2023年、マイリー・サイラスの「Flowers」が他を圧倒し、地球上で最も売れたシングルとしてその年を締めくくった、とIFPIが報告している。この曲はコロンビアから3月に発売された『Endless Summer Vacation』(Reviewを読む)に収録されている。


今回、マイリー・サイラスは、IFPIグローバル・シングル・アワードを受賞した。このアワードされるは、有料ストリーミング、広告付きプラットフォーム、シングル曲のダウンロードを含む、すべてのデジタル・フォーマットで最も売れたシングルを出したアーティストを毎年表彰するものである。


業界団体は2月26日、2023年のシングル・チャート・トップ10を発表した。「Flowers」の成功はまさに世界的なもので、このシングルは世界の29の市場で同時に1位を獲得し、イギリス、フランス、オーストラリアの年末チャートで1位を獲得した。


米国では、「Flowers」はビルボード・ホット100で8週連続1位を獲得し、圧巻のパワーを見せた。2024年のグラミー賞の授賞式でマイリーはこの曲を披露、「Flowers」は最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞と年間最優秀レコード賞を受賞した。


マイリー・サイラスは、3月3日(日)にロンドンのThe O2で開催される2024年のBRITアワードで、インターナショナル・アーティスト・オブ・ザ・イヤーの最終選考に残り、「Flowers」はインターナショナル・ソング部門にノミネートされている。


IFPIのグローバル・チャート&サーティフィケーション・ディレクターであるルイス・モリソンは、業界団体を代表して今回の受賞を発表し、「多くの国で同時にチャートのトップに立ったこの曲は、そのエンパワーメントのメッセージとともに世界中に響き渡り、真のグローバル・ヒットの定義となりました。マイリーと彼女のチームの素晴らしい功績を祝福します」と述べた。


一方、IFPIグローバル・レコーディング・アーティスト・オブ・ザ・イヤーに4度輝いたテイラー・スウィフトは、「残酷な夏」を7位、「アンチ・ヒーロー」を9位にランクインさせ、IFPIトップ10にダブル・アップした唯一のアーティストである。


近年、音楽シーンのグローバル化は加速し続けている。ナイジェリア(2位にセレーナ・ゴメスと共演したRemaの「Calm Down」)とメキシコ(6位にYng LvcasとPeso Plumaの「La Bebe」)のアーティストが初登場しており、アフロビーツとメキシコの地域音楽の国境を越えた現象を反映している。ほかにも、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、日本、メキシコ、ナイジェリア、韓国、イギリス、アメリカの10カ国のアーティストがトップ20にランクインし、2022年の6カ国から増加している。


英国のポストパンクバンド、アイルズは、『Tangk』(Reviewを読む)の好調なセールス結果によって、彼らのキャリアで2作目となる全英No.1アルバムを獲得した。集計はオフィシャルチャートカンパニーによる。


バンドの目覚ましい活躍は、インディペンデント・レーベルのパルチザン・レコードが3枚のアルバム・チャート1位を獲得したことを意味する。同レーベルはこれまでにも、アイルズの『Ultra Mono』(2020年)とフォンテーヌDCの『Skinty Fia』(2022年)で全英1位を獲得している。


パルチザンはまた、フォンテーヌDCの『A Hero's Death』(ピーク時2位、2020年)や、最近ではPJハーヴェイの『I Inside The Old Year Dying』(2023年)などのアルバムでチャートトップ5入りを果たしている。


『Tangk』はアイルズの5枚目のスタジオ・アルバムで、トップ10入りは4度目、1位獲得は2度目。オフィシャル・チャート・カンパニーによると、週間売上は20,230枚(うちフィジカル17,282枚、ダウンロード868枚、売上に相当するストリーム2,080本)。フィジカル・ユニットの内訳は以下の通り。CD3,962枚、カセット416枚、LPレコード12,905枚。


総合チャートでの首位に加え、レコード・アルバム・チャートとオフィシャル・レコード・ストア・チャートでも1位を獲得。レコードが好調な年明けとなった。


『Tangk』は、2021年11月に初登場売上14,351枚で6位を記録した前作『Crawler』の初週実績を上回った。その後、41,099枚を売り上げた。


『Ultra Mono』は、2020年10月に27,182枚(うちフィジカル23,766枚)でバンド最大のオープニングを達成。現在までの売上は58,503枚。


彼らの最大のセールスは、セカンド・スタジオ・アルバムであり、チャートでブレイクした『Joy As An Act Of Resistance』だ。2018年に5位を記録し、98,441枚を売り上げた。2017年のデビュー・アルバム『Brutalism』は、2022年11月の再発時に65位にチャートインしただけで、実際には65,983ユニット(29,387の売上相当ストリーミングを含む)で2番目に売り上げを記録している。


パラマウント配給のボブ・マーリーの生涯を描いた『Bob Marley:One Love』の興行成績は上々のようだ。この伝記映画は、北米で6,140万ドル、59の海外地域から3,970万ドルを含む、初公開からわずか10日間で全世界で1億110万ドルの興行収入を記録した。


「One Love』は公開2週目の週末、金曜日に370万ドルの興行収入をあげ、国内チャートで首位をキープした。海外では、木曜日に330万ドルを追加し、今週末新たに8つの市場に進出した。


ボブ・マーリーの2月14日のバレンタインデーに公開された 「One Love」は、予想を上回るデビュー興行収入で、従来の週末で2,860万ドル、6日間の連休で5,200万ドルを記録した。この伝記映画は批評家からは平凡な評価(ロッテン・トマトでは平均42%)を受けたが、初期の観客からはシネマスコア「A」を獲得した。「One Love」の製作費は7000万ドル。


 キングスレー・ベン=アディールがボブ・マーリーを演じ、ラシャナ・リンチが妻のリタ・マーリー役で共演している。ライナルド・マーカス・グリーンが監督したこの映画は、1970年代半ばのアフリカとヨーロッパでのツアーから、彼の画期的なアルバム『Exodus』の制作まで、マーリーの革命的な音楽の背後にある旅を描いている。


ジャマイカ人ミュージシャンの息子、ジギー・マーリーは声明の中で次のように述べている。「『ボブ・マーリー』への素晴らしい反響に、家族と私は光栄に思っています。父の音楽同様、この映画は人々のためのもので、父の平和、愛、団結のメッセージは世界中の観客と明らかに結びついている。この映画を受け入れ、そうすることでひとつの愛のメッセージを強調する手助けをしてくれた人々に感謝します」


さらに『One Love』はイギリスの映画館で興行的ヒットを記録している。この音楽ドラマはアルバム・チャートとシングル・チャートにも影響を与えた。


「One Love』は公開2週目の週末、金曜日に370万ドルの興行収入をあげ、国内チャートで首位をキープした。海外では、木曜日に330万ドルを追加し、今週末新たに8つの市場に進出した。


ボブ・マーリーの2月14日のバレンタインデーに公開された「One Love」は、予想を上回るデビュー興行収入で、従来の週末で2,860万ドル、6日間の連休で5,200万ドルを記録した。


カタログの主な収穫は、今年40周年を迎えるボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズのヒット曲集『Legend』(タフ・ゴング/アイランド)である。


アラン・ジョーンズによるミュージック・ウィークのチャート分析で明らかになったように、「Legend」は前週比57.2%増の7,377枚を売り上げ、最新チャートで18位から6位に上昇した。週間消費枚数の内訳は、フィジカル・コピー1,471枚、ダウンロード421枚、売上に相当するストリーミング5,485本で、ザ・ウィークエンド、ノア・カーン、カニエ・ウェスト&タイ・ダラー・サインに次いで4番目に多い。レジェンド・アルバムは現在6週連続で上昇中で、184週ぶりにトップ10に返り咲いた。


このベスト盤は、過去40年間(26年以上)1366週という驚異的なチャートの中で12週1位を獲得している。


最近では、カタログ・ストリーミングの常連となっている。レジェンドは昨年、116,287枚(フィジカル盤19,715枚、ダウンロード盤2,151枚、ストリーミング盤94,421枚を含む-オフィシャル・チャート・カンパニー調べ)を売り上げ、全英アーティスト・アルバム・ランキングで総合49位となった。レジェンドの1994年以降の売上は3,128,014枚で、14回のプラチナ認定を受けており、過去40年間で420万枚以上を売り上げたことになる。


一方、ボブ・マーリーの9枚目のスタジオ・アルバム『エクソダス』(映画で使用された楽曲の多くを提供)は、36位(売上枚数3,002枚)でチャートに返り咲いた。1977年のチャート初登場で8位を記録し、2007年に30周年記念スペシャル・エディションによって44位を記録して以来、トップ75からは遠ざかっていた。


『エクソダス』はマーリーにとって最も人気のあるスタジオ・アルバムで、カンター(ミルウォード・ブラウン)のチャート時代(1994年以降)の過去30年間の消費枚数は513,322枚。1978年の『Kaya』(売上280,046枚)と1973年の『Catch A Fire』(売上123,001枚)といった記録に相当する。

 

©Emily Lipson

カナダのR&Bシンガー、Sharlotte Day Wilson(シャーロット・デイ・ウィルソン)は、ニューアルバム『Cyan Blue(シアン・ブルー)』を発表しました。
 
 
シャーロット・デイ・ウィルソンはトロントを拠点に活動するカナダのシンガー・ソングライター。ウィルソンは、ジャズやR&Bの影響を受けた、ゆっくり燃え上がるような、いぶし銀のようなサウンドの持ち主だ。
 
 
 R&Bの影響を受けたサウンドは、すでにクラシックな雰囲気を醸し出している。彼女はこれまで 4月に発表したゴスペル調の "Work "から、BADBADへのゲスト参加まで、静かに曲を作り続けている。からBADBADNOTGOODの "In Your Eyes "へのゲスト参加まで、彼女は静かに曲を生み出している。
 
 
彼女のデビューEP『CDW、 ウィルソンは、彼女の時代を超えたサウンドを確固たるものにした。ここまで来るのは簡単ではなかった、 アーティストが言うように、"必死に働いてきた"。言うまでもなく、その努力は報われた。 ウィルソンのトラックは、アップル・ミュージックのCMからグレイス&フランキー(「グレイス&フラキー」)のCMまで、あらゆるところでフィーチャーされている。 
 
 
2021年の『Alpha』に続くこのアルバムは、ウィルソンのStone Woman MusicとXL Recordingsから5月3日にリリースされる。リード・シングル「I Don't Love You」のミュージック・ビデオはダニ・アフロディーテが監督。
 

「この曲は、愛を失い別れることは、愛を見つけることと同じくらい感動的なことなのだということを思い出させてくれるものです」とウィルソンは声明で語っている。このアルバムについて、彼女はこう付け加えた。
 
 
「荷物が少なかった頃、たくさんの人生を生きた頃。でも、若い頃の自分に今の私を見てほしいとも思う。私が今持っている知恵や明晰さの一部を、彼女に伝授することができたらいいと思う」
 
 


Sharlotte Day Wilson 『Cyan Blue』


 
 
Label: XL Recordings
Release: 2024/05/03
 

Tracklist:

1. My Way
2. Money
3. Dovetail
4. Forever [feat. Snoh Aalegra]
5. Do U Still
6. New Day
7. Last Call
8. Canopy
9. Over The Rainbow
10. Kiss & Tell
11. I Don’t Love You
12. Cyan Blue
13. Walk With Me
 
 
 
「I Don’t Love You」

 Real Estate 『Daniel』



Label: Domino

Release: 2024/02/23

 

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Review

 

 

現在、ブルックリンを拠点に活動するロックバンド、リアル・エステイトは2009年のセルフタイトルのデビュー作からノスタルジックなロックサウンドを追求してきた。前衛的なアプローチを図るロックバンドとは対象的に、リアル・エステイトのロックサウンドはわかりやすくスタンダードである。

 

リアル・エステイトは、ブルース・スプリングスティーン、アダムス以降のアメリカン・ロックの流れを汲み、米国のロックミュージックの良さや伝統性を再発見しようと試みる。2009年当時は、ニューヨーク近辺のリバイバル・ロックの運動と並び、バンドはビーチ・フォッシルズに近いサウンドに取り組んでいた。その後、登場したニュージャージーのパイングローヴとの共通点も見い出せる。ギターのディレイ、フェイザー等を使用した手の込んだ音作り、マーティン・コートニーの爽やかなボーカルが特徴となっている。バンドは2011年の『Days』で成功を手にしたが、それ以降も「Taking Backwards」等、良質なロックソングを数多く発表してきた。2020年の『The Main Thing』の後、マーティン・コートニーは、ニュージャージでの幼少期の思い出をテーマにした『Magic Sign』を発表した。このアルバムも良作に挙げられる。

 

リアル・エステイトは、ロンドンのドミノと契約した後も、インディペンデントをベースにしたライブを重視している。ニューヨークでの「ダニエル」という名前のファンを中心に招いたイベントもその一貫だった。メジャーなレーベルと契約しようとも、こういったユニークな試みを欠かさないことがリアルエステイトの最大の魅力である。


実は、レコーディングの長さは、作品の出来不出来を左右しない。慢性的な練習不足で、ゲームプランを持たないスポーツ選手の試合での活躍がほとんど期待できないように、ミュージシャンもどのような構想やヴィジョンを持ってスタジオに入り、録音に挑むのかが最重要といえるかもしれない。『Daniel』は、わずか9日でレコーディングされたサウンドとは思えないほど、コンパクトにまとめ上げられ、一気呵成に録音したかのようなスムーズなロックサウンドが貫かれている。 彼らの知名度を上げる要因となった70年代のアメリカンロックに根ざした懐古的なサウンドも健在である。トラックにはペダル・スティールも使用され、現在の米国の音楽のトレンドを形成するアメリカーナの要素も含まれている。2021年頃から、古い時代の米国の音楽に取り組むアーティストが増えてきたが、エステートは以前から懐古的な音楽に挑んでいた。今、アメリカ人が何を望んでいるのか、かれらはそのことの代弁者とも言える。

 

懐古的なアメリカンロックと並んで、リアル・エステイトのもうひとつの魅力として、コートニーのボーカルの甘いメロディーがこのバンドの重要な中核をなしている。このことは旧来のファンならばご存知のはず。8ビートのシンプルなリズム、ディレイやフェーザーを加えたギターサウンド、シンプルなベースラインが絡み合い、ゆったりした曲風を作り出し、ロックサウンドをベースに置いているに、癒やしの感覚を伴うのに驚く。ノイジーさを徹底して削ぎ落としたスマートなロックサウンドは、奇妙なことにアンビエントサウンドのような余白を作り出す。

 

最新作『Daniel』は和らいだロックソング、彼らの持ち前の夢想的なメロディーセンスが満載となっている。もちろん、メンバーがレコーディングでいくつかの音作りで工夫を凝らしたとプレスリリースで語った通り、いくつか新しい試みも取り入れられていて、ストリングスのようなサウンドを織り交ぜ、落ち着きがありながらもドラマティックな方向性に進んだと言えるだろう。

 

オープニングを飾る「Somebody New」では、70年代のアメリカン・ロックサウンドを参考としつつも、パワー・ポップやジャングル・ポップ風の甘いメロディーが、このアルバムに対する興味を惹きつける働きをなす。The Byrds(ザ・バーズ)やCSN&Y(クロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤング)といったバンドのビンテージなフォークサウンドをベースにしている。それらのビンテージ・ロックはエレクトリック/アコースティックギターのユニゾンやアルペジオを細部に配した緻密なプロダクションによってモダンなサウンドに書き換えられる。ノイジーさを徹底して排した心地よいサウンドは、パーカションの側面からも工夫が凝らされて、カスタネットのような音色を取り入れることで、優しげなサウンドデザインが施されている。


「Haunted World」でもフォーク/カントリー、アメリカーナを基調とし、ニール・ヤングのような古典的な音楽を展開させ、ドラムの側面からアメリカーナの源泉に迫り、ギター、ベース、ボーカルと基本的なアンサンブルを通じ、持ち前の甘いサウンドを作り出す。ボーカルのフレーズはわかりやすさに焦点が置かれ、脚色や無駄なものが一切存在しない。足し算というよりも引き算のサウンドを介して、オープニング曲と同じく心地よいリスニングを提供している。


音楽性をよりアメリカーナに近づけようする工夫も凝らされている。1分40秒ごろにはペダルスティールが導入され、夢想的な空気を生み出す。エレクトリック・ピアノの使用もソウルとまではいかないものの、メロウな雰囲気を作り出す。これらのサウンドは個性をぶつけるという感じではなく、他のメンバーを尊重した平均的なバンドサウンドが生み出された証ともなっている。アンサンブルでの沈黙や間を重視したサウンドは健在で、これが安らいだ印象を与える。

 

「Wonder Underground」は従来の形式と異なり、リアル・エステイトが新しくコーラスワークの妙に取組んだ一曲。


マーティン・コートニーの温和なボーカルは変わらないものの、親しみやすさのあるコーラスを取り入れつつ、アルバムの冒頭でお馴染みのアメリカーナとフォークサウンドを融合させる。その他、R.E.Mに代表されるカレッジ・ロックが付け加えられている。このジャンルには、明確な特徴は存在せず、基本的には、1990年代にアメリカの大学のラジオでよくオンエアされていた音楽ジャンルだった。


リアル・エステイトは、このジャンルの音楽性を踏襲した上で、温和なインディーロックサウンドに昇華させている。例えば、いかにもオルタナティヴといったサウンドに比べると、聞きやすさがある。それは、ひねりがなく、簡素なコードやリズムを主体に曲が構成されているのが理由である。こういったアプローチに関しては、何より親しみやすい音楽を提供したいというバンドの狙いのようなものも読み解くことが出来る。そして旧来よりもそれは洗練されている。


 「Flowers」は、2009年のデビュー当時のビンテージな感じのあるロックサウンドに回帰しているが、原点回帰と見ることは妥当ではないかもしれない。親しみやすく、歌えるメロディーという商業音楽に不可欠な要素を重視した上で、緻密なミニマルのギターラインを配し、ウィルコのような録音した音源をサンプリングの手法で配するコラージュの要素を加え、現代的なプロダクションに取組む。以前は懐古主義にも思えたものが、今となっては生まれ変わり、2020年代のロックらしいモダンなサウンドに接近したことが痛感出来る。考え次第によっては、リバイバル・サウンドからの脱却、及び、次なるロックミュージックへの通過点を示したとも言える。


「Interrior」は、エレアコ・ギターをベースにしたザ・パステルズのようなスコットランド/アイルランドのギターポップに近いサウンドが組み上げられるが、マーティンのボーカルについては、ポール・マッカートニーのような親しみやすさが感じられる。この曲は特に、ビートルズの後、数しれないフォロワーを出現させ、それがパワー・ポップ/ジャングル・ポップというジャンルに変化していったことをあらためて思い出させる。やはりバンドが意識していることは、誰にでも口ずさめるメロディー、誰にでも乗れるビートなのである。これは、少し複雑化しすぎ、時々、怪奇的に傾く現代的なポピュラー音楽の向こうに現れたオアシスとも言うべき現象である。

 

リアル・エステイトはロックにとどまらず、ポピュラー音楽の核心を付く曲にも取組んでいる。「Freeze Brain」は驚くほどキャッチーであり、ジャスティン・ビーバーの曲のように痛快だ。曲の中にはR&Bやネオ・ソウルからの影響も伺えるが、しかし、商業的な音楽のソングライティングの方向性を選ぼうとも、やはりインディーロックサウンドに近づくのは、リアル・エステイトらしいと言えよう。これは前の曲と同じように、ポピュラーで爽快な音楽を提供したい、というバンドの狙いや意図も読み解ける。さらに、レコーディングにおける音楽の楽しさも反映されている。ポンゴによる心地よいリズムが、緩やかな感覚とトロピカルなリゾート感を作り出し、それらはヨット・ロックやAORのサウンドによってカラフルに彩られている。


続く「Say No More」では、70年代のサイケデリックロックをベースにして、疾走感のあるロックサウンドを展開させる。旋律の進行の中には、ルー・リードの「Sweet Jane」のように夢想的な感覚が漂い、バンドの爽快なサウンドを背後から支えている。バンドが「Taking Backwards」をはじめとする代表曲で取組んできた音楽性の延長線上にあるナンバーと言えるだろう。

 

終盤の3曲、「Airdrop」、「Victoria」、「Market Street」では、お馴染みのリアル・エステイト節とも称せる代名詞的なロックが繰り広げられる。サウンドにはやはり一貫して爽やかさとわかりやすさを重視したインディーロック、カレッジロックが下地になっている。「Air Drop」ではギターポップ/ネオアコースティック風のギターが登場し、「Victoria」では、ビートルズの直系にある1960年代のバロック・ポップの要素が含まれている。また、続く「Market Street」ではローファイな感覚を宿したインディーロックソングソングがシンプルかつスマートに展開される。

 

これらは夏の終わりの風が通り抜けていくかのような清々しさと爽やかさに充ちあふれている。クローズ曲の「You Are Here」では、オアシスのリアム・ギャラガーが好むような、90年代のブリット・ポップのアプローチが示される。それはやはり、ビートルズのバロック・ポップの息吹を吸収している。アルバムの11曲は、彼らがどのような音楽的なバックグラウンドを持つのかを物語るかのようである。米国のバンドでありながら、本作の最後にブリット・ポップ調のロックソングを収録したことは、ロンドンのレーベルに対する紳士的な儀礼とも言えよう。

 

 

78/100

 

 

「Haunted World」

 


人気コーナー「TRENDS」は、レーベルからご提供いただいたリリース情報を中心に、J-POPの注目のシングルをジャンルレスに紹介するというコーナーです。


注目はニューアルバムを目前に控えた柴田聡子さんの最終シングルです。他にも、アジアを中心に活躍のフィールドを拡大しているLuby Sparksの今年最初のニューシングルにも注目でしょう。お好みの音楽を下記より探してみてください。

 

 

 

柴田聡子 「Side Step」

 


 

2月28日にニューアルバム『Your Favorite Things』のリリースを控えているシンガーソングライター、柴田聡子さんのニューシングル「Side Steps」は、アーバンな香りに満ちたエレクトロ・ポップです。


ダンサンブルな印象があるのは、ドラマーの浜さんがスタジオで発言した「イタロ・ディスコ」がヒントになったのだそうです。グルーブ感とメロディアスをあわせ持つスタイリッシュなナンバー。バンドサウンドならではの分厚いグルーブ感もハイライトとなるかもしれません。


この新曲「Side Step」についての柴田さんのコメントは以下の通りです。

 

ーーある日のリハで、ドラマーの浜さんが「イタロディスコ聴きたいですね」と言って、自分はイタロディスコはおろかディスコも作ったことが無かったのでやってみたいな、そういえば底の見えないものすごいでかい穴があったら、そこに絶対なにかあるに違いないと思ってしまう人たちの、結果何も無くても怒り出さない結末の曲を作りたかったというアイデアがディスコにぴったりな気がして「Side Step」となりました。


この曲も岡田さんにビートを打ち込んで頂くところから始まり、まきやまはる菜さんに踊り出すベースを入れて頂き、”そのあとどうしよう?”というところに、別所さんにスタイリッシュなシンセを入れていただき、ミックスでの試行錯誤を経て、大好きな曲となりました。この度もいっしょに作ってくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました! いよいよニューアルバムのリリースも目前です。どうぞお楽しみにです! ーー

 




配信リンク:  https://satokoshibata.lnk.to/SideStep

 

 

 

Luby Sparks ‐ 「Stayaway」 ‐Best New Tracks

 

 


東京のオルタナティヴ・ロックバンド、Luby Sparks(ルービー・スパークス)は近年、アジア圏のインドネシアのフェスティバルにも出演し、徐々に存在感を示し始めています。シューゲイズのギターサウンドを基調にしながらも、ポップソングの性質が強い。そのサウンドのわかりやすさは、フリークだけではなくライトなリスナーの心にも響くと思われる。

 

ニューシングル「Stayaway」は彼らの2024年最初のリリースで、幸先の良いスタートを切っている。

 

スペーシーなシンセが舞う中、シューゲイズギター、軽やかなポップを基調としたボーカルが良いウェイブを生み出している。バンドは今週木曜日に、渋谷WWW Xにて自主イベントを開催する予定です。 


 

 

配信リンク: https://lubysparks.lnk.to/Stayaway

 


Soraya 「風の中で」

 


JAZZの新世代アーティストとして注目を集めるピアニストの壷阪健登とベーシスト/ヴォーカリストの石川紅奈によるユニット、soraya。3月13日にセルフタイトルのファーストアルバムのリリースを予定しています。

 

ニューシングルはジャズを基調にし、変拍子を効果的に用いたニューシングルです。マリンバ等の可愛らしい音色が二人の作り出すジブリ的な世界観を見事に引き出しています。チャーリー・ミンガスを思わせる温かみのあるベース、ビル・エヴァンスのような気品に満ち溢れたピアノ、そして、石川紅奈による伸びやかなボーカルがマッチし、柔らかなジャズ・ポップスが生み出されている。デュオは、アルバムのリリースを記念し、3月29日にライブを行います。

 

 

配信リンク: https://ssm.lnk.to/kazenonakade 

 

 

Neibiss 「Daydream Maker」

 


神戸出身の若きラップ・デュオ、Neibissは、今月14日に同名のニューアルバムを発表しました。タイトル曲は、ミレニアム世代のデュオの精細感のあるリリックとフロウが搭載されています。音楽的には、チャズ・ベアこと''Toro Y Moi''のようなアメリカの西海岸で隆盛を見せるローファイやチルアウトを絡めたクロスオーバーヒップホップの範疇にある。アーバンな感覚がなく、どことなく泥臭さのあるラップが魅力。若いデュオなので今後の活躍も楽しみにしましょう。


アルバムの発売を記念して、リリースパーティが東京と大阪で開催されます。こちらもチェックしてみよう。

 

 


配信リンク: https://neibiss.lnk.to/DaydreamMarker 

 

 

 

Haruhisa Tanaka 「Byakura」‐ Best New Tracks

 



Haruhisa Tanakaは、2023年度のSpotifyの国内アンビエント・ミュージシャン月間リスナー数ナンバーワンを獲得し、"Best of Ambient x 2023"にも選出されているアーティスト。音楽プロデューサー、マスタリングエンジニア。Haruhisa Tanakaの音楽は、オールドテクノロジー、アナログテープループを使用した、穏やかに流れる時間軸で構成され、時に神秘的なサウンドスケープが特徴です。

 

2月23日に発売されたニューシングル「Byakura(白夜)」は、カナダのレーベル、Nettwerk Music Groupより発売された。アンビエント、エレクトロニカ、ミニマルをクロスオーバーした精細感のあるエレクトロニック。バシンスキーのサウンドをミニマル・テクノから解釈した素晴らしいシングル。アーティスト写真はオーラブル・アーノルズに対するオマージュと思われる。

 


 

配信リンク: https://haruhisatanaka.ffm.to/byakuya

 

 

先月分のTrendsは以下よりお読み下さい:

 

https://www.musictribunetokyo.com/2024/01/j-pop-trends-20241-j-pop.html 


 



イギリスを代表するミュージシャン、ポール・ウェラーがニューアルバム『66』を発表しました。新作アルバムはポリドールから5月24日にリリースされる。発表と同時にファーストシングル「Soul Wandering」を公開しました。「Soul Wandering」のリリック・ビデオは以下から、アルバムのトラックリストとジャケット・アートワークは以下からご覧下さい。

 

アルバムのタイトルは、ウェラーがアルバムの前日に66歳を迎えたことを記念して名づけられました。


ウェラーはもちろん、ザ・ジャムとスタイル・カウンシルの両方に在籍していたが、ソロとしても数十年のキャリアを持つ。『66』は、イギリスのサリー州にある自身のスタジオ、ブラック・バーンで3年かけてレコーディングされた。アルバムには、マッドネスのサグス、オアシスのノエル・ギャラガー、プライマル・スクリームのボビー・ガレスピーが作詞に参加しています。

 

Say She She、ドクター・ロバート、リチャード・ホーリー、スティーヴ・ブルックス、マックス・ビーズリーもアルバムの制作に貢献しています。サー・ピーター・ブレイクがアルバムのアートワークを手がけています。ウェラーとは1995年の『Stanley Road』以来の共同作業となった。


 

 こちらの記事もおすすめです:      ザ・スタイル・カウンシルの名曲「MY EVER CHANGING MOODS」 フォークランド紛争の時代におけるジャーナルの視点 



Paul Weller 『66』


Label: Polydor

Release: 2024/05/24

 

Tracklist:


1. Ship of Fools

2. Flying Fish

3. Jumble Queen

4. Nothing

5. My Best Friend’s Coat

6. Rise Up Singing

7. I Woke Up

8. A Glimpse of You

9. Sleepy Hollow

10. In Full Flight

11. Soul Wandering

12. Burn Out


Pre-order(INT): 

 

https://paulweller.lnk.to/66AlbumYT



「Soul Wandering」

 


 

 

・思考はどのような結果を形作るのか?

 

 人間はある思考に基づいてなんらかの行動を起こします。思考なくしては行動も存在する余地がありません。そういったことを考えると、思考の正当性によって行動が決定されますし、その後に何らかの行動を起こすことで従来とは異なる結果が現れるわけです。


 しかし、翻ってみると、思考は、価値観や倫理観、固定観念の蓄積から発生しています。思考とは、過去から未来に繋がる線を歩くということ。それは究極的に言えば、立体的な思考法はおろか直線的な思考法しかしえないことを意味する。すると、別の線上にある可能性を見落とす場合もある。例えば、外的な環境の変化だったり、他者の説得や直感的なヒントによって、外側から思考が変わる場合もありますが、結果的に何らかの発想の転換をもたらさないかぎり、従来の思考や行動を変えることはとても難しいでしょう。私達が、ときに自分でエキセントリックな方法であると考えるもの、それは意外に何らかの枠組みの中で動いているのに過ぎないかもしれません。


 かつて現代音楽家のジョン・ケージは「Chance Operation(チャンス・オペレーション)」という偶発的に発生する音楽の概念を生み出しました。ケージは、まだ彼が無名だった時期に、かつてモノクロ・テレビのアメリカのバラエティー番組に出演し、観客の笑いのなかで、即興の実験をしながら偶発的な音を発生させました。それはずいぶん滑稽な印象をもたらし、彼がコメディアンと考えた人もいたほどでした。その中には、ヤカンで湯を沸かす音を出すだけというのもあったのです。もちろん、その場の即興でケージの演奏はおこなわれました。そして、彼が取り組んだのは、音楽のイノベーションではなく、音楽を形成する仕組みや構造性を変化させたり破壊するということでした。これと同じような考えに基づいて作られたのが、ピーター・シュミットとブライアン・イーノによって考案された「Oblique Strategies (斜め上の戦略)」だった。ケージが実践的にその方法論を示したのに対して、ピーターとイーノの斜め上の戦略は、外側からの働きかけによって、別の結果を恣意的に発生させるという手法なのです。

 

 「Oblique Strategies−斜め上の戦略」は、音楽家を中心に、すでに実際の制作に取り入れられたことがありますが、例えば、音楽制作以外にも、実業家、経営者、他にも、政治家の方が戦略を立てる時にも有益となるかもしれません。


 オブリーク・ストラテジーズとは、あらかじめカードに考えを記しておき、何らかの制作をしていて、行き詰まりを感じた時、そのカードにかかれている短い警句を読み、新しい考えを取り入れ、それまでとは違う考えに気づき、そして行動を変化させ、最終的には従来とは異なる結果を生み出すという方式です。


 例えば、基本的に、何らかのアドバイスは人間がその間に介在するため、感情的な反発すら起こす虞れがありますが、この手法はカードによってもたらされるため、それほど大きな反発を起こす危険性がありません。なぜならカード自体は、善意でもなく、悪意でもなく、一つの考えを示したに過ぎないのです。


 では、この斜め上の戦略が、どのようにして生み出されたのかについて見ていきたいと思います。

 

 

・斜め上の戦略 思考の背後にある思考

 

デザイナーのピーター・シュミット

 このカードはどのようにして作られたのでしょう。1970年、ピーター・シュミットは、スタジオに溜まっていたすでに使用されなくなった版画に活版印刷した55文が記された「思考の背後にある思考」を作成し、これはのちにイーノが所有することになった。そもそもイーノは、1960年代からシュミットを知っていたようですが、彼自身も同様のプロジェクトを推進していた。1974年に彼は何枚かの竹製のカードに思考の背後にある思考について手書きをし、それを「Oblique Strategy」と名付けました。この2つのプロジェクトには重複期間があった。

 

 同年の後半、シュミットとイーノは、それらをひとつのカードのセットにまとめ、1975年に一般販売を開始しました。このセットは1980年初頭に、シュミットが急死するまでに3回の限定版の印刷が行われましたが、その後、カードセットは希少となり、プレミアがついた。

 

 16年後、ソフトウェアの先駆者であるピーター・ノートンはイーノを説得し、友人のクリスマスプレゼントとして第四版を制作しました。非売品として制作され、後にオークションに出回った。カードに関する世間的な評判は、その後も高まる一方で、イーノは2001年に新しいオブリーク戦略カードをセットで販売することに。 2013年5月には黒ではなくバーガンディー色の限定版が発売された。2012年には文書化され、書籍としても出版されています。

 

 これらのカードについて、ブライアン・イーノは次のように話しています。「これらのカードは、私達の別々の作業手順から進化しました。それは友情の間の多くの事例の一つに過ぎませんでした。私達はほとんどまったく同じ時期、ほとんどまったく同じ言葉で、作業のプロセスに到達したのです」


「数ヶ月、会わなかったこともあり、再会したり、手紙の交換をしたりするうちに、私達は同じような知的レベルにあることがわかった。これはその前にあった印象とはまったく異なるものでした」

 

 

 

・カードにはどのような言葉が記されているのか?


 オブリーク・ストラテジーズは、実際、現在もアマゾンやショップなどで販売されています。カードは箱の中に封入されていて、蓋を開くと、何らかの短い思考が書かれたカードが出てきます。そこにはあっと驚くようなことも書かれています。それでは、このカードには実際どのような言葉が書かれているのでしょうか。55のカードがあり、そこには現在の自分とは全然関係のなさそうなことまで書かれています。カードの言葉を下記に示していきたいと思います。

 

 

The List of Oblique Strategies:

 

・通常の楽器を放棄する

・アドバイスを受け入れる

・降着

・線には二つの側面がある

・地役権を許可する(地役権とは狭窄部の放棄です)

・セクションはありますか?  移行を検討する

 ・人々に自分のより良い判断に反して働くように依頼する

・自分の体に問いかけてみる

・いくつかの楽器をグループに集めてグループで扱います

・一貫性の原則と不一致の原則のバランスを取る

・汚れてください

・もっと深く呼吸してください

・橋を建てる - 建てる - 燃やす

・カスケード

・楽器の役割を変更する

・何も変更せず、完全な一貫性を維持して続行します

・子どもたちの声・話す・歌う

・クラスター分析

・さまざまなフェージング システムを検討する

・他の情報源を参照する - 期待できる - 期待できない

・メロディー要素をリズミカル要素に変換する

・勇気!

・重要なつながりを断ち切る

・飾る、飾る

・エリアを「安全」として定義し、アンカーとして使用する

・破壊する -何もない -最も重要なもの

・公理を破棄する

・欲望から切り離す

・使用しているレシピを見つけて放棄する

・時間を歪める

・できるだけ長い間、何もしないでください

・簡単なことだから恐れる必要はない

・決まり文句を恐れないでください

・自分の才能を発揮することを恐れないでください

・沈黙を破らないで

・あることを他のことよりも強調しないでください

・退屈なことをする

・食器を洗う

・言葉を変える必要があるでしょうか?

・穴は必要ですか?

・違いを強調する

・繰り返しを強調する

・欠点を強調する

・選択に直面したら、両方を行う (Dieter Roth 氏)

・録音を音響状況にフィードバックする

・すべてのビートを何かで埋める

・首をマッサージしてもらう

・ゴーストエコー

・ゲームを譲ってください

・最悪の衝動に道を譲る

・外側をゆっくりと一周してください

・隠された意図として自分の間違いを尊重する

・どうやってやればよかったのでしょう?

・エラーのないものを人間化する

・音楽が動く鎖や毛虫のように想像してください。

・音楽を一連の切り離されたイベントとして想像してください

・微小グラデーション

・意図 -信頼性 -高貴さ -謙虚さ

・不可能へ

・終わりましたか?

・何か足りないものはありますか?

・チューニングは適切ですか?

・ただ続けるだけ

・左チャンネル、右チャンネル、センターチャンネル

・完全な暗闇、または非常に広い部屋で、非常に静かに聞いてください。

・静かな声を聞いてください

・非常に小さな物体を見てください。その中心を見てください

・物事を行う順序に注目してください

・最も恥ずかしい部分を注意深く観察し、それを拡大する

・最小公倍数チェック -単拍 -単音 -単

・リフ

・ブランクを絶妙なフレームに収めて価値あるものにする

・やるべきことすべてを網羅したリストを作成し、最後に実行する

・リストにあるもの

・突然、破壊的で予測不可能な行動を起こす。組み込む

・特異なものを機械化する

・ミュートして続行

・各種類の要素は 1 つだけ

・(有機)機械

・あからさまに変化に抵抗する

・耳栓をしてください

・あの静かな夜を思い出してください

・曖昧さを取り除き、具体的な内容に変換する

・詳細を削除し、曖昧さに変換する

・繰り返しは変化の一形態である

・逆行する

・短絡

・彼の男らしさを向上させるには、それらを彼の膝に直接押し込みます

・ドアを閉めて外から聞いてください

・単純な引き算

・スペクトル解析

・休憩する

・明らかに重要でない要素から順に要素を取り除きます

・口にテープを貼ってください(Ritva Saarikko さんより)

・不一致の原則

・テープが音楽になった

・ラジオのことを考えてみましょう

・片付ける

・今のあなたを信じて

・ひっくり返してください

・背骨をひねる

・古いアイデアを使用する

・許容できない色を使用する

・ノートの使用量を減らす

・フィルターを使用する

・「資格のない」人材を利用する

・水

・あなたは今、本当に何を考えていますか? 組み込む

・状況の現実はどうなっているのでしょうか?

・前回はどんな間違いを犯しましたか?

・あなたの一番親しい友人ならどうしますか?

・やらないことは何ですか?

・異なる速度で作業する

・あなたはエンジニアです

・一度にドットは 1 つしか作成できません

・自分のアイデアを使うことを恥ずかしがる必要はありません

・[空白の白いカード]

 

 

 以上のカードの言葉が示している通り、これらのメッセージのようなものは、何らかの制作のために作られたため、音楽的な事項にまつわる思考が多い。

 

 その中には「録音を音響状況にフィードバックする」、「ステレオ・チャンネルのパンの振り方」から「フィルターを使用する」といった具体性のある音楽的な指示、「自分の才能を発揮するのを恐れないように」、「繰り返しは変化の一形態である」といった啓示的な内容まで、さらに制作における緊張感を解すため、「首をマッサージしてもらう」、「休憩する」、「長い間、何もしない」という実際的なアドバイスまで書かれています。これらのカードは、それまで考えもよらなかったような隠された思考に気づくきっかけを与えてくれるかもしれませんよ。

 

 

・斜め上の戦略が取り入れられた事例

 

 考え次第によっては、お遊びにも思えるオブリーク・ストラテジーズですが、こういったカードが実際のプロのミュージシャンの作品制作に使用された事例は一度や二度ではありません。

 例えば、コールド・プレイのアルバム『Viva La Vida Or Death And All His Friends』 はブライアン・イーノがプロデュースを手掛け、この作品の中でオブリーク・ストラテジーズが使用されているようです。他にも、フランスのロックバンド、フェニックスも2009年のアルバムでカードを使用した。さらに、MGMTは、『Congratulations』に収録されている「Brian Eno」の制作時に、スタジオにオブリーク・ストラテジーズのカードデッキを用意していたが、それを正しく使用出来たかは分からないという。他にもバウハウスも作曲時にこのカードを使用しています。

 最も有名な事例では、デヴィッド・ボウイのベルリン三部作(『Heroes』、『Low』、『Lodger』、1976年から79年にかけて制作)の中で、ブライアン・イーノがこのカードを使用しています。「Heroes」のインストのレコーディングに使用されただけでなく、「Lodger」ではより広範囲に使用された。ボウイの1995年のアルバム「Outside」で、再びイーノはこのカードを使用しています。

 アルバムの制作に関わったカルロス・アルマーは、このカードを使用するのが大好きらしく、後に「私が教えているスティーヴンス工科大学の舞台芸術センターの壁にはブライアン・イーノのオブリーク・ストラテジーズが飾ってある」と述べています。「もし、生徒たちがブロックに陥ったときは、私はその壁に向かって生徒たちを誘導する」という。
 
 もし、何かの考えに煮詰まった時、ライターズブロックに直面した時、別の考えがあることに気づくことはとても重要です。そこで、それまでとは異なる考え方や可能性があると気づくため、オブリーク・ストラテジーズは最適かもしれません。現在、このカードは、小売店などでも販売中です。



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新時代のポップスター、ダブリンのシンガーソングライター、ルーシー・ブルーが昨年末のフルアルバム以来のニューシングルでカムバックを果たした。一点の曇りもない天才シンガーの登場。


22歳のシンガーソングライターは、黙示録的な写真撮影、火山でのセッション、そして2月の春をフィーチャーし、"私たちは皆、世界の終わりから電話1本で行けるところにいる "と、無邪気な終焉のイメージを描いている。



ダブリン出身で、パンデミック(世界的大流行)の最中にデビューしたこの若きヴォーカリストは、フランク・オーシャンやPJハーヴェイから影響を受けながら、ユニークで個性的なサウンドを完成させるのにそれほど時間を費やさなかった。野心的な青春ポップ・トラックは、ブルーの独創性と信頼性を完璧に表現している。


「世界の果てがどこであろうと、あなたが踊っていることを願っています」とシンガーは自身のインスタグラムに書いている。



「End of  The World」

 


ジャスティン・ティンバーレイクが、近日発売予定のアルバム『Everything I Thought It Was』からの新曲「Drown」を公開しました。


アルバム発表時に配信されたリード曲「Selfish」に続くこの曲は、ティンバーレイク、ルイス・ベル、ヘンリー・ウォルター、エイミー・アレン、ケニオン・ディクソンが作曲し、ベルとサークットと共にプロデュースした。以下からチェックしてみよう。


『Everything I Thought It Was』は3月15日にRCAからリリースされます。ティンバーレイクは先月、サタデー・ナイト・ライブでトビー・ンウィグウェをフィーチャーした新曲「Sanctified」を初披露しています。


©Jacob Webster


SZAがニューシングル「Saturn」をリリースした。彼女は、「Kill Bill」と「Snooze」を披露した2024年グラミー賞の放送中に、マスターカードの広告でこのニューシングルを予告していた。

 

SZA、カーター・ラング、ロブ・ビゼル、ソロモンフォニック、そしてモンシュンが共作したこの曲は以下で聴くことができる。アーティストは前作『SOS』でノミネート、見事グラミー賞に輝いた。

 

「Saturn」

 Weekly Music Feature- Colouring


「僕はかねてから音楽の中で自分の人生を正直に語るよりも、シナリオを作る側にいた」と、ジャック・ケンワーシーはベラ・ユニオンから発売されるセカンド・アルバム『Love To You, Mate』について語る。「自分の物語じゃないから、怖くなくなった。それは本来、共有すべきものなんだから」


ノッティンガムを拠点に活動するソングライター兼プロデューサーの人生は、デビュー・アルバム『Wake』のリリースを数ヵ月後に控えた2021年2月、義理の弟グレッグ・ベイカーがステージ4のガンと診断されたことで一変した。その後の人生は、一人の青年の人生を分断させることに執念を燃やしているように思えた。彼は、結婚したパートナー、ヘレンを支える柱になる必要があると特に自覚していたが、逆境に直面した家族が共に歩む道のりは、残酷でありながら美しいものであった。


「もちろん、私たちはとても怖かった」とケンワーシーは、アルバムのタイトル・トラックに刻まれた、病院で過ごした次のクリスマスについて回想している。「それでも、彼らはとても前向きで、優しくて、感動的な人々で、すべてを投げつけられて、信じられないような一体感と精神でそれに対処していた。私たちは皆、彼が私たちの人生にいてくれたことにとても感謝している」


Colouringは『Wake』以来ソロ・プロジェクトとして活動しており、このアルバムは00年代のポスト・ブリットポップの大御所たち(初期のコールドプレイ、エルボー)と並んでブルーナイルの影響を受けつつ、レディオヘッドやジェイムス・ブレイクからエレクトロニックとリズムのヒントを得ている。もともとはゴールドスミス在学中に4人の友人で結成されたバンドだったが、2019年に自然消滅した。バンドは2017年にEPをリリースした際に、ダーティーヒットの看板アーティスト、The 1975、ジャパニーズハウスとライブで共演した。特にこのとき、ケンワーシーはThe 1975のことを褒め讃え、学ぶべき点があったと語った。


2020年初頭、ケンワーシーの長年のコラボレーターであるジャンルカ・ブチェラーティ(アーロ・パークス)が、彼がプロジェクトを畳むという考えを一笑に付したおかげで踏ん切りがつき、ケンワーシーは普段しているように、栄養補給と逃避の手段として強迫的に作曲にのめりこむようになった。


グレッグが病気で倒れた頃、ジャックは「新しい音のパレット」を作っていた。「ただ書きたいことを書けばいい、何でも好きに言えばいい。問題が有れば後で歌詞を変えればいいんだから。その1年間、家族からのあるフレーズが彼の頭の中にこびりつくことになる。"どうしてこんなにリアルになったの?"とヘレンに言われたこともあった。「そして何かを書いているうちに、結果的にそういった感じの曲になってしまった」  激動の時代についてアルバムを作ろうという「本当の意図はなかった」ものの、「なんとなくそうなった」のだとか。



『Love To You,Mate』- Bella Union


Colouringこと、ジャック・ケンワーシーは元々は同名のバンドで活動していたが、2019年を境にソロ活動に転じている。彼はボン・イヴェールの次世代のポピュラーシンガーで、同時にエド・シーランのようなクリアなイメージを持つ歌唱力を持つ。彼が音楽的な影響に挙げるのは、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェルといった古典的なポピュラー、フォークシンガー。それに加えて、イヴェールのような編集的なプロダクションについては、エラード・ネグロとも共通項が見いだせる。ただケンワーシーの主要なソングライティングは、Jamie xxのようなエレクトロニックの影響下にあると思うが、それほど癖はない。つまり、カラーリングの曲は、どこまでも素直で、シーランのようであるのはもちろん、ルーシー・ブルーのような聞きやすさがある。

 

ケンワーシーは義理の弟の病の体験をもとにして、みずからの家庭の妻ヘレンとの関係、そしてそれらがどのような家族の関係を築き上げるのかを体験し、そこから逃げたりすることはなかった。誰かに押し付ける事もできたかもしれない。自分とは無関係と責任を放棄することもできただろう。それでも、結局、かれは、人間の生命の本質がどのように変わっていくのか、その核心に触れたことにより、実際にアウトプットされる音楽にも深みがもたらされた。がんになると、人間は驚くほど、その風貌が一変してしまうものだ。そして一般的に、その様子を見ると、自らの中のその人物の記憶がそもそも誤謬であったのではないかとすら思うこともある。


つまり、それは記憶の中にいる人物がだんだんと消し去られていくことを意味する。がんになった親戚がどのように元気だった頃に比べ、見る影もないほど窶れていく様子を見たことがあったけれど、それは悲しいことであるのと同時に、人間の生命の本質に迫るものである。つまり、どのような生命も永遠であるものはなく、必ずどこかで衰退がやってくるということなのだろう。それは生命だけにとどまらない、万物には、栄枯盛衰があり、栄えたものはどこかで衰える運命にある。世界には、不老不死や若返りを望む人々は多い。それは、有史以来、秦の始皇帝も望んでいたことだ。けれども、言ってみれば、それは生きることの本質から目を背けることである。そこで、人は気づく時が来る。どのような命も永遠ではないということ思うのだ。


カラーリングのアルバムは、しかし、そういった複雑な音楽的な背景があるのは事実なのに、そういった悲哀や憂鬱さを感じさせないのは驚異的である。もっと言えば、エド・シーランの曲のように、感情表現が純粋であり、淀みや濁りがほとんどない。アルバムの全体を通して、リスナーはカラーリングの音楽がさっぱりしていて、執着もなく、後腐れもないことを発見するはずだ。崇高とまでは言えまいが、ケンワーシーが現実とは異なる領域にある神々しさに触れられた要因は、彼が音楽を心から愛していること、それを単なる商業的なプロダクションとみなしていないこと、そして、2017年頃に彼自身が言った通り、「普遍的な愛がどこかにある」ということを信じて、それを探し求めたということである。ベラ・ユニオンのプレスリリースに書かれている通り、彼は音楽というもう一つの現実を持っていた。そして、ジャックはそれをみずからの音楽的な蓄積により、素晴らしいポピュラー・プロダクションを作り上げたのだ。

 

推測するに、ここ数年のジャック・ケンワーシーの私生活は、何らかの家族という関係に絡め取られていたものと思われる。それはときに、苦悩をもたらし、停滞を起こし、そして時には、耐えがたいほどのカオスを出来させたはずである。しかし、とくに素晴らしいと思うのは、彼はそれらのことを悔やんだり、恨みつらみで返すわけではなく、ひとつのプロセスとし、その出来事を体験し、咀嚼し、それらを最終的にクリアなポピュラー音楽として昇華させる。


アルバムの全体を聴くと分かるとおり、『Love To You, Mate』は最初から最後までひとつの直線が通っている。停滞もなければ、大きな目眩ましのような仕掛けもない。数年の出来事と経験をケンワーシーは噛み締め、どこまでも純粋なポピュラー音楽として歌おうとしている。彼の普遍的な愛の解釈に誤謬は存在しない。それは誰にでもあり、どこにでも存在する。つけくわえておくと、愛とは、偏愛とはまったく異なる。それは誰にでも注がれているものなのである。

 

結局のところ、そのすべてがアーティスト自身の言葉によって語られずとも、音楽そのものがその制作者の人生を反映していることがある。このアルバムからなんとなく伝わってきたのは、彼は学んだ本当の愛ーーそれは苦さや切なさを伴うーーを誰かと共有したかったのではないだろうか。そして、それはひとつの潜在的なストーリー、もうひとつのリアリティーとして続く。

 

「For You」はその序章であり、オープニングである。このアルバムの音楽は基本的にヒップホップのブレイクビーツを背景に、シーランを思わせるジャック・ケンワーシーの軽やかなボーカルが披露される。さらに、彼のボーカルに深みを与えているのが、ジェイムス・ブレイクのような最初期のネオソウルを介したポップスのアプローチである。オープナーは、驚くほど軽快に過ぎ去っていく。ピアノとギターのスニペットを導入することで、 深みをもたらすが、それは冗長さとか複雑さとは無縁である。どこまでもさっぱりとした簡潔なサウンドが貫かれる。

 

「I Don' t Want You To See You Like That」は ブレイクビーツやサンプリングを元にしたドラムのシャッフル・ビートを展開させる。オープナーと同じように、ジェイムス・ブレイクの影響下にあるネオソウル調のポップが続く。編集的なプロダクションはボン・イヴェールに近いものを感じるが、一方で、きちんとサビを用意し、シーランのようなアンセミックな展開を設けている。繊細なブリッジはピアノのアレンジやしなるドラム、北欧のエレクトロニカを思わせる叙情的なシンセにより美麗なイメージが引き上げられる。大げさなサビのパートを設けるのではなく、曲の始まりから終わりまで、なだらかな感情がゆったりと流れていくような感覚がある。

 

アルバムに内在するストーリーは、純粋なその時々の制作者のシンプルな反応が示されている。「How 'd It Get So Real」では戸惑いの感覚が織り交ぜられているが、しかし、その中でジャックは戸惑いながらも前に進む。冒頭の2曲と同じように、ブレイクビーツのビートを交えながら、なぜ、このようなことが起こったのか、というようなケンワーシーの戸惑いの声が聞こえて来そうである。それらが暗鬱になったり落胆したりしないのは、彼が未来に進もうとしているから。つまり、その瞬間、それはすべて背後に過ぎ去ったものとなる。この曲でも、サビの旋律の跳ね上がりの瞬間、言い知れないカタルシスを得ることが出来る。そして曲の中盤では、すでにそれらは彼の背後に過ぎ去ったものになる。そのとき、現実の中にある戸惑いや苦悩を乗り越えたことに気づく。そして、アウトロではやはり、ケンワーシーのコーラスとともに、ピアノの清涼感のあるフレーズが加わると、最初のイメージが一変していることに気づく。

 

 ポスト・ブリット・ポップの影響は続く「Lune」に反映されている。ここではコールドプレイを思わせる清涼感のある旋律に、ボン・イヴェールの編集的なプロデュースの手法を加え、モダンなUKポップスの理想像を描こうとする。シンガーの高音部のファルセットに近いメロディーが示された時、奇妙なカタルシスが得られる。続いて、ピアノのきらびやかなアレンジが夢想的な感覚を段階的に引き上げる。これらの独創的な高揚感は、フェードアウトに直結している。最近、意外とフェードアウトを用いるケースが少ないが、曲がまとまりづらくなったときのため、このプロデュースの手法を頭の片隅に置いておくべきかもしれない。実際、フェードアウトは感覚的な余韻を残させる効果があり、この曲では、その効果が最大限に発揮されている。 

 

 「Lune」

 

 

ジャック・ケンワーシーは、ジェイムス・ブレイク、トム・ヨークに近い作曲も行う。イギリスらしいアーティストと言えるが、彼はもうひとつの音楽的な引き出しを持っている。それがアイスランドのポップスで、続く「A Wish」ではアコースティックピアノを中心として、ポスト・クラシカル/モダン・コンテンポラリーの影響下にあるポピュラーミュージックを展開させる。


ピアノの演奏についてはニューヨークでモデルをした後に音楽家に転向したEydis Evensen(アイディス・イーヴェンセン)と、Asgeir(アウスゲイル)の中間にあるようなアプローチである。氷の結晶のように澄んだピアノに加え、ネオソウルの影響下にあるボーカルが清涼感を生み出す。


複雑な展開を避け、メロを1つのブリッジとしてすぐにサビに移行する。サビが終わると、イントロの静かなモチーフへと舞い戻る。最近、曲の構成が複雑化していることが多いが、音楽のシンプルさが重要であるのかをこの曲は教えてくれる。サビの段階では、エド・シーランに近い印象を覚えるが、ジャック・ケンワーシーの歌唱には驚くほど深みがある。それらを支えるのが祝福的な金管楽器のレガート、そして、ディレイを加えた編集的なプロダクションである。

 

素晴らしい曲が2曲続く。「This Light」は、エレクトロニックサウンドを基調としたポップで、ケンワーシーのボーカルはスポークンワードに近いボーカルを披露する。表向きの声にはゴールデン・ドレッグスのベンジャミン・ウッズのような人生の苦味を反映させた枯れた感じの渋さがあるが、サビでは、やはり祝福されたような高らかな感覚が生み出される。しかし、ある種、高揚感に近いテンションは、喧噪や狂乱には陥らず、すぐに静謐で落ち着いた展開へと戻る。ここにソングライターとしての円熟味、人間としての成長ともいうべき瞬間を見いだせる。最も理想的な音楽とは、狂乱を第一義に置くべきではなく、常に地に足がついた表現であるべきだ。そして、歌手の心のウェイヴを表現するように、ジャックのボーカルのメロディーの周りをシンセのアルペジエーターが取り巻き、彼のリードボーカルの感情性を高めていく。

 

タイトル曲「Love To You, Mate」は、ケンワーシーが古典的なポピュラー・バラードに挑戦したナンバーである。このトラックは、とくに義弟の病と家族の関係について書かれているようだが、それは先週のアイドルズの『Tangk』と同じように愛について歌ったもの。しかし、そのアプローチは対極にある。ジャックは一年の思い出、そして次のクリスマスへの思いをほろ苦い感覚を交え、回想するように歌う。しかし、彼は、それがどのようにほろ苦く、切なく、胸を掻きむしるようなものであろうとも、最終的には、それをシンプルな愛情で包み込もうとする。かつて、キース・ジャレットが『I Love You, Porgy』で、献身的に看病してくれた最愛の妻に対し、最大の感謝をジャズ・ピアノで示したように、ケンワーシーはポップ・バラードという形でそれらの思いに報いようとしている。その明るい気持ちが聞き手に温かい感情をもたらす。

 

「Coda」は、クラシック音楽の用語で「作曲家が最後に言い残したことを補足的に伝える」という意味がある。「A Wish」と同じように、アイスランドのポスト・クラシカルに根ざした流麗なピアノ曲のアルペジオを通して、ジャック・ケンワーシーは過去にある家族との思い出に美しい花を添える。花を添えるとは惜別であり、彼の一年間やそれ以上の期間との思い出に対する別れを意味する。この曲では簡潔でスムーズな展開を通して、歌手としての真骨頂が立ち現れる。とくに、ジャックのファルセットによる歌声は、ボーイ・ソプラノのようなクリアな領域に達する。この瞬間に真善美というべきなのか、最も美しい瞬間が訪れる。それは息を飲むような緊迫感を覚えるのと同時に、程よい力の抜けたようなリラックスした感覚が溢れ出す。


アンビエント風の実験的なインストゥルメンタル「small miracles」を挟んで、続く「For Life」では再び軽快なポップに還っていく。この曲では、アルバムの序盤と同様に、トラックにブレイクビーツの処理が施されているが、ケンワーシーのボーカルの性質はジェイムス・ブレイクというより、「KID A」の時代のトム・ヨークの影響下にある。独特なトーンを揺らすような歌唱法は、現代的なベッドルームポップ/インディーポップのアプローチと結びついて、ドイツの同ジャンルのアーティスト、クリス・ジェームスの主要曲のような軽やかさと疾走感をもたらす。


同じように、「Big Boots」の軽快なインディーポップソングで、アルバムは終わる。しかし、聞き終えた後、驚くほど後味が残らず、清々しい感じがある。それはまさしく、ジャック・ケンワーシーが過去の人生の苦みを噛み締めた上で、明るい未来に向けて進み始めている証拠である。

 

 

92/100

 

 

 「Coda」

 

先週のWEFは以下よりお読みください:

 


ナターシャ・カーンは、5月31日にMercury KXからリリースされるBat For Lashes(バット・フォー・ラッシーズ)の6枚目のアルバム『The Dream Of Delphi』を発表しました。


このアルバムは、2020年の夏に生まれた娘の名前にちなんだもので、カーンの音楽に対する予期せぬインスピレーションとなった。「母になったことで、私は自分のアートから遠ざかってしまうと思っていたのですが、この巨大な世界が開かれたのです」とカーンは言う。


『デルフィの夢』は、"霊性、先祖、民間伝承についての献身的な愛の歌 "を通して、母性について歌ったコンセプト・アルバム。メアリー・ラティモアがカウライターとして名を連ね、バット・フォー・ラッシズらしく、ナターシャ曰く "アルバムのマニフェスト "である、うねるようなスロー・ビルドの美しさを持つタイトル・トラックで幕を開けます。


カーンはこう続けています。「まるで魔法をかけられたみたい。呪文を唱え、顕現させ、エーテルからデルフィを引き寄せる。これは私が彼女の魂に呼びかけたもの。星に上り、同時に冥界に下るということ、天界と深い小声のサウンドがどのように一緒になるのか、それがどのように私の旅路を反映するのかということ。肉体的にも、精神的にも、そして膣内でも引き伸ばされたときに何が起こるか、ということなんだ」


「母親になって、私も謙虚になったと思う。今まで感じたことがないほど、傷つきやすくなった。でも、より人間らしく、より体現していると感じる。以前のように美しいものを作ることで、人生から逃れることはできない。でも、今は自分の死に対する美しさのようなものがある」



Bat For Lashes  『The Dream of Delphi』




Tracklist:


1. The Dream Of Delphi

2. Christmas Day

3. Letter To My Daughter

4. At Your Feet

5. The Midwives Have Left

6. Home

7. Breaking Up

8. Delphi Dancing

9. Her First Morning

10. Waking Up

11. The Dream of Delphi (Bonus Extended Strings Version)

 

 

 「The Dream of Delphi」

 

©︎Matthew Followill

ナッシュビルのロックバンド、Kings Of Leon(キングス・オブ・レオン)が次のアルバムを発表しました。

 

『Can We Please Have Fun』は、キャピトル・レコードから5月10日にリリースされます。2021年の『When You See Yourself』に続くこのアルバムは、プロデューサーにキッド・ハープーンを迎え、テネシーのダーク・ホースでレコーディングされた。

 

アルバムのジャケット、トラックリスト、キングス・オブ・レオンの今後のツアー日程とともに、新曲「Mustang」のビデオを以下でチェックしてみよう。

 

フロントマンのケイレブ・フォロウィルはレコーディングの過程について、「今まで参加した中で最も楽しいレコードだった」と語った。ドラマーのネイサン・フォロウィルは、「音楽的に弱くなることを許されたようなものだ。ロック・バンドが、すべての曲が11である必要はないことを恥ずかしげもなく認めているのが好きなんだ」

 

 

 

 Kings Of Leon 『Can We Please Have Fun』



Label: Capital

Release: 2024/5/10


1. Ballerina Radio

2. Rainbow Ball

3. Nowhere to Run

4. Mustang

5. Actual Daydream

6. Split Screen

7. Don’t Stop the Bleeding

8. Nothing to Do

9. Television

10. Hesitation Generation

11. Ease Me On

12. Seen


Kings of Leon 2024 Tour Dates:


Mar 17 Mexico City, Mexico – Vive Latino 2024

Mar 21 Bogotá, Colombia – Festival Estéreo Picnic 2024

Mar 23 São Paulo, Brazil – Lollapalooza Brazil

Jun 30 London, England – BST Hyde Park

Aug 14 Austin, TX – Moody Center

Aug 16 Houston, TX – Toyota Center

Aug 17 Forth Worth, TX – Dickies Arena

Aug 20 Phoenix, AZ – Arizona Financial Theatre

Aug 22 Inglewood, CA – Kia Forum

Aug 23 Palm Desert, CA – Acrisure Arena

Aug 25 Berkeley, CA – Greek Theatre

Aug 26 Santa Barbara, CA – Santa Barbara Bowl

Aug 28 Portland, OR – Moda Center

Aug 29 Seattle, WA – Climate Pledge Arena

Aug 31 Vancouver, British Columbia – Rogers Arena

Sep 2 Edmonton, Alberta – Rogers Place

Sep 3 Calgary, Alberta – Scotiabank Saddledome

Sep 5 Winnipeg, Manitoba – Canada Life Center

Sep 13 Huntsville, AL – The Orion Amphitheater

Sep 14 Cincinnati, OH – The Andrew J Brady Music Center

Sep 16 Boston, MA – MGM Music Hall at Fenway

Sep 18 Queens, NY – Forest Hills Stadium

Sep 20 Washington, D.C. – The Anthem

Sep 23 Philadelphia, PA – TD Pavilion at The Mann

Sep 25 Atlanta, GA – State Farm Arena

Sep 26 Nashville, TN – Bridgestone Arena

Sep 28 Chicago, IL – Huntington Bank Pavilion at Northerly Island

Oct 1 Toronto, Ontario – Budweiser Stage

Oct 2 Laval, Quebec – Place Bell

Oct 5 Bridgeport, CT – Hartford HealthCare Amphitheater

 

©︎James Caswell

オーストラリア/クイーンズランドのロックバンド、Girl and Girl(ガール・アンド・ガール)がデビュー・アルバム『コール・ア・ドクター』を発表しました。

 

バンドが2022年にリリースしたEP『Divorce』に続くこのアルバムは、Sub PopとVirgin Music Australiaから5月24日にリリースされます。リード・シングル「Hello」は、テイラ・ローレン監督によるミュージック・ビデオ付き。アルバムのジャケットとトラックリストは以下の通りです。


「"Hello''は、自己破壊的な考えや日常を合理化するために、毎日のように医療専門家と相談しなければならない若者の物語なんだ。自分自身の不幸をロマンチックに描いている。深く、暗く、汚い考えに支配されてしまう。絶え間ないストレスや心配事があまりにも身近で心地よいものだから、たとえ自分自身を引き戻すことができたとしても、そうしないのだと理解している。」

 


「Hello」




Girl And Girl 『Call A Doctor』


Label: Sub Pop / Virgin Music Australia

Release: 2024/05/24


Tracklist:


1. INTRO

2. Call A Doctor

3. Hello

4. Maple Jean and the Anthropocene

5. Oh Boy!

6. Suffocate

7. Mother

8. You’ll Be Alright

9. Comfortable Friends

10. Our Love (Ours Only)

11. OUTRO

 

©︎Alex Lockett

グラミー賞プロデューサー、ジャック・アントノフ率いるBleachers(ブリーチャーズ)が新曲「Me Before You」を発表しました。この新曲は、セルフタイトル・アルバムに収録。以下からチェックしてみよう。

 

2024年のグラミー賞で年間最優秀プロデューサー賞(ノン・クラシック部門)を受賞したジャック・アントノフは、アップルTV+の新シリーズ「The New Look」のサウンドトラックも手がけており、フローレンス・ウェルチラナ・デル・レイパフューム・ジーニアスザ・1975などが名曲のカバーを制作している。

 

今年、ブリーチャーズはサマーソニックで来日公演を行います。 

 

 

「Me Before You」

 

 

 ニューアルバム『Bleachers』は3月8日にDirty Hitよりリリース予定です。「Alma Mater」、『Tiny Moves』、「Me Before You」「Modern Girl」が先行配信されている。