Le  Makeup

本日(4月29日)、Le  Makeupのニューアルバムがついにリリースされる。人とのつながりをテーマにした新作で彼は現代的な若者の心情を巧みに表現する。また、人間としての成長の過程が込められた新作といえるかしれない。多くのリスナーはそこに自分に似た誰かを発見することだろう。


ニューアルバム「The Crying Xpress」は、SNSで呟くみたいに、誰に話すまでもないけど聞いてほしい自分の話である。ルメイクアップは今作で若者らしい繊細さや脆さを巧みに表現している。従来培われたヒップホップやビートの表現は今ようやくJ-POPらしい音楽として体現されることになった。


ルメイクアップの楽曲は一曲の中で時間が変遷して行き、ミクロとマクロの視点を変幻自在の行き来する。各楽曲に取り巻くエモーション、日本語によるボーカルの表現、そしてメロディセンスの探求。前作に比べると、ソングライターとして磨きがかけられた楽曲が増えてきている。


曲名にも記号論のようなメーセージが込められていそうだ。しかし、そこから何を汲み取ることができるだろう? 今作にはゲストボーカルとして柴田聡子さんが参加している。両者はテレビ東京のプレミアムドラマのオープニング曲のリミックスでも関わりがあった。どのようなケミストリーを起こしたのか? アルバムより「hold on」のミュージックビデオが初公開された。さらにレコ発のライブイベントも7月22日に開催。こちらも合わせてご確認ください。



・Le Makeup - hold on (Official Music Video)



Director : jvnpey

Starring : Le Makeup, yilin

Director of Photography : sliceofbluelife


Youtubeでのご視聴 :[ https://youtu.be/aN4eYUFbqHU ]


【楽曲紹介(レーベルによる)】


ミニマルなシンセ、エモーショナルなヴォーカル、クリーントーンのギター、オルタナティヴ・アンビエント・ポップ、独自の世界を構築するシンガーソングライター 【Le Makeup】のニューアルバム。Telematic Visions、柴田聡子、Doveが参加。アーティスト写真、カヴァーアートは、佐藤麻優子。マスタリングは、木村健太郎が手がけた。


アルバムから最初のシングルとしてリリースされたミニマル・アンビエント・ポップ「はじまり」。Telematic Visionsの楽曲「each dreams」をそのままサンプリングした「each dreams riddim」。


「The Crying Xpress」リード曲でもある「hold on」は、親密さと隣り合わせの孤独を表現。シンガロング出来そうなサビが印象的な「block party」。トラウマと現実。何を受け入れて、何を拒絶して自分になっていくかという過程をテーマにした「傷」には、柴田聡子が参加。柴田聡子の楽曲のメロディを引用もしている。


ドリーミーな「c 4eva」は、みんなあたりまえに1人だということ。だけど繋がりをもとめてることがテーマ。徐々に夜が深まっていくイメージだというアルバムのブレイク的な曲「venus」。


Doveが参加した「ivory recording」は、印象的なシンセのフレーズとDoveのヴォーカルを配した壮大な印象の楽曲。「一人で迎えられない夜を一人で迎える夜に」エレクトリック・ギターのアルペジオ、ヴォーカル/シンセサイザーがシンクロする夜を想わせる涼しげな楽曲「この夜が終わるまで」。淡々と日々を過ごすなかで、起きる突風を感じさせるようなポジティブさを感じる「声」。


深い夜と進んでいく先の光を表現した「息」。孤独な社会生活、人間社会で他人とどう生きていくか、小説からインスピレーションを受けたという「glo」。言葉にすることの躊躇とかを超えた、音楽へのラブレター「crying ex」の全13曲。




【【新譜情報】Le Makeup「The Crying Xpress」

Le  Makeup 『The Crying Xpress』アルバムジャケット


Digital (UPC : 4580789762970) | PURE015 | 2026.04.29 Release | Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/TheCryingXpress ]


1. はじまり  ハジマリ hajimari  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer, Programming : Le Makeup

2. each dreams riddim feat. Telematic Visions  イーチ ドリームス リディム フィーチャリング テレマティック ビジョンズ  Lyrics, Arrangement : Le Makeup / Music : Telematic Visions, Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer : Le Makeup / Programming : Le Makeup, Telematic Visions

3. hold on  ホールドオン  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

4. block party  ブロックパーティー  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer, Programming : Le Makeup

5. 傷 feat. 柴田聡子  キズ フィーチャリング シバタサトコ kizu featuring Satoko Shibata  Lyrics, Music : Le Makeup, 柴田聡子 / Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer, Programming : Le Makeup / Vocal : 柴田聡子

6. c 4eva  シー フォーエバー  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

7. venus  ヴィーナス  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Synthesizer, Programming : Le Makeup

8. ivory recording feat. Dove  アイボリーレコーディング フィーチャリング ダブ  Lyrics : Le Makeup, Dove / Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Synthesizer, Programming : Le Makeup / Vocal : Dove

9. この夜が終わるまで  コノヨルガオワルマデ untill this night ends  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

10. 声  コエ koe  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

11. 息  イキ iki  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

12. glo  グロー glo  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

13. crying ex  クライングエックス crying ex  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup


Mixing : Le Makeup

Mastering : Kentaro Kimura

Photography, Cover Art : Mayuko Sato



7月22日(水)には、渋谷WWWにてOne Man Live 「The Crying Xpress」を開催。

アルバムに参加した柴田聡子、Doveのゲスト出演も発表されている。

チケット発売中。


【イベント情報】Le Makeup - One Man Live 「The Crying Xpress」at WWW, Shibuya



2026.07.22 [Wed] Open 18:30 / Start 19:30

Guest : 柴田聡子、Dove and more

[ https://www-shibuya.jp/schedule/019763.php ]

Adv. 3,500 Yen [+1D]

Ticket : e+ [ https://eplus.jp/LeMakeup ]

Ticket : LivePocket [ https://livepocket.jp/e/le-makeup ]





Le Makeup:


シンガー/プロデューサー。関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。2020年にアルバム「微熱」をリリース。

中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。Pitchforkで取り上げられるなど話題となった。

2024年5月にオノ セイゲンがマスタリング・エンジニアとして参加したアルバム「予感」をリリース。東京・大阪で初のワンマン公演「予感」を行った。2026年にニューアルバム「The Crying Xpress」を4月29日にリリース。


▪️EN


Singer/Producer. Began seriously pursuing composition while attending Kwansei Gakuin University, subsequently releasing works on various domestic and international labels. Released the album “Binetsu” in 2020.Has performed in China, South Korea, the Netherlands, Denmark, and Germany.

In February 2023, released the album ‘Odorata’ featuring contributions from Dove, gummyboy, JUMADIBA, Tohji, and Tamaki Roy. It garnered attention, including coverage by Pitchfork.

In May 2024, released the album ‘Premonition’ with Seigen Ono participating as mastering engineer. Held his first solo concerts, titled ‘Premonition’, in Tokyo and Osaka.New album “The Crying Xpress” will be released on April 29, 2026.

Photo: Silken Weinberg

2025年デビューアルバムをリリースした英国の新鋭ロックグループ、The New Eves。スウェーデンのヨーデルのよう民族音楽をザ・フーのようなロックオペラと絡め、テレビジョンやパティ・スミスのようなニューヨークのプロトパンクと融合するとびきりユニークなバンドだ。


2026年、このグループの中心的な存在であるニーナ・ウィンダー=リンドがソロアーティストとして活動を開始する。最近では、有名なロックグループのメンバーがソロアーティストとして活動するのは珍しいことではない。グリアン・チャッテン、キャメロン・ウインターなどが思い当たる。


ブライトンを拠点とするスウェーデン出身のシンガーソングライター兼マルチ・インストゥルメンタリスト、ニーナ・ウィンダー=リンド(ザ・ニュー・イヴズのメンバーとして最もよく知られている)が、本日、Transgressiveよりソロシングル/ミュージックビデオ『This Is Our Life』をリリースした。

 

このシングルは、バンドの曲よりもフォークポップ/ロックに傾倒している。ジャグリーなギター、そして遊び心のあるピアノのアレンジなど、楽しさが満載となっている。


フォーク・ポップの温かみと、アップビートで力強いロックビートを融合させた『This Is Our Life』は、ウィンダー=リンドの魅惑的なボーカルのビブラートと、メロディーに対する確かなセンスを際立たせている。この楽曲は、親密さと奔放さのバランスを保ちながら、彼女の作品の多くに流れる喜びと切実さを捉えている。この曲について、ニーナは次のように語っている。


「『This Is Our Life』は、ほとんど自然に生まれてきたような曲です。スウェーデン北部の実家の山小屋にいた時のことでした。

 

アコースティックギター、バイオリン、ズームマイクを手に、物置小屋に入って手早くデモを作りました。構成はシンプルだったが、同時に必要な要素はすべて揃っていた。自分がポップソングを書いたことに驚いたけれど、どうやらそうなる必要があったらしい・


『This is Our Life』は、私にとって非常に身近な誰かについて書いたものだったが、実は私の人生に関わる多くの人々について歌っているのだと気づきました。この曲は、クリエイティブな人間であることの精神的、時には、肉体的な苦闘を認めつつも、私たちを前進させ続ける力を称えている。バンドで演奏する時、私はとても幸せを感じる。私たちは踊る。喜びに身を委ねる。誇りと奔放な愛を宣言します」


このシングルは、ウィンダー=リンドの3曲入りEP『The Spirit Is Carnal』(2023年)と初の詩集『Röd Ska Jag Leva』(2025年)に続く作品であり、ザ・ニュー・イヴズのデビューアルバム『The New Eve Is Rising』の大成功を受けてリリースされた。


2025年を代表する傑作の一つであるこのアルバムは、『Clash』誌から「忘れがたいデビュー作」と称賛され、『ガーディアン』紙の主要なアルバムレビューでは「彼らの未来と同様に、このアルバムはワクワクさせる」と評された。また、この作品は『Dork』、『Loud & Quiet』、『Hard Of Hearing』の各誌の年間ベスト盤リストにも選出されている。


ソロ作品とコラボレーションの両方において、ニーナ・ウィンダー=リンドの芸術性は、人生の活気と激しさを表現する能力によって特徴づけられている。ザ・ニュー・イヴズでの活動が集団のエネルギーに支えられているのに対し、彼女のソロ作品はより親密で個人的な印象を与えるが、その大胆さや反抗心は決して劣らない。


「This Is Our Life」

 

 

Nina Winder-Lind 『This Is Our Life』- New Single


Tracklsiting: 

1. This Is Our Life


Listen URL: 【https://transgressive.lnk.to/thisisourlife

Robin Katz (MVINTY)

 

ロビン・カッツ(Robin Katz)のギターは、クラシックギター、ジャズギター、フラメンコギターの中間点に位置し、エキゾチックな雰囲気を放つ。スティールギターによる力強く繊細なアルペジオのプレイは一聴の価値があり、唸らせるような魅力が込められている。また、カッツのギター音楽は、ジプシー・キングスのような渋さが感じられるが、薄く重なるエレクトロニックやオルガンが現代的な質感を与え、エモーショナルかつミステリアスな感覚を作り出す。

 

2025年のクリスマスに、坂本龍一の代表曲「Merry Christmas, Mr. Lawrence」のカヴァー曲を配信リリースしたことが記憶に新しい、ギタリスト兼作曲家のロビン・カッツ。アコースティックギターだけで、これほどまで幅広い世界観を作り出せるミュージシャンはそうそう見つからない。彼のギターの演奏そのものが、ロビン・カッツとしての生き方を反映しているとすら思える。


5月にはニューアルバム『ヒプノス』をリリースすることが発表され、すでにファースト・シングル「The Moon」が配信中だが、この度さらなる新曲「Floating World」が配信開始となった。


今回の新曲「Floating World」では、ロビンの軽快なギター・ラインが、幻想的で異世界的なオルガンの音色を彩り、楽曲全体にそのテーマを反映した流動的な雰囲気を醸し出している。同楽曲について、ロビンは次のように語っている。


「この曲のタイトルは、儚く、絶えず変化し続ける世界という哲学を反映しているんだ。儚さの中に美しさを見出せば、僕たちは人生を漂うように生きていけるんだ。"floating world=浮世"とは一種の姿勢であり、悲しみも喜びも等しく畏敬の念を持って、無常を受け入れること。和声の緊張感がもたらす憂鬱と高揚の入り混じった感覚は、ある意味、浮世で生きるというこの概念に対する僕なりの表現なんだと思う」


ジプシー・ジャズ、ノマド・フォーク、フラメンコ、ロック、ブルース、新古典派音楽の狭間に位置するスタイルで、そのサウンドは叙情的で魂に響き、唯一無二の認識性を備えているロビン。幼少期をスペインで過ごした彼は、5歳の頃から母親に連れられてフラメンコのコンサートに足を運んでいた。中でも印象的だったのが、スペインのギタリストでフラメンコやジャズの分野で活躍するパコ・デ・ルシア。その後、13歳の時には、GN'R(ガンズ・アンド・ローゼズ)のスラッシュにハマり、誕生日に母親がギターを買い与えたことから自らも演奏するようになった。


そんなロビンの最新アルバム『ヒプノス』は、一聴すると単純そうだが、実に複雑なギター・ラインにゲスト・ミュージシャンのナサニエル・レドウィッジが演奏するハモンド・オルガンが絡み合った、表現力豊かな1枚に仕上がっている。オルガンの演奏は大気的で異世界的でありながら、ロビンの繊細で切ない楽曲に魂のこもった親密な対位法をもたらしている。


「Floating World」



【アルバム情報】



アーティスト名:Robin Katz(ロビン・カッツ)

タイトル名:Hypnos(ヒプノス)

品番:GB4013CD (CD) / GB4013 (LP)

発売日:2026年5月29日(金)

レーベル:Gearbox Records


Credits:

Robin Katz: Guitar

Nathaniel Ledwidge: Hammond Organ

Compositions by Robin Katz

Produced by Robin Katz and FREEMONK

Recorded and Mixed by FREEMONK at The Friary Studios

Mastered by Caspar Sutton-Jones at Gearbox Productions



・アルバム『Hypnos』プレオーダー受付中! 

Pre-order:https://store.gearboxrecords.com/products/pre-order-robin-katz-hypnos

 


<トラックリスト>

(CD)

1. Floating World

2. Kingdom

3. The Moon

4. My Friend Kushi

5.  Stargazer

6. Silent Forest

7. Ukiyo

8. Hypnos


(LP)

Side-A


1. Floating World

2. Kingdom

3. The Moon

4. My Friend Kushi

Side-B


1. Stargazer

2. Silent Forest

3. Ukiyo

4. Hypnos

 


・Robin Katz  バイオグラフィー


ジャズの伝統に根ざし、フラメンコ、ボサノヴァからネオクラシック、ソウルに至る多様な影響を受けながら形成されたギタリスト兼作曲家のロビン・カッツは、ディスクロージャー、ルーベン・ジェームス、ザ・ロンドン・ジャンゴ・コレクティブ、ジョセフ・ローレンスらとイギリス各地で幅広く共演。


2024年にリリースした、トランペッターのガイ・バーカーとの共作によるデビューEP『オーシャンズ・フォー・エロス』で彼の広大な音楽的表現が披露され、その後、Freemonkがプロデュースしたセカンド・アルバム『ロック・ミュー ジック』を2025年にリリース。同年12月には、坂本龍一の楽曲のカヴァー「Merry Christmas Mr.Lawrence」を配信リリースしている。2026年、アルバム『ヒプノス』を発表。

実験芸術を紹介するプラットフォーム「MODE」は、6月29日(月)、30日(火)の二日間にわたり、東京・赤坂に位置する草月ホールにて2つのパフォーマンスプログラムを開催します。先日の最初の発表に続いて追加出演者が発表されました。


注目すべきは、日本のアヴァンギャルドミュージックの重鎮、灰野敬二が6月29日のプログラムに出演します。同日には、ドローン音楽の急進的なアプローチで知られているスウェーデンの鍵盤奏者/ギタリストのEllen Arkbroが出演します。今回、アルクブロは雅楽の音楽と共演し、西洋音楽と東洋音楽を結びつける試みを行います。


そのほか30日のプログラムでは、現代音楽の巨匠シャルルマーニュ・パレスタインが登場するほか、このプログラムの常連といえる石橋英子/ジム・オルークも出演者に名を連ねています。現代音楽を象徴するミュージシャンが複数参加する2026年のMODE。見逃すことは出来ません。


キービジュアルに配置されるテキストはUK拠点の音楽ライターJennifer Lucy Allanによる公演ステートメント、手書き文字はMODEの新アイデンティティを担当したアーティストSakura Kondoによるもの。


【6月29日開催のプログラムについて】 


 

6月29日(月)に開催されるプログラムでは、日本を代表する前衛音楽家であり、2026年の「第70回ヴェネツィア国際現代音楽祭」にて生涯功労金獅子賞を受賞する灰野敬二(Keiji Haino)と、元YUCK(ヤック)のフロントマン、元Cajun Dance Party(ケイジャン・ダンス・パーティ)のリードボーカルであり、『The Brutalist』の劇伴でアカデミー賞を受賞したDaniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)によるコラボレーション作品が世界初披露されます。


さらに、パイプオルガンやリードオルガンの持続音を用いたドローン作品で国際的に高く評価される作曲家Ellen Arkbro(エレン・アークブロ)が、リードオルガンと、雅楽において中心的な役割を担うダブルリード楽器である篳篥(ひちりき)のための最新作を世界初演として発表します。


Arkbroがリードオルガンを担当し、雅楽演奏グループ伶楽舎(Reigakusha Gagaku Ensemble)に所属する中村仁美(Hitomi Nakamura)、國本淑恵(Yoshie Kunimoto)、鈴木絵理(Rie Suzuki)、田渕勝彦(Katsuhiko Tabuchi)が篳篥(ひちりき)を演奏します。


■ Keiji Haino & Daniel Blumbergについて

Keiji Haino

Photography by Taylor Russell

灰野敬二 (Keiji Haino)は50年以上にわたり、ノイズ、フリージャズ、ブルース、ロック、電子音響、フォーク、ドローンといった多様な領域を横断しながら活動を続けてきた日本の前衛音楽家です。Antonin Artaud(アントナン・アルトー)に触発され演劇を志すも、The Doors(ザ・ドアーズ)に遭遇したことを契機に音楽へと転向。初期ブルースから中世音楽、歌謡曲に至るまで幅広い音楽を吸収し、1970年代より活動を開始しました。 1978年にはロックバンド「不失者」を結成。ソロ活動と並行しながら、灰野を中心にしたプロジェクト「滲有無」、90年代後半に結成したカヴァー・バンド「哀秘謡」など複数のプロジェクトや名義を通じて様々な表現を展開してきました。


1980年代の活動休止を経て復帰以降も、即興演奏を軸に音を身体的な体験へと変容させる実践を深化させてきました。ギターやパーカッションにとどまらず、ハーディ・ガーディや各地の民間楽器、電子機器などを用い、それぞれの特性を極限まで引き出す独自の演奏で知られています。 その革新性は国際的にも高く評価され、2026年にはヴェネツィアで開催される第70回国際現代音楽祭にて、生涯功労金獅子賞を受賞することが決定しています。近年も精力的に作品発表を続け、国内外のアーティストとのコラボレーションを重ねています。


一方、ロンドンを拠点とする音楽家・作曲家Daniel Blumberg(ダニエル・ブランバーグ)は、Cajun Dance PartyやYuckでの活動を経てソロへと移行し、即興音楽や映像、ドローイングなど様々な実践を展開してきました。映画音楽の分野でも評価を高め、2025年には『The Brutalist』のスコアでアカデミー賞およびBAFTAを受賞。日本では2026年初夏に上映予定のゴールデングローブ賞受賞作品『アン・リー/はじまりの物語』でも劇伴を手がけています。Blumbergにとって灰野は非常に重要な存在であり、ロンドンのライブベニューCafe OTOで初めて目撃した灰野の演奏が「人生を変える体験」であったと語っています。翌日も会場に足を運ぶと、灰野の演奏は前日とはまったく異なるものでした。


この体験を通じて、音楽とは常に変化し続けるものであるべきだと確信し、「同じ公演は二度と行わない」というアーティストとしてシンプルな信条を掲げるに至ります。こうした背景のもと、「MODE」は両者のコラボレーション作品を委嘱。本プログラムにて世界初披露されます。



■Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensembleについて

Ellen Arkbro Photography by Victoria Loeb

Reigakusha Gagaku Ensemble

Ellen Arkbroはストックホルム出身、現在はベルリンを拠点とする作曲家/ミュージシャン/サウンド・アーティストです。パイプオルガンやリードオルガンの持続音を基盤に、純正律や倍音、共鳴を探求する作品で知られ、アコースティック楽器、電子音、あるいはその両者を組み合わせた作品やインスタレーションを制作しています。La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)に師事し、スウェーデンのエレクトリック・ハープシコード奏者Catherine Christer Hennix(キャサリン・クリスター・ヘニックス)率いるKamigaku Ensembleでも活動するなど、幅広い実践を展開してきました。


伶楽舎は、雅楽の合奏研究を目的に、雅楽の伝承・普及に第一線で尽くし続けた芝祐靖(Sukeyasu Shiba)が1985年に創立し、発足した雅楽演奏グループです。現行の雅楽古典曲の演奏にとどまらず、現代作品の上演にも積極的に取り組み、これまでに湯浅譲二(Joji Yuasa)、一柳慧(Toshi Ichiyanagi)、池辺晋一郎(Shinichiro Ikebe)、猿谷紀郎(Toshio Saruya)、伊左治直(Sunao Isaji)、桑原ゆう(Yu Kuwabara)など多くの作曲家に新作を委嘱してきました。日本を代表する現代音楽家、武満徹作曲の雅楽作品『秋庭歌一具』の演奏でも複数の賞を受賞しています。


<作品紹介>

本プログラムでArkbroは、リードオルガンと篳篥(ひちりき)のための新たな作品を伶楽舎の篳篥奏者たちとともに発表します。篳篥は、日本の伝統的なダブルリード楽器であり、雅楽において中心的な役割を担う音色を持つ楽器です。 本作は、これらの楽器に固有の音色、豊かな倍音構造と共鳴が生み出す音の響きに着目し、7リミットの純正律に基づく精緻に調整された音程や和音を通じて、リードオルガンと篳篥の音の融合を探ります。


その過程で、音の繊細で生々しいテクスチャー、そしてハーモニーを質感を伴う音の重なりとして立ち上がらせ、聴き手の意識をひらいていきます。 演奏者たちは各和音のチューニングに深く関与し、響きの明晰さを追求しながら、ひとつの音として鳴り、ひとつの響きとして聴き合うことを目指します。Arkbroがリードオルガンを担当。篳篥は伶楽舎所属の中村仁美、國本淑恵、鈴木絵理、田渕勝彦が演奏します。こちらも世界初演として披露されます。



【6月30日開催のプログラムについて】


 

6月30日(火)に開催するプログラムでは、約14年ぶりの来日となるCharlemagne Palestine(シャルルマーニュ・パレスタイン)が出演します。Charlemagne Palestineは、反復、持続、倍音、空間の響きを用いた独自の実践を築いてきた音楽家であり、ニューヨーク・アンダーグラウンドを起点に半世紀以上にわたり活動を続けてきました。


La Monte Young(ラ・モンテ・ヤング)、Terry Riley(テリー・ライリー)、Steve Reich(スティーブ・ライヒ)らと並び語られてきた巨匠の一人です。ぬいぐるみを用いたマルチメディア彫刻や空間作品を手がける現代美術作家としても活動し、ドクメンタ8への参加をはじめ、現在も世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表し続けています。


客演には、Jim O’Rourke(ジム・オルーク)と 石橋英子(Eiko Ishibashi)のデュオが出演します。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えてきた重要人物であり、実験音楽、映画音楽、プロデュースワークを横断しながら独自の活動を続けてきました。Gastr del Sol(ガスター・デル・ソル)での活動や、Sonic Youth(ソニック・ユース)の元メンバーとしても知られるほか、小杉武久(Takehisa Kosugi)とともにMerce Cunningham(マース・カニンガム)舞踏団の音楽を手がけ、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Arnold Dreyblatt(アーノルド・ドレイブラット)、Christian Wolff(クリスチャン・ウォルフ)らとなどの仕事を通じて、現代音楽とポストロックのあいだを横断してきた存在でもあります。石橋英子は、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『悪は存在しない』(2023年)などの映画音楽も手がけ、2025年には最新アルバム『Antigone』を発表しています。両者はデュオとして、2025年に5作目となるアルバム『Pareidolia』をリリースしています。


■Charlemagne Palestineについて

Charlemagne Palestine Photography by Agnes Gania


1947年ブルックリン生まれのシャルルマーニュ・パレスタインは、ニューヨーク大学、コロンビア大学、マネス音楽大学、カリフォルニア芸術大学で学び、カントール(聖歌の歌い手)やカリヨン奏者としての訓練を経て、1960年代よりニューヨークの前衛芸術シーンで活動を開始しました。


電子音源、鐘楼、パイプオルガン、ピアノ、声などを用いた儀式的な持続音楽を探究し、97鍵のピアノを用いた「Strumming」や、パイプオルガンのための「Schlingen Blängens」といった演奏技法を含む独自の実践を築いてきた作家です。2時間に及ぶ声の作品『Karenina』や、身体の動きや映像を伴うパフォーマンスなども展開してきました。


1980年代初頭から1990年代半ばにかけてはパフォーマンス活動を休止し、ぬいぐるみを祭壇のように配したマルチメディア彫刻やインスタレーションの制作に専念しましたが、その後ステージに復帰し、Pansonic(パンソニック)、Tony Conrad(トニー・コンラッド)、Rhys Chatham(リース・チャタム)らとの共演を重ねました。パフォーマンス活動の傍ら、現在も現代美術作家としても、世界各地の美術館やギャラリーで音響作品やインスタレーションを発表してきました。


現在はブリュッセルを拠点に活動しており、近年も継続的に新作発表と公演を行っています。2024年には、アムステルダムのOude Kerkで開催されたSonic Acts Biennialにてオルガン公演を行い、その記録作品『The Organ is the Worlds Greatest Synthesizer』が2026年1月にリリースされました。2012年には、東京・SuperDeluxeで行われた灰野敬二、Jim O’Rourke、Oren Ambarchiの公演に、石橋英子とともにゲスト参加し、ワイングラスによる演奏で共演しています。今回の来日公演は、約14年ぶりとなります。


■Jim O’Rourke & Eiko Ishibashiについて




Jim O’Rourkeと石橋英子は、日本を拠点に国際的な活動を展開するアーティストです。Jim O’Rourkeは、シカゴの即興音楽シーンを支えた中心人物のひとりであり、数多くの映画音楽や実験作品を手がけるほか、Gastr del SolやSonic Youth(初期)での活動でも広く知られています。石橋英子は、マルチ奏者、シンガーソングライター、作曲家として活動し、2021年の『ドライブ・マイ・カー』、2023年の『悪は存在しない』の音楽を担当。2025年には、7年ぶりとなる歌のアルバム『Antigone』をリリースしました。


二人は、即興演奏を基盤に独自の音響世界を築くデュオとして、2010年代から活動を続けています。2023年にはフランス、スイス、イタリア、アイルランドを巡るヨーロッパ・ツアーを行い、その録音を再構成したアルバム『Pareidolia』を2025年にDrag Cityからリリースしました。この作品は二人にとって5作目のコラボレーション作品であり、ライブ音源を編集しながら新たな対話として組み立てていく、彼らの方法がよく表れた作品です。


Jim O’Rourkeは、かねてよりCharlemagne Palestineの音楽に深い敬意を示しており、2015年作『Ssingggg Sschlllingg Sshpppingg』を「その年のお気に入りであり、彼の最高作かもしれない」と評しています。


【プログラム概要】

Performance - Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble

開催日時:2026年6月29日(月)Doors 18:15 / Start 19:00

会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 / MAP

チケット料金 :¥8,000(税込)

プレイガイド:イープラスZAIKO

出演者:Keiji Haino & Daniel Blumberg / Ellen Arkbro & Reigakusha Gagaku Ensemble

協力:ゲーテ・インスティトゥート 東京


Performance - Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi

開催日時:2026年6月30日(火)Doors 18:15 / Start 19:00

会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 / MAP

チケット料金 :¥8,000(税込)

プレイガイド:イープラスZAIKO

出演者:Charlemagne Palestine / Jim O’Rourke & Eiko Ishibashi

【MODEについて】

MODEは、ロンドンと東京を拠点に、実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム。坂本龍一がキュレーターを務めた2018年の初開催以降、「音」を軸とした国際的な文化交流の場として展開している。都市の余白や歴史的な音楽芸術ベニューを舞台に、空間の建築的特性や場所がもつストーリーに呼応する多様なプログラムを実施。アーティストとオーディエンスが音楽や芸術文化、その歴史的背景を分かち合い、インスピレーションを交わすことで、新たな体験や実験的表現が生まれる場を創出している。

 

▪️過去の主な出演者(抜粋)

・2018 LONDON (The Barbican Centre / The Silver Building / Camden Art Centre)

坂本龍一 + Alva Noto / 坂本龍一 + David Toop / Beatrice Dillon / 空間現代 / 細野晴臣 + Acetone / Curl / 毛利悠子 + 鈴木昭男

 

・2019 LONDON (Round Chapel / 55-57 Great Marlborough Street / South London Gallery)

Rashad Becker / Eliane Radigue / Julia Eckhart / Bertrand Gauguet / Yannick Guédon / Wolfgang Voigt / Laurel Halo / Ellen Arkbro / Tomoko Sauvage / John Also Bennett + Amospheré / Loraine James


・2023 TOKYO (淀橋教会 / Vacant Space in Aoyama / WWW)

Eli Keszler / Kafka’s Ibiki (Jim O'Rourke, 山本達久, 石橋英子) / Park Jiha / 伶楽舎 / Posuposu Otani / Merzbow / Kali Malone featuring Stephen O'Malley & Lucy Railton / Laurel Halo / Tashi Wada with Julia Holter / 日高理樹


・2024 TOKYO (草月ホール / 伊藤邸(旧園田高弘邸) / LIQUIDROOM)

INCAPACITANTS / Puce Mary / Yuko Araki / FUJI|||||||||||TA / Okkyung Lee / 坂田明 / Bendik Giske / Valentina Magaletti / Still House Plants / goat

 

・2025 TOKYO (新国立劇場 オペラパレス / 東京都現代美術館 / 公園通りクラシックス / GASBON METABOLISM / ゲーテ・インスティトゥート東京)

Soundwalk Collective & Patti Smith / Marginal Consort / Carl Stone / 立石雷 / 恩田晃 / Park Jiha / Aura Satz / 斎藤玲児 / Ka Baird / Arnold Dreyblatt & The Orchestra of Excited Strings (Konrad Sprenger / Joachim Schütz / Jim O’Rourke / 石橋英子)


バルセロナの作曲家、エレクトロニックプロデューサー、Sylvain Shauveauが新作アルバム 『Complexity of the Simple』を発表。京都の寺にインスピレーションを受けて制作された本作は6月5日にリリースされる。


発表に合わせてニューシングル「Le zen dans l'art du tir à l'arc」が公開された。禅的な静けさを持ち、枯山水の庭の意匠のように落ち着いたマレット/シンセが点描画さながらにパルス音を形成、スティールパンの音色が瞑想的に鳴り響き、美麗なハーモニーを描く。まるでサウンドデザインのようだ。


ニューアルバム『Complexity of the Simple』は日本語で「単純さの中に潜む複雑さ」を意味している。このアルバムにはシルヴァン・ショーヴォーが日本旅行をした際の直覚的な気づきが盛り込まれ、それらが近年の地球のエネルギー、資源問題と結びつけられている。



このアルバムについて、シルヴァン・ショーヴォーは次のように説明しています。


この物語は、数年前、一般公開されていなかった京都の東海庵(妙心寺)の禅庭園に描かれた白砂の線を見つめていたことから始まりました。時が止まったかのような、その一瞬の体験から、私の新作アルバム『The Complexity of the Simple』のインスピレーションが生まれました。

 

本作は2026年6月5日、レーベル「130701」(Fat Cat Recordsの傘下)よりリリースされます。これは、2022年の『L’effet rebond』以来となる、私の初のソロ・スタジオ・アルバムです。


私は、ミニマリズムへの道を歩み続けながら、2016年から2025年までの約10年間にわたり、細心の職人技を以てこれらのインストゥルメンタル曲に取り組みました。この美学は視覚芸術、特に彫刻家ピエール・ラバから影響を受けており、彼は本作のジャケット写真も手掛けています。


この新作を通じて、今後数年から数十年にわたり極めて重要になると私が考える問題に注目を集めたいと思います。音楽産業は、化石燃料(石油、石炭、ガス)のおかげで誕生しました。これらは私たちが日々排出する過剰なCO²の原因であり、産業のあらゆる段階においてこれらに依存しています。

しかし、これらのエネルギーの利用は将来、急激に減少する運命にあります。気候変動を抑制するために社会を脱炭素化する必要があるから、あるいは単にそれらが非再生可能であり、ピークアウトと衰退が避けられないからという理由からです。
この移行は、生態系への逆風が吹き荒れる現代において、途方もなく長期にわたる取り組みです。何年も、おそらく何十年もかかるでしょう。そして、いずれにせよ、早ければ早いほど良いということはわかっています。

こうした状況下で、私たちはいつ行動を起こすべきでしょうか?いつから、炭化水素のない、おそらくはより質素な未来の世界に向けた準備を始めるべきでしょうか?音楽の制作、演奏、鑑賞において、どのような新しい形が生まれてくるのでしょうか?





Sylvain Shauveau 『The Complexity of the Simple』



Tracklist:
 
1 01 - Le zen dans l'art du tir à l'arc 
2 02 - The Guitar Piece I Wrote for Masumi 
3 03 - Wabi Sabi for Beginners 
4 04 - Sen No Rikyu 
5 05 - Lignes Tranquilles Dans Le Gravier Blanc
 

 

オルタナティブ/インディー・ロック・バンド「The Moss」はアメリカのどの年代にもいるような若者のロックミュージックを提供するトリオだ。ぶっ飛んでいてはちゃめちゃなのだが、モスのサウンドにはなぜか惹きつけられるものがある。彼らは定義しがたい概念を純粋にリスナーに伝えようと試みる。


ザ・モスのニューアルバム『Big Blue Moon』は、自由と自信、そして自分自身のルールに従って生きることを謳った、9曲入りの魅力的なインディー・ロック・アルバム。バンドのフロントパーソン、タイク・ジェームズは次のように語っています。


「数年ぶりの本格的なプロジェクトです。前回のアルバムリリースからずいぶん時間が経ち、まるで別人になったような気がします。その間もずっと曲作りやツアーを続け、人間としても成長してきました。今回の作品が形になったことを心から嬉しく思っていますし、この1年間スタジオで自分たちの音楽の新たな形を見つけられたことを誇りに思います。このアルバムは、社会的な規範から解放され、他人の都合ではなく、自分自身が望む通りに生きることを表現しています」


タイク・ジェームズは非常に多趣味な人物であり、数多くの生き方を持っている。サンタクルーズでバン生活を送っている時も、フランスでサーフィンをしている時も、モンタナの牧場で働いている時も、ユタ州でパラグライダーを楽しんでいる時も、彼はまさに「The Moss(苔)」を集める「転がる石」である。そのバンド名のもと、10代の頃にハワイのオアフ島で、そして現在はソルトレイクシティで、独自のオルタナティブロックを書き、演奏し続けている。


「コケはどの大陸にも生えている」と、シンガーソングライター兼ギタリストである彼はバンド名の由来について、ありふれたものと説明している。「決して近縁種の藻類と混同してはいけない。コケは普段目につくこともなければ愛されることもないけれど、どこにでもあり、遍在している。コケについて聞いたことのあるあらゆることは、私たちのバンドにもよく当てはまるんだ」


ザ・モスは4曲入りのEP『Insomnia』でブレイクを果たし、2,500万回以上のストリーミング再生数を記録したタイトル曲は、タイクが「共依存、つまり相手がいなければ自分が不完全だと感じる関係性の局面を描いた、ほろ苦い曲」と表現している。Spotifyの「Viral 50」チャートにランクインした。その他のハイライトとしては、ラスベガスの「Life Is Beautiful」やアイダホ州の「The Festival at Sandpoint」での好評を博したライブパフォーマンスが挙げられる。


最新アルバム『Big Blue Moon』は、自由、自信、そして自分自身のルールで生きることを謳った、9曲入りのインディーロック・コレクションだ。バンドのボーカルを務めるタイクは次のように語っています。


「これは数年ぶりの完全なプロジェクトです。前回のアルバムリリースからずいぶん時間が経ち、まるで別人になったような気分です。その間ずっと曲作りとツアーを続け、人間としても成長してきた。今回のアルバムの仕上がりにはとても満足してるし、スタジオで自分たちの音楽の現代的な形を見つけられたことを誇りに思っている」 


ザ・モスの音楽に限界はない。彼はプロジェクトの旅行トランクに持てる全ての喜びを詰め込んでしまうのだから。60年代のサーフロック、ビートルズの純粋なメロディの喜び、レゲエの踊りたくなるようなアイランド・リズム、それから、リプレイスメンツ、U2、ヴァンパイア・ウィークエンドを彷彿とさせる90年代のエモの鋭い美学を併せ持つ中間的なサウンドを特徴にしている。


また、彼らはユタ州のそびえ立つ山々やハワイのトロピカルなサーフといったアウトドアからインスピレーションを得ている。タイクはアリゾナで育ち、その後モンタナの馬牧場で働きながらスキーを習得。13歳でオアフ島に移住しサーフィンを始めた。ザ・モスの原型がそこで生まれ、サーフィンの合間にタコトラックで客を楽しませるかたわら、地元のチャリティーイベントではハワイのサーフロックのレジェンド、ジャック・ジョンソンと共演する機会も得た。


「私たちの音楽は間違いなく、これまで過ごしてきた環境からインスピレーションを得ています。自然の調和こそが、この世で最も創造的なのです」というタイクの言葉には耳を傾けるべき含蓄が込められている。「あらゆるものが、いかに複雑かつ緻密に調和しているか。瞑想やサーフィン、ハイキングの場所に行ってみれば、そのエネルギーに触れるのは簡単です。その瞬間、どうでも良いことは消え去ってしまう。音楽でも同じことが起こりうるのです」 


「曲に対して即座に反応が返ってくる時、何か特別なことが起こる」と彼は続ける。「ライブの最中であれ、単に曲作りをしている時であれ、その場にいる人々から何らかの反応があれば、自分が正しい方向に向かっていることが分かる。ファンとの間には、妙に個人的なつながりを感じてしまう。どうしてこれほど多くのファンに支持されるようになったのかはよく分からないけど、そうであることに心から感謝している」


「創造的なエネルギーを注いだものは、何でも芸術の形になり得る」とタイクはこのアルバムについて次のように締めくくっている。「そして、それを体現する手腕が上達すればするほど、それを通じて自分をより良く表現できるようになる。音は万物の根源です。それは本当に壮大なことだと思う」


The Mossは7,500万回以上のストリーミング再生回数を誇り、『Alt Press』誌から「注目の新進アーティスト」に選出され、高い評価を得ている。最近のフェスティバル出演には、Bottlerock、Levitate、Ohani、Briston Maroneyとの共演によるParadiesなどがあります。また、バンドは2026年春のヘッドラインツアーを発表しており、Kilby Block PartyではLorde、The XX、Modest Mouseらと共にステージに立つ予定だ。


 

 

▪️EN

The alternative/indie rock band "The Moss" is a trio that delivers the kind of rock music you’d find among young people of any generation in America. While their sound is wild and chaotic, there’s something about it that’s inexplicably captivating. They convey elusive concepts to the listener in their purest form. 

After all, if those concepts could be put into words from the start, there’d be no need to write rock songs in the first place. There are things in this world that are hard to understand. They find a way to convey them. And that’s enough.


The Moss’s new album, *Big Blue Moon*, is a captivating nine-track indie rock album that celebrates freedom, confidence, and living by one’s own rules. Band member Tyke had this to say:


“This is our first full-fledged project in several years. It’s been quite a while since our last album release, and I feel like I’ve become a completely different person. We’ve continued writing songs and touring throughout that time, and we’ve grown as people. I’m truly happy that this project has taken shape, and I’m proud that we’ve been able to discover a new form for our music in the studio over the past year. This album expresses the idea of breaking free from social norms and living life on our own terms, rather than according to someone else’s convenience.”


Whether he’s living in his van in Santa Cruz, surfing in France, working on a horse ranch in Montana or paragliding in Utah, Tyke James is one nomadic individual, a rolling stone who does indeed gather The Moss, the band name under which he’s written and performed a unique brand of alternative rock, as a teen first in O’ahu, Hawaii, and currently in Salt Lake City. 


“Moss grows on every continent,” explains the singer/songwriter/guitarist about the origin of the band’s name, though he has often described it as the result of an experience on acid. “It’s not to be confused by its cousin algae.  It’s neither commonly noticed nor loved, but it’s everywhere, it’s ubiquitous. All the things you’ve heard about moss apply to us.”


The Moss broke through with the four-song Insomnia EP, leading the way with more than 25 million streams, the title track – which Tyke describes as “a bittersweet song about codependency, the point in a relationship where you feel incomplete without the other person” -- has landed on Spotify’s U.S. Viral 50 chart with major support from Sirius XM’s Alt Nation. Other highlights of the past year include well-received sets at Las Vegas’ Life Is Beautiful and Idaho’s The Festival at Sandpoint.


Their latest album Big Blue Moon is an irresistible nine song indie rock collection celebrating freedom, self confidence and living life by one's own rules. Tyke of the band shares, "This is our first complete project in years. I feel like a totally different person from the last time we released an album, it’s been so long. We have been writing and touring the whole time, and growing as people. We love how it came together and are proud to have found a more current version of our music in the studio this past year. It represents breaking free from social norms and living life the way you want it to be, and not on other people's terms." 


With an eclectic sound that echoes both ‘60s surf-rock, the pure melodic joy of the Beatles, reggae’s danceable island rhythms and a hard-edged ‘90s emo aesthetic reminiscent of the Replacements, U2 and Vampire Weekend, The Moss take their cue from the outdoors, both Utah’s towering peaks and Hawaii’s tropical surf. Tyke grew up in Arizona, then worked on a horse ranch in Montana, where he learned to ski, before picking up surfing when he moved to O’ahu at 13. It was there the seeds of The Moss were born, including stints performing alongside fellow surf-rock legend Jack Johnson at a local fund-raiser when not entertaining diners at taco trucks in between surf sessions.


“The music is definitely inspired by the environment we’ve been in. The balance of nature is the most creative thing in the world,” explains Tyke about The Moss’ songs. “How everything works together in such an intricate and detailed manner. Getting to a place where you’re either meditating, surfing or hiking, it’s easy to tap into that energy.  The things that don’t matter then disappear.  That happens with music as well.” 


With a robust 2026 national touring schedule still on tap, Tyke is anxious to get back on the road. “There’s something special that happens when you get an immediate reaction to a song,” he says. “Whether it’s during a live show or even just a songwriting session, if there’s a reaction from people in the room, you know you’re on the right track. It feels weirdly personal with our fans. I don’t know how we amassed such a following, but I’m very grateful we have.” 


“Anything that you put your creative energy into, it can turn into an art form,” explains Tyke. “ And the better you get at it, the better you can express yourself through it. Sound is at the basis of all matter.  That’s pretty epic.”


 

Tour Date:

4/23 - Philadelphia, PA - Brooklyn Bowl Philadelphia

4/24 - New York, NY - Music Hall of Williamsburg

4/25 - Boston, MA - Paradise Rock Club

4/27 - Pittsburgh, PA - Thunderbird Cafe

4/29 - Ann Arbor, MI - Blind Pig

4/30 - Columbus, OH - Skully’s

5/1 - Indianapolis, IN - Hi-Fi

5/2 - Chicago, IL - Thalia Hall

5/6 - Minneapolis, MN - Fine Line

5/7 - Madison, WI - Majestic Theater

5/8 - St. Louis, MO - Off Broadway

5/9 - Kansas City, MO - Madrid Theater

5/11 - Omaha, NE - Slowdown

5/13 - Fort Collins, CO - Aggie Theater

5/14 - Englewood, CO - Gothic Theater

5/16 - Salt Lake City, UT - Kilby Block Party 




アーティストは誰もが、自分なりの表現方法を見つけなければならない。ジア・マーガレットは、声を失って初めて、自分を見出せた。声帯の怪我により長年にわたり歌えなくなった彼女は、他の音楽表現を模索し、アーネスト・フッドが先駆けて、ザ・ブックスが完成させた、複雑でありながら親しみやすいアンビエント・ミュージックの文法を習得した。


今、肉体の声は回復し、芸術的な声は研ぎ澄まされ、彼女は2018年の『There’s Always Glimmer』以来となる初のボーカルアルバム『Singing』で、一つの輪を閉じる。ガラスの上に息が降り注ぐように流れる柔らかなピアノの旋律が導く『Singing』の音楽は、沈黙の中で培われた、宝石職人のような細部への感性を如実に物語っている。


「もう二度と歌えるかどうか、本当に分からなかった時期がありました。だから、回復した後は、力強く復帰しなければならないという内なるプレッシャーがすごくあったんです」とマーガレットは語る。「自分が誰なのか、もう分からなくなっていました。だから、それはまるで一からやり直すような感覚で、自分のとても古くからの部分と再びつながるような感覚でした」 疎外感と再発見が入り混じったこの感覚は、アルバム全体から、ひしひしと伝わってくる。

 

オープニング曲「Everyone Around Me Dancing」では、彼女は舞台袖からパーティーを眺めている。自分の体が共同体の喜びから彼女を遠ざけている一方で、新たな自己認識の手段も与えてくれていることに気づきながら。その場から締め出された彼女は、「地面に、この惑星に、より近い」存在となっている。


「Alive Inside」では、彼女は源からあまりにも遠く離れており、耳を傾けてくれる誰か(「神、去った友人、精霊」)に祈りを捧げている。彼女の声が高まるにつれ、それは歪みの網に囚われているかのように聞こえる。まるで、その探求の中、彼女は語ることのできる限界そのものを押し広げようとしているかのようだ。


『Singing』制作の過程は、そうした感情の一つひとつを信頼することを学ぶ旅だった。このアルバムはロンドンで、フロウ・フロウのガイ・シグスワースと共に部分的にレコーディングされた。彼は、ILĀによるグレゴリオ聖歌やターンテーブルのスクラッチなど、数多くの要素を盛り込んだアルバムのハイライト曲「Good Friend」において、マーガレットが抱いていた奔放なアイデアを統合する手助けをした。


デヴィッド・バザン(Pedro The Lion)やエイミー・ミランに加え、カート・ヴァイルやショーン・キャリーも参加しており、マーガレットの長年のパートナー、ダグ・サルツマンがアルバムの大部分で演奏と共同プロデュースを担当している。ザ・ウィーピーズに在籍していたデブ・タランは、本作の締めくくりであり、決定的なメッセージを込めた「E-Motion」に、ボーカル、ピアノ、ギターで参加している。

 

ジア・マーガレットは常に歌っている。このアルバムのあらゆる音符が、過去の自分たちへの温かなレクイエムを歌い、あらゆる音層が未来の自己を形作っている。アルバム全体を通して、彼女は「言葉にならないこと」の教訓――コミュニケーションをとっているようで実は取れていない、半ば理性的とも言える、我々のコミュニケーションの仕方や、形のない音がメスのように物事の本質を切り裂くようなその性質――を、自身の芸術的な声へと昇華させている。

 


Gia Margaret  『Singing』- jagujaguwar


 

前作では、ピアノ曲を中心にポスト・クラシカルに傾倒したアルバムを制作した、シカゴのシンガーソングライター、ジア・マーガレット。今回は、ボーカリストとしてのアルバムを制作し、シンガーとして劇的な復活を果たす。


ヒップホップ的なサンプリングの手法をふんだんに織り交ぜたポップソング集。その中には、 Jon Husselのようなエレクトリックジャズ/ニュージャズの要素やグレゴリオ聖歌の要素が盛り込まれている。しかし、個々のマニアックな要素はさておき、アルバム全体は、モダンなポピュラーソングが中心となっており、新しい時代のAOR/ソフトロックの音楽性がメインとなっている。全般的には、癒しの雰囲気に満ち溢れたポピュラーが中心で、落ち着いた空気感に満ちている。『Singing』は、大人のためのポップアルバムとして幅広い年代に親しまれるようになるだろう。

 

このアルバムは、録音場所を見ると分かる通り、ロンドンのサウンドの影響が盛り込まれ、それらがシカゴのサウンド(ジャズとヒップホップ)と融合している。前作ではピアノのスコアを中心に組み立てていった様子だが、今作はトラックメイキングを中心として、マギー・ロジャースのようなポップソング、もしくはモダンクラシカルやポスト・クラシカルの音楽性が敷き詰められている。また、古典音楽の影響を感じさせることもあるが、マーガレットはヒップホップのサンプリングやミュージックコンクレートのような要素を取り込んで、新鮮味溢れる音楽を作り上げた。本作には、新しい形式のポップソングがさりげなく含まれているが、野心的にそれらを制作したというよりも、丹念にやっていったら、自然に出来上がったという感じである。''新しい音楽''というのは意図して作られるのではなく、偶然そうなったというだけなのだろう。

 

『Singing』は前作『Romantic Piano』の続編のような意味を持つというような印象を受けた。シンガーとしての声を失い、しばし途方にくれていたマーガレットであったが、前作をきっかけに自信を取り戻し、今作ではそれらのブランクを埋めるどころか、それ以上の円熟したヴォーカリストとしての存在感を示している。今作はミュージシャンとしての完全復活を意味する。

  

本作の冒頭を飾る「Everyone Around Me Dancing」はピアノを中心とし、ダブルボーカルのバラードソングとなっている。しかし、このネオソウル風のしっとりとした曲に、リズム的な力学を及ぼすのが、ヒップホップやブレイクビーツの打ち込みのバスドラムである。聴けば分かる通り、これが普通にかっこいい印象をもたらしている。単一のボーカルのフレーズの反復から、テクノの範疇にあるシンセサイザーの旋律が入ったりというように、徐々に音楽世界の奥行きが広がっていく感覚。それらの反復的な構成から、絵本の物語のように音楽のストーリーテリングの要素が増幅されていく。さらに、Jon Husselの系譜にあるリサンプリングされたトランペットがジャズの雰囲気を形作る。ここに、Miles Davisの示したアンビエントジャズをアルトポップと結びつけることで、新たなアートポップの形が誕生している。メインボーカルのメロディセンスも抜群であり、派手な演出こそないが、聴き応えのあるサウンドが確立されている。                         

 

 「Everyone Around Me Dancing」

 

 

 

ポストクラシカルをヒップホップと結びつける試みが功を奏している。旧来の封建社会(権力)の音楽とストリート(反権力)の音楽の融合は、今までありそうでなかった組み合わせだ。「Cellular Reverse」は、「ドリル」の発祥地であるシカゴのヒップホップカルチャー、それらをローファイ/チルウェイブのサウンドを通してアルトポップソングとして出力している。(ドリルという言葉は当初、シカゴの若者間のスラングとして発生し、”Cool”の代用として使用された)


ボーカルにはジョニ・ミッチェルのような渋さがあり、往年のフォークシンガーからの影響が伺える。これらが、リサンプリングを含めるブレイクビーツを経たポップソングの形式で展開される。シャバカ・ハッチングスを彷彿とさせるジャジーなトランペットのサンプリングもある。聴いていておしゃれで、スタイリッシュな感じがあるのがポイントだ。IDMとして聴いても面白い箇所が見つかる。Tychoのようなメロディアスなテクノのシークエンスが重層的なサウンドを構築する。しかし、全般的には平易な音楽表現に留められ、聴きやすさが重視されている。トラックメイキングも秀逸で、アウトロでは、グロッケンシュピール、テープディレイを用いたチェンバーポップなど、まるで夢の中にいるようなロマンチックな雰囲気を作り上げている。

 

 「Alive Inside」は、Claire Rousey、more eazeの系譜に属するアートポップソングで、サンプリングというより、ミュージックコンクレートの要素が強い。ミュージックコンクレートというのはソフトウェアで行うアクアリウムに例えられ、 細かな作業が多い。音のマテリアルを組み合わせたり、波形をつなぎ合わせたりと、カットアップコラージュにも例えられる。ここでものを言うのが音楽のセンスであるが、それらは結局、実際の演奏者として、あるいは音楽家としての経験の蓄積が必要になってくる。少なくとも素人が手を出すようなタイプの音楽ではあるまい。


しかし「Alive Inside」にはそれがある。上記二人とは異なり、脱構築主義ではなく、構成主義を遵守している。この曲は逆再生の効果を交え、ボレロのような感じで盛り上がりを見せていく。中には、従来のポップソングの形を踏まえたサビの箇所も用意されている。そして、それらはアンセミックなボーカルではなく、ネオソウルのように陶酔感に満ちた感覚的な内容である。


トラックメイキングとボーカルの組み合わせから垣間見えるのは、個人的なセンスの反映である。歌手が個人的に美しいと思える感覚の断片を丹念に積み上げ、それらを土を均すように均一化する。これらの曲は、物質的な内容ではなく、感情の集積が表現されているようだ。だから、どことなく詩的で抽象的な印象をもたらし、その表現領域が無限であるとさえ感じさせる。まるで雨の日の窓の外に、美しい情景がぼんやりと映るのを眺めるような感覚に似ている。

 

アルバムの中盤では、強烈なローファイ性が込められる場合がある。これらは結局、ローファイというジャンルは、ヒップホップのサンプリングの次世代の作曲法として2000年代頃に流行ったが、ジア・マーガレットは、それらをベッドルームポップのような手法で再現している。


しかし、バックグラウンドとなる音楽は飽くまで、舞台における書き割りのようなものに過ぎない。今作では明確にソロシンガーとしての独立性を意識し、メインメロディーのほとんどはボーカルで表現される。そしてメロディセンスが抜群であり、それらはアコースティックギターの伴奏を通じて、インディーフォーク/アルトフォークという形で展開される。表向きには、アルトポップやヒップホップ、ジャズ、ミュージック・コンクレートが強い割合を示しているようだが、「Moon Not Moon」のような曲に見いだせるのは、フォークシンガーとしてのジア・マーガレットの姿である。これは少なくとも、前作だけではよくわからなかった。ヒップホップ/ブレイクビーツのような音楽からフォークソングの形が際立つ瞬間がハイライトとなる。

 

以後の連曲「Rotten」/「Rotten Outro」は、Maggie Rogers(マギー・ロジャース)の近年の音楽性を彷彿とさせる。これらは、ポップソング/ソウルとヒップホップの融合に重点が置かれている。


ただ、「Rotten」のような曲を聴くと分かる通り、これらは西海岸の音楽でもなく東海岸の音楽でもない、中西部らしい音楽性が垣間見れる。それは、両岸地域の文化の雑多的なものを汲み取った特異な音楽性でもある。これらの錯綜していて、一概に決めつけられないような抽象的な音楽性が、中西部の音楽の特徴でもある。「Rotten」では、ストリングスが登場し、ゴージャスな印象をもたらす。しかし、それは必ずしも、画一的な美しさの反映とは言いがたい。まるで、霧の向こうにほの見える景色の幻影を映し出したかのような幽玄な美しさが宿っている。これらの曲の多彩性は、依然としてフォークミュージックの性質を保ちながら展開されていく。一方、「Rotten Outro」はスポークンワードを含めたインタリュードである。サンプリングされた言葉の羅列、リズムとビートに合わせたギターの組み合わせは、エモに近い雰囲気がある。

  

ダンサンブルなシンセポップソングで幕を開ける「Good Friend」は、軽妙で明るい印象を持つ。前作にはなかった陽気なサウンドで、ジョギングをしているときに感じるような爽快感のあるポップソングだ。ソウルをベースにしているが、曲の終盤では意外な展開が待ち受けている。飄々とした展開から少しずつ音楽的な景色が移り変わっていき、ダンサンブルなビートの中から、Lou Reedの「Walk On Wild Side」のようなファルセットが出てくる。さらに後半では、グレゴリオ聖歌をもとにした男性ボーカルが出てきて、荘厳な雰囲気が出てくる。全体的に独創的なセンスを散りばめたこの曲は、音楽における癒しや救いの瞬間があることを示唆している。


「Good Friend」

 



「Phonomenon」では、Tychoのようなテクノサウンドを基調として憂いのあるシンガーらしいポップソングの形が舞い戻ってくる。 この曲では、やはりネオソウルのようなブルージーなサウンドをベースにした、大人のためのAORソングの理想的なカタチが見いだせる。これらの曲は、明確にどの部分が良いというよりかは、全体的な音楽の空気感や流れの中に共鳴を見いだすことが出来る。それはたぶん、肉体的な感覚より内的な感覚の発露を重視しているから起こり得るのだろう。歌詞の面でも、必ず、現象に対する個人的な感覚を通して言葉が紡ぎ出される。この点において、やはり、エモーショナルな印象をもたらす曲が多いと言えるかも知れない。

  

「Ambient For Ichiko」は、典型的なアンビエントではなく、モコモコした水の泡のようなモジュラーシンセ/アルペジエイターを用いたテクノである。しかし、これらの描写的なテクノサウンドは、絵画のような''サウンドデザインとしてのアンビエント''として一聴の価値がある。パルス状の音が組み合わされ、トーンクラスター(密集音階)を作り出す。しかし、ここでは、シュトックハウゼンのような作曲技術の披瀝が示されるのではなく、印象派の感覚的な音楽に重点が置かれている。ポピュラーシンガーでありながら、独創的なテクノサウンドが作り上げられる。


「Phone Screen」にもヒップホップ/ブレイクビーツとフォークミュージックの融合が見いだせる。この曲はポップソングとしても高い水準に位置づけられる。ボーカルを中心として、トランペットのサンプリングやテクノのテクスチャー、アメリカーナ風のペダルスティールなど、驚くほど多彩な音楽表現を通して、音楽の持つ内的な世界が増幅され、音楽的な感覚が無限に広がりを増していく様は圧巻である。電話回線のインターネットのサンプリングなど、懐かしの内容をサンプリングして使用していることを見るかぎり、『Singing』には、Jayda G、Maggie Rogersの最新作に見いだせるような、記憶としての音楽の効果や作用がある。それは結局、過去の追憶を振り返りながら、自己の魂をヒーリングするような効能がある。だから癒しがある。

 

フィルターをかけたサウンドが特徴である「Guitar Duo」。鍵盤奏者とは異なるギタリストとしてのジア・マーガレットの姿を浮かび上がらせる。この曲は、カナダのインディーフォーク/ロックシーンの系譜にあり、MacDeMarco、そのバックバンドのメンバーを務めていたHomeshakeのサウンドに近似している。 海の中で鳴り響くような、特殊なくぐもったサウンドがアコースティックギターの演奏を中心とするオルタナティヴ・フォークソングの形で紡がれる。この曲には、いかにもシカゴらしいユニークさとオリジナリティが込められていることに気づく。

 

『Singing』の最後を飾る「E-Motion」は前曲と繋がっている。「エモ」に因んだジョークのようなタイトルであるが、感動的なフィナーレ/エンディングを作り上げている。ツインボーカルを中心としたポップソングで、オートチューンがバックボーカルに用いられている。American Footballの直近の作風を彷彿とさせるが、何かが決定的に異なる。この曲は、不思議なことに、終わりが示されるというよりも、まだ見ぬ章の始まりのような意味合いが感じられる。


音楽に耳を傾けていると、またひとつ違う世界が広がっていくような瞬間が込められている。間違いなく、最高の一曲で、優れた音楽に共通する愉悦がある。アウトロには、何かしら涙ぐませるような感覚がある。ここには、どうやら、一人のボーカリストとしての全般的な音楽に対する感謝が示されているような気がする。それゆえ、何かしら圧倒的な雰囲気すら感じられる。

 

 

 

94/100 

 

 

 

「E-Motion」- Best Track 

 

 

Gia Margaretによるニューアルバム『Singing』は本日、jagujaguwarから発売。ストリーミングはこちらから。 


Acne Studios(アクネ ストゥディオズ)は、DJ・プロデューサーのPeggy Gou(ペギー・グー)が、2026年4月22日(水)にロンドンにて開催された『プラダを着た悪魔2』プレミア上映会にて、2026年秋冬コレクションのLOOK 21を着用したことを発表いたします。


また、映画『プラダを着た悪魔2』は5月1日には日本語吹き替えで劇場公開されます。詳細はこちらをご覧下さい。


ペギー・グーは南ドイツのハウスシーンでDJとして活動後、ロンドンに活動拠点を移し、独自レーベルを手がけてきた。ソロシンガーとしてXL Recordingsに所属し、2024年にダンサンブルなポップソングを中心とするデビューアルバム『I Hear You』をリリース。来日公演も行っています。


【プラダを着た悪魔2/The Devil Wears Prada 2】



劇場公開日:2026年5月1日(日本語版)


時代を席巻した「働く女性のバイブル」が、華やかにアップグレード! トップファッション誌『ランウェイ』の「悪魔」のような編集長ミランダと、彼女の元アシスタント、アンディ。それぞれの道を歩み成長を遂げた二人が、雑誌存続の危機に再びタッグを組むとき、ファッション業界に大旋風が巻き起こる――。明日へのモチベーションを高めてくれる、映画という名のプレミアが、幕を開ける。


監督:

デヴィッド・フランケル

脚本:

アライン・ブロッシュ・マッケナ

キャスト

メリル・ストリープ (ミランダ・プリーストリー)、アン・ハサウェイ (アンドレア(アンディ)・サックス)、エミリー・ブラント (エミリー・チャールトン)、スタンリー・トゥッチ (ナイジェル・キプリング)

日本語版声優:

宮寺智子(ミランダ・プリーストリー)、小松由佳(アンドレア(アンディ)・サックス)、園崎未恵(エミリー・チャールトン)、仲野裕(ナイジェル・キプリング)



Misha × Jessica Joliaによるニューシングル「Ordinary Low」 揺らぐ心の機微を描く、パンチと軽やかさが共存するR&B
Jessica Jolia& Misha

 
「Ordinary Low」は、フィンランド出身のプロデューサー/アーティストMishaと、LAを拠点に活動するシンガーJessica Joliaによるコラボレーション楽曲。なめらかでほどよい跳ね感を持つR&Bサウンドの中で、不安定な感情や揺らぎを描き出している。

オランダと南アフリカにルーツを持つJoya MooiによるニューEP 揺れ動く感情を描いた、パーソナルでありながら普遍的な作品



本作は、個人的な変化に満ちた一年を背景に、嫉妬や喪失、母性といった複雑な感情を、多面的で揺れ動くものとして描き出している。前作のEP『Open Hearts』が他者の語り難い物語に焦点を当てていたのに対し、本作ではより内面的でパーソナルな視点へと深く踏み込んでいる。


タイトルトラック「All The Things」は、友情の終わりに漂う静かな余韻を捉えた一曲であり、対立そのものではなく、手放す過程とその先にある心の整理を描いている。Easy Freakによる抑制の効いたプロダクションと、Joya Mooiの内省的なソングライティングが重なり合い、本作全体のトーンを象徴する仕上がりとなっている。サウンド面では、ソウルやオルタナティブR&Bを軸としつつ、オランダと南アフリカ双方のルーツに由来するニュアンスを織り交ぜた、流動的でグローバルな音像が広がっている。


「Technicolour」では嫉妬や他者との比較がもたらす感情の複雑さを掘り下げ、「Pay Day」では母になることを前にした心境の変化と、経済的な安定を超えた拠り所を模索する姿を描いている。


「Only Water」はオリンピック飛び込み選手グレッグ・ロガニスの人生に着想を得て、逃避と再生をメタファーとして表現し、「Lookalike」では記憶がふと重なる瞬間を通して、喪失と向き合う。これらの楽曲が有機的に結びつくことで、矛盾や脆さを抱えたまま前に進む姿が、一つの物語として浮かび上がる。『All The Things』は、Joya Mooiの表現の幅をさらに広げる作品であり、個人的でありながら普遍的な感情の揺らぎに寄り添うリスニング体験を届ける。



Joya Mooi:




オランダと南アフリカにルーツを持つシンガー/ソングライター、Joya Mooi。ソウルやオルタナティブR&Bを軸に、グローバルな感覚を取り入れたサウンドと繊細なストーリーテリングで知られ、個人的な内省と広範な文化的物語を行き来しながら、アイデンティティやルーツ、複雑な感情を描き出す。


現代のソングライティングにおいて単純化されがちな感情の揺らぎや矛盾を、ありのままに受け止める余白を持った表現を特徴とし、温かみのある歌声と丁寧な歌詞を通じて、国境を越えてリスナーとつながり続けている。



[作品情報]



アーティスト:Joya Mooi

タイトル:All the Things

ジャンル:R&B, Pop

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS  

配信リンク:https://lnk.to/joya-mooi-all-the-things


トラックリスト:

01. Technicolour feat. Ric Wilson

02. All The Things

03. Pay Day

04. Only Water feat. Lady Donli

05. Lookalike


Review:


最新EPはダイアナ・ロス時代のシンセサイザーを基調としたポップとR&Bの融合をしめしたオープニングトラックに始まり、コラボレーターのヒップホップの話を織り交ぜた音楽世界がみち広がる。二曲目では陽気なイントロダクションとは対照的に、ほのかなペーソスを感じさせるシンセポップが続く。


EPのハイライトとなる「Pay Day」は強烈なイントロからしっとりとしたソウルミュージックが流れていく。これらの音楽はかつてどこかに存在した音楽の安心感と懐かしさを思わせる。ボーカリストのムーイは楽曲ごとに歌い方を変化させ、愛おしき人生の日々の思いを吐露する。


確かにジョヤ・ムーイのボーカルには人を酔わせ、ほどよい陶酔感が込められている。Lady Donliをフィーチャーした三曲目ではジャズファンクからの影響を滲ませる。しかし、そのメロウなボーカルの真価は最終トラック「Looks Like」において発揮される。記憶と喪失を描いた本楽曲は現代的なネオソウルを踏襲しつつ、ムーイ特有のバラードソングの形を見出すことが出来る。