©︎Lisa Czech

ジェニー・オーウェン・ヤングスが、10年以上ぶりとなるスタジオ・アルバムを発表した。『Avalanche』はYep Roc Recordsより9月22日にリリースされる。このニュースを記念し、ヤングスはマディ・ディアスと共作したアルバムのタイトル曲を公開した。この曲は、アントラーズのピーター・シルバーマンをフィーチャーしたライブ・パフォーマンス・ビデオとともに収録されている。


「雪崩は極端な力であり、甚大な被害をもたらす可能性があり、それが終わった時、物事が以前とは違っていることを確信することができる。というのも、この曲の統一テーマは、私にとって、破壊から修復へ、痛みを乗り越えて可能性へと向かうというアイデアだから」


『Avalanche』は、プロデューサーのジョシュ・カウフマンと共にレコーディングされた。マディ・ディアスとピーター・シルバーマンに加え、クリスチャン・リー・ハトソンとウォークメンのマット・バリックのドラムが参加している。

 

「この音楽にはかなりの失恋と失望があるが、それは最終的には興奮と約束、恋に落ちて再び自分自身を見つけるという信じられないような計り知れない至福への道を与える」とヤングスは付け加えた。「これらの曲は、すべての感情のスペクトルを旅する」

 

 

 「Avalanche」

 


今年初め、ヤングスは『from the forest floor』というタイトルのアンビエント・レコードをリリースした。


Jenny Owen Youngs 『
Avalanche』


Label: Yep Roc Records

Release: 2023/9/22

 

Tracklist:

 
1. Avalanche


2. Knife Went In


3. Goldenrod


4. Everglades


5. Bury Me Slowly


6. Next Time Around


7. It’s Later Than You Think


8. Salt


9. Set It On Fire


10. Now Comes the Mystery

 


ジェイムス・ブレイクは、2021年の『Friends That Break Your Heart』に続く作品を発表した。タイトルは『Playing Robots Into Heaven』で、Republicから9月8日にリリースされる。

 

プレスリリースによると、この新譜はジェームスが自身の実験的なエレクトロニック・ミュージックのルーツに立ち返った作品だという。本日発表されたリード・シングル「Big Hammer」と合わせてオスカー・ハドソンが監督したビデオも公開されている。


ブレイクは最近、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のサウンドトラックでメトロ・ブーミンとタッグを組んだ。また、キラー・マイクのアンドレ3000とフューチャーのコラボ曲「Scientists & Engineers」も共同プロデュースしている。


「Big Hammer」


James Blakeは8月16日に単独来日公演を大阪で行います。公演はZepp Osaka Baysideにて開催されます。詳細はクリエイティヴマン公式サイトよりご確認下さい。

 

 

James Blake 『
Playing Robots Into Heaven』


Label: Republic
Release: 2023/9/8
 
Tracklist:
 
1. Asking to Break

2. Loading

3. Tell Me

4. Fall Back

5. He’s Been Wonderful

6. Big Hammer

7. I Want You to Know

8. Night Sky

9. Fire the Editor

10. If You Can Hear Me

11. Playing Robots Into Heaven


 

©Eimear Lynch

フォンテーヌD.C.のグリアン・チャッテンはソロ・デビュー・アルバム『Chaos For The Fly』の最終シングル「All The People」をリリースした。

 

先行カット「Last Time Every Time Forever」、「The Score」、「Fairlies」に続くこの曲は、フォンテーヌD.C.の「I Love You」と「Roman Holiday」のビデオを手がけたサム・テイラーが監督したビデオ付きで発売されています。

 

「"All Of The People "は、すべてが青く、誰もが嘘つきであるような、硬い襟と砥石を握るような手つきで書かれている。"それは世界中を引っ掻き回したチョークの線だ」

 

テイラーはビデオについてこう付け加えた。 「ラース・フォン・トリアー、ジョージ・オーウェル、ビリー・ワイルダーからインスピレーションを得たこの映画は、孤独、自信喪失、そして受容、感謝、人間同士のつながりを分析している。幸せな涙、悲しい涙を流してもらえると嬉しいです。


「All The People」

 

©︎Jesse Crankston

ロンドンのシンガーソングライター、サンファが6年以上ぶりとなるソロ・シングルをリリースした。「Spirit 2.0」は、Yussef Dayes、El Guincho、Owen Palletが参加し、YaejiとIbeyiのLisa-Kaindé Diazがヴォーカルをとっている。


「この曲は、自分自身と他者とのつながりの大切さ、そしてただ存在することの美しさと厳しい現実について歌っている」とサンファはプレスリリースで語っている。「助けを必要とする瞬間、それは本当の強さを必要とする。たとえその人が答えを持っていなくても、誰かがそばにいてくれるような感覚を楽しんでほしい。考えすぎずに誰かを呼び出すこと......手放しでただ踊ること......物事の平凡さを通り越して、鳥の巣から宇宙船まで、すべての魔法に感謝したいんだ」


サンファのデビュー・アルバム『Process』は2017年にリリースされた。Spirit 2.0」は、ケンドリック・ラマーの『Mr.Morale & The Big Steppers』(「Father Time」)、SBTRKTの『The Rat Road』(「L.F.O.」)、ストームジーの『This Is What I Mean』(「Sampha's Plea」)に続く作品だ。


 

©Shawn Brackbill


スウィーピング・プロミス(Sweeping Promises)は、今週金曜日(6月30日)にリリースされるアルバムからのタイトル曲「Good Living Is Coming for You」のビデオを公開した。この曲は前作「Eraser」と「You Shatter」に続く。ジェシカ・バーズリー監督による映像は以下より。


"このビデオのために、私たちは私たちの最も親しい友人の一人である実験的な映画監督のジェシカ・バーズリー(『Life Without Dreams』、『Goodbye Thelma』)とコラボレーションしました。

 

70年代と80年代のホラー映画(『闇の娘たち』、『ハンガー』、『白ミミズの隠れ家』、『ドリームデーモン』)の華やかで血に飢えた美学からインスピレーションを得た『グッド・リヴィング・イズ・カミング・フォー・ユー』のビジュアル・コンパニオンは、この曲の揺るぎない不満と迫り来る家庭の破滅の感情を、深夜のケーブルテレビで名もなき眠れない魂が見たDIYホラー映画の枠の中で表現している。

 

 「Good Living Is Coming for You」

Geese 『3D Country』 

 


 

Label: Partisan/ PIAS

Release: 2023/6/26


Review

 

Geeseは、ニューヨークの(正真正銘の)ベースメントから登場したロックバンドであり、なぜ、ベースメントと称する必要があるのかといえば、彼らが実際に地下室でハイスクール時代にセッションを重ねながら登場したコアなバンドだからである。彼らが放課後にスタジオ代わりにしていたその地下室には、安っぽいアンプが置かれており、ベースメント・セッションをデビュー時に重ねていた。バンドはライブで結構適当な演奏をすることがあるが、実際、ドラムがハイレベルであるため、それほど適当には見えない。どころか、結構すごそうなバンドに見えてくる場合もある。このバンドの屋台骨を支えているのは、間違いなくドラムとベースなのである。

 

ファースト・アルバム『Projector』では、「Rain Dance」を見ても分かる通り、捉え方によってはニューウェイブ/ポスト・パンクに近い先鋭的なロックを引っ提げて登場しギースであったが、2ndアルバムでは、それらの固定観念を通して見ることはあまり理にかなっていない。彼らは、それほどひとつのサウンドスタイルにこだわることなく、まったく違う音楽性へと歩みを進めている。2ndアルバムでは、少なくとも、ファンカデリックの影響が公言されていることからも分かる通り、デビュー時とは別のバンドのバックグランドを伺うことが出来るはずである。というのも、結成時にティーンネイジャーで構成されていたギースは意外にも現代のロックをそれほど多くは聴かず、Led ZepplinやRolling Stonesといった60/70'sのヴィンテージ・ロックを好んで聴いて育ったというのだ。これはちょっと気取ったビンテージ・ファッションにハマるファッション好きの人や、ヴィンテージ・バイクの沼にハマる人を見てみれば、その気持がよく分かると思う。自分が生まれる以前のカルチャーには、自分の生きてきた年月以上の歴史があるわけだから、そこには底しれぬロマンチシズムが存在しているのは当然のことなのだ。

 

2ndアルバムでは、砂漠、カウボーイハット、反転、青空という複数のイメージが実際の音楽性に分かちがたく結びついている。アルバムには、ウェスタン/カントリーの音楽とローリング・ストーンズの「Exile on the Street」の時代のシャッフルを用いたブギーに対する強烈なこだわりが見え隠れする。今回のアルバムでは、その古いものに対するこだわりは、乾いた感じのロックンロール/サザンロックという形で展開されている、しかし、拘りこそあるにせよ、それは呪縛とはなっていない。むしろ、前作の呪縛から解き放たれるため、2作目の制作に取り組む必要があったと言える。実際、本作はバンドの最初のイメージを払拭し、晴れ渡った青空のような清々しさに加え、ワイルドさがほんのり漂っている。これからの季節に相応しいような痛快なロックソングが満載で、夏休みのドライブには必携すべきアイテムの一つとなるだろう。

 

アルバムの冒頭を飾る「2122」は、彼ららしい煙に巻くようなロックソングが全開である。それは、モノマネのロックバンドとしての極致が見出されるとも言って良い。妙にソウルを意識したモコモコしたヴォーカルは、サザン・ロックやローリング・ストーンズの中期のようでもあるし、またピクシーズの最初期のブラック・フランスのように多少投げやりな感もある。としても、バンドサウンドとしてはタイトにまとまっている。ボーカルの声色はころころと変わり、最初はファンカデリックかストーンズなのだが、途中からオールマン・ブラザーズのようになる。もっといえば、ギターサウンドは、ジョニー・ウィンターのような渋さもある。この「七変化」とも言うべき変わり身の早さは、真面目なリスナーを呆れさせるような代物で、ほとんど奇妙にも思え、シュールな笑いすら誘うものがある。そして、ふざけているのか、真面目なのかわからなくなるのが、このギースというバンドの核心でありモットーでもある。リスナーはアルバムの冒頭では多少、肩透かしを食らったような感覚に陥るものと思われる。それは好意的に見れば、その場の面白い瞬間をスタジオに持ち込もうというのが彼らの流儀なのだ。

 

多少そのイメージが掴みにくいオープナー曲に続いて、二曲目の「3D Country」では、さらにローリング・ストーンズの色が強くなる。彼らは歌詞を通じて、彼らのいる国家が仮想現実の中に取り込まれていることを暗示する。ゴスペル風の女性コーラスを交えたロックンロールは、全盛期のストーンズがよく好んで取り入れていたスタイルだが、彼らはそれを忠実に再現しようとしている。ボーカルは一曲目よりもさらにミック・ジャガーに似せて来ているこれは驚くべきことだ。ただ、コーラスワークとメインボーカルが合わさる瞬間、僅かな甘美的な雰囲気が漂う。オマージュに近い組み立てではあるのだが、その中にも聞きこませる何かが存在する。

 

前曲と同様に先行シングルとして公開された「Cowboy Nude」は、夏真っ盛りの清涼剤となるインディーロックソングで、ドライブ等の際にも最高の効果を発揮する一曲だ。反復的なリズムは同じNY出身のザ・ストロークスに近いものがあるが、サビではソウルフルなローリング・ストーンズ風の展開に繋がっていく。彼らは、「Let It Bleed」「Midnight Rambler」「Rock Off」といったストーンズの代表曲にモダンな感覚を加えている。中盤では、サイケ・ロックに近い遊びの部分を設け、セッションの醍醐味をレコーディングで体現しようとしている。それは「ライブ・セッションの延長線にある密かな愉楽」とも称するべきものなのかもしれない。

 

その後、ファンカデリックのようなファンク・ロックの面白みを再現した「I See Myself」、デビュー・アルバムに続き、トーキング・ヘッズのニューウェイブとサイケロックを融合させた「Undoer」では、先鋭的なロックバンドの気風も捉えることが出来る。特に、後者のトラックではサイケロックバンドとしてのセッションの刺激が刻み込まれている。これらのジミ・ヘンドリックスを彷彿とさせるファンクのリズムを取り入れたキワキワなロックは一聴する価値がある。

 

その後、彼らの気まぐれなサウンドは続き、「Crusades」ではストロークスのミニマルロックやガレージ・ロックの影響を加味し、Geeseという存在がNYのオルタナティヴの系譜にあることを宣言する。さらに続く「Gravity Blues」は、オールマン・ブラザーズ、クロスビー・スティルス・ナッシュ(&ヤング)のようなサザン・ロックを基調にした渋いブルース・ロックへ突き進み、バンドとしてのアイディアの潤沢さを示してみせている。そうかと思えば、次曲「Mysterious Love」では、70年代のハードロック・サウンドへ舞い戻り、ジミ・ヘンドリックスを彷彿とさせるギターラインに、スクリーモやメタルコアのようなシャウトを追加することを忘れていない。もはや、無節操とも言うべきこれらの楽曲を通じて、彼らはシームレスに70年代から00年代を縦横無尽にクロスオーバーし、リスナーに少なからずの驚きをもたらす。アルバムは最後に至っても、彼らの底しれぬロックへのこだわりが続き、モダンなインディー・ロック・ソング「Domoto」のあと、「Tomorrow's Crusades」では、カントリーやアメリカーナを巧みにブレンドしたクラシック・ロックに、少しバラードっぽい雰囲気を交えているが、曲の全体にはサイケロックの雰囲気が漂う。これらの気楽なムードをストリングスが強化している。

 

最後になっても、ボーカルの七変化はとどまることを知らない。ラップ・アーティストの力の抜けた歌い方をロックの側面から再解釈するスタイルで聞き手を唖然とさせる。やはり徹底して、悪ふざけのような印象を受けるが、本作では、バンドなりのユニークさが重要視されている。厳しい評価が目立つのは、Geeseがもはや、新人バンドとはみなされていないためなのか。それほどまでに老獪なロックンロールを体現した一作となっている。もし、このバンドのメンバーの誰かが有名なロック・ミュージシャンの生まれ変わりだったとしても、さして驚きはない‥‥‥。

 

 

77/100

 

 

「3D Country」

Local Native

「Paradise」は、フロントマンのケルシー・エアーの個人的な体験にインスパイアされた、痛みの中にある希望を弱々しく表現した曲だ。


この曲の背景について、ケルシーは次のように語っている。「私と妻は、ここ2、3年の間に子供を作ろうとして2度の喪失に苦しんだ。同時に、カリフォルニアは山火事に見舞われていた。世界がバラバラになっていくように感じた」


このシングルは、グラミー賞を受賞したジョン・コングルトン(エンジェル・オルセン、セント・ヴィンセント)、マイケル・ハリス(ラナ・デル・レイ、ファイスト)、ダニー・ライシュ(サン・ジュン、アザー・ライヴス)がプロデュースを担当したローカル・ネイティヴスの5枚目のアルバム『Time Will Wait for No One』の最新曲である。このアルバムは、2019年の「Violet Street」以来、バンドにとって初のレコードでもあり、人生の新たな局面を迎えることで生じる激動と変化を探求している。


このアルバムの発売を記念して、ローカル・ネイティヴスは南カリフォルニアのインディペンデント・レコード店を回る一連の親密なライヴの計画を発表した。


「Paradise」

ングルのリリースなどの活動予定。 

 

米国、カリフォルニア州・クパチーノ出身のラッパー/プロデューサーのJoe Cupertinoが新曲『IMM』を本日6/28にリリースします。


4ヶ月連続シングルリリースの第四弾である本楽曲は、Joe Cupertinoが前半部分のトラックのプロデュースを務め、後半部分はT-Razorによるものである。独創的で突発的なJoe Cupertinoの代名詞ともいえるビートスイッチも今作ではより自然で流動的に行われています。

 

普段のJoe Cupertinoの楽曲とはひと味違う、ダークでグルーミーなビートと詩で展開される本楽曲は、後半部分になるとどこか酩酊状態を彷彿とさせるビートに変わる。正気とそうじゃない状態を音楽を通して行き来できる様な楽曲になっている。




 

シングルのアートワークはJoe Cupertinoが以前より交流があるイギリス人アーティストのkingcon2k11(過去に、Hudson Mohawke{ハドソン・モホーク、Toro y Moi{トロイ・モア)などの作品を手がけている)、オーストラリア人アーティストのShell Lucky OceanとCUPETOWNメンバーであるShotaro Shinozakiが合作したものである。今後は4ヶ月に及ぶ連続シングルのリリースを予定しています。

 

 

Joe Cupertino 「IMM」 New Single

 

Label:  Decide Today Regret Tomorrow

Release: 2023/6/28


Tracklist:

1.IMM


Download/Streaming:

 

https://linkco.re/SrARUx6f

 

 

©Alexa Viscius


Will Butler & Sister Square{ウィル・バトラー & スクエア・シスターズ)は、セルフタイトルのニュー・アルバムを発表した。この新作は9月22日にMergeから発売される。

 

2020年の『Generations』に続くアルバムには、先にリリースされたトラック「Willows」とニュー・シングル「Long Grass」が収録されている。

 

ジュリー・ショア、ジェニー・ショア、サラ・ドブス、マイルズ・フランシスからなるSister Swuaresは、10年近くバトラーと共にツアーやレコーディングを行なってきた。「ジェニー・ショア(僕の妻)とは、僕がアーケイド・ファイアに入る前年に大学で出会ったんだ。私がポリシーのツアーをするバンドが必要だった時、(ジェニーの妹の)ジュリーを誘った。そして、ジェニーとジュリーの幼なじみであるサラにも声をかけたんだ。Generationsの後、私は奇妙なソロ・アルバムを作ることを考えた。地下室で私一人で、とか。たいていの場合、僕が望んでいたのは、その反対だった」

 

「Long Grass」

 


マイルズ・フランシスは次のようにコメントした。

 

「ウィルと私は、このアルバムの制作を通して、プロダクション・デュオとしての関係を有機的に発見した。ウィルと私は、このアルバムの制作を通して、プロデュース・デュオとしての関係を有機的に発見した。プロデューサーとして、ジェニー、ジュリー、サラと仕事をするのは夢だ。彼らは生得的につながっている。動きひとつでムードを作り出したり、フィーリングの根源に迫ったりすることができるんだ」


ウィル・バトラーはプレスリリースの中で、アーケイド・ファイアからの脱退は「人生で最も複雑な決断だったかもしれない」とも語っている。

 

「それまでの2年間、私は3人の子供たちと家で過ごしていた。私はそのころ、39歳だった。毎朝起きて、エミリー・ディキンソンの詩を全部読むまで読んでいた。モリッシーやショスタコーヴィチ、スポティファイのトップ50を聴いていた。答えのない、形のない疑問を抱いていた。でも、正直なところ、私はこのレコードについて素晴らしいと感じていた」


このアルバムのリード・シングルについて、彼は付け加えた。「第二次世界大戦中のキルギスの小さな町での子供時代を振り返るアーティストの話だよ。愛について、芸術家になることについて、憂鬱について、そして一本の線路が走る広大な風景について書かれている。そしてこの曲は、線路の下を不機嫌にさまよい歩く、若い大人になってからのことを思い出させた。この曲は、私たちを形成したものを捨て去り、かつての世界を思い出そうとすることを歌っているのかもしれないね」




『Will Butler + Sister Squares』


Label: Merge

Release: 2023/9/22

Tracklist:


1. Open


2. Stop Talking


3. Willows


4. Long Grass


5. Me & My Friends


6. Saturday Night


7. Car Crash


8. Sunlight


9. Arrow of Time


10. I Am Standing in a Room


11. Good Friday, 1613


12. Old Year


13. Hee Loop


14. The Window

 


ブルー・ブロデリック擁するDinersは最新作『Domino』のリリースを発表しました。このアルバムでは、ポートランドのパワー・ポップ・マエストロ、モー・トルーパーをプロデュースに迎えた。



 

結果、Big Starのような伝播力のあるコアや、2ndグレード、リキッド・マイク、モー・トルーパーの作品のようなファジーなニュアンスが反映された。しかし、ブロデリックの楽観的なソングライティングとヴィンテージなメロディズムの耳は健在で、このアルバムはダイナースにとって自然な進歩であるように感じられる。


『Domino』は8月18日にBar/Noneからリリースされる。ブロデリックは先月、このアルバムのリード・シングル 「The Power」を発表したが、本日、アルバムのタイトル・トラック を公開した。

 

「Domino」




ブロデリックはこの曲について、「"Domino"は、誰もが自分にふさわしいと思う以上の優しさと信用を与えることを思い出させる、ジャラジャラとした内省的なロックだ。この曲はエミット・ローズに深くインスパイアされたもので、レコードの中で一番好きなギター・ソロがある」



Diners 『Domino』

 

Label: Bar/None

Release: 2023/8/18

 

Tracklist:



1. 
Working On My Dreams 





2. 
Domino 





3. 
So What 





4. 
Someday I'll Go Surfing 





5. 
The Power 





6. 
Painted Pictures 





7. 
I Don't Think About You The Way I Used To

 


8. 
From My Pillow 





9. 
Your Eyes Look Like Christmas 





10. 
Wisdom 



 

©Aaron Jones

デトロイトのハードコアバンド、The Armed(ザ・アームド)が次のアルバムのニュースを携えて戻ってきた。『Perfect Saviors』は8月25日にSargent Houseからリリースされる。

 

2021年の『ULTRAPOP』に続くこのアルバムは、ジュリアン・ベイカーのヴォーカルをフィーチャーしたシングル「Sport of Form」を筆頭に、イギー・ポップが神に扮したビデオが収録されている。ザ・アームドのトニー・ウォルスキーは、ベン・チショルムとトロイ・ヴァン・ルーウェンと共にこの新作をプロデュースし、アラン・モルダーがミキシングを担当した。

 

『Perfect Saviors』について、アームドは声明でこう語っている。


「あまりにも多くの情報が私たちを愚かにし、混乱させている。つながる方法が多すぎて、不注意にも孤立してしまった。期待されすぎて、誰もが有名人にならざるを得なくなった。予測可能な原始的な危険は、より新しい社会的な危険に道を譲った。その結果、混乱と恐怖に満ちた、しかし究極的には美しい世界が生まれた。私たちは、このレコードがまさにそのすべてでもあることを願っている。Perfect Saviors』は、21世紀最大の偉大なロック・アルバムを作ろうとする、まったく皮肉を感じさせない真摯な取り組みなのだ」

 

 「Sport of Form」

 

 

「Sport of Form」について、トニー・ウォルスキーは次のように語っている。


「スポーツには2つのタイプがある。バスケットボール、フットボール、サッカーのような計量のスポーツには、ポイント制があり、勝利への二元的な道筋がある。形のスポーツとは、ダイビングやフィギュアスケート、ボディビルのようなもので、進化する基準と主観性の層、そしてある種の重要な要素を持つものである」


「私たちを取り囲む世界は複雑で、私たちの生活はまさに、物差しよりも形のスポーツに近い。しかし、多くの人々はそれを正反対のものとして捉えている。この曲の歌詞は、実際にプレーしているわけでもないゲームに勝ちたいという人間の欲求について歌っている。音的には、美と醜さ、厳しさと優しさ、猥雑さと優美さの間の絶え間ないむち打ちによって、その認知的不協和音の反映となっている」



Armed 『Perfect Saviors』



Label: Sargent House

Release: 2023/8/25 


Tracklist:


1. Sport of Measure


2. FKA World


3. Clone


4. Modern Vanity


5. Everything’s Glitter


6. Burned Mind


7. Sport of Form

8.Patient Mind


9. Vatican Under Construction


10. Liar 2
11. In Heaven


12. Public Grieving

 

Blonde Redhead

先月、カズ・マキノ擁するBlonde Redheadは8年ぶりとなるニューアルバム『Sit Down For Dinner』を9月末にリリースすると発表した。その際、リード・シングル 「Snowman」を発表したが、続いて、ドリーミーな「Melody Experiment」を公開している。

 

「この曲は、2人の人間の会話形式の作品です」とボーカリストのカズ・マキノは声明を通じて説明している。「一人は、自分の感情や行動の意図、誠実さ、結果について疑問を抱いている。彼女はすごく過敏になっている。もうひとりは物事をシンプルに考え、流れに身を任せているんだ。音楽的には、自分自身にとって極めて真実で自然なものを見つけることができました」


「Melody Experiment」

 

©Silvia Grav


ロサンゼルス経由オークランド在住のシンガー・ソングライター、カーリー・ボンド率いるプロジェクト、Meernaaがニュー・アルバム『So Far So Good』を発表した。10月6日にKeeled Scalesからリリースされる。

 

初期のシングル「On My Line」、「Another Dimension」、「I Believe In You」が収録されている。この発表を記念し、Meernaaは新曲「As Many Birds Flying」をSilvia Grav監督によるビジュアルと共に公開しました。以下よりチェックしてみてほしい。

 

「As Many Birds Flying」

 


Meernaa 『So Far So Good』

 

Label: Keeled Scales

Release: 2023/10/6

 

 Tracklist:

 
1. On My Line


2. Another Dimension


3. As Many Birds Flying


4. Mirror Heart


5. Black Eyed Susan


6. I Believe In You


7. Framed In A Different State


8. Bhuta Kala


9. So Far So Good


10. Love Is Good

©Sammy Sutter


京都出身で現在はシカゴを拠点に活動する日本人マルティメンタリスト、Sen Morimoto(森本仙)がCity Slangとの契約を発表し、新曲「If the Answer Isn't Love」をリリースしました。このニューシングルは、森本がNew Trashと共同で監督したビデオ付きでリリースされた。以下よりご覧ください。


この曲について、森本はプレスリリースで次のように述べています。「差し迫った気候災害、戦争、終わりのない病気に直面すると、何が残るのか、何がそのすべてを価値あるものにしたのかを考え始めるのは自然なことです」


「私の音楽のサウンドも、同じような緊急性を反映させたいのです。楽器の音はビートの上でゆれ、飛び散り、メロディーはもつれ、矛盾しています。この曲は、愛の不朽の力と、危機に陥ったときにその気持ちにしがみつくことの葛藤について書いたんだ」


2020年、森本は自身のレーベルSooper Recordsからセルフタイトルをリリースしました。





Sen Morimoto 『Diagnosis』 


Label: City Slang

Release: 2023/11/3

 

Tracklist:

 

1. If The Answer Isn’t Love


2. Bad State

3. St. Peter Blind


4. Diagnosis


5. Pressure On The Pulse


6. Naive


7. Feel Change


8. What You Say
9. Surrender


10. Deeper


11. Pain


12. Forsythia (レンギョウの旋律)


13. Reality

Interview

 

Satomimagae

©Kanako Sakamoto

 


  なるほど、”それなら曲を書こうとしちゃダメだ”と思い、ひとまず家中/家周辺の「気配」を感じる音をレコーダーに録り溜めました。 --Satomimagae



日本のエクスペリメンタル・フォーク・シーンで活躍するアーティスト、 Satomimageさんのインタビューを読者の皆様にお届けします。


2012年に初のアルバム「awa」を自主制作でリリース。2014年に、畠山地平が主宰するレーベル、White Paddy Mountainより2ndアルバム「Koko」をリリース後、2017年に同レーベルから3rdアルバム「Kemri」をリリースしました。2021年、ニューヨーク/ブルックリンのレーベル、”RVNG Intl. ”と契約を結び、4rdアルバム「Hanazono」が同レーベルとGuruguru Brainと共同でリリースされた。

 

今年に入って、同レーベルから『awa』の拡張版を発売しました。先日、福岡のアンビエント・プロデューサーとの共作アルバム『境界 Kyokai』を発売、ソーシャルを中心に話題を呼びました。

 

今回のインタビューはデビュー作から最新作、また、環境音をどのように制作の中に取り入れるようになったのか。網羅的にお話を伺うことができました。そのエピソードを読者の皆様にご紹介致します。



2月の発売日から少し時間経過していまいましたが、あらためて『Awa』のエクスパンデッド・バージョン(拡張版)の発売についてお伺いしたいと思います。

 

オリジナル盤のリリースから10周年{正確には11年)を記念して再発バージョンが、国内ではPlanchaより、海外では米国のRVNGより発売されました。どういった経緯で、このリイシューが決定したのか、その詳細についてお伺いしたいと思います。

 

また、「inu」のミュージック・ビデオではご自身が出演なさっています。撮影について何か印象に残っていることはありますか?

 

 

「Hanazono」リリースの際に、RVNG(ニューヨーク/ブルックリンに本拠を置くレーベル)を主催しているMatt(Matt Werth)が自分の過去のリリースを全てチェックしてくれて、「いずれ、”awa”もフィジカルで再発することを考えたい」と提案してくれました。その時は「awa」は、RVNGからレコードで出すのには見合わないと思ってすぐに断ってしまいました。


その後いくつかのリリースが済み、改めて自分の過去の作品を振り返る過程で久しぶりに「awa」を再生していた時に再発の話を思い出しました。

 

Mattから話があった時は、「awa」の特にミックスなど技術的な面で足りない部分が多くお断りしたのですが、後悔している部分を納得いくまで仕上げて別の形で生まれ変わらせてもいいのかもしれないと思えてきました。

 

「awa」は自分にとって思い入れのある曲がいくつかあるのですが、演奏やミックスで悔いの残る箇所が多くて自信を持てないまま来ていたので・・・。ちょうどリリース10周年になることにも気付いて、これは良い機会なのではないかと、急いでMattにメールで提案したところ快く承諾をいただきました。



「Inu」のビデオですが、私自身は出演していないです。この作品は元々自分の音楽を聴いてくれていた写真家の坂本奏子さんが、去年のはじめ頃ライブで声を掛けて下さって交流が始まり撮影していただくことになりました。

 

ミュージック・ビデオを作るのは初めてだったそうですが、「awa」も私にとって初めてのアルバムだったので、まだ自分のやり方やマニュアルのようなものが無い中で、とにかく一人だけでやってみたいことを試すという初めての実験で注がれる独特のエネルギーが「Inu」と融合しているように感じました。


 

当時、このアルバムは自主制作盤としてリリースされたという話なんですが、この音源はどういった経緯でレコーディングされたものだったのでしょうか? 

 

録音やフィールドレコーディングがどのような感じで行われたのかお聞きしたいです。また、当時、大学で化学の研究を行っていたと聞きますが、あえてこの自主制作として音源を残しておきたかった理由などがありましたらお伺いしたいです。

 

14歳頃から曲を作っていたので自然と溜まってきて、大学を卒業したらまとめてリリースできたらいいな、と思っていました。作品が無いと音楽を作っている人間だと紹介できないと思っていたので、名刺を用意するような気持ちで「awa」へ取り組み始めました。


フィールド・レコーディングもこれまで録り溜めていたものを使いました。いつもICレコーダーを持ち歩いて気になる音がしたらすぐ録るようにしていたんです。


卒業後はアパートに住み、研究所で実験するバイトをしていたのですが、その研究所が実家の近くだったので、仕事が終わると実家に寄って録音して帰るという日々を繰り返していました。アパートでは大きな音が出せないし、スタジオはお金がかかるため、周りに畑と森しか無く、音も好きな時に出せる実家で制作を進めました。


自主制作というスタイルを自ら選んだというよりは、その他に方法が無かったということです。やり方が分からなかったんですね。


ちゃんとしたエンジニアにミックスをお願いするとか、まずレーベルを探すとか、全てが身の丈に合っていなくて非現実的なことのように感じられた。コネも無かったし、人に頼むにしても慎重にリサーチしないといけない…と考えて、ひとまず全部自分で進めていこうと決めました。



今になって考えると、この作品は、トクマル・シューゴの『L. S. T』と並んで、日本のフォークトロニカ/トイトロニカの初期の傑作と言っても過言ではないと思うんですが、2000年代から、アイスランドのmumなども、日本の音楽ファンの間でよく知られるようになったわけですが、当時、そういった新しい時代の音楽に取り組んでいるという意識はあったのでしょうか?


また、制作過程で何か伝えたいことや、テーマなどが録音のバックグラウンドにあったのか知りたいです。作品をリリースした当初の周囲の反応などはいかがでしたか?

 

時代という点では、その時に流行しているスタイルとは少し距離をおきたいという意識はあったかなと思います。

 

そういう方針でひとより良いものを作る自信は無かったし、そのような音楽を、もちろん好んで聴いていたことはありますが、自分で作る音楽として目指すものではないと感じていたと思います。

 

だから当時人気だった軽やかなエレクトロニカの手法は取り入れず、なるべくフィールド・レコーディングのザラザラした質感を活かしたアルバムにしようと思っていました。


シンセやドラムマシン等も、その時の流行が大きく反映される音だと思いますが、そういうデジタル音も極力使いたくなかった。ふわふわした気持ちいい音にはしないし、リバーブもディレイもなるべく使わない、など、今思えば、結構変なこだわりをもって、レコーディングしていました。自然の音や車、遊具の音などあえてより普遍的な音を使おうとしていたと思います。

 

『awa』をリリースした時、周りの音楽好きな友達の一部はとてもいいと言ってくれました。でも、よく覚えているのは、上にも書いた通り技術面で未熟なのは分かっていたし、曲も改めて聴くと奇妙なのがいくつもあって、自分でリリースしておきながら、積極的に人に勧められないなと思っていたことです。

 

当時はロックバンドが出演するような一般的なライブハウスで演奏することが多かったのですが、そのようなシーンでは受け入れられている様子は無かったです。ある時ライブをした後共演者の方から、”pastel records”というショップを勧められ、試しにメールをしてみたらCDを取り扱ってもらえることになり、少し自信がつき、そこから何となく方針が分かったような気がしました。


やはり、実験的な音楽を探している人や、そういう音楽をやっているアーティスト/学生が、少しずつ注目してくれたように記憶しています。


 

このアルバムにはブルースの影響も反映されていると聞きます。プロフィールでは、幼少期に米国で過ごしていた時にブルースに出会ったと書かれていますが、今も記憶に残っているアメリカでの音楽体験に関して印象的なエピソードなどありましたら、詳しくお伺いしたいです



アメリカでの音楽体験は、言われてみると、ほとんど無いような気がします。アメリカでも日本でも、父親が現地で手に入れたカセットかCDをよく車の中で流していたのですが、当時の私は特別それを注意して聴いていたわけではありませんでした。家でも音楽が流れていたことはほとんど無かったように記憶しています。


ただ、それらの音楽を自分自身がギターを弾くようになってから改めて聴いた時に、初めて良さに気付き影響を受けましたね。


アメリカでの音楽体験はそれよりも保育園で昼寝の時間が終わる時にかかる「Over The Rainbow」(ジュディ・ガーランドの名曲。名画『オズの魔法使い』でも使用されている)です。毎回それが流れると、悲しいような虚しいような不思議な気持ちになっていたのを覚えています。今でも聴くとその記憶が蘇ります。

 

ミュージシャンとして活躍する以前から環境音などに興味があったと聞きますが、音楽制作に取り入れるようになったきっかけなどがあれば教えてください。また、実際に、こういった音に関して、ご自身のフォーク・ミュージックにどのような形で取り入れていったのか教えてください。

 

環境音に興味を持ったきっかけは二つあって、一つは美大にいた姉の展示の手伝いをしたこと、二つ目は既存の曲に外で偶然鳴っていた音が混ざって別の音楽に変身した体験です。


私のほとんどのアルバムアートワークは、姉の馬替夏美によるものなのですが、彼女が在学中に、インスタレーションの展示をすることになり、その音楽を作って欲しいと頼まれました。

 

それまで作ってきたような曲では展示の邪魔になるということで新しい手法を探しました。先輩からシンセを借り、なるべくリズムなどを排除した曲を作ったのですが、どうしても展示に合いそうな(さり気ない)曲ができませんでした。

 

その時に姉が『サイレント・ヒル』(編注: コナミから発売されたホラー・ゲーム。当時、日本の若いユーザーの間ではブームとなり、2013年の時点で全世界で840万本を売り上げを記録した)というゲームを例に、「何か背後にいる気配のような音だよね」と説明してくれて、なるほど、”それなら曲を書こうとしちゃダメだ”と思い、ひとまず家中/家周辺の「気配」を感じる音をレコーダーに録り溜めました。

 

環境音を制作するようになったのは、集めた音を使って展示用の音楽を作ったのがきっかけの一つです。その時に、普段気にしていなかった生活音が実はズームインすると複雑な音の層になっていると気付きました。


その展示では他に音を使ったインスタレーションをしている学生も居てサウンドアートの分野に出会い衝撃を受けました。現代アートの文脈での音楽というのでしょうか? よりアカデミック/エクスペリメンタルな音楽に興味が湧き、本などたくさん読み、音楽はこんなに自由でいいのかと知ったんです。


二つ目の方は、外でイヤホンをつけて音楽を聞いていたら、偶然近くで鳴ったサイレンか何かの音が入り込んできて、曲に溶け込んできたという体験なんですが、その時に生活音をただサウンド・エフェクトとして使うのでは無く、メインの音楽の一部にできるのではないかと考え始めました。    

                                              
当時読んでいた本に、日本の水琴窟(編注: 水琴窟は、日本庭園の装飾の一。手水鉢の近くの地中に作りだした空洞の中に水滴を落下させ、その際に発せられる音を反響させる仕掛けで、手水鉢の排水を処理する機能をもつ)の話が載っていて、山梨の神社にそれがあると知って、実際に音を録音しに行ったんです。


実物を見つけ、中の繊細な音だけ拾ったつもりでいたのに、帰って聴くと、近くで飼育されていた鶏の鳴き声とか、人の話し声とか余計な音がいくつか混ざって、奇妙なハーモニーができていた。”優しい鉄琴のような音と鶏の鳴き声”という普通に作曲していたら思い付かない意外な組み合わせが偶然出来てしまったんです。


この時、フィールドレコーディングの面白さに改めて気付き、そこに自分も参加するようなかたちで音楽を作っていったら楽しいかもしれないと思いつきました。それが環境音を多用するようになったきっかけだと思います。

 

©Kanako Sakamoto


 

この時代、大学の研究に専心していたとも聞くんですが、音楽制作の中で化学の研究がなんらかの形で生きた瞬間などあったのでしょうか? もしあれば、それはどのようなことだったのか教えてください。


また、化学に対する興味を持つようになったきっかけのような出来事がありましたら教えていただきたいです。

 

なんらかの影響は及ぼしていると思うのですが、今はっきりと浮かんでくるものは無いですね・・・。生物学に興味を持ったきっかけは、昔から生き物が好きだったのと、高校の時に得意な教科だったからだろうと思います。

 

大学進学時には、すでに音楽作りにしか興味が無かったのですが、芸大や音大は私のような者が行くところじゃないと思って、それ以外で一番興味のあった生物学の学科を選びました。


生き物が大好きだったのは、小さい頃に一人でいる時間が多かったことが影響しているような気がしますね。外で一人で遊ぶことがよくあって、近くの野良猫とか、虫とか、とかげとか、外飼いされている犬と触れ合うのが大好きでしたね。


このアルバムには、ブルースやフォークのほか、日本の童歌の旋法や音階が取り入れられていて驚いたんですが、日本的なノスタルジアを込めようとした意図はありましたか。歌詞についても現代詩のようなニュアンスも感じとれるのですが、触発を受けたもの(漫画、映画、テレビ、文学など)ありましたら教えてください。

 

ちょうど「awa」を作り始めた頃、沖縄の宮古島の音楽とかトルコのフォーク、インドや南米の音楽を紹介している本を偶然読み、紹介されいてる音楽を片っ端から聴いてみて、それまで自分がほとんど考えていなかったルーツというものを強く意識させられました。

 

生まれてからほぼ日本で育った自分のルーツは、もちろん日本にあるのですが、日本のポップスやフォークには、なぜかほとんど愛着が湧かないまま来てしまっていたので、作っている音楽の背景に日本的な趣があるのかはよく分かりませんでした。それで、どちらかというとルーツが分かりやすい音楽を作るより、国籍がよく分からない音楽にしたいとは思っていましたね。


また、歌詞に関しては、真面目なことを書いても、後で恥ずかしくなるだけだろうと思っていたので、できるだけアブストラクトにしたいと思っていたんです。ただただ作った音楽に集中し、見えてくる景色を言葉にしていくというように歌詞を作っていました。他の色々なアーティストの歌詞をたくさん読んで、その感覚を掴もうと研究していましたね。

 

デビュー・アルバムの後に、White Paddy Mountainから2作のフルレングスのリリースを行うようになったわけですが、レーベルのオーナーである畠山地平さんからライブで直接、契約の打診があったと聞きました。当時のエピソードについて詳しく教えてください。

 

「awa」を出して一年ほど経った頃に畠山さんから「リリースイベントに出演して欲しい」とメールをいただきました。畠山さんの存在は知っていたので、ちょっとびっくりしたのを覚えています。すぐにokしてイベントで演奏しました。

 

終演後、「また今度ライブを見に行くから」と言って、実際にしばらく経った頃別のライブイベントでライブを終えて物販の席にいたら、畠山さんが来てくれました。

 

それで、「awa」のCDを手にとって、「このアルバムは、録音/ミックスがよくないかもしれないよ」と、より良い環境で作品を録音しようとご提案いただきました。上にも書いたように、当時、私は「awa」に自信を持てず、次にどうすべきか悩んでいたので、とても有り難かったです。


 

この後の三作のアルバムに関しては、少しエキゾチックなフォークミュージックに転向したというイメージもあるんですが、その集大成が『Hanazono』だったと考えています。幻想的なフォーク・ミュージックの理想的な形が完成しつつあるように思えます。この時代の三作に関して、どのようにお考えでしょうか?



前回の作品で達成できなかったことや、不満のある部分を次作で克服するということの繰り返しなのですが、それがこの後も続いていくのだと思います。


「Koko」は、雑多な「awa」からの反動で、ライブの時のようなシンプルなセットを意識した緊張感のあるアルバムにしたかったんだと思います。「Kemri」では、その現実逃避したような繊細な空気を、もう少し身近なものに近づけたかった。

 

「Hanazono」は、制作していた時点でまだレーベルが決まっていなかったので、再び「awa」に近いDIY環境に戻り、一からやり直すようなつもりで取り組みました。


 

続いて、6月21日に発売されるアルバム「境界 KYOKAI」についてお伺いします。この作品は、福岡在住のアンビエント・アーティスト、duennさんとの共作となったわけですが、このアルバムを制作するきっかけや、レコーディングがどのように行われたのかについて詳しく教えてください。

 

2021年にduennさんからお声がけいただき、duennさんとナカコー(Koji Nakamura)さんが主催しているHARDCORE AMBIENCEに参加したのが最初のきっかけでした。それからしばらくした後に、duennさんからコラボ作品を出そうとメールをいただき、このプロジェクトが始まりました。

 

レコーディングは、duennさんにトラックを送ってもらい、私が自宅で歌を加えて、duennさんに送り返し、okが出たら私がミックスするという流れを繰り返して行われました。うまく歌を入れられなかった「non」という曲は「non1」と「non2」に分けて、元のトラックのまま収録されています。また、「gray」は自分の声とギターで作ったデモをduennさんに送り、duannさんが加工して作られました。

 

©Kanako Sakamoto



 

「境界 KYOKAI」の全体的な印象としては、実験音楽の要素が強い音楽であるように感じました。また、日本人同士のコラボレーションではありながら、ロンドンのエレクトロニックやエクスペリメンタル・ポップに近い雰囲気もあったように思います。このアルバムの制作に取り組むに当たって、最初から完成したイメージというのを、お二人で共有していたのでしょうか。それとも、制作の過程を通して、だんだんと最終的な答えに近づいていった感じでしょうか?

 

作業が始まる前の段階で、duennさんの作ったトラックと私の声を使って、「俳句」あるいは「短歌」をイメージした1-2分程度の短いトラック作るというコンセプトをduennさんが提示しました。面白そうだなと思い、賛成しました。


あえて自分のボーカルを入れる意味を考えながら、duennさんの短い抽象的なトラックの中でヴォーカルによって起承転結をつけるようなつもりで進めました。


 

2年ぶりの新作アルバムのリリースとなりました。今回、イタリアのレーベルから発売されているのにかなり驚いたんですが、これはどういった経緯でリリースが決まったんでしょうか。



レーベル探しは難航していたのですが、以前duennさんの作品をリリースしていたROHS! Records にduennさんが声を掛けて下さり、リリースが決まりました。


 

デビュー当時から、何らかの形で文学性というのが織り交ぜられていた気もするんですが、「境界」では、以前よりも、言葉に対する感覚が鋭くなり、また、言葉そのものの抽象性が強まったという印象を受けます。その点について、ご自身ではどのようにお考えでしょうか。


また、この作品に関するテーマやコンセプトなどがあれば教えてください。プレスリリースでは、duennさんの生活圏内にある路上看板に書かれていた言葉がタイトルとなったと書かれていますが。


今回の作品は自分だけの作品ではないのと、コンセプトがはっきりしていたので、曲がパーソナルなものにならないように、いつもより意識しました。


歌詞は、コンセプトにある短歌のようにある場面を簡潔に描写して、そこから状況や心情を感じ取るようなものにしたかったのですが、とても難しかった。チャレンジングで勉強になりました。



テーマについては、「現実と非現実の境、あの世とこの世の境、その他設けられている境によってどんな差が生まれているのか、何の意味があるのか、そもそも人間が勝手に作ったものであり本来は曖昧で実態が無いようなものではないのか」ということをduennさんはよく考えるとメールに書いていました。そして、通勤途中にちょうど「境界」と書かれた標識があったことで強くそれを意識したのだと思います。


 

現在は作品リリースに加え、ライブも積極的に開催されている印象を受けるんですが、実際のステージで演奏を行う時に、心がけていることや大切にしていることなどありましたら教えて欲しいです。

 

ライブは苦手なんです。毎回、どうにか楽しもうと心がけています…。


 

実質的なデビューから10年以上が経過しました。当時のことを思い出した時に、何か大きく変わったなあ、ということがあれば教えてください。また、今後のライブ日程などがあれば教えてください。

 

ここに書き切れないくらい多くのことが少しずつ変わったのですが、大きな変化というとなかなか具体的に思い付かないですね。

 

そういえば、10年前ごろにあるイベントでライブした時、見に来ていた、おそらくアメリカの方と思われる中年男性から終演後に「物販でレコードはある?」と声をかけられ、「CD(「 awa」)ならあるよ」と答えたところ、「CDなんかいらないよ」と言われたのが印象的でした。当時は”なんでレコードなんだ?”と思ってしまうくらい、レコードに馴染みがなかったですが、それがその後日本でも流行り始め、およそ10年後に「Hanazono」でリリースしたというのは感慨深いですね。今後、しばらくライブの予定はないので、制作の方に集中したいと思います。

 

今後の活躍にも期待しております。今回、Music Tribuneのインタビューをお受けいただき、誠にありがとうございました。

 

©David Cleary

マルケタ・イルグロヴァーとグレン・ハンサードは、The Swell Season(スウェル・シーズン)として10年以上ぶりとなる新曲を発表した。ダブリンのフォークロック・デュオは2005年に結成された。

 

映画『Once』の公開15周年を記念したデュオの夏のツアーに先駆けて発表された「The Answer Is Yes」は、アイスランドのマスターキー・スタジオでレコーディングされ、Sturla Mio Thorissonがプロデュースした。この曲には、度々コラボレートしているマルヤ・ゲイナーとベルトラン・ガレン、アイスランドのミュージシャン、ティナ・ディコとヘルギ・フラフン・ヨンソンがヴォーカル、Þorvaldur Þór Þorvaldssonがドラム、Guðmundur Óskar Guðmundssonがベースで参加している。


「グレンと私は、今度のアメリカ・ツアーの前に新曲をリリースしようと話していた。「毎晩一緒に歌えるような美しいデュエットを書きたかった。深く個人的でありながら、広く普遍的である。かつてあったものすべてに敬意を表し、今あるものすべてを祝福するような、過去20年の私たちの旅を要約するようなものをね」


ハンサードはこう付け加えた。「私たちは一緒になって、古い曲を通して作業しているうちに、新曲のチャンスはほとんど必然的なものになった。マルケタはクリエイティブな部分でジョニを彷彿とさせるところがある。それはとても威圧的でもあるけれど、私の作曲方法とは対照的な素晴らしいものだ。僕にとって、一緒にいるときに湧き上がってくるアイデアこそが、彼女が参加すべきものなんだ」

 

「The Answer Is Yes」