Norah Jones&Laufey

 

Norah Jones(ノラ・ジョーンズ)Laufey(レイヴェイ)は11月10日にクリスマスをモチーフにした2曲入りのシングル「Christmas With You」をリリースしている。

 

デュオは、昨日、アメリカのNBCの朝の情報番組に出演し、シングルの2曲目に収録されている「Better Than Snow」をアコースティックで披露した。ノラ・ジョーンズのスタンダード・ジャズのピアノのムードたっぷりの弾き語りとレイヴェイのソウルフルな歌声が絶妙にマッチした名演となっている。一足先にクリスマスの幸せな気分に浸らせてくれる素敵なパフォーマンスだ。


ノラ・ジョーンズはホリデー・ソングとして、2022年にクリスマスアルバム『I Dream Of Chrismas』を発表し、後にデラックス・バージョンをリリースしている。さらにレイヴェイは、11月3日に三曲収録のホリデーソング集「A Very Laufey Holiday!」をリリースし、翌日にはspotify限定リリースとなるクリスマスソングの定番曲のカバー「Winter Wonderland」を発表した。


 

©︎Dalina


Another Skyは、3月1日にRepublic/Fiction(Universal Music)からリリースされるニューアルバム『Beach Day』を発表した。

 

アナザー・スカイは、サウスロンドンのバンドで、Wednesday,Daughter,Priestgateに続く有望株である。スタイリッシュなギターロック・サウンドに加えて、ケイトリン・ヴィンセントのアーシーなボーカルが際立った印象を付加している。オルタナティヴ・ロックサウンドがソングライティングの主体ではあるように思えるが、その一方、ポピュラー・ミュージックを忌避しているわけではない。バンドのサウンドの中に滲む清涼感のあるポピュラー性は、ロックファンにとどまらず、早耳のポピュラー・ミュージック・ファンを惹きつける可能性を秘めている。従来のグループとは一風変わったインディーロックバンドとして注目しておきたい。

 

新作アルバム『Beach Day」には、先行公開された複数のシングル「Psychopath」、「A Feeling」、「Burn the Way」、「Uh Oh!」が収録されている。バンドは「Aimee Caught A Moth」を新たに公開した。このニューシングルは単発の作品で、新作アルバムには収録されない。


ヴォーカルのケイトリン・ヴィンセントプレスリリースの中で、「私たちは、このアルバムをどのように発表すればいいのか正確には分かりませんでした」と説明している。

 

「言葉以上のものが必要だと感じた。それに、すでに多くの先行曲を発表している。だから、B面の『Aimee Caught A Moth』を皆さんにプレゼントしたいのです。この曲は網の目をくぐり抜けてしまった曲のひとつで、私たちは今でもこの曲を愛してます。この曲は、私の同居人、エイミーがクモの巣から蛾を捕まえて放したとき、監禁状態のどん底で書かれた曲。信じられないほど重要で、歌にふさわしいと感じた。エイミーは素晴らしい人なのだし、歌にふさわしい」


新作アルバムについてヴィンセントは、「2019年に『I Slept on the Floor』をリリースしたとき、2枚目のレコードを完成させたと思っていた。しかし、時間は複雑な獣です。そして、ロックダウンの深淵の中で、新しいビジョンが生まれ、私たち全員がそのビジョンに従う必要があるとわかっていた。そのビジョンが『Beach Day』です。これは、個人的な冬を乗り越え、光を見出す物語。シャドウ・サイド、怒り、悲しみ......。それらを乗り越えるため、自分の中のそうした部分を愛することを学ぶ。その中に変容の始まりを感じてもらえれば幸いです」と述べた。 

 

 

「Aimee Caught A Moth」




Another Sky 『Beach Day』

 

Label: Republic/Fiction(Universal Music)

Release: 2023/3/1

 

Tracklist:


1. Beach Day

2. The Pain

3. A Feeling

4. Uh Oh!

5. I Never Had Control

6. Death Of The Author

7. Burn The Way

8. Psychopath

9. Playground

10. City Drones

11. I Caught On Fire

12. Star Roaming

13. Swirling Smoke

 


テネシー/ナッシュビルのハードコアバンド、Snõõperが新曲「Company Car」をbandcamp限定でリリースした。

 

Snõõperは今年7月に、Third Manからデビュー作『Super Snõper』をリリースしている。ライオット・ガールの系譜に属するパンクサウンドをガレージ・ロックと結びつけ、コアなパンクファンの間で一躍有望視されるようになった。デビューアルバムの収録曲「Investory」では、オレンジカウンティの最初のパンクバンド、Middle ClassやワシントンDCのストレイト・エッジに近いハードコア・ナンバーを披露している。ライオット・ガール・パンクがバンドの最大の持ち味であるが、一方で、ガレージ・ロックのような荒削りな質感も彼らのサウンドの醍醐味の一つだ。

 

今回発表されたニューシングル「Company Car」では、Circle Jerks,Xを始めとするカルフォルニアのパンクのカルト性を継承している。

 

ナッシュビルの新世代のパンクバンドは新曲で新たにトリッピーなシンセを飛び道具として追加し、ノイズというフィルターを通じてポスト・パンク的なサウンドに挑戦している。ボーカルやコーラス前のめりな勢いがあるため、彼らの持ち味であるスピード感満載のシングルとなっている。


Taylor Swift/The Eras Tour

現在、世界的に旋風を巻き起こしている「テイラー・スウィフト現象」は依然として収まる気配を見せないテイラー・スウィフトの大ヒットコンサート映画『The Eras Tour』は、本作の配給会社のAMCシアターによると、全世界でのチケット売り上げが2億5000万ドルを突破したことが分かった。ハリウッド・レポーター紙によると、この凄まじい記録は、3時間以上のミュージカル大作が、今年の大作映画トップ20にランクインしたことを意味するという。


さらに、ビルボード誌によると、映画『Eras Tour』は週末を終えて、北米での累計興行収入は1億7820万ドル、海外での累計興行収入は7180万ドルにのぼった。このコンサート映画は現在、2023年の世界興収ランキングで『The Nun II』(2億6800万ドル)に次ぐ19位を記録し、アメリカ国内では反人身売買映画として物議を醸した『サウンド・オブ・フリーダム』(1億8420万ドル)、『ジョン・ウィック:チャプター4』(1億8710万ドル)に次ぐ11位につけている。


映画『The Eras Tour』は今週木曜日(11月30日)に再公開される。11月27日、シンガーは34歳の誕生日を記念して、この映画を家庭用オンデマンドで配信すると発表した。彼女のキャリアを振り返るツアーの記録は、劇場版ではフィーチャーされなかった3曲をフィーチャーした拡大版としてホームスクリーンに登場する。「Wildest Dreams」、「The Archer」、「Long Live 」である。


この映画は、米国、カナダ、そして近日中に発表される他国で、12月13日にオンデマンドでレンタルされる予定。現時点では、日本での公開は未定となっている。『Taylor Swift: The Eras Tour』は10月に公開され、9,280万ドル以上の興行収入を記録し、たった1回の週末で瞬く間にコンサート映画史上トップの興行収入を記録した。 

 

このニュースを自身のソーシャル・メディアで発表したテイラー・スウィフトは、今回レンタル開始される同映画の拡大版には、「Wildest Dreams」「The Archer」「Long Live」のパフォーマンスが追加収録されることを明かしている。同映画には、カリフォルニア州イングルウッドにあるSoFiスタジアムで行われた“THE ERAS TOUR”からの3公演の映像が収録される。

 



先月、テイラー・スウィフトは、2014年の大ヒット・アルバムの再録版で、5曲の未発表曲を追加収録した『1989 (Taylor’s Version)』を発表した。彼女は、本作のリリースを、2023年12月22日に全米で公開予定の新作アニメ映画『Migration』の予告編に登場した「Out Of The Woods」の新ヴァージョンで予告している。ジャック・アントノフと共作・共同プロデュースした同曲のオリジナル・ヴァージョンは、アルバム『1989』からの6曲目のシングルとして2016年にリリース。


The Beatles during a photo session in Twickenham on April 9, 1969. Photo by Bruce McBroom / © Apple Corps Ltd.


ザ・ビートルズのコンピレーション・アルバム『レッド・アルバム』と『ブルー・アルバム』が、ビルボードのトップ・アルバム・セールス・チャート(11月25日付)にそれぞれ6位と5位で再登場した。両アルバムは11月10日に再発されたばかりだ。


ルミネイト社によると、11月16日までの1週間の全米売上は2万2000枚と2万4000枚。両アルバムとも、1994年12月24日に終わる週に37,000枚、40,000枚を売り上げて以来、最大の売上週となった。


1962-1966年(レッド・アルバム)と1967-1970年(ブルー・アルバム)のレコードは、世界中のあらゆる年齢層の無数のリスナーを、生涯にわたるビートルズ・ファンへと導いた。


2023年リリースの新譜のために拡張されたこのコレクションは、最初のシングル "Love Me Do "から最後の "Now And Then "まで、ザ・ビートルズの全音源を75曲の傑出したトラックで網羅している。新たに追加された21曲(Redは12曲、Blueは9曲)は、ビートルズの超名曲をさらにアピールしている。


他のビートルズ・チャート・ニュースとしては、今月初め、彼らはUKチャート1位に返り咲き、記録を更新した。彼らは、"最後の "楽曲である "Now and Then "をリリースした後、同チャートにランクインした。これはバンドにとって18曲目のチャート・トップとなった。


最後のNo.1獲得が1969年だったため、彼らはNo.1シングルの間隔が最も長いバンドまたはアーティストとなった。ケイト・ブッシュが "Wuthering Heights "で1位を獲得してから44年後に "Running Up That Hill "で1位を獲得している。


"Now and Then "はジョン・レノンが書き、歌い、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターが練り上げ、40年以上経ってポールとリンゴが完成させた。


このニュースを聞いたマッカートニーは、次のような声明を発表した。「頭が真っ白になったよ。とても感動的な瞬間でもある。大好きだ!」


両コレクションは、ストリーミングでのデジタル配信、2CD、180g 3LP ブラック・ヴァイナルに加え、ビートルズ・ストア限定盤として、3LP カラー・ヴァイナル(レッドはレッド/ブルーはブルー)、4CD スリップケース・セット、180g 6LP ブラック・ヴァイナル・スリップケース・セット、6LP レッド+ブルー・ヴァイナル・スリップケース・セットが発売される。公式リンクはこちら

 Guided By Voices 『Nowhere To Go But Up』
 


Label: Guided By Voices Inc.

Release: 2023/11/24



Review

 

1980年代、当時、学校教師をしていたロバート・ポラードを中心に結成されたオハイオの伝説的なオルタナティヴロックバンド、GBV(Guided By Voices)は、最も活躍した年代こそ不明であるが、90年代、00年代のUSオルタナティヴ・ロックの大御所と見なされてもおかしくない。

 

このシーンには、Pixies、Superchunk、Dinasour Jr.(J. Mascis)のオルタナ御三家を筆頭に、Pavement、Archers Of The Loaf、Sebadoh,そして、Guided By Voicesが並んでいる。さらに、マニアックになると、4ADに所属するThrowing Muses、Breeders、Amps(双方ともに、Pixiesのベーシスト/ボーカル、キム・ディールのバンド)、Drive Like Jehu、Galaxie 500、さらにはシカゴのレーベル、タッチ・アンド・ゴー界隈のインディーロックバンドというように無数のバンドがいる。もちろん、さらにアンダーグランドに潜っていくと、オーバーグラウンドのグランジの対抗勢力である、Red House Painters、Codeineといったスロウコアのバンドに繋がるということになる。サッドコアやインディーフォークの代表格であるElliot Smithあたりも挙げられるだろう。

 

サブ・ポップのレーベル紹介でも書いた事があるが、そもそも80年代後半くらいまでは、米国にはインディーズシーンというのが明確に存在しなかったという。例外としてはThe Sonics等、ガレージロックの原点にあるバンドがいる。ただ単体でやっているバンドはいても、象徴的なシーンが存在しなかったということは、ポスト・パンクとハードコア・パンクという二つのファクターを介してであるが、「インディーズ」という概念が明確に存在したイギリスの音楽シーンとは対照的である。そこで、サブ・ポップのファウンダーとカート・コバーンは協力して、サブ・ポップを立ち上げ、独立のラジオ局でしか流れていなかったメジャーと契約していないインディペンデントのアーティストを支援した。当初、サブ・ポップはシングル・コレクションというのを企画し、『Nevermind』以前のGreen Riverを始めとするグランジの源流を形成した。

 

これは、それ以前に、アバディーンのMelvinsが呼び込もうとしていた流れでもあったのだが、その流れを汲み、90年代以降のR.E.Mに代表されるようなカレッジ・ロック(大学生に親しまれるラジオでオンエアされるロック)が流行るようになったというのが個人的な見解である。以後、インディーズシーンというのが形成され、90年代にはメジャーと契約せずに活動するバンドというのが、米国でも主流となっていったというような印象がある。おそらく当時は、インディーズで活動するということに何かしらメインストリームに対する反骨的な意味が含まれていたものと思われる。しかし、現在では、Dead Oceans、ANTI、Matador、Merge等、主要なインディーズレーベルが群雄割拠している米国のレコード業界であるが、インディーズはインディーズとしての原初的な意義を失いつつあるということで、たとえば、メジャーリーグの始球式にインディーズ・レーベルが所属するアーティストをブッキング出来ることを鑑みると、メジャー、インディーズの垣根が2010年代頃から取り払われた、もしくは、取り払われつつあるというような流れを捉えられる。

 

そういった昨今のミュージック・シーンの動向の中、主流になりつつあるのが以前とは正反対のスタイルである。つまり、メジャーに所属することも出来るけれど、あえてバンドのインプリントのレーベルからリリースを行うバンドがいる。例えば、大御所でいえば、メタリカ等が挙げられるが、これは商業的な側面では、その限りではないものの、セルフリリースに近い趣旨で作品を発表してきたいという、バンドメンバーやマネージメント側の思惑があるのかもしれない。『Nowhere To Go But Up』を発表したGuided By Voicesも、バンドの独立したレーベルから昨今、リリースを行い、よりコアなファンを取り込もうとしている。

 

そもそも、Guided By Voicesというバンドは、Archers Of The Loafと同様に、誰もが傑作と呼ぶアルバムを持たない。それに加え、Sebadohの「Skull」のような、「このバンドであればこれを聞こう」という代名詞的な一曲もほとんどない。にもかかわらず解散した時期もあったが、現在も活動を継続している。これは、よく考えるまでもなく、驚異的なことである。しかし、日本のロックバンド、怒髪天のメンバーがいっていたように、「飛ぶように売れすぎない」ことが、バンドの寿命をより長くする秘訣でもあるという。この成功事例に則っているのが、Guided By Voicesであり、それほどメガヒットを記録することもないけれど、90年代から以降の年代にかけて、じわりじわりとファンベースの裾野を拡大していき、USオルタナティヴロックの大御所というべき地位を獲得していったのである。これはかなり根気のいることなのは確かで、現在も辛抱強く活動を続けているいうことが奇跡であり、まさしくレジェンドたる所以なのだろう。音楽は、必ずしも人生の最重要事項になりえないため、活動を長く維持することはきわめて困難なのである。


『Nowhere To Go But Up』は、バンドがR.E.Mに代表されるカレッジロックやオルタナティブロックの原点に回帰したアルバムである。近年、過去のリイシューを含め、ガレージ・ロック的な荒削りな作風を発表していたGBVだが、今作ではよりキャッチーで親しみやすい作風へと転じている。

 

アルバムのタイトル、オープニング「The Race Is On,The King is Dead」を始め、啓示的な題名が目立つが、楽曲そのものは90、00年代のオルタナティヴロックの王道の音楽性である。ここにはGuided By Voicesとしてのスタンダードなインディーロックのスタイルにとどまらず、Superchunk、Archers Of The Loafのようなロックバンドに近いアプローチも綿密に取り入れている。特に、ロバート・ポラードのボーカルのメロディーは、Superchunkの90年代ごろの懐かしさを思わせ、また、じんわりとした温かみがあり、琴線に触れるものがある。

 

例えば、二曲目の「Puncher's Parade」はそのことを物語っている。この年代のバンドとしては珍しく深い叙情性を失っていないし、デビュー間もないバンドに見られる荒削りな側面もある。ポラードのボーカルラインには、90、00年代の懐かしさが漂う。そして、ひねりのあるオルタナのギターのコード進行に対し、驚くほど丹念にボーカルを紡いでいる。ここにはメンバー間の信頼関係を読み取れる。それと同じように、三曲目「Local Master Airline」でも、バンドは米国のインディーズの源流を捉え、ガレージ・ロックやグランジのようなオーバードライブをかけたイントロから、円熟味と渋さを兼ね備えたロックソングへと移行する。


ただ、この曲に関しては、オルタナティヴとは断定しきれないものがある。どちらかと言えば、普遍的なアメリカンロックという感じで、スプリングスティーンのような安定感のあるソングライティングである。ただ、それはスタジアム級のアンセムではなく、少人数のライブスペースを意識したロックという範疇に収められている。つまり、Husker Duのボブ・モールドがSUGARで追求した抒情的なアメリカンロックに近い。


昨年あたりのGBVのリリースから継続して行われていたことだったが、例えば、Big Muffを思わせるファジーな音作りはこのアルバムでも健在で、「How Did He Get Up There?」はその先鋒となるトラックだろう。ミドルテンポのカレッジ・ロックというフィルターを通して、適度なクランチさと心地よさを兼ね備えたロックソングを提示している。そしてここには、ガレージ・ロックの傍流であるストーナーロックのようなワイルドさもあり、キャッチーさを意識した上で、パンチとフックの聴いた曲を書こうというバンドの思惑も感じられる。


他にもバンドやロバート・ポラードのボーカルの指針として、ボブ・モールドのSUGARのスタイルが念頭にあるという気がする。「Stabbing at Fanctions」では、バンドとしてのパンチやフックを失わずに、それをゆったりとした安定感のあるロックソングに濾過し、それをさらに、Green River、Mother Love Boneといったグランジの出発点にあるプリミティヴなロック性に焦点を当てている。しかし、最終的にボラードのボーカルはボブ・モールドのようなメロディー性に重点が置かれ、それほど暗くはならず、重苦しくもならず、カレッジロックのように気軽な曲として楽しめるはず。

 

中盤まではいつものGBVと思えるが、オルタナティヴロックバンドとしての新しい試みをいくつか行われている。「Love Set」では、シンセサイザーでバグパイプのような音色を生み出し、それをクラウト・ロックやプログレッシヴ・バンドのような手法で組み直している。バンドはセッションの面白みに重きを置き、テンポをスローダウンさせたり、変拍子的な展開を込めたりと、かなり工夫を凝らしている。しかし、やはり、ポラードのボーカルについては変わらず、温和なインディーロックというアーティスト独自の個性を付け加えている。

 

ただ、中盤まではそれなりに良曲も収録されているが、アルバムの終盤では、序盤の野心的なアプローチが薄れる瞬間もある。これは使い古されたスタイルをアルバムの空白を埋めるような感じで収録してしまったことに要因がある。ハードロック的なアプローチを図った「Jack Of Legs」、民族音楽の要素を取り入れ、Led Zeppelinのインディーロックバージョンとも称せる「For The Home」は、バンドが新しい方向性に進んだと解釈出来なくもないが、デビュー時のMarz Voltaのような鮮烈な印象をもたらすまでには至っていないのが残念だ。

 

ただ、アルバムの最終盤で持ち直す瞬間もある。「Cruel For Rats」では貫禄のあるロックバンドの風格を漂わせる。相変わらずバンドのロックは渋さがあり、聞き入らせる。


そして、アルバムのクローズ「Song and Dance」は、本作の唯一のインディーロックのアンセムとも称すべきか。ギターとボーカルコーラスの調和的な意味合いを持つ最後の曲の効果もあってか、『Nowhere To Go But Up』は、バンドの数あるカタログの中でも聴かせる作品となっている。GBVは最高のロックバンドではないのかもしれないが、平均的な水準以上の音楽を提供し、今も世界のファンを魅了しつづけている。

 

 


74/100



Featured Track 「Puncher's Parade」

 


台湾/高雄を象徴するポストロックバンド、Elephant Gym(エレファント・ジム)は、今年、デビューEP発表から10周年を記念して、ニューアルバム『New World』のリリースを11月はじめに発表した。今回、バンドはこのニューアルバムから先行シングル2曲をデジタルで公開した。

 

今回、リリースされたのは「Happy Prince (feat. YILE LIN)」「Ocean in the Night (feat. 洪申豪 & KCWO) [Orchestra Ver.]」。前者は初期のエレファント・ジムの楽曲のエバーグリーンな雰囲気を思わせ、後者はポスト・ロックバンドらしいミニマリズムに根ざしたロックソングとなっている。


アジア各国や欧米でのツアーも重ね、全世界的に高い評価を得ている台湾出身のスリーピース・バンド、Elephant Gym。昨年、フジロックフェスティバル'22での演奏が話題となり、その後のツアーも大盛況となった。今や最も影響力のあるアジアのインディーバンドとなっている。


1st EP「BALANCE」をリリースして10周年を迎えるに当たり、世界を股にかけて活動するバンドらしく、その名も「WORLD」と冠したフルレングスのアルバムをリリースする。Elephant Gymはこの10年で、スリーピースのバンドサウンドから徐々に進化を遂げ、幅広い音楽性を体現してきた。「WORLD」というタイトルは、バンドが世界的に活動するということのみならず、様々なジャンルや境界線を越えていこうとしていることも示している。国境、人種、国籍、性別、音楽的ジャンルなどの境界線や限界を越えようとする想いが込められている。


 このシングルリリース「Happy Prince」は、そのアルバムから2曲を先行して配信する。



 1. 「Happy Prince (feat. YILE LIN)」

 

初期のElephant Gymに見受けられたような、軽やかでキャッチーなスリーピースバンドサウンドとなっている。同時に、この10年の成長を感じさせる安定感のある力強いロックを鳴らしている。台湾インディーシーンを代表するシンガーソングライター・YILE LIN(林以樂)がボーカルで参加している。インディーポップバンド「Freckles(雀斑)」やシュゲイザーバンド「BOYZ&GIRL」で作曲やボーカルを務めてきた、台湾インディーシーンを代表するアーティストだ。


 2. 「Ocean In The Night (feat. Hom ShenHao, KCWO)」

 

フジロック・フェスティバル’22でも披露し、大きな反響を巻き起こしたホーンセクションを交えている。日本でも名の知られている「透明雑誌」のフロントマン、Hom ShenHao(洪申豪)をボーカルに迎えたElephant Gymの代表曲を新録。Elephant Gymの出身地でもある台湾高雄市のブラスバンド、Kaohsiung City WindOrchestraを従え、10周年のリリースらしい代表曲のホーンアレンジ。 

 



Elephant Gymはフジロック・フェスティバル 2023の出演に続いて、2024年1月下旬に開催される来日ツアーの詳細も発表している。本公演は、1月25日に大阪 BIGCAT、27日に名古屋 The Bottom Line、 28日に渋谷 Spotify O-Eastで開催される。



Elephant Gym 「Happy Prince」 New Single

WORDS Recordings

配信開始日:2023-11-28

 

収録曲:

1: Happy Prince (feat. YILE LIN)
Elephant Gym
2: Ocean in the Night (feat. 洪申豪 & KCWO) [Orchestra Ver.]


配信リンク:

https://linkco.re/DPv5tH7a

 


Elephant Gym 『New World』 New Album


Worldwide(Digital):2023.12.14 ON SALE
Japan(CD+DVD):2023.12.20 ON SALE
WDSR-006/¥2,970(税込) ※CD+DVD
[WORDS Recordings]

 

収録曲:
 
1. Jhalleyaa Feat. Shashaa Tirupati
2. Feather Feat. ?te (壞特)
3. Adventure
4. Flowers
5. Name Feat. Seiji Kameda (亀田誠治)
6. Galaxy (Orchestra ver.) Feat. KCWO(高雄市管樂團)
7. Light (Orchestra ver.) Feat. KCWO(高雄市管樂團)
8. Ocean In The Night (Orchestra ver.) Feat. Hom Shen Hao (洪申豪), KCWO(高雄市管樂團)
9. Happy Prince Feat. YILE LIN (林以樂)
10. Feather Feat. TENDRE


 
[ライヴDVD付] ※数量限定、日本流通のみ
1. Spring Rain
2. Go Through The Night
3. Dreamlike
4. D
5. Ocean In The Night


  

ツアー情報:

 
[Elephant Gym The "WORLD" Tour]
2024年
1月25日(木)大阪 BIGCAT
1月27日(土)名古屋 THE BOTTOM LINE
1月28日(日)渋谷 Spotify O-EAST
ゲスト:象眠舎
[チケット]
ぴあ|ローチケ|イープラス

©Sinna Nasseri

ニュージャージーのオルタナティヴロックバンド、Real Estate(リアル・エステート)はニューアルバム『Daniel』の制作を発表した。新作アルバムは2月23日にDominoからリリースされる


リード・シングル「Water Underground」は、1990年代のニコロデオンのシットコム「The Adventures of Pete & Pete」にインスパイアされたビデオと合わせて本日リリース。このクリップはエドモンド・ホーキンスが監督し、同番組のダニー・タンベレリとマイケル・C・マロンナが出演している。


マーティン・コートニー、アレックス・ブリーカー、マット・カルマン、ジュリアン・リンチ、サミ・ニスによるリアル・エステイトは、2020年の『ザ・メイン・シング』に続く作品を、プロデューサーのダニエル・タシアンとナッシュビルのRCAスタジオAでレコーディングした。

 

プレスリリースによると、彼らはアルバム名を「Daniel」と名付けた。ダニエル・タシアンのため?そうかもしれない。それは、自分たち自身や自分たちの認識を深刻に考えすぎることなく、自分たちの音楽を真剣に受け止められるようになったバンドの証なのだろうか?もちろん」。


「この曲は、曲を書くことについて歌っている。"ウォーター・アンダーグラウンド "は無意識のようなもので、創造性が生まれる脳の神秘的な部分だと思う。頭の奥で常に音楽が流れている。運転中とか犬の散歩中とかにアイデアが浮かんで、それを持ち続けたいと思うんだ」


「ニュージャージーのルーツを断ち切るのは難しいよ」とタンベレッリはコメントした。「ジュリアンもアレックスもマーティンも、僕から1つ離れた町で育ったんだし、実はリッジウッド出身の友人の弟妹と友達だったんだ。私が高校生の時に、その兄姉たちと一緒に地元のバンドシェルで演奏しているのを見たこともあると言ってくれた。このビデオでは、それを一周させ、ショーで共演した親愛なる旧友たちを加えることで、すべてを結びつけることができた」 

 

 

「Water Underground」

 

 

Real Estate 『Daniel』




Label: Domino

Release: 2023/2/23


Tracklist:


1. Somebody New

2. Haunted World

3. Water Underground

4. Flowers

5. Interior

6. Freeze Brain

7. Say No More

8. Airdrop

9. Victoria

10. Market Street

11. You Are Here


80年代のUKポストパンクシーンの一角を担ったKilling Jokeのギタリスト、ジョーディ・ウォーカーが64歳で死去した。

 

バンドは、ダブ、インダストリアル、メタルの音楽をミックスし、ポストパンクシーンに新風を呼び込み、Gang Of Fourと共にイギリス独自のリズムを確立した。ジョーディー・ウォーカーは変則的なビートによるリズムギターを演奏することで知られている。バンドの楽曲「The Wait」は、のちにメタリカによってカバーされ、メタルファンにもその名を知られるようになった。


バンドメンバーはインスタグラムでこのニュースを確認し、次のように書いた。「2023年11月26日午前6時30分、プラハにて、キリング・ジョークの伝説的ギタリスト、ケヴィン・ジョーディ・ウォーカーが脳梗塞で倒れ、家族に囲まれて息を引き取った。彼は家族に囲まれていた。安らかに眠ってほしい」


1958年生まれのウォーカーは、シンガーのジャズ・コールマンと共に、伝説のポスト・パンク・バンドのたった2人しかいない不変のメンバーのひとりだった。彼は、コールマンが『メロディー・メーカー』に掲載した広告に反応し、1979年にバンドに加入した。「キリング・ジョークの一員になりたい? 完全な搾取、完全な宣伝、完全な匿名。ベースとリード募集」という広告を見かけたのがきっかけだった。


「ロンドンに引っ越してきたばかりで、Melody Maker誌の広告を見た。で、その男に会いに行って、すぐに音楽の趣味とかについて彼と口論を始めた。言い争いの激しさが気に入ったんだと思うよ」


1979年に最初のEP『Turn to Red』をリリース後、キリング・ジョークは翌年にセルフタイトルのデビュー・アルバムをリリースした。


彼らの目標は「厳格な音楽形式によって音楽的ルネッサンスを起こすこと」だったと、コールマンは2018年に『Uncut』に語った。「1979年の日記にそう書いた。ギターソロなし、パロディ以外のブルースなし、アメリカニズムなし。私たちは、イギリスのリズムとは何かというようなことを延々と話し合った。私たちには伝統的なフォークがなかった。キリング・ジョークは伝統を再発見したのさ」


キリング・ジョークの1980年代のリリース活動は、1981年の『What's THIS For...!』、1982年の『Revelations』を含む7枚のスタジオ・アルバムまで及ぶ。


その頃、ウォーカーはコールマンと共に、黙示録への懸念からアイスランドの首都レイキャビクに移住した。1985年、バンドはヒット・シングル'Love Like Blood'と'Eighties'をフィーチャーした『Night Time』をリリース。ギャング・オブ・フォーのアンディ・ギルは、デイヴ・グロールをドラムに迎えた2003年のセルフタイトル・アルバムをプロデュースした。バンドの最新作は昨年の『Lord of Chaos EP』で、3月にはシングル「Full Spectrum Dominance」をリリースした。


「世界中の何百万人もの人々にとって、ジョーディは伝説的なロックバンド、キリング・ジョークのギタリストであり、メイン・ソングライターだった」と、彼の親友ルカ・シニョレッリはウォーカーへの弔辞に書いている。


「メタリカが1980年のKJの曲 "The Wait "をカヴァーしたことで、バンドとジョーディーのギター・ワークは少なくとも2つの新しい世代に紹介された。ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリンで有名なあのジミー・ペイジ)は、ジョーディを史上最高のギタリストの一人と考えていた」


「しかし、彼が "ギタリストのギタリスト "であったからという理由でジョーディを称えたくはないね。彼が40年に及ぶ成功と危機の中で陣頭指揮を執ったバンド、キリング・ジョークは、今でも史上最も影響力のあるバンドのひとつなんだ。でも、ジョーディの音楽的記録については、私が語るよりも、他の人たちがよりよく語ってくれるはずさ。今となっては、そんなことはどうでもいいよ。私が覚えておきたいのは、ジョーディが40年間、家族以外で最も親しい友人であり、最も大切な人だったということなんだよ」



キリング・ジョークのセルフタイトルアルバムが紹介されているポストパンク名盤ガイドも参照してみて下さい。

 


ピーター・ガブリエルが、12月1日にリリースされるニューアルバム『i/o』の最終曲「Live and Let Live」を公開した。これまで満月に合わせて神秘主義的なリリースをおこなってきたガブリエル。新作アルバムのラストプレビューだ。


このアルバムは、ジェネシスのボーカリスト、ピーター・ガブリエルにとって21年ぶりとなるオリジナル曲集である。「ライブ・アンド・レット・ライブ」ブライト・サイド・ミックスとダーク・サイド・ミックスと合わせて以下をチェックしてみよう。


このシングルについて、ガブリエルは声明を通じて、人種隔離政策(アパルトヘイト)、ウクライナ戦争、中東戦争と彼が関心を持つあらゆる現象に由来することを解き明かした。そしてロックアーティストとして考える平和とは何か、赦しとは何かについて重要な弁明を行なっている。


「リバーブレーション・プロジェクトの多くの作業は、そのようなアイデアに焦点を当てている。赦しについて書くのはどうかと提案されたとき、最初は『私には面白くないな』と思ったが、2つのことを思い出した。デズモンド・ツツ大主教は、エルダーズの議長であり、私の真の師でもある。南アフリカで真実和解委員会を率い、アパルトヘイト時代の恐怖の一部を暴露し、報告し、そしてまた感じることができた。彼がいつも言っていたのは、『耳を傾けることが大きな違いを生む』ということだった。そして時には、それが赦しの空間を生み出すこともあった。


 また、ネルソン・マンデラが27年間の獄中生活を終えて出所し、南アフリカの大統領になろうとしたとき、自分を牢獄に閉じ込めていた責任者たちの隣に立っていたというエピソードもある。彼は、古い恐怖と憎しみが自分の中で膨らんでいくのを感じたという。しかし、よく考えてみると、彼はこれらの人々と協力し、彼が『虹の連合』と呼ぶものを構築する方法を見つける必要があることに気づいた。彼らの人間性を感じ、最終的には彼らを許す方法を見つける必要があった。もし彼らを許せず、彼らと協力する方法を見つけられなければ、自分は一生彼らの囚人のままであると確信していたのだ。


 現在、中東やウクライナなど、暴力と残忍さが残る世界中のあらゆる場所で起きていることを見れば、花束を持ち、赦しを説いて歩くことは、陳腐で哀れなことのように思えるかもしれない。でも、長い目で見れば、人々は道を見つけなければならないと思う。『平和は他人の権利を尊重するときにのみ起こる』というのは、コスタリカの平和大学の言葉ですが、これは私にとって、そして私の人生にとって本当に重要なメッセージだと思いました。その傷に従属するか、自分自身を解放するかのどちらかであり、赦すことは明らかに自分自身を解放する超効果的な方法なんだ」



海外ではその名をよく知られる”Yoshi Wada”の愛称で親しまれる和田義正は、音楽家としてだけでなく、楽器開発者として見ても本物の天才である。和田は、ラ・モンテ・ヤングと並んでドローンミュージックの重要なファクターに挙げられる。「Nue」を始めとする代表作があるが、ストリーミングではほとんど視聴出来ない。フィジカル盤のみ彼の作品に触れることが可能である。

 

和田はドローンミュージックの重要な構成要素である止まった音、すなわちオーケストラでいうところの持続音や保続音に徹底してこだわった。彼は、77年の生涯の中で、インド声楽やスコットランドのパグパイプの持続音に取り憑かれ、その人生を前衛音楽の追求に費やした。


和田義正は1943年に京都に生まれた。建築家を務めた彼の父は第二次世界大戦で亡くなっている。子供時代は、そのほとんどが上記の理由により、苦難に満ち溢れていたというのが通説となっている。彼が音楽に目覚めたのは10代の頃。サックスフォンを演奏しはじめ、ジャズに傾倒した。

 

オーネット・コールマン、ソニー・ロリンズ等、ジャズの巨匠の音楽に触れ、特にこの音楽に強く傾倒したという。1967年には、京都美術大学で彫刻を学習し、彼はニューヨークへと旅立った。その後、ジョージ・マチューナスが住むアパートへと転居する。フルクサス(1960年代から1970代にかけて発生した、芸術家、作曲家、デザイナー、詩人らによる前衛芸術運動。リトアニア出身のデザイナー、建築家 ジョージ・マチューナスが提唱したと言われている)のマチューナスは、和田義正をオノ・ヨーコ、久保田成子(クボタ・シゲコ)に紹介し、当時使用されていなかったニューヨークのソーホーのロフトをアーティストの空間にリノベートするために彼を雇った。


彼の中頃の人生の中心にはニューヨークのダウンタウンがあった。当時、活気のある実験音楽のシーンが発生した後、和田はミニマリストの作曲家、ラ・モンテ・ヤングと電子音楽を学び、さらに北インドの声楽家であるパンディット・プラン・ナートと歌唱法の勉強に取り組んだ。以後、ナンシー・クラッチャ―からバクパイプの演奏法を学び、即興音楽を制作しはじめた。彼は音響工学の中に、インド、スコットランド、マケドニア等、複数の地域にある独自の民謡や土着の音楽を取り入れた。


以降、彼は独自の管楽器の制作に着手し、「ハイプホーン」という楽器を開発している。別名「アースホーン」とも称されるこの楽器が、実制作として陽の目を見ることになったのが1974年である。さらに、彼はパグパイプとインド楽器に触発を受けた新式の楽器を開発する。これらは、空気を圧縮したパグパイプのような構造を持ち、1982年の作品「Lament for the Rise and Fall of the Elepantine Crocodile」に反映されることになった。


その後、「Off The Wall」を制作に取り掛かった。D.A.A.Dのフェローシップを得て、1983年から一年間、ベルリンに滞在し録音した。 教会の本式のパイプオルガンの構造と製作法を学び、『ラメント・フォー』で試した「改良共鳴バグパイプ」を発展させた小型パイプオルガンを新たに開発している。滞在先のスタジオ隣室から騒音苦情が出るほど研究に専念し、まるで実際的な大きさと質量を持つかのような構造物的な存在感のある音を構築した。こうした一年間の制作成果として1984年に録音されたのが『Off The Wall』(※「壁にはね返る」というニュアンス)だった。和田の作品としてはグループ編成の演奏であるため、比較的分かりやすい内容になっている。

 

和田のライブのほとんどは即興演奏であり、自作自演も行った。しかし、同時に一般的に演奏できる作品やインスタレーションも多数制作した。この類の作品のカタログは1991年から翌年にかけて見出すことが出来る。その時代から和田はニューヨークでグループショーを開催するようになったが、この作品について当時、アート・フォーラムの記者であるキース・スワードは以下のように評した。「ワダの仕事は、コーヒー・グラインダー、フロントガラスのワイパー、ドラムキット、スチールパンをハンマーで打つ等、楽器の可能性を切り開くアプローチを行うことで、機械的なオーケストラを形成し、指揮することを可能とした。そのアイディアに関しては本質的には面白いものはないように思える。感情的な価値を求めるとしたら、それは音の生成のメカニズムや、リスナー、それからコンテクストの融合や結合に依存すると思われる」

 

彼は機械工学を用いたロボット的な音楽も制作した。これがドローン音楽のオリジネーターと目されることに加えて、彼が電子音楽やアンビエントの領域で語りつがれる理由でもある。一例では、航海の緊急使用の信号として用いられるタイプの「聴覚フレア」の信号を中心に機械工学的な知識に基づいた楽器、あるいはシステム構造を構築している。特に、この楽器は、「ハンディ・ホーン」とも称されるようで、「信号の開発」とも説明されることがある。それ以後、実験音楽という領域ではありながら、和田は知名度を高めていき、90年代半ばには、ピッツバーグにあるカーネギーメロンでの講義を終えてから、6名の学生に作品を演奏させた。 彼の音楽性はあまりに前衛的すぎたため、まだ一般的に受けいられるための時間を擁する必要があった。

 

和田義正は全生涯にわたり、商業的成功を手に収めることはなく、そのほとんどが資金不足に陥っていた。数少ない商業での成功例といえる「Lament for the Rise and Fall of the Elepantine Crocodile」ですら、印税のロイヤリティは数ドルという範疇に収まっていた。(このアルバムはニューヨークの実験音楽のレーベルである”RVNG”から発売されている。)しかし、以後、彼は電子音楽家である息子と協力し、晩年にかけて創作意欲を発揮しつづけた。2008年にWireのジム・ヘインズに対して、和田義正は、以下のように自らの音楽について言及している。「基本的に私は自由奔放なんです。私は自分のために面白い音楽を制作しようとしている。実は私はチェスをするためにアートをやめたマルセル・ドゥシャンはあまり好きではないのです」

 

 Spector 『Here Come The Early Nights』 

 


Label: Moth Noise

Release: 2023/11/24



Review

 

ロンドンのSpectorの『Here Come The Early Nights』は、現在、ストリーミングとLPヴァージョンで発売中。ディミトリ・ティコヴォイ(ゴースト、ザ・ホラーズ、マリアンヌ・フェイスフル、プラシーボ)と彼らの地元であるロンドンで13日間かけてレコーディングされた。

 

フレッド・マクファーソン、ジェド・カレン、ニコラス・パイ、ジェニファー・サニンの現在のツアー・ラインナップをフルにフィーチャーしたアルバムで、モス・ボーイズとのコラボレーター、ブラッド・オレンジこと、デヴ・ハインズが5曲で楽器演奏を担当している。ミックスはキャサリン・マークス(ボーイジニアス、ウルフ・アリス、アラニス・モリセット)が担当し、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、サラ・シュミットによる見事なダイカットLPパッケージが施されている。ヴァイナル・バージョンの本体には目がデザインされている。

 

ロンドンの大多数のインディーロックバンドは、新鮮な音楽や野心的な音源を制作することで知られている。一方、スペクターはそれとは対象的に、ノスタルジア溢れる作風を展開させている。

 

フロントマンのフレッド・マクファーソンの胸中には、仕事と家庭を両立させつつ、どのように音楽を制作するかという思いがあった。それはむしろこのアルバムで、安心感と安定感のあるアプローチという形で現れている。ブリット・ポップの一角を担ったASHの90年代の作風にも近い空気感が感じられる。ASHほどパンキッシュではないものの、オルタナティヴロックのアプローチの中には良質なメロディー、そしてシンガロングを誘うコーラスワークの妙が光る。


現在のレコーディングの過剰な演出やマスタリングが優勢な中、スペクターのアルバムは、むしろ90年代や00年代のインディーロックと同様に、素朴なミックスが施されている。派手なミックスはたしかに人目を惹くものの、他方、長く聴いていると聴覚が疲れるという難点もある。そういった観点から見るかぎり、『Here Come The Early Nights』は前2作のようなパンチこそないが、安心感があるのは事実のようである。 90年代のブリット・ポップに親しむリスナーであれば、何かの親近感を覚えるようなアルバム。これはまたフロントマンを始め、四人組がイギリスのロックの普遍的な良さを追求した作品ともいえる。夜に、ディズニープラスを子供と一緒に見ているような快適さをフロントマンのフレッド・マクファーソンは求めたというのだ。

 

2020年に発表された「No Fiction」、及び昨年の「Now or Whenever」ではインディーロックやダンスロック的な要素があり、また、特に2作目では、シンセサイザーを駆使して実験的なアート・ロックにも挑んでいたスペクターであるが、この三作目のLPではより親しみやすいブリットポップに傾倒しているように感じられる。それは前の2作を通じて提示されたインディーロックのバンドアンサンブルと深みのあるボーカルと相まって、オープニングを飾る「The Notion」のような初期のColdplayのような渋さと哀愁を兼ね備えたロックソングを生み出す契機となった。

 

その一方、ダンス・ロックへの親しみはこの最新アルバムにも受け継がれている。それは「Some People」に見出せる。The KIllersほどにはアリーナ級の観客の期待に応えるバンガーではないかもしれないが、一方、ボーカルラインに含まれるマクファーソンの人格的に円熟した感情性は、イントロからサビにかけて盛り上がりを見せ、80年代から90年代初頭のUKロックのノスタルジアへと続く。曲にはディスコサウンドの反映が留められ、それは現行のネオ・ソウル勢とは一線を画している。どちらかと言えば、MTV時代の懐古的な時代へと飛び込むかのようだ。

 

 

中盤に収録されている「Never Have More」は、前の2作で構築してきたSpectorサウンドをより親しみやすいロックとしてアウトプットしている。この曲も性急さや過剰さを避けながら、緩やかなインディーロックのアプローチを図っている。マクファーソンはサビの部分では渋さと円熟味のあるボーカルを披露しているが、それらを支えているのが繊細さとダイナミックス性を兼ね備えたギターライン、そしてメロディーやビートを損ねないドラム、もちろん、その補佐役となるベースラインである。これらのアンサンブルが渾然一体となり、ブリット・ポップ全盛期の思わせる一曲が生み出されることになった。BlurやAshといった名バンドを彷彿とさせる。


アルバムの中盤から終盤にかけて、人生を生きる上での必要性とアーティストとして生きる上での必要のある2つ、あるいは3つの側面を秤に掛けるような音楽性が続いている。それは足元の土を均すか、踏みしめる感覚にもよく似ている。


「Not Another Weekend」は、バンドの2020年の頃の回想とも取れるし、以後の「Pressure」では、家庭と仕事との合間にある緊張感が示されていると解釈出来る。一方、前作までとは異なり、信頼感と安定感のあるロックバンドとしての貫禄も表れている。「Another Life」は、2020年頃とは異なる人生の側面に焦点を絞っている。シンガロングを誘発する緩やかなサビを制作したのは、リスナーとの歩みと協調性を重視した結果とも考えられる。さらにシンプルなバラード「Room With a Different View」では三年でバンドやフロントマンの人生が変化したことが伺える。

 

スペクターのバンドとしての緩やかな変化や成長は、タイトル曲『Here Come The Early Nights』に特にわかりやすい形で反映されている。さらに、グルーブ感を意識したダンスポップソング「All of The World is Changing」は、デビュー時からスペクターが追求してきたスタイルの集大成と言える。スペクターはひとつずつ階段を上り続けている。今後のさらなる飛躍に期待しよう。

 

 

76/100

 

 

 Featured Track-「Driving Home For Halloween」

 


ブリストル発のポストパンクバンド、Mould(モールド)が「Birdsong」を発表し、鮮烈なデビューを飾った。


この曲は、バンドの底しれぬポテンシャルを体現している。ポスト・パンク的な勢いに加え、彼らは70年代のオリジナルのUKパンク、クラフトヴェルクの系譜にあるジャーマン・テクノの要素を追加している。若さゆえのアグレッシブさもバンドの強み。


「"Birdsong "は、僕らが初めて一緒に作った曲なんだ」とフロントマンでギタリストのジョー・シェリンは説明する。

 

「この曲は、楽観的であろうとすることがいかに疲れるかを歌っている。ある人に、僕は前向きで、いつも良いことを見ようとしていると言われたんだけど、この曲はその個人的な代償について歌っているんだ」

 

12月には、さらなるツアーが予定されている。来年には、リチュアル・ユニオンと2000treesでのセットも予定されている。

 


「Birdsong」

Weekly Music Feature


C'mon Tigre 『Habitat』 


 

 

・アフロジャズ、ロック、南米音楽で世界をつなぐ


約10年のキャリアを持ち、3枚のアルバムで高評価を得ているC'mon Tigreが、「Habitat」で音楽シーンに戻ってくる。9曲は、音楽とビジュアル・アートが常に影響し合い、未踏の実験的高みに到達するという、国際的な広がりを持つデュオ・プロジェクトの本質を余すところなく表現している。


この新しいディスコグラフィーの章は、特定のジャンルに属することを拒み、地球上のあらゆる場所からの影響を組み合わせ、前作に典型的なアフリカン・ジャズやエレクトロニック・スタイルの要素に、南米音楽からの新しいサウンドを加えている。


ジャンクなアンサンブルの中に、サウンドスケープとして浮かび上がるパノラマは、色とりどりの明瞭な生態系であり、動物も植物も、さまざまな形の生命が繁栄し共存する場所である。


レコーディングのコラボレーターも豪華だ。フェラ・クティの後継者であるセウン・クティのアフロビートから、サンパウロ出身の優れたブラジル人アーティスト、ゼニア・フランサの歌声、国際的な実験音楽の第一人者であるアルト・リンゼイ、イタリアのオルタナティヴ・シーンで最も興味深いシンガーソングライターのひとりであるジョヴァンニ・トゥルッピまで。


リスナーをエキゾチックで驚きに満ちた巡礼の旅へと誘う音楽の旅は、パオロ・ペッレグリン、ジャンルイジ・トッカフォンド、ハッリ・ペッチノッティ、ブギー、ジュール・ゲラン、エリカイルカネ、マウリツィオ・アンツェリといった作家やアーティストとともに、ビジュアル・アートの領域にもそのイメージを広げてきたグループのキャリアにおける基本的なステップだ。


録音には、他にも、ダニイェル・ジェジェリ、ドナート・サンソーネ(後者は「Twist Into Any Shape」のビデオクリップでLIAFロンドン国際アニメーションフェスティバル2022の最優秀ミュージック・ビデオ賞を受賞)、マルコ・モリネッリ(「Behold the Man」のビデオでLAFAロサンゼルス・フィルム・アワードやラスベガスのベガス・ムービー・アワードなど数々の国際映画祭で受賞)が参加。

 



 C'mon Tigre 『Habitat』/Intersuoni(Distrubute:Believe)


 

イタリアを拠点とするデュオ、C'mon Tigreによる最新作『Habitat』は、アフロジャズ、カリブ音楽、南米音楽、エレクトロ、ロックをリンクする一作。

 

このアルバムについて、C'mon Tigreは次のように説明している。「Habitatは、一見離れた世界をひとつにまとめ、それらの間に存在する緊密な相互関係を示す、音楽結合の力の証である」

 

アルバムはブラジル音楽に強く触発を受けており、リズミカルなルーツは、サンバやフォロにあるという。

 

アフロ・フューチャリズムの祖/フェラ・クティの子孫であるセウン・クティの参加は、彼らがロンドンのジャズ・コレクティブ、Ezra Collecctiveに近い指針を持ち、ジャンルそのものにとらわれずに活動していることを証立てている。これらのコラボレーターは、実際、地理的なギャップを橋渡しし、広大で広く離れたように思える世界が、実際は一つに繋がっていることを示している。

 

一昔前、米国にBuena Vista Social Club(ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ)というバンドがいたが、キューバーにルーツを持つメンバーがいたこともあり、陽気なカリブ音楽で一世を風靡した。このバンドは、JFKの時代から冷え込んでいた米国とキューバの関係を音楽的な側面で繋げる重要な役割を担った。

 

同じように、C'mon Tigreも又、そういった政治的な緊張を緩め、そして音楽の力でヨーロッパ、アフリカ、南米を繋げる役割を担っているといえる。

 

例えば、イギリスならイギリスらしい音楽、アメリカならアメリカらしい音楽、オーストラリアならオーストラリア、そして、日本なら日本らしい音楽というのが存在するが、カモン・ティグルの音楽はそのいずれにも属さず、徹底してコスモポリタニズムに根ざした音楽を奏でる。


このサード・アルバムでは、アフロジャズを中心に変拍子とブレイクを活用した音楽性が際立っている。そして、彼らがアフロ・ビートを基調とした脱西洋的な音楽観を重点においていることを踏まえると、その向こうにアフロ・フューチャリズムの継承者という重要なファクターが浮かび上がってくる。

 

アルバムは「Odiam」を除けば、すべてカモン・ティグルにより作曲/編曲が行われた。ジャズコレクティヴというよりもニューオリンズのジャズのビックバンドのような大掛かりの編成で録音が行われ、ダブル編成のドラム、トロンボーン/フレンチホルン、四人のボーカル、ダブルのアルトサックス、ヴァイオリン、木琴、チェロ/ビオラ、バリトンサックス、フルート、バスクラリネットという豪華な編成になっている。これらの楽団のような編成は、曲そのものが冗長になる場合もあるが、アルバムの録音全般にアンサンブルの妙をもたらしている。同時にライブ・アルバムのような強烈なエナジーに彩られた精細感のある秀作を生み出す契機ともなった。

 


1. 「Goodbye Reality」 

 

フレンチホルンとトロンボーンが足並みを揃え、この曲全体にカラフルな音響性をもたらしている。曲のベースにエレクトロを加え、アフロビートという礎に、ブラジル音楽に触発を受けた艶やかな女性ボーカルが加わる。この曲には、無数のアフリカ/南米音楽の要素が内在しており、目の眩むような多彩性に満ち溢れている。サルサ/サンバの陽気なリズムが途中から加わり、さらにマリンバ等の楽器が加わることで、音楽のお祭りのような様相を呈する。

 

リズムの転がり方も意外性に富んでいるが、何より南米音楽の気風が強く反映されているためか、ファニーな雰囲気が漂う。それでも、陽気さばかりが能ではない。そこには南米の孤独と哀愁も加味されている。まさにコロンビアのガルシア・マルケスに影響を与えたオラシオ・キローガの短編小説、あるいは『失われた足跡』で知られるカルペンティエルのような密林を想起させる。

 

鳥が海を泳ぎ、魚が空を飛ぶ奇妙な世界、すべてが見事に逆さまになっている生息地を想像しながら、耳を傾け、わたしたちが慣れ親しんでいる現実の概念を放棄することへのインヴィテーションとなるでしょう。

 

 

 

 

2.「The Botanist」 

 

アフロビートやアフロジャズを元に、ブラジル音楽を雰囲気を加え、サイケデリックロックふうにアレンジした一曲である。この曲では、セウン・クティがアルトサックスを吹きながら歌う。セウン・クティの声も渋さがあるが、その周りを取り巻くようにし、女性コーラスが華やかな雰囲気を与える。

 

序盤は、ミニマルなギターが70年代のハードロック/ファンクロック/サイケロックを想起させるが、そのソングライティングが予定調和に陥ることはないのが驚き。中盤からは、サルサ風のリズム、フレンチホルンとトロンボーンのハーモニー、それからマリンバが加わることで、渋さとしなやかさをもたらす。

 

女性コーラスワークの後のサイケロック風の乾いた質感を持つギター・ソロも奇妙な艶気があり、実際、失われたハードロックやサイケロックの最たる魅力の再発掘とも言えるかもしれない。


 

この曲は成長の本質のテーマを捉えており、カモン・ティグルの音楽はしばしば自己発見、変容、時間の経過というテーマを探し、無垢から経験への変容の旅を強調します。

 

人生の刻々と変化する局面に直面したときの受け入れと回復力を示しています。これは私達自身が緑豊かな庭園の一部であるかのように、自分の魂や心を大切にしようという誘い。

 

 

3. 「Teenage Age Kingdom」 

 

カモン・ティグルのエレクトロからの影響が色濃く出た一曲で、彼らはそれらをファンクやサイケの観点から処理している。分厚いベースラインに加え、ポリフォニー的に加わるドラムの組み合わせの妙が光る。

 

ボーカルは、アークティック・モンキーズ/QOTSA(Queen of The Stone Age)のボーカリスト、アレックス・ターナー、ジョッシュ・ホーミの哀愁を想起させる。しかし、これらのロック的なアプローチに意外性を与えているのが、シャッフルを多用したジャズ・ドラムのリズム、ファンクに触発されたベースライン、女性コーラスワーク、そして、ノイズを加味したエレクトロニクスである。

 

これらの複雑性は十代の青年の苦悩を表しているという。そしてハードロック/サイケロック風に思えた曲は中盤から、サルサ/フォロのリズムを取り入れ、南米のポップスへと変化していく。南米のエキゾチズム、そして、そこから匂い立つ雰囲気が十分に堪能出来る。 


 

自分のアイデンティティを見つけるティーンエイジャーの普遍的な課題に取り組んだ一曲です。

 

現代ブラジル音楽を代表するサンパウロ出身の傑出した、クセニアフランカとのコラボにより、この曲は若者が達成不可能なモデルに適応しようとする際に直面せざるを得ないプレッシャーについても言及している。

  


4.「Sixty Four Seasons」 

 

アルバムの序盤の重要なハイライトとなりえる。同じようにアフロビート/アフロジャズの影響を取り入れ、それらをロックとして処理した一曲である。


ここでもループ/ミニマルの構造を持つ細かなギターラインを緻密に重ねていき、流動的なドラムのシャッフルのリズムを取り入れることで、ファンクロック/ハードロックからプログレッシヴ・ロックに近いアヴァンギャルドな音楽へと移行していく。

 

前曲と同じように、ボーカルがフレンチ・ホルンやトロンボーンと組み合わさり、ジャズロック風の画期的な音響性を生み出す。もうひとつ注目しておきたいのは、カモン・ティグレは極力洗練性を避け、ジャンク・ロック風の荒削りなグルーブを重視していること。この曲では、失望から立ち直ろうとする際の不思議な力について歌われているという。


すべてが崩れ落ちそうになったときに立ち上がる能力について語る曲です。

 

彼は心を高くもち、欠けている部分を集めることの重要性について語る。なぜなら私達が帰る場所、私達を安心させ、バランスを再構築する避難所がそこにあるから。ジェームス・ブラウンのスタイルにインスピレーションを得た、パンチの効いたリズムとファンクの要素がこの曲に付与されています。

 

この曲のドラムは、DRBとして、知られるダニー・レイ・バラガンに託されました。サンディエゴ出身のドラマーであり、1990年代のファンク/ソウルの特徴的なダーティーなドラミングを継承することに情熱を注いでいます。

 

 

 

 

 

5.「Nomad At Home」

 

アラビア風のエキゾチックなボーカルで始まり、その後、アフロジャズの王道のアプローチへと移行していく。

 

マリンバのリズムや音階の楽しさ、そして、ホーンセクションやシャッフルのドラム、ウッドベースのようなジャズのベース、そしてアラビア風のボーカルが組み合わされることで、千夜一夜物語の音楽版とも言うべき摩訶不思議な音像空間が構築されていく。エレクトロニックの効果はもちろん、マリンバ、フレンチホルン/トロンボーンの華やかさが光る。

 

「Nomad At Home」は自分の場所で外国人のように感じるというコンセプトを追求しました。ダークな雰囲気のあるエレクトロニックソングです。

 

ボコーダーを通して声は距離と疎外感を与え、どこにも帰属しえないという経験を増幅させる。ジャズの影響と中東のサウンドが絡み合い、勇気と絶望を反映する正確無比の軌跡を描く。日々、命の危険を冒してまで移動しつづける人々……。「Nomad At Home」は、現実の感情的な重さを描写し、我々全員に深く影響を与える問題に注意を向けようとしています。

 

 

6.「Odiame」

 

アルバムの収録曲の中で唯一、カバー曲である。エレクトロニックと南米音楽の哀愁が絶妙に溶け合い、映画的なモノローグ風のボーカルがフィルム・ノワールの世界に近い音楽観を生み出している。

 

そこにジャズのドラミングが加わることで、ライブのような雰囲気を帯びる。スペイン語の語感の持つ美しさ、そしてそのパトスが十二分に感じられる。


この曲はエクアドルの歌手、フリオ・ハラミージョによって彼の母国で有名になりました。私達はよりフォークロア的な伝統性を重んじ、それを別の場所に渡し、より普遍的なものにしたいと考えました。



7.「Sento Un Morso Dolce」

 

スペイン語で「甘い噛みつきを感じる」の意。アルバムの中で最もダンサンブルでアップテンポなナンバーによりリスナーに快感と刺激を与える。


ベースラインやイタロ・ディスコのような分厚いビートを背に、プエルトリコのラッパー、Bad Bunnyのようにスペイン語のラップ/スポークンワードが乗せられる。そのビートをサルサやサンバのリズムが強化している。ときに、その中にジャングルにまつわるフォークロアや、民族音楽のパーカッションが取り入れられる。

 

「Sento Un Morso Dolce」は、イタリアが誇る輝かしい現代作家、ジョヴァンニ・トゥルッピの言葉に託された詳細な精神分析のセッションです。騒がしく非友好的な電子機器を伴い、無意識への小さな旅へとあなたを連れて行く。繰り返しを理解することが鍵となるでしょう。

 


8. 「Na Danca Das Flores」

 

アフロビートの雑多性やアフリカ音楽の開放的な空気感に満ちあふれている。特にアフロジャズのアンサンブルに欠かすことのできないフルートの演奏が他の曲よりも押し出されている。フルートのソロの魅力を引き立てるのは、マリンバやドラム、ベースのリズム、そして断片的なコーラスワークである。

 

この曲も他の収録曲と同様に、アフロジャズの基礎的なアプローチを軸に置いているが、新鮮な印象をリスナーに与える。チルウェイブ/チルアウトの要素を加味することで、新鮮な音楽が誕生している。曲の終盤ではよりサンバへの傾倒を見せ、南米の気風を強く反映させていることにも注目しておきたい。

 

 

この曲は、わたしたちの家ではなく、誰かの家への招待状です。それは世界共通言語でのもてなしの祭典であり、世界の扉を開く優しさのジェスチャーでもある。自分の世界に他の人もアクセス出来るようにする手だてでもあるでしょう。この音楽はブラジルのルーツとエレクトロ・ポップを融合させ、リスナーを予期せぬ場所へと連れて行く。

 

9. 「Keep Watching Me」

 

アルバムのクローズを飾るのは、アート・リンゼイが参加した「Keep Watching Me」。リンゼイは、大貫妙子や坂本龍一の作品、さらに、当初、ブライアン・イーノがプロデュースを行った『No New York』にDNAとして参加し、その後、実験音楽の重要人物として知られるようになった。


この曲で、アート・リンゼイは、奇妙な緊張感と集中性のあるギターラインに、ボーカルという形で参加している。曲の中に満ち渡る空虚感、及び虚脱したかのような感覚は、かなりシュールである。

 

私達が敬愛してやまないアート・リンゼイの声がフィーチャーされています。彼はここに甘さと儚さをもたらしている。

 

私達が最も気に入っているのは、現代社会では、あらゆる些細なことを常に監視されているなど、冷酷で残酷なテーマについて、優しく驚きを持って話すことができたことです。

 

私達が日頃対処しなければいけない醜さのすべてにまだ汚染されていないのが、人類の目です。音楽的にはこのアルバムを最後を飾るにふさわしいエンディングと考えています。



 86/100


 

 


 C'mon Tigreのニューアルバム『Habitat』はIntersuoniから現在発売中です。ご購入、ストリーミングはこちら

 


リーズのオルタナティヴロックバンド、English Teacher(イングリッシュ・ティーチャー)がニューシングル「Mastermind Specialism」をリリースしました。バンドは今年、テキサスの音楽フェス、SXSWに出演し、12月にはロンドンのザ・レキシントンでのライブを予定している。


フロントウーマンのリリー・フォンテーンは、この曲についてこう語っている。「自分の神学、セクシュアリティ、キャリアに疑問を抱き、小さなフェンスに座っている間に私の中でつぶやいた痛みについて書かれた」

 

「ジャコ・ヴァン・ドルマールのSFファンタジー『Mr. Nobody』を観たとき、この問題の原因と結果が見えてきた。私の人生は一貫して”一貫していない”。全国に12軒の異なる家があり、人種は混在しているが、私はいつもその中間にいる。この曲や今後リリースする曲の多くはそこから生まれていると思う」


「ちょっとしたエッセイ」と彼女は付け加えた。「だから代わりに私が[シュラッグの絵文字]で答えたと言うこともできるわけ」


「Mastermind Specialism」

Ty Dolla Sign& Kanye West
 

「Vultures」は、タイ・ダラー・サインとカニエ・ウェストのコラボ・アルバムからの初の公式シングルという噂がある。少なくとも、ヒップホップ・ファンなら誰もが待ち望んでいたカムバック作だ。


先日、DJ PharrisがシカゴのWPWX Powerの伝統的なラジオ番組でオンエア中に、Bump Jをフィーチャーしたカニエ・ウェストとタイ・ダラー・サインによるこの新曲「Vultures」を初披露した。


また、タイ・ダラー・サインはアルバムが間もなくリリースされるとの情報をリークしているという噂だ。予定通りであれば、アルバムは全11曲、約40分に及び、トラヴィス・スコット、クァーヴォ、プレイボイ・カルティ、フィヴィオ・フォーリン、前述のバンプ・Jとのコラボが収録されるため、インスタントな名作となることが約束されている。以上はゴシップ情報となる。


Yeことカニエ・ウェストは1、2年前、(デザイン関連の)仕事のために渋谷にお忍びで来日しており、歩道橋の上でくつろいでいる姿が確認された。また、その際、東京都内の料理店で食事をとり、付き人と店から出てくる姿も目撃されている。その後、コラボレーターとトラック制作をしているのが確認されたが、以降、ミュージシャンとしての公式の動向は明らかとなっていない。