リアム・ギャラガーはマドリッドの大手雑誌、elpaisの取材に応じた。国外のメディアだからこそ赤裸々に語れることもある。ソロアルバムの活動後、ギャラガーはストーン・ローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイアをコラボレーターに選んだ。今回、彼はスクワイアとの親交を持つようになったきっかけ、ブリットポップとの出会いから、そして最新作『Liam Gallagher & John Squire』までを解き明かした。リアム・ギャラガー(マンチェスター、51歳)は、数ヶ月前に自身のソーシャル・ネットワークでこのアルバムを発表したとき、「リボルバー以来のベスト・アルバム」になると語った。多くの人が冗談だったはずだ。いや、そうでもなかったかもしれない。


「冗談だけど、本心でもあるんだ。元オアシスのヴォーカリストは、パリのホテルの一室で朝っぱらからビールを飲みながら言った。結局のところ、彼は不遜とまではいかないが、謙虚な人物として知られているというわけでもない。ギャラガーは、同じくマンチェスターの伝説的バンドであるザ・ストーン・ローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイア(マンチェスター、61歳)との初共演アルバムについて語ったのだ。


ワーナーが今週金曜日にリリースする、メンバーの名前を冠したアルバム『Liam Gallagher & John Squire』は、ロックの歴史を変えることはないだろうが、「それぞれのグループが解散して以来、彼らがレコーディングした最高の作品になるかもしれない」というのが批評家のコンセンサスだ。ファースト・シングルの『Just Another Rainbow』は快調な滑り出しを見せ、全英1位を獲得し、彼らのレシピ-良いメロディー、シンプルな歌詞、20世紀の男らしさ-がいまだに聴衆を惹きつけていることを証し立てる。


隣の席に座れば、彼らは家族のようになるのかもしれない。一見、スクワイアは本物の兄弟ノエル・ギャラガーと別れた後の代理の兄弟のように見える。彼らは同じグリーンのパーカー、同じアディダスのサンバ、同じ美容師がカットしたと思われるヘアスタイル、同じ北部訛り(ギャラガーの訛りは最も聞き取りにくい)を身にまとっている。


両者は90年代初頭からの知り合いだ。彼らのバンド間には、当時のイギリスのバンドに対する愛情があり、喧嘩とまではいかなくても、冗談交じりの侮辱に傾いていた。「当時は、自分より前に来たバンドを悪く言うのが流行ってて、ロックの恐竜扱いしていた。全員を憎まなければならなかった。でも彼らは決してそうしなかった」とスクワイアは頷く。「私たちは何度か悪口を言ったが、決して彼らを憎んだりはしなかったよ。我々は彼らを愛していた」とギャラガー。


オアシスのフロントマンは、16歳のときにストーン・ローゼズのコンサートを見に行った。1994年に "ウェールズの商店街で "偶然出会って以来、2人は何年にもわたって出会い、いくつかのギグで共演し、スクワイアは伝説的なギグで「シャンパン・スーパーノヴァ」を演奏したこともある。 2人がこれほど意気投合したのは、2人のバックグラウンドが似ているからなのだろうか?


「2人ともマンチェスター出身だからかもしれないけど、それよりも音楽についてもそうだし、似たような服が好きだから、そして、2人ともフットボールが好きだからだよ」とギャラガーは言う。「僕の方がちょっと上品なんだ。父親が工場で働いていたとはいえ、僕は郊外の緑の多いところで育ったんだ」とスクワイアは言う。アイルランド移民の息子であるリアムは驚く。母はマクビティーのビスケット工場で働いていた。でも、そのことを話したことはなかった。


2022年、2人は長年会っていなかったステージを共にした。帰り際、スクワイアはギャラガーに2曲のヴォーカルを依頼し、それが結果的にこのアルバムを構成する10曲となった。リアムはひとつの条件、つまり「ギターがたくさんあること」を条件にした。このアルバムは、長距離のブレインストーミングを経て、LAで3週間かけて録音された。アルバムのサウンドのインスピレーションを求めていたスクワイアは、ジミ・ヘンドリックスとザ・フェイセズの曲を提案した。ギャラガーは、ボブ・マーリーの『リデンプション・ソング』とビージーズ(!)のファルセットを提案した。


その結果、サイケデリアとブルースが混ざり合い、Mars to LiverpoolやMother Nature's Songのような丸みを帯びた曲が生まれた。「これは住む場所を与えてくれたことへの感謝のメッセージなんだ」とスクワイアは言う。「若い頃はそのありがたみがちっともわからず、一日中家に閉じこもって過ごしていた。でも、今は自然の中に入るのが大好きで、いつも早起きして散歩に出かけるんだ」と、ギャラガーは自宅近くのロンドンののどかなハムステッド・ヒース公園での愛犬バトンズとの散歩について語った。


デイモン・アルバーンは数ヶ月前、1994年にザ・フェイスが考案した「ブリットポップ」というレッテルがずっと嫌いだったと語った。


このレッテルは、トニー・ブレアの台頭と並行して、音楽、若者、新労働党が同一視された瞬間、燎原の火のごとく台頭してきた20代のバンドのニュー・ウェーブ運動を指すものだったが、長い年月を経て、幻影であったことが証明される。アルバーンは利用されたと感じた。ギャラガーはかつてのライバルについて次のように語る。「でも、彼らはブリットポップを作ったのだから」「パルプ、スウェード、エラスティカ、メンズウェア......。すべてがブリットポップ一色だった。オアシスやヴァーヴはもっと意味のあることをやっていたけどね。ブリットポップはちょっと愚かだったかな」


それ以来、あなたの国は音楽以外の理由で音楽的影響力を失ったと言えますかと聞かれると、「そうかもしれない、でも、それはブレグジットのせいじゃないと思う。ヨーロッパ・ツアーは高くついたけどね」とスクワイアは答える。ギャラガーは付け加えた。「最近の若者は、全員ではないけれど、そのほとんどがクソ怠け者だと思う。ブレグジットやナイジェル・ファラージを責めないでほしい。問題は、彼らがバンに乗ってクソみたいな道をドライブしたがらないことなんだ。彼らはすぐに成功したいわけさ。努力なんて少しもしたくないんだ。ファーストアルバムで一躍スターになった彼はどう? 車にもバスにもフェリーにも乗った。必要なことは何でもやったんだ」


ギャラガーは、2024年にDefinitely Maybeの30周年を祝うツアーを発表した。兄なしでこれらの曲を演奏するのは奇妙なことだろうか?  「いや、いつもは自分のライブで演奏するんだ。それに、彼は参加するチャンスがあったのに、それを断ったんだ。誰かが汚れ仕事をしなければならない」 彼はこのツアーに参加するように頼んだのだろうか? 「そう、頼みました」と彼は答えた。彼らは互いに話をしないことで有名だ。アルバムの記念日であると同時に、2009年にこの同じ街で行われたコンサートの後、オアシスが解散してから15年目になる。


ノエルは声明の中で、「耐えがたいレベルの言葉の威圧と暴力」によって彼を非難した。(後に、彼は彼の頭に「プラムとギター」を投げつけたと付け加えた)。 彼はそれについて何を覚えているのか?  唐突な記憶喪失に陥ったかのようにリアム・ギャラガーは、「何も覚えちゃいないよ」と言う。では彼はいつか兄と和解することになるのだろうか? 「そうかもしれない」と彼は言う。「でも、今週はないだろうね」 


ふと、イギリスの世界的に有名ミュージシャンが再結成について口に出して騒動を巻き起こした「グロウ・アップ騒動」の時に「間抜けヅラ」と、相手を手痛く一蹴したノエル・ギャラガーの顔が浮かんでくる。オアシスの次の記念日は2025年である。傑作アルバム『(What's The Story)モーニング・グローリー』のリリースから30年。これ以上の機会は二度と訪れないかもしれない。

 Weekly Music Feature 

 



Nils Frahm

 

ニルス・フラームは、ベルリンを拠点に活動するドイツのミュージシャン、作曲家、レコード・プロデューサー。

 

クラシックとエレクトロニック・ミュージックを融合させ、グランドピアノ、アップライトピアノ、ローランド・ジュノ60、ローズ・ピアノ、ドラムマシン、ムーグ・タウルスをミックスした型破りなピアノ・アプローチで知られる。

 

ソロ活動のほか、アンネ・ミュラー、オラファー・アルナルズ、F. S. ブルム、ウッドキッドといった著名な演奏家とのコラボレーションも発表している。フレデリック・グマイナー、セバスチャン・シングヴァルトとともにノンキーンとしてレコーディング、演奏活動を行っている。

 

フラームは早くから音楽に親しんできた。父のクラウス・フラームは写真家で、ECMレコードのジャケットデザインも手がけている。彼はハンブルグ近郊で育ち、そこでクラシックのピアニストや現代の作曲家のスタイルを学んだ。学校ではミキシング・ボードを使い、録音された音の質に強い関心を抱いていた。

 

フラームは、初期のピアノ・ソロ作品『Wintermusik』(2009年)と『The Bells』(2009年)で注目を集めたが、批評家から絶賛されたのは2011年にリリースした『Felt』だった。以来、彼の音楽をリリースし続けているErased Tapesからの初のスタジオ・アルバムである。このアルバムに続くソロ・シンセサイザーEP『Juno and by Screws』(2012年)は、フラームが親指の怪我から回復している間にレコーディングされ、彼の誕生日にファンに無料ダウンロードで提供された。『Juno』に続く『Juno Reworked』(2013年)は、ルーク・アボットとクリス・クラークをゲストに迎えてリワークした。アルバム『Spaces』(2013年)は、2年以上にわたる様々な会場でのライブ録音で構成されている。


2013年12月、フラームは初の音楽集『Sheets Eins』をマナーズ・マクデイドから出版した。2016年には続編となる『Sheets Zwei』がリリースされた。2014年、フラームはデイヴィッド・クラヴィンスが彼のために特別に設計・製作した新しいピアノ「Una Corda」を発表した。このピアノは重さ100kg以下で、一般的に使用される3本の弦ではなく、鍵盤1つにつき1本の弦が張られている。


オーバーダビングなしの即興シングル・テイクによるアルバム『Solo』(2015年)は、後に同じくデヴィッド・クラヴィンス製の高さ370cmの縦型ピアノ「Modell 370」でレコーディングされた。インパラ・アルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた19枚のうちの1枚である。シングル「More」の凝縮バージョンは、『アサシン クリード ユニティ』のgamescomトレーラーに登場した。


2015年、フラームはセバスチャン・シッパー監督による140分連続テイクのドイツ映画『ヴィクトリア』で初のオリジナル・スコアを作曲した。また、2015年10月に公開され絶賛されたJR監督の短編映画『ELLIS』でウッドキッドとコラボレーションした。


同年、ニルス・フラームは1年の88日目を祝う「ピアノの日」(標準的なピアノの鍵盤が88鍵であることに由来)を創設した。最初のプロジェクトは、デイヴィッド・クラヴィンスとともに「Modell 450」を製作することだった。これは「Modell 370」の後継機である。


2016年2月、フラームは『The Gamble』をリリースし、2016年8月にはその関連作『Oddments of the Gamble』をリリースした。Pitchforkはこのアルバムを「魅力的につぎはぎだらけで雑然としているが、テンポがよくダイナミック」と評した。アートワークはフラームの父親がプロデュースした。

 

フラームは、「私は、人間がある状況下でどのように反応するか、そして音楽が人々の感情に何をもたらすかに興味がある。音色によって人々の態度をどのように変えることができるのだろうか。私が良いコンサートをした後、人々は幸せそうに部屋を出ていく。これは世界に還元できることなんだ。人々が落ち込んだり、もうダメだと感じたりしたときに、少なくとも音楽を聴かせ、人々の態度を変えることで、そういうふうに思わせたくない......。それが僕の宗教なんだ」



 

ドイツのポストクラシカルの至宝、ニルス・フラームが、ソロピアノ曲の新作「Day」を発表する。2022年の夏、ベルリンの有名な複合施設ファンクハウスのスタジオを離れ、完全な孤独の中で録音されたこのアルバムは、3時間に及ぶ壮大なアンビエントの傑作「Music For Animals」以来となる。


「Day」は、過去10年間、フラームが最初にその名を知らしめたピアノ曲から徐々に離れていき、それでもなお、より楽器的に複雑で複雑なアレンジを施した独特のアプローチに移行していくのを見てきた人たちにとっては驚きかもしれない。


2021年、パンデミックの初期にアーカイヴの整理に費やしていた彼は、80分、23曲からなる「Old Friends New Friends」をリリース。「Music For Animals」の延長線上にあるアンビエント的な性質から判断すると、この作戦は成功したと言えようが、フラームは初心に帰らずにはいられない。「The Bells」、「Felt」、「Screws」といった高評価を得たアルバムを楽しんだ人々は、「Day」の慣れ親しんだ個人的なスタイルに満足するはずだ。「Day」には6曲が収録され、そのうち3曲が6分を超えるもので、フラームが2024年にリリースを予定している2枚のアルバムの第1弾となる。


しかし、その性質上、フラームはこのリリースについて歌ったり踊ったりはしない。その代わり、現在進行中のワールド・ツアーを再開する。すでにベルリンのファンクハウスでの15公演がソールドアウトし、アテネのアクロポリスでの公演も含まれている。2024年7月にロンドン・バービカンで開催される数回のソールドアウト公演を含め、世界各地での公演が続く。


このアルバムは、レコーディングされた時のように、静かで居心地の良い部屋で楽しむのが一番だ。周期的で静かなジャジーな「You Name It」では、ペダルのきしむ音がかすかに聞こえ、「Butter Notes」のアルペジオの緩和的な波紋では、外の通りで犬が吠える音が聞こえる。慈愛に満ちた「Tuesdays」と感情的に曖昧な「Towards Zero」は、ハロルド・バッドの初期の作品のような痛烈な粘りをもって余韻を残し、「Hands On」は、時に明るく、風通しの良い曲で、独自の意図的なペースを作り出している。


内密なムードが特徴的な「Day」は、フラームが現在、ピアノ、オルガン、キーボード、シンセ、さらにはグラス・ハーモニカまで駆使した手の込んだ祝祭的なコンサートで最もよく知られていることは間違いないが、シンプルさ、優しさ、ロマンスに影響を与える名手であることを証明している。

 

 


 『Day』/ Leiter-Verlag


    


フラームがエレクトロニック・プロデューサーとしての表情を持つ傍ら、鍵盤奏者としての傑出した才覚を持つことは、音楽ファンによく知られていることである。2009年頃、ドイツ・ロマン派に属するポスト・クラシカルのシングル「Wintermusik」を発表して以来、不慮の事故で指に怪我を負う等、いくつかの懸念すべき出来事も発生したが、結局のところ、2024年現在まで、(知るかぎりでは)フラームが鍵盤奏者であることを止めたことは一度もない。

 

そのなかで、鍵盤奏者としての性質をわずかに残しながら、意欲的なミニマル・テクノやエレクトロも制作してきた。BBC Promsへの出演を期に、英国等の音楽市場でもアーティストの知名度が上昇した経緯を見ると、フラームの一般的なイメージは「エレクトロニック・プロデューサー」ということになるのかもしれない。しかし、ミュージシャンとしての本質は、やはり鍵盤奏者にあるといわざるを得ない。結局、ミニマル・テクノやダニエル・ロパティンのような電子音楽の交響曲という要素は、鍵盤奏者としての性質の延長線上にあるということなのだ。

 

また、 ニルス・フラームは、ドイツのファンクハウス・ベルリンに個人スタジオを所有していることは詳しい方ならご承知かもしれない。しかし、かつては自宅の地下室に個人スタジオからファンクハウスベルリンに制作拠点を移したことは、こ過剰なプレッシャーを制作者に与えることに繋がった。そこから気をそらすため、フラームは時々、マヨルカ島にエネルギーの補填に行ったり、ベルリンの音楽仲間である現代のダブ・ミュージックの象徴的なプロデューサー、FS Blummとのコラボレーションを行っていた。つまり、これは推測するに、気分が詰まりがちな制作環境に別の気風をもたらそうとしたというのが所感である。

 

今回の最新アルバム『Day』は個人スタジオがあるファンクハウスから距離を置いている。このファンクハウスの個人スタジオは、『All Melody』のアルバムのアートワークにもなっている。なぜ制作拠点を変更したのかについては、東西分裂時代のドイツの閉塞感から逃れることと、作風を変化させることに狙いがあったのではないかと推測される。


フラームは、以前からドイツの新聞社、”De Morgen”の取材で明らかにしている通り、ワーカーホリック的な気質があったことを認めていた。しかし、そのことが本来の音楽的な瞑想性や深遠さを摩耗していることも明らかであった。おそらく、このままでは、音楽的な感性の源泉がどこかで枯渇する可能性もあるかもしれない。そのことを知ってのことか、ニルス・フラームは、2021年頃から、ライブの本数を100本ほどに徐々に減らしていき、パンデミックやロックダウンを契機に、彼のマネージャーと独立レーベル、”Leiter-Verlag”を設立し、その手始めに『Music For Animals』を発表した。これらの動向は、次の作品、そして、その次なる作品へ向けて、以前の活動スタイルから転換を図るための助走のような期間であったものと考えられる。

 

フラームは、活動初期のコンテンポラリークラシカル/ポスト・クラシカルの未発表音源を収録した2021年の『Old Friends New Friends』では、自身のピアノ曲を主体とする音楽性について、「ドイツ・ロマン派」的なものであるとし、いくらかそれを時代遅れなものとしていた。その後の『Music For Animals』はシンセサイザーによるアンビエント作品であったため、しばらくはピアノ作品を期待出来ないと私は考えていたのだったが、結局のところ、このアルバムで再び最初期の作風に回帰を果たしたということは、フラームの発言はある種のジョークのような意味だったのだろう。


しかし、原点回帰を果たしたからといえど、過去の時代の成功例にすがりつくようなアルバムではない。はじめに言っておくと、このアルバムはニルス・フラームの最高傑作の1つであり、ピアノ作品としては、グラミー賞を受賞したオーラヴル・アルナルズの『Some Kind Of Piece』に匹敵する。全編が一貫してピアノの録音で占められていて、あらかじめスコアや着想を制作者の頭の中でまとめておき、一気呵成に録音したようなライブ感のある作品となっている。


ここ数年の称賛された作品や、売れ行きが好調な作品を見るかぎりでは、そのほとんどが数ヶ月か、それ以上の期間がアルバムの音楽の背景に流れているのを感じさせるが、『Day』は、ほとんどそういった時間の感慨を覚えさせない。制作者によるライブ録音が始まり、それが35分ほどの簡潔な構成で終了する。多分、無駄な脚色や華美な演出は、このアーティストには不要なのかもしれない。フラームのアルバムは、ピアノの演奏、犬や鳥の鳴き声のサンプリング、そして、マイクの向こう側にかすかに聞こえる緊張感のある息遣いや間、それらが渾然一体となり、モダン・インテリアのようにスタイリッシュに洗練された音楽世界が構築されたのである。

 

 

オープニングを飾る「You Name It」は、2018年の『All Melody』に収録されていた「My Friend The Forest」の作風を彷彿とさせ、さらに2009年頃のポスト・クラシカルの形式に回帰している。ビル・エヴァンスのような洗練された演奏力があるため、少なくとも制作者が忌避していたようなアナクロニズムに堕することはほとんどない。 なおかつ、近年のエレクトロニックを主体とした曲や、アルバムに申し訳程度に収録されていたピアノ曲ともその印象が異なる。


演奏には瞑想性があり、まるでピアノの演奏を通じ、深遠な思索を行うかのようである。それは必ずしも「音楽のフィクションの物語」となるわけではないが、少なくとも、「音で言葉を語る」という、プロの音楽家としての水準を簡単にクリアしているように思える。


この曲は、氾濫する言葉から距離を置き、言葉の軽薄さから逃れさせる力を持っている。この曲を聞き、言葉に還ると、言葉というものの大切さに気づく契機となるかもしれない。フラームの演奏はアンドラーシュ・シフやグレン・グールドよりも寡黙であるが、しかし、そこには音楽を尊重する沈黙がある。これがこの音楽を聴いて、じっくりと聞きこませる力がある理由である。 

 

「Tuesday」

 

 

 

「Tuesday」も一曲目と同じように、ピアノハンマーの音響を生かしたディレイやサステインを強調したサウンド・デザインである。しかし、最初の一音の立ち上がり、つまりハンマーが鍵盤の蓋の向こうに上がる瞬間、感情性とロマンが溢れ出し、潤沢な時間が流れはじめる。曲には、イタリアのルチアーノ・ベリオの「Wasserklavier」のような悲しみもかんじられるが、 ロベルト・シューマンの「Des Abends(夕べに)」のようなドイツ・ロマン派の伝統性も含まれている。シューマンの曲は、夕暮れの哀愁に満ちた情感、ライン地方の景物の美しさからもたらされる自然味が最大の魅力だったが、この曲は同じような系譜にあるとても美しい曲である。


しかし、それは旋律進行の器楽的な巧みさというよりも、実際の演奏の気品や洗練された感覚からもたらされる。楽節としてはミニマル音楽の系譜にあるものの、その合間に取り入れられる休符、つまり沈黙の瞬間が曲そのものに安らぎを与える。その間には、ピアノの演奏時には聞こえなかった演奏者のかすかな息遣いやアコースティックピアノのハンマーの軋む音が聞き取れる。これは隙間を見出すと、微細な音を配そうという近年の音楽の流れとは対極にある。忙しない音の動きやリズムを過剰に強調するのは、音楽というものを信頼していない証でもある。フラームはそれを逆手に取り、あえてこういった間や休符の中にある安らぎを強調している。

 

「Butter Notes」は、ある意味ではこれまでとは打って変わって、古典派やバロック音楽への敬愛を示している。バッハの「コラール」や「平均律クラヴィーア」に見られるような構造的な音楽を対比的に配置し、特異な作風に昇華させている。この曲には、ベートーヴェンやシューベルトのソナタ形式の作品に対する親近感もあり、それはロマンティックな気風を持つ「B楽章」を元にしている。これらはシューベルトのピアノ・ソナタの主要作品や、ベートーヴェンの『月光』の系譜に位置づけられる。それらの古典的な作風を踏襲しつつも、低音を強調したダイナミックでモダンなサウンド・プロダクションに変容させる。その中には実験音楽の技法が導入され、ボウド・ピアノ(プリペイド・ピアノ)のデチューンさせたピアノ弦をベース音として取り入れるという前衛的な試行がなされている。既存のクラシックの楽曲に影響を受けながらも、アンビエンスを強調したりというように、モダンなサウンドが敷き詰められている。

 

 「Hands On」は、『All Melody』の時代から取り組んできたアンビエントとピアノミュージックの融合を次世代のエレクトロニックとして昇華させるというフラームらしい一曲となっている。この曲では、実際に鳴っている鍵盤の音と背後にあるハンマーの軋みという2つの音楽的な構造が同一線上にある2つの線へと分岐している。これらは「音楽によるメタ構造」ともいうべき作風を作り出す。Olafur Arnolds、Library Tapes、Goldmund,Akira Kosemura(小瀬村晶)といった最近のポスト・クラシカルの主要な演奏家は、この2つのプロダクションの融合に取り組んでいたが、この曲では2つのサウンドデザインをはっきり分離させることで、立体的な構造性を作り出す。また、前の曲と同様に、低音を強調したプロダクションは、ベーゼンドルファー(オーストリアのピアノで、現在はヤマハが買収)のような特殊な音響性を兼ね備えている。

 

 「Changes」でもプリペイド・ピアノの技法が取り入れられている。三味線や琵琶のような枯れた響きのある前衛的な音をモチーフとし、琵琶の演奏の技法が取り入れられている。これは武満徹がニューヨークで初演を行ったクラシックの交響曲「November Steps」にも取り入れられている。


この曲ではプリペイド・ピアノをウッドベースのように弾くことにより、こういった演奏が生み出されている。そして面白いことに、持続音が減退音に変化する瞬間、琵琶や三味線のようであった和風の音響性が、インドのシタールのようなエキゾチックな音色へと変わる。それはライブセットで実際に演奏楽器を変えるときのような、イマジネーションを膨らませるような効果がある。この曲は従来の作風に比べると、驚くほど明るく、清々しい感覚に彩られている。ピアノの演奏面での工夫もあり、バッハの「フランス組曲」、「イギリス組曲」に見られるような装飾音、スタッカートの技法を取りいれ、音の印象に変容をもたらしている。聞き方次第では、それ以前のスカルラッティのイタリアン・バロックに対する親しみとも読み解ける。

 

クローズ「Towards Zero」はこれまでフラームが書いてきた中で最高傑作の1つに挙げられる。ドイツ・ロマン派の音楽性に根ざしたイントロから瞑想的な旋律が紡がれる。スケールの中にはバッハの「コラール」の編曲を行ったブゾーニのような重厚さと敬虔な響きが含まれる。低音を強調し、ディレイとサステインに変化を与え、その中に鶏の声のサンプリングを配している。

 

これらの実験的なサウンドプロダクションについては、かつてシューマンが行った「Vogel als Prophet(予言の鳥)」におけるストーリーテリングのような音楽と、イタリアのレスピーギが「ローマの松」で世界で最初に行われたサンプリングの技法を複合させ、それを現在の視点から再解釈するという意義が求められる。そして、この曲にも、ライブパフォーマンスのような精細感のある録音形式が選ばれている。ここには息を飲むようなリアルな緊迫感、音のひとつひとつの立ち上がり、ノートが完全に消え入ろうとする瞬間に至るまで、制作過程の全てが収録されている。それは実際に鳴っている音だけではなく、空間の背後の音を掬い取ろうというのだろう。

 

ニルス・フラームが、アルバムのクローズ曲「Towards Zero」で試みようとしているのは、おそらく音を強調するということではなく、休符によって発生する空白を、ディレイ/リバーブ等を中心とするエフェクトで強調させ、その余白を徹底して増大させるということである。そして制作者の意図する「ゼロに向かう」という考えは、最終的に、坂本龍一の遺作と同じように、宇宙の根源的な核心へ接近していこうとする。一貫して、高水準のピアノ曲が示された後に訪れるのは、あっけない「沈黙」である。その敬虔な響きが徹底して強調され、アルバムは終わる。

 

また、最後の曲は、鳥の声のサンプリングが収録されているためか、新訳聖書のような文学性を思わせる。バイブルの中で、使徒ペテロがナザレのイエスを裏切るシーンと重なるものがあり、ミステリアスな印象を余韻という形で残す。特筆すべきは、カデンツァのトニカ(Ⅰ)で曲はおわらず、その途中で終了していることである。これはシューベルトが未発表のピアノ曲を遺稿として残し、未完に終わっていることを思い出させ、また、『ダヴィンチ・コード』のようにミステリアスな雰囲気に満ちている。果たして、音楽の後になんらかの続きが存在するのか? その答えは、次のアルバム以降に持ち越されるということになるのだろう。

 

 

 

96/100 

 

 

 

Weekend Track 「Towards Zero」

 

 

 

・Nils Frahm(ニルス・フラーム)の新作アルバム『Day』は本日よりLeiterから発売。ストリーミングやご購入はこちらから。

 

ペンシルバニアのハードコアバンド、One Step Closer(ワン・ステップ・クローザー)は、2ndアルバム『All You Embrace』を発表した。

 

2021年の『This Place You Know』と昨年の『Songs for the Willow EP』に続くアルバムは、5月17日にRun for Coverからリリースされる。ニューシングル「Leap Years」は記事最下部よりご視聴下さい。


ボーカルのライアン・サヴィツキーは声明の中で、次のように述べています。「”One Step Closer”を完全な状態で披露したかったんだ。バンドの全てのパートを、そこに存在させたかった。100%自分たちらしく、できる限り自分たちのバンドに忠実でありたかった」



One Step Closer 『All You Embrace』


Label: Run For Cover

Release: 2024/05/17

Tracklist:


1. Color You

2. Leap Years

3. Blur My Memory

4. The Gate

5. Your Hazel Tree

6. Orange Leaf

7. Esruc

8. Slow To Let Go

9. Topanga

10. Giant’s Despair



「Leap Years」

 

Kelly Christine Sutton

Kacey Musgraves(ケーシー・マスグレイヴス)が、リリース予定のアルバム『Deeper Well』からの最新シングル「Too Good to Be True」を発表した。

 

先に公開されたタイトル曲に続くこの曲は、長年のコラボレーターであるダニエル・タシアンとイアン・フィチュックとの共作・共同プロデュースである。マスグレイヴスは、ファーザー・ジョン・ミスティ、ロード・ヒューロン、ニッケル・クリークらを前座に迎えた北米ツアーも発表している。ケーシー・マスグレイヴスによる『Deeper Well』は3月15日リリース予定。

 


「Too Good to Be True」

 


ニューヨークのバンドBeen Stellarが、デビューアルバム『Scream From New York』を6月14日にDirty Hitからリリース。このアルバムは2022年のデビューEPに続くもので、プロデューサーにダン・キャリー(black midi、Black Country New Road、Wet Leg)を迎えて制作された。
 

アルバムからのファースト・シングルは「Passing Judgement」で、Gentlemen時代のAfghan Whigsや、90年代/00年代のニューヨークのバンドCallaを彷彿とさせる、アングスティ/グリッティ/スルトリー・インディー・ロックの領域に入っている。
 
 
ヴォーカルのサム・スローカムは、この曲に関して次のように説明している。「『Passing Judgment』は、イギリスでの最初のツアーの最中に完成させた。ライヴの度に少しずつ違う形で演奏しながら、曲を様々な角度から見ることを学んでいった。ドラムとベースには、ライブで書き終えていなかったらなかったような混沌とした感じがある。そして、"リリックでは、なぜ私たちは自分の周りの世界を判断してしまうのか、そして、誰かや何かに判断を下すことは、たいてい自分自身に自信が持てないことに根ざしているのかについて考えていた」と付け加えた。

 
 
「Passing Judgement」
 






 
 
 
Been Stellar 『Scream From New York』


Label: Dirty Hit
Release: 202406/14
 
 
Tracklist:
 

01 Start Again
02 Passing Judgment
03 Pumpkin
04 Scream From New York, NY
05 Sweet
06 Can’t Look Away
07 Shimmer
08 Takedown
09 All In One
10 I Have The Answer
 
 
 
 
 

Been Stellar – 2024 Tour Dates:
 
Mar 1 – Paris, FR @ Le Zénith*
Mar 2 – Amsterdam, NE @ AFAS LIVE* SOLD OUT
Mar 3 – Brussels, BE @ Forest National*
Mar 5 – Hamburg, DE @ Barclays Arena*
Mar 7 – Oslo, NO @ Oslo Spektrum*
Mar 8 – Stockholm, SE @ Annexet*
Mar 10 – Copenhagen, DK @ KB Hallen* SOLD OUT
Mar 12 – Berlin, DE @ Mercedes-Benz Arena*
Mar 13 – Warsaw, PL @ Torwar Hall*
Mar 14 – Prague, CZ @ Fortuna Hall*
Mar 16 – Zurich, CH @ Hallenstadion Zurich*
Mar 18 – Munich, DE @ Zenith* SOLD OUT
Mar 19 – Milan, IT @ Mediolanum Forum*
Mar 21 – Frankfurt, DE @ Jahrhunderthalle* SOLD OUT
Mar 22 – Cologne, DE @ Palladium* SOLD OUT
Mar 24 – Amsterdam, NE @ AFAS Live* SOLD OUT
May 4 – Atlanta, GA @ Shaky Knees
May 15 – Southampton, UK @ Joiners
May 16 – Brighton, UK @ The Great Escape
May 18 – Amsterdam, NL @ London Calling
May 20 – Bristol, UK @ The Louisiana
May 22 – Manchester, UK @ YES (basement)
May 23 – London, UK @ The Lexington
July 26 – Sheffield, UK @ Tramlines Fest
July 27 – Oxfordshire, UK @ Truck Fest
July 28 – Suffolk, UK @ Latitude Festival


 

©︎Holy Wittaker

ロンドンを拠点に活動するエクスペリメンタルポップ・アーティスト、mui zyuが2枚目のアルバム『nothing or something to die for』を発表した。この作品は、Father/Daughter Recordsから5月24日に発売される。昨年の『Rotten Bun for an Eggless Century』に続く作品だ。(Reviewを読む)


このアルバムには、年明けにリリースされたシングル「everything to die for」と、エヴァ・リューのダマ・スカウトのバンドメイト、ダニー・グラントが監督したビデオ付きの新曲「the mould」が収録されている。エヴァ・リューはこの曲について次のように説明している。


「the mouldはとてもクールで、正しい種類はスーパーパワーを与えてくれる。残念ながら、ぴったりとはまらない型に押し込められるのは理想的とは言えません」


「だから、私は腐ったゼリーボウルの底で、どんな型が良い種類で、どんなものが悪い種類なのかを見つけ出そうとしています。多分、この急で滑りやすいボウルから出られる限り、そんなことは全く重要ではないことに気づくだろう。これはまた、ある種のアンチオーバーチュア的な意味で、このアルバム全体を示す私の文章の新しいアプローチを示している」




mui zyu 『nothing or something to die for』



Label: Father/ Daughter

Release: 2024/05/24


Tracklist:


1. satan marriage

2. the mould

3. everything to die for

4. donna like parasites

5. the rules of what an earthling can be

6. please be okay [feat. Miss Grit]

7. telephone congee i

8. speak up, sponge

9. what’s the password baby bird?

10. hopefulness, hopefulness

11. telephone congee ii

12. sparky [feat. lei, e]

13. in the dot [feat. Pickle Darling]

14. cool as a cucumber

15. 扮豬食老虎




「the mould」

 


Dana Gavansky(ダナ・ガヴァンスキー)が、新曲「Ears Were Growing」とミュージックビデオを発表した。この曲は、4月5日にリリースされるアルバム『LATE SLAP』からのもので、先行トラック「Let Them Row」「How to Feel Uncomfortable」が収録されている。


「"Ears Were Growing "は現実逃避者の夢で、同じ古いソファで同じ古い思考から抜け出せないという現実にスパイラル的に戻ってくる。憂鬱でネガティブな思考は、ひねくれた、しかし心地よい仲間、ストックホルム症候群のようなもの。トーキング・ヘッズのような曲を作ろうとしてこうなった」

 


「Ears Were Growing」

 

©︎Alex Da Corte

NYのシンセポップのスターシンガー、St.Vincent(セント・ヴィンセント)が次作アルバム『All Born Screaming』を発表した。ヴァージン・ミュージック・グループから4月26日にリリースされる。


『Daddy's Home』に続くセルフ・プロデュース・アルバムには、デイヴ・グロール、ケイト・ル・ボン、ジャスティン・メルダル=ジョンセン、ジョシュ・フリース、ステラ・モグザワ、レイチェル・エクロス、マーク・ギリアナ、デヴィッド・ラリッケが参加。リード・シングル「Broken Man」は、アレックス・ダ・コルテ監督、フィラデルフィアで撮影されたミュージック・ビデオとともに到着した。アルバムのアートワークとトラックリストは下記を参照のこと。


『All Born Screaming』は、アニー・クラーク自身がセント・ヴィンセントのアルバムを初めてプロデュースし、シアン・リオダンがミックスを担当した。ロサンゼルスのCompound Fractureスタジオ、ニューヨークのElectric Lady、シカゴのスティーヴ・アルビニのElectrical Audioでレコーディングされた。


「感情的に、自分の心が本当は何を言っているのかを知るために、一人で森の中を長く歩かなければ辿り着けない場所がある」と彼女はプレスリリースで語っている。「それが本物であるからこそ、本物らしく聞こえるのです」


レコーディングに関して、アニー・クラークは次のように語った。「このアルバムは、ポスト・ペスト・ポップだと思いたいし、天国と地獄、つまり比喩的な表現が多い。スタジオに一人で何時間も座っているのは地獄の一種と言えるから」


彼女は、このアルバムにはデイヴ・グロールーとケイト・ルボンをレコーディングに招聘すると語っている。さらに、70年代と80年代に通じるアナログ・シンセとギターロックのアプローチが強いと付け加えた。「最も苛烈なサウンドであると同時に、サウンド的に開花していると思う。杭を打つような、意図的なサウンドだと思う」


クラークは新作アルバムについて、彼女のキャリアの中で "最も笑えないアルバム "だとユーモアを交えて語っている。「前作では、私は多くの痛烈なユーモアとウィットをもってタフなテーマにアプローチしていました。このアルバムは、よりダークでハードで、骨格に迫っている」と。



St.Vincent    『All Born Screaming』


Label: Virgin Music

Release:  2024/04/26


Tracklist:

1. Hell is Near
2. Reckless
3. Broken Man
4. Flea
5. Big Time Nothing
6. Violent Times
7. The Power’s Out
8. Sweetest Fruit
9. So Many Planets
10. All Born Screaming [feat. Cate Le Bon]


Pre-order(INT)




「Broken Man」-Lead Single

 


Bullyが新曲「Atom Bomb」というピアノ・バラードをサブポップから発表した。アリシア・ボニャーノの新曲は昨年の『ラッキー・フォー・ユー』以来となる。ライヴ・ビデオはブリー・マリー・フィッシュが監督し、テネシー州ナッシュビルのMMKスタジオで撮影された。


「この曲は元々ドラムマシンとエレキギターでレコーディングされた。JT・デイリー(プロデューサー)にデモを聴かせた時、彼はピアノに移すというアイディアを持っていた。こんな風に誰かを信用するなんて信じられない』と大声で言ったのを覚えている」


「というのも、他人と一緒にクリエイティブなアイデアを練ることで生じる弱さを避けるために、自分でレコーディング、ミックス、プロデュースをしていた人間にとって、それは大きな一歩だったからだ。お互いに新しいことに挑戦し、どちらかがそれを打ち切る前にお互いのアイデアを見届けようとすることを認め合った、それが私たちにとって最初の本当の絆の瞬間だった」


「Atom Bomb」

 


カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするFluttery Recordsの創設者Tanel Torunのアンビエントプロジェクト、Celestial Trailsがデビュー作『Lunar Beachcomber』を4月12日にリリースする。


セレスティアル・トレイルズは、ピアノ、アナログ・シンセ、エレクトリック・ギター、ベース・ギターによるオーガニックなテクスチャーの暖かさと、バーチャルな電子楽器の精密さをシームレスに融合させながら、音のタペストリーを幾重にも描いていく。オーガニックなレコーディングは、リバーブ、ディレイ、ハーモナイジング、テープ・マニピュレーション、サウンド・デコンストラクションといったエレクトロ・アコースティックのテクニックを駆使し、より豊かなものとなっている。さらに、自然散策や街歩きの際に録音されたテープ操作のフィールド・レコーディングが、もうひとつのレイヤーとしてシームレスに統合されている。


種から最終形まで、ルナ・ビーチコマーのレコーディング・プロセスは2023年6月から2024年1月にかけて展開された。最初のレコーディングはペンシルベニア州ピッツバーグで眠れない暑い夏の夜に行われ、最後のレコーディングはカリフォルニア州サンフランシスコで行われた。アルバムのレコーディングはすべて、この2都市のみで行われた。


自然の限りない美しさ、都市の風景、宇宙の魅惑的な謎にインスパイアされた『Lunar Beachcomber』は、静かな草原、賑やかな街並み、そして広大な宇宙空間を思わせるみずみずしいサウンドスケープで、あなたを未知の音の領域へと誘う。


オープニング・トラックの 「A Pair of New Wings」は、自然や生命との深い個人的なつながりをオーディオで表現している。


「過去5年間、私はニューヨーク州北部のフィンガー・レイク周辺のトレイルを発見したり、ラッカワナ川沿いを散策したりと、アメリカ全土で素晴らしいハイキングに出かけてきた。秋にはレーニア山の鮮やかな色を目の当たりにし、カリフォルニアの冬にはタマルパイス山の静謐な美しさを体験した。カウアイ島でマッドスキッパーと同じ泥地を共有したことは、忘れがたい瞬間のひとつに過ぎない。どの旅も深く、私の癒しの旅に欠かせないものであり、私に慰めやインスピレーション、そして新たな自由の感覚を与えてくれた」


入念な処理によって、エレキギターは慣れ親しんだ皮を脱ぎ捨てる。Time Collapse on the Threshing Floor」と「The Crudest Luminescence」の洗礼されたエレクトリック・ギターは、雰囲気のあるアンビエント・サウンドスケープにシームレスに溶け込んでいる。しかし、ストリングス以外にも驚きがある。


「このアルバムのすべての謎を明かしたくはないが、耳を澄ませば「Spell Machine Manufacturing」で鳥の群れを聴くことができる。それらの謎は、一連のフィルターとテープ操作によってうまく隠されている」


その抽象的な性質にもかかわらず、このアルバムには識別可能なメロディーが残されている。SFやシュールレアリズムの要素を取り入れた "Lunar Beachcomber "は、豊かで質感のあるアンビエント体験を提示しながらも、そのルーツは地球にしっかりと根付いている。


「私たちはしばしば、この惑星が砂浜の砂粒よりも小さいことを忘れてしまう。人生は贈り物であり、この惑星での時間は限られている。私たちは、この経験をお互いに簡単で楽しいものにするよう努力しなければならない」


Celestial Trailsは、地上のささやき声と宇宙のハミングが交錯する、音の風景への誘いを広げている。リスナーはこの聴覚の旅に出るとき、この宇宙のビーチコーミングの聖域での、はかなくも魅力的な体験を思い起こすことだろう。

 

 

 




Celestial Trails, the San Francisco, California-based solo ambient music project of Fluttery Records founder Taner Torun, makes its debut on Lunar Beachcomber.


Celestial Trails paints sonic tapestries layer by layer, seamlessly blending the warmth of organic textures from piano, analog synths, electric and bass guitars with the precision of virtual electronic instruments. Organic recordings are enriched using electroacoustic techniques such as reverb, delay, harmonizing, tape manipulation, and sonic deconstruction. Additionally, tape-manipulated field recordings captured during nature hikes and city walks are seamlessly integrated as another layer.


From seed to final form, Lunar Beachcomber’s recording process unfolded between June 2023 and January 2024. The first recording was in Pittsburgh, PA on a sleepless hot summer night, while the last one took place in San Francisco, CA. All recordings for the album were captured exclusively in these two cities.


Inspired by the boundless beauty of nature, urban landscapes, and the alluring mysteries of the cosmos, Lunar Beachcomber invites you to explore uncharted sonic territories; lush soundscapes, evoke tranquil meadows, bustling cityscapes, and the vastness of outer space.


The opening track, “A Pair of New Wings,” serves as an audio representation of the profound personal connection to nature and life.


“Over the past five years, I’ve embarked on incredible hikes across the United States, from discovering the trails around Finger Lakes in upstate New York to wandering along the Lackawanna River. I’ve witnessed the vibrant colors of Mount Rainier in Autumn and experienced the serene beauty of Mount Tamalpais in California winter. Sharing the same muddy ground with mudskippers in Kauai was just one of many memorable moments. Each journey has been profound, integral to my healing journey, offering me solace, inspiration, and a newfound sense of freedom.”


Through careful processing, electric guitars shed their familiar skins. The washed electric guitars in “Time Collapse on the Threshing Floor” and “The Crudest Luminescence” are seamlessly integrated into the atmospheric ambient soundscape. However, there are more surprises beyond the strings.


“I don’t want to reveal all the mysteries of this album but if you listen carefully you can hear a flock of birds in “Spell Machine Manufacturing”. Those mysteries are well hidden with a series of filters and tape manipulations.”


Despite its abstract nature, the album retains discernible melodies. Infused with elements of science fiction and surrealism, “Lunar Beachcomber” presents a rich and textured ambient experience, yet its roots remain firmly planted on earth.


“We often forget that our planet is smaller than a grain of sand on a beach. Life is a gift, and our time on this planet is limited. We should strive to make this experience easy and pleasant for each other.”


Celestial Trails extends an invitation to traverse sonic landscapes, where earthly whispers intertwine with cosmic hums. As listeners embark on this auditory journey, they are reminded of the fleeting yet intriguing experience within this cosmic beachcomber’s sanctuary.



Celestial Trails『Lunar Beachcomber』




Label: Fluttery Recrods

Release: 2024/04/12


Tracklist:


01 – A Pair of New Wings

02 – Lunar Beachcomber

03 – Time Collapse on the Threshing Floor

04 – Lighthouse Behind the Glowing Tree

05 – Spell Machine Manufacturing

06 – Egg Hatching in the Violet River

07 – The Crudest Luminescence

08 – Touchdown on Interstellar Shores

 

Pre-order(bandcamp):

 

https://celestialtrails.bandcamp.com/album/lunar-beachcomber 

 


クリーブランドのロックバンド、Cloud Nothings(クラウド・ナッシングス)が、10枚目のスタジオアルバム『Final Summer』を発表した。


新曲「Running Through The Campus」は、昨年リリースされた「Final Summerに続く、4月19日に発売されるアルバムのセカンドシングルである。


クラウド・ナッシングスのヴォーカル/ギターのディラン・バルディは新曲についてこう語っている。

 

「僕は毎日、家の近くの大学のキャンパスを走っているんだ。時々、日が暮れてからそこに行くんだけど、早朝の慌ただしく混雑した時間とは対照的に、夜の空虚さが際立つ。”Running through the Campus”は、深夜にランニングをするときにふと考えることがある」

 

「他のみんなはどこかに行って、他の人たちと一緒に何かしているのに、自分は一人で走り回っているのは少し憂鬱ではないだろうか、ということについて歌っている。ランニングを始めるときの私の心境を描写し、深夜の孤独を清算し、受け入れることに入っていく。そして、ただ気分が良くなるようなことをして、比較に惑わされないようにしようという前向きな内容で終わる」



Cloud Nothings 『Final Summer』

 


 

Tracklist:


Final Summer

Daggers of Light

I'd Get Along

Mouse Policy

Silence

Running Through The Campus

The Golden Halo

Thank Me For Playing

On The Chain

Common Mistake


Pre-order:

https://purenoisestoreeu.com/collections/cloud-nothings



「Running Through The Campus」

 


ジンバブエにルーツを持つロンドンのインディーポップ・アーティスト、RACHEL CHINOURIRI(レイチェル・チヌリリ)が、近日発売予定のデビューアルバムのタイトル曲であるニュー・シングル「What A Devastating Turn Of Events」を発表した。

 

「この曲は、私にとって最も悲しく、しかし誇らしい出来事のひとつ。この曲は個人的なもので、実話に基づいている。私と同じような年齢の少女の悲劇的な物語なの。彼女の旅路の一歩一歩で、どこかの誰かが彼女の気持ちをある程度理解できると思う。人間関係、友情、ネグレクト、母性、鬱、拒絶、内なる憎しみとの戦い、自殺願望......」


「自ら命を絶つという決断は、多くの人が考えたことがあることだし、彼女の人生は、そのような環境を作り出す完璧な嵐に近いものだった。適切なサポートや周囲の理解がなければ、人は追い詰められたような気持ちになり、彼女がこのような選択をしたことは悲しいことです。彼女のストーリーは語られるべきで、多くの人が感じていることであり、常に助けを求めるべきだということを、もっと多くの人に知ってほしい」。


『What A Devastating Turn Of Events』の大部分と同様、この曲はチヌリリの人生で最も個人的で印象的な瞬間からインスピレーションを得ており、彼女の家族の死の実話を再構築している。アルバムのリード・シングルである「Never Need Me」や「The Hills」とは趣を異にしている。


『What A Devastating Turn Of Events』は5月3日にパーロフォン/アトラス・アーティスツよりリリースされる。


「What A Devastating Turn Of Events」

 

©Kirk Lisaj

TOPSのリードシンガー、Jane Penny(ジェーン・ペニー)が、デビューEP『Surfacing』に収録される新曲「Wear You Out」を発表した。

 

リード曲「Messages」に続くこの曲には、OTIUMが監督したビジュアルと合わせて公開された。『Surfacing』は4月5日にLuminelleからリリースされる。


「ポップでキュート、でも、ちょっと不吉で奇妙、官能的でウィットに富んだものを作りたかったの。言葉遊びがたくさんあって、ちょっとダーティー。最高の情熱や最も激しい愛は、時にちょっと破壊的で、それを楽しい方法で探求したかった」とペニーは説明している。



「Wear You Out」

 

©Missy Malouff


ボルチモアのエクスペリメンタルポップバンド、Tomato flower(トマト・フラワー)がニューシングル「Harlequin」を発表した。


この曲は新作アルバム『No』に収録。ヘイデン・ライトによるインタラクティブなウェブサイトが付属し、ハーレクイン・フィギュアのバラバラのピースをドラッグ・アンド・ドロップすることができる。「Harlequin」の試聴は以下から。

 

 

 「Harlequin」


 

トマト・フラワーによる新作アルバム『No」は3月8日にRamp Localからリリースされる。シングル「Temple of the Mind」「Destroyer」が先行シングルとして公開されている。



Charli XCXがニューアルバム『Brat』を発表した。そのプレビューとして、彼女は今週木曜日(2月29日)に最新シングル「Von Dutch」とそのビデオをリリースする予定。


このプロジェクトは全15曲、41分23秒の長さになると彼女は付け加えた。最近のソーシャルメディアへの投稿で、シャーリはブラットを "クラブ・レコード "と表現している。


「XXX6はクラブレコードで、みんなと世界中でパーティーをするのが待ちきれないわ。"私はダンスミュージックを作るために生まれてきた。


最近のザ・フェイスとのインタビューで、シャーリは、ポップ・シンガーが売り払ってしまうというコンセプト・アルバムである前回のスタジオ・アルバム『クラッシュ』とは違う方向に進みたかったと語っている。「私はラジオ・ライナーをやるために生まれてきたのではないのだから」


ライターのShaad D'Souzaによると、このアルバムは恋愛よりも友情やライバル関係に焦点を当てており、婚約者でプロデューサー兼、The 1975のドラマーであるジョージ・ダニエルとの「純粋に本当に素敵で幸せな」関係のおかげだという。


プロフィールの他の部分で、D'Souzaは "Von Dutch "を "彼女のアシッドで自由奔放な新しいモードへの完璧な導入 "であり、MySpaceにいた頃のCharliに戻るような曲だと述べている。別のトラックでは、ハイパーポップのパイオニアであるSOPHIEの死に対する悲しみを掘り下げている。


『Crash』は2022年3月にリリースされた。以来、Charli XCXは『Bodies Bodies Bodies』("Hot Girl")と『Barbie』("Speed Drive")のサウンドトラックに参加している。また、レオ・ビレンバーグと共に『ボトムズ』のサウンドトラックを指揮し、A.G.クックの次のアルバムのタイトル曲にゲスト参加している。



 

UKで最も人気のあるエレクトリックプロデューサー、Fred Again...(フレッド・アゲイン...)が最新シングル「stayinit」を発表した。

 

今回、フレッド・アゲインは、アトランタのラッパー、Lil Yachty(リル・ヨッティー)と昨年デビュー作を発表したスコットランドのエレクトロニックデュオ、Overmono(オーバーモノ)とタッグを組む。

 

ミュージックビデオは、Lil Yachty(リル・ヨッティー)が初めてサウンドシステムからこの曲を聴いた瞬間をリアルに捉えている。「彼が、この曲を聴く前は、携帯電話を通してしか聴いていなかったかもしれないね(笑) 」とプロデューサーはジョーク交じりに説明文に書いている。「そして、この曲は、明らかにこのようなアナログな空間と音のために作られたものなんだ」


ニューシングル「stayinit」は、12月にカルフォルニアのラッパー、Baby Keem(ベイビー・キーム)がアシストした「leavemealone」、ジョジーとの「ten」、オボンジャヤールをフィーチャーした「adore u」に続く、Fred Again...のコラボレーション・シリーズの最新作。


「stayinit」