The Top 10 Songs : Pixies  ピクシーズのベスト曲 トップ10

 

Pixies:  2023年時点のラインナップ

 

1986年に結成された米国のオルタナティヴ・ロック・バンド、Pixies。ブラック・フランシス、ジョーイ・サンティアゴ、デヴィッド・ラヴァリング、キム・ディールによって結成された。

 

以後の時代、英国の4ADと契約を交わし、コクトー・ツインズの後のレーベルを代表するバンドとなり、同時に80年代から90年代のオルタナティヴシーンを牽引しつづけた。代表作には『Surfer Rosa』がある。93年にはバンドは解散を発表し、フランシスはソロ活動に専念するようになった。

 

2013年にはオリジナル・メンバーのキム・ディールが脱退し、翌年にThe Muffsのバズ・レンチャンティンをベースに迎える。その後、長年在籍してきた4ADからBMGに移籍し、作品を発表しつづけている。

 

昨年には、最新アルバム『Doggerel』を発表し、復活を遂げ、以前と変わらぬオルタナティヴサウンドでファンを魅了しつづける。リリース記念を兼ねたヨーロッパ・ツアーは人気を博し、今後さらにヨーロッパ圏で人気を獲得しそうな気配も出てきた。今回の企画では、Pixiesのトップ・ソングを大まかに取り上げていきます。以下で紹介するのは代表曲のほんの一部です。ここでは取り上げませんでしたが、最新作『Doggerel』にも良曲が多くありますので探してみて下さい。

 

Pixies: キム・ディール在籍時



10.「Letter To Memphis」-『Trompe Le Monde』



Pixiesの代表作『Surfer Rosa』に比べると、比較的知名度の低いアルバム『Trompe Le Monde』に収録されている。

 

ジョーイ・サンティアゴの名ギタリストとしての才覚が光り、轟音のディストーションギターとトリルが劇的に炸裂する。ボーカルバージョンと、インストバージョンがリリースされている。後者は、コンピレーション・アルバムで、B面のベストアルバム『Complete B Sides』に収録されている。ピクシーズのオルタナティヴ性に迫るためにはうってつけのトラックの一つ。

 

この曲はブラック・フランシスがチャック・ベリーの曲「Memphis, Tennessee」をアレンジした。1991年12月号のSpin誌の評論家のアイヴァン・クライルカンプは、「メンフィスへの手紙」についてこう評価している。「ピクシーズのキッチュでフロウな感性の中で、"trying to get you "のような一節は、無味乾燥な絵葉書の裏に隠された純粋な気持ちのかけらのように心に残る・・・」

 

 

 

 

9. 「Monkey Gone To Heaven」-『Doolittle』

 

1989年4月発売のアルバム『Doolittle』の7曲目に収録されており、同アルバムからの先行シングル曲、最初のシングルカットとしてアメリカとイギリスでリリースされた。ピクシーズはメジャーレーベルであるエレクトラ・レコードと契約を結んで間もなくこの曲を発表したので、この曲がアメリカでの実質的なメジャーデビュー曲となった。スポークンワードという表現形式が見られることにも着目したい。


作詞・作曲はフロントマンのブラック・フランシス、プロデューサーはギル・ノートン。歌詞は環境保護主義と聖書の数秘術に触れながら、『ドリトル』で模索されていたテーマが反映されている。ゲストミュージシャンを起用した初のピクシーズ作品で、チェリストのArthur Fiacco、Ann RorichとバイオリニストのKaren Karlsrud、Corine Metterの計4人がゲストで参加している。 

 

 楽曲は好評を博し、ローリング・ストーン誌のDavid Frickeは、「諷刺の効いた、神とゴミについて考えさせずにはいられなくするものだ」と評している。リリースから何年も経った後も当曲は様々な音楽誌から賞を与えられている。 


 


 

8. 「Here Comes The Man」ー『Doolittle』

 
「Here Comes Your Man」は穿った見方かもしれないが、4ADのコクトー・ツインズのようなドリーム・ポップとは別のこのレーベルの後世の象徴的なサウンドの素地となったと言えるかもしれない。The Velvet Undergroundのようなローファイ性とオルト・ポップが融合し、バンドの曲の中ではかなり聞きやすい部類に入る。メインボーカルは、キム・ディールが担当している。

 

作詞作曲は、バンドのフロントマンであるブラック・フランシス、プロデュースはギル・ノートンが手がけた。本作は、1989年6月に2作目のアルバム『Doolittle』の第2弾シングルとして発売された。


 「Here Comes Your Man」は、ブラック・フランシスが10代の頃に書き、1987年にデモ音源が制作されたが、リリースに対して消極的だったという。1987年に発売されたEP『Come On Pilgrim』、1988年に発売された『Surfer Rosa』には未収録となっていた。アメリカのビルボード誌が発表したModern Rock Tracksチャートでは最高位3位を獲得した。

 

 

 


7. 「I Bleed」ー『Doolittle』

 

こちらも『Doolittle』の収録曲。最初期のレアなデモ・トラックを集めた『Demos』(1987)にも収録されている。いわゆる、オルタナティヴ・ロック(オルト・ロック)の代名詞的なトラックの一つで、このジャンルの感覚を掴むためには聴いておいても損はないはずである。

 

ひねりの効いた亜流のコード進行、不協和音の連続によるノイズ性、クライマックスにかけての斬新な移調がきわめてドープである。ジョーイ・サンティアゴの狂気的なギター、デイヴィッド。ラヴァリングの簡素で展開をスムースに導くドラムの魅力は元より、ブラック・フランシスとキム・ディールのツイン・ボーカルの掛け合いは、魔力的な効果をトラックに及ぼしている。

 

Yo La Tengoの『This Stupid World』の発売日、Polyvinylのスタッフの方が仰っていた記憶があるが(レーベルのスタッフが他のレーベルの作品について言及することはきわめて稀である)、時代を問わず、優れた音楽とは、必ずしも一般的な規則やルールにより束縛されるものではないのである。




6. Doggerel -『Doggerel」

 

昨年、リリースされた最新作『Doggerel』のエンディング曲。立ち上がりの遅いイメージのあるこのアルバムだが、バンドの円熟味を感じさせる曲も複数収録されている。「Pegan Man」、「You're Such A Sadducee」といった曲は全盛期にも劣らない。そして、このエンディング曲ではファンクやダブのリズムをもとに新たなステップへと歩みを進めようとしている。

 

ピクシーズは、8枚目のスタジオアルバム「Doggerel」を、バーモント州ギルフォードにあるスタジオ、ギルフォード・サウンドでレコーディングした。マネージャーのリチャード・ジョーンズは、ピクシーズが一緒にライブ録音できる大きな部屋と、プロデューサーのトム・ダルゲティのための一流のミキシングボードが完備された理想的なスペースであったと説明する。

 

ピクシーズにとってスペースが適していただけでなく、バンドのマインドセットも適していた。セッションに臨むにあたり、ベーシストのパズ・レンチャンティンは、フランシスがピクシーズの2019年の『Beneath the Eyrie』から数年の間に、通常よりもはるかに大量のデモを蓄積していたことを指摘している。そして、ギタリストのジョーイ・サンティアゴが言うように、「今作では、常に音楽モード全開だった。ヘッドスペースがずっと良かったんだ」とのことである。


 



5.「Gigantic」-『Surfer Rosa』

 


「ギガンティック(Gigantic)」は、彼らのライブのレパートリーの一つ。ベーシストのキム・ディールとリード・ヴォーカル/ギタリストのブラック・フランシスが共作した。

 

1988年にリリースされたバンド初のフル・スタジオ・アルバム『Surfer Rosa』に収録されている。"Gigantic "は、その年の暮れにバンド初のシングルとしてリリースされた。ディールがリード・ヴォーカルをとるこの曲は、ピクシーズ最大のヒット曲のひとつで、コンサートではアンコールで演奏されることも多い人気曲。



"Gigantic "はメジャーチャートでランクインすることはなく、サーファー・ローザからの唯一のシングルカット。しかし、ピクシーズの最初のヒット曲として成功を収め、今日に至るまでラジオでプレイされ続けている。シングル・ヴァージョンは、ピクシーズの2004年のベスト盤『Wave of Mutilation』に収録されている。


 

 

 

4. 「Wave Of Mutalition(UK Surf)」ー『Complete B Sides』/『Doolittle 25: B-sides Peel Sessions And Demos』

 

このあたりから神がかりの曲が中心となっていき、常人にはまず作り得ないような音楽が続く。「Wave Of Mutilation」は、2ndアルバム『Doolittle』の収録曲。ベスト・アルバムのタイトルにもなった。ピクシーズの苛烈なロックバンドのイメージとは別のセンチメンタルなイメージを形成している。オリジナル・バージョンはロック調ではあるが、UK Surfのバージョンはアコースティック・ギターを基調にしており、優しげで切なげな雰囲気を醸し出している。

 

この曲の歌詞の中には、破滅的なものと、それとは相反する希望が混在している。「我慢をやめて、別れを口にし
、車で海に突っ込んだ
。僕が死んだと思うだろ? でも、これは船出なのさ」という歌い出しは、ある意味では、中期までのピクシーズというオルタナティヴ性の主要なイメージを形成している。シニカルな表現とその中にある奇妙なカタルシスは、多くの報われぬ人々への讃歌ともなっている。後には日本のオルタナティヴロックバンド、Number Girlが同曲をカバーしているのは周知の通り。ここでは、UK Surfのバージョンを推薦しておきたい。




3.「Debaser」 -『Doolittle』

 

ピクシーズのキャリアの中で最もパンキッシュな瞬間を刻印している。 テーマ自体は戦慄させるものがあるが、フランシスの痛快なシャウトとそれとは対象的なコケティッシュなキム・ディールのボーカル、サンティアゴの秀逸なギタープレイが鮮烈な印象を持つ。オリジナルバージョンを始め、シングルバージョンのリミックスを収録している。このシングルは、ライヴ、スタジオ、デモの3形態でリリースされた。現在でも重要なライブレパートリーとなっている。

 

1989年のアルバム『Doolittle』の1曲目に収録。この曲はフロントマンのブラック・フランシスが作詞・作曲し、『ドリトル』のレコーディング・セッションでギル・ノートンがプロデュースした。

 

 この歌詞は、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリによるシュルレアリスム映画『アン・シャン・アンダルー』に基づいている。

 

ブラック・フランシス曰く、「ブニュエルがまだ生きていたらと思う。彼はこの映画を特に何も描いていない。タイトル自体がナンセンスだ。私の愚かで、似非学者で、世間知らずで、マニアで、前衛的で、素人っぽいやり方で『Un chien andalou』を観て、『そうだ、この映画について歌を作ろう』と思った」という。ここでは4ADのミュージックビデオを使用させていただく。

 

 

 


2.River Euphrates - 『Surfer Rosa』


ニルヴァーナの『In Utero』でもお馴染みのスティーヴ・アルヴィニがプロデュースしたオルタナティブの金字塔『Surfer Rosa』の収録曲。現在まで様々なロックミュージックを聴いてきたが、この曲ほど風変わりな作品は存在しない。

 

イントロのジョーイ・サンティアゴのディストーション・ギターから転じ、「Ride Ride Ride」というブラック・フランシスとキム・ディールのユニゾンのコーラスも奇妙なのだが、スタンダードなロックの通常のスケールとはまったく異なる展開へと続く。サビにも似た「ride a tire down river euphrates」というアンセミックなボーカルには奇妙な中毒性があり、イントロのコーラスと共に口ずさみたくなる。


シングル・カットこそされてはいないものの、彼らの重要なライブレパートリーの一。リードギターのみでこれほど分厚い音作りをすることは並のギタリストには不可能。レス・ポールの持つダブルコイルの特性を自在に使いこなす天才ギタリストしか生み出し得ないオルタナティヴのニューウェイヴ。ラテンなのか、カリブなのか、メキシカンなのか、アメリカーナなのか。おそらくそのいずれにも該当するワイアード過ぎる名曲。ここではライブバージョンを紹介する。

 

 

 

 

1.Where is My Mind - 『Surfer Rosa』


こちらも『Surfer Rosa』の収録曲。ブラック・フランシスのバラードにおける才能が開花し、それが霊的なキムディールのコーラスと劇的なスパークを発生させ、ピクシーズの代名詞が出来上がることに。「Where Is My Mind?」は、デビューアルバム『Surfer Rosa』の7曲目に収録されている。バンドの代表曲のひとつで、数多くのカヴァー曲がある。この曲はローリングストーン誌の2021年版「500 Greatest Songs of All Time」で493位にランクインした。


フロントマンのブラック・フランシスがマサチューセッツ大学アマースト校在学中に、カリブ海でスキューバ・ダイビングをしたときの体験に触発されて書かれた。後に彼は、「とても小さな魚が僕を追いかけようとしていた。魚の行動についてはあまり詳しくないので、理由はわからない」

 

ギタリストのジョーイ・サンティアゴは、曲のギターラインを作曲した。彼は自分のパートについて、「これは実は最初に試したものなんだ。ダラダラしたポテトが、瞬時に力強くフックに富んだサウンドになったんだ」と語っている。1999年のブラット・ピットの主演映画『ファイト・クラブ』でフィーチャーされた後、この曲はさらに幅広い聴衆を獲得するようになった。