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Roth Bart Baronが新作アルバム『HOWL』を11月9日にリリースすることを公表している。さらにこの発売告知に合わせて、現在放送中のTBSドラマシリーズ「階段下のゴッホ」のエンディングテーマ「赤と青」をデジタルシングルとして本日、9月28日にリリースしている。

 

ドラマのために制作された新曲「赤と青」は、この時代に小さな孤独を抱えながらも生きる人々の”勇気の新たな応援歌”となっている。

 

さらに、Roth Bart Baronの7thアルバム『HOWL』のトラックリスト、アートワークも公開された。

 

11月に発売が決定した新作アルバム『HOWL』には、「赤と青」の他、JR東日本のCMソング「KAZE」、Disney+「すべて忘れてしまうから」のライブエンディング曲「糸の惑星」、つくばみらい市、シティプロモーション曲「MIRAI」等が収録される。さらに、8月7日、日比谷野外音楽堂にて開催された”Bear Night 3"で初披露された、中村佳穂をフューチャリングした「月に吠える」や、ライブではお馴染みの「場所たち」がオリジナル音源として初収録される予定だ。  

 

 


Roth Bart Baron 『HOWL』7th Album

 


 Tracklist:

 

 1. 月に吠える feat.中村佳穂 / Werewolf Under the Moon


2. K A Z E
〜 JR東日本CMソング 〜


3. 糸の惑星 / Yarn Song
 〜Disney+『すべて忘れてしまうから』ライヴ・エンディング曲〜


4. 赤と青 / Red and Blue
〜 TBSドラマ『階段下のゴッホ』エンディング曲 〜


5. HOWL


6. O N I


7. Ghost Hunt (Tunnel)


8. 場所たち / Lonely Places


9. 陽炎 / HAZE


10. MIRAI
〜 つくばみらい市・シティプロモーション曲 〜


11. 髑髏と花 (дети) / Skulls and Flowers (дети)


初回限定盤 CD + Blu-ray - PECF-91044 ¥4,700+tax
通常盤 CD - PECF-1194 ¥3,000+tax
Vinyl - PEJF-91045 ¥3,300+tax ※11月末発売予定

 

また、Roth Bart Barron はビルボードライブ大阪から開始される『Roth Bart Barron”HOWL"Tour2022-2023』を発表している、パート1〜の4公演のオフィシャル先行予約が開始されている。詳細は下記より。

 

チケットぴあ:

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2222524

 

 

湘南出身のシンガーソングライター、さらさは、今年4月に記念すべき1st EP『ネイルの島』を発表している。9月7日、このEPに収録されていた「Amber」のリミックスバージョンをデジタル配信としてリリースした。


4月に1stEPをリリースしたばかりのさらさは、フジロック出演を果たし、話題を呼んでいる。このシングルは、EP「ネイルの島」のリードトラック「Anber」をDJ Mitsu The Beatsがリミックスを手掛けたものである。流れるようなピアノ、憂いある歌声が合わさり、オリジナル・バージョンとは趣が異なるドリーミーなリミックス作品として仕上がった。

 

 

さらにこのリミックスについて、DJ Mitsu The Beatsは以下のようにコメントしている。

 

origami SAIで初めてご一緒させていただき、初めてその存在を知りました。もちろん良いアーティストだなって思いましたが、まさかのリミックスのオファー。凄くうれしかったのと共に、送られてきたアカペラを聴いて完全にノックアウトでした。なんとも形容しがたいオリジナルな歌声で、それに引っ張られて、リミックスはすぐに形になりました。自分のワークスとしても会心の出来だと思ってます。ぜひ聴いてみてください。


Weekly Recommends 


YMB「Tender」



 

 

 Label: Friendship.

 Relaese Date: 2022年6月29日

 

 

 

ー「Post City Pop」時代の幕開けー



YMBは、2015年に大阪で結成された。Yoshinao Mitamoto、いとっち、ヤマグチ・ヒロキ、今井涼平による四人組のインディー・ポップグループです。

 

これまでにYMBは、「City」(2019年)、「ラララ」(2020年)、「トンネルの向こう」(2021年)、三作のフルアルバムを残しており、昨日、6月29日にFrendship.からリリースされた「Tender」は通算四作目のアルバムとなる。現在、YMBは東京のライブツアーを間近に控えていて、吉祥寺のインディーフォークバンド、Gusokums(グソクムズ、P-VINEに所属)と共演する予定です。


YMBのサウンドは、シティポップ、渋谷系をベースにしたポピュラーミュージックに彩られており、東京のCero,近年、中国に活躍の幅を広げつつある"She Her Hers"、澤部渡の"スカート"に近い、おしゃれな楽曲が魅力で、人を選ばず、気軽に楽しめるサウンドと言えるかもしれません。

 

YMBの4thアルバム「Tender」では、これまでの作品と同様、ほんわかとした雰囲気の良いサウンドが繰り広げられる。さらに、そこに、男女のツインボーカルの兼ね合いが心地よい空間を演出する。バンドサウンドとしては、ジャズ、R&B、ファンクといった幅広いジャンルの影響を滲ませたブレイク(休符)の多い難易度の高いサウンドアプローチであるにもかかわらず、演奏に力強いグルーブが感じられるのは、YMBのメンバーの演奏力の高さ、そして、曲に対する理解の深さ、バンドメイトとして上手く連携が取れているからこそ。このぴったり息の取れた演奏力、完成度の高さに裏打ちされた巧みなバンドアンサンブルは、リスナーを十分惹きつけるものがある。音楽自体も自己主張が強くないので、まったりした雰囲気が漂い、多くの人に共感を与えるような魅惑的なポピュラーサウンドが本作「Tender」で生み出されているのです。


また、日本語の口当たりの良い歌詞のニュアンスについても、これまでにありそうでなかった表現が見いだされ、作曲者のYoshinao Miyamotoの文学的な感性が上手く詩の中に引き出されています。

 

 「Tender」には、「思春期的な捻くれの効いた言葉選び、パートナーの寝顔を見て、結婚生活の自戒を打ち立てる純情な不器用さなど、既出のソングライターとは一線を画す」秀逸な日本語詞の表現性が見いだされる。これは、多くの人に共感と頷きを与える重要なポイントに挙げられる。実際の音楽が歌詞と絶妙にマッチしたミドルテンポの心地良いポピュラー・ソングが繰り広げられており、さらに、Cero,She Her Hersのように、エレクトロポップ、ファンク、ローファイを咀嚼した日本のモダンサウンドが提示される。歌詞の表現法にちょっとした親近感をおぼえるのは、YMBのYoshinao Miyamotoが肩肘をはらず、等身大の自分の姿をありのままに表現しようとしているから。さらに、Miyamotoは、実体験における成功でなく、日常の失敗の経験をさらりとかろやかに歌いこんでいる。この点も大きな魅力であり、それを卑屈になるわけではなく、また、自己憐憫に浸るわけでもなく、爽快な空気感で歌いこんでいる点も素晴らしい。

 

シティ・ポップサウンドを基軸とした、男女のツインボーカルの涼し気で洗練された響きがこのアルバムの最大の魅力ではありますが、もうひとつ目を惹くのは、懐かしの平成時代のJ-POPのキラキラとした輝きがいたるところに見いだされること。小沢健二をはじめとする「渋谷系」だけでなく、小室ファミリーに代表される「エイベックス・サウンド」、渋谷をはじめとする東京の街角で流れていた王道のポピュラー・ソングがここに再現される。平成時代の音楽に慣れ親しんできた多くの一般のリスナーはこのアルバムに懐かしみを見出してくれると思います。

 

面倒な話はさておき、YMBの「Tender」は、多くの人に共感を与える音楽、日本語詞によって流麗に彩られている。これは、2020年代のシティ・ポップ、「Post City Pop」時代の幕開けを告げる傑作と呼べそうです。現在、日本は、40度に気温が達する地域もあり、あまりに暑すぎるので、今週は、おしゃれで涼し気なシティ・ポップ・サウンドを選びました。これからの季節、家の中で、また、ドライブ中に、YMBの最新作「Tender」を聴いてみてはいかがでしょう??



Critical Ratings:

84/100 

 

 

 

Weekend Featured Track 「Tender」 

 

 

 

Friendship. Official:

 

https://friendship.mu/release/tender/ 

 

 

 Laura  Day Romance 「Roman Candle 憧憬蝋燭」




  

Label: lforl

 

Release Date:2022年3月16日

 

Genre : Alternative Folk/J-POP

 

 

2017年に東京で結成され、翌年、デビューEPをリリースしているローラ・デイ・ロマンス。他にも2018年には世界的な知名度を持つイベント、サマーソニックにも出演を果たしていて、インディーポップバンドではありながら、一般的なリスナーの間でも徐々に注目度が上がりつつある四人組です。

 

往年のサニーデイ・サービスのように、スコットランドのネオ・アコースティックに近い作風が特徴であり、その他、平成時代の日本のグループ、My Little Lover、Brilliant Greenに近い叙情性を滲ませる音楽性が特徴です。また、洋楽にも親しんでいると、メンバーが語っている通り、アメリカのニューヨークのバンド、ビックシーフにも近いオルタナフォーク性を擁している。


3月にリリースされた「Roman Candle 憧憬蝋燭」は2020年の「farewell Your Town」に続く二作目のフルアルバム。前作のアルバムでは童謡や歌謡を下地にした可愛らしい世界観を展開していたローラ・デイ・ロマンスはこの最新作のおいて、それとは全く別のアプローチに取り組んでおり、ゆるやかで爽やかさのあるインディーフォーク/オルタナフォークにシフトチェンジを図ってます。ギター、ベース、ドラム、キーボードの編成が生み出すバランスの取れた安定感のある作品が生み出されている。 

 

基本的にはこの四人組の音楽的なバックグラウンドと思われる平成時代のJ-POPを下地に、そこに、ディストーションギター、エレクトリック・ピアノ、スティールギター、その他にも、DTMを介して、ソフトシンセサイザーの実験的な音色やシークエンスを取り入れている点が、この四人組の音楽性にオルタナティヴ性を付け加えています。


しかし、それらのオルタナティヴ性はそれほど取っつきづらいものとはなっていません。その理由は、このバンドはスピッツやサニーデイサービスのようにJPOPらしい聞きやすいフォークに取り組んでいるから。アレンジ面で多少実験的な試みをしたとしても、そのバンドの軸のようなものがぶれない。バンドサウンドとしては相当洗練されているので、多少の冒険をしたところでは、これらのJ-POPサウンドらしい特徴が崩れたり、薄められたりはしないでしょう。

 

渋谷を拠点にするグループのためか、このアルバムは、特に平成時代の「Shibuya-Kei」の音楽性に重点が置かれているように感じられるのが良く、さらにその要素の上に、現代的なフォークの色が取り入れられているのも素晴らしい。

 

このバンドの持ち味である以上に挙げた要素、いや、それ以上のJ-Indieの精神性のようなものが、この新作アルバム「Roman Candle」では存分に発揮されており、ひねりのない王道の平成時代のJ-POPの穏やかで開放感に溢れたインディーフォークの王道が体験出来、さらにコンクリート・ジャングルーー東京に生きる人々に癒やしをもたらしてくれるような作品です。ヒップホップやロックにおいては、海外のアーティストが何枚か上を行っているのは事実なんですが、海外の作品だからという理由だけで持ち上げすぎるのも良いことではないはずです。日本にも良い音楽があるんだということを改めて痛感させてくれる素晴らしいアルバムです。


(Critical Rating 86/100)


 

 


・Amazon Link



 安藤裕子

 

 

安藤裕子さんは神奈川県出身のアーティスト。2002年に女優としてデビュー、「池袋ウェストゲートパーク」を始め、多くのドラマに出演。その他、映画、CM出演を始め、テレビ、ラジオ出演といった多才な経歴を持つ女優ですが、2003年から、ミュージシャン、シンガーソングライターとして活躍されています。 


2003年には1st minialbum「サリー」でデビュー、月桂冠のCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され大きな話題を呼んでいます。

 

これまでの18年という長いキャリアで、十一作のアルバムを発表。多作なアーティストに数えられるでしょう。楽曲のソングライティング、作詞といったミュージシャンの基本的なクリエイションはもちろん、CDジャケット、グッズデザイン、メイク、スタイリングまで自身でこなされていらっしゃる点では、メジャーアーティストに属しながらもDIYの活動を行ってきています。


プロミュージシャンとしての活動と併せて女優としての活躍も目覚ましく、2014年には大泉洋主演の「ぶどうのなみだ」にてヒロイン役に抜擢され、女優としてデビュー後、初めて本格派の演技に挑戦しています。

 

2018年にはデビュー十五周年を記念し、初のセルフ・プロデュース作となる「ITALIAN」を発売。

 

2019年には、全国4箇所を巡るZeppツアーを開催する。 2020年8月26日にニューアルバム「Barometz」をリリース。収録曲の「一日の終わり」のMVをショートフィルム化した映画「ATEOTD」がイオンシネマ他で全国公開されています。

 

2021年には「安藤裕子 Billborad Live 2021」を開催。同年8月には「うきわー友達以上、不倫未満ー」のオープニング曲「ReadyReady」を配信。10月、表紙モデルと短編作品1作が収録された「コーヒーと短編」がミルブックスより刊行。同月29日公開の映画「そして、バトンは渡された」への出演も果たしています。


女優業と様々なメディアへの出演と多岐に渡る活躍をされている安藤裕子さんですが、アーティストとしての活躍にも期待していきたいところです。

 

 

 

 

「Kongtong Revcordings」 Pony Canyon Inc.

 

 

「Kongtong Recordings」2021
 

 

 

Scoring

 

 

 

 

 

 

Tracklisting

 

 

1.All the little thing

2.ReadyReady

3.UtU

4.Babyface

5.恋を守って

6.森の子ら

7.少女小咄

8.Toiki

9.僕を打つ雨

10.teatime

11.Goodbye Halo

12.衝撃 -Album Ver.

 

 


「Kongtong Recordings」

Listen on:

 

https://songwhip.com/yukoando/kongtong-recordings

 

 

 

 

ご自身のHPの日記においては、”ねえやん”と名乗るシンガーソングライターの安藤裕子さん。研ナオコさんをリスペクトしていることでも有名なアーティストですが、2021年11月7日にポニーキャニオンから発売された「Kongtong Recordings」は、安藤裕子さんのどことなく音楽の渋い趣味を伺わせるアルバム作品であり、トリップホップ、ジャズ、チルアウトといった作風を自由自在にクロスオーバーしながら、独特な雰囲気を漂わせる聴き応え充分の傑作が誕生しています。

 

これまで初期の作品の「サリー」に見受けられるように、J−POPアーティストの王道を行くような音楽性を追究してきたシンガーソングライターの安藤裕子さんではありますが、今作「Kongtong Recordnigs」は旧来の作品とはまったく異なる質感をもった良作が生み出されています。

 

「Kongtong Recordings」と銘打たれた安藤裕子さんの十一作目となるスタジオ・アルバムは、ジャケットワークにしてもミステリアスな印象をもたらす作品、そのあたりは横溝正史のファンであるというのが少なからず影響しているかもしれません。「混沌した録音」という題名についは、世相をいくらか反映しているようなニュアンスも込められているように思え、音楽を介しての女性の憂鬱、あるいはアンニュイ、といった感情を「詩的なうた」という形で表現されているように思えます。また、曲調についてもこれまでのJPOPアーティストとしての延長線上にありながら、渋い質感によって彩られています。ときには、トリップホップやアシッド・ジャズの領域に入り込んでいるように思え、ソングライターとしての大きな才覚が発揮された作品ともいえるかもしれません。


特に、8曲目に収録「Toiki」はバラード曲として逸品です。素晴らしいソングライターとしての資質が発揮された作品といえ、このアンニュイな楽曲はポーティスヘッドの最初期の音楽性に近いアプローチが図られているような印象を受けます。つまり、イギリスのブリストルの電子音楽のサウンドを日本語に組み直し、J-popとして昇華している点に、このアーティストの真骨頂、音楽家としてのプライドが見いだされると言えるでしょう。


その他にも#5「恋を守って」また「僕を打つ雨」は懐深さを感じさせ、ソウルやR&Bに代表されるようなこころなしか夜の雰囲気を感じさせる楽曲、J-popとして聴いてもただならぬ深みの感じられる良曲といえるでしょう。

 

シンガーとしても最初期に比べ、アルバムのアートワークに因んでいうなら、いよいよ仮面をはぎとった!!といえるかもしれません。これまでよりもさらに深み渋みの感じられる秀逸なシンガーソングライターになってきているように思え、初期のフレッシュさに加え、歌手としての円熟味が活動18年目にして加わったという印象も受けます。また、これらの楽曲には洋楽の後追いではない歌謡曲に対する影響性もそこはかとなく見いだされることについても言及しておかなければならないでしょう。

 

「ReadyReady」といった比較的理解しやすい魅力的な作品も見受けられる一方、その他数多くの秀逸な本格派の楽曲が収録されています。消費のためではない、じっくりと長く楽しめる味わい深い作品。これまでリリースされた作品のデジタル配信再生数が思ったほど伸びていないのが残念。世界水準の資質を持った素晴らしい日本のミュージシャンです。

 

 

 

 

「Konton Recordnigs」のリリース情報詳細につきましては、以下、安藤裕子公式HPを御覧下さい。 




安藤裕子 Official HP 

 

https://www.ando-yuko.com/

 

 平成時代を華やかに彩った日本の音楽ムーブメント 渋谷系

 

 

1.渋谷のカルチャーと海外のカルチャーの比較


 

十数年前、一時期、海外の音楽視聴サイト、特に、AudioLeafで他の多種多様の海外の音楽ジャンルに紛れ込んで、見慣れたジャンルが海外のリスナーの間で微妙に盛り上がりを見せていて驚いたことがありました。

 

 

「Shibuya-Kei」という英語で銘打たれた音楽ジャンルが、AMBIENTやEDMといったその頃一番話題を集めていたジャンルに、日本のちょい昔の音楽ジャンルが混ざり込んでいた。調べてみると、サブカルチャー的ではあるものの、一定数の海外リスナーがこのジャンルに興味を抱いていたのです。

 

 

かなり、コアな海外の音楽ファンがこの日本のシブヤ系アーティストに関心を抱いている雰囲気がありました。ちょっと昔には、ヨーロッパなどでkaroushiといった経済用語が一般的な言葉として認知されてしまった日本ですが、こういった既に日本人がすっかり忘れてしまったようなサブカテゴリーに属する音楽ジャンルが海外でひそかな人気を呼んでいることに、少なからずの驚きをおぼえた次第です。海外のリスナーというのは、そもそも、良い音楽を追い求めていて、時代性というべきか、それが何年の音楽だとか、そういうことは、それほど頓着しないように思えます。 

 

 たとえ、十年前、二十年前、いや、五十年前の音楽であろうとも良いものは良いと認める潔さがある。日々接する音楽に対して恬淡な評価を下すのが、海外のリスナーであるのだと思う。加えて、一般的にヘヴィなロックコンサートは若者が参加するのが相場というのが日本の考え方であるように思える一方、アメリカにおいては、ロックコンサートに参加するのは十代の若者からお年寄りまで幅広い年代がロックコンサートを楽しむ。

 

 アメリカでは、御年配の方が、若い音楽を楽しむことを若者たちも自然のことだと考えているらしい。だから、若者からお年寄りまでみな等しく若い音楽を心から楽しんでいる。そもそも音楽に、年齢という概念を持ち込まないというのが海外のリスナーの常識のようです。そんなものだから、幅広い年代が若い年代の旬のアーティストを積極的に聴いていたりする。それを、たとえばいい年をしてロックなんか聴いて!とか思ったり、全然恥ずかしいとかそういう概念はまったくないらしいんです。これは、そもそも、ロックというジャンルが文化に深く根付いているから、年代を問わず、幅広い楽しみがあたりまえのように根付いているらしいのです。 

 



2.日本特有の音楽性

 

 

さて、ここ最近、昔の日本の一ジャンル、シティポップが海外の一部の愛好家の間で親しまれていたのは既に多くの方がご承知と思います。往年の、山下達郎、竹内まりあといった日本歌謡界を長年率いてきたアーティストたちの音楽がすぐれていて、普遍的に、こころの琴線に触れるものがあるからこそ時代を越え、熱心な海外の音楽ファンがこのジャンルに見目好い評価を下した。そして、海外のファンが日本の音楽に評価を下す際、重要視しているもの、それは今、現在において海外の音楽としての完成度ではなくて、日本らしい独特な雰囲気が漂っているかどうかに尽きるように思える。 

 

日本にずっと住んでいると、日本語の美しさには気が付かないが、たとえば想像してみていただきたいのは、もし十年海外で生活をして日本に戻ってきたときにふと日本語の発音を聴いたら、どのような感慨をおぼえるだろう? もし、トルコで宗教的理由で豚肉が食べれない生活を何年間か続けて、数年ぶりに帰国し、吉野家や松屋を見かけたときにどのような感慨をおぼえるだろう? そこに、異様なほどの親しみやすさ、ノスタルジーを思い浮かべざるをえなくなるはずです。この相違点というのは音楽についても全く同じことがいえ、内側から日本の音楽を眺めていると見えづらい日本の文化的美質が存在している。それは実はそこに常に存在しているが、私達はそれをすっかり見落としているような気がする。それをときに、海外の人々から「コレだよ!」と教えられてしまう場合もある。二十世紀初頭から西洋文化を真綿のように吸収してきた日本文化ではあるが、日本らしい概念、日本しか存在しえないものが今でも私達の文化の中にあるはずなのです。

 

殊、音楽という分野について限定して考えてみると、昨今においても折坂悠太、ミツメ、トクマルシューゴ、Tricotをはじめ海外の音楽として通用するようなすぐれたアーティストは多数いるものの、海外のファンが求めるような音楽と、日本のファンが求める音楽は、そもそも土台において全然異なるように思えます。一体、何が異なるのか、何が求められるのか、必ずしも海外に迎合する必要はないはず。これはちょっとした意識のずれとして、文化の相違として見ると、興味深い点があるように思えます。例えば、それは、ボアダムスや電気グループだとか、意外に思えるような日本で知られていないアーティストが海外で話題になっているのを見てもその傾向は顕著。そしてこれは、そもそも音楽がどの程度、生活の文化として深く根ざしているのか、人々が音楽というのをどういった分野として捉えているのかで大きな差が出るように思えます。

 

もちろん、その考え方というのも、日本人だからこうとか、海外の人がこうとか一概に決めつけるべきでなく、考え方というのもそれぞれの人で異なるはず。

 

しかし、どうも、日本人と西洋人の音楽についての捉え方は、似ているようで異なる部分も少なくない様子。一見、双方ともに音楽を体で感じて、耳で聴いて楽しむ、という点については、全く同じであるように思えるのに。しかし、私が考える、あるいは述べたいのは、その両者の嗜好性、価値観の違いは表面的に顕現しているのではなく、文化性といった根深い意識の最も深い部分、概念的に浸透しているものにおける相違点がひとつかふたつ存在しているということです。

 

これは、ちょっと今、現在では説明し難いので後にとっておきたい疑問点です。お分かりの通り、音楽という古代ギリシアで重要な分野として文化のいち形態を築き上げてきた分野にとどまらず、他の表現媒体、映画、写真、演劇、文学という分野に押し広げて適用できるような考え方と言えるでしょう。

 

 

  

3.平成時代のシブヤ系の音楽性について

 

 

そして、独断と偏見をまじえた上で述べるなら、もし、このシティポップの次に、好い評価を受ける可能性がある日本のジャンルを挙げるとすれば、間違いなくシブヤ系ではないだろうかと個人的には考えています。 少しばかり懐古主義的な言い方になってしまうけれども、元々、平成時代というのは、日本の経済の活発さがあった。

 

好景気の後押しを受け、レコード産業も発展、多くの粋の良い若手アーティストが無数に出てきた時代。特に、この時代において、渋谷の109やHMVというのはかなり名物的な場所、たまごっち、ギャルや音楽といった若者たちが発信する文化が発生し、それが結びついて発展していった。

 

平成時代の日本の音楽をざっと概観してみると、言語という側面でも面白い特徴があり、J-popという他の歌詞だけは日本語でうたわれ、サビだけが英語という独特なスタイルの立役者は間違いなく、小室ファミリーと称されるアーティスト。

 

次いで、浜崎あゆみや沖縄のスピード、そして、その一連の流れを、最後に決定づけたのが宇多田ヒカル。その流れの中で、19やゆずのような街での弾き語りとして活動していたアーティストのフォークが注目を浴びたこともあった。ビギンのように、これまで脚光を浴びてこなかった沖縄の民謡音楽の影響を受けたポップス、あるいは、沖縄出身のアーティストが数多くシーンに台頭してきたのも興味深い特徴だったと思えます。

 

この平成時代の音楽で最も際立った特徴は、渋谷という平成時代の若者文化の発信地を中心として盛り上ったこの「Shibuya-Kei」というジャンルには、他の海外の音楽には全くない日本独特の要素が感じられます。シティ・ポップと同様に、聞きやすく親しみやすく、どことなく都会的な雰囲気が滲む音楽性。

 

それは都会、特に、平成時代のシブヤという土地の雰囲気を見事に音楽で表現してみせたといえるかもしれない。この時代の渋谷の音楽を憧れを抱いた方も少ないないはず。つまり、この音楽にはどことなく漠然としながらも当時の若者たちよ夢という概念が漂っているように思える。

 

少なくとも、ここ、何十年の世界的なシーンを見渡したとき、このシブヤ系というジャンルのような音楽を他の国や地域に探すのはむつかしい。それほど小沢健二やコーネリアス、カヒミ・カリイを初め、シルヴィ・バルタンをはじめとするフレンチ・ポップに近い独特でお洒落なトウキョウサウンドが流行していた。

 

109や道玄坂、スペイン坂、特に、竹下通りといった場所を中心に発展していった独自のシブヤ文化には、今、考えてみても世界的にも特異な文化といえ、とにかく、元気があり、活気があり、おしゃれな若者らしい雰囲気に包まれている音楽が多く発見出来る。若者が悟りを開く前の日本の音楽の物語。そして、メロディーの良さだけではなく、雰囲気というのに重きが置かれていたように思えます。

 

音楽性としては、平成ポップスと、その時代に流行しはじめていた電子音楽との融合を図ったもの、ジャズラウンジ、ボサノヴァ、ネオアコ、ドリームポップ、また、往年の日本歌謡としてのフォークを都会的に捉え直したもの、と広範なジャンルに及んでいた。

 

今、時代的なフィルターを度外視して聴き直すと、やはり独特な雰囲気が滲んでいる素晴らしい音楽といえます。普遍性を持ち、時代を問わない音楽のように感じられます。 今回、あらためて、このシブヤ系サウンドの魅力的なアーティストと名盤にスポットライトを当ててみたいと思います。

 

懐かしくもあり、新しくもあるシブヤ系サウンドの再発見の手助けとなれば無常の喜びです。これらのサウンドにはいかにも東京、渋谷のオシャレさが感じられ、楽しみに溢れています。ここに日本としての文化性の魅力がたくさん見つかるでしょう。是非、魅力を探してみて下さい!! 

 

 

  

シブヤ系の名盤

 

1.Pizzicato Five 



ピチカート・ファイブは、小西康陽を中心としてされたロックバンド。この渋谷系ジャンルの先駆的な存在といってもいいのではないでしょうか。
 
 
意外と平成時代のバンドのイメージがありますが、結成は1984年と古く、しかも細野晴臣のプロディース作「オードリーヘップバーン・コンプレックス」でデビューしている辺りもレコード会社の期待の大きさが伺えます。
 
 
特に、このバンドはファッションにしても、音楽性にしても、のちの渋谷系にとどまらず、J-Popシーンに多大な影響を及ぼしたのではないでしょうか。特に、リアルタイムでどの程度、このロックバンドの影響力があったのかは寡聞にしてしらないものの、彼等のファッションについても竹下通りあたりのファッション性に与えた影響も大きそうです。
 
 
実際の音楽性についても、広範なジャンルを吸収、その上で日本語ポップスの口当たりの良さというのを追求したような印象です。


ジャズ、ラウンジ、 ボサノヴァ、フレンチポップ、チェンバーポップと、おしゃれな音楽性を内包した上で、日本語ポップスとして絶妙に昇華している。それほど肩肘をはらず、適度にリラックスして聴けるという面で、ドライブ曲としても最適と思えます。(もちろんカローラ2という車のCM曲もありました)
 
 
やはり、ピチカート・ファイヴはシティ・ポップの系譜にあるような音楽、日本歌謡曲からの影響も伺えます。野宮真貴さんのヴォーカルというのは、爽やかで、清々しさ、心温まるような雰囲気があり、耳障りがとても良い。そして、かなり歌い分けというか、曲によってヴォーカルスタイルを七変化させている。優しいバラード風の歌い方があるかと思うと、クールでセクシーな感じもあり。
 
 
歌詞には、ちょっとした日常の恋愛のロマンチシズムが夢見がちにさらりと歌いこまれているあたりがいかにも都会的な雰囲気が漂っています。そして、小西康陽さんのギターのフレーズというのもセンス抜群。
 
 
とくに、ワウを効かせた玄人らしい弾きっぷりというのが素晴らしい。楽曲の雰囲気を壊さずに適度に駆け引きをする素晴らしいギタリスト。非常に歌と楽曲というのが大切に紡がれているように思えます。また、リズム隊としてのベース、ドラムの演奏もほとんど無駄のないシンプルさでありながら、ロマンチックな雰囲気を引き出しています。 
 
 
 
 

 「THE BAND OF 20TH CENTURY:NIPPON Columbia Years 1991-2001」2019


 
 
 
 
ピチカート・ファイブのオリジナル盤としての名盤は数多あると思われるものの、やはり、このベスト盤「THE BAND OF 20TH CENTURY:NIPPON Columbia Years 1991-2001」が、ピチカートファイブの名曲を網羅しているので、渋谷系の入門編として最適といえるのではないでしょうか?
 
 
どちらかと言えば、後追い世代であるため、あんまり偉そうなことは言えませんが、あらためて、このバンドは日本語ロック/ポップスの最高の見本を示してみせたとても偉大なグループであるように感じます。
 
 
特に、このアルバムに収録されている「子供たちの子供たちの子供たちへ」は日本ポップスの最良のバラード曲と言って良いかもしれません。歌詞についても、簡単な日本語で書かれているのに、詩的であり、切なく、やさしく、また、少し絵本のようなうるわしい教えが込められた素敵な楽曲です。 
 
 
 
 

 2.Flippers Guitar 

 

所謂、渋谷系の最も有名なミュージシャンの二人、そして、J−POPアーティストとしても伝説的な存在、小沢健二と小山田圭吾によって 1987年に結成されたフリッパーズ・ギター。結成当初はロリポップ・ソニックとして活動。
 

その後、フリッパーズ・ギターに改名。渋谷系の音楽性の礎をピチカート・ファイヴと共に築き上げた存在。四年という短い活動期間ながら、大きな影響をJ−POPシーンに及ぼしました。その後、二人はソロアーティストとして有名になっていくわけですが、フリッパーズ・ギターはこの二人のアーティストの音楽のキャリアの始まりでした。 
 

楽曲自体は、ラウンジの雰囲気が漂っている辺りは、ピチカート・ファイブに近いものを思わせますが、このフリッパーズ・ギターの方は、いわゆるイギリスのラフ・トレードに所属していたアーティスト、もしくはスコットランドのネオアコ/ギター・ポップの影響も色濃く感じられると言う面で、サニーデイ・サービスの音楽にも近い雰囲気を持っています。特に、JーPOPシーンにおいて、最良のポップメイカーの二人が在籍したというだけでも伝説的なバンドとして語り継がれるべきでしょう。
 
 
フリッパーズ・ギターは、この二人が交互に作曲をし、メインボーカルは小山田圭吾、そして、コーラスがオザケンというのが基本的な演奏スタイルでした。そして、作曲が二人の手でバランスよく行われているのが功を奏し、オリジナルアルバムは、バラエティーに富んだ作品となっています。 
 
 

「Singles」1992

 

 

 

フリッパーズ・ギターはオリジナル・アルバムもいいですが、やはり改めて聴き直すとしたら四年の活動においてのシングル盤を集めた「Singles」が渋谷系の入門編として最適。なんと言っても、このバンドの代名詞とも言える楽曲は、「恋とマシンガン」ーYou Alive In Love−に尽きるでしょう。
 
 
この平成時代の日本のCMでガンガンかかっていた楽曲なので、懐かしむ方も多くいらっしゃるはずです。小山田圭吾のヴォーカルと言うのも、前のめりで、初々しさがあり、純粋な雰囲気が感じられ、少し、なんとなく甘酸っぱいような雰囲気が漂っています。音楽性の完成度といえば、のちの小沢健二、コーネリアスにかなうべくもありませんが、ここには音楽の純粋な響き、平成時代の幸福で温かな空気感が、二人の若々しい秀逸なアーティストにより刻印されています。 
 


3.Towa Tei(テイ・トウワ)

 

その後、日本のシーンを離れ、ニューヨークに移住することになる、テイ・トウワ。最初期からテクノという電子音楽の分野では異質な才覚を放っていたアーティスト。既に、日本のアーティストというよりかは、ニューヨークのアーティストという印象もある。後に、YMOの高橋幸宏の主導するMETAFIVEで小山田圭吾とともに活動をするようになるなんて、誰が予想したでしょう。
 
 
しかし、このアーティストの切れ切れの才覚、ほとばしるセンスというのは既にデビュー当時から型破り、さらにそこにスタイリッシュさがあるとなれば、渋谷系との共通点も少なからず見いださせるように思えます。


テクノカット、そして縁の広い眼鏡というのもファッション性において抜群のミュージシャン。もちろん、一般的な渋谷系の音楽でないものの、電子音楽の分野でのオシャレさという面で、一連のシーンに位置づけられてもおかしくはないアーティストでしょう。  
 
 
 

 「Future Listening!」1994

 
 
 
 
 

テイ・トウワの名盤としては、二作目の「Sound Museum」もしくは、テクノの名盤んとしても有名な三作目「Last Century Modern」も捨てがたいところですが、渋谷系アーティストとしての名盤はデビュー作「Future Listening!」が最適と思われます。ここでは、のちの彼の代名詞となるテクノというよりも、コアなクラブミュージック寄りのアプローチが計られており、幅広い音楽性が感じられます。 
 
 
ファンク寄りのブレイクビーツ、クラフトヴェルクのようなテクノ、また、ボサノヴァのリズム、メロディ性からの影響も感じられ、小野リサの音楽性に近いような雰囲気も漂っている。

電子音楽としてもデビューアルバムと思えないほどのクオリティーの高さ;どことなく洋楽寄りのアプローチを日本人アーティストとして追求したという感あり。このなんとも言えない都会的に洗練された響き、シブヤの夜の街の雰囲気が滲んでいるのが、テイ・トウワのデビューアルバムの魅力です。日本のアーティストとして、音楽性の凄さを再確認しておきたいアーティストのひとり。
 


 

4.カヒミ・カリイ

 

多分、カヒミ・カリイを最初、外国人のアーティストであると思っていたのは、何も私だけではないはず。
 
もちろん、若松監督の映画作品を担当するガスター・デル・ソルのジム・オルークと共同制作を後に行ったり、また、ニューヨークのインディーシーンのカリスマ、アート・リンゼイとの音楽的な関係も見いだされるという面で、後のアメリカ、シカゴやニューヨーク界隈のアーティストとも関連付けられるカヒミ・カリイ。既に世界的なインディーミュージシャンです。
 

しかし、間違いなく平成時代までは、カヒミ・カリイは日本のアーティストだったわけで、特に、「ハミングがきこえる」という楽曲をご存知の方は少なくないはず、きっと聴けばあの曲かとうなずいてもらえるだろうと思います。この曲は、なんといっても、作詞、さくらももこ、作曲、小山田圭吾、と非常に豪華なライナップ。ちびまる子ちゃんのオープニングテーマでもあった楽曲。子供のとき、週末の夜にこの曲を聴いていた思い出のある方も少なくはないはずです。
 
 
特にカヒミ・カリイというアーティストの声質は独特で、ハスキーで漏れ出るような雰囲気が魅力。


また、カヒミ・カリイの楽曲は、セルジュ・ゲンスブールがプロデュースを手掛けたフレンチ・ポップアーティストにも親和性が高く、いかにもおしゃれな感じで、洗練されたような雰囲気を持つのが特徴です。これはいまだ他のJPOPシーンを見渡しても、同じような存在が見当たらないと思えます。フレンチポップの質感を日本語の語感で体現してみせたアーティストといえそう。 
 
 
 

「Le Roi Soleil」EP 1996

 
 
 
 
 

カヒミ・カリイの名盤は、「ハミングがきこえる」を収録したEP「 Le Roi Soleil」を推薦しておきます。
 
 
フレンチポップに対するリスペクトを感じますが、音楽性としては、ネオアコ/ギター・ポップ寄りの作品です。また、スコットランドのザ・ヴァセリンズのカバー「Son Of A Gun」が収録されているのも、通を唸らせるはず。
 
この曲は、ニルヴァーナのカバーバージョンとしてもかなり有名なんですが、このカヒミ・カリイのカバーも結構良い味を出しているように気がします。


 

5.サニーデイ・サービス

 

日本インディーシーンで、相当な影響力を誇って来たサニーデイ・サービス。インディーアーティストではありながら、平成時代ではオリコンチャートで上位に食い込んでいた思い出があるので、どちらかと言えば、メジャーからのリリースでデビューを飾ってはいるものの、曽我部恵一は生粋のインディーロックアーティスト、 この渋谷系というジャンルの発信地の一つタワーレコードとも関係の深いミュージシャンです。というか、この人こそ、日本の近年のインディーズシーン、そして、レコードショップ文化を担って来た音楽家というように言っておきましょう。 
 

1990年代終わりに、渋谷系というジャンルが衰退していった後も、この渋谷系のジャンルを掲げ、長く活動を続けてきた信頼のあるアーティスト。
 
2017年のスタジオアルバム「Popcorn Ballads」、2020年の「いいね!」は、完全に渋谷系を現代に見事に復活させてみせた快作として挙げられます。
 
 
平成時代、ゆず、19、といった弾き語りのアーティストに連れ立って、日本のミュージックシーンに台頭してきた感のあるこのサニーデイ・サービスは、それらのアーティストと比べられる場合もあったかもしれません。
 
 
しかし、この三人組の音楽性というのは方向性を異にしており、スコットランドで1990年代前後に盛んだったパステルズやヴァセリンズといったネオアコ/エレアコ勢の音楽性を現代的に取り入れようとしていました。
 
スコットランドのインディーシーンの牧歌的なギターロック/ポップを、日本語のポップス、歌謡曲のノスタルジーを、そのうちに滲ませて再現させようというものでした。洋楽的でも有り、邦楽的でもある。アメリカ的でなく、イギリス的という点では、いかにも平成時代、渋谷系の真骨頂のようなサウンドが特徴。三人組という編成も無駄がなく、バンドサウンドとして聴いたとき、すごくバランスの取れたライブをするアーティストでした。サニーデイ・サービスのとしての頂点は、1997年のスタジオ・アルバム「サニーデイサービス」で完成を迎えました。
 
 
 
 

「サニーデイ・サービス BEST 1995-2018」 2018

 

 
 
 

ベスト盤の「サニーデイ・サービス BEST 1995-2018」は、このバンドのファンだけではなく、渋谷系好きにもオススメの傑作です。
 
 
ベスト盤として二十三年という長いサニーデイ・サービスのキャリアの中でも必聴すべき楽曲が目白押し。特に、個人的な日本のインディー音楽の最良の楽曲「夜のメロディ」は今でも切ないような日本語フォークの名曲として語り継がれるべきでしょう。 
 
 
 
一度は解散するものの、2010年に再結成を果たす。しかし、2018年、オリジナル・メンバーのドラマー、丸山晴繁さんが死去されたとの一報に驚かされました。彼は、このバンドサウンドを長年にわたり支えてきた素晴らしいアーティストでした。しかしもちろん、曽我部恵一という渋谷系の素晴らしいアーティストがいるかぎり、サニーデイ・サービスの音楽は後に引き継がれていくはず。

 

 

  

4.Cornelius


改めて言うと、小山田圭吾というミュージシャンは日本国内だけでなく、海外のインディーズシーンで強い影響力を持ったアーティストであることは疑いを入れる余地はありません。特に、アメリカのニューヨークのインディーレーベル「Matador」レコードからリリースを行っていたアーティスト。

 

もちろん、フリッパーズ・ギターでは、小沢健二と共に平成時代の日本のPOPSシーンを盛り上げた音楽産業に大きな貢献を果たした人物です。特に、なぜアメリカでこの小山田圭吾が有名なアーティストなのか、よく考えてみると、特に、このCorneliusは、日本の音楽としてでなく、世界水準の音楽をこのソロプロジェクトで体現させようと試みていたんです。 

  

 

 「FANTASMA」 1997


 


特に、アメリカの90年代のインディーシーンでは、ダイナソーJr,に代表されるような苛烈なディストーション、そして、グワングワンに歪んだギターというのがメインストリームのアメリカらしいロックとして確立されており、このCorneliusの名作「Fantasma」は、シューゲイズとオルタナサウンドの直系にあたる音楽性が魅力。

 

 

邦楽という領域を飛び出し、海外にも通用する日本語ロックを完成させたと言えるでしょう。特に、小山田圭吾のギタリストとしての才覚は、色眼鏡なしに見ても、海外の著名なギタリストと比べても全く遜色がないほど素晴らしい。 

 

このコーネリアスというソロプロジェクトにおいて、小山田圭吾は、フリッパーズ・ギターからの音楽性の延長にある次の進化系サウンドを体現し、渋谷系、つまりシブヤ発祥音楽を世界的に特にアメリカのインディーシーンに普及させた功績があったわけです。打ち込みのアーティストとしても、ギタリストとしても、抜群の才覚があるアーティストであったことは間違いないでしょう。

 

東京オリンピック開催の際に生じたプライベートな問題については、プライベートな問題にとどまらず、公的な問題に発展していったように思えます。この騒動について、日本だけではなくアメリカの主要な音楽メディアでも大きく報じられ、大きな驚きをアメリカのリスナーに与えたようです。

 

これから、小山田さんが音楽活動を続けていくのか、難しい問題が立ちはだかるように思えます。やはり、渋谷系サウンドというものをもう一度、再建し、何らかのかたちで音楽を通して、喜びを与えていってもらいたいと思います。勿論、これは贔屓目に見た上での意見といえる部分もあるかもしれません。 

 

 

  

カジ・ヒデキ


最後に御紹介するのが、平成のヒットチャートをマイリリース毎に賑わせた良質なシンガーソングライターの、ミスター・スウェーデン、カジ・ヒデキさん。

 

1997年に渋谷系アーティストとしてデビューを飾り、のちにはJ−POPシーンきっての人気ミュージシャンとなりました。現在に至るまで大きなブランクもなく、良質で親しみやすい楽曲を生み出し続けています。

特に、カジヒデキさんの楽曲は、耳にすっとやさしく入り込んできて、覚えやすく、誰にでも親しみやすい。その点で、そこまで音楽に詳しくないという人でも馴染みやすいアーティストなのではないでしょうか??

 

 

「tea」 1998


 

 

カジヒデキさんの渋谷系としての名盤はファースト・アルバムもみずみずしい輝きに満ちていて素晴らしい。

 

しかし、渋谷系サウンドらしい、オシャレさ、格好良さ、リラックスした楽曲としてたのしめるセカンドアルバム「tea」1998こそ、渋谷系サウンドのニュアンスを掴むための最良の作品。

 

 

「Everything Stuck to Him」「Made in Swede」「カローラ2」の何となく健気で純粋な雰囲気があり、青春の輝き溢れる永遠の名曲ばかりで、平成時代のポップスのおおよその感じを掴むのにも最適といえそう。

 

また、平成時代初めの社会ってこんな感じだったんだよという見本を示してくれる軽快な雰囲気のある作品。カジヒデキさんの楽曲をカウントダウンTVやラジオのJ-WAVEの番組ヒットチャートで聴いていたのは子供時代、小学生の頃でしたが、これらの楽曲は、今聞いても抵抗感がなく、すっと耳に入ってくるのは不思議。平成初期の若者の独特な空気感というのは、他の時代には感じられない雰囲気があったと、このスタジオアルバムを聴いてて、あらてめてそんなふうに思います。

 

 夏の記憶に残る名曲をピックアップ

 

 

夏になると、様々な美しい風物があちらこちらに見られます。古来から、私達は、これを風物詩といふうに名付けた。 人によって思いかべるものはそれぞれ異なり、その体験、経験によって色付けされるとも言える。

 

ここ、日本には、さまざまな麗しい夏の風物詩というのがあります。青く澄んだ空に浮かぶ入道雲をはじめ、透き通るような海の景色、風鈴であったり、簾であったり、扇風機、食卓に並ぶ半円形のスイカ、お祭りの屋台であったり、夏の終りに家族友達と見る大きな花火であったり。

           

それは音楽についても同じ。

 

ここ日本には素晴らしい夏の名曲が数多く多種多様に存在する。ときに、その楽曲を思い浮かべたときに、とても切ない情感をもたらす名曲の数々がある。それはあなたの人生をより豊かにするもの。 

 

今回、夏を記憶を彩る名曲、名盤を、ピックアップしていこうと思います。メジャーな曲を中心にあげていきます。

 

この特集「Best songs for the summer」が、貴方好みの夏の一曲を見つける手助けとなれば、これほど喜ばしいことはありません。  

 

Hanabi Love"Hanabi Love" by Follow Your Nose is licensed under  

   


七尾旅人 


billion voices  「どんどん時は流れて」

 

日本の数少ない本格派インディー・フォークを牽引するアーティストと言っても良い七尾旅人。放送番組のナレーションを務めるほど、歌声だけでなく、普段の話し声のトーンも非常にうつくしい人です。

 

七尾旅人の音楽性としては、日本のフォーク音楽を基調とし、比較的、親しみやすい楽曲の中にも、通好みのR&B色を取り入れているのが七尾旅人の楽曲の特色です。                             

 

七尾旅人の楽曲は聴く人、時代を選ばない普遍的な価値を持っている。歌詞にも、等身大の自分の姿を見つめた肩肘をはらない詩に共感を見い出すことは難しくないはず。そして、七尾旅人の歌には、人間と情景が密接に結びついた歌詞が多く見受けられる。それをさらりと歌ってのけるのが格好良いところでしょう。

 

彼の夏の楽曲としては、一番目に思い浮かべられるのが「湘南が遠くなってく」という、さわやかなアコースティックギターのフレーズを活かした一曲なんですが、この曲よりもはるかに夏に聴いていてその情感が感じられる楽曲が「どんどん夏が流れて」。こちらを夏のオススメとして取り上げておきます。

 

特に、イントロにセミの声が効果音として取り入れられていて、初めて聴いた時、ああ、これは夏の終りの曲なんだなというふうに直感しました。この独特な七尾節ともいうべきコード感、そして、エレクトリック・ピアノのアレンジというのも◎。歌詞においてもなんとなく、自己のダメさ加減についてのやるせなさがソフトにさらっと歌いこまれているのがとてもカッコいい。 

 

そして、僕から、僕たち、というふうに、曲の展開とともに、人称が移動していくあたりには、現代詩のような感もあり。R&Bのバラードとしての日本のポップス界の隠れた名曲のひとつに挙げてもおきたいと思っています。季節の移り変わりを、情感たっぷりに振り返った珠玉の名曲。アコーティスックギターの爪弾きのやさしげな温もりというのが凝縮された逸品です。                          

 

 

はっぴいえんど  


風街ろまん 「夏なんです」

 


最早、伝説になりつつある、はっぴいえんど。 細野晴臣だけではなく、大滝詠一、そして松本隆とその後の日本の歌謡界に多大な影響、貢献をはたした日本で海外に通用する数少ない実力派のロック・バンドです。

 

一時期、若いアーティストにも人気があり、「森は生きている」をはじめとするフォロワー・バンドも出てきました。トクマル・シューゴ、Predawn、結構影響を受けてそうな日本人ミュージシャンは多いです。若い人にも是非聴いてもらいたい日本の偉大なロックバンドです。よく考えてみると、このはっぴいえんどというロックバンドは、メジャー系のアーティストでなく、インディー・アーティストだった。

 

まだ、それほど、音楽業界というのも、現在のように整備されてない時代、かなり自由が効いたのかもしれません。米軍基地の近くの掘っ立て小屋みたいなところでレコーディングしたり、千円くらいのおひねりをもらって大喜びしている細野さんとか、ちょっと現在のこの三人の知名度からいうと、信じがたいものがある。

 

はっぴいえんどの夏の名曲というのは、「夏なんです」しか考えられないでしょう。これは、「風をあつめて」と共に、日本の歌謡曲の普遍的な歴史として残るべき名曲です。松本隆さんの幼少期の体験の記憶がモチーフにされた日本のポップスの名曲のひとつ。

 

歌詞もノスタルジアに富んでおり、”ビー玉、茶屋、入道雲、日傘”という言葉がちりばめられ、”日傘ぐるぐる”、とか、”ほうしつくつく”、”もんもんもこもこ”をはじめとするどことなくフォークロア、民族学的な味わいを持った日本語歌詞としての冒険心も読みほどくことができる。

 

歌詞を聴いていて、その情景がまざまざと思い浮かぶような楽曲はそうそうないのに、松本隆さんの歌にはそれがあるのは、実際の感覚を詩に落とし込むという手段に真心を込めているから。

 

驚くほど克明に、日本語で、情景、それにまつわる情感を描写することに長けているのは、松本さんに文学の天才的な素養があるからこそ。そこに、細野晴臣のちょっとだけ、おどけたようなニュアンスの歌いぶりというのも、温厚な人柄が表れている。さらに、そこに付け加えられる今は亡き大滝詠一のクールなコーラスというのも感涙ものといえる。

 

cero  

 

Obscure Ride  「Summer Soul」

 

 

 

ceroというアーティストは、「大停電の夜に」という楽曲に代表されるように、元々は、オルタナティヴ・ロック系のアプローチを選んでいたバンドだった。

 

それから、歌物アーティストとしてのベールを脱ぎ、「My Lost City」というスタジオ・アルバムから、R&Bや、ファンク、ヒップホップをはじめ、徐々に様々なジャンルを吸収し、cero節ともいえる独特な音楽性を作り上げている。このセロの中心人物、高城昌平さんのヴォーカルは、少し、かすれたようなハスキーボイスを特長としていて、それがこのセロの音楽に独特な味わいが感じられ、このトリオの音楽の重要な鍵になっています。

 

そこには、トラック自体の作り込みの精度の高さはもちろん、フルート等をアレンジメントに取り入れたり、都会的な洗練性であったり、音のおしゃれさであったりというのを追求している。

 

高円寺という、純情商店街をはじめとする独特なサブカル系の若者カルチャーの中に育まれて出てきた中央線界隈のアーティスト。日本語歌詞であるものの、海外寄りの洋楽向けの音を意識したアーティストのように思えます。結構、音楽性の間口が広く、作品ごとに異なる音楽性を見せてくれている、近年のJ-Popシーンで聞きどころのあるアーティストです。

 

この "cero"の作品の中で夏の一曲としては、「SummerSoul」を挙げて置きたいところ。クラブミュージックを意識した音の作りで、日本語歌詞のフレイズの中にそれとなくライムっぽい節回しのアプローチを潜ませている。歌謡曲の系譜を引き継ぎ、そこに、ヒップホップやR&Bの風味をセンスよく付け加えた軽快な楽曲です。

 

歌詞の中でも、どことなく夏の中にある目にみえる情景の変化が表れていて、それがものすごくおしゃれなアレンジがほどこされている秀逸な楽曲。夏の夕方から日が完全に落ちる時間のドライブ中にかけると、とても爽快で、さっぱりした気分になれる。そして、セロは、音楽に対してあくなき探究心、強い熱意を持って、作品を作り続けているアーティストです。



fox capture plan、おかもとえみ 

 

 

甲州街道は夏なのさ 「甲州街道はもう夏なのさ」

 

 

 

fox capture plan、と、おかもとえみ、という2つの異なるジャンルのアーティストがコラボレートした楽曲、「甲州街道はもう夏なのさ」。

 

これは、つい先日、というか昨夜、Spotfyの「夏」というワードの検索で偶然見つけてしまった曲です。

 

 fox capture planの方は、2012年から活動しているロックバンドで、mouse on the keysのように、ピアノや弦楽器をダイナミックに取り入れたロックバンドと言えるでしょうか。

 

これまでのキャリアにおいて、有名な仕事を挙げると、フジテレビドラマ「 コンフィデントマン」のサントラも手掛けています。また、ゲストボーカルとして参加している岡本さんの方は、これまで2015年からアルバムを二作リリースしているクラブミュージック寄りのJ-popアーティスト、シンガーソングライターと言っていいでしょう。

 

この2つの全く畑違いのアーティストがコラボした「甲州街道はもう夏なのさ」 。これは、夏のドライブに相応しい軽快な楽曲といえるでしょう。

 

ピアノの爽やかなフレーズ、あるいは、ウッドベースの表情付けであったりと、トラック自体のサウンドは、どちらかと言えばR&Bよりといえ、往年のJpopの普遍的な良さを抽出したようなおしゃれさの感じられる楽曲です。

 

ソロ・アーティストとしてはもう少し強い印象を放っている、おかもとえみさんのボーカルはこのコラボ楽曲において、引き締まったリズムトラック、そして、ピアノのバランスのとれたコード弾きとメロディー付により、涼し気な雰囲気を与えてくれるはず。

 

「甲州街道はもう夏なのさ」は、うでるような暑さをちょっとだけやわらげてくれる軽快なナンバーで、良質なJ-popの楽曲。

 

甲州街道を多分、車で運転しているときに曲の着想を得たトラックだと思われますが、この歌詞、初っ端から、プッと笑っちゃうようなユニークなところがあります。この楽曲の歌詞に描かれているユニークな、いかにもアーティストらしい悩みって? それは聴いてのお楽しみ。

 

 

 

相対性理論  

 

シフォン主義 「夏の黄金比」

 


 

おそらく日本のJ-Popシーンで、椎名林檎に匹敵する個性派アーティストを見出すなら、このやくしまるえつこという人をさしおいてほかいない。それほどに一部界隈からは神格化されるようなカリスマ性のあるアーティストです。

 

この相対性理論というバンドは、それほどメインストリームでは有名というふうにはいえませんが、非常に日本のインディーズ・シーンでかなり強い影響力を発揮してきたバンドといえます。

 

音楽的には、ザ・スミスのようなフランジャーとかリバーブ/ディレイをてきめんに効かせたギターを特長とし、そこにやくしまるえつこの独特な世界観が充溢している。アイドルポップを主体的な印象としているが、バックトラックとしては、ブリット・ポップに近いアプローチを取る実力派バンドです。 

 

このバンドの「夏の黄金比」という楽曲は、十代の青春のアンニュイさ、もしくはメランコリアを克明に音と歌詞で描いてみせたという点において、これを上回る曲を見つけるのは難しいように思えます。

 

まさに、スミスのジョニー・マーを明らかに意識したギターの音色というのも通を唸らせるもので、そこに、やくしまるえつこの独特なワールドが全面的に展開されています。また、どことなく可愛らしいキュートさのある、やくしまるえつこのヘタウマボーカルの雰囲気というのも切ない質感に彩られている。なんとなく、夏の終りをおもいかえさせてくれる楽曲。もちろん、それは歌詞でも同じ、「コントレックス箱買い、コントレックス、箱、箱、箱買い」という謎めいたループワードの言葉遊びに、やくしまるえつこらしい独自の世界、あるいは、内向的なコスモスが込められている。

 

これぞ、夏特有の十代の淡い切なさ。分かる人にはとことん分かし、わからない人にはとことんわからない。でも、それこそ相対性理論というロックバンドの最大の持ち味といえます。 

 


Eastern Youth  

 


旅路に季節が燃え落ちる 「夏の日の午後」

 

 

1980年代から、札幌のパンク・ロックシーンを牽引してきたイースタン・ユース。ナンバーガールからも絶大なリスペクトを受けており、”怒髪天”とともに、日本語ロックの伝道師として君臨してきたパンク・ロックバンドです。イースタンユースは、元々、札幌のシーンにおいて、Oi Punk、あるいは、Skinsとして出発したバックグラウンドを持つ。

 

フロントマンの吉野寿さんは、常に政治的な発言を、おそれず、真っ向きって行う日本で数少ないオピニオンリーダーです。 

 

その後、イースタンは、札幌から東京、高円寺に活動拠点を移し、「裸の音楽社」というレーベルを設立し、これまで、DIYの活動を頑固一徹、継続している。「常に、一寸先は闇という感じで、我々はやってきた」という吉野寿さんの言葉どおり、ストイックな側面を持つバンドです。

 

太宰治、坂口安吾といった日本近代文学に色濃く影響を受けた歌詞というのも、イースタン・ユースの最大の魅力といえるでしょうが、このバンドには、日本語のソウル・ロックとしての醍醐味、そして、暑苦しいほどの魂の痛切な叫びに、他の追随を許さないほどのパッションが込められてます。

 

近年、オリジナルメンバーの二宮さんが脱し、新たに女性ベーシスト、村岡ゆかさんが加入。

 

これまでライジングサン・フェスティバルやアラバキ・ロックフェスなど出演経験があり、日本のインディーズシーンで歴史のある企画「極東最前線」では、若手の有望なアーティストを見出す役割も果たしてきている。これまで日本のインディーズシーンを先陣を切って先導しています。

 

イースタン・ユースの夏の名曲としては、「夏の午後」という楽曲が挙げておきたい。

 

ここでは、むしろ、夏の暑さを和らげるどころか、さらに、その暑さを強めるような楽曲です。そして、最初期からのパンクロックバンドとして、日本語ロックバンドとしての完成形を形づくってみせた名曲。

 

二宮さんのベースも脂が乗り切っており、テクニカルなジャズベース的な独自の奏法が見受けられるのが特長。そして、もちろん、楽曲としても、イースタンにしか醸し出せない長いバンドとしての経験に裏打ちされた渋い味わいがあり、またそこに、吉野さんらしい、真正直で、嘘偽りのない、魂のこもったソウルフルな叫びが加わる。

 

日常のありふれた生活空間にふと見いだされる夏の淡い情感を、イースタンユースは、日本語の詩として、音楽として、そして、ソウルとして、力強く、男らしく、描き出す。なぜか、聞いてると、俄然、勇気が満ち溢れてくる日本語ロックの夏の名曲です。 

 

  

Number Girl  

 

 

記録シリーズ1  「プールサイド」

 

 

 

この「プールサイド」というナンバーガールの名カバーの原曲は、Bloodthirsty Butchersのスタジオ・アルバム「未完成」に収録。

 

もちろん、ブッチャーズの原曲も、内向的な雰囲気が滲んでいる夏の名曲のひとるで、日本の隠れた夏の名ソングとして語り継がれていくでしょう。

 

残念ながら、この「未完成」というスタジオ・アルバムは、インディーズ市場でしか流通しておらず、現時点においては入手困難なので、ナンバーガールのライブ活動記録をもれなく収め尽くした「記録シリーズ1」に収録されている「プールサイド」の方を、オススメしておきます。 

 

ブラッドサースティ・ブッチャーズの原曲の方は、 米国の伝説的オルタナティヴ・ロックバンド、Dinasaur.Jrを彷彿とさせるシューゲイザー寄りの轟音ロックといえるでしょう。しかも、そこには、表面上の轟音さとは裏腹に、そのエネルギーは、外側に向かっていくのでなくて、轟音性が内面へ内面へと向かっていく。ここに、吉村さんらしい詩的な感情、切ない青春の雰囲気が込められている。

 

一方、ブラッドサースティ・ブッチャーズの盟友、ナンバー・ガールの日比谷公演大音楽堂でのライブカバー「プールサイド」は、どちらかと言えば、米国のもうひとつの伝説的オルタナティヴ・ロックバンド、The Pixies寄りの音のアプローチを図っており、ここで、鬼才、向井秀徳の資質、”歪んだポップセンス”が遺憾なく発揮されている。

 

この後、ナンバーガールの解散してから、このバンドのギタリスト、田淵ひさ子が、ブラッドサースティ・ブッチャーズにセカンドギタリストとして加入したという事実を考えると、何かしら感慨深いものがあります。

 

この「プールサイド」という楽曲が素晴らしいと思うのは、青春という得がたい概念を、歌詞においても、音においても、的確かつ端的に現しているから。それは、十代というリアルタイムの質感、また、年をとってから振り返る青春の淡い質感を、見事に表しているということでもある。

 

「プールサイドからの眺め」。この曲の歌詞において、非常に多角的な視点として描かれており、最終的には「乱反射、水の音」という、対句表現にも似た、対句のような表現に結ばれていく。

 

夏という大きな概念を、プールサイド、そして、最後に、水の表現に収束させていくのは天才としかいいようがない。ここで歌われる内容は、おそらく若い頃の自身の内向的な一傍観者としての経験を綴ったもので、なぜかしら、ここには、現実的で冷厳な側面が込められている。夢想的、叙情的ではあるものの、全然、現実感は失っていないように思える

 

原曲「プールサイド」での吉村さんの歌詞は、詩的であるとともに、きわめて哲学的な雰囲気を併せ持つ。それが、このナンバー・ガールのライブカバーにおいては、その哲学的な表情を意図的に薄れさせ、親しみやすい、可愛らしさのあるアレンジメントが施されている。


  

 

 

Nico Touches The Walls  

 

 

ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト 「夏の大三角形」

  

 

 

実は、このニコ・タッチ・ザ・ウォールズという日本のロックバンドは、私の友人と親しいベーシストがメンバーに在籍していて、十年以上前からずっと、密かに応援しつづけているバンドです。       

            

以前、ノラ・ジョーンズが来日した同じ頃、武道館公演も果たしている全国区のロックバンドです。最早、バックグラウンド、バイオグラフィについてあらためて説明するまでもないでしょう。痛快で爽やかな雰囲気のあるロックを奏でるバンドとして、メインストリームで活躍しつづけています。 

 

このバンドの凄いところは、十数年前のデビュー時から、継続的に良質な日本語ロックをリリースし続けているところ。

 

そのプロフェッショナル精神には頭が下がります。エンターテインメントとしてのロック音楽というのを熟知しているから、聞き手のことを考えた音楽を一定の水準を保ったまま提供出来るのでしょう。

 

これぞ、プロ中のプロミュージシャンといえ、 デビュー当時から今日まで一般的なファンを数多く獲得し続けているのも頷ける話です。そして、親しみやすい日本語ロックバンドというイメージがありながら、ソリッドでタイトな高い演奏力も併せ持っている実力派のアーティストです。 

 

そして、彼等の楽曲「夏の大三角形」。 

 

デビュー当時からの勢いを失わず、そして爽やかな質感もあって、また、親しみやすい一般的な楽曲の要素はいまだ引き継がれ、この楽曲には夏としての情感もさることながら、スタンダードな日本語ロックの魅力が存分に味わえる。

 

夏のドライブ中にかけても良し、また、ちょっと元気がないなというとき、自分の勇気づける楽曲としておすすめ。

 

そこまで歌詞の中に、夏が強調されているわけでもないのに、暑さを吹き飛ばすような涼し気な感じが、この楽曲の雰囲気に漂っています。曲の最後のスチールドラム風のアレンジも夏らしくて面白い。

 

ごくシンプルに、ロックバンドとしての勘の良さのあるアーティストです。これからも永く、日本のミュージックシーンを牽引していってもらいたい、良質な日本語ロックバンドです。 

 

 

スチャダラパー 


5th Wheel 2 the COACH Standard of 90's  「サマージャム '95」

  

 

スチャダラパーは、平成時代のJ-Popシーンにおいて、初めて、本格派のヒップ・ホップ旋風を巻き起こし、 J-Hip Hopの知名度をオーバーグラウンドに押し上げた立役者。    

                           

そして、日本語のライムの質感、日本語の語感の面白さをヒップホップとして追究したアーティストです。

 

当時は、テレビ番組、「カウントダウンTV」が全盛期の時代で、良いアーティストは、この番組を通しておぼえていたんですが、スチャダラパーもオリコンチャートで健闘してたのをよく覚えています。PVでのスチャダラパーの本格的なラッパースタイルの立ち振舞いを含め、衝撃的なシーンへの登場の果たした。しかも、三人のキャラクターがとてもユニークであるため、当時相当な人気を獲得したアーティストだった。

 

この”サマージャム ’95”は近年、環ROY、鎮座DOPENESS、U-zhaanの三アーティストによりカバー曲として見事に復活を果たし、再注目されているJ-HipHopの名曲です。

 

改めて、聴いてみると、やはり、単純にカッコいい曲と思います。ヒップホップの基本的な技法、スクラッチ音とか、サンプリングの最低限の技法を、しっかり抑えておきながら、チルアルトとの中間点に存在するような感じで、センスあふれるおしゃれな楽曲。


とりわけ、夏の記憶についてのライムが交互に情感たっぷりに歌われており、しかも、理想と現実の間で歌詞が揺れ動いているのが面白い。リア充になりたいんだけれど、なりきれない。等身大の自分の姿を描き出し、気負いというのが感じられない。聴いていて、なんとなく、リラックスできちゃうのが、この楽曲「サマージャム’95」の良さ。

 

中には、結構、家の近所で見かけるような日常的な情景が描かれていて、そして、懐かしい夏の記憶がさらっと歌いこまれる。ヒップホップ、チルアウト、でありながら、その音楽としての下地にはやはり、日本の歌謡曲があって、それに対するリスペクトを込めた上で、クールなクラブ・ミュージックのノリをもたらしている。一見、ちゃらいようでいて、結構、トラックメイカーとしては硬派なアーティストだと分かるはず。

 

スマートフォンでも聴いても、素晴らしく音が良いのに驚きます。このあたりは、大手EMIからリリースというのもあるでしょうが、やはり、この”スチャダラパー”という三人組のトラックの作り込みの精度の高さ、ライムの配置の的確さにあるという気がする。おそらく、リアルタイムで、この曲を聴いていなくとも、この「サマージャム’95」を気に入ってくれる方は少なくないでしょう。


  

Def Tech  


Def Tech 「my way」

 

 

 

次に紹介しておきたいのは、これも平成時代に非常に人気のあった二人組アーティスト、デフ・テック。 

 

この楽曲「My Way」の歌詞には夏という言葉は、直接的には登場しませんが、海が良く似合うユニットであり、日本人とアメリカ人の混合アーティストとして平成時代に一世を風靡しました。

 

一度、幕張海岸の夏フェスの海岸沿いのステージで見るチャンスが一度だけあったんですが、彼等のステージを見そびれてしまいました。他のパンク・ロックの洋楽のアーティストを追っていたためです。でも、今、思うと、見ておけばよかったなとつくづく後悔。

 

小室ファミリーやエイベックスのアーティストをはじめ、平成時代から続々と英語と日本語を絶妙にかけ合わせた歌謡曲、ポップスが数多く出てきたような感がありました。Aメロ、Bメロは日本語歌詞だけれども、サビだけ英語とか。この時期の音楽は、言語的な実験をしていた時期でもあった。

 

特に、デフテックについては、本場ハワイ仕込みのネイティヴの英語歌詞ということもあり、他のアーティストと比べてクールさが際立っていた記憶。レゲエという括りで出て来たユニットではあるものの、この楽曲「My Way」だけにとどめて言うなら、クラブ・ミュージック寄りのJ-Pop。

しかし、時を経て、じっくり、このサーフ・サウンドを聴いてみると、楽曲の印象ががらりと変わるはず。

例えば、アメリカのシンガー・ソングライター、ジャック・ジョンソンのような、爽やかなアコースティック・フォークの本格的な雰囲気がある。トラック自体の作りもカッコいい、言葉の節回しというのもかなはら早口で、ヒップホップに近いものがあるようで、今、聞いても、新鮮で爽やか。なぜかしれないが、二人の友情に結びついた勇気づけられるような力強い歌詞が記憶に残る。夏を彩るソングとして抑えておきたい定番の一曲。 

  

 

 

久石譲  

 

「Summer」 菊次郎の夏(オリジナル・サウンドトラック)


 

最後にご紹介するのは、フランスで絶大な人気を誇る北野武の初期の映画のサウンドトラックの一曲「Summer」です。 

 

フランスでは、十年前くらい、テレビで「風雲!たけし城」を再放送していると、フランスから観光に来たアマチュア映画監督から聞きました。しかも、結構高視聴率だとか。キタノ・タケシのコメディアンとしての人気は、現地では不動のものであるらしい。

 

一方、この映画の音楽を担当した久石譲さんは、あらためて紹介するまでもない気がします。

 

もちろん、日本の劇伴、映画音楽界の巨匠といわれる方で、夏の名曲としては多くの記憶に残る名曲があります。

 

もちろん、ジブリの夏にまつわる楽曲も捨てがたいですけれども、やはり、久石さんの夏の名曲といえば、北野映画の名作「菊次郎の夏」のサウンドトラックは外せない。

 

久石さんは、これまでのご自身のキャリアにおいて、「もののけ姫」、「ハウルの城」などのジブリ作品に代表される名サントラを数多く残し、静かでありながら、深みのあるピアノ曲を数多く残している。シンプルで、誰にでも親しめる、癒やしの味わいある職人気質の名曲を生み出すという点では、比肩する作曲家は見当たらないかもしれません。

 

久石さんの作風は、目にありありと美しい情景を浮かび上がらせる。それは自身の記憶とむすびついて、うるわしく彩られる。まさに、久石さんこそサウンドトラックの名手。

この「菊次郎の夏」の代表的なサウンドトラックの名曲「Summer」は、日本では多くの方が一度くらいは聴いたことがあるはず。なんとなく、日本の夏の代名詞な名曲のような気がします。

 

この曲には、日本としての美しさが克明に描かれています。海外の美とはことなる日本の美というのが、「Summer」では、淡く深い情感をまじえ、丹念にピアノ曲として描き出されているように思える。聞いていると、不思議と元気に満ちあふれてくる永遠の名曲。


 

日本で唯一のプロ・タブラ奏者、U-zhaanさんの魅力について語る

 

 

 

Tablaというのは、インドの伝統楽器で、いくつかの複数の音階を持つ太鼓を組み合わせて両手で鳴らすことにより、メロディアスな音の響きをもたらす特殊なインドの民族打楽器のひとつです。

 

さて、このタブラという民族楽器のプロミュージシャン、日本で最初のプロタブラ奏者といわれるミュージシャンが埼玉県川越出身のU-zhaanさんは、二十代の頃から単身インドに渡り、インド、コルカタで、アニンド・チャタルジー、ザキール・フセインに師事。どうやらタブラというのは演奏法を覚えるのにもかなりの修行が必要であるらしく、習得の難しい楽器といえるかもしれません。

 

彼は、以前から、故ハラカミ・レイとのライブ共演をはじめ、国内で様々なアーティストとの共演を重ねてきました。近年では、2014年、ソロアルバム「Tabla Rock Mountain」、「猫村さんのうた」で、坂本龍一との共同作業、ヒップ・ホップアーティスト、環ROY、鎮座DOPENESSとのコラボを中心に、ミュージシャンとしての活躍の領域を広げつつあるようです。

 

原曲「Energy Flow」を、坂本龍一氏自身のプリペイドピアノの演奏、そして、環ROY、鎮座DOPENESSのヒップホップアーティストによるライム風の歌詞を新たに加え、U-Zhaanのタブラの演奏により新たにアレンジした「エナジー風呂」という、かなりユニークな作品もリリースしています。

 

直近では、蓮沼執太のNHKドラマ「きれいのくに」オリジナルスコアへのゲスト参加であったり、(これも名作です)そして、これまで活動を共にしてきた盟友、環ROY、そして、鎮座DOPENESSとのトリオ編成でのスタジオアルバム「たのしみ」をGolden Harvest Recordingから新作としてリリースし、いよいよ、日本のアーティストとして最盛期を迎えつつあるように思えます。 

 

 

 

 

このタブラという楽器は、他の地域のどの民族楽器類にも属さず、独特の倍音性を持ち、涼し気な音の響きをもたらすのが特徴といえます。

 

これはインドという土地ならではの特殊な楽器の一つといえるかもしれません。とりわけ、ユザーンさんのタブラ演奏の面白い特徴は、独特な打楽器としての味にとどまらず、旋律楽器としての叙情性を併せ持つ。

 

最初、日本にもこんな凄いアーティストがいると純粋に驚いた部分もありました。そして、彼のプロフェッショナルなタブラ演奏は、必ずといっていいほど、ゲスト参加したアーティストの音に他にはない効果、涼しげで、色彩的な質感”をもたらすように思える。それは他のどの楽器にも見つからない、このインドの民族楽器タブラしか持ちえない特性といえるかもしれません。

 

彼は、演奏中も、その音を長年の経験に培われた五感によって聞き分け、繊細なタッチで、そして、目にも止まらぬビートの早さにより、この民族楽器の音の個性を最大限に引き出す。そして、彼の演奏が素晴らしい理由は、共同作業をするアーティストの音楽に、打楽器としての側面、旋律としての側面、双方から、メインアーティストのサウンドを強固に支えている。そして、さらに、この楽器の性質、タブラの豊かな倍音の複雑なコントラストによって、既存の楽曲に異なる色彩を与え、元の空間上に立体的な倍音の空間を新たに生み出すからなのでしょう。

 

 

もちろん、それは、彼の長い確かな経験から来る盤石かつ巧緻な職人気質の演奏によって引き出される精髄だと思われます。

 

とくに、普通のドラムセットとも、電子楽器のドラムマシンとも異なる民族楽器の倍音を活かした独特なサウンドは、コラボするアーティストの音楽性の魅力を最大限に引き出す。そして、また、これまでその楽曲に見えなかった異なるニュアンスを生み出す。つまり、このタブラというのは、打楽器でもあり旋律楽器でもあるという特異な性質を持つ楽器といえるのかもしれません。

 

特に、近年では、タブラの演奏者としての役割だけにとどまらず、作曲作業の一貫として、この「Tabla」を、どのようにコラボするアーティストの楽曲の中に取り入れるかを熟慮している気配も窺えます。

 

 

 

新作アルバム「たのしみ」では、以前、シングルカットとして先行リリースされていたスチャダラパーのカバー「サマージャム’95」を収録。ここで、完成度の高いアレンジメントを完成させています。 

 

このサマージャム’95は、個人的にものすごく好みの曲でもあるし、また、夏の暑い盛りに聴くのに最適な曲ともいえるでしょう。ここで、日本のポップス、クラブ音楽の音の中に新たな風をもたらし、タブラの音によって異なるニュアンス、色彩、そして、涼しげな旋律効果を与えている。

 

これは、彼のタブラの演奏能力の巧みさ、そして、楽器の特性を深く知りつくしてるからこその名人芸だといえそうです。現在、ソロの演奏者をのぞいて、こういったふうに、様々な楽器の中にタブラの音を巧緻にマッチさせることが出来るアーティストは、U-zhaanさん以外考えられないでしょう。

 

 

 

あともうひとつ、少し補足的な話になりますが、U-zhaanさんは、音楽家という表情の裏側に、情熱的なカレー愛好家としての表情を併せ持つことを忘れてはならないでしょう。

 

彼は、インドの本場仕込みのカレーの味をよく知る、熱烈なカレー愛好家としても知られていて、実は、インド、マトン・レトルトカレーの監修をシタール奏者、石濱匡雄氏と共同で行っており、「ベンガルマトンカレー」が絶賛発売中!!。これは、現地ベンガル地方の本場の味を知る人間だからこそ、聞き逃す、いや、いっかな食べ逃すことのできない商品だといえるでしょう。

終わりに、U-zhaanさんのタブラの演奏は、インドの民族楽器の精神性を余すことなく表現しているがゆえに本当に素晴らしいのでしょう。そして、これまでずっと、そうであったように、これからもずっと、彼は、日本でインドの伝統楽器の素晴らしさを伝えてくれるだろうと信じています。

 

 

 

参考

 

U-zhaan Wikipedia

tabla Wikipedia 

 



Kimonosというバンドを簡単に紹介しておくと、今井レオと向井秀徳という日本音楽界きっての鬼才、いわばの理論派と感覚派の2つの個性がしっかりと組み合わさることによってこれまではなかった異質な化学反応が起こり、きわめてハイクオリティーな音楽が生みだされました。
 
向井秀徳は、すでにナンバーガールやザゼン・ボーイズのフロントマンとして、数多くの先鋭的なロック音楽をうみだしてきた実績があり、そして、今井レオの方も、ソロ・プロジェクトやMeta Fiveなどにおいて、ダンスミュージック方面での活躍が目覚ましくなってきています。
 
 
下北沢の通称”Maturiスタジオ”で、綿密に何度もリハーサル、レコーディングがなされたと思われる、このKimonosのデビューアルバム「Soundtrack to Murder」は、彼らの音の煮詰め方がストイックであるためか、きわめて洗練された完成度抜群の音楽が誕生したといって良いでしょう。

とりわけ、アルバム表題曲「Soundtrack To Murder」の出来栄えは文句なしに素晴らしく、向井秀徳の清涼感のある日本語のボーカル。そして、今井レオにしか出しえないネイティブの英語の歌声の響きが掛け合いのように繰り広げられ、洋楽とも邦楽ともいえない独自の匂いを生み出しています。
 
また、どことなくキーボードの旋律とギターのフレーズのプロダクションが、ザ・ポリスを彷彿とさせ、他の海外のバンドが、こぞってポリス的な音楽を生み出そうと躍起になってもなしえなかったことを、彼らはこの楽曲において、ザ・ポリスの領域にまでやすやすと踏み込んでしまっている。しかし、彼らがただのザ・ポリスのフォロワー的な存在に堕しているわけでもありません。
いかにも、向井秀徳らしい時代劇風の世界観がいかんなく発揮されており、辻斬りを彷彿とさせる日本語の歌詞と英語の歌詞が対比的に並んでいます。向井秀徳の歌と今井レオの歌が交互に配置されて、それが独特な風味を生み出している。そこでは、対比という西洋の古典的な美学により、呼応するフレーズが楽曲の中に”男の美学”として生みだされているという気がします。
そして、サビのところで、和風のテイストから、いきなり西洋風のテイストに移行する時、なんともいえない妙味があり、そこには、今井レオの高い声質からくるものか、爽やかな印象すらうけます。
そして、ややもすると退屈になりそうな曲展開が、彼の持ち味のグルーブ感のある歌声が加わることで、非常に複雑な印象を与えもする。つまり、何度聴いても全然飽きのこない良質な楽曲が実に堅固な基盤により築き上げられている。そんなところが、この名曲の持つ独特な魅力だといえるでしょう。

 
アルバムの全体的な印象は、ポップ、ロック、ダンスミュージックを融合したような音楽性です。
さほど目新しさはないように思えるのに、この二人の鬼才の個性によって、いいしれない新しい雰囲気が醸し出されています。楽曲の雰囲気はキャッチーではあるけれども、いたるところに、彼ら二人の音楽フリークらしい仕掛けのようなものが施されていて、そこに聞き手はニヤリとしてしまうところがあります。
 
これは、二人がいかにさまざまな音楽を貪欲に聴いてきたのか、そのバックボーンの深さが、ここではっきりと示されているという気がします。
 
「Almost Human」でほの見える、AOR趣味とも、ジャズ・フュージョン趣味とも、またクラブ・ミュージック趣味とも言えなくもないような、多彩なジャンルの色合いを持った楽曲は、向井秀徳が若い頃から、プリンスなどの影響を受けていながら、これまでその機会に恵まれなかったからか、表立っては作ってこなかったタイプの楽曲といえるでしょう。
 
しかし、”今井レオ”というダンスミュージックを誰よりも理解し、それをさらっとネイティブの発音で歌いこなせる盟友を得たことにより、ここで、初めてそういった聴き応えのある楽曲を生み出すに至った。
これはいわば、これは大人のために用意されたゲキシブ音楽といえ、彼の長年のファンとしても、新鮮に聞こえること間違いなしでしょう。
 
そして、また面白いのは、細野晴臣のカバーの「Sports Man」であり、それほど原曲のスタイルと変わらないように思え、一定の忠実さを以って、また、敬意をはらって今井レオの流暢な英語の発音によってしっかり歌いこまれていて、そこには現代的なテクノの味が醸し出されているところが味わい深い。

Kimonosは、本プロジェクトではないにしても、耳の肥えた西洋人をアッと驚かすような高い洗練度を誇り、深い知見と技術に裏打ちされた勘の良い音を奏でる数少ない日本のアーティストであるとはっきり断言できます。