即興演奏で、映画は彼の娘シドニー・カリナンによる映画的ファンタジアである。 これらの作品は、この型破りな文化の年に私たちが抱いた無数の思いや感情を表現している。 新しいアイデアのテスト。 現代世界における古い考えのテスト。 スタミナ。 意志の力。 知力。 共感。 愛国心。


彼はさらに、「2025 Aliveは全編を通してヴォーカルが入っているが、歌詞は1つだけだ」と打ち明ける。「 "テスト"。 この言葉は、現代世界の多くのことと同じように、すぐに解体され、バラバラになる。 現在の出来事が、あなたが愛していた文化の中であなたの決意を試しているのか、あるいは、私たちが規範をどこまで壊せるか、あるいは改革できるかを試している人々を支持しているのかにかかわらず、この前提は、あなたが2025年に経験していることに当てはまります。 私たちは、この驚くべき、そして圧倒されるような年に、あなたが私たちの仕事を有意義なものだと感じてくださることを願っています」



 Cory Cullinan is a chart-topping musician, commissioned composer, author, award-winning teacher, speaker, and studio owner. His new release is a cathartic multigenerational multimedia collaboration entitled 2025 Alive. The streaming soundtrack is a high-tech improvisation by himself and his daughter acclaimed singer-songwriter Riley Max, and the film is a cinematic fantasia by his daughter Sidney Cullinan. He shares, "They express the myriad of thoughts and feelings we’ve had during this unconventional cultural year that, regardless of where you stand… feels like a test of some sort. A test of new ideas. Of old ideas in a modern world. Of stamina. Willpower. Intellect. Empathy. Patriotism."


He further confides, "2025 Alive has vocals throughout but only one lyric: “Test.” This word is immediately deconstructed and splintered into pieces, like so much in our modern world. Whether current events are testing your resolve in a culture you loved, or you support those who are testing just how far we can break or reform our norms, this premise is apropos of what you are experiencing in 2025. We hope you find our work meaningful in this amazing and overwhelming year to be alive." 


Weekly Music Feature: Qasim Naqvi     ~パキスタンにルーツを持つ作曲家カシム・ナクヴィによる驚異的な音楽~



パキスタン系アメリカ人の作曲家カシム・ナクヴィは、著名なトリオ、''ドーン・オブ・ミディ''のドラマーとしてよく知られている。その他にも、ECMから新作をリリースしたWadada Leo Smithとも共同制作を行っていて、ジャンルを問わずミュージシャンとして研鑽を重ねてきた。彼は、映画、ダンス、演劇、国際的な室内アンサンブルのためのオリジナル音楽を創作している。 最近の作品は、アナログ・シンセサイザーやオーケストラ編成の音色を深く掘り下げている。


実験音楽や電子音楽を得意とするErased Tapesと契約して以来、彼は2つのモジュラー・シンセサイザーの組曲を制作している。2019年の高い評価を受けた『Teenages』は、エレクトロニクスが生き、呼吸し、自ら変異する音を捉えた作品であり、2020年の姉妹作『Beta』は、この種の楽器のための作曲に対するナクヴィの理解と楽器自体の成長を記録した一連の実験的作品である。


カシムの音楽はアートとも親和性がある。彼の音楽は主体的な音楽としても楽しめるが、空間を彩る環境音楽としての性質も併せ持つ。空間に馴染む音楽の名手とも言え、彼の音楽は、グッゲンハイム美術館、dOCUMENTA 13 + 14、MOMA、リバプール・ビエンナーレ、セントルイス美術館でのインスタレーションに登場している。 現代音楽家としても名高い。彼の室内楽曲や管弦楽曲は、yMusic Ensemble、The Now Ensemble、BBC Concert Orchestra、The Contemporary Music Ensemble of NYU、Stargaze、The Helsinki Chamber Choir、The Bienen Contemporary/Early Vocal Ensemble、Nimbus Dance Works、シカゴ交響楽団(CSO)のMusicNOW Seasonで演奏されている。


2021年、アナログ・シンセシス組曲『クロノロジー』が全世界でレコード・リリースされた。2016年にデジタルのみで構想された『クロノロジー』は、カシムにとって初めてのエレクトロニック・ミュージックのリリースだった。即興音楽とクラシック音楽の世界に身を置いてきたナクヴィにとって、初の電子音楽アルバムは、コンピュータの豊富な選択肢を置き去りにして、故障したシンセサイザー、--古いムーグ・モデルD--だけで制作されるのがふさわしいと思われた。


パキスタン系アメリカ人の作曲家カシム・ナクヴィのニューアルバム『Endling』は、2023年のBBC コンサート・オーケストラ作品『God Docks at Death Harbor』の前日譚として作曲された。この作品は、数百年後の未来を舞台に、強烈で美しい風景の中を43分間のオデッセイへと誘う。


ナクヴィ自身の言葉を借りれば、アルバムは、8つの楽曲を通して、地球上の最後の人間である''エンドリング''の物語を語っている。エンドリングはある種の最後のメンバーである。 エンドリングが死ぬと、その種は絶滅するというのがシナリオだ。カシム・ナクヴイが明らかにしたところによれば、ニューアルバムは複数の構想を経て仕上がったという。


「ある朝、妻が夢から覚めると、"God Docks at Death Harbor "というフレーズが頭に浮かんできたらしかった。ちょうどそのとき、私はBBCコンサート・オーケストラのために新作を書き始めたところだったが、彼女がこの言葉の夢について話してくれたことで、それはあっという間に音楽の構想に浸透していった。 彼女の言葉は私にとってほとんど詩であり、具体的なイメージを呼び起こしてくれることがある。 私は、人類がもはや存在しない、何百年も先の未来の地球を想像した。 私たちがいなくなったことで、世界は平和に回復していく。 これが作品の信条となった」


「それは、このトーンポエムを書いているとき、インスピレーションを得るために眺めることのできる風景画のようだった。 2023年春にロンドンで『God Docks at Death Harbor』が初演された後、この感覚は私の中に残り、新譜について考える時期になり、この物語を続けたいなと感じた。 私は前日譚を想像してみた。地球上で最後の人間であるエンドリングが、何世紀も未来の世界を旅する話。 朽ち果て、変異した世界は、自然と人工の奇妙なアマルガムになるという」


「私は、この音楽が、自然界に追い越され、吸収されつつある未来の崩れかけた風景の中を、この人間を追いかける章立てになっていることをイメージしていた。 God Docksのトーンポエムの伝統に従って、私はまず曲のタイトルを作り、音楽が形になっていくにつれて、その意味をより明確にしていった」


「これらのタイトルには、現在の感覚も込められている。 エンドリングは、多くの人々にとって大きな苦悩と苦痛に満ちた2024年に制作された。 その時間は、このレコードのフィクションに追いつくかもしれない道のりのよう。それ自体がディストピックを感じさせ、それは今も続いているんだ」


アルバムのハイライト曲「パワー・ダウン・ザ・ハート」では、主人公が人生の最後の瞬間にあるA.I.に出会う。 一種の最後の儀式として、この古代の人工意識は、何百年も観察してきた美、悲しみ、恐怖を描写する。Moor MotherのボーカルはAIテクノロジーを表すために取り入れられたが、それは人の手によるボコーダーの装置によって濾過され、アルバムの特異点を形成している。


「私は、音楽がこの存在の心の中に流れるように感じられるふうにしたかった。 私は音楽とこの物語をカマエ(Moor Mother)と共有し、彼女がこのA.I.の声を担当してくれないかと頼んでみた。Camaeの声のサウンドをこのレコードの世界に取り入れるため、私は、”Buchla 296t Spectral Processor”として知られる、古い機械設計で彼女のボーカルを処理した。 この特異なアナログ・イコライザーを駆使し、微妙なヴォコーディング・エフェクトを作り出したり、もっと極端なやり方では、彼女の声の特定の響きを強調したり弱めたりすることができた。 そして最終的な結果は、プログラムされた人間らしさを脱ぎ捨て、永遠にパワーダウンする一種の合成音声だった」


「要するに、『Endling』の音楽はすべて有機的なアプローチによって行われ、ARP Odyssey、Minimoog、モジュラー・シンセサイザーによって生成され作られたと言える。私にとって、モジュラー・シンセサイザーのやりがいと満足感のひとつは、複雑な音色を一から開発することに尽きる。このモジュール装置は、有機的に不安定であり、扱いをミスると故障しやすい。 さながら有機体のように感じられ、そして演奏者としてそのエネルギーの流れや電圧をコントロールすることができた。 大人になってから、私の創作活動は両極端な方向性に進んでいった。 私は即興音楽を通じて、純粋に自然発生的な方法で物事を創造することが大好きなんだ」


「このたぐいの音楽的コミュニケーションは、二度と再現できないような複雑で直感的なアイデアに直結することがある。 そして、もう一方には、オーケストラや室内楽グループのために作曲するのが大好きな私がいる。 これは私の思考の詳らかな青写真をスローダウンしたようなものなんだ。 モジュラー・シンセサイザーは、この2つの世界を見事に橋渡ししてくれることがわかった」


「私は、今回、この電圧制御のマシンを、珍しい楽器やモジュールで構成されたアンサンブルのように扱うことができ、そのアンサンブルのためにコンポジションを行った。 私は、このマシンの有機体に音楽を提示し、電圧の減衰(Decay)を通して、即興演奏家のようにライブで素材を編成することが出来たんだ。そしてアンサンブルのように、モジュラー・シンセサイザーの解釈は常に異なり、私が思い描く以上の非常に豊かなソノリティやパターンを生み出した」

 

「”Endling”に対するこれらの全般的なマシーン・アプローチは、(BBCの)オーケストラの前任者に対する比類なき賛辞であり、なおかつまた、このアルバムの未来とは異なる種類のオーケストラのように感じられる」ーーQasim Naqvi 

 


Qasim Naqvi  『Endling』- Erased Tapes




従来の音楽形態は、ポピュラー/ロックソングのように主体的なもの、サウンドトラック/環境音楽のように付属的なものというように、明確に分別されてきたように思える。しかし、パキスタンにルーツを持つ作曲家、カシム・ナクヴィの音楽はその境界を曖昧にさせ、一体化させる。

 

そして、今一つの音楽の持つ座標である能動性と受動性という二つの境界をあやふやにする。ナクヴィの音楽は、ある種のバーチャル/リアルな体験であり、それと同時に、近未来の到来を明確に予見している。彼の音楽は、高次関数のように、多次元の座標に、音階、リズム、声を配置し、その連関や定点を曖昧にしながら、音の流れが複数の方向に流れていく。このアルバムの音楽は、従来のポリフォニー音楽になかったであろう新しい着眼点をもたらしている。音楽のストラクチャーというのは、音階にせよ、リズムにせよ、ハーモニーにせよ、必ずしも一方方向に流れるとは限らない。これが二次元のスコアで考えているときの落とし穴となるのだ。

 

電子音楽による壮大なシンフォニアとも言える「Endling」は、SFをモチーフにした広大な着想から生まれている。ナクヴィの妻が話してくれた謎の言葉、「デス・ハーバーのゴッドドック」は、一般的な制作者であれば気にもとめなかったのではないか。しかし、制作者にとっては啓示のように思え、ある種の”ダヴィンチコード”のような不可解さを持ち、脳裏を掠め、音楽のシナリオの出発点となり、また、その最初の構想が荒唐無稽であるがゆえ、イマジネーションが際限なく広がっていった。


カシム・ナクヴィは、フィクションとノンフィクションが混ざり合う不可解なモチーフを、彼自身の豊富なイマジネーションをフルに活用して、電子音楽によってそれらの謎を解き明かしていこうと努めた。しかし、もちろん、MOOGなどモジュラーシンセというアナログな装置を中心に制作されたとはいえ、完全な古典主義への回帰を意味するわけではなかった。いや、それとは対象的に、先進的な趣旨に縁取られ、現代人の生き方と密接に関連する内容となった。


この音楽を聴き、どのような考えを思い浮かべるかは、それぞれの自由であろうと思うが、重要なのは、その考えを日頃の仕事や暮らしのヒントにすることも不可能ではないということである。つまり、アルバムの音楽は見えない複数のルートが同時に存在することを暗示させる。これらはSFのタイムラインやパラレルという概念とも密接に繋がっているのではないかと思う。

 

現今では、AIテクノロジーの著しい進化は、人間の暮らしに多大な利便性をもたらしたのは確かだったが、日常的な生活に浸透させ過ぎることに警鐘を鳴らす研究家もいる。 便利すぎるということ、それがそのまま新しい着想や発明の芽を摘みとることがある。それに加え、利便性には、人類が発展するための成長性や自律性を削ぎ落とす弊害も内在している。果たして地球の未来は、「猿の惑星」のようにAIやテクノロジーに翻弄されるディストピアになるのだろうか。


カシム・ナクヴィさんは、どうなるか不分明な未来の人間社会の進展を、現在の世界情勢や暮らしとリンクするような形で、人間の根源的な生命の意義と結びつけて、人類の理想的な存在とは何かを探求していく。しかし、例えば、優れた映像作品のように、それらは飽くまで提言にとどまり、ぞれぞれの聞き手が答えを見つけるというような趣旨の作品となっている。良い概念とは、性急な結論を出すのではなくて、自発的な考えを促すよう手助けをするものである。 


このアルバムには、宗教、人種、戦争、環境、自然と生物との共存、エネルギーや資源、そういった現代の世界に内在する複数の問題点を明らかにし、それらの着想を音楽で体現するという、現代のミュージシャンが率先して行うべき模範例が示されていると言えるかもしれない。それらは利己主義やポピュリズムが繁栄する現代社会に、ある種の規律や均衡をもたらそうとする。

 

 

同時に、このアルバムでは、アナログのシンセが積極的に制作に取り入れられている。アナログというのは、意図的に音を消すということが出来ない。信号を送るのは人の手であるが、音がどこで消えるのかを決定するのは人間ではない。時々、アナログ信号では、音を消すことができず、ずっと鳴り続けることもある。また、演奏者がまったく意図せぬ偶発的な音が発生する場合もある。それはそのまま、即興的な音楽の発生を促し、結末や結果がどうなるかわからない、というスリリングな雰囲気をもたらすことになる。例えば、音楽がすべて方程式のように進んでいき、何の意外性も偶然性も持たないとすれば、それではあまりに退屈すぎるのではないか。実際的に、このアルバムには、チャンス・オペレーションの次の段階が示されている。


音楽のライブ演奏の中で、観客の反応も含めて、どのような偶発的な要素が発生するのか。偶発的な要素により、何らかのケミストリーが発生するのか。それはミュージシャンとしての最高の楽しみのひとつであると思うが、カシム・ナクヴィは、この偶発的に生み出される要素を心から楽しんでいる印象を持つ。例えば、コンピューターやプログラムのエラーやバグのような瞬間もまた、ライブ演奏のような感じで演奏し、組み合わせたり設計したりしている。それは部分的には、意図しない何かを許容したり、抑制できない何かを認めるという、音楽制作をするまでは出来なかったことが出来るようになる瞬間である。そして、このアルバムでは、そういったコントロール出来ない部分から逸脱したときに、神秘的な音楽が出来することがある。そして、制作者は旧来、現代を問わず、テクノロジーを駆使し、それらを作り出していくのだ。

 

 

『Endling』は全般的に見ると、ドローン・ミュージックを中心に組み上げられている。 ドローンというのは、スウェーデンなどで盛んなアンビエントの次世代の音楽であり、ラモンテ・ヤング、タシ・ワダがバクパイプ構造を持つ音響性を活かし、持続音の知られざる魅力を探求し、前衛音楽を作り出した。音の通奏音の持続、あるいは減退の段階を通じて、音調(トーン)の変調や波のうねりを生み出し、最終的には多彩な音楽のウェイブの性質を示すというものである。

 

「1-Fires」はインタリュードのような形で始まり、カナダのエレクトロニック・プロデューサー、Tim Heckerが『No Highs』で試みたように、下降していくドローン音が導入部となっている。その最初のモチーフに対して、アナログシンセのリードやベースは、段階的に上昇するカウンターポイントを描き、SFや天文的な音楽の印象を取り入れ、スタンリー・キューブリックの映画「2001年 宇宙の旅」のような神秘的なオープニングのような序章の音楽を形作る。

 

「2-Beautification Technology」は対して、シュトゥックハウゼンが提唱した音の集合体を意味する「トーン・クラスター」の類型に属する。アルペジエーターを配した持続音を緻密に配列した上で、高次関数のように複数の座標を持つ数学的な電子音楽の構造を作り上げる。ミニマル音楽としても聴くことも可能であるが、オシレーターのような装置を用いて、徐々に全体的な音響をぼかしていき、移調させていくという独特な手法を発見することが出来る。この曲では、人の手ではコントロール出来ない、音の強弱を活かして、偶発的な音楽を発生させている。

 

 

 「Beautification Technology」

 

 


近代/現代の音楽として、その場に満ちる”空気感”とも呼ぶべきものを最初に表現したのは、おそらく、リゲティ・ジョルジュであった。ユダヤ人のホロコーストを題材に、不気味で恐ろしい空気感を表現したのだった。「3-The Glow」は、地上的な概念を表したというより、宇宙に偏在するダークマターやダークエネルギーといった、現在の物理化学では解明しえないエナジーを出現させたという印象である。一般的に言われるところでは、現行の物理の分子学や原子学では解明しえないエネルギーが、宇宙空間には90%以上も偏在するのだという。これはおそらく、ギリシャ哲学でほのめかされたエーテルのような、三次元空間には存在しない非物質のことを示唆するのではないか。そして、カシム・ナクヴィは、そういった非物質的な現象や目に映らない存在を認め、音楽を通じて、それらの神秘性に迫ろうとしている。音楽の正体は振動やバイブレーションである、ということをあらためて痛感させる特異なトラックである。

 

前曲を分岐点として、このアルバムの音楽はSFの性質を強めていく。SFのロマンとは、この世に解明出来ないことが存在すること、あるいは、その謎を探索したいという人間の原初的な欲求から生ずる。


続く「4-Power Down The Heart」は、そういった知的好奇心を駆り立てる何かが内在する。例えば、子供の頃は、すべて知らないものを無邪気な目で見ているが、大人になると知らないものですら、そういった純粋な目で見れなくなる。''多くの情報を知りすぎる''という楽園のアダムのような現象こそ、現代の人々にとって、退廃や堕落を意味するのだ。「Power Down the Heart」は、むしろ知らないことの素晴らしさや、知り得ないことに目を開かれることの喜びを表す。この曲では、Moor Motherをボーカリストとして招き、そして、AIの声をシンガーに仮託し体現させている。ムーア・マザーは最後に地球に残された種の意識体をボーカルで表現している。近未来を人類はどのように生きていくべきか、そういった提言をナクヴィは行う。

 

 

 

 「Power Down The Heart」

 

 

 

「5-Plastic Glacier」はどうだろうか。スコットランド/スペインのバクパイプの音響性をドローン音楽という側面から解釈し、それらをブライアン・イーノのアンビエントのバイブルになぞらえた一曲という感じがする。表向きには、ありふれた氾濫するフラットな音楽に過ぎないように思える。しかし、実際に聴いてみるとわかるように、他の曲とは印象が異なる。モジュラーシンセは、一つの音符を発音するたびに、異なる倍音を発生させ、次に同じ音階を発生したとしても、同じ音やトーンになるとは限らない。これらの偶発的な音楽性は、ハモンド・オルガンやパイプ・オルガンのような荘厳で奥行きのある音響性をもたらし、そして実際的に曲の中で、フーガにもよく似た追走の性質をもたらし、コラールにも似た美麗なハーモニーを形成するに至る。

 

 

アルバムのもう一つの注目曲でタイトル曲「6-Endling」は、アナログシンセによって、鳥の声や生物の声を生成し、澄明で精妙なエネルギーを持つシークエンスを敷き詰める。この曲は、地球から宇宙を俯瞰する人間とは対象的に、宇宙から地球を俯瞰するような超大な音楽的な印象に縁取られている。ドイツのAlva Notoを彷彿とさせる精妙なシンセの音色は、重厚な通奏低音の配置、そして、オクターブの倍音を構成する高音部といった多彩なハーモニーを形成する。持続音が連なっていくに過ぎないように思えるが、音楽の持つ景色が少しずつ変化していく。この曲でも、ドローン音楽に類する作曲の中で、偶発的な音響の発生が、計算しつくせない審美的な和音を作り上げる。音楽の持つ人智では図りしれない神秘的な一面をものの見事に発現させている。

 

 

全般的には、アナログの人工的なサウンドが際立っているが、「7-In The Distance」はかなりデジタルの質感が強いサウンドである。 しかし、よく聞くと、この曲も、アナログで制作されているらしく、ボリュームの抑制が効かない箇所が登場する。他のトラックでは封印していたノイズの側面が際立つ。しかしそれは、一貫して、精妙な振動数で構成されていためか、そのノイズの中には、数式の配列のような美しさが存在している。そして前の曲と同じように、十二音階から導き出される無数の倍音の持つ多彩性を組み合わせて、地球の多様な生物の性質を表現しているように思える。

 

近年、アジアの雅楽やガムランの微分音に興味が注がれることもあったが、西洋音階にも、微分音はおそらく存在している。それらは音符のタブルフラットやダブルシャープ、あるいはJSバッハやベートーヴェン、ショパンがスコアの中に暗号のように残した半音階進行の和声や対旋律、あるいはその残響や余韻という形で体現されてきた。

 

タイトル「In The Distance」から見ると、宇宙に関する主題に思えるが、おそらく''このアルバムの信条''と制作者が述べる''時間的な隔たり''をモチーフとし、未来から現在の地球の姿を俯瞰するという、かなり深遠な概念が込められている。第二次産業革命以降の人類は絶えず、テクノロジーの発展により、未来を造出してきた。他方、現代の人類としては、未来の理想を考えたさいに、今どのように工業や産業、テクノロジーを発展させていくべきか、という逆算的な視点が不可欠であることがわかる。

 

 

最も衝撃的な曲がアルバムの最後に控えている。結末がどのようになったのかは実際に聴いて確かめていただきたいと思う。しかし、ダークアンビエントともいうべき、この曲は、アルバムの中で最も衝撃的であり、緊張感に満ちていて、音楽の持つスリルを体現させている。今作は、EDM、IDMといったジャンルに希釈されることのない''独立した正真正銘の電子音楽''である。影響を受けた作品はあるかもしれないが、それが完全にオリジナルになっている点に敬意を表したい。映画的な音楽と言っては語弊があるかもしれないが、BBCのドキュメンタリー以上のハリウッド的なエンディングだ。音楽ファンとしては、本当の意味で、新しい形態が出てきた瞬間に感動を覚える。テクノロジーと同じである。それがつまり「Endling」の価値といえよう。このアルバムを聴くという、またとない幸運にあやかった少数のファンは、音楽の近未来の姿を垣間見ることになるだろう。

 

 

 

 

100/100

 

 

 

 


Qasim Naqvi(カシム・ナクヴィ)の新作アルバム『Endling』はErased Tapesから本日リリース。

 

©︎Chris Maggio

アレックス・Gが帰ってきた。 昨年RCAと契約したこのシンガー・ソングライターは、同レーベルからのデビューアルバム『Headlights』を発表した。 


2022年の『God Save the Animals』に続くこのアルバムは、7月18日にリリースされる。 本日発表されたニュー・シングル「Afterlife」は、シャーロット・ラザフォード監督によるミュージック・ビデオと合わせてリリースされる。 LPのカバー・アートとトラックリストは下にスクロールしてください。


バンジョーが前面に押し出された「Afterlife」は、アレックス・Gの前作にあった軽快でダイレクトなサウンドを踏襲しつつ、シュールで動物的なリリックをさらに捻じ曲げている。 つまり、メジャー・レーベルに移籍したことで、このアーティストのアプローチが劇的に変化したようには見えない。 


プレスリリースによると、『Headlights』は「不条理なひねりと平凡なマイルストーンのコレクション」であり、「アレックスのシンボルとサウンドの語彙が、何年もアルバムを重ねるうちに、より大きなもの、つまり影響力があり紛れもない音楽的神話へと成長した」ことを示している。



「Afterlife」



 Alex G   『Headlights』


Label: RCA

Release:  2025年7月18日


Tracklist:


1. June Guitar

2. Real Thing

3. Afterlife

4. Beam Me Up

5. Spinning

6. Louisiana

7. Bounce Boy

8. Oranges

9. Far and Wide

10. Headlights

11. Is It Still You in There?

12. Logan Hotel (Live)

 


マージ・レコードと契約したばかりのシカゴを拠点とするアルト・カントリー・グループ、Case Oats(ケース・オーツ)は、デビュー・アルバム『Last Missouri Exit』のリリースを発表した。


 8月22日にリリースされるこのアルバムは、膨大な人物研究のコレクションである。 それぞれの曲は、バンドリーダーのケイシー・ゴメス・ウォーカーとケース・オーツの他のメンバーを形成するのに役立った思い出や人間関係を分析している。 


アルバム・タイトルは、ゴメス・ウォーカーが初めて故郷からシカゴの街までドライブしたときのことに由来している。 イリノイ州との州境に着く直前、彼女は "最後のミズーリ州出口 "の標識に気づいた。 その記憶は、彼女が子供時代から大人へと移行する際の心の印だと彼女は言う。


この発表と同時に、バンドの晴れやかなニューシングル "Bitter Root Lake "がリリースされる。 ドライヴ感のあるドラムとトワンギーなギター、そしてゴメス・ウォーカーのカントリー調のヴォーカルがサウンドスケープに響き渡る。 悲恋の物語であるこの曲は、語り手と冒険を求めるミューズ、ダイアンとの禁断のロマンスを詳細に描いている。 重なり合うハーモニー、切ないフィドルのライン、素朴なインストゥルメンタルのリズミカルなインタープレイに彩られたこの曲は、説得力のある長編小説であり、人生の新たな旅路のひとつにぴったりだ。



ヴォーカリストのゴメス・ウォーカーに加わるのは、ドラマーのスペンサー・トゥイーディー、ギタリストのマックス・スバー、ベーシストのジェイソン・アシュワース、ピアニストのノーラン・チン、そしてバイオリン奏者のスコット・ダニーだ。6人組のデビュー・アルバムは、真夏の暑い地下室で3日間かけて制作された。 


「意図的に骨抜きにしたんだ。 レコーディングに必要なものだけを地下室に持ち込んだんだ。 セッションまでの数ヶ月間、幸運にも多くのライヴをこなしていたので、大事にすることなく、今まで演奏してきたように演奏したんだ」とトゥイーディーは語った。


「Bitter Root Lake」




Case Oats 『Last Missouri Exit』


Label: Merge
Release: 2025年8月22日


Tracklist:

1. Buick Door
2. Nora
3. Bitter Root Lake
4. Kentucky Cave
5. Seventeen
6. Wishing Stone
7. In a Bungalow
8. Tennessee
9. Hallelujah
10. Bluff



Gina Zoのニューシングル「Dirty Habits」は究極のポップ・ロック・サマー・アンセム。アメリカの音楽エージェンシーグループいわく、”私たちはこの夏のガールズ・ソングと呼んでいる!”という。

 

フィリー・ロック・バンド、ヴェルヴェット・ルージュを脱退した彼女は、感染力のある80年代シンセサイザーとハイエナジーなポップ・ロックを融合させた、フレッシュで楽しいサウンドを取り入れ、新しい「カリフォルニア・ガール」の感覚を表現している。



グラミー賞受賞プロデューサーのジャスティン・ミラー(ザック・ブライアン、ジャズミン・サリヴァン)とティム・ソネフェルド(アッシャー)がプロデュースしたこの曲は、2026年初頭にリリース予定のデビュー・アルバムからのファースト・シングルだ。

 

「”Dirty Habits”は、夢と現実の間の緊張感をテーマにしており、決してかなわないかもしれない何かを追い求めるスリルを、セクシーな笑顔と抵抗できないビートで表現している。遊び心のある歌詞、キャッチーなフック、そしてアンセミックなコーラスが特徴。ドラマ仕立てのミュージックビデオは下記よりご覧ください。

 

ジーナ・ゾーは、フィラデルフィア郊外出身で、現在はLAで活躍するパワフルなヴォーカリストである。

 

2023年のアンセム「Faking It」でバイセクシュアルであることを大胆に宣言したジーナは、個人的な旅をLGBTQIA+コミュニティのための力強い物語へと変貌させ、真のアイデンティティとは型にはまったものに対する反抗の一形態であること、そして自分が本当に所属している場所とは共に走る仲間であることを証明した。

 

彼女の旅は、チーム・ブレイクのメンバーとして『ザ・ヴォイス』に出演したことでさらに形づくられた。グウェン・ステファニーの指導により、彼女は自分自身の中にあるユニークな真正性を発見する。



ノラ・ジョーンズのソウルフルな系統からスティーヴィー・ニックスの神秘的な魅力に至るまで、彼女が影響を受けた音楽は、若い頃から彼女の芸術性を形作った。彼女の青春時代、祖父母との家族のひとときは、懐中電灯をストロボライトにして踊り、その場しのぎのマイクに向かって歌うことに費やされ、後に彼女のキャリアに火をつける情熱の基礎を築いた。ジーナの活動初期は、自家製ビデオや即興パフォーマンスの渦中にあり、彼女の不屈の精神の証でもあった。


2024年にリリースされたヴェルヴェット・ルージュのデビューEPは、ジーナの魂を貫く直感的な旅である。「Lonely Since The Day We Met」の、愛したことのない人と一緒にいるという胸に迫る真実から、「I Don't Know Why」の、自分が何者なのか、何になるべきなのかわからないという深い葛藤にいたるまで、このEPは生々しく、率直な感情で共鳴している。尊敬するブライアン・マクティアーとエイミー・モリッシー(ザ・ウォー・オン・ドラッグス、ドクター・ドッグ、シャロン・ヴァン・エッテン)がプロデュースしたこのEPは、2000年代初期のロックと90年代の硬質なエッセンスを取り入れ、自分探しの葛藤と勝利のサウンドトラックとなっている。



ジーナの業界への復帰は、単なるカムバックではなく、革命だった。ヴェルヴェット・ルージュで、彼女は音楽界の女性が直面する制度的障壁に立ち向かう先頭に立ち、ステージ上でも舞台裏でも変化を提唱している。ローレン・シューラーがデザインした2023年のグラミー賞のドレスは、エレガンスと反骨精神の融合を体現し、ファッションを超越したステートメントとなった。



2022年末にフィリーのベスト・ロック・バンドに選ばれ、フィリー・スタイル・マガジンで「フィリーで最もホットなロック・バンド」として賞賛されたヴェルヴェット・ルージュの影響力は否定できない。


XPoNential Fest、MusikFest、Beardfestなどのフェスティバルでのパワフルなパフォーマンス、NPRのNational Public Radio DayやWXPNのFree At Noonでの特集は、ロック・ジャンルの先駆者としての彼らの役割を示している。



ジーナ・ゾーは、グラミー賞受賞プロデューサーのジャスティン・ミラー(ジャズミン・サリヴァン、ザック・ブライアン)とティム・ソネフェルド(アッシャー)を迎え、夢は現実よりも素晴らしいというロック・ポップ・バラード「Dirty Habits」をデビュー・レコードとファースト・シングルとして発表した。彼女は、愛、アイデンティティ、忍耐という生の真実をさらに深く掘り下げている。

 

LAに住む彼女は、一から料理を作り、シルバーレイク貯水池を散歩し、殺人小説に没頭することに癒しを見出している。(元彼を殺そうと企んでいるというわけではないことを約束しよう)

 

ジーナ・ゾーにとって、音楽はキャリア以上の存在である。若い女性たちが本当の自分を受け入れ、アイデンティティ、セクシュアリティ、キャリアにおいて自分たちを閉じ込めようとする型にはまることを拒絶するよう鼓舞するプラットフォームである。大胆不敵な芸術性と不屈の精神を通して、ジーナ・ゾーは、ルールを塗り替え、ポップ・ロック界の革命をリードしていく。

 

 

 



 

 

・Gina Zo: A Fearless Symphony of Identity, Rebellion, and Empowerment

 

Gina Zo, a powerhouse vocalist hailing from the suburbs of Philadelphia and now making waves in LA, is not just a rock-pop singer-songwriter—she’s a beacon of authenticity and empowerment within every performance, song, and beat. With her bisexuality boldly declared in her 2023 anthem “Faking It,” Gina has transformed her personal journey into a powerful narrative for the LGBTQIA+ community, proving that true identity is a form of rebellion against conformity and that the tribe you ride with is where you truly belong. 

 

Her journey was further shaped by her time on The Voice as a member of Team Blake, where Gwen Stefani's mentorship led her to discover a unique authenticity within herself—so profound that it brought her to tears after their first meeting, as Stefani challenged her to be more genuine.



Her musical influences, from the soulful strains of Norah Jones to the mystical allure of Stevie Nicks, shaped her artistry from a young age. Family moments with her grandparents in her youth were spent dancing with flashlights as strobe lights and singing into makeshift microphones laid the foundation for a passion that would later ignite her career. Gina’s early days were a whirlwind of homemade videos and impromptu performances, a testament to her unyielding spirit.



At just 18, Gina signed with an indie label in Philadelphia, where she soon faced the harsh realities of the music industry. Disillusioned by its darker side, she stepped away, only to feel an undeniable pull back to her true calling after a breakup that left her reaching for her lost identity. Reuniting with her original band, she forged Velvet Rouge, a rock band that embodies defiance and the pursuit of artistic freedom.

Velvet Rouge’s debut EP, released in 2024, is a visceral journey through Gina’s soul. From the haunting truth of being with someone you never loved in “Lonely Since The Day We Met” to the deep conflict of not knowing who you are or what you should be in  “I Don’t Know Why,” the EP resonates with raw, unapologetic emotion. 

 

Produced by the esteemed Brian McTear and Amy Morrissey (The War on Drugs, Dr. Dog, Sharon Van Etten), it channels the gritty essence of early 2000s rock and ‘90s grit, offering a soundtrack to the struggles and triumphs of self-discovery.



Gina's return to the industry was not just a comeback but a revolution. With Velvet Rouge, she’s leading a charge against the systemic barriers faced by women in music, advocating for change both on stage and behind the scenes. Gina’s focus is to champion young artists in all mediums: her 2023 Grammy dress, designed by Lauren Schuler, embodied her fusion of elegance and rebellious spirit, making a statement that transcends fashion. 



Honored as Best Rock Band in Philly in late 2022 and celebrated in Philly Style Magazine as "Philly's Hottest Rock Band," Velvet Rouge’s impact is undeniable. Their powerful performances at festivals such as XPoNential Fest, MusikFest, and Beardfest; along with features on NPR’s National Public Radio Day and WXPN’s Free At Noon showcase their role as trailblazers in the rock genre.


Gina Zo has unveiled her debut record and first single, "Dirty Habits", a rock-pop ballad all about how our dreams are better than reality, with Grammy-winning producers Justin Miller (Jazmine Sullivan and Zach Bryan) and Tim Sonnefeld (Usher). She has delved even deeper into the raw truths of love, identity, and perseverance. 

 

Living in LA, she finds solace in cooking from scratch, strolling around Silver Lake Reservoir, and immersing herself in murder novels (she promises she is not plotting to kill an ex). For Gina Zo, music is more than a career—it’s a platform to inspire young women to embrace their true selves and to reject any mold that seeks to confine them in their identity, sexuality, and career. Through her fearless artistry and unbreakable spirit, Gina Zo is rewriting the rules and leading a revolution in the world of pop-rock music. 



©︎Phoebe Fox

 

22歳のイギリス系インドネシア人アーティスト、Nadia Kadek(ナディア・カデック)を紹介しよう。

 

ミニマルなアルト・ポップとシンガー・ソングライターの感性を融合させた刺激的なサウンドは、現代音楽における魅力的な新しいヴォイスの登場を予感させる。 暖かく、豊かな質感を持つヴォーカルで、内省的なパワーを放つカデック。峻烈でありながら深い感情を揺さぶる曲を作り上げる。 


彼女のデビューシングル「Feeling It All」は力強いファースト・ステートメント。生のアコースティック・トーンと淡々としたリリックに支えられ、リスナーを静かな激しさと親密な語り口の世界へと引き込む。



今日のシングル・リリースについて、ナディアは次のように語っている。

 

『フィーリング・イット・オール』を書くことで、大人になることの現実味を処理し、子供の頃の理想主義的な期待を手放し、そもそもそれを抱いていた自分を許すことができた。


この曲を書き始めた翌日、親しい友人でコラボレーターのマット・イングラムが、一緒にこの曲を完成させるべきだと説得してくれた。 この曲は後でテープに録音したんだけど、とても親密で正直な演奏が撮れたの。


ノーフォークの静かな田園地帯で育ったナディアは、自分自身を "フェスティバル・ベイビー "だと言ってのける。フローレンス+ザ・マシーン、ジェフ・バックリーなどのサウンドトラックを聴きながら、キャンプ場までの長い車中泊の旅の中で、初期の音楽的記憶を形成していった。 


フェスティバルを楽しむ仲間たちの肩の上でヒーローを見守り、グラストンベリー2024の''エマージング・タレント・コンペティション''で準優勝し演奏するまでになった彼女の物語は、すでに一周した瞬間と静かな並外れた決意を示唆する。


現在、ロンドンを拠点に活動するカデックは、ライブ・パフォーマンスの力で着実に熱狂的なファンを増やしている。 


生の才能と粘り強さを見せつけるセルフ・ブッキング・ライブの後、カデックは、今日最も尊敬され、境界を押し広げるアーティストを育てることで有名なレーベル、Transgressive Recordsの目に留まった。


ナディアは最近、ザ・グレート・エスケープで2セットを演奏し、ロンドンのカムデン・アッセンブリーではコーデリアをサポートした。


今後、グラストンベリー、BSTハイド・パーク、ラティテュード、ピッチフォーク・フェスティバルへの出演が決定した。 2025年ブレイク必須のシンガー。今後のライブ日程は以下の通りです。



Nadia Kadek Tour Date: 

 

29th May - Green Room @ 21 Soho, London

18th June - Fresh Blooms @ Folklore, London

29th June - Glastonbury Festival

28th June - BST Hyde Park (Zach Bryan support)

26th July - Latitude Festival

8th November - Pitchfork Festival, London

 


「Feeling It All」は、ノスタルジア、傷ついた家族の絆、つかの間のロマンス、そして赦しの静かな回復力をナビゲートする、夏の終わりのほろ苦い輝きの中にあるコレクションである。 彼女のリリシズムは、エイドリアン・レンカーやリジー・マカルパインのようなアーティストの感情的な明晰さを思い起こさせる。

 

 

「Feeling It All」



Nadia Kadek: 「Feeling It All」- New Single

 

▪Listen/Stream: https://transgressive.lnk.to/feelingitall




Introducing Nadia Kadek, a 22-year-old British-Indonesian artist whose evocative blend of minimalist alt-pop and singer-songwriter sensitivity signals a compelling new voice in contemporary music. With a warm, richly textured vocal presence that channels introspective power, Kadek crafts songs that are both stark and deeply emotive. 


Her debut single, ‘Feeling It All’ is a powerful first statement - anchored in raw acoustic tones and unflinching lyricism, it draws listeners into a world of quiet intensity and intimate storytelling.

 

Speaking about today’s single release, Nadia shares “Writing ‘Feeling It All’ helped me process the realism of growing up, letting go of the idealistic expectations of childhood and forgiving yourself for having them in the first place.''


''The day after I started writing the song, my close friend and collaborator, Matt Ingram, convinced me we should finish it together and I feel like that process really put me on the path to finding my other songs. I recorded it to tape later on and that captured a very intimate and honest performance.”

 

Raised in the quiet countryside of Norfolk, Nadia describes herself as a “festival baby,” with early musical memories formed on long car journeys to campsites, soundtracked by the likes of Florence + The Machine and Jeff Buckley. 


From watching her heroes on the shoulders of fellow festival-goers, to playing Glastonbury 2024 after placing runner up in their Emerging Talent Competition, her story is already one of full-circle moments and quietly extraordinary determination.

 

Now based in London, Kadek has steadily built a devoted following through the power of her live performances. After a string of self-booked live shows that showcased both her raw talent and tenacity, Kadek caught the attention of Transgressive Records, a label renowned for nurturing some of the most respected and boundary-pushing artists of today.

 



トム・ヨークは、Smile、Radioheadの他、近年、映像音楽へと仕事の幅を広げている。新曲「Dialing In」が公開された。この曲は、Apple TV+で放送予定のシリーズ『Smoke』のオープニングテーマ。ドラマのオープニングに相応しい、あるいは少し勿体ないスケールの大きな音楽だ。

 

「トム・ヨークとの仕事は、クリント・イーストウッドやマーティン・スコセッシ、リチャード・プライスとの仕事と同じくらい光栄なことだった」と映画のプロデューサーを務めたDenis Lehaneはプレスリリースを通じて述べている。

 

「私自身のクリエイティブな人生に形成的な影響を与えた生ける伝説とのコラボレーションは、どういうわけか恵まれている。 トムは間違いなくそうなんだ。 さらに、彼は私が与えた基本的なコンセプトを完璧に具現化し、このショーに絶対的な衝撃を与える曲を届けてくれました」


『Smoke』は6月27日にApple TV+を通じて全世界で配信されます。



「Dialing In」

 


ロンドンを拠点に活動する8人組、Carolineが、ニューアルバム『Caroline 2』の最後のプレビューとして、「Coldplay Cover」を公開した。ミュージックビデオもユニークで、メンバーが自主的なバレエを披露している。

 

クワイアのような精妙な雰囲気を持つコーラス、ブズーキのような民族的な弦楽器が蠱惑的なカウンターポイントを描く。

 

「この曲は、私たちの経験を構成する、一見不一致で不協和音に見える多くの事柄について歌っている。 この場合、ロンドン南東部にある同じ家のキッチンとリビングルームで、2つの異なる曲が同時に演奏されている。 マイクは2つの部屋を行き来する」とジャスパー・ルウェリンは言う。


「部屋の中の部屋。 世界の中の世界。 このビデオは、「コールドプレイのカバー "の空間的なポリフォニーを純粋に視覚的な形に変換する試み。 多くの友人と寛大な協力者の助けを借りて、1日で制作しました」

 

「特にエリー・ウィンターには、彼女のデザイン・ビジョンと、このビデオを実現させるための素晴らしいハードワーク、サム・ドンヴィートには、dopとしてとてもオープンマインドな姿勢、サマラ・ランガムには、ビデオ1本分のダンスとムーブメントをその場で振り付け、そして素晴らしいパフォーマーたちには、ビデオに命を吹き込んでもらいました。 最後に、快く迎えてくださり、美しい部屋を貸してくださいました」


Carolineのセカンドアルバム『キャロライン2』は5月30日にラフ・トレードからリリースされる。


「Coldplay Cover」





イギリスのインディーロックバンド、Bleach Labは、新作EPの3枚目となるニューシングル 「Close To The Flame」をリリースした。この曲は7月18日に発売されるEPのタイトル曲だ。ドリーム・ポップとシューゲイズの中間にあるギターサウンド、そしてカイルの切ないボーカルが特徴だ。

 

このニューシングルについて、フロントウーマンのジェナ・カイルは次のように語っている。 Close To The Flame "の歌詞とメロディを書くとき、スローダイヴやマイ・ブラッディ・バレンタインといったバンドに強くインスパイアされた」

 

「この曲は、青春ロマンス映画のラストシーンのように、真夜中に知っていることを、すべて捨てていくような感じにしたかったの。この曲は、誰かに夢中になるあまり、その人と一体化してその人になりたくなるような、すべてを飲み込んでしまうような関係について歌っている」

 


「Close To The Flame」


モントリオールのTOPSがニューアルバム『Bury the Key』をGhostlyから8月22日にリリースすると発表した。同レーベルからのリリースは5年ぶりとなる。彼ら自身がプロデュースした。


このアルバムには、最近のシングル「ICU2」が収録されており、新曲「Chlorine」は、メロドラマと威勢の良さが同居するドリーミーなミッドテンポのロック・ソング(このバンドが得意とする曲)である。

 

「一時期、私はバーへ出かけては、自分とは相性が良くないが、たまらなく惹かれる特定の人物とすれ違うことを願うサイクルに陥っていた」とシンガーのジェーン・ペニーは言う。

 

「私が育ったアルバータ州エドモントンはとても寒く、冬にはよくプールに行った。友人たちとバーに行ってお酒を飲むようになったのもエドモントンだった。アルコールと塩素が毒であることを考え、親しくなろうとした人たちが結局は自分にとって悪い人たちだったことを考え、今でもその人たちを愛していることを考え、「Chlorine」という曲を書いたんだ」。ビデオは以下から見ることができる。



「Chlorine」

 

 

 

TOPS  『Bury The Key』


Label: Ghostly International

Release: 2025年8月22日

 

Trackist:

 

1. Stars Come After You

2. Wheels at Night

3. ICU2

4. Outstanding in the Rain

5. Annihilation

6. Falling on my Sword

7. Call You Back

8. Chlorine

9. Mean Streak

10. Your Ride

11. Standing at the Edge of Fire

12. Paper House



TOPS(デヴィッド・キャリエール、ジェーン・ペニー、マルタ・チコイェヴィッチ、ライリー・フレック)は、即興性と深みを確実に織り交ぜた時代を超越した音楽を書く。


 2020年以来、新しいレーベル、ゴーストリー・インターナショナルからリリースされた初のフルアルバム『Bury the Key』は、モントリオールのバンドにとって魅惑的な再紹介となる。 このアルバムは、一度は封印された感情と向き合い、幸福、快楽主義、自己破壊の間のギブ・アンド・テイクに関与している。 


架空の人物が登場することも多いが、彼らの光り輝くグルーヴィーなセルフ・プロデュースの曲は、親密さ(バンド内外の両方)、有害な行動、薬物使用、終末的な恐怖といった個人的な観察から引き出されている。


 レコーディングが始まったとき、彼らは変化に気づき、冗談めかして「邪悪なTOPS」と呼ばれるようになった、とペニーは言う。


 「私たちはいつもソフトなバンドとか、カナダ的なナイーヴさとか親しみやすさみたいに見られているんだけど、自分たちを取り巻く世界と本当にチャンネルを合わせることに挑戦したんだ」  

 

迫り来る時代のレンズと、歳を重ねることで得られる明晰さを通して、TOPSは『Bury the Key』でより不吉なディスコの領域へと足を踏み入れ、ソフト・フォーカスのソフィスティ・ポップに研ぎ澄まされたエッジを与えている。

 Sports Team  『Boys These Days』

 

 

Label: Bright Antenna & Distiller

Release: 2025年5月23日

 

Listen/Stream

 

 

Review

 

イギリスの5人組ロックバンド、スポーツ・チームは前作でニューウェイブ/ポスト・パンク風の音楽アプローチをベースにしていたが、本作『Boys These Days』では大幅に作風を転じている。今作ではバブリーな音楽性を選び、ダンスポップ/ディスコポップ、ソフィスティポップ(AOR)、ローリング・ストーンズの『Tatto You』時代の80年代のロック、そしてソウルなど多角的な楽しさを織り込んでいる。スポーツ・チームの新しいフェーズが示された作品である。もちろん、5人組という分厚いメンバーがプロジェクトのために一丸となっているのも美点だ。

 

本作の冒頭を飾り、先行シングルとして公開された「I'm in Love(Subaru)」を聞くかぎり、最早スポーツチームに”ポスト・パンク”という常套句は通用しないことがわかる。ダンサンブルなポピュラーセンスを発揮し、サックスフォンの高らかな演奏を背景に、キーボード(ベン)、ドラム(グリーンウッド)、ベース(デュードニー)を中心に、重厚なバンドアンサンブルを構築し、アレックス・ライスのソウルフルでパワフルなボーカルがバンド全体をリードする。

 

楽曲全体のメロディアスな印象はもちろん、バンドアンサンブルのハーモニーが絶妙である。80年代のディスコ/ソウル、そしてソフィスティポップやヨットロック等を巧みに吸収し、親しみやすいポップソングに仕上げている。この曲に満ちわたる多幸感は、軽薄さで帳消しになることはない。バンドアンサンブルの集中力がこの曲を巧緻にリードし、そして、爽快感を維持させている。この曲でサビを中心に、バンドとしてのポップセンスをいかんなく発揮している。

 

前作『Gulp!』にも見いだせたスポーツチームの音楽的なユニークさは続く「Boys These Days』に受け継がれている。ポール・ウェラー/スタイル・カウンシル風のモッズ・サウンドを下地にして、スポーツ・チームらしいカラフルなダンスロックを展開する。シンセ、ボーカル、そして、弦楽器のアレンジが縦横無尽に駆けめぐり、見事なアンサンブルを構成している。 半音階ずつ下がる音階進行、それからブリット・ポップ風のゴージャスなアレンジが、この曲にエンターテイメント性を付与する。また、全体的なソングライティングの質の高さが傑出している。それを楽曲として再現させる演奏力をメンバーの全員が持ち合わせているのは言わずもがな。

 

 

このアルバムでは、副次的にソウル/R&Bの音楽テーマが追求されている。それはポップ、ロックを始めとする様々な形で出現する。「Moving Together」 はその象徴だろう。ジャクソン5やデ・ラ・ソウルのサンプリングのように始まり、ソウルミュージックの果てなき幻惑の底に誘う。その後、ロック調に変化し、ワイルドな質感を持つボーカルが全面に出てくる。続いて、硬質なギター、シンセの演奏が絡み合いながら、重層的なファンクロックが作り上げられる。


このアルバムでは歌いやすさが重視され、前作よりもはるかにサビの箇所のポピュラリティに焦点が置かれている。そして実際的に、英語の短いセンテンスとして聴くと、歌いやすく捉えやすい万国共通のサウンドが構築されていることがよくわかる。「Moving Together」のフレーズの部分で思わず口ずさみたくなるのはきっと私だけではないはずだ(実際に口ずさんだ)。この曲では、ボーカリストとしての表現力が前作よりも著しく成長したアレックス・ライスのボーカルが別人のように聞こえる。彼の声にはエナジー、パワー、そしてスピリットが宿っている。

 

 

こうした中で、ローリング・ストーンズの系譜にある曲が続いている。「Condensation」では、『Tatoo You』時代のダンスロックを受け継ぎ、バブリーな雰囲気、ブルース性、それからソウルからの影響を活かし、アグレッシヴな印象を持つロックソングを完成させている。ライブを意識した動きのあるナンバーとして楽しめる。何より前曲と合わせてR&Bからのリズムの引用や全体的なハーモニーが甲高いボーカルやストリングスのアレンジと絡み合い、独特な多幸感を生み出す。いや、多幸感というより、ロックソングの至福のひと時がこの曲には内包される。


こうした一般性やポピュラリティを維持した上で、ボブ・ディラン風のフォーク・ロックへと進む「Sensible」は、このアルバムの中で最も渋く、ペールエールのような味わい深さを持ちあわせている。ボウイ、ルー・リードのような硬いボーカルの節回しを受け継ぎ、新しいフォーク・ロックを追求している。しかし、相変わらずサビではきらびやかな雰囲気が色濃くなる。ソウルフルなライスの歌唱がバンド全体をリードし、フロントマンとしての圧倒的な才覚の片鱗を見せる。特に、2分すぎのコーラスは圧巻で、バンドの最もパワフルな瞬間を録音として収めている。この曲に充溢する抑えがたい若々しいエナジーはこのバンドの持つ最高の魅力だ。

 

『Boys These Days』の最大の魅力は、音楽的な寄り道をすことがあり、直線上には進まないことである。それは、スポーツ・チームの全体的な人生観のようなものを示しているとも言える。

 

「Planned Obsolescence」はアルトなフォークロックで、「Sweet Jane」や「Walk On Wildside」の系譜を受け継いでいる。曲の中での口笛も朗らかで和平的なイメージに縁取られている。音楽的には一つのリフレインをバンドサウンドの起点として、どのように変化していくのかをアンサンブルとして試しているように思えた。2分以降のアンセミックな雰囲気はその成果とも言えよう。


さらにスポーツ・チームの寄り道は続く。「Bang Bang Bang」ではロカビリー/パンカビリー風の渋いロックソングを書いている。カントリーをベースに旧来のエルヴィス風のロックンロールを結び付ける。最近のロックバンドには乏しいロールーーダンスの要素を付加している。同じように、「Head To Space」もカントリーを下地にしているが、決して古びた印象を与えない。ボーカルのソウルフルな歌唱がバンド全体をリードし、曲にフックを与えているのだ。

 

こうした中で、ストーン・ローゼズ、ヴァーヴの系譜に属するイギリス仕込みのダンスロックでこのアルバムは決定的になる。バンガー「I'm in Love(Subaru)」をしっかりと用意した上で、終盤にも「Bonnie」が収録されていることは、アルバム全体に安心感や安定感を及ぼす。これぞまさしく、スバル・ブランドならぬ、スポーツチーム・ブランドとも呼ぶべき卓越性。結局のところは、バンドの演奏力の全体的な底上げ、ソングライティングの向上、そして何より、ボーカルの技術の蓄積がこういった聴き応え十分の作品を生み出すことになった要因なのだろう。

 

ただ、それはおそらく最短距離では進まなかったのではないかと思える。だからこそ説得力がある。全体的にはバンドとしての楽しい瞬間が録音に刻みこまれ、それが全体的な印象をファニーにしている。たとえ、バラードを書いても、スポーツチームらしさが満載である。「Maybe When We're 30」は珍しくダブルボーカルの曲で、もうひとつの重要なハイライト曲。ライブのアンコールで演奏されるに相応しい、繊細さと力強さを兼ね備えた素晴らしいクローズで終わる。

 

 

 

85/100

 

 

 


 

Best Track- 「I'm in Love(Subaru)」

 

 

Wet Legは2ndアルバム『moisturizer』を7月11日にドミノからリリースする。昨日、セカンドシングル「CPR」のミュージックビデオが公開された。すでにライブロードで明らかになっていたが、このアルバムから正式にウェット・レッグはバンドセクションで作品をリリースする。


『moisturizer』は2022年のセルフタイトル・デビューアルバムに続くアルバムで、2022年のトップ100アルバムで1位を獲得し、バンドは3つのグラミー賞を受賞した。ウェット・レッグ』はUKの公式アルバム・チャートで1位を獲得し、アメリカではビルボード200アルバム・チャートで14位(ビルボード・アルバム・セール・チャートでは4位)を記録した。また、オーストラリアのアルバム・チャートでも1位を獲得した。

 

アルバムはマーキュリー賞にノミネートされた。バンドのデビューシングル「Chaise Longue」は、2021年のトップ130ソングスで1位となり、バイラルヒットとなった。


リアン・ティースデールとヘスター・チェンバースがウェット・レッグを率い、エリス・デュラン(ベース)、ヘンリー・ホームズ(ドラム)、ジョシュア・モバラキ(ギター、シンセ)がバックを務める。イギリスのワイト島出身のバンドは、今回もプロデューサーのダン・キャリーと仕事をし、5人のメンバー全員がこのLPに作曲で参加している。ウェット・レッグは、モイスチャライザーでライヴの強みを生かそうと決めた。「私たちはただ楽しんで、探求していた」

 

 

「CPR」




 

 

シアトルのアーティスト、Sea Lemonの新曲「Cynical」はポップで耳に残るアップビートな曲だ。シー・レモンはドリーム・ポップ風の音楽的なディレクションの中で、持ち前のファンシーなボーカルを活かしている。


何層にも重なったバッキング・ヴォーカルと並んで、ドライブ感のあるベースライン、そして、空気感のある彼女の声を遠くから支える雰囲気のあるギターワークがこの曲の印象を軽妙にしている。


彼女はこの曲について、「『Vaporized』という曲のように、私の以前の音楽と最もつながりがあるように感じる曲で、誰かが出て行くのを感じながら、ずっと関係の中にいるような感覚について歌っている」と語っている。


シーレモンは2025年5月30日にデビューアルバム『Diving For A Prize』をルミネール・レコーディングからリリースする。


「Cynical」