New Album Review  宇宙ネコ子 「日の当たる場所にきてよ」

 

宇宙ネコ子(Ucyu Nekoko)

 

 

宇宙ネコ子は、2012年に結成されたオルタナティヴロック・ユニット。羊文学、揺らぎとともに日本のシューゲイザーシーンの注目株。

 

初期メンバーは、ネムコ(Vo)とタナベコウヘイ(Ba)の二名。2014年に、ゲストボーカルに”ラブリーサマーちゃん”を迎え入れ、「宇宙ネコ子とラブリーサマーちゃん」を自主制作する。


2016年、再びラブリーサマーちゃん、入江陽、itoken(相対性理論)をゲストとして迎え、ファーストアルバム「日々のあわ」を制作し、P-Vine Redcordsからデビューを果たしている。 


2017年には初期メンバーであったタナベコウヘイが脱退している。アルバムのアートワークに関しては、すべて大島智子が手掛けている。アニメーション色の強いアートワークは宇宙ネコ子の魅力的な世界観の一貫とも言える。

 

 

 

「日の当たる場所にきてよ」(Hi No Ataru Basyo Ni Kiteyo) Loom

 

 


 

 

 

scoring

 

 

 

 

tracklisting

 

1.日の当たる場所にきてよ

2.Skirt

3.部屋

4.スロウ

5.Rebirth

6.9

7.hikage

 




 

 

ディスクユニオンが設立したインディーズレーベル「Loom」からこれまで宇宙ネコ子はアルバム、及びEP作品をリリースしている。

 

宇宙ネコ子の音楽性の魅力を端的に述べるとするなら、なんといっても、正統派のシューゲイザーサウンドの継承、そして、相対性理論の”やくしまるえつこ”に近い独特な声質にあるといっても過言ではない。もちろん、音楽として導き出される作風も、アルバムジャケットに描かれるような切ない青春、または、なんとなくノストルジアを感じさせる雰囲気に込められている。

 

1月19日にリリースされた「日の当たる場所にきてよ」でも、これまでの宇宙ネコ子らしいシューゲイザー/ドリーム・ポップサウンドは全面的に展開され、ファンの期待を裏切らない素晴らしい作品となっている。


特に、表題曲の「日の当たる場所にきてよ」、二曲目の「部屋」という楽曲がアルバムの中では白眉の出来栄えと言え、ドリーム・ポップの色合いは、既存作品より一層強固になったというような印象を受ける。 もちろん、言うまでもなく、歌詞についても同じように、その印象は以前よりも強められ、このアーティスト、宇宙ネコ子にしか紡ぎ得ない揺るぎないノスタルジアが日本語詞として「歪んだディストーションサウンド」に、心地よくふんわり乗せられている。

 

これまで、シューゲイザー/ドリーム・ポップ一直線の音楽性であった印象もある宇宙ネコ子のサウンドは、最新作においてかなりの進化を遂げたと断言出来る。それは、五曲目の「Rebirth」という一曲に顕著に表れていて、宇宙ネコ子は、ドリームポップの向こう側にあるアンビエントに近い質感を持った楽曲を生み出している。こういった穏やかで癒やしの質感を持った楽曲は、このアーティストが既存作品には見られなかった新境地を切り開いた瞬間ともいえる。


その他にも、ラストトラック「hikage」では良質なJ-POPサウンドを生み出していることにも注目である。

 

 日本のシューゲイザー/ ドリーム・ポップシーンにおいて、商業主義とは一線を画しながらも、良質なメロディー、そして、淡いノスタルジアの込められた日本のアーティストらしい雰囲気のある楽曲を生み出し続けている宇宙ネコ子。今後、どういった良質な作品を日本のインディーロックシーンにもたらしてくれるのだろうか、一ファンとしてはワクワクしながら心待ちにしたい。

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