New Album Review Aurora 「The Gods We Can Touch」

Aurora


 

オーロラは、ノルウェーのシンガーソングライター兼音楽プロデューサー。ジャンルはエレクトロ・ポップに分類されることが多く、フォーク音楽との関係性も指摘される場合も多い。オーロラの作品には、個人的な感情、政治、セクシャリティ、死生観といった多岐にわたるテーマが掲げられる。

 

オーロラ・アクスネスは、ノルウェー、ローガラン県スタヴァンゲル、ホルダラン県の自然豊かな街に育った。音楽を始めたのは六歳頃からで、友人がインターネットにアップロードした自作曲がきっかけとなり、弱冠17歳でプロデビューを果たした。

 

大手レコード会社”Decca”との専属契約を結び、2013年からシンガーソングライターとして活動を行い、これまでに四作のフルレングスアルバムをリリースしている。オーロラ・アクスネスの主な作風は親しみやすいエレクトロ色の強いポピュラー音楽で、自国ノルウェーやイギリスを始めとするヨーロッパ圏、また、アメリカを中心として堅調なセールスを記録し、幅広いリスナー層を獲得している。他にも、ディズニー映画「アナと雪の女王 2」のサウンドトラック、ケミカル・ブラザーズの作品「No Geography」へのゲスト参加が著名な仕事として知られている。

 

オーロラ・アクスネスの歌声は北欧シンガーらしく、伸びやかで奥行きがあり、自然を感じさせるような独特な響きが込められている。音楽制作を行う上で強い影響を受けたアーティストとしては、エンヤ、をはじめとする北欧のポップスシンガー、また、レオナード・コーエンといったフォークシンガー、あるいは、フォーク・ロックの立役者、ボブ・ディランなどを列挙している。

 

また、ノルウェーの文化に強い影響を受けているオーロラ・アクスネスは、その他にも、日本文化やネイティヴ・アメリカン文化にたいする深い造詣を持っている。アクスネスは、みずからのファンを「ウォーリアー」や「ウィアード」と呼び習わしているのも特徴的と言える。 また2021年には来日し、千葉幕張で行われる音楽フェスティヴァル「Supersonic」に出演している。





「The Gods We Can Touch」 Universal Music /Decca

 

 

   

Tacklisting:

 

1.The Fobidden Fruits Of Eden

2.Everything Matter

3.Giving In To The Love

4.Cure for Me

5.You Keep Me Crawling

6.Exist For Love

7.Heathens

8.The Innocent

9.Exhale Inhale

10.A Temporary High

11.A Dangerous Thing

12.Artemis

13.Blood In The Wine

14.This Cloud Be A Dream

15.A Little Place Called The Moon



2022年1月21日にリリースされたスタジオ・アルバム「The Gods We Can Touch」はオーロラの約2年ぶりとなる新譜。アルバムリリースに先行して「Giving In To The Love」が先行配信された。

 

これまで、デビュー作「All My Deamons Greetnig As Me A Friend」からオーロラ・アクスネスはギリシャ神話のストーリ性をポップスミュージックの中に込めてきたが、そのあたりが、コクトー・ツインズに代表される「エーテル」と呼ばれるゴシック的な雰囲気を擁する音楽ジャンルとの親和性が高いと評される所以かもしれない。そしてまた、そのゴシック性は、オーロラ・アクスネスというミュージシャンの個性、アメリカやイギリスのアーティストにはないキャラクター性、ヴォーカリストとしての強烈な魅力となっている。今作「The Gods We Can Touch」でも、その点は変わらず引き継がれており、オーロラ・アクスネスは、ギリシャ神話の物語に題材を取り、幻想性というテーマを介して、現実性に焦点を絞ろうと試みている。

 

今回のフルレングスの作品では、表向きな楽曲性には、少なからずファンタジー色が込められていて、それは特に、一曲目の「The Fobidden Fruits Of Eden 」のストーリー性のあるポピュラー音楽に顕著に感じられる特徴でもある。しかし、アクスネスの描き出すのは必ずしも幻想の世界にとどまるものとは言えないかもしれない。その内奥にある強い現実性を描き出す力をソングライターとしての実力をアクスネスはすでに充分に兼ね備えており、つまり、彼女は、恥、欲望、道徳といった現実的な概念を「幻想」というプリズムを透かして映し出しているのだ。

 

この作品は、文学性の強いポピュラーミュージックである。もちろん、そこには、上記に書いた通り、エレクトロ・ポップス、エーテルだけでなく、レオナード・コーエン、ボブ・ディランといったコンテンポラリーフォークからの強い影響を感じさせる楽曲も多数、今作には収録されている。

 

表向きには、商業音楽を強く意識している作品なのだが、その中に、強烈な個性、商業性にかき消されない特性を兼ね備えた作品であることも事実だ。そのあたりが、エンヤ、ビョーク、もしくはアバにも近い雰囲気を持った北欧のアーティストらしい個性派シンガーといえるかもしれない。

 

全15曲で構成される新作アルバム「The Gods We Can Touch」は、各曲がそれぞれ異なるギリシャ神話の神々をモチーフにして制作されている、このコンセプトアルバム全体に、通奏低音のように響いている「世界観」について、 オーロラ・アクスネスは、以下のように話している。上記のレビューよりも、はるかに、この作品を知るための手がかりとなりえるはずである。

 

特に、以下のコメントに垣間見えるのは、ギリシャ神話の宗教性という概念を通してみた先にある人間としての生き方と、オーロラ・アクスネスの一筋縄でいかないような人生哲学である。

 

 

「人間と神々の間にある精神的な扉は、とても複雑なものです。正しく歩み寄れば、信仰は最も美しいものとなりえる。育み、温かさを感じさせてくれるものとなる。

 

しかし、それでも、誤った歩み方をすると、戦争と死に繋がる。

 

私は、人間は生まれつき価値がなく、人間らしくいるために自分の中の力を抑え込むことにより、自分を価値あるものにしなければならない、という考えにかねてから違和感を覚えていました。

 

完全でなくて、完璧でもない、ごく普通の人間に対して。

 

世の中の不思議なものに執着して、誘惑されながらも、自分の中に神聖な力を取り戻すことができるのか。

 

肉体、果実、そして、ワインのように・・・

 

こういった要素が、私がギリシャの神々に興味を持った理由。昔の世界の神々。それらの存在はすべてが不完全で、ほとんど私たちの手の届くところにいる。まるで、私たちが触れうる神々のように・・・

 

 

 

 

 

 

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