©Jake Freedman


クラブ/ロック・ファンから絶大な支持を得る新世代プロデューサー、ニコラス・ジャーのバンドDarkside(ダークサイド)は、今週金曜日の6月9日にMatadorからニューアルバム『Live at Spiral House』をリリースすると発表しました。

 

これまで一貫してJed DeMossがデザインを手掛ける水晶玉やガラス玉のようなアートワークをあしらってきたバンドですが、今回も同じようなニュアンスとなっています。2021年の『Spiral』に続く本作は、ニコラス・ジャーとデイヴ・ハリントンが、昨年夏にロサンゼルスのリハーサルスペースで、新メンバーのドラマー、トラカエル・エスパルサと録音したジャムを収録した。


「Tlacとバンドを再結成することを決めたとき、その意味を探求できるスペースが必要だと思った」とJaarは述べている。「数ヶ月のリハーサルの後、友人や家族をスペースに招待するようになり、これらのレコーディングの多くは、その時の楽しくて居心地の良い精神を共有しています」


ハリントンは、「スパイラルハウスの期間中、おそらく私が知っているすべてのジェリー・ガルシアのリフをすべてのキーで演奏しました。China Cat Sunflowerの "Narrow Road "の音の良さには驚くと思う!」


この発表に伴い、Darksideは本日、Live at Spiral Houseのメイキングを描いた新しいショートフィルムを公開した。これは、Darksideの2つのアルバムジャケットを手がけたアーティスト兼写真家のJed DeMossと、アーティスト兼ビデオグラファーのWill Carràによって撮影されました。下記よりご覧ください。

 

Live at Spiral House Making


Darkside 『Live at Spiral House』


Label:Matador

Release: 2023/6/9

 

Tracklist:

 
1. Liberty bell


2. Golden Arrow / The Limit


3. Freak, Go Home


4. Dream (interlude)


5. Heart Jam


6. Question is to see it all


7. Lero

 

©Nadav Kander


ピーター・ガブリエルは、近日発売予定のアルバム「i/o」からの最新シングル「Road to Joy」をリリースした。以前、「Playing For Me」「The Court(Dark-Side Remix)「Panopticon」「i/o」「Four Kind of Horses」が先行シングルとして公開されています。

 

この曲はブライアン・イーノとの共同プロデュースで、バースのReal World Studios、ロンドンのBeehiveとBritish Grove、南アフリカ・ヨハネスブルグのHigh Seas Studiosで録音されました。ソウェト・ゴスペル・クワイア、ジョン・メトカーフのストリングス・アレンジ、ガブリエルのツアー・バンドのメンバーであるベーシストのトニー・レヴィン、ギタリストのデヴィッド・ローズ、ドラマーのマヌ・カッチェをフィーチャー。Road to Joy [Bright-Side Mix]」は下記よりご視聴ください。


この曲について、ガブリエルは声明の中で次のように述べています。


私は今、脳と物事の捉え方に焦点を当てたストーリーのあるプロジェクトに取り組んでいて、この曲はそれにつながるものです。

 

この曲は、臨死体験や、コミュニケーションや移動ができなくなる閉じ込め症候群の状況を扱っている。驚くほどフラストレーションのたまる状態です。このテーマについては、素晴らしい本や映画がありますが、この物語の時点では、主人公を見守る人たちが、彼を目覚めさせる方法を見つけることに成功しています。だから、この歌詞は、自分の感覚を取り戻し、人生を取り戻し、世界を取り戻すということに尽きるんだ。


この曲は、i/oレコードの最後の曲のひとつですが、以前のプロジェクトのDNAを受け継いでいて、実はこの曲にたどり着いたのは、制作段階のかなり後半でした。音楽的には、確かOVOプロジェクトの頃に始めた「Pukka」という曲があったんです。この曲とはまったく違うものでしたが、実はこの曲がこの曲に戻る出発点だったんです。ブライアン・イーノと一緒に仕事をしているときに、リズムを使った何か別のものが欲しいと思い、いくつか試してみたんだ。この曲の興奮とエネルギーは、私が興奮するものでした。今回のアルバムでは、それが足りないと感じていた。

 

「Road To Joy」

 

©︎ Caity Crone

 

NoSoは、LAを拠点に活動するシンガーソングライター兼ギタリストのBaek Hwongのプロジェクトです。BaekはUSCのmusic deptを卒業し(King Princess & MUNAと同じプログラム)、Blood Orange、Ben Howard、「Born In The USA」、90年代のK-POPなどを参考に挙げています。

 

昨年7月、Baek Hwong(バエク・ウォン)はアルバム『Stay Proud Of Me』(キャプチャード・トラックスのトップエンジニアがプロデュースを担当)をPartisan Reccordsから発表し、耳の早いポピュラーミュージック・ファンを魅了しました。アルバムはこの週のMTのWRにも選ばれています。このアルバムではクイアネスとして自信を持つことを主題とし、青春の思い出が織り込められ、美麗なポピュラーミュージックが展開されていました。

 

今回、NoSoは『Stay Proud Of Me』以来となる新作シングル「Kaitlin」を発表しました。アコースティックで構成される清涼感たっぷりのニューシングルについて、Hwongは、「ギターを中心にソングライティングを行った作品で、これまでで最も意欲的な作品」と説明しています。同日に公開されたミュージック・ビデオではアーティストが弾き語りをする姿を見ることが出来ます。今週のHot New Singlesの一つとして読者の皆様にご紹介します。


「Kaitlin」

 


Dream Wifeは以前、アルバムからの4曲、資本主義や偽の活動家に対する彼らの考え方を描いた "Who Do You Wanna Be?"、"Orbit"、舌鋒鋭い "Hot (Don't Date A Musician)" とアルバムのリードシングル "Leech" を公開しています。


今日、彼らはアルバムのリリースに先立ち、最後のシングルを公開しました。"Social Lubrication"は、家父長制に反対する集会として、勝手なアドバイスや性別による暴力を呼びかけるものである。


「疲れ果てた。家父長制の戯言に砂糖でコーティングし、なだめすかし、迎合するのはもうたくさんだ。ただ存在したい。この体の中で、私たちが存在する体について、特別扱いされたり批判されたりすることなく。仕事をうまくこなす。姿を現す。他の人のゲームに付き合わない。根底から腐ったものを直すことはできない。私たちに必要なのは改革ではなく革命だ」とバンドはこの曲で述べています。


このシングルには、アルバム・アートからイエロー・ジャケッツのオープニング・シーケンスまで、様々な影響を受けたバンドによる自作のミュージックビデオが収録されています。



『Social Lubrication』のリリースを記念して、Dream Wifeは6月8日にThe George Tavernでソールドアウトのローンチパーティーを開催し、親密な観客の前でアルバム全曲を演奏する予定です。


ドリームワイフの3枚目のスタジオ・アルバム『Social Lubrication』は、6月9日にLucky Numberからリリースされます。

 Foo Fighters 『But Here We Are』

 

 

Label: Roswell Records Inc.

Release:  2023/6/2

 

Review

 

デイヴ・グロールがRCAのインプリントとして95年に設立したRoswellから発売となった「But Here We Are--だが、私たちはここにいる」という名を冠したフー・ファイターズのアルバムは、 タイトルからも分かるように、2022年3月に惜しまれつつ亡くなったテイラー・ホーキンスへの追悼の意味を込めた作品である。いまだに彼の追悼コンサートでの彼の息子のシェーン・ホーキンスの素晴らしいドラムの演奏が目にありありと浮かぶ。あの時、バンドには選択肢がいくつかあった。テイラー・ホーキンスを代えの効かない唯一無二のドラマーとしてフー・ファイターズを封印するという可能性もなくはなかった。しかし、バンドは以前とは別のバンドになると思うが、活動を継続すると発表した。結局、それをしなかったのは、フー・ファイターズというバンド自体が、友人の死、そして、コバーンの弔いの意味から95年に出発したグループであるからなのだと思う。そして、おそらく、テイラー・ホーキンスの死後になって、フー・ファイターズの未知の音楽を聴きたいというファンの思いは、さらに強まったともおもわれる。結局は、デイヴ・グロールは旧来のファンの期待を裏切るわけにはいかなかったのだ。

 

しかし、「これからは全く別のバンドになるだろう」というバンドからのメッセージは、この最新作を聞く限りでは、むしろ良い意味で期待を裏切られることになる。実際、アルバムを聞くまでは、旧来の作風とは異なる内容かと思ったのだけれども、正直なところ、95年のデビュー・アルバムから受け継がれたフックの聴いたアメリカン・ロックの方向性にそれほど大きな変更はないように感じられる。95年から2000年代初頭にかけて、フー・ファイターズは、実質的に94年にジャンルの終焉を迎えたとされるグランジの後の世代、サウンド・ガーデンやアリス・イン・チェインズを始めとする、以前の時代から活躍してきたヘヴィ・ロックバンドの穴埋めをするような形で、親しみやすく、シンガロング性の強いアメリカン・ロックのカタログを残してきた。さらに、その表向きのポスト・グランジとしてのヘヴィ・ロックバンドの表情の裏に、エモーショナルなメロディーや淡い情感を、それらのパワフルな性質を持つ楽曲の中にそれとなく組み入れてきた。そして、驚くべきことに、従来はアルバムの収録曲の中盤に据え置かれてきた印象もあったそれらのエモーショナルな楽曲は、今やバンドにとっての最大の強みと成り代わり、隠しおおそうともせず、また、いくらか恥ずべきものとして唾棄するでもなく、アルバムのオープニング「Rescued」のイントロを飾ることになった。これは例えば旧来のフー・ファイターズのファンを驚かせるような結果となるのではないか。95年から20数年間において、これまでパワフルなロックバンドとしての勇姿をファンの前で示しつづけてきた印象もあったけれど、もはや、テイラー・ホーキンスの死後に至り、フー・ファイターズは内省的なロックソングを彼らの作品の矢面に立たせることを微塵も恐れなくなったのである。

 

アルバムのオープニングを理想的に飾ったのち、二曲目の「Under You」以降は、これまでの音楽性を踏まえたフー・ファイ・サウンドが全開となる。まるで数年間休ませておいたエンジンを巻き、アクセル全開で一気に突っ走っていくような軽快なエネルギーにあふれている。そして、彼らの新しいサウンドを待ち望む世界の無数のロックファンの期待に応えるべく、フー・ファイターズは万人に親しめるアメリカン・ロックの精髄を叩きつける。誤魔化しは存在しない。たとえ泥臭いと思われようと、不器用とおもわれようと、まったくお構いなく、自分たちの信ずる8ビートのシンプルで直情的なロックンロールを純粋にプレイし続けるのだ。

 

しかし、このアルバムがフー・ファイターズの代名詞であるアメリカン・ロックを主眼に置いているからといって、彼らが新しいサウンドを提示していないというわけではない。タイトル曲「But Here We Are」には新生フー・ファイターズとしての片鱗が伺え、変則的なリズムを配し、近年で最もヘヴィーな瞬間へと突入する。この曲にはオルタナティヴ/グランジの後の時代のタフな生存者として活躍してきたロックバンドとしてのプライドが織り込まれており、これはまた90年代以降のヘヴィロックの流れをその目で見届けてきたロック・バンドとしての意地でもある。そしてこのロックソングはホーキンス亡き後のバンドとしての力強い声明代わりになるとともに、バンドにとっての新しいライブ・アンセムとなってもおかしくないような一曲だ。


その後、アルバムの冒頭の「Rescued」で読み取ることが出来るエモーションは、90年代のグランジの暗鬱な情感と複雑に絡み合うようにして強化されていく。「Show Me How」ではサウンド・ガーデンのクリス・コーネルが書いたような瞑想的なグランジ・サウンドを現代に呼び覚まし、それを深みのある形に落とし込んでいる。しかし、グランジを下地に置くからといって、それほど暗澹とした雰囲気はほとんど感じられず、そこにはからりとした乾いた質感すら漂っている。これはデイヴ・グロールのソングライティングの才覚が最大限に発揮された瞬間と称せる。そのあと、アメリカのロックバンドとしての印象はアルバムの後半に至るほど強まっていき、それは80年代のナイト・レンジャーのようなメタリックな雰囲気すら帯びるようになる。

 

テイラー・ホーキンスの追悼の意味合いは、クライマックスに至るとより強まり、クローズド・トラック「Rest」でさらに鮮明となる。90年代や00年代のオルタナという彼らが三十年近く親しんで来たお馴染みのスタイルを通じて、神々しい雰囲気の曲調で盟友の死を弔わんとしている。しかし、「レスト」のあとに「イン・ピース」を付けなかったのは理由があり、フー・ファイターズとして、この世にやるべき何かが残されていること、彼らの旅がこれからも続くことを暗示している。不器用なまでに「アメリカのロックバンド」としての姿に拘りつづけること、古いスタイルと指摘されようとも恐れず勇敢に前進し続けること、それが今日もフー・ファイターズが幅広いファンに支持され、愛されつづける理由でもあるのだ。正直なところをいえば、ケラング誌が満点を出したのも納得で、近年のアルバムの中では白眉の出来栄えとなっている。


 

85/100

 

 

 Featured Track「Rescued」


Ethel Cain(エセル・カイン)は、昨夜(6月3日)ステージ上で倒れ、シドニーでの公演をキャンセルした後、「良くなっている」とファンに伝えている。
 

先日、歌手は、シドニー・オペラハウスのドラマシアターで「A House In Nebraska」を披露している最中に突然倒れた。その後、会場のスタッフが状況を調査する間、ショーは一時中断となり、その後キャンセルされました。ギグ参加者には、「状況は安定している」と伝えられたという。

最前列にいた観客は、ステージでカインが失神した際に頭を打ったように見えたと報告しています。幸い、カインは自身のインスタグラム・ストーリーズで、快方に向かっていると伝え、今夜(6月4日)シドニーで予定通り2回目の公演を行うことをファンに約束しました。



「皆さん、こんにちは、昨夜のショーを終えることができなくてとても残念なのですが、このツアーと旅行がついに私に追いついてしまいました。でも、今日は気分がよく、今夜のショーにワクワクしています! できるかぎり昨夜の埋め合わせをすることを約束するわ」



Ruban Neilson率いるUnknown Mortal Orchestra(アンノウン・モータル・オーケストラ)は、2023年のツアー日程を拡大し、今秋に北米で公演を行うことを発表しました。このニュースは、Ruban Nielson率いるプロジェクトのタイニーデスクコンサートと同時に発表された。


UMOは最新アルバム『V』のリリースからまだ日が浅いですが、Tiny Deskのセットでは、"From the Sun", "Thought Ballune", "Little Blu House", "Necessary Evil "といったファンにはお馴染みの曲もあり、最後は "Monki "で締めくくられた。この日のため、ニールソンの父親がサックスでバンドのいつものラインナップに加わり、スタジオ録音よりかなり豪華な演奏となっています。

 

 

SET LIST

 

1.From the Sun

2.Thought Ballune

3.Little Blu House

4.Necessary Evil

5.Monki

 


1980年代のリバプールに登場したThe La'sほど謎に包まれたバンドを探すのは難しい。ボーカリストのリー・メイヴァースの隠遁的な性質もあってか、後にカルト的なファンの間で彼らの伝説は尾ひれがついていった印象もある。そもそもブラー、パルプ、オアシスに匹敵する才覚を有しながらも、デビュー・アルバム『The La’s』のレコーディング過程におけるプロデューサーとの険悪な関係が、バンドの将来の芽を摘んでしまった。しかしThe La'sのブルージーなロックと清涼感のあるリー・メイヴァースのボーカルは、今でも耳の肥えたファンの心を捉えてやまない。

 

La'sは1983年にオリジナルメンバーのマイク・バジャーによってリバプールで結成され、彼らの代表曲である「There She Goes」がヒットするまでに6年の歳月と4回の試行錯誤を要した。


サッカークラブのエヴァートンでプレーすることを子供の頃に夢見ていたリー・メイヴァースは、バンド結成から一年後の1984年に加入するまもなく、このグループの大黒柱となったが、音楽界で最もミステリアスな人物の一人として目されるようになる。1990年に、「音楽家にとって良い訓練場であるリバプールのアートスクールは、バンドの結成に一役買ったのか?」と尋ねられたさいに、「我々の学校は、宇宙の学校だ。宇宙こそ僕の大学なんだ。私の学校はストリートであり、また私の学校は世界であり、宇宙である。私は自分の視点で物事を考えているのであって、他人による視点ではないんだ」と彼は答えた。


リー・メイヴァースはルー・リードやシド・バレットに似た謎めいた人物であり、後者に匹敵するほど寡作であることは間違いない。彼は1986年にジョン・パワーと出会い、スカウス・スラングにちなんで自分たちを「ラ(ラッズの略)」と呼ぶように。  その後の4年間、彼らは8人のプロデューサーと12人のバンドメンバーを試したが、自分たちが求めるサウンドを得ることはできなかった。しかしこの点について、ファンのフォーラムでは、そもそも2ndアルバムを作る余地が最初から存在しなかったため、このデビュー作にこだわり続けたのではないかという指摘もある。そしてその指摘はもしかすると、かなり的を射たものであるのかもしれない。

 

アルバムの宣伝ポスター
1990年、待望のファースト・アルバム『The La's』をリリースしたが、このアルバムについてメイヴァースは納得がいかず、Q誌のインタビューで「大嫌いだ!」と言い、「やっている最中に出て行ってしまったんだ」と説明した。「自分たちのサウンドの意向がプロデューサーに伝わらないから嫌で、背を向けた。そして、レコード会社が勝手にバックトラックから作って、自分たちでミックスして発売することになった。どのシングルにするかとか、そういう選択肢は一切なく、違うジャケットを貼られたりもした。だから、僕らが作るのに何年もかかったわけではなく、Go Discs(彼らのレコード会社)が出すのに何年もかかっただけなんだよ」


最初のシングルは『There She Goes』で、1988年に発売されたが、ヒットしなかった。この曲は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『There She Goes Again』にインスパイアされたという噂が絶えなかったが、タイトルと歌詞が似ている以外は異なるものだった。誰もがこの曲を名曲だと言っていたため、再発される機会がないうちに、さらにラインアップに問題が生じ、リーの弟で、正式には彼らのローディだったニールがドラムとして参加することになった。

 

「There Shes Goes」(Original Us Version)

 


この曲は1989年1月に再リリースされたが、全英チャート59位と低迷。テストプレスはラジオ局や音楽新聞社に送られ、Melody MakerはSingle of the Weekとしたが、Maversはレコードの出来に満足せず、そのまま廃盤となった。この頃、ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ、シャーラタンズ、インスパイラル・カーペッツなど多くの新しいバンドが登場し、彼らは結局Timeless Melodyを発表することにしたが、57位にとどまった。この曲は「There She Goes」より少し高い順位を記録したが、ファンに支持されており、「There She Goes」は1990年末に再びリリースされ、今度はかなり広範囲に放送されたため、13位を記録し、バンドの最初のヒットを記録した。メイヴァースはピート・タウンゼントやレイ・デイヴィスといったロックの伝説たちと好意的に比較されるようになり、普遍的な賞賛を浴びた。


「There She Goes」はどんな曲なのだろうか? ”There”というのは、「そこへ」を指すわけではなく、「ほら!」という冠詞に近い意味であり、歌詞の中にはそれほどはっきりとした詩はなく、コーラスが4回のみ繰り返されるだけだが、「There she goes again, racing through my brain, pulsing through my vein, no one else can heal my pain~」という歌詞が見られることから、この曲は当初、様々な憶測を呼ぶことになった。一般的にはルー・リードの曲と同じように、ヘロインについて歌っているのではないかとも噂されていた。 当時、 ある音楽新聞には、「The La's' ode to heroin」というかなり過激な小見出しが掲載されたという。ベーシストのジョン・パワーはこの件に関してコメントを求められたが、回避的な答え方をし、元ギタリスト、ポール・ヘミングスはその噂を一蹴した。

 

翌年、彼らはさらに1枚のシングル、「Feelin」というビートルズの曲をよりブルージーにしたトラックをリリースしたが、トップ40には惜しくも届かなかった。 

 

「Feelin'」

 

謎に包まれたものを知りたいという欲求を多くの人が抱えるのと同じく、カルト的な人気を誇る彼らには、何が起きているのか知りたがる人が多かった。しかし、メイヴァースはあまり積極的ではなかった。彼は1997年にインタビューを受け、The La'sが新譜をリリースするまでにどれくらいの時間がかかるのか、と聞かれ、「かかるだけ、かかるから...」と曖昧に答えている。1991年には、リー・メイヴァースはステージ上で一言も話すことはなかった。インタビュー、特に91年9月にニューヨークで行われたNME誌の取材では、リーは説得されて何かを言わなければならず、「音楽からメッセージを感じ、ヴァイブに浸るように」とだけ訊き手に言い続けた。リー・メイヴァースは背後にあるバックグランドよりも音楽そのものを重んじていたのだった。


1999年、シックスペンス・ノン・ザ・リッチャーが、曲の内容を無視したカバーを録音し、La'sより1つ低い順位でピークを迎えた。その後、彼らは再び注目を集めるようになり、レコード会社がプロモーションのため、5度目の再発売に踏み切ったが、意外にも65位にとどまり、目に見えるような効果を及ぼさなかった。さらに、2003年、「In Search of The La's」という本が出版された。謎に包まれたバンドをよりよく知るための一冊である。そこには3年前のインタビューが掲載されており、リーは自分の性格や音楽的な意図について語り、シーンへの復帰についても言及している。


2年後、The La'sは突如、長い沈黙を破り、再結成し、ステージへカムバックを果たした。リーはジョン・パワーを呼び戻してバンドを再結成し、アイルランドを含む英国で数日間演奏し、国内最大級のフェス、グラストンベリーにも出演した。その年、サマーソニックにも出演し、同時期に来日していたオアシスも彼らのステージを見届けた。


その後、2011年にリバプールのバンド、The Banditsのメンバーだった友人のGary Murphyと、Lee Rude & the Velcro Underpantsという奇妙なバンド名で、いくつかのアコースティック・セットを演奏することになった。そのあと、彼らはマンチェスターのデフ・インスティテュートでシークレット・ギグの演奏を行った。

 

ライブこそ開催したが、新たなリリースの噂もないまま現在に至る。熱心なファンの間では、今もバンドのフォーラムを中心に様々な憶測が飛び交っている。2008年には1stアルバムのデラックスバージョンもPolydorから発売された。デラックス盤には、Mike HedgesとJohn Leckieがリミックスを手掛けた「There She Goes」の二つの異なるバージョンが収録されている。おそらく、この二つのリミックスに当時のリー・メイヴァースが理想とするサウンドにかなり近いのではないかと思われる。しかし、いまだ彼らの謎は謎のままで、本当のところを知る人はそれほど多くはない。



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昨年約4年ぶりに全国9都市で開催した「Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”」のライブを収録した映像商品「Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”」を先日発売したばかりのPerfume。6月1日(現地時間)にスペインのパルセロナにて、ヨーロッパ最大級の音楽フェスティバル「Primavera Sound 2023」に出演しました。同じステージには、米国のハードコアバンド、Turnstileや、来日公演を控えているALEX Gなどが出演。パフュームのライブアクトの全貌はこちらよりご視聴出来ます。さらに当日のライブのセットリストについては下記よりご覧下さい。


Perfumeにとって、海外の音楽フェスの出演は2019年にエレクトロポップというジャンルにおける初の日本人女性アーティストとして出演したアメリカの「Coachella Valley Music and Arts Festival」以来となる。日本のステージよりもベースラインの強い刺激的なエレクトロ・ポップで観客を魅了した。


他のステージとの兼ね合いもあり、約20分押しでスタートしたにも関わらず、多くの観客が待つ中、Perfumeの名刺代わりの1曲でもある「ポリリズム」がスタート。この楽曲は2011年のディズニー/ピクサー映画『カーズ2』の挿入歌ともなっており、海外ファンからの支持も高く早くも観客のボルテージは最高に。次曲「FLASH」では、空手の型のようなダンスを見よう見まねで踊る現地スペインの音楽ファンの姿もあった。


「チョコレイト・ディスコ」では、あ〜ちゃんから「チョコレイト」「ディスコ」のコールアンドレスポンスのMCを受け、会場は”ディスコ”という声で溢れ、全9曲約1時間パフォーマンスを披露した。Perfumeは6月8日(木) <現地時間>にスペイン・マドリード会場でも出演する。


Perfumeは続いて、6月3日(土) <現地時間>に、ロンドンのシェパーズ・ブッシュにあるO2 Shepherd's Bush Empire にて約9年ぶりのロンドン単独公演『Perfume LIVE 2023“CODE OF PERFUME”』を開催します。


また、この公演は「ABEMA PPV ONLINE LIVE」での生配信と、6月5日(月) 24:00からは【見逃し】配信もABEMA PPV ONLINE LIVE にて配信される。6月13日(火)23:59まで視聴できますのでお見逃しなく。配信チケットは6月13日(火)20時まで販売されます。

 

 

Primavera 2023 Perfume 


Setlist

1.ポリリズム

2.FLASH

3.Spending All My Time

4.エレクトロ・ワールド -Album Remix

MC

5.Polygon Wave -Remix

6.ねえ

7.FUSION

8.edge

9.FAKE IT

10.PTA Corner

11.チョコレイト・ディスコ  -2012 Remix

Weekly Music Feature


McKinly Dixon


マッキンリー・ディクソンは、幼少期の多くを移動しながら忙しなく過ごしてきた。1995年にメリーランド州アナポリスで生まれたディクソンは、DMV(Dual Mode Vehicleのこと)とクイーンズ区ジャマイカ(ニューヨークで最も治安の悪いエリアと言われる)を行来していたが、当時の彼にインスピレーションを与えたのは、マンハッタンともブルックリンとも異なる、ニューヨークでの特異な体験であった。「メリーランド州にはない、自分と同じような顔をした人たちがそこにはいたんだ。それは音楽による逃避行について考えるきっかけになった」と彼は言う。


奇妙な憧れと現実からの逃避というアイデアは、彼の野心的なプロジェクト「Beloved」の中心を形成している。このアルバムは、ディクソンが "史上最高のラッパー "とユニークに評するノーベル賞作家、トニ・モリスンの小説3部作にちなんで名付けられたという。モリスンの小説は、アメリカの歴史に目を向け、憧れと逃避の奔出を、彼女の散文の美しい広がりと正確さを通じて突き止めることになった。ディクソンはこのアルバムで、そういったエネルギーを表現しようとしている。


米国の詩人で評論家のハニフ・アブドゥルラキブは、「マッキンリー・ディクソンの作品は、リスナーである私にとって、常に寛大で、ポータルとして機能していると感じている」と評している。「自分の人生とは明らかに違うけれど、自分の人生から遠く離れてはいないかもしれない人生への窓。それは、あなたが触れたことのある人生に近いかもしれないし、あなたが逃した、あるいは待ち望んでいた人生に近いかもしれない」


あるとき、ディクソンは、ダブルシフトの仕事をする母親が切り盛りする家庭で育ち、自分もまた毎朝5時半に起きていることに気づいた。「母は私に規律を教えてくれました。そして、自分で何かを望むなら、それを手に入れなければならないということを教えてくれたんです」


 

©︎Jimmy Fontaine


音楽のバックグランドについて言及すると、興味深いことに、メアリー・J・ブライジやゴスペルデュオのメアリー・メアリーなど、「ファーストネームがメアリーであるアーティスト」が彼の家庭の音楽環境を特徴づけていた。これらのアウトキャストとの出会いはディクソンにとってきわめて重要なものとなった。ヒップホップへの愛を深める一方で、当時流行していたシアトリカルなロックにも興味を持つようになった。「メリーランド州の友人から紹介されたMy Chemical RomanceやPanic! At The Disco、これらのグループは、私の憧れの感覚を音楽で表現してくれていた」と彼は話している。結局、彼はこれらの影響を、バージニア州リッチモンドの大学に通いながら、2013年にリリースしたデビューEPの制作時に全力で注ぎ込むことになった。


やがてマッキンリー・ディクソンの音楽は、ブラックネスや癒しとの関係について言及されるようになり、彼の主要な自己表現手段となりかわっていった。その次にリリースした『Who Taught You To Hate Yourself?(2016年)、『The Importance Of Self Belief』(2018年)を経て、彼のスタイルは進化を遂げ、特に楽器の演奏に関しては自信を深めていった。


デビューアルバム『For My Mama and Anyone Who Look Like Her』は、ディクソンが心の痛みや悲しみに照準を合わせたゲームチェンジャーとなった。「私は本当に濃密で混沌とした曲を作っていて、どんな考えでも5分半の曲に詰め込もうとしていた」と、ディクソンはプロジェクトについて語っている。続く 『Beloved!Paradise! Jazz!!!』は、さまざまな衝動をぶつける試みとなった。


この作品では、「あの激しさと濃密さを保ちながら、より短く、よりキャッチーな曲を作ったらどうだろう?って考えてみたんだ」と彼は述べている。1992年に出版されたモリソンの友情とハーレムを描いた小説『ジャズ』を朗読するアブドゥラキーブのイントロダクションの後、ディクソンはリスナーに "Sun, I Rise" を提供する。ハープが奏でるクリスタルのようなラインの上でラップするディクソンは、時に低く、時に頂点まで軽やかに舞い上がるように、声のトーンを変えて演奏する。彼の歌詞は捉えどころがなく、文学的で、正真正銘のヒップホップだ。それは、ディクソンのフロウの能力の強かな表明であり、スキルの棚卸しでもある。「イカロスとミダス王を混ぜたような少年の物語を作りたかった」とディクソンは言う。ゲストボーカリストのアンジェリカ・ガルシアは、ピュアな歌声で、この傑出したシングルにさらなる深みを与えている。 

 

アルバムの他の部分では、彼は、落ち着きのなさと銃の暴力("Run, Run, Run")、友人を失うという底知れない悲しみ("Tyler, Forever")、才能の孤独("Dedicated to Tar Feather")について取り組んでいる。ディクソンはオーケストラの指揮者のように、鍵盤、弦楽器、優しいベースをはじめとする生楽器を組み込もうとした。「全ての曲で美しい言葉を書こうとした、これまでで一番手応えがある」とディクソンは語るが、それは楽曲の美しさと題材に見合った偉業となることだろう。

 

アルバムの最後を飾るのは、このプロジェクトで最もゴージャスな瞬間といえるタイトル曲だ。ジェイリン・ブラウンは、トム・モリスンの書誌から抜粋した言葉を歌っているが、それはたった3つの単語からなるにもかかわらず、何とも言えないフィーリングを持つフックを作り上げる。ディクソンのイメージは、幽体離脱、抱き合う手など、痛々しいまでの優しさに溢れている。時に荒々しく、時に繊細な、『Beloved!Paradise!Jazz!?』は、山あり谷ありのマッキンリー・ディクソンの心の旅である。「自分の物語をより身近に感じられるようにすることを目標にしたんだ」と彼は語った。自分の好きなものをその中心を保ちながら。


『Beloved! Paradise! Jazz!?』 City Slang



(現在はシカゴにいるという)ディクソンの文化観を育んだニューヨークのクイーンズ地区はヒップホップの発祥の地のブロンクスに隣接しており、エグみのあるNYカルチャーの発信地のひとつと言えるだろうか。これまでブラックネスや、自分の人生について、あるいは、自分の母親についてのラップソングを書いてきたマッキンリー・ディクソンは、2021年の前作の延長線上にある音楽性を、この4thアルバムで追い求めている。

 

当時ディクソンは黒人のノーベル賞作家であるトム・モリスンの「Jazz」を読むにつれ、人々が過激であると評するこのストーリーについて一定の共感を覚えたばかりか、まったく怖いものではないと考えていた。というのも、それはおそらくクイーンズ地区での生活は、モリスンの描こうとするいささか恐ろしい世界と共鳴するものがあったのだろう。このときのことについて、ディクソンはこう回想する。「凄いな、最愛の人って? という感じだった。これは一体何なんだろう? 怖いけど、全然怖くない」と彼はさらに回想する。「この本には、彼女が黒人であるがゆえ、まだ私たちが到達しえないこと、そして私自身が到達しえないことがたくさん書かれていた」

 

本当に優れた文学に出会った時、もし、その読者が本当の意味で純粋な心を持ち、その物語やプロットに共感し、真にその物語に熱中したならば、それは百戦錬磨の書評家よりも深くその文学を読み込んだことになる。

 

そしてトム・モリスンの言葉は、彼の心に共鳴し、それを古典としてではなく、現代の問題として、また自らの問題として持ち帰り、文学者が伝えようとしたことをうまく咀嚼することが出来た。ディクソンにはその素養があった。2017年頃から、彼は黒人の経験についてよく学び、黒人のトランスフォーマーの死亡率に関心を持っていた。トランスフォーマーは、二重の抑圧に苦しんでおり、黒人全般の死亡率よりも遥かに高い。それは友人の出来事によってデータ上の数字ではなく、ディクソンの心に生きた問題として印象深く刻み込ませた。また、彼は2018年の最初のアルバムで、こんなことを歌っている。「わたしたちの行動に責任を持とう/公正な連鎖反応であることを自覚せよ」これはディクソンが社会に潜む問題を捉える目を持っていること、そして、それに対する疑問を投げかける行動力を兼ね備えていることを証だてている。

 

マッキンリー・ディクソンはこれらのブラックカルチャーにおけるテーマを自分のアーティストとしての命題に据え、4作目のアルバムでも、そのことを真摯に探究しようとしている。このアルバムはモリスンの小説「Jazz」の朗読により幕を開ける。重苦しいアブドゥラキーブの朗読に加え、緊張感のあるシンセがその言葉の情感を引き立てるが、これから、この音楽が次にどういった形で展開していくのかを期待させる理想的なイントロダクションとなっている。

 

やはり、「ジャズ」という表題に違わず、ホーンのミュートの枯れた音色がそのムードを盛り上げる。前奏曲が終わるとすぐ、ハープのグリッサンドを通じて、『Beloved! Paradise! Jazz!?』はいよいよ物語の幕開けとなる。「Hanif Reads,Toni」を通して、マッキンリー・ディクソンは、彼が尊敬するメアリー・J・ブライジのポピュラーセンスを受け継いだラップを展開させる。そして、彼のラップには二面性のある人格が垣間見える。感情をむき出しにする扇情的なリリシストとしての姿と内省的なリリシストとしての姿が立ち代わりに現れ、それがゲストボーカルとして参加したアンジェラ・ガルシアのコーラスにより、曲の持つ哀感は深みを増していく。特に中盤からのフロウを通じて、マッキンリー・ディクソンは最もエモーショナルなラップを披露し、ブラックカルチャーの核心へと迫りながら、聞き手の琴線に触れる感慨をもたらす。アフロ・ビートを下地にしたストリングス、ハープ、木管楽器が幾重にも折り重なり、美しいハーモニーを形成する中で、ディクソンは感情を剥き出しにし、"Nigger”という得難い差別的な観念の正体を突き止めようとする。次第にディクソンのフロウは、それとは対比的なアンジェラ・ガルシアのコーラスに支えられるようにして奇妙なエナジーを帯び始める。

 

続く「Mezzainaine Tippin」はアルバムの中で最も過激な楽曲である。これは例えば、ケンドリック・ラマーの書くブラックコミュニティの過激さを、社会悪という観点から捉えようとしている。チャリチャリと不気味な音を立てる鎖のサンプリングの後には、ほとんどアブストラクトヒップホップとして見てもおかしくないような前衛的なリズムがこの曲を支配する。マッキンリー・ディクソンは米国社会の暗部に踏み入れ、そしてそれが黒人の生活にどのような恐怖を与えるのかを、リリックと音楽という二つの側面から捉えようとしている。まさにモリスンの小説にある得体の知れない恐怖がこのトラックには充ちており、重々しさのある重低音に加え、サックスの響き、ボーカルの断末魔のようなサンプリング、抽象的なシンセサイザーが、それらの雰囲気をさらに不気味なものにしている。暴力に対する黒人側の恐怖、もしくは自己に満ちる内面の狂気をディクソンは鋭い感覚によって描き出そうとしているのだろうか。それは一触即発とも言え、危うく、なにかのきっかけで表層部分にある正気の壁そのものが崩れ落ちていきそうな気配に充ちている。スラングの断片をサンプリングとして序盤に配し、その後の展開を引き継ぐ形で、マッキンリー・ディクソンは歌うともささやくとも知れず、リリックを紡ぎ出していく。

 

 「Run,Run,Run」

 

 

重苦しい緊張感に満ちた前曲の後、レゲエやジャズを基調にしたユニークなラップソングが控えている。「Run Run Run」は、表向きには銃社会について書かれているが、アルバムの中で親しみやすく、軽快なリズムに支えられている。ここにはディクソンのジャマイカのコミュニティや、そのカルチャーの影響が色濃く反映され、Trojanに所属していた時代のボブ・マーリーのR&Bの延長線上を行く古典的なレゲエやアフロ・キューバン・ジャズを融合させた一曲である。シンプルなピアノのフレーズが連続した後、ディクソンはアンセミックな響きを持つフレーズを繰り返す。アフロ・ビートのように軽快なリズムとグルーブ感は軽やかに走り出しそうな雰囲気に満ちあふれている。中盤からラップへと移行するが、トランペットのミュートに合わせて歌われるディクソンのうねるようなラップの高揚感は何物にも例えがたいものがある。

 

同じように続く「Live From The Kitchen Table」も心沸き立つような雰囲気に充ちている。 タイトルもファニーで面白いが、特にアーティストのジャズに対する理解度の深さと愛着が滲み出ているナンバーだ。特に、曲の中盤のサックスの駆け上がりは、アルバムの中で最も楽しみに溢れた瞬間を刻印している。これらのジャズの要素に加え、アルバムの序盤とは正反対に、ディクソンは心から楽しそうにラップを披露する。その歌声を聴いていると、釣り込まれて、ほんわかした気分になる。この曲が終わった頃には、心が温かくなる感覚に浸されることだろう。

 

「Tyler,Forever」

 

続く「Tyler, Forever」も同じように軽快な雰囲気に充ちている。ティンパニーの打音と管楽器のフレーズの兼ね合いを聴くかぎり、さながら、音の向こうからコミカルなヒーローが颯爽と登場しそうな雰囲気だ。アクションヒーローの映画を彷彿とさせるイントロダクションの後、アルバムの中でマッキンリー・ディクソンがドリル・ミュージックの核心に接近する。これは、友人を死をもとに制作された曲だというが、悲壮感をもとに曲を書くのではなく、亡き友人の魂を鼓舞するかのように、勇敢なラップミュージックを展開させる。特に中盤にかけてのフロウは鬼気迫るものがある。そして何より、分厚いグルーブ感が押し寄せ、ダンスフロアの熱狂のように渦巻き、そのグルーブを足がかりにして、ディクソンは巧みなマイクパフォーマンスとともにエネルギーを上昇させる。中盤から導入されるホーン・セクションを介して、リラックスしたジャジーな展開に引き継がれ、その後、ほろりとさせるような切ないラップが展開される。

 

終盤では、ゴージャスなオーケストラ・ストリングスのハーモニーを活かした「Dedicated To Feather」が強烈な印象を放っている。前曲の友人への弔いのあと、その魂をより高らかな領域へと引き上げ、レゲエ調のエレクトーンの音色を取り入れ、渋さのあるポピュラーミュージックを展開させる。4ADから新しいアルバムの発売を控えている、注目すべき黒人シンガーソングライター、Anjimileをゲストボーカルに迎えたことは時宜にかなっていると言える。両者の息のぴったり合ったボーカルとコーラスは、アンニュイなネオソウルの魅力を体現しており、シンガロングを誘発させるサビの痛快さはもちろん、ボーカルのサンプリングやジャジーな管楽器の芳醇な響きによって、曲の情感は徐々に高められていくことがわかる。

 

ジャズのスタンダードな形式の管楽器のフレーズで始まる前奏曲に続き、「The Story So Far」を介して、アルバムのテーマはいよいよ核心へと向かっていく。アフロ・キューバン・ジャズの要素を取り入れたこのトラックで、パーカション効果を最大限に駆使しながら、マッキンンリー・ディクソンはジャズとラップの融合のひとつの集大成を示している。それは序盤の重苦しい雰囲気とは異なり、天上に鳴り響く理想的なラップとも捉える事ができるし、近未来的な響きを持つヒップホップとも解せる。キューバン・ジャズ風のリズムや管楽器の響きは、Seline Hizeのハリのあるボーカルによって、楽曲の叙情性は深度を増していくのだ。


悲哀、狂気、恐怖、それと対極にある温和さ、楽しさ、平らかさ、多様なブラックカルチャーに内在する感覚をリアルに体現した後、アルバムの最後に祝福された瞬間が待ち受けている。タイトル曲「Beloved! Paradise! Jazz!?」は、スタンダードなソウルやR&Bを下地にしたDe La Soulを彷彿とさせるナンバーで、ディクソンは相変わらず、淡々とし、うねるようなリリックを展開する。後に続く温和なコーラスワークの響きは、ハープやジャジーな管楽器とポンゴの響きに支えられ、Ms Jaylin Brownのソウルフルなボーカルに導かれて、アルバムの最後は微笑ましい子どもたちのコーラスにより、ダイナミックかつハートフルなクライマックスを迎える。

 

マッキンリー・ディクソンが最後に言い残したことはシンプルで、あなたを愛する人がどこかにいるということ、楽園もどこかに存在するということ、そして、それは、ジャズやソウルのように人をうっとりさせるものであるということ。決して恵まれた環境で育ったわけではないアーティストであるからこそ、その考えは深さと説得力を持ち合わせている。


 

 96/100

 

 

Weekend Featured Track 「Beloved! Paradise! Jazz?」


McKinly Dixon(マッキンリー・ディクソン)のニューアルバム『Beloved! Paradise! Jazz!?』はCity Slangより発売中です。

 Noel Gallagher's High Flying Birds 『Council Skies』

 

 

Label: Sour Music

Release:2023/6/2



Review

 

今に始まったことではないが、例によって兄弟間の間接的な激しい舌戦が収まらぬうち、そしてオアシスの再結成の話が空転する中、今年の年末に来日公演を控えているノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズのアルバムがついに発売となった。いや、このアーティストに対してきわめて複雑な感情を抱くファンにとっては「発売されてしまった」というべきなのか。

 

アルバムのオープニングを飾る「I'm Not Giving Up Tonight」を通じてわかることがある。今作において、ノエル・ギャラガーはスタンダードなフォーク・ミュージックとカントリーの要素を交えつつも、ポピュラー・ミュージックの形にこだわっている。微細なギターのピッキングの手法やニュアンスの変化に到るまで、お手本のような演奏が展開されている。言い換えれば、音楽に対する深い理解を交えた作曲はもちろん、アコースティック/エレクトリックギターのこと細かな技法に至るまで徹底して研ぎ澄まされていることもわかる。どれほどの凄まじい練習量や試行錯誤がこのプロダクションの背後にあったのか、それは想像を絶するほどである。このアルバムは原型となるアイディアをその原型がなくなるまで徹底してストイックに磨き上げていった成果でもある。そのストイックぶりはプロのミュージシャンの最高峰に位置している。

 

#2「Pretty Boy」もこのアーティストらしい哀愁と悲哀を交えたお馴染みのトラックであるが、旧来のオアシス時代のファンに媚びようとしているわけでもなく、もちろん楽曲自体も時代に遅れをとってはいるわけでもない。最新鋭のエレクトロやダンスミュージックの影響を交えながら、やはりノエル・ギャラガーは自分なりのアーティストとしての美学を貫き通すのだ。そして必ずといっていいほど、メロに対比する楽曲のピークとなるサビを設けている。これはアーティスト自身が言うように、かつてジョン・ピールがホスト役を務めたBBCのTop Of The Popsの時代の「夢のある音楽」を再び現代の世界のミュージックシーンに復刻したいという切なる思いがあるからこそ、こういったスタンダードな作曲スタイルを取り入れているのかもしれない。


#3「Dead To World」はタイトルこそドキッとするが、繊細な情感を少しも失うことなく、良質なフォークミュージックの見本を示している。繊細なストロークから織りなされるアコースティック・ギターの巧みな演奏は、時代を忘れさせるとともに、音楽そのものに没入させる力を持っている。そしてそのギターの上に乗せられるギャラガーの歌声はやさしく、慈しみがあり、さらに情感たっぷり。もちろん、トラックの上に重ねられるオーケストラのストリングスの重厚なハーモニーは、彼のボーカルの抑揚が強まるとともに、そのドラマティック性を連動するように引き出している。高揚したテンションと落ち着いたテンションを絶えず行き来するノエル・ギャラガーの老練とも称するべき巧みなボーカルは、潤沢な音楽経験と深い知識に裏打ちされたもので、そしてそれは一つの方法論であるのとどまらず、ポピュラーミュージックとして多くの音楽ファンの心を魅了する力をそなえている。音楽のパワーをノエル・ギャラガーは誰よりも信じている。実際、それは本当の意味で人の心を変える偉大な力を持っているのだ。

 

 

 オアシスの名前は出さない予定であったが、続くアルバムの最終の先行シングルとして公開された#4「Open The Door,See What You Find」では明らかにオアシスに象徴される90年代のブリット・ポップの音楽の核心に迫ろうとしている。この時代、宣伝文句ばかりが先行し、ブリット・ポップという言葉が独り歩きしていた印象を後追いの世代としては覚えるのだが、しかし、その本質をあらためて考えなおしみると、ポスト・ビートルズということが言えると思う。そしてこの曲を聴いて分かる通り、90年代のリアルタイムに多くのリスナーがインスパイラル・カーペッツ(ノエル・ギャラガーはデビュー前にバンドのローディーをしていたと思う)やハッピー・マンデーズやザ・ストーン・ローゼズの後の時代の奇妙な熱に浮かされていたために、聴きこぼしていたもの、その本質を曲解していたものをあらためてノエル・ギャラガーは2020年代に抽出し、その本質を真摯に捉えようとしている。ノエル・ギャラガーは、オーケストラのベルやストリングスを効果的に用い、ビートルズの時代のチェンバーポップやバロックポップへの傾倒をみせながら、晴れやかなポピュラー・ミュージックをこのトラックで示そうとしている。アルバムタイトルには混乱した次の時代への道標ともなるべき伝言が込められているが、それは聞き手に対し一定の考えを押し付け、その考えに縛りつけつおこうとするのではなく、最後はその目で見届けなさい、というメッセージが込められているのである。

 

その後、このアルバムは比較的、ゆったりとした寛いだ感じのあるフォーク・ミュージックへと舵を取る。それは長い長い航海の中で行き先も知れず、広々とした大海を上をぼんやりと揺蕩うかのようでもある。この曲でも、旧来のOASISの最初期の音楽性を踏まえ、現代の英国のフォーク・ミュージックとの距離感を計りながら、普遍的なポピュラーミュージックの「終着点」を探している。しかし、それは90年代の「Wonderwall」のように孤独や孤立に裏打ちされた感覚ではなく、ワイルドなアメリカン・ロックのような雄大さが重視されている。これはミュージシャンの近年顕著になってきている傾向でもある。90年代を通じて英国を代表するロックミュージシャンでありつづけたノエル・ギャラガーではあるものの、この曲を見るかぎり、世界音楽の最大公約数を探し求めようとしている。そして、歌詞はやはり情感たっぷりに歌われ、ドラマティックなストリングスがその歌詞やボーカルの情感を徐々に引き上げるのである。


さらにノエル・ギャラガーは表向きの音楽の軽薄さにとどまることなく奥深い感情表現の領域へと足を踏み入れていく。つづく「Easy Now」は、このアルバムの収録曲の中で最もビートルズの影響下にあり、イントロダクションでは、マッカートニー/レノンの音楽性の最も見過ごし難い部分である瞑想性を再現させようとしている。苦悩や憂いといった感覚が先立つようにして、うねるような感覚が内面にうずまき、それが外交的とも内省的とつかない、すれすれの部分でせめぎ合いながら、後の展開へと引き継がれる。これまでアーティストが書いてきた曲の中で最も感情的なこのトラックは、近年それほど感情をあらわにしてこなかった印象のあるフライング・バーズのイメージを完全に払拭するものとなっているが、しかしながら、サビに至るや否や、アーティストらしさが出て来て、「Standing On The Shoulders Of Giants」の「Sunday Morning Call」のようなアンセミックなフレーズに繋がっていく。その後には哀愁に充ちたこれまでとは一風変わった展開へと続いている。これはアーティストが自身のソングライティングの癖を捉えつつ、旧来のイメージから脱却しようと試みた瞬間であるとも解釈出来るかもしれない。 

 

更に旧来のイメージを覆すのが続くタイトル曲である「Council Skies』で、ここでは飽くまでポピュラー・ミュージックを主体にしながら、トロピカルな要素やラテン系のリズムを取り入れた画期的な作風へと挑んでいる。やはりボーカルのフレーズには哀愁が立ち込めているが、ブラジルのボサノヴァ風の陽気なリズムと旋律を付け加え、特異なポップスとして仕上げている。旧来のファンとしては最も面白さを感じる一曲で、基本的にはメジャーコードの性質が強いけれど、移調の技法を巧みに取り入れ、短調と長調の間をせわしなく横断している。しかし中盤にかけて、ロックンロールの要素が強まり、ボサノヴァとロックの要素が絡み合うようにして、いくらか混沌とした瞬間を迎える。これを刺激的な瞬間と捉えるかどうかは聞き手次第ではあるけれど、少なくともこのトラックはこれまでノエル・ギャラガーが書いてこなかったタイプの珍しい内容で、アーティストが新たな境地を切り開いた瞬間とも称すことができるのではないだろうか。

 

続く、#8「There She Blows!」は90年代のUKポップのファンをニヤリとさせる曲で、明らかにThe La'sの傑作「There Shes Goes」に因んでいる。(以前、アーティストは、オアシスとして日本で公演を行った時、ちょうど偶然、同時期に来日していたThe La'sの公演を仲良く兄弟で見ていたと記憶している)無類のUKポップスファンとしての矜持と遊び心が感じられるナンバーである。また、旧来のオアシスファン心を安堵させるものがあるとおもう。ノエル・ギャラガーはリー・メイヴァースに対するリスペクトを示した上で、渋さのあるメイヴァーズのリバプール・サウンドをこの時代に復刻させようと試みている。ミュージシャンとしてではなく、音楽ファンとしての親しみやすいノエル・ギャラガーの姿をこのトラックに垣間見ることが出来るはずだ。

 

以上のように、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライングバーズは、近年の作風の中で最も多彩味あふれるアプローチを展開させていくが、アーティストのロックンロールに対する一方ならぬ愛着もこの曲に感じとられる。「Love Is a Rich Man」ではスタンダードなロックの核心に迫り、Sladeの「Com On The Feel The Noise」(以前、オアシスとしてもカバーしている)グリッターロックの要素を交え、ポピュラー音楽の理想的な形を示そうとしている。ロックはテクニックを必要とせず、純粋に叫びさえすれば良いということは、スレイドの名曲を見ると分かるが、ノエル・ギャラガーはロックの本質をあらためて示そうとしているのかもしれない。


「Think Of A Number」では渋みのある硬派なアーティストとしての矜持を示した上で、アルバムのクライマックスを飾る「We're Gonna Get There In The End」は、ホーンセクションを交えた陽気で晴れやかでダイナミックな曲調で締めくくられる。そこには新しい音楽の形式を示しながら、アーティストが登場したブリット・ポップの時代に対する憧れも感じ取ることも出来る。


90年代の頃からノエル・ギャラガーが伝えようとすることは一貫している。最後のシングルの先行リリースでも語られていたことではあるが、「人生は良いものである」というシンプルなメッセージをフライング・バーズとして伝えようとしている。そして何より、このアルバムが混沌とした世界への光明となることを、アーティストは心から願っているに違いあるまい。

 

 

86/100

 

 

『Council Skies』- Live At BBC  (アルバムの収録バージョンとは別です)

 


アムステルダムの4人組インディーロックバンド、Pip Blomは3rdアルバム『Bobbie』のリリースを発表しました。アルバムはHeacenly Recordingsより10/20にドロップされる。発表と並んでリードシングル「Is This Love」のMVも公開されています。曲とビデオにはフランツ・フェルディナンドのアレックスが参加しています。

 

「Is This Love」は、Pip Blomのネイティブなロックミュージックから逸脱し、Alex Karpranosからよりファンキーな影響を織り交ぜている。「アレックスと仕事をしていて良かったのは、雰囲気がとても良かったということの他に、私たち二人が異なる視点を持っていたということです。私はロック寄りですが、アレックスはもっとファンキー。それは、詩でもコーラスでも、曲にとって完璧なアクセントになりました」とブロムはプレスリリースで語っています。「これほどファンキーなPip Blomの曲が登場したのは初めて、みんな絶対に気に入ってます」

Pip Blomのスタイルに対する試みは、Jump For Joyの他の曲にも表れ、迫力があり、屈託のないシンセに没頭している。音楽性の飛躍と同時に、ブロムはこのアルバムのリリシズムでも自分を追い込んでいます。「私はネイティブスピーカーではないため、歌詞はいつも難しいと思ってます」と彼女は言います。「ちょっと強引な感じがして歌詞に時間をかけるのが難しいんです」

 

ピップ・ブロムの最後のアルバムは2021年の『ウェルカム・ブレイク』。昨年フランツ・フェルディナンドはベストアルバム『Hits to the Head』をリリースした。

 

「Is This Love」

 

 

 

Pip Blom 『Bobbie』


Label: Heavenly Recordings

Release:2023/10/20


Tracklist: 


1. Not Tonight


2. Tiger


3. Red


4. Kiss Me By Candlelight


5. I Can Be Your Man


6. Where’d You Get My Number


7. Brand New Car


8. Is This Love?


9. Fantasies


10. Again


11. Get Back


12. 7 Weeks

©︎LE3AY

米国のシンガーソングライター、Madison Beer(マディソン・ビアー)は、デビュー・アルバムを発表しました。『Silence Between Songs』は9月15日にリリースされ、ニューシングル「Home To Another One」が最初の先行シングルとして公開されています。

 

今度のアルバムは、成長や価値といった様々なテーマに触れることになります。プレスリリースによると、このコレクションはビールの最大のインスピレーションであるラナ・デル・レイ、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、テーム・インパラなどの音楽性を具現化したものになる。

 

「前作から2年間、私は自分自身と芸術性について多くのことを学びました」とマディソン・ビアーは考えています。「このアルバムには、ノイズから解放され、自分自身について最もよく知ることができた休止の瞬間に発見した、私の様々な断片が綴られています。ファンの皆さんが、私が制作したときと同じように、このアルバムを聴いて刺激を受けてくれることを願っていますよ」



 
Madison Beer 『Silence Between Songs』
 
 



 


Fontaines D.C.のフロントマン、ボーカリストのGrian Chatten(グリアン・チャッテン)が、近日発売予定のソロデビュー曲から新曲「Last Time Every Time Forever」を公開しました。このシングルは初期のオアシスやStone Rosesのポップセンスをうまく取り入れています。哀愁と孤独の中間にあるセンシティヴな感覚の吐露。

 

このソロ・プロジェクトは直近のシングルを見る限りにおいて、グリアン・チャッテンがよりオルタナティヴ・フォークへの傾倒をみせていることが分かる。その中には、よりポップなものを、という考えも垣間見ることが出来る。Fontaines D.Cは、最新作『Skinty Fia』でヘヴィーなロックバンドとしてアイルランドの固有性を探ったわけですが、バンドメンバーのツアーからの離脱を機に、アーティストとして未知の音楽性へとチャレンジを挑もうとしています。

 

グリアン・チャッテンはまた、ロックバンドとは異なる叙情性を思わせるフォークを中心にソングライティングを行っていて、バンドではメンバーに対して忠告を行わないため、ソロとしてどのような挑戦が出来るのか探ろうとしたと話している。ソロアルバム『Chaos For The Fly』は6月30日にPartisan Recordsから発売されます。「Fairlies」と「The Score」のリリースに続いて、今回、「Last Time Every Time Forever」が三番目のシングルとして公開されました。今回のグリアン・チャッテンのコメントもやはり奇妙で、煙に巻くような内容です。

 

「"Last Time Every Time Forever"は、自分で作った地獄のような町を99周するような、膝が弱くなるような曲だよ。"それはカモメと1980年代の嗄れた喉のスロットマシンに取り憑かれ、聴くたびに自分の約束を破っていく」

 

チャッテンはソロアルバムについて、次のように説明しています。 「夜、ストーニービーチをぼうっと歩いていたら、波の音が聞こえてきたんだ。ただそこに立って波を見ていたら、全部が聞こえてきた。コード進行からストリングスアレンジに至るまで、あらゆる部分が聞こえてきたんだ。私はただ思った。自分でもやってみたい。バンドとして次に進むべき方向はわかっているけど、このプロジェクトで進みたいのはそこじゃない。自分の魂の誇張された部分を表現したいんだ」

 

「他のメンバーも、みんなそれぞれクリエイティブでソングライターなんだよ。彼らのところへ行き、「いや、全部こうでなきゃダメ」みたいなことは言いたくなかった。そうやって、この曲たちに妥協したくなかったのさ。アルバムの多くは、ギターだけで書かれてる。そういう要素に煮詰められるというのがなんだか好きなんだ。手のひらの中に曲があるような感覚、自分とギターだけでコントロールできるような感覚。その結果、ある種の激しさが生まれるんだ」

 

「Last Time Every Time Forever」

 

Bloc Party


Bloc Party(ブロック・パーティー)がニューシングル「Keep It Rolling (Feat. KennyHoopla)」をリリースしました。前作『Alpha Games』は旧来のファンにとっては若干の消化不良をもたらしたものの、このシングルを見るかぎりでは、2000年代のブロックパーティーの勢いを取り戻しつつある。

 

「Keep In Rolling」は、BPにとって初めてのコラボレーションソングで、最新のシングル「High Life」と昨年のアルバム「Alpha Games」に続く作品です。ケレ・オケレケは先日、ソロ・アルバムを発表したばかり。一方、コラボレーターのKennyHooplaはクリーブランドのシンガーソングライターで、これまでにシングルとミックステープを中心に作品の発表を行っている。

 

「以前からKennyのファンだったから、彼がロンドンに来たとき、一緒にスタジオに入るチャンスに飛びついた」とフロントマンのKele Okereke(ケレ・オケレケ)は言う。「午後1時に何曲も書いたけど、"Keep It Rolling "はその中の1つのアイデアだよ。そのアイデアにはいつも愛着があったので、Bloc Partyに持ち込みたいと思い、曲にした。全てはとてもオーガニックなものだ」

 

コラボレーターのKennyHoopla(ケニー・フープラ)はこう付け加える。「私もBloc Partyの大ファンだったので、このコラボは自分にとってバケットリストのようなものだった。私はほとんどフィーチャリングをしていこなかったので、もしフィーチャリングするとしたら、いつも家族のためだ。Keleを友人と呼べるのは嬉しいし、一緒に曲を作ることができたのはとても光栄だよ」

 

「Keep It Rolling」

©William Sabourin

カナダーのシンガーソングライター、Helena Deland(ヘレナ・ダランド)が新曲「Spring Bug」をリリースしました。テキサスのミュージシャン、クレア・ルーセイとのコラボ曲「Deceiver」に続くシングルです。


「春の太陽と春の雨は、過去の自分を地面から芽吹かせる」と、ヘレナ・ダランドは声明で振り返っています。

 

「この町を出るか出ないかという問いが、大混乱を引き起こす背景となる。しかし、ジョーン・ディディオンが言うように、私たちは、魅力的な仲間であろうとなかろうと、かつての自分たちとうなずき合いながら付き合うのが得策です。さもなければ、彼らは予告なしに現れて私たちを驚かせ、悪い夜の午前4時に心のドアを叩き、誰が自分を見捨てたのか、誰が裏切ったのか、誰が償うつもりなのかを要求してくる。"Spring Bug"は、騒がしい空を飛ぶ生き物を追い払おうとする手の振りであり、その生き物は私なんだ! 聴いてくださってどうもありがとう」


昨年、ヘレナ・デランドは、2020年の『Someone New』以来とな「Swimmer」を公開しました。2021年には、Ouriとのコラボレーション・プロジェクト、Hildegardがセルフ・タイトルのアルバムをリリースした。

 

「Spring Bug」