ルーツ・ミュージックを基盤とする米国のハートランドバンド、マット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブス(Matt Jones And The Bobs)が新曲「Wicked Ways」をミュージックビデオと合わせて公開しました。マット・ジョーンズ・バンドのサウンドはクラシックなロックのカッコ良さを伝えようとしている。70年代のUSロックを知らない人にもおススメしたいグループだ。


素朴なギター・リフ、親密なボーカル、そして開放感あふれるドラムを土台に据えたこの魅力的なアメリカーナ・シングルは、温かくアナログな輝きを放っています。「これは、家族、許し、より良い人間になるために必要な強さへのオマージュです。 恥じることなく過去を振り返り、自分たちのルーツを受け入れつつ、同時に今の自分たちも肯定すること。過去を忘れずに乗り越えていく過程で、兄弟愛と寛容さを讃える曲です」とマット・ジョーンズは語っています。


バージニア州南西部の中心地を拠点とするマット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブスは、故郷の物語が持つ時代を超えた温かさと、日常の美しい本質を捉えている。 

 

アヴェット・ブラザーズやオールド・クロウ・メディシン・ショーといったアメリカーナのストーリーテラー、ジョン・プラインやジャクソン・ブラウンの深い作詞作曲、そしてザ・バンドやトム・ペティといったクラシックなフォークロックのアイコンたちから影響を受け、バンドは心、気骨、そしてメロディーを融合させ、彼らが育った90年代のオルタナティブロックやポップへのオマージュも込めている。 バンドの最新シングル「You Stood Still」は、リリースから1ヶ月で10万回以上の再生回数を記録した。 


バージニア州南西部の中心地から登場したマット・ジョーンズ&ザ・ボブスは、2011年の結成以来、生々しい感情と時代を超えた物語を織りなしてきた。 バンドはラドフォード大学在学中に結成された。マット・ジョーンズ(ボーカル、ギター)と、親しみを込めて「ザ・ボブス」と呼ばれるバンドメンバーたちは、アメリカーナ、ルーツ・ミュージック、そしてクラシック・ロックへの共通の情熱を、リスナーの心の奥底に響くサウンドへと昇華させた。 


彼らがまだ大学生だった2014年にリリースされたデビューアルバム『Brother's Hymn』は、音楽の世界への旅の始まりを告げるものでした。小さな町の生活、愛、喪失、そして成長に伴う日々の葛藤の本質を捉えた楽曲群により、このアルバムは、その誠実な作詞作曲と力強いパフォーマンスで、瞬く間に熱心なファン層を獲得しました。 


しかし、若き日に活動を始めた多くのバンドと同様、彼らの前途には紆余曲折が待ち受けていた。長年にわたり音楽に没頭してきた後、2015年、マット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブスのメンバーは一歩引いて、それぞれが個人のキャリアやビジネス、起業活動に専念することとなった。 


バンドは活動休止期間に入ったが、長年にわたり共に音楽を作り上げてきた中で築かれた絆は、決して断ち切れるものではなかった。10年間、メンバーはそれぞれの世界で活躍したが、音楽への想いやルーツとのつながり、物語を紡ぐこと、そして共有した経験といったものは、常に心の奥底でくすぶり続けていた。

  

時は2024年。マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは再結成を果たし、新たなエネルギーと目的意識を持って、彼らの代名詞とも言えるサウンドを蘇らせた。

 

10年ぶりに音楽の世界に戻ってきたとはいえ、アメリカーナ、フォーク、サザン・ロックに根ざした彼らのルーツは、かつてと変わらず強固なままだ。 しかし、この新たな章には新鮮な変化がもたらされている。90年代の影響がさりげなく取り入れられ、グランジ特有の荒々しさが加わり、確立されたサウンドを補完するより豊かな楽器編成が特徴だ。それでも、彼らの音楽の核心は揺るぎない。それは、人生、愛、失恋、そして私たちを人間たらしめる勝利や試練の、感情的な本質を捉えようとする姿勢である。

  

バンドの楽曲制作はまさに象徴的であり、物語性と深い脆弱性が融合している。どの曲も一つの物語であり、マット・ジョーンズの極めて個人的な歌詞というレンズを通して、人間の経験の一端を垣間見せてくれる。愛や失恋の物語から、死や苦闘、そして前へ進むために必要な忍耐力への考察に至るまで、その音楽は聴く者の心に響き続けている。 そのサウンドは、どこか親しみやすくも新鮮な響きを帯びており、人生の浮き沈みを巡るノスタルジックな旅路は、まるで古くからの友人が耳元で囁いてくれているかのような感覚を覚える。

  

マット・ジョーンズ&ザ・ボブスの音楽は、単なる曲の集まりではありません。それは、人生の浮き沈みを再び体験するよう誘う招待状なのです。 このサウンドは、あなたを個人的な意味を持つ瞬間へと連れ戻し、人生の苦難や喜びが共感できるだけでなく、成長に欠かせないものであると感じさせてくれます。一音一音、彼らは聴衆に自分の物語を受け入れるよう誘い、その旅路で自分だけが孤独ではないという事実から安らぎを見出させるのです。

  

キャリアのこのエキサイティングな新段階へと踏み出すにあたり、マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは自らのルーツを尊重しつつ、新たな音楽の領域を探求し続けています。彼らは成長し、進化を遂げましたが、バンドの核心――そもそも彼らをこれほどまでに愛される存在にしたその魂――は、かつてないほど力強いままです。 マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは単に「復帰」しただけではない。彼らは今、かつてないほど力強く、決意を固め、世界へと自らの物語を届けるべく前進している。時代を超越しつつも新鮮な音楽を携え、彼らは2枚目のフルアルバム『Matt Jones and the Bobs』を皮切りに、リスナーの心に消えることのない足跡を残し続ける準備ができている。


最新シングル「Wicked Ways」は、心温まるアメリカーナ・ソングだ。マット・ジョーンズはこう語る。「この曲は、家族、許し、そしてより良い男になるために必要な強さへのオマージュです。恥じることなく過去を振り返り、自分たちのルーツを受け入れつつ、同時に今の自分たちも肯定することについて歌っています。過去を忘れずに乗り越えていく過程における、兄弟愛と寛容さを称える曲です」

 

「Wicked Ways」 

 

 

▪EN

 

Matt Jones and the Bobs, a heartland band rooted in roots music, have released their new song “Wicked Ways” along with a music video. The Matt Jones Band’s sound aims to capture the coolness of classic rock. This is a group I’d recommend even to those unfamiliar with 1970s American rock.


Emerging from the heart of Southwest Virginia, Matt Jones and The Bobs have woven a tapestry of raw emotion and  timeless storytelling since their formation in 2011. The band first came together during their time at Radford University,  where Matt Jones (vocals, guitar) and his bandmates—affectionately known as “the Bobs” —took their shared passion  for Americana, roots, and classic rock, and transformed it into a sound that resonated with listeners on a deeply  personal level. 

 

Their debut album, “Brother's Hymn”, released in 2014 while they were still in college, marked the  beginning of their journey into the world of music. With tracks that captured the essence of small-town life, love, loss,  and the everyday struggles that come with growing up, the album quickly gained a loyal following for its honest  songwriting and gritty performances. 



But like many bands that start in their youth, the road ahead was not without its twists and turns. After years of intense  dedication to their music, the members of Matt Jones and The Bobs took a step back in 2015, each pursuing individual  careers, business ventures, and entrepreneurial pursuits. 

 

The band entered a hiatus, but the bonds forged through  years of creating music together remained unbreakable. For ten years, the members thrived in their own respective  worlds, but the pull of music—the connection to their roots, their storytelling, and their shared experiences—was  always there, simmering under the surface.
  
Fast forward to 2024, and Matt Jones and The Bobs have reunited, bringing their signature sound back to life with  renewed energy and purpose. Though they’ve stepped back into the world of music after a decade, their roots in  Americana, folk, and southern rock remain as strong as ever. 

 

However, this new chapter carries fresh twists—a subtle  infusion of 90s influences, a bit of grunge grit, and more expansive instrumentation that complements their established  sound. The heart of their music remains, however, unwavering: a commitment to capturing the emotional essence of  life, love, heartbreak, and the triumphs and trials that make us human.


  
The band’s songwriting is nothing short of iconic, blending storytelling with profound vulnerability. Each song is a  narrative—a glimpse into the human experience through the lens of Matt Jones' deeply personal lyrics. From tales of  love and heartbreak to reflections on death, struggle, and the perseverance needed to keep going, the music  continues to strike a chord with listeners. It’s a sound that feels both familiar and fresh, a nostalgic journey through the  ups and downs of life that feels like an old friend whispering in your ear.


  
The music of Matt Jones and The Bobs isn't just a collection of songs; it’s an invitation to relive the highs and lows of  existence. It’s a sound that will transport you back to moments of personal significance, where the struggles and joys  of life feel not only relatable, but necessary for growth. With each note, they invite their audience to embrace their own  stories, finding solace in the knowledge that they are not alone in the journey.


  
As they step into this exciting new phase of their career, Matt Jones and The Bobs continue to honor their roots while  exploring new sonic territory. They’ve grown, they’ve evolved, but the heart of the band—the soul of what made them  so beloved in the first place—is as powerful as ever.

 

Matt Jones and The Bobs aren’t just back—they’re  stepping forward, louder, stronger, and more determined than ever to share their stories with the world. And with  music that is as timeless as it is fresh, they are ready to continue leaving an indelible mark on the hearts of their listeners beginning with their second full studio self titled album "Matt Jones and the Bobs".



Their latest release "Wicked Ways" is a heartfelt Americana single. Matt Jones shares, "The song is our nod to family, forgiveness, and the strength it takes to become better men. It’s about looking back without shame and owning where we came from, but also who we’ve grown into. It celebrates brotherhood and grace during a period of outgrowing our past without forgetting it.” 

 


More Eazeは、ブルックリンを拠点とするサウンドアーティスト兼マルチ・インストゥルメンタリスト、マリ・モーリスによるソロプロジェクトである。アンビエント・ポップから脱構築的なサウンド・コラージュまで多岐にわたる彼女の数多くのソロ作品やコラボレーション作品は、生活の環境音、アコースティックなオーケストレーションや楽器演奏、エレクトロニクスを織り交ぜ、冒険心あふれるテクスチャー豊かな楽曲を紡ぎ出している。 マリ・モーリスの音楽は、ありふれた日常と幽玄な世界の間をシームレスに行き来するサウンドデザインを通じて、親密さ、憧憬、そして抽象的な感情が激しい生へと変容していくというテーマを探求している。


『sentence structure in the country』は、プレイヤーとして、そして音楽的思考家としてのモア・イーズの比類なき才能を決定的に示す作品である。 このアルバムは、親しみやすいウィットと鋭い作曲センスで、演奏とコラボレーションにおける恍惚感を存分に味わい、各パッセージに優しさ、苛立ち、そして喜びを吹き込んでいる。タイトルは、ルビオの音楽制作を形作った土着の表現へのオマージュである。コルトレーンが言ったように、すべてはそれに関係している。


ルビオは伝統的なフォークやカントリーの曲でフィドルを弾きながら育った。本作『Sentence Structure in the Country』の演奏スタイルは全く異なるものだが、フォークの形式の進化に対する彼女の敬意と演奏には、そうした経験が今も色濃く息づいている。 ルビオの制作方針を形作ったのは、厳選された共演者たちだった。


エレクトリック・ギター、ピアノ、ボーカルを担当するウェンディ・アイゼンバーグ、エレクトリック・ギターのヘンリー・アーネスト、チェロのアリス・ゲルラック、アコースティック・ギターのジェイド・グーターマン、そしてドラムのライアン・ソーヤー。


ルビオは、共演者たちがどのようにしてアルバムのサウンドを形作っていったかを次のように説明する。 


「ジェイドやウェンディがコードを奏でる方法は、この文脈では私が弾くのとは異なるものもあるけれど、それこそが重要な点なの。彼女たちの演奏は、私が作り出しているものを再定義するだけでなく、私自身を定義する手助けもしてくれるの」


ソーヤーのドラムは「distance」や「biters」といった曲で、ダイナミックな波のように跳ね回り、クレッシェンドを奏でる一方、ゲルラックのチェロは、タイトルトラックの歪んだホーダウンに切迫したメロディーを吹き込んでいる。 


フリーフォームな「crunch the numbers」は、アーネストの和声進行によって、意外なほど穏やかなロマンティシズムへと転じる。「the producer」のような楽曲では、貢献者、プロデューサー、作曲家の境界線をまたぐ、広大なアートワールドにおける自身の立場について思索を深めつつ、ルビオは一歩引いて繊細なポップ・ソングの各要素を際立たせることで、その手腕を披露している。


『sentence structure in the country』は、こうした数々の気づきや視点、そして経験を通じて得られた言葉を、新たな文脈で用いることに焦点を当てている。音楽性は数年にわたって進化を遂げた。それぞれのバージョンは、ルビオのパフォーマンスの文脈と、彼女が共演者として選んだミュージシャンたち双方の影響を受けている。テンポの変化を伴いながら、楽曲の構造は、ルビオが楽曲が向かおうとする方向に従う中で、レコーディングされたアレンジへと発展していった。 


楽曲自体はルビオ自身の変遷によって新たな形を帯びていった。全米を横断する引っ越しや、仕事、人間関係の変化によって彼女の視点は変わり、個人的にも音楽的にも、新たな視点が創造的な探求の豊かな土壌となった。ルビオがこの作品について語る言葉には、個人的な側面と音楽的な側面が共存している。


「大きな変化に直面している最中は向き合うのが難しいので、事後にじっくりと振り返り、それを乗り越えていく必要がある」という個人的な側面と、 「素材の核心や、それが私に伝えようとしていることを手放すことはできなかった」


様々な編成で演奏することで、楽曲の真の核となる要素を見極めることができ、そうして曲もまた独自の生命を宿すようになった。それはフィードバックループのようなものだ。演奏を続けるにつれ、その楽曲がどのようなものになり得るかという先例が築かれていく」


『sentence structure in the country』は、それぞれが美しく具現化された、完結した世界である楽曲の集大成だ。ルビオの巧みで品のあるアレンジは、自己陶酔的な感覚を一切排しつつ、彼女の影響源や執拗なまでの関心を驚くべき整合性をもって露わにしている。 


彼女の音楽は、豊かな作曲や装飾的な華やかさだけでなく、余白のあるミニマルな美しさの瞬間にも密度を宿している。『sentence structure in the country』は、深く心を揺さぶる不朽の楽曲を核に、幽玄なエレクトロニクスと土の香るアコースティックサウンドが織りなす、質感の驚異であり、モザイクのような作品だ。


more eaze 『sentence structure in the country』 Thrill Jocky/HEADZ(JP)

 


この数週間は保守的な音楽性に準じたリリースが相次いでいたが、マリ・モーリスのプロジェクト、more eazeの最新アルバム『sentence structure in the country』はその限りではない。結果的に一週間で''手のひら返し''をすることになった。

 

もっとも、モーリスが現在、ブルックリンを拠点に活動するとはいえ、テキサス、あるいは西海岸や東海岸と活動拠点を次々と変更していることを考えると、必ずしも一地域に根ざしたアーティストとは言いがたい。こういった多趣味な側面は、このアルバムを聴く上での重要なポイントとなってくるかもしれません。また、モア・イーズは、昨年、Claire Rouseyとのコラボレーションを行っていることからも分かる通り、アメリカの実験音楽やアートポップシーンの旗手とも言えるポジジョンに属する。また、その活動もまた、ソロ活動ではありながら、バンド単位での録音を行うというように、必ずしもソロという一面に絞られるものでもないでしょう。

 

マリ・モーリスは、聞くところによると、大学か大学院でミュージックコンクレートを学習しており、これらの現代音楽に関する蓄積を活かし、シンセサイザーの信号をマニュピレートした素材を取り入れ、また、学生時代に夢中になったというフォークミュージックや、ペダルスティールやフィドルの演奏を活かし、特異な音楽空間を提供する。


移り気の早さは群を抜き、最初は前衛的なエレクトロニックであった音楽性が、途中からはアヴァンフォークへと変化したりもする。ジャンルを規定しないスタイルはまた、実験音楽の再解釈から現代的なポップソングへと変遷することもある。オートチューンをてきめんに取り入れたインディーポップソングは、クレア・ルーセイのアンビエントポップのスタイルとも共鳴する場合がある。それらはアメリカで勃興した新しいアートポップの形式の一つでもあるようだ。

 

しかし、モア・イーズの音楽的なアプローチはどちらかと言えば、自らの持つ音楽的な蓄積をブロックのように積み上げていくような趣旨ではないらしい。 明確に言えば、マリ・モーリスの全般的なコンポジションは、脱構築主義やポストモダニズムの領域に属する。それらは、 自らの積み上げてきたものを披瀝するのではなく、むしろ明確に壊し、再構築するという趣旨である。


一般的な音楽の常識や倫理観を疑問視し、それらに問いを投げかけ、それらは本当にスタンダードであったのかを見つめ直す。おのずと、それらはアートのカットアップコラージュのような別の素材を組み合わせて、新しい何かを提供するという二次的な創作にならざるを得ない。しかし、それらはヒップホップやソウルミュージシャンが長い時間をかけて追求してきた創作性でもある。また、アヴァンギャルドジャズやフリージャズも同様でしょう。つまり、今作は、ある音楽の規定からの解放という意味合いを帯び、一般的な解釈に別の視点を付与する。しぜん、今作に触れるリスナーは今まで気づかなかった音楽的な視点を獲得することでしょう。

 

しかし、実験音楽というカテゴライズがなされると仮定しても、このアルバムには音楽の持つ純粋な喜びに満ちている。それは結局、制作者あるいはバンドメンバーが楽しんでいるから、その雰囲気が聞き手に伝播する。前衛主義に縁取られた電子音楽のパターンも存在するが、それとともに音楽的なポップネスも随所に見出すことが出来る。アルバムには、いくつかのオートチューンポップが登場し、難解になりがちな作風に近づきやすさや親しみやすさをもたらしている。

 

本作の冒頭を飾る「leave(again)」は、短いイントロダクションであり、ミュージック・コンクレートの様式を用い、ピアノ、オルガン、シンセなどを使用した現代的なポップソングに属する。マニュピレートされた電子音がモールス信号のように敷き詰められる中、ジャジーな雰囲気のムードたっぷりのボーカルが乗せられる。ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングのように全体的なトラックのキャンバスに点描される電子音、壁に絵の具が打ち付けられるような不規則なリズムパターン、ピアノの不協和音のコラージュ、ゴスペルのような雰囲気を帯びるオルガンなど、現代的な洋楽のポップソングのエッセンスをカラフルに散りばめる。


言ってみれば、ごった煮のサウンドなのだが、そのアートポップの手法には傾聴すべき何かが込められている。ボーカルは比較的落ち着いていて、内省的な雰囲気に満ちている。これらはやはり、全体的には現代的なアルトポップの音楽性を追求していることがなんとなく伝わってくる。全般的なミニマルミュージックの手法とミュージックコンクレートとポップのクロスオーバー。これぞまさに、新時代のアンディ・ウォーホールのポップアートともいうべき形式である。

 

脱構築主義を組み直す、再構築主義とも呼ぶべき作風は、続く「distance」でも健在である。オシレーターを用いたやレトロなシンセがアンビエントのように音像を拡大させていき、独特なドローン音楽のように見立てられるイントロ、そして、ソフトな質感を持つオートチューンのボーカルが続き、クレア・ルーセイと共鳴するような音楽性が形作られている。 ウェイブのような波打つシンセがサウンドデザインのように華麗に揺らめく、その音の波の中で、ゆったりとしたボーカル、どことなくドリームポップのような淡い雰囲気を持つボーカルが混在している。


また、ソロ作品でありながら、バンドアンサンブルも活躍し、この曲では、ジャズアンサンブルのようなスタイルが反映されている。ブレイクビーツのように不定期なリズムを刻むドラム、薄くコラージュされたギターを敷き詰めながら、精妙でクリアな音楽性が構築されている。実験音楽のアプローチを選んでいるにも関わらず、聴いていてそれほど嫌な感じがせず、それとは対象的に軽やかなエネルギーが音楽に充溢している。これらは全体的なアルバムにも一貫していて、曲の構成そのものは混沌としているが、その中から温和なエネルギーが汲み取れる。  

 

 「distance」

 

 

 

「bad friend」でもオートチューンを用いたエレクトロニックのポップソングが続き、この曲ではウージーな雰囲気を持つギターがボーカルと呼応しながら、穏やかな音像を描き出す。

 

エレクトロニック単体として聴いても前衛的な曲がある。「crunch the numbers」では、同じく波打つようなシンセサイザーが重層的に重なりあい、アトモスフェリックな音像を創り出す。全般的には、トラックメイカーとしての性質が際立ち、全体的な音のレイヤーを操作し、音を明瞭にしたり、それとは対象的に、フィルター効果で曇らせたりしながら、音の印象を変化させていく。また、アンビエント風の一曲であるが、途中では、制作者が得意とするミュージックコンクレートが登場し、ドラムやストリングの断片的な素材がパーカッシブな効果をもたらす。

 

どちらかと言えば、ジャズトロニカ(Jazztronica)のような音楽性に位置するが、やはりオートチューンのボーカルが登場するところを見るかぎり、ポップな印象を持つ曲に仕上げられている。このアルバム全体を聞く限り、ボーカルそのものがアンサンブルに組み込まれ、素材やマテリアルのように解釈される。これらもまた、結局、ヒップホップやネオソウルを経過した''現代的なアートポップ運動の一貫''として解釈することが出来るはずだ。音楽的な楽しみとしては、実際に''聞く''というよりも、''雰囲気に浸る''という認識の行動に近い。音階ひとつひとつを追ったり、構成的な美しさを楽しむというより、遠くでぼんやりと鳴っている音楽を感覚的に味わうという行為に属する。これらは最近のアメリカのアンビエントポップのスタイルでもある。

 

故に、音階の連続や規則的な拍動(リズム)は意味をなさない場合が多い。これは音楽の感覚的な側面を抽象的に表現した、「Abstract Pop(アブストラクト・ポップ)」の台頭なのである。また、前衛主義の中で、ノイズが強調されることもある。「biters」は、やはりオシレーターを活用した、水の上に浮かび上がる泡のようなモコモコしたシンセサイザーがイントロで出てくる。

 

それらは、まるでジャック・アタリが指摘した「社会的なノイズ」の概念を反映するかのように、楽曲全体に歪みをもたらす。その間にぽっかりあいたサイレンスから、やはりこのアルバムのシンボライズでもあるオートチューンのボーカルが登場する。

 

驚きに満ちたサウンドは、現代アートのような形で展開され、時間ごとに、姿を変え、また、形を変え、無形物としての音楽を作り上げる。かと思えば、曲の途中では、それらのノイズミュージックを放棄し、マンチェスターのアートポップグループ、Carolineのようなアヴァンフォークの音楽性へと接近していく。これらの先の読めないサウンド、あるいは流動的なサウンドは、そもそも音楽性を一つに規定しないという明確な意図が込められているような気がする。

 

アルバムは、現代的なインディーポップアルバムと思わせておいて、見事なほどにその期待を裏切る。実際は音楽における軽さと重さの二律背反や両側面を示唆するような作品となっている。また、多彩な音楽性を繰り広げ、めくるめくワンダーランドのような不思議な世界を楽しむことが出来る。アートミュージアムか、インスタレーションイベントか、遊園地なのか。どれとも言い難い奇妙な音楽世界は、現実世界とは一定の距離を取りながら、続いていく。リアリティとフィクションの間にあるような不思議な音楽がアルバムの中盤まで一貫して続いていく。

 

アルバムの後半には良曲が多い。その筆頭である「the producer」は、マシンビートをベースにした、bar italia風の一曲である。ロンドンのバンドの場合はロック的な質感を帯びるが、このアーティストの手にかかると、独特なエモーションに満ちたインディーポップソングに様変わりしてしまう。ローファイな雰囲気の楽曲であるが、弦楽器を追加して、ロマンティックな雰囲気を添えたり、移調するフレーズを重ねたりと、作曲としても様々な工夫が凝らされている。

 

これらの曲は飽くまで作曲の卓越性ではなく、音楽の純粋な楽しみに焦点が置かれている。エレクトロニックやミュージックコンクレートと並んで、モア・イーズの音楽性のもう一つの不可欠な要素、アメリカーナやフォークミュージックの影響を込めた「a chorale」は、ロマン派の作曲家の弦楽カルテットに代表されるような音楽を、フォークミュージックの通奏音やドローン音楽の視点から組み直している。そもそも、クラシック音楽ですら、民謡やフォークソングと結びつかない時代はほとんどなかったのに、現代音楽とフォークミュージックの融合というスタイルが、音楽形式として余りに過小評価されているような気がしてならない。チェロを中心として、フィドルのような楽器が重なり、クラシックとフォークの中間の音楽性が形成される。

 

アルバムの後半に収録されている「healing attempt」は、アメリカーナをミュージック・コンクレートから再解釈し、それらを比較的聞きやすいオルタナティヴポップソングに組み替えている。

 

曲の後半では、賛美歌のようなフレーズも登場するのに注目したい。同じように、このアルバムのコアの部分となるオートチューンのボーカルが出てくるが、それは作品全体の脱構築主義やポストモダニズムの音楽性の一面を示唆するに過ぎない。ここには、ベッドルームポップのようなジャンルを通過した、2020年代のポップソングの再構築主義の姿勢が示唆され、それはまた、単なるパッケージ化された商品としての音楽の意義を超えて、制作者の音楽的な記憶が、時間もなければ、場所もない、無限の意識の底を緩やかに流れていく。これらはダニエル・ロパティンの電子音楽を、インディーポップという側面から見つめなおしたような作品である。

 

モア・イーズは、気まぐれに弦楽器の特殊奏法を曲の中に組み込むことがある。Arvo Partの代表曲「Fratless」、Paul Gigerのようなヴァイオンの特殊奏法をフォークミュージックとして解釈したタイトル曲は、無調を中心とする楽曲編成の中で、調和的な響きを帯びることがある。同じように、ミュージックコンクレートを駆使しながら、フォーク、ポップを鋭く対比させ、異質な音楽性を作り上げる。これらは、Laurel Haloの次世代の音楽に位置づけられるかもしれない。

 

実験音楽の印象が強いアルバムであるが、モーリス自身のよるボーカルがこのアルバムにオルタナティヴポップの要素を添え、それがまた、ある種の癒やしのような瞬間にもなる。この最終曲でも、トレモロの弦楽器の演奏、そして反復的なシンセビートを駆使し、新時代のポップソングの型を示すことに成功している。ベッドルームポップの次に流行する音楽はあるのか? そのヒントは、クレア・ルーセイやモア・イーズのようなアーティストの作品に潜んでいる気がする。少なくとも、旧来の音楽形式にとらわれない才気煥発なアルバムとなっている。 

 

 

 

84/100 

 

 

 

「healing attempt」 

 

 

▪more eaze  『sentence structure in the country』は本日、Thrill Jockyから発売。アルバムの視聴はこちら。日本盤の販売の詳細につきましては、HEADZの公式サイトをご覧ください。 

 

 

Jordan Anthony & Chloe Caroline

ポップアーティストのジョーダン・アンソニーがシンガーソングライターのクロエ・キャロラインとのコラボレーションシングル「Existing」をリリースした。

 

「Existing」は、ロサンゼルスでミケルディ・ムルギアがプロデュースを手掛けた。オリジナルのピアノ・デモが持つ親密さと、豊かでシネマティックな質感、そして高らかに響き渡るボーカルの掛け合いが見事に調和している。

 

この楽曲は、現代のデュエットの名曲からサウンドのインスピレーションを得つつも独自のアイデンティティを確立しており、クロエ・キャロラインの軽やかで情感豊かなニュアンスと、ジョーダン・アンソニーのダイナミックでソウルフルなパワーが見事に融合している。

 

このコラボレーションはすでに自然な勢いを見せ始めている。 ロサンゼルスのホテル・カフェでのライブ初披露後、そのパフォーマンスに感銘を受けた「KOST 103.5」のホスト、ライアン・マノは、このデュオを「iHeartRadio」のライブセッションとインタビューに招待し、その模様はシングルキャンペーンと同時に公開される予定だ。 

 

このシングルは、愛する人々と人生を分かち合うという深遠な奇跡を讃える、映画のようなピアノ主体のデュエット曲です。 「人生を変えてくれる誰かと同じ瞬間に、自分も存在していることに気づく、あの非現実的な感覚を表現したかったんです」とクロエ・キャロラインは語ります。

 

「すべてを明るくしてくれる、たった一人の人のための曲です」とジョーダン・アンソニーは付け加えます。「それは恋人、友人、家族、誰であってもいい。ただ、この曲が人々を結びつけるきっかけになればと願っています」


ロサンゼルスを拠点とするシンガーソングライターのクロエ・キャロラインと、オーストラリア出身のポップアーティスト、ジョーダン・アンソニーは、2022年にLAで開催された音楽業界のカンファレンスで初めて出会い、共通のルーツ、音楽一家という背景、そして感情豊かなポップソング作りに向けた共通の情熱を通じて絆を深めました。 

 

それぞれの芸術性は、クロエ・キャロラインの明るく繊細な温かさと、ジョーダン・アンソニーのパワフルでソウルフルな歌唱力という、わずかに異なるトーンの世界に位置しているものの、二人は自分たちの声が組み合わさることで生まれる映画的なバランスを即座に認識した。


彼らのデビューコラボレーション曲「Existing」は、大陸をまたいだZoomセッションの中で制作された。

 

ロサンゼルスにいるクロエ・キャロラインとオーストラリアにいるジョーダン・アンソニーが、クロエがパートナーがふとした瞬間に口にした「君が存在している世界に生きられるのが大好きだ」という一節を持ち込んだことをきっかけに、数分後にはジョーダンがピアノの土台を作り始め、愛する人々と同時に人生を分かち合うという稀有な奇跡を描いた壮大なデュエット曲へと急速に形作られていった。


親密な物語とアリーナ級の情感を融合させた「Existing」は、両アーティストのソングライティングにおける核心的な価値観を反映している。ジョーダン・アンソニーの真実味あふれるストーリー主導のポップへのこだわりと、クロエ・キャロラインの深く内省的で絆に焦点を当てた歌詞表現だ。この楽曲はロマンスの枠を超え、パートナー、友人、家族、そしてあらゆる種類の魂レベルの絆に対する感謝の普遍的なメッセージへと広がっている。


その後、ロサンゼルスでプロデューサーのミケルディ・ムルギアと共にレコーディングが行われた。彼の映画的なポップセンスが、素朴なピアノデモを時代を超越したモダンなデュエットへと昇華させた。ヴィト・グティラによるヴァイオリンが、楽曲の感情的な展開に有機的な高揚感をもたらしている。 クロエ・キャロラインとジョーダン・アンソニーは、2025年にロサンゼルスのホテル・カフェで初めて「Existing」をライブ演奏した。そのパフォーマンスに感銘を受けたKOST 103.5のライアン・マノは、二人をiHeartRadioのライブセッションとインタビューに招待した。


「Existing」は、両アーティストにとって重要な節目となるタイミングでリリースされる。クロエ・キャロラインにとっては、近々リリース予定のアルバム『Awakened』に向けた2026年のリリースサイクルの幕開けとなり、ジョーダン・アンソニーにとっては、米国で音楽活動を本格的に始めてからの最初の数年間を綴ったデビューEPのリリースに先立つ、最後の単独シングルとなる。


リリースを記念して、二人はInstagramで、抽選で選ばれた1組のカップルに、ロサンゼルスでの結婚式で彼らのパフォーマンスを披露するチャンスを提供すると発表した。


クロエ・キャロラインとジョーダン・アンソニーは、親密でありながらも広がりのあるデュエットの化学反応を生み出している。ただ同じ瞬間に生きているという共有された驚きの中で、二人の声が交わる。 

 

 「Existing」

 

 

▪EN 

 

Pop artist Jordan Anthony has released the collaborative single “Existing” with singer-songwriter Chloe Caroline.


Their debut collaboration, “Existing,” was written across continents during a Zoom session, Chloé Caroline in Los Angeles and Jordan Anthony in Australia, after Chloé brought in a line her partner had spontaneously said: “I love living in a world where you’re existing.” Within minutes, Jordan began building the piano foundation, and the song quickly unfolded into a sweeping duet about the rare miracle of sharing life at the same time as the people we love.

Blending intimate storytelling with arena-scale emotion, “Existing” reflects both artists’ core songwriting values, Jordan Anthony’s commitment to truthful, story-led pop and Chloé Caroline’s deeply reflective, connection-focused lyricism. The track expands beyond romance into a universal message of gratitude, for partners, friends, family, and soul-level bonds of all kinds.

The song was later recorded in Los Angeles with producer Mikeldi Murguia, whose cinematic pop sensibility helped translate the raw piano demo into a timeless, modern duet. Violin by Vito Gutilla adds organic lift to the track’s emotional arc. Chloé Caroline and Jordan Anthony first performed “Existing” live at LA’s Hotel Café in 2025, where the performance moved KOST 103.5’s Ryan Manno to invite them for a live iHeartRadio session and interview.

“Existing” arrives at a pivotal moment for both artists. For Chloé Caroline, it launches her 2026 release cycle leading toward her forthcoming album Awakened, while for Jordan Anthony it serves as the final standalone single before the rollout of his debut EP chronicling his first years pursuing music full-time in the United States.

To celebrate the release, the duo announced on Instagram that one lucky couple will have the chance to have them perform at their wedding in LA.

Together, Chloé Caroline and Jordan Anthony create a duet dynamic that feels both intimate and expansive, two voices meeting in the shared wonder of simply being alive at the same time.



アメリカの作曲家、シンガー・ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト(弦楽、鍵盤)であるピーター・ブロデリックが、日本の名作RPGのサウンドトラックの再構成に挑戦した。本作は本日(3月20日)、イギリスの実験音楽に特化したレーベル、Erased Tapesからリリースされた。


このアルバムは彼のフォークバンドやバイオリンやピアノを含めたFFシリーズのカバーやアレンジが収録されている。すぎやまこういちと双璧を成すゲーム音楽の大家、植松伸夫の音楽の未知の魅力が堪能できる。また、実際的に彼の普遍的なゲーム愛が音楽に感じ取られることだろう。


プロデリックは、アメリカのスロウコアバンド、Lowの故ミミ・パーカーの縁戚に当たる。プロデリックはエレクトロニックからのピアノ曲、弦楽器中心の室内楽、それからフォークミュージックまで広範な音楽体験を生かして、バリエーションに富んだ作品を制作している。今回は、作曲家が得意とする再構成作品となるが、今回はファイナルファンタジーへのオマージュである。


最近、ピーター・プロデリックが立ち上げた「ファイナルファンタジー」シリーズの音楽に特化した新プロジェクト「The White Mages」は、世界で最も愛されているゲームとその音楽に対する純粋な愛と熱意から生まれた。このプロジェクト名「The White Mages(白魔道士)」は、シリーズの作曲家である植松伸夫と、ゲーム音楽のロックンロール・バージョンを演奏していた彼のバンド「THE BLACK MAGES」へのオマージュとなっている。Erased Tapesからリリースされた本作『Ode to Final Fantasy』は、世界中で愛されつづけている「プレリュード」「エアリスのテーマ」など、ブロデリックが選んだお気に入りの楽曲11曲を独自の解釈でカバーしたもの。


ブロデリック自身の音楽の原点は、『ファイナルファンタジー』シリーズと深く結びついているという。母とバイオリンの練習を100日連続でつづければプレイステーションを買ってもらうという(過酷な?)約束をした少年は、バイオリンの腕が上達するにつれ、約束通りプレイステーションを手にし、そして「ファイナルファンタジー」シリーズの7作目である「FFVII」に夢中になった。「ゲームをプレイしたいという意欲が音楽を学ぶきっかけになった」と彼は語っている。


ファイナルファンタジーの世界では、黒魔道士は雷や炎などの攻撃的な魔法を使い、白魔道士は回復役を務める。それはブロデリックの新しいプロジェクトの音楽的アプローチにも反映されており、音楽が本来持っている癒しや、魔法的な効果を取り入れることを目指している。


このファーストアルバムはピーター・ブロデリックひとりで演奏、録音されているが、The White Magesは無限の可能性を秘めたプロジェクトとして構想されている。いつの日か、ブロデリックはより大きなグループの中で、多くの「白魔道士」のひとりとなり、ファイナルファンタジーの音楽を奏でることで世界に「ケアル」もしくは「ケアルガ」を唱えることになるかもしれない。


Erased Tapesとブロデリックは、アルバムの収益の半分を国境なき医師団に寄付することを約束している。さらにブロデリックは次のように語っている。「このプロジェクトを友人たちに話していたところ、親しい人から、収益の一部を現実世界の慈善活動に寄付してはどうかと提案された」


「ファンタジーと現実逃避の世界を、悲しくも美しいこの壊れた現実の世界へと持ち込み、具体的な成果として還元するというアイデアでした。私にとってすでに非常に意義深いプロジェクトに、さらなる意味と目的を吹き込むことができると、これは素晴らしい提案だと感じました」



The White Mages『Ode to Final Fantasy』



<トラックリスト>


1. Eternity, Memory of Lightwaves (Final Fantasy X-2)

2. Freya's Theme (Final Fantasy IX)

3. The Promise (Final Fantasy XIII)

4. Under the Rotting Pizza (Final Fantasy VII)

5. Hymn of the Fayth (Final Fantasy X)

6. Chocobo Theme (Final Fantasy)

7. Aerith's Theme (Final Fantasy VII)

8. Listen to the Cries of the Planet (Final Fantasy VII)

9. Atonement (Final Fantasy XIII)

10. Melodies of Life (Final Fantasy IX)

11. The Prelude (Final Fantasy)


▪︎ストリーミングURL: https://erasestapes.lnk.to/thewhitemages

▪︎Shane Sato × Reuben Jamesが描く、夜の余韻に溶けていくジャジー・ソウル LAとロンドンを結ぶコラボレーションが生んだ新曲「Clouds」



「Clouds」は、Shane Satoが今春リリース予定のニューアルバム『Wavelength』からの第4弾シングル。UKの実力派アーティスト/ソングライター/ピアニストであるReuben Jamesとのコラボレーションによって生まれた本作は、ソウル、R&B、ジャズのエッセンスを横断しながら、グルーヴを軸に据えたインストゥルメンタルの豊かさと現代的なプロダクションが融合した一曲となっている。


力強く打ち鳴らされるドラム、温かみを帯びたシンセサイザー、表情豊かなピアノ、そしてReuben Jamesのソウルフルなヴォーカルが重なり合い、ライブ感とモダンな質感が絶妙なバランスで共存する。〈You show me how to fall from the clouds〉というフックを中心に、夜のドライブや静かな時間に寄り添いながら、重厚なリズムと豊かなハーモニー、そして耳に残るヴォーカルフレーズが、何度もリピートしたくなる余韻を残していく。


Shane Satoは、LAを拠点に活動する日系アメリカ人のマルチインストゥルメンタリスト、プロデューサー、ソングライター。南カリフォルニアで育ち、5歳でドラムを始めた後、ギターやピアノへと演奏の幅を広げ、ロックバンドやジャズグループなど多様な現場で音楽的基盤を築いてきた。2017年にLAへ移住後はセッションミュージシャンとしてキャリアを重ねながら、自身のオリジナル作品にも注力。


Reuben Jamesは、バーミンガムの2000年代半ばのジャズ・シーンで研鑽を積み、のちにロンドンへ拠点を移して名門Ronnie Scott’sにも出演。Stormzy、Disclosure、Sam Smith、James Bayらとのコラボレーションをはじめ、Marcus MumfordとともにApple TV+シリーズ『Ted Lasso』の音楽も手がけるなど、ジャンルを横断して活躍してきた。ソロアーティストとしても、クラシックなファンクやソウルを現代的なポップ/R&Bの感性で再構築し、『Tunnel Vision』『Champagne Kisses』などの作品で累計5,000万回を超えるストリーミングを記録している。



[作品情報]



アーティスト:Shane Sato, Reuben James

タイトル:Clouds

ジャンル:R&B, Soul, Jazz

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 

ストリーミングURL: https://lnk.to/shane-sato-clouds


モントリオールのアートロックトリオ、Colaが、5月8日にFire Talk Recordsよりリリースされるアルバム『Cost of Living Adjustment』からのセカンドシングルとミュージックビデオ「Conflagration Mindset」を公開した。ジャングリーかつローファイな質感を持つオルタナティヴロックソング。しかし、コーラらしい憂いに満ちたエモーションが楽曲には漂い、独特な雰囲気を生み出す。


ティム・ダーシー(ボーカル/ギター)、ベン・スティッドワージー(ベース)、エヴァン・カートライト(ドラム)からなるモントリオール出身のアートロックトリオだ。


『Cost of Living Adjustment』——Colaによるセルフタイトル・アルバムへのアプローチ——のリリースを記念し、このトリオはアメリカ、イギリス、ヨーロッパ各地でヘッドライン公演を行う。


『Cost of Living Adjustment』は、渦巻く感情があまりにも鮮明になり、少しばかり痛みを伴うほどになる、そんな「明瞭な瞬間」に満ちた抽象的な作品だ。 


「悲しみに場所を空けておけ、そうすれば悲しみも君のために場所を空けてくれる」と、ダーシーは『Cost of Living Adjustment』の第3幕を飾る大作「Conflagration Mindset」の冒頭で歌う。2025年のロサンゼルス山火事の余波を受けて書かれた「Conflagration Mindset」は、Colaのディスコグラフィーの中でも他に類を見ない、衝撃的な啓示のような楽曲。 


「Conflagration Mindset」は、スティッドワージーの瞑想的なベースラインとダーシーの実存的な思索と共に高まりを見せる。「ホテルのカップに入った冷たいビール // 一人だけど、車にガソリンを入れる // コンフラグレーション・マインドセットの中で」という歌詞に象徴されるように。


「Conflagration Mindset」は、『Cost of Living Adjustment』からの先行シングル「Hedgesitting」に続く楽曲であり、同曲はDIY、NME、Brooklyn Vegan、Stereogumなどから称賛を集めた。「Conflagration Mindset」には、印象的な歌詞ビデオが併せて公開されている。



「Conflagration Mindset」


 

咋年1月に批評家から高い評価を受けた待望のデビュー・アルバム『ファミリア』をリリースした、ロンドンを拠点とするプロデューサーでシンガー・ソングライターのリザ・ロー。その後、ライヴEP『ファミリア:ライヴ・アット・ギアボックス』、シングル「He is, I am」をデジタル・リリースしていた彼女が、この度さらなる新曲「Birdsong」を発表した。


3本のマイクを使ってテープに直接録音され、フィドルとコントラバスの演奏が際立つこの楽曲の温かみのある親密なサウンドは、リザの楽曲作りの情感と本質を完璧に表している。


この楽曲ついてリザは、「人生の軽やかさと安らぎを、早朝に優しく思い出させてくれる曲。友情とロマンスを歌った曲」と語っている。


「人生は時に圧倒されるほど忙しく、単純な喜びはつい忘れられがち。朝の最初のコーヒー、新しい人との出会い、心を通わせる瞬間、手をつなぐこと、庭で聞こえる鳥のさえずり、長雨や曇り空の後に顔に当たる日差し。『Birdsong』は、人生が与えてくれる些細なものの美しさを忘れないために書かれた曲なの」と。


早速同楽曲のミュージック・ビデオが公開となっているので、チェックしてほしい。



Liza Lo - "Birdsong" Official Music Video

 


【シングル情報】


Label: Gear Box

Release: 2026年3月18日


Tracklist:

1.Birdsong


▪︎ストリーミングURL: https://bfan.link/birdsong-2



【アルバム情報】


デーモン・アルバーンのスタジオ13で、リザのバンドとジョン・ケリー(ケイト・ブッシュ/ポール・マッカートニー)と共にレコーディングされた彼女のデビュー・アルバム『ファミリア』は、脳梗塞で友人を亡くしたこと、ヨーロッパにある故郷を離れること、そして現代の人間関係にまつわる複雑といったあらゆることに触れている。不気味で親密なギター、レトロでポップなシンセサイザーとベース、クリスタルのようなピアノが、儚さと自己の強さの両方を表現している。DIY、Notion、BBC Introducingといった海外メディアから賞賛を受けた作品である。


アーティスト名:Liza Lo(リザ・ロー)

タイトル名:Familiar(ファミリア)

品番:GB1598CD (CD) / GB1598 (LP)

発売日:発売中!

レーベル:Gearbox Records


<トラックリスト>

(CD)

1. Gipsy Hill

2. Morning Call

3. Darling

4. Catch The Door

5. A Messenger

6. As I Listen

7. Open Eyes

8. Anything Like Love

9. What I Used To Do

10. Confiarme

11. Show Me


(LP)

Side-A


1. Gipsy Hill

2. Morning Call

3. Darling

4. Catch The Door

5. A Messenger

6. As I Listen

Side-B


1. Open Eyes

2. Anything Like Love

3. What I Used To Do

4. Confiarme

5. Show Me



▪︎アルバム『ファミリア』配信中! 


https://bfan.link/familiar-3


Credits:

Liza Lo - Vocals, Acoustic Guitar, Piano, Backing Vocals, Synthesisers Sean Rogan - Piano, Backing Vocals, Acoustic & Baritone Guitar Maarten Cima - Electric, Rubber Bridge & Baritone Guitar

Tom Blunt - Drums 


Freek Mulder - Bass

Ben Trigg - Cello & String Arrangements (Gipsy Hill, Open Eyes & A Messenger) Emre Ramazanoglu - Percussion (Catch The Door & Anything Like Love)

Chris Hyson - Synthesisers & Programming (Confiarme)

Wouter Vingerhoed - Prophet (What I Used To Do) 


Recorded at Studio 13 and Tileyard Studios in London

Produced by Jon Kelly and Liza Lo

Additional and co-production by Wouter Vingerhoed (What I Used To Do), Topi Killipen

(Morning Call), Sean Rogan (Confiarme) and Chris Hyson (Confiarme)

Written by Liza Lo together with Topi Killipen (Morning Call), Emilio Maestre Rico (Darling),

Peter Nyitrai (Open Eyes), Melle Boddaert (Gipsy Hill), Hebe Vrijhof (What I Used To Do) &

Wouter Vingerhoed (What I Used To Do)

Mixed by Jon Kelly

Mastered by Caspar Sutton-Jones & Darrel Sheinman

Engineered by Giacomo Vianello and Ishaan Nimkar at Studio 13 and Ned Roberts at Tileyard Studios Released by Gearbox Records


バイオグラフィー:

スペインとオランダで育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター/プロデューサー/ミュージシャン。優しくも力強い歌声で愛、喪失、成長の物語を紡ぐことを特徴とし、ビッグ・シーフ、キャロル・キング、ドーターやローラ・マーリングなどからインスピレーションを受けながら、独自の親密で詩的な音楽世界を創り出している。


EP『Flourish』はSpotifyの 「New Music Friday UK/NL/BE 」に選出され、「The Most Beautiful Songs in the World 」プレイリストでも紹介された。2024年5月、Gearbox Recordsと契約。自身のUKヘッドライン・ツアー、ステフ・ストリングスやVraellのオープニングをUK各地で務めたほか、ハリソン・ストームとのEU/UKツアーもソールドアウトさせた。


2025年1月、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共に制作したアルバム『ファミリア』をリリース。同年8月、新ライヴEP『ファミリア:ライヴ・アット・ギアボックス』を、2026年3月には最新シングル「Birdsong」をデジタル・リリースした。

 



ノルウェーの実験音楽デュオ、Deaf Centerがニューアルバム『Through Time』を発表した。本作は、ドイツのインディペンデントレーベル、Sonic Piecesから4月30日にリリースされる。アルバムの発表に合わせて先行シングル「Open Time」がリリースされた。ニューシングルはパルスビートとピアノの断片が融合する、未来的な志向を帯びた画期的なエレクトロニックのトラックである。

 

デフ・センターは、4枚目のスタジオ・アルバム『Through Time』において、静謐な小道から壮大な大通りへと旅を繰り広げる。


前作のフルアルバム『Low Distance』(2019年)以来、このデュオは徐々に長尺のエレクトロアコースティック・サウンドへと移行しており、おそらくこれまでで最も没入感のあるリスニング体験をもたらしている。オットー・A・トットランドのピアノは、以前よりも控えめなリズムで奏でられるが、エリック・K・スコドヴィンの深遠で雰囲気のある世界観と対照をなす静謐な瞬間において、より一層安らぎとして感じられる。この作品には、何か意味のあるものへと向かう、途上の緩やかな動きのような探求心が宿っており、安らぎと畏敬の念の両方を捉えている。


アルバムの後半は一転する。深みのあるストリングスに揺らぐ電子リズムが重なり、恍惚としながらも心に残る二面性を生み出している。デフ・センターの作品にゲストミュージシャンが登場するのは今回が初めて。

 

英国の作曲家兼ミュージシャン、サイモン・ゴフがヴァイオリンとヴィオラでフィナーレを飾る「Further」に参加しており、この曲はストリングスとドローンの層に包まれた、催眠的な作品となっている。


「時間」というテーマは野心的なものだが、Deaf Centerは、秒が分となり、時間が日となり、まるで静物画のような瞬間として時間が凍りつくかのように、謙虚さと壮大さのバランスを温かみをもって見事に保っている。

 

 

「Open Upon」


 

Deaf Center 『Through Time』


Label: Sonic Pieces

Release: 2026年4月30日 

 

Tracklist: 

1.Open Upon
2.Through Time (Part One)
3.An Existing Place
4.Through Time (Part Two)
5.I Myst
6.Further


ヒーリングミュージックのアーティスト、瞑想ガイドでもあるリナ・レイン(Rina Rain)が新曲「Ek Ong Kaar Sat Gur Prasaad」をリリースした。彼女のアルバム『Whispers of Rain』からの2曲目の先行公開曲。 

 

リナ・レインは、ベイエリアを拠点とする瞑想トレーナーであり、マインドフルネス、キャリア開発、自己啓発の分野で20年以上の経験を持つ。また、マントラ・アーティスト(Rina Rain)および瞑想ガイドとしても活動し、音楽を通じて平和、献身、そして癒やしを届けている。魂を揺さぶるボーカルと古代のマントラ、そして現代的なサウンドスケープを融合させ、内なる静寂とつながりを呼び覚ます楽曲を生み出している。

 

彼女の声には静寂の本質が宿っており、それぞれの詠唱は、まるで優しい祈りのように、今この瞬間に立ち返る旅路として広がっていく。 リナの歌声は、聴く人をゆったりとさせ、呼吸を整え、自分自身へと帰還するよう誘う。シンプルで広々とした音と導きを通じて、彼女は平和、記憶、静かな変容の周波数を伝えます。彼女の音は単なるパフォーマンスではなく、一つの境界線です。

 

レインは、音楽を通じて、平和、献身、そして癒やしを分かち合うガイドを務めている。魂を揺さぶるボーカルと古代のマントラ、そして現代的なサウンドスケープを融合させ、内なる静寂とつながりを呼び覚ます楽曲を生み出している。彼女の声には静寂の本質が宿っており、それぞれの詠唱は柔らかな祈りのように広がり、今この瞬間に立ち返らせてくれる

 

 

最新曲『Ek Ong Kaar Sat Gur Prasaad』に関して、彼女は以下のように語っています。

 

「この曲は、一つの普遍的な真理、一つの愛、そして一つの創造主が存在することを私たちに思い出させてくれます。そして、私たちは神の恩寵と導きを通じて、このことを知ることになる。 私にとって、これは人生を通じて私たちを導いてくれるすべての人々への賛歌です」

 

「両親や教育者から、何世紀にもわたって尊ばれてきた師たちによって伝えられてきた、より深遠な霊的知恵に至るまで。時を経て、私はあらゆる教えが最終的に私たちを同じ場所、すなわち内なる賢き師、私たち自身の生来の知恵と愛へと導いてくれることに気づきました。この祈りは、一体感と恩寵、そして私たち全員の内側に宿る光を灯すものです」


 

『Ek Ong Kaar Sat Gur Prasaad』

 

▪︎EN

Rina Rain is a Bay Area-based meditation trainer with over twenty years of experience in mindfulness, career and personal development. She is also a mantra artist (Rina Rain) and meditation guide sharing peace, devotion, and healing through music. Blending soulful vocals and ancient mantras and modern soundscapes, she creates songs that inspire inner stillness and connection. 

 

Her voice carries the essence of tranquility, each chant unfolding like a soft prayer, a return to presence. Rooted in sacred repetition and silence between the notes, Rina’s voice invites listeners to slow down, breathe, and come home to themselves. Through simple, spacious sound and guidance, she channels frequencies of peace, remembrance, and quiet transformation. Her sound is not performance, it is a threshold.

 

Her latest track Ek Ong Kaar Sat Gur Prasaad is an uplifting and unifying mantra. She shares, "The track reminds us there is one universal truth, one love, and one Creator, and that we come to know this through divine grace and guidance. To me, it is a celebration of all those who guide us throughout our lives, from our parents and educators to the deeper spiritual wisdom carried through revered teachers across centuries. Over time, I’ve come to realize that every teaching ultimately leads us back to the same place, the wise teacher within, our own innate wisdom and love. This prayer ignites unity, grace, and the light that lives within us all.”


For over two decades, Rina has held space for healing through mindfulness, coaching, and creative expression. Her music is a meditation. It’s an invitation to slow down, breathe, and return to the heart.


Ora Cogan  『Hard Hearted Woman」

 

Label: Sacred Bones

Release: 2026年3月13日

 

Review

 

カナダ/ブリティッシュ・コロンビアのシンガーソングライター、オラ・コーガン(Ora Cogan)の最新作は先週のリリースの中でも注目作の一つ。


フォーク、ロック、ジャズ、ソウル、そしてアートポップなどが錯綜する本作は、一見するとソフトな印象があるため、ソフィスティポップのようにも聞こえるかもしれない。


しかし、同時にオラ・コーガンの前衛主義や実験音楽に対するこだわりが見受けられるアルバムでもある。フィオナ・アップル、アラニスモリセット、PJ ハーヴェイの系譜にあるサウンドが中心のように感じられるが、同時にオルタネイトな性質も含まれている。『Hard Hearted Woman』には、Radiohead、Blonde Redheadのような得難いサウンドが含まれている。

 

オープニングを飾る「Honey」はドアーズを彷彿とさせるサウンドで、フォーク・ソングとロックの中間に位置するが、アルバムタイトルの印象とは対象的にそれほどハードな内容ではない。ハードロックやロックンロールを通過した後、それらをアートポップやソフィスティポップでろ過させ、艶のあるサウンドを獲得している。録音はコーガンのソフトなボーカルによってマイルドな印象を帯び、インディーポップに依拠した軽いサウンドに昇華されている。息の続くかぎり、反復的なギターリフ/ドラム/ベースを続け、ピアノの演奏を配して、ジャジーなサウンドに変化することもある。 その中には、カントリー、フォーク、ロック、ジャズと様々な音楽が混在するが、コーガンのヴォーカルは全体的なサウンドプロダクションに落ち着きをもたらし、全体的な印象を取っつきやすい内容にしている。いわば古典的なブギーロックの要素を、ミニマル・ミュージックの方面から再解釈するようなサウンドになっている。これらは最終的に、弦楽器のアレンジメントなどを交えて、70年代風のロックサウンドへと変遷していく。

 

実験音楽や前衛主義に対する傾倒は、「The Smoke」に見出され、ロック/ブルースを含めたフォーク主義が新しいアートポップソングの形に結びついている。特に、コンガのような民族楽器の打楽器の使用、そしてブルースロックの影響を帯びたコーガンのボーカルは、間違いなく女性シンガーソングライターとしての円熟味や渋さを思わせるところがある。ボーカル全般は、基本的にスポークンワードのように歌われるが、サビ/コーラスでは歌唱法をシフトチェンジし、音階的なボーカルが顕著になる。全般的に、音階をぼかして歌う手法を選んでいるが、サビの箇所でカントリーの歌唱の性質を押し出し、独特な哀愁を帯びた旋律を得る。これらは、感情的あるいは叙情的な音楽の作曲性をもとにこのアルバムのいくつかの曲が制作されていることの証となり、ボーカルの性質により、背景となるバンドサウンドにも変化が生じる。最終的には、歌謡的な哀愁溢れるポップサウンドの印象が楽曲の首座を占めるようになる。

 

アルバムの最初のハイライトは「Division」で訪れる。 別段目新しいことをやっているわけではないのだが、電子音楽を配したイントロ、そして80年代のシンセポップやテクノ・ポップを経過したサウンド、そしてビブラートを駆使し、あえて音階を暈す抽象的なボーカライズなど、オラ・コーガンらしいサウンドを聴くことが出来る。バンド録音としては相当ハイレベルで、ファンク/フュージョンジャズの系譜にあるベースと広大な音像を獲得するシークエンスを基調としたシンセなど、80年代のクインシー・ジョーンズ、マーヴィン、チャカ・カーンなどが使用していたR&Bのブラックコンテンポラリーの手法を駆使することで、プロデュース的なポップサウンドを獲得している。これらはオラ・コーガンが単なるシンセポップにとどまらず、ブラックミュージックやソウルミュージックの影響を受けていることを伺わせる。ボーカルの音階進行も独特であり、背景となるプログレッシヴロックのようなサウンドに、移調や転調の要素を付与する。そして、コーガンのボーカルは、ときおり、全般的なアンビエンスと呼応するかのように、宇宙的な印象を帯び、巨大な音像ーーマクロコスモスのサウンドーーを作り出す。曲の後半では、アンダーグラウンドのダブステップ/フューチャーステップなどで使用されるダンスミュージックの手法が登場し、エポックメイキングなサウンドを楽しむことが出来る。

 

最初に、Radhioheadの影響について言及したのは、「Limits」のような楽曲が収録されているから。 この曲では『In Rainbows』時代のトム・ヨーク的なサウンドの影響を感じさせる。そしてそれらを純粋な電子音楽の枠組みではなく、フォークやロックの角度から再構築しようとする。このあたりにもカナダの音楽のすでに存在するものを再構築したり、組み直したりするという要素を捉えられるはずだ。この曲でも意外性のある転調や分数コードを使用したレディオヘッドのように、モダンジャズを経過したロック/ポップのサウンドを楽しむことが出来るはず。その他方、「Love You Better」ではアメリカンなスタイルを選び、カントリー/フォークに依拠したノスタルジックかつパストラルな印象を持つ楽曲、そしてシャンソンやフレンチ・ポップの系譜にあるヨーロッパのポップソングを合体させて、独創的なサウンドを生み出している。

 

これらの1970年代やそれ以前の古典的なポップソングを並行して、本作ではアートポップ主義に傾倒する場合もある。「River Rise」や「Believe In The Devil」などはその象徴となり、60-70年代の古典的なポップソングにカナダのローファイ、それから前衛的なポップソングの影響を交えたサウンドを作り上げる。いわば、Cate Le BonやGwennoのようなアーティストのサウンドとバロックポップを融合させて、懐かしくも新しい抽象的な印象を持つサウンドを構築している。

 

こういった中で、ジャズのシャッフルのリズムを込めた、ロマン派主義のクラシックとバロックポップの融合を目指した『Outgrowing」に心惹かれるところがある。 ここでは、ジャズとバロックポップの融合という、いかにもカナダらしいサウンドを楽しめる。これらの古くもあり、また新しくもあるサウンドは、そもそも音楽には現実世界のように時間軸が存在しないことを強烈に意識づける。だからこそ時間を忘れさせてくれるようなパワーがあるのかもしれない。

 

結果的には、オラ・コーガンのニューアルバムは、前作『Formless』と比べると、ソングライターとしても、全体的なレコーディングとしても大きな飛躍を遂げた。その独特なモノトーンの音楽世界に魅せられてしまうことは確実である。アルバムの多くの楽曲は、モノトーンの暗い色調に彩られているが、それとは対象的に、最終曲「Too Late」だけはファンシーな印象を押し出したドリーミーなフォークポップとなっている。このアルバムは、全般的なカナダの音楽シーンが、アメリカとイギリスの中間に位置づけられること、そして、同地のモントリオールなどで盛んなジャズの要素をどこかに併せ持つことを、あらためて再確認させてくれるのである。

 

 

 

84/100 

 

 

 

Best Track-「Division」