Joep Boeving 『Liminal』

Label: Deutshe Grammophon

Release: 2026年3月20日

 

Listen/Stream 

 

Review

 

オランダのピアニスト、ユップ・べヴィンは2010年代後半からピアノ曲集を発表しつづけており、ポスト・クラシカルやモダン・クラシカルのシーンを牽引してきた。ニルス・フラームなど他の同世代の象徴的なミュージシャンがエレクトロニック作品を並行してリリースする中、このミュージシャンだけは徹底してピアノ曲という形に拘ってきた。これまで古典派やロマン派、サティ的な家具の音楽を追求してきたユップ・べヴィンの方向性に大きな変更は感じられない。それどころか、旧来の音楽性により磨きをかけた円熟したピアノ曲集がここに生み出された。フレドリック・ショパンの再来か。それともオランダに因むと、ベートーベンの再来か。

 

べヴィンは「大局の中にある小さくもある意味ある場所を探求したい」と考えていると、アルバムを紹介している。ややもすると、わたしたちは、日々の暮らしの中で、視野狭窄に陥りやすいが、人間中心の考えから離れ、自然との共存や一体となって創造をするようにしたい、と考えたという。おのずと、ミニマルミュージックによるピアノ曲が中心となり、しかし、そこには音楽的な物語が存在し、コントロールと直感の間で繰り広げられる対話、そして、対極に位置すると思われる概念を超越する、二元論からの脱却という意図が込められている。その役割を果たすのが、アルバムのタイトルーーリミナルという概念ーー境界という概念なのである。

 

ユップ・べヴィンのピアノ曲は、ロココ/ギャラント様式をもとにした、分散和音に主旋律が加わるというバロックからロマン派にかけてのスタンダードな形式である。特に、このアルバムは、そのほとんどが短調によって構成され、フレドリック・ショパンのような叙情的な詩性、及び、ベートーベンのような頑強なオスティナートやミニマリズムが併存している。しかし、曲の流れが存在し、暗鬱な音楽は折々、変化し、優雅になり、時には慰めのような意味を持つ。 同じ音形が中心の楽曲が組み立てられるが、そこには変化や変容が存在し、時間の流れとともに、音楽に映る風景が少しずつ変わっていく。ここには、ある種のべヴィンの人生観が反映されているようで、「変化し、衰え、そして静寂に戻る」という生命の変遷が込められている。

 

バロック派やロマン派への親しみという、ユップ・べヴィンの基本的な音楽が示されつつも、その中には、現代的な主題が織り交ぜられているのに注目しておきたい。ミニマル・ミュージックへの強い傾倒が示唆され、特に、「When Human Do Go Algorythms」に見出すことが出来る。ジョン・アダムスを彷彿とさせる急進的なピアノ曲であるが、そのロボット的な演奏と音の連鎖は、人間とコンピューターとの共生という、AIテクノロジー時代を生きる私達のテーマが端的に反映されていると言える。この曲では、2つ以上のピアノの録音を繋ぎあわせ、ミニマル・ミュージックの進化系を示そうとしている。今なお反復性やオスティナートの局面の奇異な印象に目が行きがちであるが、この曲には、テクノロジー時代の音楽という今までになかったイデアが加えられた。特に、同じ音形が転調を繰り返す音楽がひときわ新鮮な印象をもたらす。

 

アルバムの前半では、フレドリック・ショパンやベートーベンを彷彿とさせるロマン派のリバイバル曲が多い。 ポストクラシカルの代表的なサウンドを捉えられる「Through The Looking Glass」で始まり、「We Are Here But To Make Music-~」では、ユップ・べヴィンらしいロマンティックな雰囲気のピアノ曲を聞くことが出来る。音楽的には、Leiter(ドイツ)から発売された『Vision of Contentment』の延長線上にあり、感傷的な雰囲気がありながらも、奥深い感じのするピアノ曲が続いている。「Voda」は一転して爽やかな長調の曲。癒やされるような瞬間を刻む。

 

ショパンの『Nocture』を彷彿とさせるロマン派の楽曲「From Where One Hearts the Willow Speak」、現代音楽とロマン派の融合「Wild Renessance」は本作のハイライトとなりえる。『Hermetism』から一貫して追求してきたバロック主義の集大成ともいうべき楽曲である。聴いているだけで時間を忘れさせる不思議な感覚があり、ユップ・ヘヴィンの演奏は、依然として分散和音を中心に、叙情的な主旋律が演奏家の思いの丈を込めるかのように直感的に紡がれる。


最新アルバムでは、幾つか新しい試みがなされ、一つの音楽のシークエンスから別の音楽が唐突に登場することがある。ショパンのような音階下降(音階の掛け下がり)がアンティークな響きと共に再現される。つまり、19世紀前半の音楽的な手法が21世紀のレコーディング技術により、どう再生されるのかという探求がなされている。これは目から鱗とも呼ぶべき瞬間でもある。


従来よりも低音部の音響に迫力が加わり、音楽的にはダイナミックになっている。中音域から高音域の主旋律と対比をなすかのように、低音部の旋律が重層的に連なっていく。従来よりも遥かに対位法的な演奏法を選んだという点で、バロックの要素が強まった。それはやはり、2つの概念の対比が一つになる瞬間が丹念に探求されているのである。また、べヴィンのピアノは、ショパンが使用したエラールのような音色を復刻している。これはまた''新しい時代のサロン音楽''ともいうべきサウンドが構築されていると言える。特に、「Wild Renessance」で摩訶不思議な音楽性が登場することがあり、調性の中にある無調の音階を取り入れようとしている。ここにはフィリップ・グラスのような現代音楽からの影響を捉えることも出来るかもしれない。

 

アルバムの後半では、サティの系譜にあるサロン音楽の影響を捉えることが出来る。19世紀への親しみを現代的な音楽家としてどのように解釈し、新しい質感を持つ音楽として蘇らせるのか。そういった考古学的な興味も満載となっている。「Heterotopia」などはその好例となるかもしれない。しかし、このアルバムは全体的に、前作アルバムと同じように、夕方から夜にかけての物憂げな雰囲気に満ちている。まるで、サティが「黒猫」のような場所で演奏していたのはかくなる音楽ではなかったか、という印象を呼び起こすのである。もちろん、サティやショパンを知らないリスナーにとっても魅惑的なモダンクラシカルの音楽世界を味わえるに違いない。

 

全般的には、現代音楽のミニマリズムという''理性''と、ショパン/リストの音階下降やカデンツァという''野性''が共存した作品となっている。その音楽はベートーベンの『月光』のように思索的な響きがある。また、叙情的なピアニストの称号に違わぬ、素晴らしい演奏を聞くことが出来る。

 

個人的に面白いサウンドと思ったのは、最後の曲「Ghostly Chicken」。これはアンビエントとピアノの融合で、クローズに相応しい余韻のある残響を作り上げている。個々の曲として聴いても十分楽しめるアルバムとなっているが、むしろ、全般的に陶酔感に満ちたサウンドは、記号論のようにタイトルの意味を希薄にし、アルバム全体を時間のない”シュールレアリスムの領域”へと近づけていく。悠久の時を示すかのような境界のない音楽が、アルバムの鍵なのである。

 

 

84/100

 

 

「Ida」 


フューチャー・アイランズは、情感豊かなシンセポップ・グループであり、巧みなメロディのセンス、堂々とした勢い、情熱的なボーカルで知られている。彼らはシンセポップのリバイバルの先駆的なグループと言えるだろう。過去20年間にわたり、彼らは新進気鋭のバンドから「知る人ぞ知る存在」へ、カルト的な人気を博したグループからこのジャンルのヒーローへと、類まれな軌跡をたどってきた。この驚くべき節目を迎えた今、彼らはありきたりな選択を避けた。

 

 『From a Hole in the Floor to a Fountain of Youth』は、ノースカロライナ州出身のシンセポップ・バンドであるフューチャー・アイランズが、2006年の結成から2024年にリリースされた7枚目のアルバム『People Who Aren't There Anymore』に至るまでの軌跡をたどる作品集となっている。本日、彼らはこの新作から「Sail」と「Find Love」の2曲を公開した。

 

本作は、即座に親しみやすいコレクションであり、その半数はストリーミングサービスで未公開だった音源だ。ヒット曲の別バージョン、レアトラック、ファンに愛される楽曲で構成され、バンドの多彩な表現力を示し、彼らの唯一無二の普遍的な魅力にさらなる彩りを添えている。


フューチャー・アイランズはこのタイミングで、あまり注目されてこなかった側面を照らし出し、彼らがバンドとしていかに成長してきたかを誰もが垣間見られる機会を提供した。しかし、これは単なるファンサービスでも、自己満足的なノスタルジーの演じ物でもない。

 

フューチャー・アイランズは、一過性のブーム以上の存在だった。彼らのキャリアには並外れた深みとニュアンスが詰まっているが、それは往々にして、より大きなピークの陰に隠れてしまっていた。今作で、その広がりがようやく正当に評価された。これらの楽曲は、繊細さ、優雅さ、そして感情的な持続力に満ちたバンドの姿を明らかにしており、彼らの音楽はかつてないほど永遠の響きを帯びている。


『From a Hole in the Floor to a Fountain of Youth』は、20年の歩みを20曲で綴った作品であり、楽曲はベースのウィリアム・キャッシュンによって最初にプレイリストとしてまとめられ、アルバムのタイトルも彼が選定した。 

 

「あの歌詞のイメージがずっと好きだったんだ。フロアの穴は日常を象徴しているけど、泉は、夢見ていた人生が実際に自分の生きる現実になった時に起こる魔法のようなもの。夢と現実が同じ空間に共存しているんだ」と彼は説明する。このコレクションには、別バージョンのヒット曲、レア曲、ファンに人気の曲が収録されており、2枚組アナログ盤でも発売される予定だ。



 

 

 

Future Islands 『From a Hole in the Floor to a Fountain of Youth』

Label: 4AD

Release: 2026年5月22日

 
Tracklist


1.The Ink Well (Remaster)
2.Pinnochio (Remaster)
3.Happiness of Being Twice (Remaster)
4.In the Fall (Remaster)
5.Awake and Dreaming (Remaster)
6.Virgo Distracts (Remaster)
7.Find Love (Remaster)
8.Cotton Flower (Remaster)
9.The Fountain (Remaster)
10.Tomorrow (Remaster)
11.One Day (Remaster)
12.The Chase (Remaster)
13.Calliope (Remaster)
14.Six Weeks (Remaster)
15.Haunted By You (Remaster)
16.Sail (Remaster)
17.As Long As You Are (Remaster)
18.Days (Remaster)
19.Rager (demo)
20.Glimpse (Remaster)

 

 

アトランタのシンガーソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストのブレナン・ウェドル(Brenan Wedl)がANTI-との契約を発表し、同レーベル所属のワックスハッチーをフィーチャーしたキャスリン・エドワーズの楽曲「Six O'Clock News」のカバーを公開した。


マイクロトーン・ジャズ・カルテット「Dazey & the Scouts」での活動を経てソロキャリアをスタートさせたウェドルは、MJレンダーマンやデス・キャブ・フォー・キューティーらと同じレーベルに加わることとなった。「グランジ」と「カントリー」を融合させた「グランジトリー(grungetry)」というサウンドを追求する彼女の今年最初の新曲となるのが「Six O'Clock News」だ。


この楽曲と契約について、ウェドルは次のように語っている。「『Six O’Clock News』を初めて聴いたのは、2003年頃の『Cities 97 Sampler』CDでした。この曲が私のソングライティングのスタイルを形作ったことは間違いありません。キャスリーン・エドワーズが書いた『Six O’Clock News』は、アメリカの町で起こる銃乱射事件のヒステリーを描いた物語です。 20年以上経った今、ワックスハッチーと共にこの極めて現代的な物語をレコーディングし、歌えることは、私が音楽を奏でる理由の核心へと直結しています。ANTI-のアーティストに加われることを光栄に思うと同時に、私たちが取り組んできた作品を皆さんと共有できることに胸が躍ります」


「ブレナンと私は、キャスリーン・エドワーズの音楽に対する共通の愛を通じて、本当に絆を深めました」と、ワックスハッチーのシンガーソングライターであるケイティ・クラッチフィールドは付け加えます。「この曲は時代を超えた魅力を持つ非常に力強い曲であり、私たちの解釈をリリースできることにただただワクワクしています」

 

 

「Six O’Clock News」


ロサンゼルスで活動する電子音楽家/マルチ奏者、ブライアン・アレン・サイモンによるプロジェクト、Anenon。2010年以降、複数の実験音楽を中心とするLP/EPをリリースし、いずれも高評価を得ている。

 

ブライアンは、ローレル・ヘイロー、ジュリア・ホルター、リチャード・ヘル、モートン・スボトニック、ケリー・モランなどのアーティストのサポートで国際的に演奏している。


そのほか、サム・ゲンデル、ライラ・サキニ、ナイト・ジュエル、ミハ・トリファ、シャンタル・ミシェル、伝説的ポストパンクバンド、Vazzのヒュー・スモール(Melody As Truth、2021年)、ビジュアル・パフォーマンス・アーティストのスーザン・チャンチオロ(2022年、パリのザ・コミュニティでの彼女のショーのヴァーニサージュで共演)とコラボレーションしている。

 

ブライアンは2018年に坂本龍一の「Life, Life」を公式にリミックスし、2016年にはロサンゼルス現代美術館でアンビエント・ミュージック・パフォーマンスのシリーズ「Monument」の共同キュレーターを務めた。また、LAのラジオ、dublabの月例番組「Non Projections」の司会を長年務めている。


アネノンはニューアルバム『Dream Tempareture』を4月24日にリリース予定。6月には海外ツアーを敢行。英国/ストークにあるザ・オールド・チャーチで公演予定。


この度、最新アルバム『 Dream Temperature』についてミュージシャンに簡単に尋ねてみました。その中で、ミュージシャンの音楽観やアートの意義についての考えについても伺うことが出来ました。


ーー 改めてお伺いしたいのですが、アルバム『Dream Temperature』では、具体的にどのような音楽的な方向性を目指されていたのでしょうか?


Anenon:  『Dream Temperature』では、もう少し夜の雰囲気があり、テクスチャーを重視し、自由なサウンドを目指しました。


重厚なサブベースに、その上で変化するテクスチャーとメロディーが重なるようなイメージです。前作は完全にアコースティックな作品でしたが、ウィンドシンセサイザーと、その全音域で良い音を出せる可能性を発見したことが、このサウンドを追求するきっかけとなりました。 


ーー今作では、前作に比べてテナーサックスの存在感が際立っています。演奏者として影響を受けたアーティストはいますか?また、その影響は今作においてどのように反映されたのでしょう?


そうですね、このアルバムでテナーサックスがフィーチャーされているのは3曲だけですが、おっしゃる通り、レコードが終わった後も長く耳に残るサウンドの一つです。 テナーサックスは私のメインの楽器となり、最も練習している楽器ですが、最近はピアノも私の人生において大きな部分を占めるようになりました。


長年にわたり、キース・ジャレット、デヴィッド・S・ウェア、バーリアル、クリス・エイブラハムズがパフォーマーとしての私に最も影響を与えてきましたが、率直に言って、スタジオで作品を作ったりライブで演奏したりする際は、そうした影響を忘れようと努めています。とはいえ、彼らは今や私の血筋の中に確かに存在しています。 


ーーこのアルバムでは、ウィンド・シンセサイザーが比較的大きな役割を果たしており、時には命の息吹のように感じられます。なぜ今回の作品にこのシンセサイザーを取り入れることにしたのですか?


これはまさに魔法のような楽器だと思います。箱から取り出した瞬間、すぐに可能性が広がりました。私はキーボードベースのシンセサイザーやモジュラー・セットアップはあまり好みではないのですが、ブレスを使ってメロディやテクスチャー、ベースラインをすべて引き出せるというのは、まさに目から鱗が落ちるような体験でした。 


ーー「Dream Temperature」にはいくつかのフィールドレコーディングが使用されています。ビバリーヒルズ、サルデーニャ、そして日本など、幅広い場所からの録音を取り入れているようですが、フィールドレコーディングを行う時、どのような点を楽しんでいますか?


フィールドレコーディングは、自分の個人的な生活を即座に楽曲に刻み込む手段として機能すると感じています。自然の中で、自分自身の視点から収録された音源を、他人が再現することは不可能です。私たちは皆、内面と外面のハーモニーと共に振動しており、どんな録音素材を使っても、それを組み合わせる「音楽」とは相性が良いのです。 


ーー前作に続き、今回のアルバムにもいくつかのピアノ曲が収録されています。特に最後の曲は、清々しい余韻を残してくれます。ピアノ曲を作曲する際、どのようなことを意識していますか?


先ほども触れましたが、アコースティックピアノは私の家庭生活において大きな存在となっています。父が亡くなった約5年前にピアノを購入して以来、毎朝コーヒーが淹れるのを待つ間から、ほぼ毎日弾いてます。 実はピアノで何かを作曲することはなく、このアルバムの曲も含めてすべて即興演奏です。


また、最後の曲についても同感です。あれはアルバムで最後に録音した曲でもありました。レコーディング期間の締めくくりとなった曲で、今でもその余韻を感じています。 


ーー個人的には、このアルバムはジャズ、クラシック、そしてエレクトロニック・ミュージックの間にあるような気がします。10年以上にわたるあなたのキャリアを振り返って、音楽スタイルはどのように進化してきたと思いますか?


ありがとうございます。私も同感です。あらためてキャリアを振り返ると、不思議なほどシンプルに感じられます。ビート作りを始めた初期の頃からずっと直感に従ってきただけで、当時の音楽にはあまり共感できなくなりましたが、それでもやはり「自分らしさ」は残っていると思います。息遣いやテンポは今も変わらず自分そのもので、そのことがとても興味深いと感じています。 


ある時点で、スタジオでのビート作りや純粋なエレクトロニック・ミュージックにマンネリを感じ始め、リード楽器やピアノのような、より触覚的なアコースティックなプロセスに憧れるようになりました。『Dream Temperature』を作った時は、過去のエレクトロニックな世界と現在のアコースティックな世界を融合させたかったのです。


ーー音楽制作であれ、ライブパフォーマンスであれ、ミュージシャンとして最も充実感を感じる瞬間は?また、音楽を通じてリスナーに何を伝えたいとお考えでしょうか?


アルバム制作、つまり最初から最後まで物語を紡ぎ、何ヶ月も特定のサウンドの世界に浸りきることが本当に大好きです。


ライブ演奏も大好きですが、会場やシチュエーションにはますますこだわりを持つようになりました。 今は友人たちと型破りな場所で演奏し、その瞬間だけ音楽を生き生きとさせるのが好きです。


「エレクトロニック」という傘の下に存在するアーティストとして、ライブで演奏する際に人々がレコードやその残響を聴きたがることに、もどかしさを感じます。年を重ねるにつれて、シンプルになってきて、テナーサックスで20分間ソロを演奏したり、親しい友人と即興演奏をしたりすることが、今一番ワクワクする瞬間。 とはいえ、ある意味では、音楽に対して本当に満たされたと感じたことはありません。たぶん、だからこそ、作り続けてしまうのでしょう :) 


私が、リスナーの皆さんに伝えたいのは、''ありのままの自分でいて、自分の心に従ってほしい''ということです。最も深い音楽は、いかなる枠組みやジャンル、固定観念の外にも存在し得ます。そんなものは必要ないのです!


かねてから、私は、芸術や社会は直線的に進歩していくものだと思っていましたが、2026年になった今、そうではないかもしれないと気づきました。 社会としては、大きく後退してしまったけれど、それでも芸術は、依然として自由でいられる場所であり続けています。私の芸術を通じて、人々が「自分には何でもできる」と気づいてほしいのです。自分の心に従い、本当に作りたいものを創るアーティストが増えれば増えるほど、この世界はより良い場所になるはずです。 




▪︎EN

Anenon is Brian Allen Simon, whom since 2010 has released multiple LPs and EPs, all critically acclaimed. Brian has performed internationally in support of artists such as Laurel Halo, Julia Holter, Richard Hell, Morton Subotnick, Kelly Moran, and many more. 


He has collaborated with Sam Gendel, Laila Sakini, Nite Jewel, Miha Trifa, Chantal Michelle, Hugh Small of legendary post punk band Vazz (Melody As Truth, 2021), and with the visual and performance artist Susan Cianciolo, during the vernissage of her show at The Community in Paris, 2022. 


Brian officially remixed Ryuichi Sakamoto's "Life, Life" in 2018, and In 2016 was co-curator of Monument—a series of ambient music performances at the Museum of Contemporary Art, Los Angeles. He is also a long time host of Non Projections, a monthly show on LA radio institution dublab. Brian lives and works in Los Angeles.


Anenon is set to release their new album, *Dream Temperature*, on April 24. They will embark on an overseas tour in June, with a scheduled performance at The Old Church in Stoke, UK.


--I’d like to ask you again: what specific musical direction were you aiming for with the album ''Dream Temperature''?


Anenon: With Dream Temperature, I was after something a bit more nocturnal, textural and free. Heavy sub bass with shifting textures and melodies on top. My last album was entirely acoustic, so my discovery of the wind synthesizer and its capabilities to sound good in all ranges led me to go after this sound. 


-- The tenor saxophone has a more prominent presence on this album than on your previous work. Are there any artists who have influenced you as a performer? Also, how did that influence come to life in this album?


Well, the tenor is only featured on three tracks on this album, and yet I do agree with you—it is one of the sounds that stays in my mind’s ear long after the record is over. The tenor has become my main instrument, and it is what I practice the most, although the piano has become a bigger part of my life recently as well. Keith Jarrett, David S. Ware, Burial, Chris Abrahams have influenced me the most as a performer over the years, but frankly I try to forget my influences when making work in the studio or performing live. But they all do exist in my bloodline now. 


-- On this album, the wind synthesizer plays a relatively significant role and sometimes feels like a breath of life. Why did you decide to incorporate this synthesizer into your latest work?


I think this is an absolutely magical instrument, and it really opened up possibilities quickly for me the moment I took it out of the box. I’m not a big fan of keyboard based synthesizers nor modular setups, so being able to trigger melodies, textures, and bass lines all with my lungs was a complete revelation. 


--*Dream Temperature" features several field recordings. It seems you’ve incorporated recordings from a wide range of locations, including Beverly Hills, Sardinia, and Japan. Could you tell us what you enjoy about doing field recordings?


I find field recordings function as a way to stamp my own personal life onto a piece of music instantly. No one else can duplicate a recording that has been taken out in the wild from one’s own perspective. We all vibrate with our own inner and outer harmonies, and no matter what the recording is that I use, it always sounds good with whatever piece of “music” I mesh it with. 


--Following your previous album, this one also includes several piano pieces. The final track, in particular, leaves a refreshing afterglow. What do you keep in mind when composing piano pieces?


As I mentioned earlier, piano has become a large part of my life at home. I purchased a piano about five years ago after my father passed away, and I play it almost every day, starting with while I wait for my coffee to brew in the mornings. I don’t actually compose anything on the piano, everything is improvised, including the pieces on this album. I agree about the last piece as well, which was also the last thing I recorded for the record. It marked the end of the recording period, and I still feel the glow from it today. 


--Personally, I feel this album sits somewhere between jazz, classical, and electronic music. Looking back on your career spanning over a decade, how do you think your musical style has evolved?


Thank you, I would agree with that too. It’s strange and yet simple looking back on my career. I’ve just followed my intuition since the earlier days of making beats, and while I don’t connect with my music of that era so much, I have to say that it still sounds like me. The breath and tempo are very much me still, and I find this fascinating. At a certain point, beats and purely electronic music began to feel stale for me in the studio, and I started to long for more tactile acoustic processes like reeds instruments and piano. When making Dream Temperature, I wanted to meld my electronic world of yesterday with my acoustic worlds of today.


--Whether it’s music production or live performances, when do you feel most fulfilled as a musician? Also, what do you hope to convey to your listeners through your music?


I really love making albums, telling a story from beginning to end, and living within a certain palate of sound for months and months on end. I love to play live as well, but I am more and more picky about spaces and scenarios. I like to play in unorthodox settings now with friends, and let the music live for just that moment. As an artist who exists somewhere under the “electronic” umbrella, I find it frustrating that people want to hear the record or echoes of my records when I play live. As I get older I am simplifying, and just playing solo on the tenor saxophone for 20 minutes, or in an improvisation with a good friend is what gets me most excited. In a way though, I’m never truly fulfilled with music. Perhaps this is why I keep making more :) 


What I would like to convey to my listeners is for them to just be themselves, and to follow their hearts. The deepest music can exist outside of any structures or genre or box. We don’t need these! I used to think that art and society progressed in a linear fashion, and in 2026 I see that this isn’t the case. We have regressed so much as a society, and yet art still remains a place to be free. I want my art to make people realize that they can do anything they want. The more artists who follow their heart and make the things that they truly want to make, the better off this world will be. 



▪︎『Dream Temperature』- NEW ALBUM OUT APRIL 24 VIA  ''TONAL UNION(UK)''




 



▪︎Work Details

サックス奏者、プロデューサー、作曲家ブライアン・アレン・サイモンは、より暗い色合いを探求し、覚醒状態と変性意識状態を変容した意識状態をスタジオのベール「アネノン」の下で転調する。深く喚起的な新作アルバム『ドリーム・テンプラチャー』において電子処理を前面に押し出し、デジタル化された管楽器とこの世のものとは思えないアトモスフィアを導入。これは彼の革新的な2010年代中盤~後半の作品以来となる試みだ。


楽器と非現実的な雰囲気を提示する。これは彼の革新的だった2010年代中盤から後半の作品を以来初めて聴かれる内容だ。生まれ育ったロサンゼルスに長年在住するブライアン・アレン・サイモンは、アネノン名義で活動し、高く評価された『ペトロル』(2016年)、『Tongue』(2018年)、そして内面を揺さぶる美しい『Moons Melt Milk Light』(2023年)を発表し、揺るぎない音楽的対話を続けてきた。その前作は意図的な簡素化と完全なアコースティックへの逸脱だった。


しかし『ドリーム・テンプラチャー』では、ブライアンが新たに発見したウィンドシンセサイザーを中心的な作曲ツールとして活用し、アコースティックピアノとテナーサックスを組み合わせている。本作の全電子音はブライアンの肺によって駆動され、彼の肺がトリガーとなり、異世界的なシンセサウンドを生み出し、変調を加えている。


アルバムの電子音は全てブライアンのブレスによってトリガーされ、表現豊かな呼吸制御によって変調され、追加のテクスチャ要素とフィールドレコーディングのための処理室として機能するラップトップを経由して導かれる。テクスチャー要素とフィールドレコーディングを加える。自由自在に漂いながらも重くのしかかる感情的な共鳴が『ドリーム・テンプラチャー』を最初から最後まで貫き、半ば記憶に残る夢の夜からまだ重く目覚めた感覚を呼び起こし、この状態で一日を過ごす。


この状態で一日を過ごす感覚を呼び起こす。サイモンはアルバムの空間的な声の在り方を、冒頭のタイトル曲で早くも描き出す。深くも凝縮されたこの楽曲は、至近距離で唸るデジタルサックスの荒々しい音色から生成され、霞んだテクスチャーとサブベースが絡み合う。


都会的な荒さと牧歌的な漂う音の揺らぎが全編にわたり感じられ、内省的な思考のように流れる各トラックは、緊張感と幽玄さを併せ持つ質を育み、アルバムの基盤を成す。間奏的なソロ/パートソロのピアノ即興『ラスト・サン1』と『2』は緩衝的なデジタル音風景に隣接して配置されている。それらの柔らかく、なお処理された音色が憂いを帯びた表層を突き抜け、対照的な優しさを提示する。それは坂本龍一の優雅さ、ECMのキース・ジャレットの精神的な厳格さ、そしてエイフェックス・ツインを思わせる一触を彷彿とさせる。


『ヌル・パール 1+2』では初めてアコースティック管楽器が登場し、テナーサックスの華麗な旋律がノイズのドローンと並置され、虚無に向かって叫びながら、音符が失われたデジタルデータのように再び浮かび上がる。


本作は2024年9月から2025年10月にかけて、夕暮れ時あるいは夜間に自宅で録音された。ブライアンは新たな音響的野望の中で、顕著な質感を探求するため、長く親密なスタジオ時間を切望していた時期であった。テクスチャーの質を追求する中で、 顕著な音響的野望を見いだそうとしていた。


『When The Light Appears, Boy』は、この深遠な宇宙のさらなる証拠を示し、アルバムの核心となる青写真が音響的に刻まれるにつれ、より荒削りなエッジを露わにし、アルバムの本質的な青写真が音響的に刻まれる。広がりゆく風のシンセがリスナーを包み込み、夢幻的で幽玄な雰囲気が『Toyama』を覆う。


このサウンドはポスト・ダブステップ時代の巨匠たち、例えばBurialやより孤立感を増し包み込むこの音楽は、同時に混乱させながらも温かく誘う。本質的に音響の日記作家である彼は、個人的なフィールドレコーディングをサルデーニャ、日本、ビッグ・サー、ロサンゼルスで録音されたフィールド・レコーディングも、アルバム全編の31分間にわたり予期せぬ瞬間に交錯する。


『ドリーム・テンプラチャー』は、サイモンの電子音楽とアコースティック音楽の両方の実践が、初期作品に似た再構築された電子音は、幽玄で優雅でありながら、なお深く個人的なものである。サイモンは音楽の道を歩む実験的な異端児としての存在感を揺るぎなく示している。この音楽は確固として未知のオーラを放ち、放電を待つ未開発のエネルギー源のように。アネノンはいう。「ある意味で、このアルバムは個人的記憶と集合的現実の歪みから本質を導き出している。」


ブライアンは故アーティスト、エテル・アドナンの「夢を見ている時、その内容を理解することは稀だ」という言葉に心を奪われた。だが目覚めた時、夢の温度をほぼそのまま内に宿している」という言葉に心を奪われた。


彼は続ける。「聴いていることすら忘れさせる音楽を作りたかった。実際に没入し、いつ始まったのか、いつ終わったのかを忘れてしまうような音楽。聴き終わった後、聴き手が自らの本質を感じ取れるような音楽を」


▪︎EN(Excerpt)


Los Angeles Saxophonist, producer and composer Brian Allen Simon explores darker hues, transposing waking and altered states under his studio veil Anenon. On the deeply evocative new album ‘Dream Temperature’, he shifts electronic processing to the foreground, introducing digitized wind instruments and unworldly atmospherics, not heard since his innovating mid-late 2010s output. The full album will be released April 24th on Tonal Union.  


The track ‘Dream Temperature' features wind syntheizer and digital soprano sax played like an actual soprano sax over layered synth textures and deep bass.  Compact and deep it serves as a mission statement for the rest of the record. As Simon explains,  “In a sense, this album derives essence from the distortions of both personal memories and collective realities. I wanted to make music that triggers the listener to forget that they’re even listening to it, but rather dreaming through it. Music that you actually get lost in, forgetting when it started and when it ends. I want the listener to feel their own essence after listening to it.”


Brian was taken by a quote of the late artist Etel Adnan that said “When you dream, you rarely know it. But when you wake, you carry within yourself almost the temperature of the dream.”


He continues: “I wanted to make music that triggers the listener to forget that they’re even listening to it, but rather dreaming through it. Music that you actually get lost in, forgetting when it started and when it ends. I want the listener to feel their own essences after listening to it.”


ルーツ・ミュージックを基盤とする米国のハートランドバンド、マット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブス(Matt Jones And The Bobs)が新曲「Wicked Ways」をミュージックビデオと合わせて公開しました。マット・ジョーンズ・バンドのサウンドはクラシックなロックのカッコ良さを伝えようとしている。70年代のUSロックを知らない人にもおススメしたいグループだ。


素朴なギター・リフ、親密なボーカル、そして開放感あふれるドラムを土台に据えたこの魅力的なアメリカーナ・シングルは、温かくアナログな輝きを放っています。「これは、家族、許し、より良い人間になるために必要な強さへのオマージュです。 恥じることなく過去を振り返り、自分たちのルーツを受け入れつつ、同時に今の自分たちも肯定すること。過去を忘れずに乗り越えていく過程で、兄弟愛と寛容さを讃える曲です」とマット・ジョーンズは語っています。


バージニア州南西部の中心地を拠点とするマット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブスは、故郷の物語が持つ時代を超えた温かさと、日常の美しい本質を捉えている。 

 

アヴェット・ブラザーズやオールド・クロウ・メディシン・ショーといったアメリカーナのストーリーテラー、ジョン・プラインやジャクソン・ブラウンの深い作詞作曲、そしてザ・バンドやトム・ペティといったクラシックなフォークロックのアイコンたちから影響を受け、バンドは心、気骨、そしてメロディーを融合させ、彼らが育った90年代のオルタナティブロックやポップへのオマージュも込めている。 バンドの最新シングル「You Stood Still」は、リリースから1ヶ月で10万回以上の再生回数を記録した。 


バージニア州南西部の中心地から登場したマット・ジョーンズ&ザ・ボブスは、2011年の結成以来、生々しい感情と時代を超えた物語を織りなしてきた。 バンドはラドフォード大学在学中に結成された。マット・ジョーンズ(ボーカル、ギター)と、親しみを込めて「ザ・ボブス」と呼ばれるバンドメンバーたちは、アメリカーナ、ルーツ・ミュージック、そしてクラシック・ロックへの共通の情熱を、リスナーの心の奥底に響くサウンドへと昇華させた。 


彼らがまだ大学生だった2014年にリリースされたデビューアルバム『Brother's Hymn』は、音楽の世界への旅の始まりを告げるものでした。小さな町の生活、愛、喪失、そして成長に伴う日々の葛藤の本質を捉えた楽曲群により、このアルバムは、その誠実な作詞作曲と力強いパフォーマンスで、瞬く間に熱心なファン層を獲得しました。 


しかし、若き日に活動を始めた多くのバンドと同様、彼らの前途には紆余曲折が待ち受けていた。長年にわたり音楽に没頭してきた後、2015年、マット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブスのメンバーは一歩引いて、それぞれが個人のキャリアやビジネス、起業活動に専念することとなった。 


バンドは活動休止期間に入ったが、長年にわたり共に音楽を作り上げてきた中で築かれた絆は、決して断ち切れるものではなかった。10年間、メンバーはそれぞれの世界で活躍したが、音楽への想いやルーツとのつながり、物語を紡ぐこと、そして共有した経験といったものは、常に心の奥底でくすぶり続けていた。

  

時は2024年。マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは再結成を果たし、新たなエネルギーと目的意識を持って、彼らの代名詞とも言えるサウンドを蘇らせた。

 

10年ぶりに音楽の世界に戻ってきたとはいえ、アメリカーナ、フォーク、サザン・ロックに根ざした彼らのルーツは、かつてと変わらず強固なままだ。 しかし、この新たな章には新鮮な変化がもたらされている。90年代の影響がさりげなく取り入れられ、グランジ特有の荒々しさが加わり、確立されたサウンドを補完するより豊かな楽器編成が特徴だ。それでも、彼らの音楽の核心は揺るぎない。それは、人生、愛、失恋、そして私たちを人間たらしめる勝利や試練の、感情的な本質を捉えようとする姿勢である。

  

バンドの楽曲制作はまさに象徴的であり、物語性と深い脆弱性が融合している。どの曲も一つの物語であり、マット・ジョーンズの極めて個人的な歌詞というレンズを通して、人間の経験の一端を垣間見せてくれる。愛や失恋の物語から、死や苦闘、そして前へ進むために必要な忍耐力への考察に至るまで、その音楽は聴く者の心に響き続けている。 そのサウンドは、どこか親しみやすくも新鮮な響きを帯びており、人生の浮き沈みを巡るノスタルジックな旅路は、まるで古くからの友人が耳元で囁いてくれているかのような感覚を覚える。

  

マット・ジョーンズ&ザ・ボブスの音楽は、単なる曲の集まりではありません。それは、人生の浮き沈みを再び体験するよう誘う招待状なのです。 このサウンドは、あなたを個人的な意味を持つ瞬間へと連れ戻し、人生の苦難や喜びが共感できるだけでなく、成長に欠かせないものであると感じさせてくれます。一音一音、彼らは聴衆に自分の物語を受け入れるよう誘い、その旅路で自分だけが孤独ではないという事実から安らぎを見出させるのです。

  

キャリアのこのエキサイティングな新段階へと踏み出すにあたり、マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは自らのルーツを尊重しつつ、新たな音楽の領域を探求し続けています。彼らは成長し、進化を遂げましたが、バンドの核心――そもそも彼らをこれほどまでに愛される存在にしたその魂――は、かつてないほど力強いままです。 マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは単に「復帰」しただけではない。彼らは今、かつてないほど力強く、決意を固め、世界へと自らの物語を届けるべく前進している。時代を超越しつつも新鮮な音楽を携え、彼らは2枚目のフルアルバム『Matt Jones and the Bobs』を皮切りに、リスナーの心に消えることのない足跡を残し続ける準備ができている。


最新シングル「Wicked Ways」は、心温まるアメリカーナ・ソングだ。マット・ジョーンズはこう語る。「この曲は、家族、許し、そしてより良い男になるために必要な強さへのオマージュです。恥じることなく過去を振り返り、自分たちのルーツを受け入れつつ、同時に今の自分たちも肯定することについて歌っています。過去を忘れずに乗り越えていく過程における、兄弟愛と寛容さを称える曲です」

 

「Wicked Ways」 

 

 

▪EN

 

Matt Jones and the Bobs, a heartland band rooted in roots music, have released their new song “Wicked Ways” along with a music video. The Matt Jones Band’s sound aims to capture the coolness of classic rock. This is a group I’d recommend even to those unfamiliar with 1970s American rock.


Emerging from the heart of Southwest Virginia, Matt Jones and The Bobs have woven a tapestry of raw emotion and  timeless storytelling since their formation in 2011. The band first came together during their time at Radford University,  where Matt Jones (vocals, guitar) and his bandmates—affectionately known as “the Bobs” —took their shared passion  for Americana, roots, and classic rock, and transformed it into a sound that resonated with listeners on a deeply  personal level. 

 

Their debut album, “Brother's Hymn”, released in 2014 while they were still in college, marked the  beginning of their journey into the world of music. With tracks that captured the essence of small-town life, love, loss,  and the everyday struggles that come with growing up, the album quickly gained a loyal following for its honest  songwriting and gritty performances. 



But like many bands that start in their youth, the road ahead was not without its twists and turns. After years of intense  dedication to their music, the members of Matt Jones and The Bobs took a step back in 2015, each pursuing individual  careers, business ventures, and entrepreneurial pursuits. 

 

The band entered a hiatus, but the bonds forged through  years of creating music together remained unbreakable. For ten years, the members thrived in their own respective  worlds, but the pull of music—the connection to their roots, their storytelling, and their shared experiences—was  always there, simmering under the surface.
  
Fast forward to 2024, and Matt Jones and The Bobs have reunited, bringing their signature sound back to life with  renewed energy and purpose. Though they’ve stepped back into the world of music after a decade, their roots in  Americana, folk, and southern rock remain as strong as ever. 

 

However, this new chapter carries fresh twists—a subtle  infusion of 90s influences, a bit of grunge grit, and more expansive instrumentation that complements their established  sound. The heart of their music remains, however, unwavering: a commitment to capturing the emotional essence of  life, love, heartbreak, and the triumphs and trials that make us human.


  
The band’s songwriting is nothing short of iconic, blending storytelling with profound vulnerability. Each song is a  narrative—a glimpse into the human experience through the lens of Matt Jones' deeply personal lyrics. From tales of  love and heartbreak to reflections on death, struggle, and the perseverance needed to keep going, the music  continues to strike a chord with listeners. It’s a sound that feels both familiar and fresh, a nostalgic journey through the  ups and downs of life that feels like an old friend whispering in your ear.


  
The music of Matt Jones and The Bobs isn't just a collection of songs; it’s an invitation to relive the highs and lows of  existence. It’s a sound that will transport you back to moments of personal significance, where the struggles and joys  of life feel not only relatable, but necessary for growth. With each note, they invite their audience to embrace their own  stories, finding solace in the knowledge that they are not alone in the journey.


  
As they step into this exciting new phase of their career, Matt Jones and The Bobs continue to honor their roots while  exploring new sonic territory. They’ve grown, they’ve evolved, but the heart of the band—the soul of what made them  so beloved in the first place—is as powerful as ever.

 

Matt Jones and The Bobs aren’t just back—they’re  stepping forward, louder, stronger, and more determined than ever to share their stories with the world. And with  music that is as timeless as it is fresh, they are ready to continue leaving an indelible mark on the hearts of their listeners beginning with their second full studio self titled album "Matt Jones and the Bobs".



Their latest release "Wicked Ways" is a heartfelt Americana single. Matt Jones shares, "The song is our nod to family, forgiveness, and the strength it takes to become better men. It’s about looking back without shame and owning where we came from, but also who we’ve grown into. It celebrates brotherhood and grace during a period of outgrowing our past without forgetting it.” 

 


More Eazeは、ブルックリンを拠点とするサウンドアーティスト兼マルチ・インストゥルメンタリスト、マリ・モーリスによるソロプロジェクトである。アンビエント・ポップから脱構築的なサウンド・コラージュまで多岐にわたる彼女の数多くのソロ作品やコラボレーション作品は、生活の環境音、アコースティックなオーケストレーションや楽器演奏、エレクトロニクスを織り交ぜ、冒険心あふれるテクスチャー豊かな楽曲を紡ぎ出している。 マリ・モーリスの音楽は、ありふれた日常と幽玄な世界の間をシームレスに行き来するサウンドデザインを通じて、親密さ、憧憬、そして抽象的な感情が激しい生へと変容していくというテーマを探求している。


『sentence structure in the country』は、プレイヤーとして、そして音楽的思考家としてのモア・イーズの比類なき才能を決定的に示す作品である。 このアルバムは、親しみやすいウィットと鋭い作曲センスで、演奏とコラボレーションにおける恍惚感を存分に味わい、各パッセージに優しさ、苛立ち、そして喜びを吹き込んでいる。タイトルは、ルビオの音楽制作を形作った土着の表現へのオマージュである。コルトレーンが言ったように、すべてはそれに関係している。


ルビオは伝統的なフォークやカントリーの曲でフィドルを弾きながら育った。本作『Sentence Structure in the Country』の演奏スタイルは全く異なるものだが、フォークの形式の進化に対する彼女の敬意と演奏には、そうした経験が今も色濃く息づいている。 ルビオの制作方針を形作ったのは、厳選された共演者たちだった。


エレクトリック・ギター、ピアノ、ボーカルを担当するウェンディ・アイゼンバーグ、エレクトリック・ギターのヘンリー・アーネスト、チェロのアリス・ゲルラック、アコースティック・ギターのジェイド・グーターマン、そしてドラムのライアン・ソーヤー。


ルビオは、共演者たちがどのようにしてアルバムのサウンドを形作っていったかを次のように説明する。 


「ジェイドやウェンディがコードを奏でる方法は、この文脈では私が弾くのとは異なるものもあるけれど、それこそが重要な点なの。彼女たちの演奏は、私が作り出しているものを再定義するだけでなく、私自身を定義する手助けもしてくれるの」


ソーヤーのドラムは「distance」や「biters」といった曲で、ダイナミックな波のように跳ね回り、クレッシェンドを奏でる一方、ゲルラックのチェロは、タイトルトラックの歪んだホーダウンに切迫したメロディーを吹き込んでいる。 


フリーフォームな「crunch the numbers」は、アーネストの和声進行によって、意外なほど穏やかなロマンティシズムへと転じる。「the producer」のような楽曲では、貢献者、プロデューサー、作曲家の境界線をまたぐ、広大なアートワールドにおける自身の立場について思索を深めつつ、ルビオは一歩引いて繊細なポップ・ソングの各要素を際立たせることで、その手腕を披露している。


『sentence structure in the country』は、こうした数々の気づきや視点、そして経験を通じて得られた言葉を、新たな文脈で用いることに焦点を当てている。音楽性は数年にわたって進化を遂げた。それぞれのバージョンは、ルビオのパフォーマンスの文脈と、彼女が共演者として選んだミュージシャンたち双方の影響を受けている。テンポの変化を伴いながら、楽曲の構造は、ルビオが楽曲が向かおうとする方向に従う中で、レコーディングされたアレンジへと発展していった。 


楽曲自体はルビオ自身の変遷によって新たな形を帯びていった。全米を横断する引っ越しや、仕事、人間関係の変化によって彼女の視点は変わり、個人的にも音楽的にも、新たな視点が創造的な探求の豊かな土壌となった。ルビオがこの作品について語る言葉には、個人的な側面と音楽的な側面が共存している。


「大きな変化に直面している最中は向き合うのが難しいので、事後にじっくりと振り返り、それを乗り越えていく必要がある」という個人的な側面と、 「素材の核心や、それが私に伝えようとしていることを手放すことはできなかった」


様々な編成で演奏することで、楽曲の真の核となる要素を見極めることができ、そうして曲もまた独自の生命を宿すようになった。それはフィードバックループのようなものだ。演奏を続けるにつれ、その楽曲がどのようなものになり得るかという先例が築かれていく」


『sentence structure in the country』は、それぞれが美しく具現化された、完結した世界である楽曲の集大成だ。ルビオの巧みで品のあるアレンジは、自己陶酔的な感覚を一切排しつつ、彼女の影響源や執拗なまでの関心を驚くべき整合性をもって露わにしている。 


彼女の音楽は、豊かな作曲や装飾的な華やかさだけでなく、余白のあるミニマルな美しさの瞬間にも密度を宿している。『sentence structure in the country』は、深く心を揺さぶる不朽の楽曲を核に、幽玄なエレクトロニクスと土の香るアコースティックサウンドが織りなす、質感の驚異であり、モザイクのような作品だ。


more eaze 『sentence structure in the country』 Thrill Jocky/HEADZ(JP)

 


この数週間は保守的な音楽性に準じたリリースが相次いでいたが、マリ・モーリスのプロジェクト、more eazeの最新アルバム『sentence structure in the country』はその限りではない。結果的に一週間で''手のひら返し''をすることになった。

 

もっとも、モーリスが現在、ブルックリンを拠点に活動するとはいえ、テキサス、あるいは西海岸や東海岸と活動拠点を次々と変更していることを考えると、必ずしも一地域に根ざしたアーティストとは言いがたい。こういった多趣味な側面は、このアルバムを聴く上での重要なポイントとなってくるかもしれません。また、モア・イーズは、昨年、Claire Rouseyとのコラボレーションを行っていることからも分かる通り、アメリカの実験音楽やアートポップシーンの旗手とも言えるポジジョンに属する。また、その活動もまた、ソロ活動ではありながら、バンド単位での録音を行うというように、必ずしもソロという一面に絞られるものでもないでしょう。

 

マリ・モーリスは、聞くところによると、大学か大学院でミュージックコンクレートを学習しており、これらの現代音楽に関する蓄積を活かし、シンセサイザーの信号をマニュピレートした素材を取り入れ、また、学生時代に夢中になったというフォークミュージックや、ペダルスティールやフィドルの演奏を活かし、特異な音楽空間を提供する。


移り気の早さは群を抜き、最初は前衛的なエレクトロニックであった音楽性が、途中からはアヴァンフォークへと変化したりもする。ジャンルを規定しないスタイルはまた、実験音楽の再解釈から現代的なポップソングへと変遷することもある。オートチューンをてきめんに取り入れたインディーポップソングは、クレア・ルーセイのアンビエントポップのスタイルとも共鳴する場合がある。それらはアメリカで勃興した新しいアートポップの形式の一つでもあるようだ。

 

しかし、モア・イーズの音楽的なアプローチはどちらかと言えば、自らの持つ音楽的な蓄積をブロックのように積み上げていくような趣旨ではないらしい。 明確に言えば、マリ・モーリスの全般的なコンポジションは、脱構築主義やポストモダニズムの領域に属する。それらは、 自らの積み上げてきたものを披瀝するのではなく、むしろ明確に壊し、再構築するという趣旨である。


一般的な音楽の常識や倫理観を疑問視し、それらに問いを投げかけ、それらは本当にスタンダードであったのかを見つめ直す。おのずと、それらはアートのカットアップコラージュのような別の素材を組み合わせて、新しい何かを提供するという二次的な創作にならざるを得ない。しかし、それらはヒップホップやソウルミュージシャンが長い時間をかけて追求してきた創作性でもある。また、アヴァンギャルドジャズやフリージャズも同様でしょう。つまり、今作は、ある音楽の規定からの解放という意味合いを帯び、一般的な解釈に別の視点を付与する。しぜん、今作に触れるリスナーは今まで気づかなかった音楽的な視点を獲得することでしょう。

 

しかし、実験音楽というカテゴライズがなされると仮定しても、このアルバムには音楽の持つ純粋な喜びに満ちている。それは結局、制作者あるいはバンドメンバーが楽しんでいるから、その雰囲気が聞き手に伝播する。前衛主義に縁取られた電子音楽のパターンも存在するが、それとともに音楽的なポップネスも随所に見出すことが出来る。アルバムには、いくつかのオートチューンポップが登場し、難解になりがちな作風に近づきやすさや親しみやすさをもたらしている。

 

本作の冒頭を飾る「leave(again)」は、短いイントロダクションであり、ミュージック・コンクレートの様式を用い、ピアノ、オルガン、シンセなどを使用した現代的なポップソングに属する。マニュピレートされた電子音がモールス信号のように敷き詰められる中、ジャジーな雰囲気のムードたっぷりのボーカルが乗せられる。ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングのように全体的なトラックのキャンバスに点描される電子音、壁に絵の具が打ち付けられるような不規則なリズムパターン、ピアノの不協和音のコラージュ、ゴスペルのような雰囲気を帯びるオルガンなど、現代的な洋楽のポップソングのエッセンスをカラフルに散りばめる。


言ってみれば、ごった煮のサウンドなのだが、そのアートポップの手法には傾聴すべき何かが込められている。ボーカルは比較的落ち着いていて、内省的な雰囲気に満ちている。これらはやはり、全体的には現代的なアルトポップの音楽性を追求していることがなんとなく伝わってくる。全般的なミニマルミュージックの手法とミュージックコンクレートとポップのクロスオーバー。これぞまさに、新時代のアンディ・ウォーホールのポップアートともいうべき形式である。

 

脱構築主義を組み直す、再構築主義とも呼ぶべき作風は、続く「distance」でも健在である。オシレーターを用いたやレトロなシンセがアンビエントのように音像を拡大させていき、独特なドローン音楽のように見立てられるイントロ、そして、ソフトな質感を持つオートチューンのボーカルが続き、クレア・ルーセイと共鳴するような音楽性が形作られている。 ウェイブのような波打つシンセがサウンドデザインのように華麗に揺らめく、その音の波の中で、ゆったりとしたボーカル、どことなくドリームポップのような淡い雰囲気を持つボーカルが混在している。


また、ソロ作品でありながら、バンドアンサンブルも活躍し、この曲では、ジャズアンサンブルのようなスタイルが反映されている。ブレイクビーツのように不定期なリズムを刻むドラム、薄くコラージュされたギターを敷き詰めながら、精妙でクリアな音楽性が構築されている。実験音楽のアプローチを選んでいるにも関わらず、聴いていてそれほど嫌な感じがせず、それとは対象的に軽やかなエネルギーが音楽に充溢している。これらは全体的なアルバムにも一貫していて、曲の構成そのものは混沌としているが、その中から温和なエネルギーが汲み取れる。  

 

 「distance」

 

 

 

「bad friend」でもオートチューンを用いたエレクトロニックのポップソングが続き、この曲ではウージーな雰囲気を持つギターがボーカルと呼応しながら、穏やかな音像を描き出す。

 

エレクトロニック単体として聴いても前衛的な曲がある。「crunch the numbers」では、同じく波打つようなシンセサイザーが重層的に重なりあい、アトモスフェリックな音像を創り出す。全般的には、トラックメイカーとしての性質が際立ち、全体的な音のレイヤーを操作し、音を明瞭にしたり、それとは対象的に、フィルター効果で曇らせたりしながら、音の印象を変化させていく。また、アンビエント風の一曲であるが、途中では、制作者が得意とするミュージックコンクレートが登場し、ドラムやストリングの断片的な素材がパーカッシブな効果をもたらす。

 

どちらかと言えば、ジャズトロニカ(Jazztronica)のような音楽性に位置するが、やはりオートチューンのボーカルが登場するところを見るかぎり、ポップな印象を持つ曲に仕上げられている。このアルバム全体を聞く限り、ボーカルそのものがアンサンブルに組み込まれ、素材やマテリアルのように解釈される。これらもまた、結局、ヒップホップやネオソウルを経過した''現代的なアートポップ運動の一貫''として解釈することが出来るはずだ。音楽的な楽しみとしては、実際に''聞く''というよりも、''雰囲気に浸る''という認識の行動に近い。音階ひとつひとつを追ったり、構成的な美しさを楽しむというより、遠くでぼんやりと鳴っている音楽を感覚的に味わうという行為に属する。これらは最近のアメリカのアンビエントポップのスタイルでもある。

 

故に、音階の連続や規則的な拍動(リズム)は意味をなさない場合が多い。これは音楽の感覚的な側面を抽象的に表現した、「Abstract Pop(アブストラクト・ポップ)」の台頭なのである。また、前衛主義の中で、ノイズが強調されることもある。「biters」は、やはりオシレーターを活用した、水の上に浮かび上がる泡のようなモコモコしたシンセサイザーがイントロで出てくる。

 

それらは、まるでジャック・アタリが指摘した「社会的なノイズ」の概念を反映するかのように、楽曲全体に歪みをもたらす。その間にぽっかりあいたサイレンスから、やはりこのアルバムのシンボライズでもあるオートチューンのボーカルが登場する。

 

驚きに満ちたサウンドは、現代アートのような形で展開され、時間ごとに、姿を変え、また、形を変え、無形物としての音楽を作り上げる。かと思えば、曲の途中では、それらのノイズミュージックを放棄し、マンチェスターのアートポップグループ、Carolineのようなアヴァンフォークの音楽性へと接近していく。これらの先の読めないサウンド、あるいは流動的なサウンドは、そもそも音楽性を一つに規定しないという明確な意図が込められているような気がする。

 

アルバムは、現代的なインディーポップアルバムと思わせておいて、見事なほどにその期待を裏切る。実際は音楽における軽さと重さの二律背反や両側面を示唆するような作品となっている。また、多彩な音楽性を繰り広げ、めくるめくワンダーランドのような不思議な世界を楽しむことが出来る。アートミュージアムか、インスタレーションイベントか、遊園地なのか。どれとも言い難い奇妙な音楽世界は、現実世界とは一定の距離を取りながら、続いていく。リアリティとフィクションの間にあるような不思議な音楽がアルバムの中盤まで一貫して続いていく。

 

アルバムの後半には良曲が多い。その筆頭である「the producer」は、マシンビートをベースにした、bar italia風の一曲である。ロンドンのバンドの場合はロック的な質感を帯びるが、このアーティストの手にかかると、独特なエモーションに満ちたインディーポップソングに様変わりしてしまう。ローファイな雰囲気の楽曲であるが、弦楽器を追加して、ロマンティックな雰囲気を添えたり、移調するフレーズを重ねたりと、作曲としても様々な工夫が凝らされている。

 

これらの曲は飽くまで作曲の卓越性ではなく、音楽の純粋な楽しみに焦点が置かれている。エレクトロニックやミュージックコンクレートと並んで、モア・イーズの音楽性のもう一つの不可欠な要素、アメリカーナやフォークミュージックの影響を込めた「a chorale」は、ロマン派の作曲家の弦楽カルテットに代表されるような音楽を、フォークミュージックの通奏音やドローン音楽の視点から組み直している。そもそも、クラシック音楽ですら、民謡やフォークソングと結びつかない時代はほとんどなかったのに、現代音楽とフォークミュージックの融合というスタイルが、音楽形式として余りに過小評価されているような気がしてならない。チェロを中心として、フィドルのような楽器が重なり、クラシックとフォークの中間の音楽性が形成される。

 

アルバムの後半に収録されている「healing attempt」は、アメリカーナをミュージック・コンクレートから再解釈し、それらを比較的聞きやすいオルタナティヴポップソングに組み替えている。

 

曲の後半では、賛美歌のようなフレーズも登場するのに注目したい。同じように、このアルバムのコアの部分となるオートチューンのボーカルが出てくるが、それは作品全体の脱構築主義やポストモダニズムの音楽性の一面を示唆するに過ぎない。ここには、ベッドルームポップのようなジャンルを通過した、2020年代のポップソングの再構築主義の姿勢が示唆され、それはまた、単なるパッケージ化された商品としての音楽の意義を超えて、制作者の音楽的な記憶が、時間もなければ、場所もない、無限の意識の底を緩やかに流れていく。これらはダニエル・ロパティンの電子音楽を、インディーポップという側面から見つめなおしたような作品である。

 

モア・イーズは、気まぐれに弦楽器の特殊奏法を曲の中に組み込むことがある。Arvo Partの代表曲「Fratless」、Paul Gigerのようなヴァイオンの特殊奏法をフォークミュージックとして解釈したタイトル曲は、無調を中心とする楽曲編成の中で、調和的な響きを帯びることがある。同じように、ミュージックコンクレートを駆使しながら、フォーク、ポップを鋭く対比させ、異質な音楽性を作り上げる。これらは、Laurel Haloの次世代の音楽に位置づけられるかもしれない。

 

実験音楽の印象が強いアルバムであるが、モーリス自身のよるボーカルがこのアルバムにオルタナティヴポップの要素を添え、それがまた、ある種の癒やしのような瞬間にもなる。この最終曲でも、トレモロの弦楽器の演奏、そして反復的なシンセビートを駆使し、新時代のポップソングの型を示すことに成功している。ベッドルームポップの次に流行する音楽はあるのか? そのヒントは、クレア・ルーセイやモア・イーズのようなアーティストの作品に潜んでいる気がする。少なくとも、旧来の音楽形式にとらわれない才気煥発なアルバムとなっている。 

 

 

 

84/100 

 

 

 

「healing attempt」 

 

 

▪more eaze  『sentence structure in the country』は本日、Thrill Jockyから発売。アルバムの視聴はこちら。日本盤の販売の詳細につきましては、HEADZの公式サイトをご覧ください。 

 

 

Jordan Anthony & Chloe Caroline

ポップアーティストのジョーダン・アンソニーがシンガーソングライターのクロエ・キャロラインとのコラボレーションシングル「Existing」をリリースした。

 

「Existing」は、ロサンゼルスでミケルディ・ムルギアがプロデュースを手掛けた。オリジナルのピアノ・デモが持つ親密さと、豊かでシネマティックな質感、そして高らかに響き渡るボーカルの掛け合いが見事に調和している。

 

この楽曲は、現代のデュエットの名曲からサウンドのインスピレーションを得つつも独自のアイデンティティを確立しており、クロエ・キャロラインの軽やかで情感豊かなニュアンスと、ジョーダン・アンソニーのダイナミックでソウルフルなパワーが見事に融合している。

 

このコラボレーションはすでに自然な勢いを見せ始めている。 ロサンゼルスのホテル・カフェでのライブ初披露後、そのパフォーマンスに感銘を受けた「KOST 103.5」のホスト、ライアン・マノは、このデュオを「iHeartRadio」のライブセッションとインタビューに招待し、その模様はシングルキャンペーンと同時に公開される予定だ。 

 

このシングルは、愛する人々と人生を分かち合うという深遠な奇跡を讃える、映画のようなピアノ主体のデュエット曲です。 「人生を変えてくれる誰かと同じ瞬間に、自分も存在していることに気づく、あの非現実的な感覚を表現したかったんです」とクロエ・キャロラインは語ります。

 

「すべてを明るくしてくれる、たった一人の人のための曲です」とジョーダン・アンソニーは付け加えます。「それは恋人、友人、家族、誰であってもいい。ただ、この曲が人々を結びつけるきっかけになればと願っています」


ロサンゼルスを拠点とするシンガーソングライターのクロエ・キャロラインと、オーストラリア出身のポップアーティスト、ジョーダン・アンソニーは、2022年にLAで開催された音楽業界のカンファレンスで初めて出会い、共通のルーツ、音楽一家という背景、そして感情豊かなポップソング作りに向けた共通の情熱を通じて絆を深めました。 

 

それぞれの芸術性は、クロエ・キャロラインの明るく繊細な温かさと、ジョーダン・アンソニーのパワフルでソウルフルな歌唱力という、わずかに異なるトーンの世界に位置しているものの、二人は自分たちの声が組み合わさることで生まれる映画的なバランスを即座に認識した。


彼らのデビューコラボレーション曲「Existing」は、大陸をまたいだZoomセッションの中で制作された。

 

ロサンゼルスにいるクロエ・キャロラインとオーストラリアにいるジョーダン・アンソニーが、クロエがパートナーがふとした瞬間に口にした「君が存在している世界に生きられるのが大好きだ」という一節を持ち込んだことをきっかけに、数分後にはジョーダンがピアノの土台を作り始め、愛する人々と同時に人生を分かち合うという稀有な奇跡を描いた壮大なデュエット曲へと急速に形作られていった。


親密な物語とアリーナ級の情感を融合させた「Existing」は、両アーティストのソングライティングにおける核心的な価値観を反映している。ジョーダン・アンソニーの真実味あふれるストーリー主導のポップへのこだわりと、クロエ・キャロラインの深く内省的で絆に焦点を当てた歌詞表現だ。この楽曲はロマンスの枠を超え、パートナー、友人、家族、そしてあらゆる種類の魂レベルの絆に対する感謝の普遍的なメッセージへと広がっている。


その後、ロサンゼルスでプロデューサーのミケルディ・ムルギアと共にレコーディングが行われた。彼の映画的なポップセンスが、素朴なピアノデモを時代を超越したモダンなデュエットへと昇華させた。ヴィト・グティラによるヴァイオリンが、楽曲の感情的な展開に有機的な高揚感をもたらしている。 クロエ・キャロラインとジョーダン・アンソニーは、2025年にロサンゼルスのホテル・カフェで初めて「Existing」をライブ演奏した。そのパフォーマンスに感銘を受けたKOST 103.5のライアン・マノは、二人をiHeartRadioのライブセッションとインタビューに招待した。


「Existing」は、両アーティストにとって重要な節目となるタイミングでリリースされる。クロエ・キャロラインにとっては、近々リリース予定のアルバム『Awakened』に向けた2026年のリリースサイクルの幕開けとなり、ジョーダン・アンソニーにとっては、米国で音楽活動を本格的に始めてからの最初の数年間を綴ったデビューEPのリリースに先立つ、最後の単独シングルとなる。


リリースを記念して、二人はInstagramで、抽選で選ばれた1組のカップルに、ロサンゼルスでの結婚式で彼らのパフォーマンスを披露するチャンスを提供すると発表した。


クロエ・キャロラインとジョーダン・アンソニーは、親密でありながらも広がりのあるデュエットの化学反応を生み出している。ただ同じ瞬間に生きているという共有された驚きの中で、二人の声が交わる。 

 

 「Existing」

 

 

▪EN 

 

Pop artist Jordan Anthony has released the collaborative single “Existing” with singer-songwriter Chloe Caroline.


Their debut collaboration, “Existing,” was written across continents during a Zoom session, Chloé Caroline in Los Angeles and Jordan Anthony in Australia, after Chloé brought in a line her partner had spontaneously said: “I love living in a world where you’re existing.” Within minutes, Jordan began building the piano foundation, and the song quickly unfolded into a sweeping duet about the rare miracle of sharing life at the same time as the people we love.

Blending intimate storytelling with arena-scale emotion, “Existing” reflects both artists’ core songwriting values, Jordan Anthony’s commitment to truthful, story-led pop and Chloé Caroline’s deeply reflective, connection-focused lyricism. The track expands beyond romance into a universal message of gratitude, for partners, friends, family, and soul-level bonds of all kinds.

The song was later recorded in Los Angeles with producer Mikeldi Murguia, whose cinematic pop sensibility helped translate the raw piano demo into a timeless, modern duet. Violin by Vito Gutilla adds organic lift to the track’s emotional arc. Chloé Caroline and Jordan Anthony first performed “Existing” live at LA’s Hotel Café in 2025, where the performance moved KOST 103.5’s Ryan Manno to invite them for a live iHeartRadio session and interview.

“Existing” arrives at a pivotal moment for both artists. For Chloé Caroline, it launches her 2026 release cycle leading toward her forthcoming album Awakened, while for Jordan Anthony it serves as the final standalone single before the rollout of his debut EP chronicling his first years pursuing music full-time in the United States.

To celebrate the release, the duo announced on Instagram that one lucky couple will have the chance to have them perform at their wedding in LA.

Together, Chloé Caroline and Jordan Anthony create a duet dynamic that feels both intimate and expansive, two voices meeting in the shared wonder of simply being alive at the same time.



アメリカの作曲家、シンガー・ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト(弦楽、鍵盤)であるピーター・ブロデリックが、日本の名作RPGのサウンドトラックの再構成に挑戦した。本作は本日(3月20日)、イギリスの実験音楽に特化したレーベル、Erased Tapesからリリースされた。


このアルバムは彼のフォークバンドやバイオリンやピアノを含めたFFシリーズのカバーやアレンジが収録されている。すぎやまこういちと双璧を成すゲーム音楽の大家、植松伸夫の音楽の未知の魅力が堪能できる。また、実際的に彼の普遍的なゲーム愛が音楽に感じ取られることだろう。


プロデリックは、アメリカのスロウコアバンド、Lowの故ミミ・パーカーの縁戚に当たる。プロデリックはエレクトロニックからのピアノ曲、弦楽器中心の室内楽、それからフォークミュージックまで広範な音楽体験を生かして、バリエーションに富んだ作品を制作している。今回は、作曲家が得意とする再構成作品となるが、今回はファイナルファンタジーへのオマージュである。


最近、ピーター・プロデリックが立ち上げた「ファイナルファンタジー」シリーズの音楽に特化した新プロジェクト「The White Mages」は、世界で最も愛されているゲームとその音楽に対する純粋な愛と熱意から生まれた。このプロジェクト名「The White Mages(白魔道士)」は、シリーズの作曲家である植松伸夫と、ゲーム音楽のロックンロール・バージョンを演奏していた彼のバンド「THE BLACK MAGES」へのオマージュとなっている。Erased Tapesからリリースされた本作『Ode to Final Fantasy』は、世界中で愛されつづけている「プレリュード」「エアリスのテーマ」など、ブロデリックが選んだお気に入りの楽曲11曲を独自の解釈でカバーしたもの。


ブロデリック自身の音楽の原点は、『ファイナルファンタジー』シリーズと深く結びついているという。母とバイオリンの練習を100日連続でつづければプレイステーションを買ってもらうという(過酷な?)約束をした少年は、バイオリンの腕が上達するにつれ、約束通りプレイステーションを手にし、そして「ファイナルファンタジー」シリーズの7作目である「FFVII」に夢中になった。「ゲームをプレイしたいという意欲が音楽を学ぶきっかけになった」と彼は語っている。


ファイナルファンタジーの世界では、黒魔道士は雷や炎などの攻撃的な魔法を使い、白魔道士は回復役を務める。それはブロデリックの新しいプロジェクトの音楽的アプローチにも反映されており、音楽が本来持っている癒しや、魔法的な効果を取り入れることを目指している。


このファーストアルバムはピーター・ブロデリックひとりで演奏、録音されているが、The White Magesは無限の可能性を秘めたプロジェクトとして構想されている。いつの日か、ブロデリックはより大きなグループの中で、多くの「白魔道士」のひとりとなり、ファイナルファンタジーの音楽を奏でることで世界に「ケアル」もしくは「ケアルガ」を唱えることになるかもしれない。


Erased Tapesとブロデリックは、アルバムの収益の半分を国境なき医師団に寄付することを約束している。さらにブロデリックは次のように語っている。「このプロジェクトを友人たちに話していたところ、親しい人から、収益の一部を現実世界の慈善活動に寄付してはどうかと提案された」


「ファンタジーと現実逃避の世界を、悲しくも美しいこの壊れた現実の世界へと持ち込み、具体的な成果として還元するというアイデアでした。私にとってすでに非常に意義深いプロジェクトに、さらなる意味と目的を吹き込むことができると、これは素晴らしい提案だと感じました」



The White Mages『Ode to Final Fantasy』



<トラックリスト>


1. Eternity, Memory of Lightwaves (Final Fantasy X-2)

2. Freya's Theme (Final Fantasy IX)

3. The Promise (Final Fantasy XIII)

4. Under the Rotting Pizza (Final Fantasy VII)

5. Hymn of the Fayth (Final Fantasy X)

6. Chocobo Theme (Final Fantasy)

7. Aerith's Theme (Final Fantasy VII)

8. Listen to the Cries of the Planet (Final Fantasy VII)

9. Atonement (Final Fantasy XIII)

10. Melodies of Life (Final Fantasy IX)

11. The Prelude (Final Fantasy)


▪︎ストリーミングURL: https://erasestapes.lnk.to/thewhitemages

▪︎Shane Sato × Reuben Jamesが描く、夜の余韻に溶けていくジャジー・ソウル LAとロンドンを結ぶコラボレーションが生んだ新曲「Clouds」



「Clouds」は、Shane Satoが今春リリース予定のニューアルバム『Wavelength』からの第4弾シングル。UKの実力派アーティスト/ソングライター/ピアニストであるReuben Jamesとのコラボレーションによって生まれた本作は、ソウル、R&B、ジャズのエッセンスを横断しながら、グルーヴを軸に据えたインストゥルメンタルの豊かさと現代的なプロダクションが融合した一曲となっている。


力強く打ち鳴らされるドラム、温かみを帯びたシンセサイザー、表情豊かなピアノ、そしてReuben Jamesのソウルフルなヴォーカルが重なり合い、ライブ感とモダンな質感が絶妙なバランスで共存する。〈You show me how to fall from the clouds〉というフックを中心に、夜のドライブや静かな時間に寄り添いながら、重厚なリズムと豊かなハーモニー、そして耳に残るヴォーカルフレーズが、何度もリピートしたくなる余韻を残していく。


Shane Satoは、LAを拠点に活動する日系アメリカ人のマルチインストゥルメンタリスト、プロデューサー、ソングライター。南カリフォルニアで育ち、5歳でドラムを始めた後、ギターやピアノへと演奏の幅を広げ、ロックバンドやジャズグループなど多様な現場で音楽的基盤を築いてきた。2017年にLAへ移住後はセッションミュージシャンとしてキャリアを重ねながら、自身のオリジナル作品にも注力。


Reuben Jamesは、バーミンガムの2000年代半ばのジャズ・シーンで研鑽を積み、のちにロンドンへ拠点を移して名門Ronnie Scott’sにも出演。Stormzy、Disclosure、Sam Smith、James Bayらとのコラボレーションをはじめ、Marcus MumfordとともにApple TV+シリーズ『Ted Lasso』の音楽も手がけるなど、ジャンルを横断して活躍してきた。ソロアーティストとしても、クラシックなファンクやソウルを現代的なポップ/R&Bの感性で再構築し、『Tunnel Vision』『Champagne Kisses』などの作品で累計5,000万回を超えるストリーミングを記録している。



[作品情報]



アーティスト:Shane Sato, Reuben James

タイトル:Clouds

ジャンル:R&B, Soul, Jazz

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 

ストリーミングURL: https://lnk.to/shane-sato-clouds


モントリオールのアートロックトリオ、Colaが、5月8日にFire Talk Recordsよりリリースされるアルバム『Cost of Living Adjustment』からのセカンドシングルとミュージックビデオ「Conflagration Mindset」を公開した。ジャングリーかつローファイな質感を持つオルタナティヴロックソング。しかし、コーラらしい憂いに満ちたエモーションが楽曲には漂い、独特な雰囲気を生み出す。


ティム・ダーシー(ボーカル/ギター)、ベン・スティッドワージー(ベース)、エヴァン・カートライト(ドラム)からなるモントリオール出身のアートロックトリオだ。


『Cost of Living Adjustment』——Colaによるセルフタイトル・アルバムへのアプローチ——のリリースを記念し、このトリオはアメリカ、イギリス、ヨーロッパ各地でヘッドライン公演を行う。


『Cost of Living Adjustment』は、渦巻く感情があまりにも鮮明になり、少しばかり痛みを伴うほどになる、そんな「明瞭な瞬間」に満ちた抽象的な作品だ。 


「悲しみに場所を空けておけ、そうすれば悲しみも君のために場所を空けてくれる」と、ダーシーは『Cost of Living Adjustment』の第3幕を飾る大作「Conflagration Mindset」の冒頭で歌う。2025年のロサンゼルス山火事の余波を受けて書かれた「Conflagration Mindset」は、Colaのディスコグラフィーの中でも他に類を見ない、衝撃的な啓示のような楽曲。 


「Conflagration Mindset」は、スティッドワージーの瞑想的なベースラインとダーシーの実存的な思索と共に高まりを見せる。「ホテルのカップに入った冷たいビール // 一人だけど、車にガソリンを入れる // コンフラグレーション・マインドセットの中で」という歌詞に象徴されるように。


「Conflagration Mindset」は、『Cost of Living Adjustment』からの先行シングル「Hedgesitting」に続く楽曲であり、同曲はDIY、NME、Brooklyn Vegan、Stereogumなどから称賛を集めた。「Conflagration Mindset」には、印象的な歌詞ビデオが併せて公開されている。



「Conflagration Mindset」