Eluvium


テネシー州で生まれ、ケンタッキー州ルイビルで育ったマシュー・クーパーは、2000年代初頭にオレゴン州ポートランドへ移住して以来、自宅にこもり、脳内の振動を優雅なノイズの壮大な壁へと変容させることに多くの夜を費やしてきた。儚げな響きから氷河のような重厚さまで、幅広い深みを持つ彼は、ギターとピアノの密度の高いレイヤーを重ね合わせ、自らの周囲に畏敬の念を抱かせる要塞を築き上げる。


『Virga III』は、Eluviumによる独創的な実験的シリーズの第3弾であり、約5年ぶりの新作となる。『Virga II』の重厚で不気味な広がりとは明らかに対照的に、『Virga III』を構成する楽曲は、神々しいほどの安らぎをもたらす。『Virga』シリーズの各巻に息吹を与える、神経質な緊張感、制御不能感、そして忍耐強い再文脈化が、ここでは独自の形で表現されている。作曲家でありEluviumの中心人物であるマシュー・ロバート・クーパーは次のように語っている。


「『Virga I』は冬の吹雪の最中に自宅からガレージへ一時避難した経験から生まれ、『Virga II』は世界的なパンデミックの最中に見た幻影のような夢の連鎖から生まれた。対し、『Virga III』は、残酷なレトリック、言語に絶する暴力、終わりのない混乱、そして壊滅的な格差が日常的に氾濫する中で機能する、小さな緑地や排水路、その他の微小な生物生態系に見られる世界からインスピレーションを得ている。私たちを取り巻くミクロとマクロの宇宙への省察である」


『Virga III』の楽曲は、いつものようにクーパーが作曲・演奏しているが、Virgaの世界において、彼は本質的に自身の内なるユニークなコラボレーションを感じている。クーパーは次のように説明する。


「Virgaシリーズは、かつての自分へと回帰する機会を与えてくれるが、そこには新たなレベルの理解が伴っている。構築された音楽的システムや録音と向き合う際、より忍耐強く接することで、私は過去の自分と躊躇いながらもデュエットを繰り広げる」


「それは新たな演奏や加工のレイヤーにおいて、最初の音源を可能な限り長く消化し、そこから未知の感情が湧き上がるまで待ち、治療的な自己認識と発見の感覚を醸成することを願ってのことだ。探求的な精神と、絵画的な情感の共鳴が混ざり合い、徐々にそれ自体へと解き放たれていく」



Eluvium 『Virga Ⅲ』- Temporary Residence  


アメリカ/ポートランドを拠点に活動を行う作曲家/エレクトロニック・プロデューサー、マシュー・クーパーの連作シリーズ『Virga』は、おなじみのアンビエントの名盤で紹介した覚えがある。


マシュー・クーパーはブライアン・イーノに強い影響を受けたプロデューサー。その音作りも傍流ではなく、直系とも呼ぶべきだろう。Eluviumの作品から私自身はしばらく遠ざかっていたのだったが、やはり、最新作『Virga Ⅲ』はアンビエントとしてきわめて高いレベルにある。しかし、もちろん、作曲や構成的な巧みさ、プロデュース的な精細さという、このジャンルの基本的な要素が込められているのは事実でありながら、 音楽の持つエネルギーがクリアで澄みわたっている。結局、このジャンルは方法論や機材だけではなく、どのような性質の音を描きたいという点が重要なのだ。

 

『Virga 』は、推察するに、アンビエントの基本的なスタイルで構成されているが、必ずしも、精妙な音だけが存在するわけではない。アルバムの数曲に走る「サー」というホワイトノイズが、風や大気そのものの流れを表現している。このアルバムのオーディオ体験は、山登りや高原のハイキングで感じるような大気の中に包み込まれているような感じがする。また、車やバイクで感じる風を切るような気持ちよさと言っても差し支えないかもしれない。昨年末、アンビエントは基本的には、体験型の音楽で、その中に、未知の新しい発見のようなものが含まれていることが理想的なのではないかと、私自身は指摘した記憶がある。Eluviumのニューアルバム『Virga Ⅲ』には、このポイントが備わっていて、音楽自体がある種のオーディオ体験になっている。それはサラウンドシステムのような広大な奥行きを持つ未知のリスニング体験である。

 

アンビエントは心地よい音のマテリアルを集約したように思う読者もいるかもしれない。例えば、畠山地平さんが言っていたように、安眠効果やリラックス効果という要素を度外視してこのジャンルを語ることは難しい。そこに、開けた感覚やリラックスするなにかが基本的には必要である。

 

しかし、同時に、ヒーリング・ミュージックとアンビエントを分け隔てる分水嶺となるのは、その音楽的な系譜がどこから繋がっているか、そして一般的なヒーリングミュージックとは少し異なり、アンビエントミュージックは清濁併せ持ち、クリアな音だけで構成されるわけではないということだ。


つまり、宇宙の根源が必ずしも一つのものだけでは構成されず、多彩な性質から成立し、磁石の陽極と陰極のような対極のベクトルが存在することを、ブライアン・イーノやマシュー・クーパーの音楽は象徴づけている。また、最初に挙げた点を、象徴するかのように、Eluviumの音楽には、テクノやダウンテンポ/ノンビートの進化系のニュアンスが含まれている。クーパーの音楽は間違いなく、電子音楽の系譜の延長線上に居並んでいる。また、彼のサウンドにはヒーリングミュージックとは異なり、ホワイトノイズが積極的に使用され、 サイレンスとノイズが混在している。やはり、必ずしも、クリアで、きれいな音だけを集約したものではないわけである。

 

そして実際的に、大気や宇宙空間のことを考えて見ると、特殊な無響空間を除いては、まったくの静寂は存在しない。どのような空間領域においても、微細なノイズが、人間の聴覚では捉えられないレベルで存在している。これはイルカのような耳の良い哺乳類が、人間よりも遥かに遠い距離の音を把捉出来るという生物学的理論と近似する。つまり、私たちは、ノイズのようなものを聞き取れていないだけで、このアルバムに偏在するような普段聞き取れないような音波や帯域の音が流れている。アンビエントという音楽は、こういった宇宙的な真理を表すもので、今まで気がづかなかった概念のようなものを示し、なおかつ、現世的な感覚以上のシックスセンスやインスピレーションを掻き立てる内容であるべきなのである。そして、個人的に感謝したいと思うのは、マシュー・クーパーの音楽にはそのシックスセンスが生きていること。

 

こういった音楽は、AIでも作り出せないわけではない。しかし、『Virga Ⅲ』は紛れもなく人間が編み出したものだ。人間的な創造と機械的な創造を分け隔てる領域が存在し、それは、先にも述べたようなシックスセンスがあるのか、そして、人間の感覚を精細な方向へ導く力があるのか、もう一つは、そこに、鮮やかな生命力(いき)が存在するかということである。 人間には、AIにはできないことがあると私は考え、マシュー・クーパーの最新作にはそれがはっきりと提示されている。言うならば、人間しかなしえないことなとは、完全性ではなく、不完全性なのではないか。  


最新アルバム『Virga Ⅲ』は、ハイテクなアンビエントではなく、どちらかといえばローテクなアンビエントに属する。それは完全性とは対極にあり、不完全性が残されている。Eluviumの全般的な音楽的なアプローチにおいては、アナログのシグナル(信号)という要素が、その不完全性を表している。


 「A.M」は開けたような感覚がある。アンビエントのシークエンスがディレイによってドローン的に引き伸ばされ、背景となる微細なノイズと掛け合わされている。例えば、Pop Matterのようなメディアがクーパーの音楽を「メロディ的である」と指摘している通り、一曲目には、緩やかな旋律の流れがゆっくりと流れていき、雲や大気のような音楽の表層を作り出す。また、その中から、異なる旋律が別の箇所から出現し、同じく緩やかに流れていく。その中で、声のサンプリングが入り、まるで天上にいるような独特なアンビエンスを作り上げる。印象派の絵画のように抽象的旋律の流れがシークエンスとして組み合わされて、開けた感覚を無限に向けて押し広げていく。

 

シンセサイザーのパッドのフェードインから始まる「The Fires At Night」では、一曲目の風景的な印象は維持されている。タイトルにちなんで言えば、夜のキャンプのように遠くに見える熾火の炎が揺らめき、消えかけたり、燃えたぎったりする。そういった風景的な描写が行われている。その中で、メインとなるメロディーが主題的に立ち上る。風景的な動きを旋律的なモチーフとして使用している。ごくシンプルなタイプのアンビエントであるが、短いシークエンスを音量的なダイナミクスを用いながら、副次的な旋律の主題を登場させたりする。この曲では、地球より大きな宇宙的なロマンチシズムを表現することに成功している。

 

「Remains」で音の表現はさらに精細/微細になる。同じように宇宙的な雰囲気を感じさせる壮大なシークエンスが優勢である。クーパーはその音の流れの中から、現世的な感覚とは距離を取って、調和や融和を始めとする高らかな感覚をアンビエントで表現する。遠く離れたところにあるものが、自分のいる空間とどこかで繋がっているという感覚を感じ取る事もできる。そして時間的な流れも含まれ、プロデューサーが作り出すドローンの音の層がランタイムごとに少しずつ移ろい変わっていく。その中で、ディケイ(減退)を徹底的に引き伸ばしたシンセのシークエンスが壮大なハーモニーを形成する。ここには、偶発的な音の構成の巧みさを存分に体感することが出来る。

 

「Halliucination Ⅱ」 では、全体的なマスタリングの方向性を変更し、フィルターをかけたような抑制の取れたトーンを使用している。間違いなく本作の中では、ブライアン・イーノの原初的なアンビエントに強く傾倒した一曲である。この曲では、同じように、複数の旋律的な流れを組み合わせて、このアルバム全体の宇宙的な無限性や大気の流れのようなものを表現している。こういった曲に読み取れる美しい感覚は、例えば、山で満点の星空を見上げるような神秘的な感覚がある。次々に積み重なる音のレイヤーが雲のように重層的な音の流れを生み出し、なにかほっとするような感覚をもたらす。アンビエントのリラックス的な効果を押し出した一曲として楽しめるはず。

 

「Microfauma」は本作のハイライトとなる。いわゆる精細な音楽の感覚を体験するのにうってつけであり、微細なイントロのシークエンスから、精妙なノイズを用いた広大なアンビエンスに繋がる。細かい箇所では、アナログディレイも用いているが、マックス・クーパーはどちらかと言えば、小さな箇所からではなく、全体からそういったミクロのフレーズを作り上げている。しかし、重要視したいのは、作曲的な側面ではなく、どういった音の印象が汲み取れるかという点である。この曲は最初に述べたような、大きな自然の中でゆったりと呼吸するよな癒しの感覚があり、それが断続的で、減退しない、ドローンのような手法によって導出されていく。また、同時に自然と人間が共存したり、一体になるような瞬間が、音楽的に表現されているように思える。音楽は時間の流れとともに、緩やかに変遷していって、最終的に遠ざかっていく。

 

「Communication」も同様にブライアン・イーノの系譜に位置する。「An Ending(Asent)」のような宇宙的なエネルギーの流れを感じさせる。 旋律が宇宙的なエネルギーが接触するような神秘的な音楽である。音が単なる物質的な媒体にとどまらず、生命エネルギーのような質感を持ち、それらが交流するような神秘的な一瞬を記録する。曲からは、人間の持つ想像力の無限性と宇宙的な無限性が組み合わされるような感覚を汲み取れる。人間が地球だけではなく、宇宙の中に生きているのだということを感じさせる。また、万物に対する思索、人間や動植物、そして宇宙までもが大きな息をして、今この瞬間に生きているのだということを、ふと考えさせてくれる。

 

「Virga Ⅲ」は作曲的にハイレベルにある。ノイズを含めた抽象的なアンビエントで、現代的なサウンドプロダクションで展開される。Loscil、Time Heckerの系譜に位置する一曲で、ノンビートやダウンテンポの進化系と言えるだろうか。この曲では、ロスシルの楽曲プロデュースのように音調のゆらめきや変調に焦点が置かれている。時間ごとに、フィルターをかけた曇ったシークエンスがだんだん存在感を増していく。本作では実験的な作風に位置づけられる。


従来のように大気やアトモスフェアを表現した印象派のサウンドアプローチに加えて、マックス・クーパーは、慎重に音のレイヤー(層)を重ねながら、心地よくも聴き応えのあるアンビエントを作り出す。高い音域で金管楽器のように鳴り響く、パンフルートのような音色が時折、ぼんやりとしたアトモスフェリックなサウンドがパーカッシブに立ち上がってくる。作曲論や手法論を展開すると際限がなくなってしまうが、こういった音楽には、やはりシックスセンスを掻き立てるイマジネーションが含まれている。音楽は必ずしも現象的なものだけではなく、より高次な感覚が含まれることがある。特に、こういったサウンドは、静かな空間で効力を持つかもしれない。

 

シックス・センスとは映画で描かれるような恐ろしい内容とは限らない。人間の持つセンサーみたいなものと言える。これらは、現代生活に不可分な物質社会の中で、大きな意味を持つはずである。大自然の中で感じる、なにかホッと息をつけるような感じ、山登りのときに感じる爽快感、あるいは、川の流れを見るときのような安らぎがどこかに存在する。クーパーが表現しようとするのは、こういった現代生活で忘れられがちなウォールデンのような人の暮らしの本質だ。そこにはやはり、音楽としての実際的な体験のようなものが含まれている。

 

アルバムの終曲「Sore」は一本筋の通った内容であり、そこに脚色的な内容はない。ある意味では、原初的なパンクロックやジャズのように、本質的な趣旨だけを抽出して、それを端的な形で表現したものである。クローズ曲は、全体の曲と呼応するように、人間という存在が自然や宇宙とともに呼吸していることを印象づける。ボーカルトラックが一つもないというところが味噌で、マックス・クーパーは依然として形ある音楽ではなく、聞き手が自由にイマジネーションをふくらませられる、敷衍的で奥行きのあるサウンドを志している。『Virga Ⅲ』は現世的な感覚とは異なる不思議な感覚を呼び起こしてくれる稀有な作品だ。


 

86/100 

 


「A.M」

 

 

 


▪Eluviumのニューアルバム『Virga Ⅲ』は本日、Temporary Residenceから発売されました。ストリーミングはこちらから。

Shane Satoによるニューアルバム『Wavelength』Reuben James、Braxton Cook、Nao Yoshiokaらを迎えた、シーンと共鳴する多彩なサウンド

Shane Sano

 

本日(5/15)、Shane Sato(シェーン・サトウ)によるアルバム『Wavelength』が配信開始となりました。西海岸の夕陽を思わせるリラックス感のあるチルアウト、制作者が持つジャズとソウルの要素が融合した一作です。


今作には、Braxton Cook、Reuben James、Nao Yoshiokaがコラボレーターとして参加しています。シェーン・サノは愛や繋がりといった普遍的なテーマを通して、安らいだ音楽を提供しています。


本作は、Shane Satoのクリエイティブ・コミュニティとの結びつきを軸に制作され、多彩なアーティストたちとのコラボレーションによって構築された作品。Braxton Cook、Box Dreams、Oli-J、Nao Yoshiokaらが参加し、それぞれの個性が有機的に交差する。


リードシングル「Never Let You Go」は、結婚直後にOli-Jとの即興セッションから生まれた、愛と献身をテーマにしたR&Bナンバー。「Deep Dive」はBox DreamsのAdam Rhodesと制作され、新たな恋に落ちる脆さを描いた、より内省的でインディー色の強い一曲となっている。


南カリフォルニアの海岸線を走る鉄道に着想を得た「Surfliner」では、ネオソウルとジャズが溶け合い、Braxton Cookの温かく表現力豊かなサックスが響く。「Clouds」ではReuben Jamesの卓越したピアノとソウルフルなボーカルが際立ち、「You Are Loved」ではNao Yoshiokaが参加し、軽やかに自己愛をテーマにしたメッセージを届ける。


さらに、「Pulse」ではCoastalとGlen Turner IIを迎え、ローファイでダンサブルな質感を展開。「Santa Fe Peanut Co.」ではJoy Guerrillaとの共作により、セミライブ感のあるグルーヴ重視のジャズフュージョンが展開される。


ジャズ、インディーR&B、ソウルを横断しながら、それらの交差点を探る本作は、温かく鮮やかな音像と、「愛」「つながり」「水の流動性」というテーマによって統一されている。サウンドの拡張であると同時に、Shane Satoにとってひとつの転機となる作品に仕上がっている。

 


Shane Sato   『Wavelength』- NEW ALBUM



アーティスト:Shane Sato

タイトル: Wavelength

ジャンル: R&B, Soul, Jazz

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 


トラックリスト:

01. Wavelength (Intro)

02. Never Let You Go feat. Oli-J

03. Deep Dive feat. Box Dreams

04. Surfliner feat. Braxton Cook

05. Cross Fade

06. Drift

07. You Are Loved feat. Nao Yoshioka

08. Santa Fe Peanut Co. feat. Joy Guerrilla

09. Nods

10. Clouds feat. Reuben James

11. Pulse feat. Coastal and Glen Turner II


▪️ストリーミング配信



Shane Sato


南カリフォルニアで育ち、現在はロサンゼルスを拠点に活動する日系アメリカ人アーティスト、Shane Sato。5歳でドラムを始め、その後ギター、ピアノ、トロンボーンへと演奏の幅を広げる。学生時代にはロックバンド、吹奏楽、ジャズバンドなど多様な編成で演奏経験を重ね、音楽的な基盤を形成。


2017年にロサンゼルスへ移住後は、サポートミュージシャンとして多くのバンドやアーティストの現場で経験を積む。その後、自身のオリジナル作品にフォーカスし、インディペンデントでのリリースを重ねてきた。


デビューアルバム『Until We Meet Again』およびコラボレーション作品群(最新作『Airwaves Deluxe』を含む)で累計250万回以上のストリーミングを記録。Spotifyの「Fresh Finds Jazz」や「Morning Rhythm」など複数のエディトリアルプレイリストにも選出され、着実に評価を高めている。

 The Lemon Twigs 『Look For Your Mind!』


Label: Captured Tracks

Release: 2026年5月8日

 

Review

 

今や、キャプチャード・トラックスの看板バンドとなったニューヨークのインディーロックデュオ、レモン・ツイッグス。最新作『Look For Your Mind!』は聴けば、一目でレモン・ツイッグスのアルバムだと分かる。


ビーチ・ボーイズ、ラズベリーズ、ルビノーズを筆頭とするパワー・ポップ、そしてダダリオ兄弟のボーカルの美しいハーモニーを生かしたメロディアスなロックソング、なおかつ卓越したロックバンドとしての演奏技術、どれをとっても申し分のない作品である。しかし、同時に、従来のパワー・ポップソング路線を重視しながらも、実験的な試みを取り入れた作品である。それはロックンロールの原初的なスタイルから、アルバムの最後を飾るサイケロック風の実験的なローファイまでロックソングのアトラクションがずらりと並んでいるような印象を受ける。

 

本作の冒頭では、イギリスのマージー・ビートが炸裂し、「Look For Your Mind!」が始まる。60年代のビートルズ的なアプローチだけではなく、The Whoのモッズロックのようなサウンドが融合している。しかし、単なる懐古主義とも言いがたい。シャリッとしたハイハット/シンバルやクリアなギターの音像、そしてボーカルのほんのりと甘いテイストなどは、『Rubber Soul』時代のビートルズが蘇ったかのようだ。そして今回は、やや激しい唸るようなシャウト気味のボーカルも披露する。ダダリオ兄弟のロック観のようなものがアルバムの冒頭から明哲になる。続く「2or 3」はどちらかと言えば、従来になくエバーグリーンな感覚を押し出したセンチメンタルなパワー・ポップソングである。相変わらず、良いメロディーやハーモニーに焦点を絞り、60年代から70年代のレコードからそのまま飛び出てきたかのような素敵な旋律を奏でる。

 

そういった中で、メロディアスなロックソングの真骨頂が出てくる。「Nothin’ But You」は、たった3つのコードを中心に進行していく。しかし、ダダリオ兄弟のボーカルのメロディーセンスは依然として秀逸であり、センチメンタルなエモーションに縁取られている。十代の思い出を綴るようなどことなく切ない感覚が滲んでいる。ゆったりとしたリズムの中で、Nilssonのような琴線に触れるメロディーを書く才能においては、レモン・ツイッグスに叶うバンドはいないかもしれない。


さらに、今回、シンセサイザーの演奏を大々的に押し出して、レトロなバロックポップ風のアレンジを施している。前作の延長線上にありながらも、様々な試行錯誤の跡が見出される。続く、「Gather Round」はバロックポップを下地にして、ビートルズ風のマジカルなサウンドを再現する。『Magical Mystery Tour』のようなシアトリカルなロック/ポップソングである。

 

「I Just Can't Get Over Losing You」は勇気づけられるような曲で、レモン・ツイッグスの代名詞的な一曲である。どことなく爽快感というか、青春のテイストを残しつつ、やはりダダリオ兄弟らしいグッドメロディーが満載である。こういったサウンドはビーチ・ボーイズというよりも、以前のレビューでも挙げたラズベリーズやルビノーズのサウンドに近いニュアンスである。しかし、60年代のロックソングが現在でも通用するのか。通用してしまうのがレモン・ツイッグスの凄さである。これはロック・バンドとしてのグルーヴィーな演奏の賜物でもある。

 

「Fire and Gold」はどちらかと言えば、イギリスのモッズロックの雰囲気に近く、The Whoの最初期やThe Jamに近い音楽的なアプローチである。こういった小気味よいジャッキとしたギターの音色は、フリークならばニヤリとほくそ笑んでしまうような内容だ。また、アナログからデジタルに切り替わるようなサウンドにも注目しておきたい。また、Cメロのような箇所では、転調を交えたりして楽曲に変化を加えている。これもまた彼らのソングライティングの持ち味である。

 

ほろりとさせるバラード「Mean to Me」のあと、一転してサーフロック調のアップテンポなロックソングが続いている。楽曲のタイプとしては古いといえば古いのだが、レモン・ツイッグスがこういった古典的なロックンロールをやるとなぜかダサくはならないのが本当に不思議である。いや、むしろ、スタイリッシュな印象すら感じられる。 ジョージ・ルーカスの名画『アメリカン・グラフィティ』から飛び出てきたような曲で、レモン・ツイッグスが出演していないのが残念でならない。もちろん、おそらくまだ彼らは生まれていないと思われるが。「Yeah I Do」はビートルズのポール・マッカトニー風のバラード風のロックソングである。それほどほろりとさせる旋律はないが、なぜか彼らの曲には、琴線に触れるようななにかがある。

 

唸ってしまったのが、続く「I Hurt You」である。イントロのギターが素晴らしく、その後、恋愛における過去の贖罪のような歌詞が歌われる。サビで聴かせるというよりも、一つずつの言葉を頼りに、その後にメロディーがついてくるような珍しい内容である。基本的には、バロックポップ風であるが、その中にはちょっとシティ・ポップっぽさもある。このアルバムの中では、意外にも日本のポップソングに近い内容になっていると思う。

 

ダダリオ兄弟は最初のリリースのとき、「つい新しいことをやってしまう」と語っていた。まあ、その辺りの新鮮な試みは、最終盤に登場する。「Joy」ではクラシックギター風の演奏を披露し、彼らがおそらく初めてロック・バンドとしてクラシック音楽を挑戦しようと試みている。演奏は少しジミー・ページ風で、その演奏には気品のようなものがあって良い。 フォーク・ミュージックをクラシックギターとして演奏したような感じで、非常に素晴らしいと思った。


また、ジャグリーなギターロックソング「My Heart Is In Your Hands Tonight」は、特にパーカッションの点で同じくキャプチャードトラックスからデビューしたBeach Fossilsの最初期のシングルを少しだけ彷彿とさせる。ローリング・ストーンズの荒削りさとビーチ・ボーイズが融合したような良質な楽曲である。前作よりも堂々たる雰囲気を持ったロックソングを聴くことが出来る。

 

ミニマリズムをもとにしたギターから始まる最終曲「Your True Enemy」は、意外にも不敵な感じがしてとてもかっこ良い。 特に、楽曲の転調の巧みさ、少しサイケデリックなボーカルの雰囲気など、アルバムのなかでは最も個性的な楽曲として楽しめる。前作とは異なり、徹底して1960年代から70年代の古典的なロックに焦点を絞ったのは本当に勇気のいることだったはずだ。これは、世界中見渡してもダダリオ兄弟の他の誰にも真似できないことなのだ。 グレート!!

 

 

 

88/100 

 

 

「2 or 3」

 


▪️アルバムの視聴 

▪Listen/Stream:  The Lemon Twigs 『Look For Your Mind!」


▪️過去のレビューを読む:


・THE LEMON TWIGS 「A DREAM IS ALL WE KNOW」

 


来る5月22日(金)に待望のセカンド・ソロ・アルバム『ブルー・モルフォ』をリリースするエド・オブライエン。すでにアルバムから2枚のシングルが公開となっているが、この度アルバム制作秘話に触れた短編映画『Blue Morpho: The Three Act Play』の上映会が来週都内にて開催されることが急遽決定した。


今年のSXSWで初公開され、ロンドン、オックスフォード、パリでも上映された同映画は、ウェールズにて撮影され、キット・モンティス監督によってエドの率直で親密な姿を描いている。


短編映画『Blue Morpho: The Three Act Play』のトレイラー


なお、このイベントでは英国のスピーカー・メーカー「KEF(ケーイーエフ)」のハイエンド・スピーカーReferenceシリーズとサブ・ウーファーをご用意。


加えてアルバム試聴時には「オーディオ史100年で最も重要な製品」と称されるターンテーブル LP12やマーケットをリードするストリーミング・プレーヤー SELEKT DSM、そしてスタイリッシュなハイパワー・アンプ KLIAMX TWINなど、スコットランド・グラスゴーに生まれたLINNの実力機のセレクションによる本格的なサウンドでイベントを楽しんでもらえる内容となっている。


さらに開演までの間、会場ではオーディオ・ファンや評論家に定評のある高音質が特徴のストリーミング・サービス[Qobuz]のハイレゾ音源でエドの過去作品の音源体験もできる。


アルバム発売週の5月19日(火)に恵比寿のKATA GALLERYにて行なわれる同イベントは、先着40名限定となっているので、気になった方は早めに参加申し込みしよう!


【エド・オブライエン 短編映画『Blue Morpho: The Three Act Play』上映&アルバム試聴会】


日時:5月19日(火)19:00開場/19:30開演/21:00終演(予定)

場所:KATA GALLERY(東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F)

参加人数:先着40名(定員に達し次第、応募は締め切らさせていただきます)

参加費:無料、1ドリンク制

 

申し込みフォーム:

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeWDuNQ6O1orqIi0AR2Hk2qoenveVBwFxCPpBYVhF-4RGm0ew/viewform?usp=header



エドのニュー・アルバム『ブルー・モルフォ』はプロデューサーにポール・エプワース(ポール・マッカートニー、アデル)、ゲストにギタリストのデイヴ・オクムやフルート奏者のシャバカ・ハッチングスといった、ジャズの素養を持つ極めてスキルの高いバック・ミュージシャンたちを迎えている他、レディオヘッドのフィリップ・セルウェイも2曲でドラムを叩いている。


エド自身が経験した鬱という闇に向き合い、再び聴くこと、働くこと、生きることといった新たな道を模索する地図のようなアルバムを完成させた。初心に立ち返り、新たなソングライターとしてようやく自身のアプローチを見出し始めたことに気づいたエド。今回の短編映画はそういった道のりを辿っている。


1stシングル「Blue Morpho」のミュージック・ビデオ:


2ndシングル「Incantations 」のミュージック・ビデオ:



【アルバム情報】



アーティスト名:Ed O’Brien(エド・オブライエン) 

タイトル名:Blue Morpho(ブルー・モルフォ) 

発売日:2026年5月22日(金) 

品番:TRANS955CDJ (CD) / TRANS955XXJ (LP) 

定価:¥2,900 +税 (CD) / ¥7,200 +税 (LP) 

※世界同時発売、解説付、限定カラー盤 (LP)  

レーベル:Transgressive 

販売元:ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ


<トラックリスト> 

1. Incantations 

2. Blue Morpho 

3. Sweet Spot 

4. Teachers 

5. Solfeggio 

6. Thin Places 

7. Obrigado



アルバム『ブルー・モルフォ』配信予約受付中!

https://transgressive.lnk.to/bluemorphoalbum



世界最大のバンドの一員であり、ロック界で最も称賛されるギタリストの一人であるエド・オブライエンが、本名としては初の作品となるセカンド・ソロ・アルバム『ブルー・モルフォ』を完成させた。プロデューサーにはポール・エプワース(ポール・マッカートニー、アデル)を迎え制作過程においてエドは原点に立ち返り、新たなソングライターとしてようやく自身のアプローチを見出し始めたことに気づく。そして、自身が経験したうつという闇と向き合い、再び聴くこと、働くこと、生きることへの新たな道を模索する地図のようなアルバムが完成した。

2020年の秋から冬へと移り変わる頃、エドはこれまで経験したことのない深い鬱の淵へと転落した。新たなロックダウンの波が押し寄せる中、彼はほとんど機能不全に陥った。生涯にわたるダムがついに決壊したのだ。妻のスージーは、この感情の炎の中に身を置くよう彼を励まし、抜け出す唯一の道は「通り抜けること」だと気づかせた。隣の部屋で子供たちがオンライン授業を受ける中、エドは小さなロンドンのスタジオにギターと共に閉じこもり、昼食時頃に脳がほつれ始めるまで演奏を続けた。


自身の過去、自然との精神的なつながり、癒しの可能性への信念を奏でながら、作り上げたものを記録し続けた。そしてそれらは、彼のセカンド・ソロ・アルバムとなる『ブルー・モルフォ』の圧倒的な7曲へと進化した。アデルやリアーナらと共に数々の大ヒットを生み出した本作のプロデューサーでもあるポール・エプワースとの出会いは、彼らの子供たちが同じ学校に通っていたことがきっかけだったという。


レコーディングはウェールズにあるエドのスタジオと、200年の歴史を持ち、音楽史に残る数々の名盤を生み出したロンドンのスタジオ「ザ・チャーチ」で行われ、ベン・バプティがミキシングを担当した。また、グラストンベリー・フェスティバルで出会ったシャバカ・ハッチングスがフルート演奏を提供。さらに、エドがエストニアへの旅で親交を深めたという作曲家トヌ・コルヴィッツが弦楽アレンジを担当し、エストニアのタリン室内管弦楽団が演奏した。曲順の構成には、U2、PJハーヴェイ、ナイン・インチ・ネイルズとの仕事で知られるフラッドが協力している。


【バイオグラフィー】


イギリス・オックスフォード出身のミュージシャンで英国のロック・バンド、レディオヘッドのギタリスト。名門マンチェスター大学の政治/経済学を専攻。学生時代はサッカーやクリケットクラブに在籍。現在でもサッカー観戦を趣味にしている。


レディオヘッドではメイン・ボーカルであるトム・ヨークに負けないほどの歌声の持ち主で、バック・ヴォーカル・コーラスも担当している。明るく人当たりの良い人柄で、フロントマンのトムに次いでメディアのインタビューを受ける機会が多い。


2020年、自身のイニシャル(EOB)を冠した初のソロ・アルバム『アース』を発表。そしてその年の後半、エドは人生で最も深刻な鬱状態に陥った。妻に「感情の炎の中に身を置くよう」に勧められた彼は、ヴィム・ホフの呼吸法や寒冷療法の教えに没頭する日課を始め、その後、ロンドンの小さなスタジオに引きこもり、脳が摩耗し始めるまで何時間もギターを弾き続けた。


ついに表面化してしまった50年にわたる感情的なトラウマや混乱を乗り越えるために、自らの楽器を奏で、作り出したものをレコーディングし続けた。その後4年間で、それらの瞬間は今年リリースされるニュー・アルバム『ブルー・モルフォ』へと進化し、過去の後悔から完全に解き放たれた彼の初のアルバムとなった。

Deb Never 『Arcade』


Label: Giant Music

Release: 2026年5月8日

 

 

Review

 

デブ・ネヴァーは、グランジ、エレクトロ、エモ、ポップをかけ合わせたニューオルタナティヴとして近年シーンで注目を集めつつある。ガレージバンドでの音楽制作から始まったアーティストで、徐々に音楽性に磨きをかけてきた。基本的にはギターを中心とするソングライティングに根ざしている。最新アルバムは、全体的に、ポップソングに根ざした音楽性が際立つ。ただ、近年のポップアーティストと同様に、リサンプリング的な処理が施されることもある。

 

一曲目「are you out of your mind?」はアンビエント風のシークエンスで始まり、その後、心地よいインディーポップソングへと移行していく。未知のリスナーに語りかけるかのようなボーカルが特徴で、それらがこのアーティストのルーツでもある教会音楽のようなゴスペル風のサウンドがメインである。それらをヒップホップ風のブレイクビーツのビートが牽引していく。またシンセストリングスがリズム的な効果を発揮し、全体的なグルーブのようなものを形成していく。現代的なポップソングといえば、それまでだが、その音楽には静かに耳を傾けるべき何かがある。例えば、全体的にはヴァースとサビの対比で構成されるが、サビのフレーズでは美麗なストリングスに導かれるようにして、精妙な音楽性が立ち上ってくることがある。また、現代的なポップネスを踏襲しつつも、バロックポップのような旋律が光るタイトル曲は素晴らしい一曲である。カーペンターズのようなメロディセンスを、ヒップホップやチルウェイブ、あるいはローファイのようなリズムと結びつけ、モダンなポップソングを抽出している。この曲の優しげで包み込むようなボーカルは、アルバムの序盤の聞き所となるに違いない。

 

Deb Neverのサウンドはエモポップとも称されることがある。「Blue」のような曲は、シンセ・ポップのような音楽性に導かれるようにして、どことなくエモーショナルな雰囲気が立ち上る。現代的な西海岸のヨットロックのような音楽性を踏襲し、それらをセンス溢れるサウンドに仕上げている。 また比較的アップテンポな音楽性だけではなく、ネオソウルのように静かで聴かせる箇所も含まれている。こういったメリハリのあるソングライティングが本作の魅力でもある。ローファイの音楽性を、ギターロックの観点から解釈した「all the time」も独特なデモソングのような雰囲気を放つ。しかし、一貫して心地よい感じのソングライティングが続く。

 

アルバムの中盤には、「Design」と称されたピアノバラードも収録されている。基本的にピアノとユニゾンで紡がれるボーカルはセンチメンタルな響きがある。また、オートチューンを通過したインディーポップソングをバラードソングという旧来のスタイルと融合を図った一曲でもある。「i need more」はアルバムの一曲目と同様、アンビエント風のシークエンスからフォークポップへと移行していく。 アコースティックギターをミュージック・コンクレートのように配し、そしてコラージュ的なボーカルをメインボーカルと並置したりしている。こういった曲は、今や2020年代のポップソングには不可欠な王道の音楽性になりつつあるのを感じる。

 

このアルバムではシンセポップの音楽性がこういったモダンなベッドルームポップに紛れ込んでいる。「Another Life」のような曲は、Deb Neverのメロディの側面のセンスが遺憾なく発揮された瞬間である。 テクノのようなリズムトラックに、Ashnikkoのようなキュートなインディーポップサウンドが乗せられる。現代的なポップサウンドの象徴とも言える曲である。また、西海岸のヨットロック/チルアウト的なサウンドは「Heavensake」で最高潮に達する。風景的なロマンティックな雰囲気は『Arcade』の象徴的なサウンドと言える。また、この曲には、ジャズ/ファンクの要素が付加されている。ボーカルだけではなくベースにも注目したい。アルバムのベストトラックは、タイトル曲とならんで、「Not In Love」ということになるだろう。ヨットロックのようなサウンドとDeb Neverの持つギターロックのセンスが融合した、聴き応え十分の曲となっている。

 

 

あえて核心から外し、少し本題から遠ざかるようなインディーポップサウンドが主な特徴である。こういったぼかしたような抽象的なサウンドもまた、現代的なアーティストの主題でもある。また、Deb NeverはR&B風のポップサウンドに傾倒することもある。アルバムの最後を飾る「KNOW ME BETTER」はシンガーとしての本格的な存在感を感じさせる力強い楽曲である。

 

 

78/100 

 

 

「Not In Love」

 

 

LISTEN/STREAM : Deb Never 『Arcade』



グラハム・コクソンの未発表ソロ・スタジオ・アルバム『Castle Park』から2枚目のシングルとしてリリースされた。「Alright」は、飄々とした初期のビートルズ風のインディーロックソングである。グラハム・コクソンの口笛が良い雰囲気を醸し出している。これぞUKロックの真髄である。


2011年にレコーディングされた『Castle Park』は、2026年6月19日に初リリースされる予定であり、今後12ヶ月にわたって行われるコクソンのソロ作品全カタログ(スタジオアルバム9枚とオリジナル・サウンドトラック3枚)の包括的な再発プロジェクトの一環としてリリースされる。


NME誌が「アルバムのクラシックなモッズ・サウンドを彷彿とさせ、ザ・キンクスへのオマージュと、甘くシンプルなギター・ポップのフックを生み出すギタリストならではの類まれな才能が垣間見える、最初の試聴曲」と評した1曲目『Billy Says』に続き、『Alright』のイーヨーのような目をしたストロークは、『Coffee & TV』でコクソンが披露したものと同様に、ほろ苦くも完璧なメロディーの一片を届けてくれる。


ベン・ヒリアー(ブラー『Think Tank』)がプロデュースを手掛けた『Castle Park』は、2011年に『A+E』(2012年)のレコーディングセッションの一環として録音された。


当初は『A+E』の続編としてリリースされる予定だったが、2012年のブラーの活動により延期され、その後コックスンは他のプロジェクトへと移った。『Castle Park』は、アーティストのクラシックなモッド・サウンドを色濃く反映した10曲のコレクションであり、リードシングル「Billy Says」は、コックスンのライブセットで長年演奏されてきた曲で、ファンにはお馴染みの楽曲だが、今回初めて正式にリリースされることになった。「Alright」のストリーミングはこちらから。


「Alright」 


【先行情報】

・グラハム・コクソン(BLUR)が未発表のソロアルバム『CASTLE PARK』を発表 O2フォーラム・ケントイッシュ・タウンにてスペシャルヘッドラインショーを開催

 

Graham Coxon:



イギリスのミュージシャン、シンガーソングライター、マルチプレイヤー、そしてビジュアルアーティストであるグラハム・コクソンは、同世代で最も革新的なギタリストの一人であり、ブラーの創設メンバーとして最もよく知られている。


コクソンはこれまでに8枚のソロアルバムをリリースしており、映画やテレビ番組のための楽曲制作も頻繁に行っている。 実験音楽やインディー音楽への情熱は、ブラーが絶大なヒットを連発していた時期を通じて、バンド特有のサウンドを形作る一因となった。この時期、チャート1位を獲得するアルバムが次々と生み出され、バンドは英国をはじめ世界中で大衆的な人気を博した。その冒険心はソロ活動にも表れており、フォークやクラウトロックに影響を受けたアルバムからサウンドトラック作品まで、その活動範囲は多岐にわたる。


コックスンのソロ作品には、スタジオ・アルバム『The Sky Is Too High』(1998年)、 『The Golden D』(2000年)、『Crow Sit on Blood Tree』(2001年)、『The Kiss of Morning』(2002年)、『Happiness in Magazines』(2004年)、『Love Travels at Illegal Speeds』(2006年)、『The Spinning Top』(2009年)、『A+E』(2012年)などがある。作曲家としての活動には、『The End of the F***ing World』(2018年)、『The End of the F***ing World 2』(2019年)、『I Am Not Okay with This』(2020年)、そしてZ2コミックスと共同でリリースされた『Superstate』(2021年)のオリジナル楽曲およびサウンドトラックが含まれる。


また、ポール・ウェラーとのシングル『This Old Town』や、ピート・ドハーティの2009年アルバム『Grace/Wastelands』など、数多くのアーティストとのコラボレーションも行ってきました。


2017年には、コックスンは(デイモン・アルバーンと共に)ラットボーイのデビューアルバム『Scum』に参加し、同年、Campaign Against Living Miserably (CALM)のチャリティー・シングルとしてリリースされた。さらに最近では、War Childを支援する2026年のアルバム『HELP(2)』のために、イングリッシュ・ティーチャーと新曲「Parasite」をレコーディングしたほか、同アルバムに収録されたオリビア・ロドリゴによるザ・マグネティック・フィールズの曲「The Book of Love」のカバーにギターで参加した。


グラハム・コクソンとローズ・エリノア・ドゥガルからなるザ・ウェイヴ(The WAEVE)の同名デビュー・アルバムは2023年にリリースされた。バンドの2枚目のスタジオ・アルバム『City Lights』は2024年にリリースされた。


 沖田×華による原作コミックをもとに、2024年放送の第1シリーズが大きな反響を呼び、続編として制作されたドラマ『お別れホスピタル2』。劇伴音楽を手掛けた清水靖晃によるオリジナル・サウンドトラックが本日配信。本作にはオリジナル楽曲に加えて、エリック・サティの編曲も収録。


人生の最期を迎える療養病棟を舞台に、人と人の関係や「生きる」ことの意味を静かに問いかけるドラマ『お別れホスピタル』。沖田×華による原作コミックをもとに、2024年に放送された第1シリーズが大きな反響を呼び、『お別れホスピタル2』の続編制作へとつながった。


音楽制作にあたり、清水は前作の質感やモチーフを踏襲しながら、新たに登場する人物一人ひとりに寄り添うようなかたちで楽曲を構想。


真面目一筋に生きてきた100歳の元県議会議員・安斎正助の歩みを刻む〈トータス・マーチ〉。安斎と過去に訳ありな?縁を持つ、スナックの美枝ママの佇まいを映す「マーマレード」。ベストセラー作家・桜田美々の内に潜む記憶に触れる「サクラ・ワルツ」など、それぞれの人物像や記憶、過去に呼応する楽曲が並ぶ。


また、〈遊歩〉は、清水の即興演奏から立ち上がった音の一部を収録。本作の音楽は、観る者それぞれの記憶に触れ、余韻を残していく。


清水靖晃「土曜ドラマ「お別れホスピタル2」オリジナル・サウンドトラック」



Yasuaki Shimizu「Doyou Drama Owakare Hospital 2 Original Soundtrack」

Digital (UPC : 4580789766862) 2026.05.14 Release | DDCB-12804 | Released by SPACE SHOWER MUSIC

[ https://ssm.lnk.to/OwakareHospital2 ]


01. まぼろし  マボロシ Maboroshi

02. ヘンミのテーマ II  ヘンミノテーマ II Henmi’s theme II

03. よいこと  ヨイコト  Yoikoto

04. 残された時間  ノコサレタジカン Nokosareta jikan

05. Sakura Waltz  サクラ・ワルツ Sakura waltz

06. 延命  エンメイ Enmei

07. Je te veux  ジュ・トゥ・ヴ Je te veux

08. Tortoise March I  トータス・マーチ I Tortoise march I

09. Tortoise March II  トータス・マーチ II Tortoise march II

10. Marmalade  マーマレード Marmalade

11. 遊歩 II – ピアノ  ユウホ II – ピアノ Yuho II – piano

12. 遊歩 II – サクソフォン  ユウホ II – サクソフォン Yuho II – saxophone


作曲・演奏:清水靖晃

「延命」 編曲:清水靖晃(原曲「ジュ・トゥ・ヴ」作曲:エリック・サティ)

「ジュ・トゥ・ヴ」 作曲:エリック・サティ、編曲:清水靖晃


清水靖晃:テナーサクソフォン、ピアノ、キーボード、プログラミング


レコーディング:清水靖晃(サブマリンスタジオ)

アディショナル・レコーディング:NHK CR-505スタジオ、ミキシング:NHK CP-604スタジオ

コンピューター・オペレーター:斎藤茂彦

録音:2025年12月~2026年2月

マスタリング:木村健太郎(キムケン・スタジオ)


土曜ドラマ「お別れホスピタル2」


【放送情報】

総合:2026年4月04日(土)夜10:00~10:45〈前編〉、4月11日(土)夜10:00~10:45〈後編〉

BSP4K:2026年3月22日(日)午後6:45~7:30〈前編〉、3月29日(日)午後6:45~7:30〈後編〉

[ https://www.web.nhk/tv/an/owakarehospital2/pl/series-tep-Z9WR7GN67X ]


【原作】  沖田×華「お別れホスピタル」(小学館「ビッグコミックスピリッツ」連載中)

【脚本】  安達奈緒子

【音楽】  清水靖晃

【出演】  岸井ゆきの、松山ケンイチ 他  

【演出】  柴田岳志

【制作統括】小松昌代(NHKエンタープライズ)、谷口卓敬(NHK)



・関連作品・前作リリース情報


NHK土曜ドラマ「お別れホスピタル」(2024年2月放送)

[ https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-1ZN13MQ53W ]

清水靖晃「お別れホスピタル」オリジナル・サウンドトラック

CD / Digital 2024.04.10 Release | RBCP-3534 | Released by Rambling Records

[ https://www.rambling.ne.jp/catalog/owakare-hospital ]

[ https://orcd.co/y5280qe ]


清水靖晃(Yasuaki Shimizu)


作曲家、サキソフォン奏者、音楽プロデューサー。ソロ活動のほか、実験的バンド「マライア」や「サキソフォネッツ」プロジェクト、コラボレーションなどを通じ、これまでに50作以上のアルバムを発表している。


J.S.バッハ《無伴奏チェロ組曲》を独自の解釈でテナーサキソフォンのために編曲・演奏した『チェロ・スウィーツ』(1996/1999)や、サクソフォン5本とコントラバス4本という特異な編成で取り組んだ《ゴルトベルク変奏曲》など、既存の音楽に新たな視点をもたらす試みでも知られる。2006年『ペンタトニカ』では、西洋音楽と対位するオリジナルの五音音階による作品を提示。


さらに、空間そのものを楽器と捉える独自のコンセプトのもと、地下採石場や美術館など、従来のコンサートホールとは異なる場での録音やパフォーマンスを行う。


近年は、80年代作品のアルバム『案山子』や『うたかたの日々』の再評価を背景に欧米での関心が高まり、2018年にヨーロッパツアー、2025年の北米ツアーでは全公演ソールドアウトを記録するなど、大きな反響を呼ぶ。


ジャンルにとらわれず、多様なアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行う一方、第86回アカデミー賞にノミネートされた米国映画『キューティー&ボクサー』(2013)では、第7回シネマ・アイ・オナーズにてオリジナル作曲賞を受賞。映像音楽の分野でも高い評価を確立している。


NHKテレビドラマでは『透明なゆりかご』(2018)、『神の子はつぶやく』(2023)、『八月の声を運ぶ男』(2025)など、柴田岳志氏が演出を手がけた作品で音楽を担当し、その数は10作を超える。



イタリア/マルケのエレクトロニックロックバンド、Designが今週末、新作アルバムをリリースする。『Faithless』は、意味を失った現代を解き明かす鍵として、象徴的な「喪失」の主題を扱ったコンセプチュアルな作品。それは、拠り所の欠如、神の沈黙、イデオロギーの崩壊から生まれ、さらには愛と自覚の中に救済の可能性を見出そうとする人間の欲求から生みだされた。


「faithless」という言葉は宗教的な信仰の欠如を指すだけでなく、社会に対する不信、そして尊重と平等のあらゆる約束を裏切ったかのような世界に対する不信を意味している。


アルバムは、夢のような内面への旅として展開し、喪失を乗り越えるという小宇宙が、息苦しく、暴力的で、理解不能な現実という大宇宙を映し出している。


物語の旅路は、本作の中心的な象徴であるクジラの腹の中で頂点に達する。そこは、避難所であり、待ちの場であり、闇との対峙の場である。コッローディからメルヴィル、そしてオーウェルに至るまで、クジラは絶対、喪、そして宙吊り状態のメタファーとなる。


この空間を通り抜け、変容してそこから抜け出すことによってのみ、Faithlessは再生の可能性を切り開くのである。サウンドの面では、このアルバムは、ポストパンク、ダークウェーブ、エレクトロニックロックの境界線を往来し、雰囲気の構築と感情的な強さを重視している。


本作は2024年2月から10月にかけて作曲され、2025年5月にカステルフィダルド(イタリア)とベルリンで録音された。


エンリコ・ティベリ(Nrec、The Shell Collector)がプロデュース、レコーディング、ミキシングを担当し、ロンドンにて、ニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズ、デペッシュ・モード、ナイン・インチ・ネイルズ、ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェーン、U2、ピクシーズ、ザ・キラーズを手がけてきたピート・メイヤーによってロンドンでマスタリングが行われた。

 

シンセの重層的な音色と電子的なテクスチャーが、鋭いギターとタイトなリズムと絡み合い、『Model/Actriz』の緊張感、『Crosses』の感情的な浮遊感、そしてナイン・インチ・ネイルズを彷彿とさせるインダストリアル・ロックの感性に近い、直接的で身体的な表現を生み出している。


メロディ面では、ニュー・オーダーやデペッシュ・モードの系譜への言及が垣間見え、ノスタルジーを排した現代的な視点で再構築されている。そこから浮かび上がるのは、制作上の選択において本質的であり、ダイナミクス、雰囲気、そして表現の切迫感を重視した、国際的な視点に立った、確固として認識可能なサウンドだ。


『Faithless』のジャケットは、パオロ・マッジャーニが作品『Vette scalfite』で撮影した巨大な大理石の塊が支配している。孤立し、威容を放つその大理石は、アルバムで描かれる個人のメタファーとなり、閉ざされた、感情的な重みを持った小宇宙となっている。


背後には、サラ・トリンガリによる儚げなクジラのドローイングが、精神的かつ象徴的な存在として画像を印象づける。写真とドローイングの対話は、作品の核心を視覚的に表現している。

 

それは、喪失から始まり、不信仰と沈黙を経て、再生の可能性へと至る道のりである。アルバム『Faithless』はイタリアのレーベル、Overdub Recordingsから5月15日にリリースされる。2作の先行シングル「Red Dragon」、「Blame」のミュージックビデオが先行公開されている。

 

「Red Dragon」 

 


「Blame」


Track By Track (Design):



1. Faithless: 

旅の出発点:喪失と神の沈黙。死を前にして信仰は崩れ去り、残るのは何か手触りのあるものを求める欲求だけだ。超越的な答えがない中、人間の愛こそが唯一の救いとなる。

2. Cold War :

家庭内、内面、そして歴史的な側面を併せ持つ、静かで遍在する緊張を描き出す。「冷戦」は、痛みが隠されたまま、あらゆる空間が意思疎通の不可能性に支配される、抑圧された普遍的な葛藤のメタファーとなる。


3. Sweet Surrender:

排除と不調和の物語。崩壊へと突き進む世界において、「甘い降伏」は自由と感情的な生存の行為となる。廃墟の上で踊り、画一化を拒絶し、もはや帰属感を与えない帝国の終焉に冷静に乾杯する。


4. Deep Dive:

内なる深淵への潜行。悪魔と向き合い、記憶を掘り下げ、癒えない傷を受け入れる。
痛みは解決されるのではなく、通り抜けるものとなる、必要な潜行。


5. Blame:

個人の責任と罪悪感についての考察。抑圧とは逆行する自らの過ちの認容は、痛みを乗り越え、内なる静寂に到達するための必要な通過点になる。


6. 12 I 12:

インストゥルメンタルの間奏、物語の休止。先へ進む前に息を止めるような、過渡期のひととき。


7. Evil Eye:

有害な絆の断絶。嫉妬、執着、操作が暴かれ、断ち切られる。これは自己防衛と解放の行為である。人を蝕む視線から逃れ、自らの空間を取り戻すこと。


8. Red Dragon:

貪欲と暴力に蝕まれた人類の終末的なビジョン。聖書的なイメージと現代の荒廃の間で、この曲は、自らが蒔いたものを刈り取る世界を告発し、無垢が犠牲にされる様を描き出す。


9. Loner’s Dream :

親密で儚いひととき。愛とは、夢と世界の終焉の間に浮かぶ、深く、ほとんど非現実的なつながり。それは、死にかけている神の最後の夢かもしれないし、無を耐えうるものにする唯一の
ものかもしれない。


10. Keyhole :

 現実の操作に対する批判的な視線。真実は画面の外に留まり、観察者は知らず知らずのうちに、暴力的な演出の共犯者となってしまう。映像や、自ら演じようと選んだ役割を疑うよう促す一曲。


11. The Belly of the Whale:

アルバムの象徴的な核心となる。クジラの腹は、避難所であり、喪であり、記憶であり、そして父の不在との対峙である。痛みと愛が共存する、宙に浮いた空間。そこから——変容して——抜け出すことで初めて、再生が可能になる。




Design Biography:

Designは2008年にマルケ州で結成された。ダニエレ・ストラッパト(ボーカル&プログラミング)、サラ・トリンガリ(ベース)、ニコラ・チェラーザ(ギター&キーボード)、ロベルト・カルディナーリ(ドラム&プログラミング)で構成されている。

バンドネームは、既存のものを再解釈し刷新するという発想から生まれた。それは、結成当初から彼らの楽曲制作やサウンド・アイデンティティの構築に貫かれている創造的な緊張感である。


EP/デモ『4 Little Hanged Toys』(Copro Records/Casket Music)を経て、2012年に『Technicolor Noise』(Zeta Factory)でデビュー。この作品は、オルタナティヴ・ロック、エレクトロニカ、そしてインダストリアル的な要素を融合させたものである。2015年にはThis Is Coreより『Daytime Sleepwalkers』をリリースし、よりダークな雰囲気への進化を遂げた。

この作品では、ダークやニューウェーブの要素が意識的に組み込まれている。翌年にはリミックス集『DSRMX』がリリースされ、プロジェクトのエレクトロニックな側面をさらに広げた。
 
個人的な事情による活動休止を経て、Designは2026年にOverdub Recordingsから『Faithless』をリリースする。この作品は強烈でコンセプチュアルかつ政治的なアルバムであり、彼らの経験に深く影響を受けた新たな芸術的章の幕開けとなった。
イタリア・クレモナ


ヴァイオリンは16世紀に登場した楽器である。その後、17世紀から18世紀にかけて器楽として発展していった。ヴァイオリンは、小さなヴィオラという意味。最初の時期に制作されたものを、オールドヴァイオリンといい、その後、改良が加えられたものをモダンヴァイオリンと呼びます。

 

ヴァイオリンのルーツには諸説あるが、西アジアのラバーブやカマーンチェが原型であるという説が一般的です。これは弓奏楽器の一つで、動物の皮張りを施したリュートのことを言います。


この楽器は、アフガニスタンやウズベキスタン、タジキスタンの地域に存在し、他の多くの楽器と同じように、海上貿易によって西洋にもたらされたと見るのが妥当でしょう。ちなみに、スペイン王宮のアルフォンソは、イスラムやアジア圏の楽器に拠るエキゾチックな音楽を作曲している。これが数世紀を経て、職人たちの手により、ヨーロッパ独自の楽器となったと推測されます。

 

一般的な楽器は原型が存在し、それに似せて作られることが多い。しかし、問題は、北イタリアの名工アマティ家の職人たちがどのような楽器を参考にしたのかという点に不分明な箇所が残されていることでしょう。それゆえ、まったくのオリジナル制作だと言われる場合もあります。

 

ヴァイオリンの最初の名産地となったのが、イタリア北部のクレモナという地域。現在は、ポー川の近郊に博物館もある。ヴァイオリンの制作の黄金期は、17世紀から18世紀のイタリアに到来した。一般的にはストラディヴァリが有名ですが、それ以前にアマティ家の職人達が活躍した。彼らはカエデ材などを用い、ほとんど高級な家具のような楽器、そして、魂柱を仕上げ、器楽の歴史に革新をもたらしました。世界最古と言われるヴァイオリンは、アンドレア・アマティが考案した1565年頃の作品です。アンドレア・アマティの出身地である北イタリアのクレモナにヴァイオリンの工房を設立し、ここから彼の弟子たちが数々の名器を生み出しました。

 

ニコロ・アマティ

 

アマティ家の中で最も優れた名工として名を馳せたのが孫のニコロ・アマティでした。彼が活躍した時代には、ジュゼッペ・ガルネリ、そしてアントニオ・ストラディヴァリなど名工が次々に登場し、ヴァイオリンの黄金時代が到来。その後、ヴァイオリンは16世紀ごろまでは、伴奏楽器として使用されていました。

 

17世紀以降になると、ヴァイオリンは器楽の支柱的な存在となり、華やかな地位を獲得するようになった。この頃、コレッリ、トレッリ、ヴィヴァルディ、ジェミアーニ、タルティーニが、トリオソナタ、合奏協奏曲、独奏協奏曲を作曲し、バロック/古典の最盛期が形成された。より美しい音色を音楽に込めたいという作曲家や演奏家の願望が、実際の器楽に取り入れられたことで、新しい楽器が生み出され、そして新しい演奏法や楽器の発声法が発展していく契機ともなった。

 

 

初期のヴァイオリンは現在のような音量が出なかった。その後、16世紀から19世紀にかけて、楽器の改良が行われ、コンサートホールのような大きな会場での音響性にふさわしい音量を得るようになった。ピアノの音階が時代の経過と合わせて増加していったように、指板が長くなり、駒の位置が高くなり、豊かな響きと華麗な音色が導き出せるように工夫が施されました。

 

また、楽器の発展に即して、優れた演奏家や作曲家が登場し、ヴァイオリニストは花形の演奏家になった。改良されたバイオリンを活かして、超絶技法を駆使する演奏家パガニーニが登場し、その後、ヴァイオリン教本を記したルイ・シュポーア、ブラームスと親交を持ったヨーゼフ・ヨアヒム、『トィゴイネルワイゼン』など名曲を残したサラサーテなどが活躍するようになった。音楽としてもヴァイオリンは全般的な表現性を押し広げた。風のように微細なアンビエントのような内容から、陶然とした美しい音色、また、落ち着いた平和な音色、それとは対照的な激しい感情性、より深遠な響きにいたるまで幅広い音楽的な表現をもたらすことになった。

 

一般的に、古い時代に生産されたヴァイオリンに高価な値段が付けられるのは、その作品に希少性があり、現在の素材で再現することが難しいからです。また、伝統的な歴史が込められているというのも要因でしょう。また、ギターやピアノなどのヴィンテージの楽器は、新品に比べると、その個体しか持たない独自の音色を生み出すことがある。

 

例えば、同じ楽器でも、演奏したり、使い込んでいくうちに、新品の時期とは異なる響きが出てくることがあります。ヴィンテージ楽器ならではの特性でしょう。これが俗に言われるように、”味のある音色”を象徴づけるのかもしれません。こういった理由により、物理的には、再現可能であろうとも、ヴィンテージ楽器には、説明しがたい神秘的な音色が宿ると広く信じられている。21世紀でも、16世紀に制作されたクレモナのヴァイオリンが最も優れていると言われます。ただ、現在市場に出回っているヴァイオリン楽器もそのほとんどが改良が施されています。

 

ぜひ、ヴァイオリンの演奏を聞くときには、 こういった数世紀に及ぶ歴史に思いを馳せてみて下さい。下記にご紹介しますのは、Voice of  Musicによる「四季」。小規模の室内楽ながら迫力のある演奏をお楽しみいただけます。

 



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イタリアのトレチェント音楽とフランチェスコ・ランディーニ

ブライトンの作曲家/プロデューサー、ジャスティン・バーノンのソロ・プロジェクト、The Vernon Springによる『Under a Familiar Sun』のリワークプロジェクト『UnFamiliar Sun』。2025年秋から単独シングルが続々とリリースされてきましたが、ついにリリース。本作は2025年に発売されたオリジナル・アルバムのリワーク作品となっている。


The Vernon Springの幽玄で静謐なアンビエント・サウンドを、エレクトロニック・ミュージック、アンビエント・シーンの注目のアーティスト、Rosie Lowe、Oliver Coates、H.Takahashiなどが再構築しました。

 

この作品では、最近のアーティストの制作に頻繁に取り入れられるミュージック・コンクレートの手法が発見出来るはずです。また、ボーカリストはこのアルバムに、現代的なネオソウルのテイストを添えています。どことなくおしゃれで、スタイリッシュなサウンドに仕上がっています。

 

再構成アルバム『UnFamiliar Sun』には、ハロルド・バッドのようなピアノのリサンプリング、アトモスフェリックなエレクトロニックのシークエンス、そして、女性ボーカルの配置など、新鮮味のある音楽性を楽しめる。それぞれのミュージシャンによる編曲のアレンジの多彩な魅力に触れることが出来るはずです。


リリースから丸1年となるアルバム『Under a Familiar Sun』を加えたデラックスエディション仕様。デジタルのみでのリリースです。

 



【リワーク作品:デラックスエディション仕様】

 


アーティスト:The Vernon Spring (ザ・ヴァーノン・スプリング)

タイトル: UnFamiliar Sun(アンファミリア・サン)

発売日:2026年5月8日(金)

フォーマット:デジタルダウンロード/ストリーミング(デジタルオンリー)

ジャンル: ポスト・クラシカル / ジャズ / アンビエント

レーベル:p*dis


<トラックリスト>

Disc 1: Under a Familiar Sun

1. Norton

2. The Breadline (feat. Max Porter)

3. Mustafa (feat. Iko Niche)

4. Other Tongues (feat. aden)

5. Under a Familiar Sun

6. Fume

7. In The Middle

8. Fitz

9. Esrever Ni Rehtaf (feat. aden)

10. Counted Strings (feat. aden)

11. Requiem For Reem

12. Known


Disc 2: UnFamiliar Sun

1. ⁠Roaring Flame of The Sun (Under a Familiar Sun - Saoirse-Juno Rework)

2. Fitz (Dot Never Rework)

3. Say Her Name (Requiem for Reem - Loa Rework)

4. The BL II - feat. Max Porter & Confucius MC (The Breadline - Iko Niche Rework)

5. Esrever Ni Rehtaf (Rosie Lowe Rework)

6. Other Tongues (Oliver Coates Rework)

7. Counted Strings feat. aden (Sweet Bandit Rework)

8. Norton (H.Takehashi Rework) 


・ストリーミングURL: https://pdis.lnk.to/UnFamiliarSun