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NON(のん)は6月28日にセカンドアルバム『PURSUE』をリリースするが、そのアルバムに収録されている「Beautiful Stars」で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとコラボしたことが明らかとなった。

 

NONとJ-POPロックバンド、アジカンが演奏するこの新曲「Beautiful Stars」は、すべての女性に向けた力強いメッセージを込めた爽快なパワーポップナンバー、バンドのフロントマン後藤正文が作曲、井上陽水(Turntable Films)&AKFGがプロデュースしています。既に米ビルボードでも紹介されています。K-Pop系のグループのような世界的なブレイクに期待しましょう。


「Beautiful Stars」

 Cero 「eo」

 

 
Label: カクバリズム
 
Release: 2023/5/24 

 


Review  
 

 
「eo」についてのceroのフロントマン、高城昌平のコメントは以下の通りです。

 


これまでのceroのアルバム制作といえば、常にコンセプトや指標のようなものが付きものだった。それが自分たちのスタイルでもあったし、バラバラな個性を持った三人の音楽家が一つにまとまるには、その方法が最も適していたのだと思う。
ところが、今回に関しては、そういうものが一切持ち込まれぬまま制作がスタートした。コロナ禍によって世の中の見通しが立たなかったこととも関係があるだろうし、年齢的なことにもきっと原因はあるのだろう。一番は、三人それぞれが自分のソロ作品に向き合ったことで、そういった制作スタイルに区切りがついてしまった、ということなのかもしれない。
 
なにはともあれ、唯一の決め事らしきものとして「とにかく一から三人で集まって作る」という方法だけがかろうじて定められた。そのため、まず環境が整備された。はじめは吉祥寺のアパートで。後半はカクバリズムの事務所の一室で。
このやり方は、とにかく時間がかかった(五年…)。「三人で作る」とはいえ、常に全員が忙しく手を動かすわけではないので、誰かしらはヒマしていたりして、効率は悪かった。でも、その客観的な一人が与えるインスピレーションに助けられることも、やはり多かった。
 
また、この制作はこれまででダントツに議論が多かった。シングルのヴィジュアルから楽曲のパーツ一つ一つにいたるまで、一体いくつメールのスレッドを費やしたかわからない。でも、そうやって改めてメンバー+スタッフで議論しながらものづくりができたことは、かけがえのない財産になった。楽曲を成り立たせているパーツの一つ一つが、セオリーを超えた使用方法を持っており、当たり前ながら、それら全てに吟味する余地が残されている。そんな音、言葉一つ一つに対する懐疑と諧謔のバランスこそがceroらしさなのだと、しみじみ気付かされる日々だった。


 

日本国内の音楽を聴いていてなんとなく感じるのは、基本的にパンデミック以前の音楽と、それ以後の音楽は何か別のものに成り代わった可能性が高いということである。成り代わったというのが本当かどうかはわからない。ただ、それはふつふつと煮えたぎっていた内面の違和感のようなものが、2023年を境にどっと溢れ出て、本格的な音楽表現に変貌を遂げたとも解釈出来る。その変革はオーバーグラウンドで起きたというより、DIYのスタイルで音楽活動を行うバンドやアーティストを中心にもたらされた。もしかすると、今後、これらの新しい”ポスト・パンデミック”とも称するべき音楽の流れを賢しく察知しなければ、日本の音楽シーンから遅れを取るようになるかもしれない。現在、何かが変わりつつあるということは、実際のシーンの最前線にいるミュージシャンたち本人が一番そのことを肌で感じ取っているのではないだろうか?

 

ceroーー高城昌平、荒内佑、橋本翼によるトリオは、これまでの複数の作品を通じて、日本語の響きの面白さに加え、中央線沿線(高円寺から吉祥寺周辺)のミュージックシーンを牽引してきた。 元々、2010年代のデビュー当時からトリオの音楽的なセンスは傑出していた。それは街のバーに流れる流行音楽とも無関係の話ではあるまい。メンバーの音楽的な背景には、広範な音楽(ポップス、ラップ、R&B)があり、それを改めて日本のポップスとして咀嚼し、どのように組み上げていくのか模索するような気配もあった。今では「Mountain、Mountain」などで関西風のイントネーションの面白さを追求していたのはかなり昔のことのようにも感じられる。

 

既に多くのファンが指摘しているように、メンバーのソロ活動を経て発表された「eo」については、聞き手の数だけ解釈の仕方があると思う。「大停電の夜に」の時代からのコアなファンであれば、懐かしいシティ・ポップや、akutagawaのような2010年代の下北沢や吉祥寺周辺のオルタナティヴロックのアプローチを見出すことができるし、それ以後の年代のネオソウルやラップ調の影響を見出すファンも少なからずいるかもしれない。実際、このアルバムは旧来と同様、日本語の響きの面白さが徹底的に追求された上で、以前の音楽性に加えてクラシカルやテクノ、ネオソウルの興味がアルバム全体に共鳴しているのである。これを気取っていると読むのか、それとも真摯な音楽であると捉えるのか、それも聞き手の感性や理解度のよるものだと思う。


しかし、オープニング曲「Epigraph」を聴くと理解出来るように、これまでのceroのアルバムの中で最もドラマティックで、彼らのナラティヴな要素が元来の音楽の才覚と見事な合致を果たしている。そのことはバンドの音楽に詳しくないリスナーであっても理解していただけるはずである。

 

また、それは「三人」というそれ以上でも以下でもない最小限の人数によるバンドという形式のぎりぎりのところで、銘々の才覚がバチバチと静かに火花を散らし、せめぎ合っているようにも思える。それは何か大それた形でスパークをみることはないのだが、しかし、確実にセッションの適切な緊張感から旧来のceroとは異なる音楽のスタイルが生み出されたことも事実であろう。上記の高城さんのコメントを見るかぎりでは、アルバム制作には五年という歳月が割かれたというが、結局、長い制作期間を設けたがゆえの大きな収穫を彼らは受け取ったのではないだろうか。これまでのceroの作品の中で最も緊張感がある反面、適度にくつろげる音楽としても楽しめるし、何かしら奇異な感覚に充ちたアルバムである。またソーシャル・メディアで指摘している方もいるが、明らかにこれはJ-Popの流れを変えうる一作と言えるのではないだろうか。

 

今作でのceroのアプローチは最近の洋楽と没交渉というわけではないものの、基本的にはJ-Popの音楽の範疇にあるものと思われる。そして、シティ・ポップの懐かしさとモダンなJ−Popの要素を織り交ぜ、それをどのような形で新機軸の音楽へと導いていくのか、その試行錯誤の跡が留められている。「Nemesis」を始めとする楽曲では、高城昌平が日本語の言葉の重みを実感しながらも嘆くかのような雰囲気に満ちている。以前は、さらりとラップ風にもしくはソウル風に軽快なリリックを展開させていたはずなのに、このアルバムに関してはその限りではないのだ。

 

何かしらパンデミック期の日本のパンデミック時代の閉塞した雰囲気に飲み込まれまいとするかのように、以前とは全く異なるじんわりとした深みのある言葉が一つ一つ丹念に放たれていく。それは日本語の表面上の意味にとどまらず、より深い感情的な意味がシラブルから聞き取ることもできる。さらに、このレコードから感じるのは、「言葉を放つ」というシンプルで実存にも関わる事柄の重要性を、ボーカリストである高城昌平さんはあらためてじっくり噛み締めているのだ。だからこそ言葉に深みがあり、軽やかな音楽と合わさると、奇妙なアンビバレントな効果を生み出すのである。例えば、最も言語的な実験性を込めたのが、「Fuha」となるだろうか。ここではノルウェーのJaga Jazzistの影響の反映させて、高城昌平のリリックは途中でブレイクビーツのように切れ切れとなるが、再びドリルのラップのサビに至ると、その言葉の響きがより鮮明となる。J-Popとしてはこれまでで最もアヴァンギャルドな作風のひとつである。

 

このアルバムには、他にもラテン系のポップや民族音楽の影響を反映した前衛的な作風が確立されつつある。「Tableux」でのイントロからのキャッチーなサビへの展開はアヴァンポップへとJ-Popが最接近した瞬間である。続く「Hitode No Umi」でのブラジル音楽を始めとするラテンとトロピカルの展開を通し、パーカッシブな要素を加味することで、各々の楽曲の印象を迫力ある内容にしている。それに続いて、旧来のceroの音楽性と同様に、少しマニアックな要素を踏襲しつつ、一般的なポップスとして万人に親しめるような形で「eo」は展開されていく。これらのパーカッシヴな要素は、実験音楽とも少なからず関係があり、グリッチに近いエレクトロニカの要素も織り込められている。その他にも、このバンドらしいソウルへの愛着が「Fdf」で示されている。ここにはアース・ウインド・アンド・ファイア直系のディスコソウルの真骨頂を見いだせると共に、ロンドンのJungleに近いレトロなネオソウルとして楽しむことができるはずだ。

 

『eo』はバンドメンバーの非常に広範な音楽的な興味に支えられたクロスオーバーの最新鋭のアルバムと称せるが、この作品を解題する上でもう一つ欠かさざる作曲技法が、アカペラのアプローチである。「Sleepra」では、息の取れた歌声のハーモニーの魅力が最大限に引き出されている。そしてそれは最終的に、ブレイクビーツを活用することによって、ハイパーポップに近い先鋭的なポピュラー音楽へと昇華されていく。これはトリオの現在の音楽に対するアンテナの鋭さを象徴付ける一曲になっている。アルバムの最後になっても、バンドの未知の音楽に対する探究心は薄れることはない。「Solon」では、最初期に立ち返ったかのような甘いメロディーを活かしたキャッチーなポップス、それに続く、クローズ曲では、ピアノを織り交ぜた上品なポップスに挑戦している。これらの曲には、どことなくシティ・ポップにも似たノスタルジアがわずかに反映されているが、しかしもちろん、これは単なる懐古主義を衒ったというわけではあるまい。ceroは2023年の日本のミュージック・シーンの最前線を行くバンドなのだから。

 

 

84/100

 

 

 

 

2007年に米国で発足したレコード会社が協力し、限定版をリリースし、各レコード店で独自イベントを開催する「レコード・ストア・デイ」が本日い店舗で開催されます。

 

本イベントでは、毎年、アンバサダーが選ばれ、このイベントを盛り上げてくれています。


今年のレコード・ストア・デイ・ジャパンのミューズには満島ひかりさんが選ばれ、さらに公式サイトを通じてメインビジュアルが公開となりました。


ビジュアルは、国内外に多くのファンを持つ”ELLA RECORDS”(幡ヶ谷)にて、アナログレコード愛好家、写真家の平間至氏によって撮影。幡ヶ谷のショップ、ELLA RECORDSは、個性的なレコードを多数販売、さらに地元商店街と連携し地域貢献を行っています。以前、テレビ東京の土曜日の夜に放映される番組「アド街ック天国」で紹介されたことがあります。

 

当日、旧作のレコードを中心に限定盤の69タイトルが販売されます。今年のレコード・ストア・デイのイチオシは、NHKの朝ドラ『ちむどんどん』の主題歌でお馴染みの日本の実力派シンガーソングライター、三浦大知さんの「ひかりとだいち love Soil&"Pimp" Sessions」となります。


日本のジャズバンド、SOIL&”PIMP”SESSIONSが盟友の三浦大知さんと共に歌唱し、作曲/アレンジを手掛け、さらに作詞は満島ひかりさんご本人によるという超豪華シングル「ひかりとだいち love SOIL&”PIMP”SESSIONS」 が、RSD限定盤として12インチサイズでリリースされます。B面に収録されているSOIL社長によるAmapiano Remixも必聴ですよ。 (詳細はコチラ


他にも、新旧の名盤のレコード再発が目白押しとなっています。邦楽では、Big Yukiの『Neon Chapter』、De De Mouse/YonYonの『Step in Step in』、Lindbergの『今すぐKiss Me/Little Wing ~spirit of Lindberg』、渥美マリの『夜のためいき』、佐藤千亜妃の『Time Leap』、三木道三のジャパニーズ・レゲエの傑作「Lifetime Respect』、Jun Sky Walkerの『Start/白いクリスマス』と、懐メロも充実のラインアップ。さらに、洋楽では、Mr Bigの鮮烈なデビュー・アルバム『Mr Big』、NirvanaのSub Pop時代のグランジの傑作『Bleach』、Al Greenの『I'm Glad You're Mine(ORIGINAL)/I'm Glad You're Mine(Cut Creator$ EDIT)』の再発も見逃すことができません。

 

これらのレコードの再発イベントは、全国のタワー・レコード/ディスクユニオンの一部店舗を始め、個人レコード店舗を中心に開催されます。限定版のラインアップはこちらから確認出来ます。全国のイベント実施店舗の詳細についてはこちら。また、タワーレコード/ディスクユニオン全店舗でRSDのイベントが開催されるわけではありませんので、くれぐれもご注意下さい!!

 

四人組バンド、Laura day romanceが4月12日に新作EP『Sweet.ep』を配信リリースしました。


春夏秋冬の季節に連動した4連作EPプロジェクト「Sweet Seasons, Awesome Works」の最終章となる今作は、春の匂いをまとった3曲入りのEP作品となる。彼女たちの真骨頂ともいえる軽やかでエヴァーグリーンなメロディーが冴えわたる新曲「書きたい」や、エレキコミックと片桐仁のユニット「エレ片」のコントライブ「エレ片 コントの人 Nānā aita pe'ape'a(ナーナ アイタ ペアペア)のOPテーマに起用された「アイデア」が収録。ぜひチェックしてみて下さい。


「森、道、市場」や「やついフェス」など、大型の春フェスやイベントも出演が決定している彼女たち。今後の情報も見逃すことができません。

 

今回のリリースに関するLuara day romanceのコメントは以下の通りです。


井上花月(Vo.) 

一年間忙しかったです。でも季節ごとに3曲ずつの試みには、誰かにあげるプレゼントを選んでいる時と同じ高揚感がずっとありました。春盤はシンプルに良く、歌っていて気持ちも良かった。桜がぜんぶ散っても聴けば春の匂い思い出すことになりそう。一番ひらけた曲たちです。

 

鈴木迅(Gt.)

バンドの枠を大きく広げられた4連作のepはぶっ倒れそうになりながら結果的に大成功だったと思う、そして春盤でシンプルな歌と演奏に帰ってくると以外に今までと違った手応えで曲が作れた。お気に入り。最後まで楽しんでいただけると幸いです。




Laura day romance 『Sweet.ep』 

 



収録曲

1.書きたい

2.春はバス

3.アイデア(エレ片 コントライブ『Nānā aita pe'ape'a(ナーナ アイタ ペアペア)』OPテーマ)

 

 

ストリーミング:

https://orcd.co/lauradayromance

 

 

 

Laura day romance プロフィール

 

2017年結成。2018年 1st EPをリリースするや否や各店舗で売り切れ続出となり、1st Single「sad number]が耳の早いリスナーの間でスマッシュヒット。サーキットフェスやイベントで軒並み入場制限がかかり、「Summer Sonic」にも出演。これまでに、アパレルブランドや化粧品ブランドとのコラボや、Vo.井上花月のモデルとしての活動など、ジャンルを超えたボーダレスな活動も展開。
 
 
2022年リリースの2nd Album「roman Candles 憧憬蝋燭」を携えて開催した、自身初となる東名阪ワンマンツアーや、今年1月に開催した渋谷 WWW Xでのワンマンライブでは、全公演チケットが即ソールドアウトとなった。

カルチャー/文学的な歌詞を織り交ぜ、エヴァーグリーンなポップセンスを持つメロディーと、メンバーのバックボーンにあるUKオルタナティヴサウンドが混ざりあったニューエイジの日本語ポップスを紡ぐ新世代。
 

 
YouTube Channel:
 

 

 


BABYMETALがニューシングル「Light And Darkness」を公開した。この曲は3月24日にリリースされるアルバム『THE OTHER ONE』に収録。


アルバムのテーマについて、「あなたが見て理解するものは、真実の一面しか明らかにしないかもしれないという知覚のアイデアを中心に展開している」とSU-METALはKerrang!に説明している。?したがって、それは "もう一方の側 "を探ることに飛び込んでいくのです」


"METALVERSE "と呼ばれるパラレルワールドを通じて、THE OTHER ONEの修復プロジェクトが始まった」とMOAMETALは同誌の取材に答えた。「"THE OTHER ONE "は10の神話で構成されており、今まで出会ったことのないBABYMETALが明らかになる。過去、現在、未来といくつもの次元を超越したマルチバースストーリーとなっています。そして、コンセプトアルバム「THE OTHER ONE」は、その過程で発見された10個のテーマごとに作られた10曲で構成されています。中には時空を超えて、過去に録音された私たちの声を復元し、現在の声と融合させた曲もあります」


先月幕張メッセ国際展示場で行われた2回のライブ映像で構成された『Light And Darkness』のビデオは以下よりご覧ください。

 Subway Daydream 『RIDE』

 


 

Label: Rainbow Entertainment

Release Date:2023年1月18日

 

Listen/Stream



Review 

 


Sensaによると、Subway Daydreamは、双子の藤島裕斗(Gt.)、藤島雅斗(Gt.Vo.)と幼馴染のたまみ(Vo.)、そしてKana(Dr.)によって結成された大阪の四人組ロックバンド。


結成直後にリリースした「Twilight」は、自主盤にも関わらずタワーレコード・オンラインのJ-POPシングルウィークリーTOP30にランクインするなど異例のヒットを記録し、更には関⻄の新人アーティストの登⻯門として知られるeo Music Try 20/21において、結成1年目にして1,279組の中から準グランプリに選出された。2021年4月28日にリリースした初のEP「BORN」では、オルタナ/グランジからネオアコ、シューゲイズまで、幅広い音楽性を取り入れながら瑞々しいポップセンスに落とし込み話題を呼んだ。今、勢いに乗る注目の新世代バンドであるとの説明がなされている。

 

『RIDE』は、大阪の新星、Subway Daydreamの記念すべきデビュー・アルバムで、Youtube Musicでも既に大きな注目を受けている。バンドは、デビューアルバムの宣伝を兼ねて渋谷WWW Xでのレコ発ライブの開催を予定している。また地元の大阪でも記念ライブが行われる。

 

オープニング・トラック「Skyline」から、青春味のあるサウンドが全面展開され、バンドは初見のリスナーの心をしっかり捉えてみせている。ボーカルについては、Mass Of Fermenting Dregsを彷彿とさせるものがあるが、MOFDがよりバンドサウンドそのものがヘヴィネスに重点が置かれているのに対して、Subway Daydreamの方は、サニーデイ・サービスの90年代のネオ・アコースティック時代のサウンドに近い青春の雰囲気に充ちたサウンドを押し出しているように思える。そして、ボーカルのメロディに関してはパワー・ポップに近い甘さもあり、メロディーの運びのファンシーさについては、JUDY AND MARRYの全盛期を彷彿とさせる。それに加え、サビでの痛快なシンガロング性についてはパンチ力があり、ロックファンだけでなくパンク・ファンの心をも捉えてみせる。そして、このバンドのキャラクターの核心にあるものは、ツインボーカルから繰り広げられる音楽性の多彩さ、そして、ハイレンジのボーカルと、ハスキーなミドルレンジのツインボーカルなのである。これらの要素は、パンキッシュなサウンドの中にあって、バンドサウンドに「鬼に金棒」ともいうべき力強さをもたらしている。

 

一般的に、デビュー・アルバムは、そのバンドやアーティストが何者であるかを対外的に示すことが要求されている。もちろん、あまり偉そうなことは言えないけれど、その点については大阪のSubway Daydreamはそのハードルを簡単にクリアしているどころか、要求以上のものを提示している。The Bugglesのポピュラー性を骨太のロック・サウンドとして昇華した「Radio Star」で分かるように、溌剌としていて、生彩味に富んだエネルギッシュなサウンドは、多くのJ-Popファンが首を長〜くして待望していたものなのだ。もちろん、サブウェイ・デイドリームは、日本らしい唯一無二の魅力的なポピュラー・サウンドを提示するにとどまらず、シューゲイザー/オルタナティヴロックを、バンド・サウンドの中にセンスよく織り込んでいる。このアルバム全体にある普遍的な心楽しさは、リスナーを楽しみの輪に呼び込む力を兼ね備えているように思える。

 

これらのコアなサウンドの中にあって、力強いアクセントとなっているのが、ノスタルジア溢れる平成時代のJ-Popサウンドの反映である。

 

例えば、七曲目の「ケセランパサラン」では、Puffyのような日本語の語感の面白さの影響を取り入れ、それらをノイジーなギターサウンドで包み込んだ。その他、「Yellow」では、ディストーションギターを全面に打ち出したノイジーなサウンドに挑戦している。これは、大阪のロックバンドが地元を中心とするライブ文化の中で生きた音楽の影響を取り込み、自分たちの音として昇華していることの証立てともなっている。


収録曲のサウンドは、ポピュラー・ミュージックとして傑出しているばかりか、実際のライブを見たいと思わせる迫力と明快なエネルギーに満ちている。何より、サブウェイ・デイドリームのエヴァーグリーンなロック・サウンドは、デビュー作特有の爽やかさがあり、それは他ではなかなか得られないものなのだ。彼らこそ、2020年代という新しい時代の要請に応えて登場したロックバンドである。今後、着実に国内のファンのベースを拡大していくことが予想される。

 

 

 90/100

 

Featured Track 「ケサランパサラン」

 


羊文学がニューシングル「風になれ」をデジタル・ストリーミング限定で発売しました。この楽曲は、12月16日に全国公開された映画『そばかす』の主題歌となり、塩塚モエカが作詞・作曲を務め、主演の三浦透子に提供した楽曲のセルフバンドカバーとなっている。また、配信に合わせてアートワークも公開となった。アートワークの写真を手掛けるのは、写真家の中野道。

 

昨年はメジャー2作目となるアルバム『our hope』をリリースし、ライブでは5大都市のZepp公演を含む初の全国ツアーや東阪でのホール・ライブを開催 & 全公演ソールドアウト。さらに、数々の大型フェスに出演するなど、大きな躍進を遂げた羊文学の今後の活躍に期待です。

 

 

 「風になれ」 三浦透子 Ver.

 

 


 

羊文学 「風になれ」 New Single

 

 

発売日:2023年1月2日

レーベル:F.C.L.S

 

Tracklist:

 

1.風になれ 


楽曲のストリーミング配信:

 

https://fcls.lnk.to/Kazeninare 


 日本のインディーズシーンでカリスマ的な存在感を持つ曽我部恵一擁するサニー・デイ・サービスが、本日、11月1日に待望の新作アルバム『Doki Doki』をリリースしました。リード曲「風船讃歌」のMVがアルバムの発表に合わせて公開されております、下記よりご覧下さい。

 

新作アルバムは、LP,カセット、CDの3形式で、現在、Rose Recordsから販売中です。『Doki Doki』は、サニーデイ・サービスのフルアルバムとして2020年発表の『いいね!』以来の作品となる。また、曽我部恵一は、Covid-19に罹患し、療養していた期間に制作された初のアンビエント作品『Memories& Remidies』を8月26日にRose Recordsから発表しています。 

 

 

「風船讃歌」 MV 

 

 


『Doki Doki』 作品紹介

 

『DANCE TO YOU』(2016)、『いいね!』(2020)を筆頭にバンドの最高値を更新し続ける現在のサニーデイ・サービス。彼らの14枚目となるアルバム『DOKI DOKI』がついにリリースされます。  
 
世界に垂れ込める暗雲を切り開こうとするような先行楽曲「風船讃歌」で幕を開けるこのアルバムは、今日を生き抜く力、すなわち魂の救済に満ち満ちたポップソングがぎっしりと詰まった、43分のロックンロール・ジャーニーとでもいうべき作品。  

曽我部の研ぎ澄まされたメロディと言葉は、田中のメロディックなベースと、大工原が叩き出す推進力に溢れたドラムに彩られ、真っ直ぐなビートとなり聴く者の胸に届くはずです。  
果たされなかった約束、未だ触ることのできない夢、退屈も絶望も...、それらを抱きしめ、そっと空へと舞い上がらせるロックの魔法。そんな青臭くも限りなく真摯な作品と言えるでしょう。  
 
「風船讃歌」MVでは「飛べない天使」に扮した三人。それは、過去を慈しみ、未来を照らしながら現在を爆走し続けるサニーデイの姿そのもののようです。  
激しくもメロウ、優しくもクリティカル、清々しくもセクシーで豊潤な歌たちを携え、彼らの新しい道がここから始まります。  
 
ポップミュージックとは?ロックンロールとは?パンクであり続けるとは?そんな自問自答を繰り返すサニーデイ・サービスというバンドによる、掛け値なしの最高傑作の誕生です。

 

 

さらに、曽我部恵一はこの新作アルバム『Doki Doki』発表に合わせて、以下のようなコメントを添えています。



『DOKI DOKI』というタイトルは、最後に決まった。それまでは『ペンギン・ホテル』にしようと思っていた。グレイトフル・デッドの『マーズ・ホテル』に倣って。旅しているバンドのイメージと、これからどこか知らないところに出かける予感が同時にあったから。
でも、バンドの写真を撮って、最初はアーティスト写真のつもりだったそれがジャケット写真になることになり、そのジャケットを眺めていると「DOKI DOKI」ということばがどこからか出てきたのだった。

写真はぼくらがアマチュアの時から使わせてもらっている幡ヶ谷の練習スタジオに白い幕を下げて撮った。同じ日に「風船讃歌」のMVの衣装合わせもあって、ニコニコと晴れやかな日だった。
こんな写真が撮れたのは、その日のあらゆることのおかげである。全てに感謝したい。


 

サニーデイ・サービス 『Doki Doki』   




SONGS


side A


1 風船讃歌
2 幻の光
3 ノー・ペンギン
4 Goo
5 メキシコの花嫁

side B


1 ロンリー・プラネット・フォーエバー
2 サイダー・ウォー
3 海辺のレストラン
4こわれそう
5 家を出ることの難しさ


Rose Records:

 

https://www.roserecordsshop.com/



 


グソクムズが、新作シングル『冬のささやき』をデジタル配信と7インチでリリースすることになった。


 

グソクムズは昨年2021年末にデビューアルバム『グソクムズ』をリリースすると第14CDショップ大賞2022への入賞するなど話題を呼び、今年9月にはアナログ限定LP初期音源集『グソクムズカン』を発売、そのリリースライブもソールドアウトするなど飛ぶ鳥を落とす勢いの吉祥寺を拠点に活動をする4人組バンド。


 

今作は軽快なテンポに乗せた雪の結晶のようにキラキラ輝くメロディと、冬の空気に鼻の奥がツンとするような切さが間違いなしのグソクムズ印。


 

デジタル版は1012日(水)、さらに7インチは112日(水)リリースとなる。


 

耳に心地良いサビのハモりも胸キュン必至の新たなウィンタークラシックが誕生した。








グソクムズ『冬のささやき』

発売:2022年11月2日(水)
価格:2,420円税込)
品番:P7-6481
レーベル:P-VINE
仕様:7inch / デジタル
*デジタル版は2022年10月12日(水)リリース


収録曲:
A. 冬のささやき
B. 北風燦々恋心



official-order:


https://p-vine.lnk.to/ee9SJE



 
Roth Bart Baronが新作アルバム『HOWL』を11月9日にリリースすることを公表している。さらにこの発売告知に合わせて、現在放送中のTBSドラマシリーズ「階段下のゴッホ」のエンディングテーマ「赤と青」をデジタルシングルとして本日、9月28日にリリースしている。

 

ドラマのために制作された新曲「赤と青」は、この時代に小さな孤独を抱えながらも生きる人々の”勇気の新たな応援歌”となっている。

 

さらに、Roth Bart Baronの7thアルバム『HOWL』のトラックリスト、アートワークも公開された。

 

11月に発売が決定した新作アルバム『HOWL』には、「赤と青」の他、JR東日本のCMソング「KAZE」、Disney+「すべて忘れてしまうから」のライブエンディング曲「糸の惑星」、つくばみらい市、シティプロモーション曲「MIRAI」等が収録される。さらに、8月7日、日比谷野外音楽堂にて開催された”Bear Night 3"で初披露された、中村佳穂をフューチャリングした「月に吠える」や、ライブではお馴染みの「場所たち」がオリジナル音源として初収録される予定だ。  

 

 


Roth Bart Baron 『HOWL』7th Album

 


 Tracklist:

 

 1. 月に吠える feat.中村佳穂 / Werewolf Under the Moon


2. K A Z E
〜 JR東日本CMソング 〜


3. 糸の惑星 / Yarn Song
 〜Disney+『すべて忘れてしまうから』ライヴ・エンディング曲〜


4. 赤と青 / Red and Blue
〜 TBSドラマ『階段下のゴッホ』エンディング曲 〜


5. HOWL


6. O N I


7. Ghost Hunt (Tunnel)


8. 場所たち / Lonely Places


9. 陽炎 / HAZE


10. MIRAI
〜 つくばみらい市・シティプロモーション曲 〜


11. 髑髏と花 (дети) / Skulls and Flowers (дети)


初回限定盤 CD + Blu-ray - PECF-91044 ¥4,700+tax
通常盤 CD - PECF-1194 ¥3,000+tax
Vinyl - PEJF-91045 ¥3,300+tax ※11月末発売予定

 

また、Roth Bart Barron はビルボードライブ大阪から開始される『Roth Bart Barron”HOWL"Tour2022-2023』を発表している、パート1〜の4公演のオフィシャル先行予約が開始されている。詳細は下記より。

 

チケットぴあ:

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2222524

 

 

湘南出身のシンガーソングライター、さらさは、今年4月に記念すべき1st EP『ネイルの島』を発表している。9月7日、このEPに収録されていた「Amber」のリミックスバージョンをデジタル配信としてリリースした。


4月に1stEPをリリースしたばかりのさらさは、フジロック出演を果たし、話題を呼んでいる。このシングルは、EP「ネイルの島」のリードトラック「Anber」をDJ Mitsu The Beatsがリミックスを手掛けたものである。流れるようなピアノ、憂いある歌声が合わさり、オリジナル・バージョンとは趣が異なるドリーミーなリミックス作品として仕上がった。

 

 

さらにこのリミックスについて、DJ Mitsu The Beatsは以下のようにコメントしている。

 

origami SAIで初めてご一緒させていただき、初めてその存在を知りました。もちろん良いアーティストだなって思いましたが、まさかのリミックスのオファー。凄くうれしかったのと共に、送られてきたアカペラを聴いて完全にノックアウトでした。なんとも形容しがたいオリジナルな歌声で、それに引っ張られて、リミックスはすぐに形になりました。自分のワークスとしても会心の出来だと思ってます。ぜひ聴いてみてください。


Weekly Recommends 


YMB「Tender」



 

 

 Label: Friendship.

 Relaese Date: 2022年6月29日

 

 

 

ー「Post City Pop」時代の幕開けー



YMBは、2015年に大阪で結成された。Yoshinao Mitamoto、いとっち、ヤマグチ・ヒロキ、今井涼平による四人組のインディー・ポップグループです。

 

これまでにYMBは、「City」(2019年)、「ラララ」(2020年)、「トンネルの向こう」(2021年)、三作のフルアルバムを残しており、昨日、6月29日にFrendship.からリリースされた「Tender」は通算四作目のアルバムとなる。現在、YMBは東京のライブツアーを間近に控えていて、吉祥寺のインディーフォークバンド、Gusokums(グソクムズ、P-VINEに所属)と共演する予定です。


YMBのサウンドは、シティポップ、渋谷系をベースにしたポピュラーミュージックに彩られており、東京のCero,近年、中国に活躍の幅を広げつつある"She Her Hers"、澤部渡の"スカート"に近い、おしゃれな楽曲が魅力で、人を選ばず、気軽に楽しめるサウンドと言えるかもしれません。

 

YMBの4thアルバム「Tender」では、これまでの作品と同様、ほんわかとした雰囲気の良いサウンドが繰り広げられる。さらに、そこに、男女のツインボーカルの兼ね合いが心地よい空間を演出する。バンドサウンドとしては、ジャズ、R&B、ファンクといった幅広いジャンルの影響を滲ませたブレイク(休符)の多い難易度の高いサウンドアプローチであるにもかかわらず、演奏に力強いグルーブが感じられるのは、YMBのメンバーの演奏力の高さ、そして、曲に対する理解の深さ、バンドメイトとして上手く連携が取れているからこそ。このぴったり息の取れた演奏力、完成度の高さに裏打ちされた巧みなバンドアンサンブルは、リスナーを十分惹きつけるものがある。音楽自体も自己主張が強くないので、まったりした雰囲気が漂い、多くの人に共感を与えるような魅惑的なポピュラーサウンドが本作「Tender」で生み出されているのです。


また、日本語の口当たりの良い歌詞のニュアンスについても、これまでにありそうでなかった表現が見いだされ、作曲者のYoshinao Miyamotoの文学的な感性が上手く詩の中に引き出されています。

 

 「Tender」には、「思春期的な捻くれの効いた言葉選び、パートナーの寝顔を見て、結婚生活の自戒を打ち立てる純情な不器用さなど、既出のソングライターとは一線を画す」秀逸な日本語詞の表現性が見いだされる。これは、多くの人に共感と頷きを与える重要なポイントに挙げられる。実際の音楽が歌詞と絶妙にマッチしたミドルテンポの心地良いポピュラー・ソングが繰り広げられており、さらに、Cero,She Her Hersのように、エレクトロポップ、ファンク、ローファイを咀嚼した日本のモダンサウンドが提示される。歌詞の表現法にちょっとした親近感をおぼえるのは、YMBのYoshinao Miyamotoが肩肘をはらず、等身大の自分の姿をありのままに表現しようとしているから。さらに、Miyamotoは、実体験における成功でなく、日常の失敗の経験をさらりとかろやかに歌いこんでいる。この点も大きな魅力であり、それを卑屈になるわけではなく、また、自己憐憫に浸るわけでもなく、爽快な空気感で歌いこんでいる点も素晴らしい。

 

シティ・ポップサウンドを基軸とした、男女のツインボーカルの涼し気で洗練された響きがこのアルバムの最大の魅力ではありますが、もうひとつ目を惹くのは、懐かしの平成時代のJ-POPのキラキラとした輝きがいたるところに見いだされること。小沢健二をはじめとする「渋谷系」だけでなく、小室ファミリーに代表される「エイベックス・サウンド」、渋谷をはじめとする東京の街角で流れていた王道のポピュラー・ソングがここに再現される。平成時代の音楽に慣れ親しんできた多くの一般のリスナーはこのアルバムに懐かしみを見出してくれると思います。

 

面倒な話はさておき、YMBの「Tender」は、多くの人に共感を与える音楽、日本語詞によって流麗に彩られている。これは、2020年代のシティ・ポップ、「Post City Pop」時代の幕開けを告げる傑作と呼べそうです。現在、日本は、40度に気温が達する地域もあり、あまりに暑すぎるので、今週は、おしゃれで涼し気なシティ・ポップ・サウンドを選びました。これからの季節、家の中で、また、ドライブ中に、YMBの最新作「Tender」を聴いてみてはいかがでしょう??



Critical Ratings:

84/100 

 

 

 

Weekend Featured Track 「Tender」 

 

 

 

Friendship. Official:

 

https://friendship.mu/release/tender/ 

 

 

 Laura  Day Romance 「Roman Candle 憧憬蝋燭」




  

Label: lforl

 

Release Date:2022年3月16日

 

Genre : Alternative Folk/J-POP

 

 

2017年に東京で結成され、翌年、デビューEPをリリースしているローラ・デイ・ロマンス。他にも2018年には世界的な知名度を持つイベント、サマーソニックにも出演を果たしていて、インディーポップバンドではありながら、一般的なリスナーの間でも徐々に注目度が上がりつつある四人組です。

 

往年のサニーデイ・サービスのように、スコットランドのネオ・アコースティックに近い作風が特徴であり、その他、平成時代の日本のグループ、My Little Lover、Brilliant Greenに近い叙情性を滲ませる音楽性が特徴です。また、洋楽にも親しんでいると、メンバーが語っている通り、アメリカのニューヨークのバンド、ビックシーフにも近いオルタナフォーク性を擁している。


3月にリリースされた「Roman Candle 憧憬蝋燭」は2020年の「farewell Your Town」に続く二作目のフルアルバム。前作のアルバムでは童謡や歌謡を下地にした可愛らしい世界観を展開していたローラ・デイ・ロマンスはこの最新作のおいて、それとは全く別のアプローチに取り組んでおり、ゆるやかで爽やかさのあるインディーフォーク/オルタナフォークにシフトチェンジを図ってます。ギター、ベース、ドラム、キーボードの編成が生み出すバランスの取れた安定感のある作品が生み出されている。 

 

基本的にはこの四人組の音楽的なバックグラウンドと思われる平成時代のJ-POPを下地に、そこに、ディストーションギター、エレクトリック・ピアノ、スティールギター、その他にも、DTMを介して、ソフトシンセサイザーの実験的な音色やシークエンスを取り入れている点が、この四人組の音楽性にオルタナティヴ性を付け加えています。


しかし、それらのオルタナティヴ性はそれほど取っつきづらいものとはなっていません。その理由は、このバンドはスピッツやサニーデイサービスのようにJPOPらしい聞きやすいフォークに取り組んでいるから。アレンジ面で多少実験的な試みをしたとしても、そのバンドの軸のようなものがぶれない。バンドサウンドとしては相当洗練されているので、多少の冒険をしたところでは、これらのJ-POPサウンドらしい特徴が崩れたり、薄められたりはしないでしょう。

 

渋谷を拠点にするグループのためか、このアルバムは、特に平成時代の「Shibuya-Kei」の音楽性に重点が置かれているように感じられるのが良く、さらにその要素の上に、現代的なフォークの色が取り入れられているのも素晴らしい。

 

このバンドの持ち味である以上に挙げた要素、いや、それ以上のJ-Indieの精神性のようなものが、この新作アルバム「Roman Candle」では存分に発揮されており、ひねりのない王道の平成時代のJ-POPの穏やかで開放感に溢れたインディーフォークの王道が体験出来、さらにコンクリート・ジャングルーー東京に生きる人々に癒やしをもたらしてくれるような作品です。ヒップホップやロックにおいては、海外のアーティストが何枚か上を行っているのは事実なんですが、海外の作品だからという理由だけで持ち上げすぎるのも良いことではないはずです。日本にも良い音楽があるんだということを改めて痛感させてくれる素晴らしいアルバムです。


(Critical Rating 86/100)


 

 


・Amazon Link



 安藤裕子

 

 

安藤裕子さんは神奈川県出身のアーティスト。2002年に女優としてデビュー、「池袋ウェストゲートパーク」を始め、多くのドラマに出演。その他、映画、CM出演を始め、テレビ、ラジオ出演といった多才な経歴を持つ女優ですが、2003年から、ミュージシャン、シンガーソングライターとして活躍されています。 


2003年には1st minialbum「サリー」でデビュー、月桂冠のCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され大きな話題を呼んでいます。

 

これまでの18年という長いキャリアで、十一作のアルバムを発表。多作なアーティストに数えられるでしょう。楽曲のソングライティング、作詞といったミュージシャンの基本的なクリエイションはもちろん、CDジャケット、グッズデザイン、メイク、スタイリングまで自身でこなされていらっしゃる点では、メジャーアーティストに属しながらもDIYの活動を行ってきています。


プロミュージシャンとしての活動と併せて女優としての活躍も目覚ましく、2014年には大泉洋主演の「ぶどうのなみだ」にてヒロイン役に抜擢され、女優としてデビュー後、初めて本格派の演技に挑戦しています。

 

2018年にはデビュー十五周年を記念し、初のセルフ・プロデュース作となる「ITALIAN」を発売。

 

2019年には、全国4箇所を巡るZeppツアーを開催する。 2020年8月26日にニューアルバム「Barometz」をリリース。収録曲の「一日の終わり」のMVをショートフィルム化した映画「ATEOTD」がイオンシネマ他で全国公開されています。

 

2021年には「安藤裕子 Billborad Live 2021」を開催。同年8月には「うきわー友達以上、不倫未満ー」のオープニング曲「ReadyReady」を配信。10月、表紙モデルと短編作品1作が収録された「コーヒーと短編」がミルブックスより刊行。同月29日公開の映画「そして、バトンは渡された」への出演も果たしています。


女優業と様々なメディアへの出演と多岐に渡る活躍をされている安藤裕子さんですが、アーティストとしての活躍にも期待していきたいところです。

 

 

 

 

「Kongtong Revcordings」 Pony Canyon Inc.

 

 

「Kongtong Recordings」2021
 

 

 

Scoring

 

 

 

 

 

 

Tracklisting

 

 

1.All the little thing

2.ReadyReady

3.UtU

4.Babyface

5.恋を守って

6.森の子ら

7.少女小咄

8.Toiki

9.僕を打つ雨

10.teatime

11.Goodbye Halo

12.衝撃 -Album Ver.

 

 


「Kongtong Recordings」

Listen on:

 

https://songwhip.com/yukoando/kongtong-recordings

 

 

 

 

ご自身のHPの日記においては、”ねえやん”と名乗るシンガーソングライターの安藤裕子さん。研ナオコさんをリスペクトしていることでも有名なアーティストですが、2021年11月7日にポニーキャニオンから発売された「Kongtong Recordings」は、安藤裕子さんのどことなく音楽の渋い趣味を伺わせるアルバム作品であり、トリップホップ、ジャズ、チルアウトといった作風を自由自在にクロスオーバーしながら、独特な雰囲気を漂わせる聴き応え充分の傑作が誕生しています。

 

これまで初期の作品の「サリー」に見受けられるように、J−POPアーティストの王道を行くような音楽性を追究してきたシンガーソングライターの安藤裕子さんではありますが、今作「Kongtong Recordnigs」は旧来の作品とはまったく異なる質感をもった良作が生み出されています。

 

「Kongtong Recordings」と銘打たれた安藤裕子さんの十一作目となるスタジオ・アルバムは、ジャケットワークにしてもミステリアスな印象をもたらす作品、そのあたりは横溝正史のファンであるというのが少なからず影響しているかもしれません。「混沌した録音」という題名についは、世相をいくらか反映しているようなニュアンスも込められているように思え、音楽を介しての女性の憂鬱、あるいはアンニュイ、といった感情を「詩的なうた」という形で表現されているように思えます。また、曲調についてもこれまでのJPOPアーティストとしての延長線上にありながら、渋い質感によって彩られています。ときには、トリップホップやアシッド・ジャズの領域に入り込んでいるように思え、ソングライターとしての大きな才覚が発揮された作品ともいえるかもしれません。


特に、8曲目に収録「Toiki」はバラード曲として逸品です。素晴らしいソングライターとしての資質が発揮された作品といえ、このアンニュイな楽曲はポーティスヘッドの最初期の音楽性に近いアプローチが図られているような印象を受けます。つまり、イギリスのブリストルの電子音楽のサウンドを日本語に組み直し、J-popとして昇華している点に、このアーティストの真骨頂、音楽家としてのプライドが見いだされると言えるでしょう。


その他にも#5「恋を守って」また「僕を打つ雨」は懐深さを感じさせ、ソウルやR&Bに代表されるようなこころなしか夜の雰囲気を感じさせる楽曲、J-popとして聴いてもただならぬ深みの感じられる良曲といえるでしょう。

 

シンガーとしても最初期に比べ、アルバムのアートワークに因んでいうなら、いよいよ仮面をはぎとった!!といえるかもしれません。これまでよりもさらに深み渋みの感じられる秀逸なシンガーソングライターになってきているように思え、初期のフレッシュさに加え、歌手としての円熟味が活動18年目にして加わったという印象も受けます。また、これらの楽曲には洋楽の後追いではない歌謡曲に対する影響性もそこはかとなく見いだされることについても言及しておかなければならないでしょう。

 

「ReadyReady」といった比較的理解しやすい魅力的な作品も見受けられる一方、その他数多くの秀逸な本格派の楽曲が収録されています。消費のためではない、じっくりと長く楽しめる味わい深い作品。これまでリリースされた作品のデジタル配信再生数が思ったほど伸びていないのが残念。世界水準の資質を持った素晴らしい日本のミュージシャンです。

 

 

 

 

「Konton Recordnigs」のリリース情報詳細につきましては、以下、安藤裕子公式HPを御覧下さい。 




安藤裕子 Official HP 

 

https://www.ando-yuko.com/

 

 平成時代を華やかに彩った日本の音楽ムーブメント 渋谷系

 

 

1.渋谷のカルチャーと海外のカルチャーの比較


 

十数年前、一時期、海外の音楽視聴サイト、特に、AudioLeafで他の多種多様の海外の音楽ジャンルに紛れ込んで、見慣れたジャンルが海外のリスナーの間で微妙に盛り上がりを見せていて驚いたことがありました。

 

 

「Shibuya-Kei」という英語で銘打たれた音楽ジャンルが、AMBIENTやEDMといったその頃一番話題を集めていたジャンルに、日本のちょい昔の音楽ジャンルが混ざり込んでいた。調べてみると、サブカルチャー的ではあるものの、一定数の海外リスナーがこのジャンルに興味を抱いていたのです。

 

 

かなり、コアな海外の音楽ファンがこの日本のシブヤ系アーティストに関心を抱いている雰囲気がありました。ちょっと昔には、ヨーロッパなどでkaroushiといった経済用語が一般的な言葉として認知されてしまった日本ですが、こういった既に日本人がすっかり忘れてしまったようなサブカテゴリーに属する音楽ジャンルが海外でひそかな人気を呼んでいることに、少なからずの驚きをおぼえた次第です。海外のリスナーというのは、そもそも、良い音楽を追い求めていて、時代性というべきか、それが何年の音楽だとか、そういうことは、それほど頓着しないように思えます。 

 

 たとえ、十年前、二十年前、いや、五十年前の音楽であろうとも良いものは良いと認める潔さがある。日々接する音楽に対して恬淡な評価を下すのが、海外のリスナーであるのだと思う。加えて、一般的にヘヴィなロックコンサートは若者が参加するのが相場というのが日本の考え方であるように思える一方、アメリカにおいては、ロックコンサートに参加するのは十代の若者からお年寄りまで幅広い年代がロックコンサートを楽しむ。

 

 アメリカでは、御年配の方が、若い音楽を楽しむことを若者たちも自然のことだと考えているらしい。だから、若者からお年寄りまでみな等しく若い音楽を心から楽しんでいる。そもそも音楽に、年齢という概念を持ち込まないというのが海外のリスナーの常識のようです。そんなものだから、幅広い年代が若い年代の旬のアーティストを積極的に聴いていたりする。それを、たとえばいい年をしてロックなんか聴いて!とか思ったり、全然恥ずかしいとかそういう概念はまったくないらしいんです。これは、そもそも、ロックというジャンルが文化に深く根付いているから、年代を問わず、幅広い楽しみがあたりまえのように根付いているらしいのです。 

 



2.日本特有の音楽性

 

 

さて、ここ最近、昔の日本の一ジャンル、シティポップが海外の一部の愛好家の間で親しまれていたのは既に多くの方がご承知と思います。往年の、山下達郎、竹内まりあといった日本歌謡界を長年率いてきたアーティストたちの音楽がすぐれていて、普遍的に、こころの琴線に触れるものがあるからこそ時代を越え、熱心な海外の音楽ファンがこのジャンルに見目好い評価を下した。そして、海外のファンが日本の音楽に評価を下す際、重要視しているもの、それは今、現在において海外の音楽としての完成度ではなくて、日本らしい独特な雰囲気が漂っているかどうかに尽きるように思える。 

 

日本にずっと住んでいると、日本語の美しさには気が付かないが、たとえば想像してみていただきたいのは、もし十年海外で生活をして日本に戻ってきたときにふと日本語の発音を聴いたら、どのような感慨をおぼえるだろう? もし、トルコで宗教的理由で豚肉が食べれない生活を何年間か続けて、数年ぶりに帰国し、吉野家や松屋を見かけたときにどのような感慨をおぼえるだろう? そこに、異様なほどの親しみやすさ、ノスタルジーを思い浮かべざるをえなくなるはずです。この相違点というのは音楽についても全く同じことがいえ、内側から日本の音楽を眺めていると見えづらい日本の文化的美質が存在している。それは実はそこに常に存在しているが、私達はそれをすっかり見落としているような気がする。それをときに、海外の人々から「コレだよ!」と教えられてしまう場合もある。二十世紀初頭から西洋文化を真綿のように吸収してきた日本文化ではあるが、日本らしい概念、日本しか存在しえないものが今でも私達の文化の中にあるはずなのです。

 

殊、音楽という分野について限定して考えてみると、昨今においても折坂悠太、ミツメ、トクマルシューゴ、Tricotをはじめ海外の音楽として通用するようなすぐれたアーティストは多数いるものの、海外のファンが求めるような音楽と、日本のファンが求める音楽は、そもそも土台において全然異なるように思えます。一体、何が異なるのか、何が求められるのか、必ずしも海外に迎合する必要はないはず。これはちょっとした意識のずれとして、文化の相違として見ると、興味深い点があるように思えます。例えば、それは、ボアダムスや電気グループだとか、意外に思えるような日本で知られていないアーティストが海外で話題になっているのを見てもその傾向は顕著。そしてこれは、そもそも音楽がどの程度、生活の文化として深く根ざしているのか、人々が音楽というのをどういった分野として捉えているのかで大きな差が出るように思えます。

 

もちろん、その考え方というのも、日本人だからこうとか、海外の人がこうとか一概に決めつけるべきでなく、考え方というのもそれぞれの人で異なるはず。

 

しかし、どうも、日本人と西洋人の音楽についての捉え方は、似ているようで異なる部分も少なくない様子。一見、双方ともに音楽を体で感じて、耳で聴いて楽しむ、という点については、全く同じであるように思えるのに。しかし、私が考える、あるいは述べたいのは、その両者の嗜好性、価値観の違いは表面的に顕現しているのではなく、文化性といった根深い意識の最も深い部分、概念的に浸透しているものにおける相違点がひとつかふたつ存在しているということです。

 

これは、ちょっと今、現在では説明し難いので後にとっておきたい疑問点です。お分かりの通り、音楽という古代ギリシアで重要な分野として文化のいち形態を築き上げてきた分野にとどまらず、他の表現媒体、映画、写真、演劇、文学という分野に押し広げて適用できるような考え方と言えるでしょう。

 

 

  

3.平成時代のシブヤ系の音楽性について

 

 

そして、独断と偏見をまじえた上で述べるなら、もし、このシティポップの次に、好い評価を受ける可能性がある日本のジャンルを挙げるとすれば、間違いなくシブヤ系ではないだろうかと個人的には考えています。 少しばかり懐古主義的な言い方になってしまうけれども、元々、平成時代というのは、日本の経済の活発さがあった。

 

好景気の後押しを受け、レコード産業も発展、多くの粋の良い若手アーティストが無数に出てきた時代。特に、この時代において、渋谷の109やHMVというのはかなり名物的な場所、たまごっち、ギャルや音楽といった若者たちが発信する文化が発生し、それが結びついて発展していった。

 

平成時代の日本の音楽をざっと概観してみると、言語という側面でも面白い特徴があり、J-popという他の歌詞だけは日本語でうたわれ、サビだけが英語という独特なスタイルの立役者は間違いなく、小室ファミリーと称されるアーティスト。

 

次いで、浜崎あゆみや沖縄のスピード、そして、その一連の流れを、最後に決定づけたのが宇多田ヒカル。その流れの中で、19やゆずのような街での弾き語りとして活動していたアーティストのフォークが注目を浴びたこともあった。ビギンのように、これまで脚光を浴びてこなかった沖縄の民謡音楽の影響を受けたポップス、あるいは、沖縄出身のアーティストが数多くシーンに台頭してきたのも興味深い特徴だったと思えます。

 

この平成時代の音楽で最も際立った特徴は、渋谷という平成時代の若者文化の発信地を中心として盛り上ったこの「Shibuya-Kei」というジャンルには、他の海外の音楽には全くない日本独特の要素が感じられます。シティ・ポップと同様に、聞きやすく親しみやすく、どことなく都会的な雰囲気が滲む音楽性。

 

それは都会、特に、平成時代のシブヤという土地の雰囲気を見事に音楽で表現してみせたといえるかもしれない。この時代の渋谷の音楽を憧れを抱いた方も少ないないはず。つまり、この音楽にはどことなく漠然としながらも当時の若者たちよ夢という概念が漂っているように思える。

 

少なくとも、ここ、何十年の世界的なシーンを見渡したとき、このシブヤ系というジャンルのような音楽を他の国や地域に探すのはむつかしい。それほど小沢健二やコーネリアス、カヒミ・カリイを初め、シルヴィ・バルタンをはじめとするフレンチ・ポップに近い独特でお洒落なトウキョウサウンドが流行していた。

 

109や道玄坂、スペイン坂、特に、竹下通りといった場所を中心に発展していった独自のシブヤ文化には、今、考えてみても世界的にも特異な文化といえ、とにかく、元気があり、活気があり、おしゃれな若者らしい雰囲気に包まれている音楽が多く発見出来る。若者が悟りを開く前の日本の音楽の物語。そして、メロディーの良さだけではなく、雰囲気というのに重きが置かれていたように思えます。

 

音楽性としては、平成ポップスと、その時代に流行しはじめていた電子音楽との融合を図ったもの、ジャズラウンジ、ボサノヴァ、ネオアコ、ドリームポップ、また、往年の日本歌謡としてのフォークを都会的に捉え直したもの、と広範なジャンルに及んでいた。

 

今、時代的なフィルターを度外視して聴き直すと、やはり独特な雰囲気が滲んでいる素晴らしい音楽といえます。普遍性を持ち、時代を問わない音楽のように感じられます。 今回、あらためて、このシブヤ系サウンドの魅力的なアーティストと名盤にスポットライトを当ててみたいと思います。

 

懐かしくもあり、新しくもあるシブヤ系サウンドの再発見の手助けとなれば無常の喜びです。これらのサウンドにはいかにも東京、渋谷のオシャレさが感じられ、楽しみに溢れています。ここに日本としての文化性の魅力がたくさん見つかるでしょう。是非、魅力を探してみて下さい!! 

 

 

  

シブヤ系の名盤

 

1.Pizzicato Five 



ピチカート・ファイブは、小西康陽を中心としてされたロックバンド。この渋谷系ジャンルの先駆的な存在といってもいいのではないでしょうか。
 
 
意外と平成時代のバンドのイメージがありますが、結成は1984年と古く、しかも細野晴臣のプロディース作「オードリーヘップバーン・コンプレックス」でデビューしている辺りもレコード会社の期待の大きさが伺えます。
 
 
特に、このバンドはファッションにしても、音楽性にしても、のちの渋谷系にとどまらず、J-Popシーンに多大な影響を及ぼしたのではないでしょうか。特に、リアルタイムでどの程度、このロックバンドの影響力があったのかは寡聞にしてしらないものの、彼等のファッションについても竹下通りあたりのファッション性に与えた影響も大きそうです。
 
 
実際の音楽性についても、広範なジャンルを吸収、その上で日本語ポップスの口当たりの良さというのを追求したような印象です。


ジャズ、ラウンジ、 ボサノヴァ、フレンチポップ、チェンバーポップと、おしゃれな音楽性を内包した上で、日本語ポップスとして絶妙に昇華している。それほど肩肘をはらず、適度にリラックスして聴けるという面で、ドライブ曲としても最適と思えます。(もちろんカローラ2という車のCM曲もありました)
 
 
やはり、ピチカート・ファイヴはシティ・ポップの系譜にあるような音楽、日本歌謡曲からの影響も伺えます。野宮真貴さんのヴォーカルというのは、爽やかで、清々しさ、心温まるような雰囲気があり、耳障りがとても良い。そして、かなり歌い分けというか、曲によってヴォーカルスタイルを七変化させている。優しいバラード風の歌い方があるかと思うと、クールでセクシーな感じもあり。
 
 
歌詞には、ちょっとした日常の恋愛のロマンチシズムが夢見がちにさらりと歌いこまれているあたりがいかにも都会的な雰囲気が漂っています。そして、小西康陽さんのギターのフレーズというのもセンス抜群。
 
 
とくに、ワウを効かせた玄人らしい弾きっぷりというのが素晴らしい。楽曲の雰囲気を壊さずに適度に駆け引きをする素晴らしいギタリスト。非常に歌と楽曲というのが大切に紡がれているように思えます。また、リズム隊としてのベース、ドラムの演奏もほとんど無駄のないシンプルさでありながら、ロマンチックな雰囲気を引き出しています。 
 
 
 
 

 「THE BAND OF 20TH CENTURY:NIPPON Columbia Years 1991-2001」2019


 
 
 
 
ピチカート・ファイブのオリジナル盤としての名盤は数多あると思われるものの、やはり、このベスト盤「THE BAND OF 20TH CENTURY:NIPPON Columbia Years 1991-2001」が、ピチカートファイブの名曲を網羅しているので、渋谷系の入門編として最適といえるのではないでしょうか?
 
 
どちらかと言えば、後追い世代であるため、あんまり偉そうなことは言えませんが、あらためて、このバンドは日本語ロック/ポップスの最高の見本を示してみせたとても偉大なグループであるように感じます。
 
 
特に、このアルバムに収録されている「子供たちの子供たちの子供たちへ」は日本ポップスの最良のバラード曲と言って良いかもしれません。歌詞についても、簡単な日本語で書かれているのに、詩的であり、切なく、やさしく、また、少し絵本のようなうるわしい教えが込められた素敵な楽曲です。 
 
 
 
 

 2.Flippers Guitar 

 

所謂、渋谷系の最も有名なミュージシャンの二人、そして、J−POPアーティストとしても伝説的な存在、小沢健二と小山田圭吾によって 1987年に結成されたフリッパーズ・ギター。結成当初はロリポップ・ソニックとして活動。
 

その後、フリッパーズ・ギターに改名。渋谷系の音楽性の礎をピチカート・ファイヴと共に築き上げた存在。四年という短い活動期間ながら、大きな影響をJ−POPシーンに及ぼしました。その後、二人はソロアーティストとして有名になっていくわけですが、フリッパーズ・ギターはこの二人のアーティストの音楽のキャリアの始まりでした。 
 

楽曲自体は、ラウンジの雰囲気が漂っている辺りは、ピチカート・ファイブに近いものを思わせますが、このフリッパーズ・ギターの方は、いわゆるイギリスのラフ・トレードに所属していたアーティスト、もしくはスコットランドのネオアコ/ギター・ポップの影響も色濃く感じられると言う面で、サニーデイ・サービスの音楽にも近い雰囲気を持っています。特に、JーPOPシーンにおいて、最良のポップメイカーの二人が在籍したというだけでも伝説的なバンドとして語り継がれるべきでしょう。
 
 
フリッパーズ・ギターは、この二人が交互に作曲をし、メインボーカルは小山田圭吾、そして、コーラスがオザケンというのが基本的な演奏スタイルでした。そして、作曲が二人の手でバランスよく行われているのが功を奏し、オリジナルアルバムは、バラエティーに富んだ作品となっています。 
 
 

「Singles」1992

 

 

 

フリッパーズ・ギターはオリジナル・アルバムもいいですが、やはり改めて聴き直すとしたら四年の活動においてのシングル盤を集めた「Singles」が渋谷系の入門編として最適。なんと言っても、このバンドの代名詞とも言える楽曲は、「恋とマシンガン」ーYou Alive In Love−に尽きるでしょう。
 
 
この平成時代の日本のCMでガンガンかかっていた楽曲なので、懐かしむ方も多くいらっしゃるはずです。小山田圭吾のヴォーカルと言うのも、前のめりで、初々しさがあり、純粋な雰囲気が感じられ、少し、なんとなく甘酸っぱいような雰囲気が漂っています。音楽性の完成度といえば、のちの小沢健二、コーネリアスにかなうべくもありませんが、ここには音楽の純粋な響き、平成時代の幸福で温かな空気感が、二人の若々しい秀逸なアーティストにより刻印されています。 
 


3.Towa Tei(テイ・トウワ)

 

その後、日本のシーンを離れ、ニューヨークに移住することになる、テイ・トウワ。最初期からテクノという電子音楽の分野では異質な才覚を放っていたアーティスト。既に、日本のアーティストというよりかは、ニューヨークのアーティストという印象もある。後に、YMOの高橋幸宏の主導するMETAFIVEで小山田圭吾とともに活動をするようになるなんて、誰が予想したでしょう。
 
 
しかし、このアーティストの切れ切れの才覚、ほとばしるセンスというのは既にデビュー当時から型破り、さらにそこにスタイリッシュさがあるとなれば、渋谷系との共通点も少なからず見いださせるように思えます。


テクノカット、そして縁の広い眼鏡というのもファッション性において抜群のミュージシャン。もちろん、一般的な渋谷系の音楽でないものの、電子音楽の分野でのオシャレさという面で、一連のシーンに位置づけられてもおかしくはないアーティストでしょう。  
 
 
 

 「Future Listening!」1994

 
 
 
 
 

テイ・トウワの名盤としては、二作目の「Sound Museum」もしくは、テクノの名盤んとしても有名な三作目「Last Century Modern」も捨てがたいところですが、渋谷系アーティストとしての名盤はデビュー作「Future Listening!」が最適と思われます。ここでは、のちの彼の代名詞となるテクノというよりも、コアなクラブミュージック寄りのアプローチが計られており、幅広い音楽性が感じられます。 
 
 
ファンク寄りのブレイクビーツ、クラフトヴェルクのようなテクノ、また、ボサノヴァのリズム、メロディ性からの影響も感じられ、小野リサの音楽性に近いような雰囲気も漂っている。

電子音楽としてもデビューアルバムと思えないほどのクオリティーの高さ;どことなく洋楽寄りのアプローチを日本人アーティストとして追求したという感あり。このなんとも言えない都会的に洗練された響き、シブヤの夜の街の雰囲気が滲んでいるのが、テイ・トウワのデビューアルバムの魅力です。日本のアーティストとして、音楽性の凄さを再確認しておきたいアーティストのひとり。
 


 

4.カヒミ・カリイ

 

多分、カヒミ・カリイを最初、外国人のアーティストであると思っていたのは、何も私だけではないはず。
 
もちろん、若松監督の映画作品を担当するガスター・デル・ソルのジム・オルークと共同制作を後に行ったり、また、ニューヨークのインディーシーンのカリスマ、アート・リンゼイとの音楽的な関係も見いだされるという面で、後のアメリカ、シカゴやニューヨーク界隈のアーティストとも関連付けられるカヒミ・カリイ。既に世界的なインディーミュージシャンです。
 

しかし、間違いなく平成時代までは、カヒミ・カリイは日本のアーティストだったわけで、特に、「ハミングがきこえる」という楽曲をご存知の方は少なくないはず、きっと聴けばあの曲かとうなずいてもらえるだろうと思います。この曲は、なんといっても、作詞、さくらももこ、作曲、小山田圭吾、と非常に豪華なライナップ。ちびまる子ちゃんのオープニングテーマでもあった楽曲。子供のとき、週末の夜にこの曲を聴いていた思い出のある方も少なくはないはずです。
 
 
特にカヒミ・カリイというアーティストの声質は独特で、ハスキーで漏れ出るような雰囲気が魅力。


また、カヒミ・カリイの楽曲は、セルジュ・ゲンスブールがプロデュースを手掛けたフレンチ・ポップアーティストにも親和性が高く、いかにもおしゃれな感じで、洗練されたような雰囲気を持つのが特徴です。これはいまだ他のJPOPシーンを見渡しても、同じような存在が見当たらないと思えます。フレンチポップの質感を日本語の語感で体現してみせたアーティストといえそう。 
 
 
 

「Le Roi Soleil」EP 1996

 
 
 
 
 

カヒミ・カリイの名盤は、「ハミングがきこえる」を収録したEP「 Le Roi Soleil」を推薦しておきます。
 
 
フレンチポップに対するリスペクトを感じますが、音楽性としては、ネオアコ/ギター・ポップ寄りの作品です。また、スコットランドのザ・ヴァセリンズのカバー「Son Of A Gun」が収録されているのも、通を唸らせるはず。
 
この曲は、ニルヴァーナのカバーバージョンとしてもかなり有名なんですが、このカヒミ・カリイのカバーも結構良い味を出しているように気がします。


 

5.サニーデイ・サービス

 

日本インディーシーンで、相当な影響力を誇って来たサニーデイ・サービス。インディーアーティストではありながら、平成時代ではオリコンチャートで上位に食い込んでいた思い出があるので、どちらかと言えば、メジャーからのリリースでデビューを飾ってはいるものの、曽我部恵一は生粋のインディーロックアーティスト、 この渋谷系というジャンルの発信地の一つタワーレコードとも関係の深いミュージシャンです。というか、この人こそ、日本の近年のインディーズシーン、そして、レコードショップ文化を担って来た音楽家というように言っておきましょう。 
 

1990年代終わりに、渋谷系というジャンルが衰退していった後も、この渋谷系のジャンルを掲げ、長く活動を続けてきた信頼のあるアーティスト。
 
2017年のスタジオアルバム「Popcorn Ballads」、2020年の「いいね!」は、完全に渋谷系を現代に見事に復活させてみせた快作として挙げられます。
 
 
平成時代、ゆず、19、といった弾き語りのアーティストに連れ立って、日本のミュージックシーンに台頭してきた感のあるこのサニーデイ・サービスは、それらのアーティストと比べられる場合もあったかもしれません。
 
 
しかし、この三人組の音楽性というのは方向性を異にしており、スコットランドで1990年代前後に盛んだったパステルズやヴァセリンズといったネオアコ/エレアコ勢の音楽性を現代的に取り入れようとしていました。
 
スコットランドのインディーシーンの牧歌的なギターロック/ポップを、日本語のポップス、歌謡曲のノスタルジーを、そのうちに滲ませて再現させようというものでした。洋楽的でも有り、邦楽的でもある。アメリカ的でなく、イギリス的という点では、いかにも平成時代、渋谷系の真骨頂のようなサウンドが特徴。三人組という編成も無駄がなく、バンドサウンドとして聴いたとき、すごくバランスの取れたライブをするアーティストでした。サニーデイ・サービスのとしての頂点は、1997年のスタジオ・アルバム「サニーデイサービス」で完成を迎えました。
 
 
 
 

「サニーデイ・サービス BEST 1995-2018」 2018

 

 
 
 

ベスト盤の「サニーデイ・サービス BEST 1995-2018」は、このバンドのファンだけではなく、渋谷系好きにもオススメの傑作です。
 
 
ベスト盤として二十三年という長いサニーデイ・サービスのキャリアの中でも必聴すべき楽曲が目白押し。特に、個人的な日本のインディー音楽の最良の楽曲「夜のメロディ」は今でも切ないような日本語フォークの名曲として語り継がれるべきでしょう。 
 
 
 
一度は解散するものの、2010年に再結成を果たす。しかし、2018年、オリジナル・メンバーのドラマー、丸山晴繁さんが死去されたとの一報に驚かされました。彼は、このバンドサウンドを長年にわたり支えてきた素晴らしいアーティストでした。しかしもちろん、曽我部恵一という渋谷系の素晴らしいアーティストがいるかぎり、サニーデイ・サービスの音楽は後に引き継がれていくはず。

 

 

  

4.Cornelius


改めて言うと、小山田圭吾というミュージシャンは日本国内だけでなく、海外のインディーズシーンで強い影響力を持ったアーティストであることは疑いを入れる余地はありません。特に、アメリカのニューヨークのインディーレーベル「Matador」レコードからリリースを行っていたアーティスト。

 

もちろん、フリッパーズ・ギターでは、小沢健二と共に平成時代の日本のPOPSシーンを盛り上げた音楽産業に大きな貢献を果たした人物です。特に、なぜアメリカでこの小山田圭吾が有名なアーティストなのか、よく考えてみると、特に、このCorneliusは、日本の音楽としてでなく、世界水準の音楽をこのソロプロジェクトで体現させようと試みていたんです。 

  

 

 「FANTASMA」 1997


 


特に、アメリカの90年代のインディーシーンでは、ダイナソーJr,に代表されるような苛烈なディストーション、そして、グワングワンに歪んだギターというのがメインストリームのアメリカらしいロックとして確立されており、このCorneliusの名作「Fantasma」は、シューゲイズとオルタナサウンドの直系にあたる音楽性が魅力。

 

 

邦楽という領域を飛び出し、海外にも通用する日本語ロックを完成させたと言えるでしょう。特に、小山田圭吾のギタリストとしての才覚は、色眼鏡なしに見ても、海外の著名なギタリストと比べても全く遜色がないほど素晴らしい。 

 

このコーネリアスというソロプロジェクトにおいて、小山田圭吾は、フリッパーズ・ギターからの音楽性の延長にある次の進化系サウンドを体現し、渋谷系、つまりシブヤ発祥音楽を世界的に特にアメリカのインディーシーンに普及させた功績があったわけです。打ち込みのアーティストとしても、ギタリストとしても、抜群の才覚があるアーティストであったことは間違いないでしょう。

 

東京オリンピック開催の際に生じたプライベートな問題については、プライベートな問題にとどまらず、公的な問題に発展していったように思えます。この騒動について、日本だけではなくアメリカの主要な音楽メディアでも大きく報じられ、大きな驚きをアメリカのリスナーに与えたようです。

 

これから、小山田さんが音楽活動を続けていくのか、難しい問題が立ちはだかるように思えます。やはり、渋谷系サウンドというものをもう一度、再建し、何らかのかたちで音楽を通して、喜びを与えていってもらいたいと思います。勿論、これは贔屓目に見た上での意見といえる部分もあるかもしれません。 

 

 

  

カジ・ヒデキ


最後に御紹介するのが、平成のヒットチャートをマイリリース毎に賑わせた良質なシンガーソングライターの、ミスター・スウェーデン、カジ・ヒデキさん。

 

1997年に渋谷系アーティストとしてデビューを飾り、のちにはJ−POPシーンきっての人気ミュージシャンとなりました。現在に至るまで大きなブランクもなく、良質で親しみやすい楽曲を生み出し続けています。

特に、カジヒデキさんの楽曲は、耳にすっとやさしく入り込んできて、覚えやすく、誰にでも親しみやすい。その点で、そこまで音楽に詳しくないという人でも馴染みやすいアーティストなのではないでしょうか??

 

 

「tea」 1998


 

 

カジヒデキさんの渋谷系としての名盤はファースト・アルバムもみずみずしい輝きに満ちていて素晴らしい。

 

しかし、渋谷系サウンドらしい、オシャレさ、格好良さ、リラックスした楽曲としてたのしめるセカンドアルバム「tea」1998こそ、渋谷系サウンドのニュアンスを掴むための最良の作品。

 

 

「Everything Stuck to Him」「Made in Swede」「カローラ2」の何となく健気で純粋な雰囲気があり、青春の輝き溢れる永遠の名曲ばかりで、平成時代のポップスのおおよその感じを掴むのにも最適といえそう。

 

また、平成時代初めの社会ってこんな感じだったんだよという見本を示してくれる軽快な雰囲気のある作品。カジヒデキさんの楽曲をカウントダウンTVやラジオのJ-WAVEの番組ヒットチャートで聴いていたのは子供時代、小学生の頃でしたが、これらの楽曲は、今聞いても抵抗感がなく、すっと耳に入ってくるのは不思議。平成初期の若者の独特な空気感というのは、他の時代には感じられない雰囲気があったと、このスタジオアルバムを聴いてて、あらてめてそんなふうに思います。

 

 夏の記憶に残る名曲をピックアップ

 

 

夏になると、様々な美しい風物があちらこちらに見られます。古来から、私達は、これを風物詩といふうに名付けた。 人によって思いかべるものはそれぞれ異なり、その体験、経験によって色付けされるとも言える。

 

ここ、日本には、さまざまな麗しい夏の風物詩というのがあります。青く澄んだ空に浮かぶ入道雲をはじめ、透き通るような海の景色、風鈴であったり、簾であったり、扇風機、食卓に並ぶ半円形のスイカ、お祭りの屋台であったり、夏の終りに家族友達と見る大きな花火であったり。

           

それは音楽についても同じ。

 

ここ日本には素晴らしい夏の名曲が数多く多種多様に存在する。ときに、その楽曲を思い浮かべたときに、とても切ない情感をもたらす名曲の数々がある。それはあなたの人生をより豊かにするもの。 

 

今回、夏を記憶を彩る名曲、名盤を、ピックアップしていこうと思います。メジャーな曲を中心にあげていきます。

 

この特集「Best songs for the summer」が、貴方好みの夏の一曲を見つける手助けとなれば、これほど喜ばしいことはありません。  

 

Hanabi Love"Hanabi Love" by Follow Your Nose is licensed under  

   


七尾旅人 


billion voices  「どんどん時は流れて」

 

日本の数少ない本格派インディー・フォークを牽引するアーティストと言っても良い七尾旅人。放送番組のナレーションを務めるほど、歌声だけでなく、普段の話し声のトーンも非常にうつくしい人です。

 

七尾旅人の音楽性としては、日本のフォーク音楽を基調とし、比較的、親しみやすい楽曲の中にも、通好みのR&B色を取り入れているのが七尾旅人の楽曲の特色です。                             

 

七尾旅人の楽曲は聴く人、時代を選ばない普遍的な価値を持っている。歌詞にも、等身大の自分の姿を見つめた肩肘をはらない詩に共感を見い出すことは難しくないはず。そして、七尾旅人の歌には、人間と情景が密接に結びついた歌詞が多く見受けられる。それをさらりと歌ってのけるのが格好良いところでしょう。

 

彼の夏の楽曲としては、一番目に思い浮かべられるのが「湘南が遠くなってく」という、さわやかなアコースティックギターのフレーズを活かした一曲なんですが、この曲よりもはるかに夏に聴いていてその情感が感じられる楽曲が「どんどん夏が流れて」。こちらを夏のオススメとして取り上げておきます。

 

特に、イントロにセミの声が効果音として取り入れられていて、初めて聴いた時、ああ、これは夏の終りの曲なんだなというふうに直感しました。この独特な七尾節ともいうべきコード感、そして、エレクトリック・ピアノのアレンジというのも◎。歌詞においてもなんとなく、自己のダメさ加減についてのやるせなさがソフトにさらっと歌いこまれているのがとてもカッコいい。 

 

そして、僕から、僕たち、というふうに、曲の展開とともに、人称が移動していくあたりには、現代詩のような感もあり。R&Bのバラードとしての日本のポップス界の隠れた名曲のひとつに挙げてもおきたいと思っています。季節の移り変わりを、情感たっぷりに振り返った珠玉の名曲。アコーティスックギターの爪弾きのやさしげな温もりというのが凝縮された逸品です。                          

 

 

はっぴいえんど  


風街ろまん 「夏なんです」

 


最早、伝説になりつつある、はっぴいえんど。 細野晴臣だけではなく、大滝詠一、そして松本隆とその後の日本の歌謡界に多大な影響、貢献をはたした日本で海外に通用する数少ない実力派のロック・バンドです。

 

一時期、若いアーティストにも人気があり、「森は生きている」をはじめとするフォロワー・バンドも出てきました。トクマル・シューゴ、Predawn、結構影響を受けてそうな日本人ミュージシャンは多いです。若い人にも是非聴いてもらいたい日本の偉大なロックバンドです。よく考えてみると、このはっぴいえんどというロックバンドは、メジャー系のアーティストでなく、インディー・アーティストだった。

 

まだ、それほど、音楽業界というのも、現在のように整備されてない時代、かなり自由が効いたのかもしれません。米軍基地の近くの掘っ立て小屋みたいなところでレコーディングしたり、千円くらいのおひねりをもらって大喜びしている細野さんとか、ちょっと現在のこの三人の知名度からいうと、信じがたいものがある。

 

はっぴいえんどの夏の名曲というのは、「夏なんです」しか考えられないでしょう。これは、「風をあつめて」と共に、日本の歌謡曲の普遍的な歴史として残るべき名曲です。松本隆さんの幼少期の体験の記憶がモチーフにされた日本のポップスの名曲のひとつ。

 

歌詞もノスタルジアに富んでおり、”ビー玉、茶屋、入道雲、日傘”という言葉がちりばめられ、”日傘ぐるぐる”、とか、”ほうしつくつく”、”もんもんもこもこ”をはじめとするどことなくフォークロア、民族学的な味わいを持った日本語歌詞としての冒険心も読みほどくことができる。

 

歌詞を聴いていて、その情景がまざまざと思い浮かぶような楽曲はそうそうないのに、松本隆さんの歌にはそれがあるのは、実際の感覚を詩に落とし込むという手段に真心を込めているから。

 

驚くほど克明に、日本語で、情景、それにまつわる情感を描写することに長けているのは、松本さんに文学の天才的な素養があるからこそ。そこに、細野晴臣のちょっとだけ、おどけたようなニュアンスの歌いぶりというのも、温厚な人柄が表れている。さらに、そこに付け加えられる今は亡き大滝詠一のクールなコーラスというのも感涙ものといえる。

 

cero  

 

Obscure Ride  「Summer Soul」

 

 

 

ceroというアーティストは、「大停電の夜に」という楽曲に代表されるように、元々は、オルタナティヴ・ロック系のアプローチを選んでいたバンドだった。

 

それから、歌物アーティストとしてのベールを脱ぎ、「My Lost City」というスタジオ・アルバムから、R&Bや、ファンク、ヒップホップをはじめ、徐々に様々なジャンルを吸収し、cero節ともいえる独特な音楽性を作り上げている。このセロの中心人物、高城昌平さんのヴォーカルは、少し、かすれたようなハスキーボイスを特長としていて、それがこのセロの音楽に独特な味わいが感じられ、このトリオの音楽の重要な鍵になっています。

 

そこには、トラック自体の作り込みの精度の高さはもちろん、フルート等をアレンジメントに取り入れたり、都会的な洗練性であったり、音のおしゃれさであったりというのを追求している。

 

高円寺という、純情商店街をはじめとする独特なサブカル系の若者カルチャーの中に育まれて出てきた中央線界隈のアーティスト。日本語歌詞であるものの、海外寄りの洋楽向けの音を意識したアーティストのように思えます。結構、音楽性の間口が広く、作品ごとに異なる音楽性を見せてくれている、近年のJ-Popシーンで聞きどころのあるアーティストです。

 

この "cero"の作品の中で夏の一曲としては、「SummerSoul」を挙げて置きたいところ。クラブミュージックを意識した音の作りで、日本語歌詞のフレイズの中にそれとなくライムっぽい節回しのアプローチを潜ませている。歌謡曲の系譜を引き継ぎ、そこに、ヒップホップやR&Bの風味をセンスよく付け加えた軽快な楽曲です。

 

歌詞の中でも、どことなく夏の中にある目にみえる情景の変化が表れていて、それがものすごくおしゃれなアレンジがほどこされている秀逸な楽曲。夏の夕方から日が完全に落ちる時間のドライブ中にかけると、とても爽快で、さっぱりした気分になれる。そして、セロは、音楽に対してあくなき探究心、強い熱意を持って、作品を作り続けているアーティストです。



fox capture plan、おかもとえみ 

 

 

甲州街道は夏なのさ 「甲州街道はもう夏なのさ」

 

 

 

fox capture plan、と、おかもとえみ、という2つの異なるジャンルのアーティストがコラボレートした楽曲、「甲州街道はもう夏なのさ」。

 

これは、つい先日、というか昨夜、Spotfyの「夏」というワードの検索で偶然見つけてしまった曲です。

 

 fox capture planの方は、2012年から活動しているロックバンドで、mouse on the keysのように、ピアノや弦楽器をダイナミックに取り入れたロックバンドと言えるでしょうか。

 

これまでのキャリアにおいて、有名な仕事を挙げると、フジテレビドラマ「 コンフィデントマン」のサントラも手掛けています。また、ゲストボーカルとして参加している岡本さんの方は、これまで2015年からアルバムを二作リリースしているクラブミュージック寄りのJ-popアーティスト、シンガーソングライターと言っていいでしょう。

 

この2つの全く畑違いのアーティストがコラボした「甲州街道はもう夏なのさ」 。これは、夏のドライブに相応しい軽快な楽曲といえるでしょう。

 

ピアノの爽やかなフレーズ、あるいは、ウッドベースの表情付けであったりと、トラック自体のサウンドは、どちらかと言えばR&Bよりといえ、往年のJpopの普遍的な良さを抽出したようなおしゃれさの感じられる楽曲です。

 

ソロ・アーティストとしてはもう少し強い印象を放っている、おかもとえみさんのボーカルはこのコラボ楽曲において、引き締まったリズムトラック、そして、ピアノのバランスのとれたコード弾きとメロディー付により、涼し気な雰囲気を与えてくれるはず。

 

「甲州街道はもう夏なのさ」は、うでるような暑さをちょっとだけやわらげてくれる軽快なナンバーで、良質なJ-popの楽曲。

 

甲州街道を多分、車で運転しているときに曲の着想を得たトラックだと思われますが、この歌詞、初っ端から、プッと笑っちゃうようなユニークなところがあります。この楽曲の歌詞に描かれているユニークな、いかにもアーティストらしい悩みって? それは聴いてのお楽しみ。

 

 

 

相対性理論  

 

シフォン主義 「夏の黄金比」

 


 

おそらく日本のJ-Popシーンで、椎名林檎に匹敵する個性派アーティストを見出すなら、このやくしまるえつこという人をさしおいてほかいない。それほどに一部界隈からは神格化されるようなカリスマ性のあるアーティストです。

 

この相対性理論というバンドは、それほどメインストリームでは有名というふうにはいえませんが、非常に日本のインディーズ・シーンでかなり強い影響力を発揮してきたバンドといえます。

 

音楽的には、ザ・スミスのようなフランジャーとかリバーブ/ディレイをてきめんに効かせたギターを特長とし、そこにやくしまるえつこの独特な世界観が充溢している。アイドルポップを主体的な印象としているが、バックトラックとしては、ブリット・ポップに近いアプローチを取る実力派バンドです。 

 

このバンドの「夏の黄金比」という楽曲は、十代の青春のアンニュイさ、もしくはメランコリアを克明に音と歌詞で描いてみせたという点において、これを上回る曲を見つけるのは難しいように思えます。

 

まさに、スミスのジョニー・マーを明らかに意識したギターの音色というのも通を唸らせるもので、そこに、やくしまるえつこの独特なワールドが全面的に展開されています。また、どことなく可愛らしいキュートさのある、やくしまるえつこのヘタウマボーカルの雰囲気というのも切ない質感に彩られている。なんとなく、夏の終りをおもいかえさせてくれる楽曲。もちろん、それは歌詞でも同じ、「コントレックス箱買い、コントレックス、箱、箱、箱買い」という謎めいたループワードの言葉遊びに、やくしまるえつこらしい独自の世界、あるいは、内向的なコスモスが込められている。

 

これぞ、夏特有の十代の淡い切なさ。分かる人にはとことん分かし、わからない人にはとことんわからない。でも、それこそ相対性理論というロックバンドの最大の持ち味といえます。 

 


Eastern Youth  

 


旅路に季節が燃え落ちる 「夏の日の午後」

 

 

1980年代から、札幌のパンク・ロックシーンを牽引してきたイースタン・ユース。ナンバーガールからも絶大なリスペクトを受けており、”怒髪天”とともに、日本語ロックの伝道師として君臨してきたパンク・ロックバンドです。イースタンユースは、元々、札幌のシーンにおいて、Oi Punk、あるいは、Skinsとして出発したバックグラウンドを持つ。

 

フロントマンの吉野寿さんは、常に政治的な発言を、おそれず、真っ向きって行う日本で数少ないオピニオンリーダーです。 

 

その後、イースタンは、札幌から東京、高円寺に活動拠点を移し、「裸の音楽社」というレーベルを設立し、これまで、DIYの活動を頑固一徹、継続している。「常に、一寸先は闇という感じで、我々はやってきた」という吉野寿さんの言葉どおり、ストイックな側面を持つバンドです。

 

太宰治、坂口安吾といった日本近代文学に色濃く影響を受けた歌詞というのも、イースタン・ユースの最大の魅力といえるでしょうが、このバンドには、日本語のソウル・ロックとしての醍醐味、そして、暑苦しいほどの魂の痛切な叫びに、他の追随を許さないほどのパッションが込められてます。

 

近年、オリジナルメンバーの二宮さんが脱し、新たに女性ベーシスト、村岡ゆかさんが加入。

 

これまでライジングサン・フェスティバルやアラバキ・ロックフェスなど出演経験があり、日本のインディーズシーンで歴史のある企画「極東最前線」では、若手の有望なアーティストを見出す役割も果たしてきている。これまで日本のインディーズシーンを先陣を切って先導しています。

 

イースタン・ユースの夏の名曲としては、「夏の午後」という楽曲が挙げておきたい。

 

ここでは、むしろ、夏の暑さを和らげるどころか、さらに、その暑さを強めるような楽曲です。そして、最初期からのパンクロックバンドとして、日本語ロックバンドとしての完成形を形づくってみせた名曲。

 

二宮さんのベースも脂が乗り切っており、テクニカルなジャズベース的な独自の奏法が見受けられるのが特長。そして、もちろん、楽曲としても、イースタンにしか醸し出せない長いバンドとしての経験に裏打ちされた渋い味わいがあり、またそこに、吉野さんらしい、真正直で、嘘偽りのない、魂のこもったソウルフルな叫びが加わる。

 

日常のありふれた生活空間にふと見いだされる夏の淡い情感を、イースタンユースは、日本語の詩として、音楽として、そして、ソウルとして、力強く、男らしく、描き出す。なぜか、聞いてると、俄然、勇気が満ち溢れてくる日本語ロックの夏の名曲です。 

 

  

Number Girl  

 

 

記録シリーズ1  「プールサイド」

 

 

 

この「プールサイド」というナンバーガールの名カバーの原曲は、Bloodthirsty Butchersのスタジオ・アルバム「未完成」に収録。

 

もちろん、ブッチャーズの原曲も、内向的な雰囲気が滲んでいる夏の名曲のひとるで、日本の隠れた夏の名ソングとして語り継がれていくでしょう。

 

残念ながら、この「未完成」というスタジオ・アルバムは、インディーズ市場でしか流通しておらず、現時点においては入手困難なので、ナンバーガールのライブ活動記録をもれなく収め尽くした「記録シリーズ1」に収録されている「プールサイド」の方を、オススメしておきます。 

 

ブラッドサースティ・ブッチャーズの原曲の方は、 米国の伝説的オルタナティヴ・ロックバンド、Dinasaur.Jrを彷彿とさせるシューゲイザー寄りの轟音ロックといえるでしょう。しかも、そこには、表面上の轟音さとは裏腹に、そのエネルギーは、外側に向かっていくのでなくて、轟音性が内面へ内面へと向かっていく。ここに、吉村さんらしい詩的な感情、切ない青春の雰囲気が込められている。

 

一方、ブラッドサースティ・ブッチャーズの盟友、ナンバー・ガールの日比谷公演大音楽堂でのライブカバー「プールサイド」は、どちらかと言えば、米国のもうひとつの伝説的オルタナティヴ・ロックバンド、The Pixies寄りの音のアプローチを図っており、ここで、鬼才、向井秀徳の資質、”歪んだポップセンス”が遺憾なく発揮されている。

 

この後、ナンバーガールの解散してから、このバンドのギタリスト、田淵ひさ子が、ブラッドサースティ・ブッチャーズにセカンドギタリストとして加入したという事実を考えると、何かしら感慨深いものがあります。

 

この「プールサイド」という楽曲が素晴らしいと思うのは、青春という得がたい概念を、歌詞においても、音においても、的確かつ端的に現しているから。それは、十代というリアルタイムの質感、また、年をとってから振り返る青春の淡い質感を、見事に表しているということでもある。

 

「プールサイドからの眺め」。この曲の歌詞において、非常に多角的な視点として描かれており、最終的には「乱反射、水の音」という、対句表現にも似た、対句のような表現に結ばれていく。

 

夏という大きな概念を、プールサイド、そして、最後に、水の表現に収束させていくのは天才としかいいようがない。ここで歌われる内容は、おそらく若い頃の自身の内向的な一傍観者としての経験を綴ったもので、なぜかしら、ここには、現実的で冷厳な側面が込められている。夢想的、叙情的ではあるものの、全然、現実感は失っていないように思える

 

原曲「プールサイド」での吉村さんの歌詞は、詩的であるとともに、きわめて哲学的な雰囲気を併せ持つ。それが、このナンバー・ガールのライブカバーにおいては、その哲学的な表情を意図的に薄れさせ、親しみやすい、可愛らしさのあるアレンジメントが施されている。


  

 

 

Nico Touches The Walls  

 

 

ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト 「夏の大三角形」

  

 

 

実は、このニコ・タッチ・ザ・ウォールズという日本のロックバンドは、私の友人と親しいベーシストがメンバーに在籍していて、十年以上前からずっと、密かに応援しつづけているバンドです。       

            

以前、ノラ・ジョーンズが来日した同じ頃、武道館公演も果たしている全国区のロックバンドです。最早、バックグラウンド、バイオグラフィについてあらためて説明するまでもないでしょう。痛快で爽やかな雰囲気のあるロックを奏でるバンドとして、メインストリームで活躍しつづけています。 

 

このバンドの凄いところは、十数年前のデビュー時から、継続的に良質な日本語ロックをリリースし続けているところ。

 

そのプロフェッショナル精神には頭が下がります。エンターテインメントとしてのロック音楽というのを熟知しているから、聞き手のことを考えた音楽を一定の水準を保ったまま提供出来るのでしょう。

 

これぞ、プロ中のプロミュージシャンといえ、 デビュー当時から今日まで一般的なファンを数多く獲得し続けているのも頷ける話です。そして、親しみやすい日本語ロックバンドというイメージがありながら、ソリッドでタイトな高い演奏力も併せ持っている実力派のアーティストです。 

 

そして、彼等の楽曲「夏の大三角形」。 

 

デビュー当時からの勢いを失わず、そして爽やかな質感もあって、また、親しみやすい一般的な楽曲の要素はいまだ引き継がれ、この楽曲には夏としての情感もさることながら、スタンダードな日本語ロックの魅力が存分に味わえる。

 

夏のドライブ中にかけても良し、また、ちょっと元気がないなというとき、自分の勇気づける楽曲としておすすめ。

 

そこまで歌詞の中に、夏が強調されているわけでもないのに、暑さを吹き飛ばすような涼し気な感じが、この楽曲の雰囲気に漂っています。曲の最後のスチールドラム風のアレンジも夏らしくて面白い。

 

ごくシンプルに、ロックバンドとしての勘の良さのあるアーティストです。これからも永く、日本のミュージックシーンを牽引していってもらいたい、良質な日本語ロックバンドです。 

 

 

スチャダラパー 


5th Wheel 2 the COACH Standard of 90's  「サマージャム '95」

  

 

スチャダラパーは、平成時代のJ-Popシーンにおいて、初めて、本格派のヒップ・ホップ旋風を巻き起こし、 J-Hip Hopの知名度をオーバーグラウンドに押し上げた立役者。    

                           

そして、日本語のライムの質感、日本語の語感の面白さをヒップホップとして追究したアーティストです。

 

当時は、テレビ番組、「カウントダウンTV」が全盛期の時代で、良いアーティストは、この番組を通しておぼえていたんですが、スチャダラパーもオリコンチャートで健闘してたのをよく覚えています。PVでのスチャダラパーの本格的なラッパースタイルの立ち振舞いを含め、衝撃的なシーンへの登場の果たした。しかも、三人のキャラクターがとてもユニークであるため、当時相当な人気を獲得したアーティストだった。

 

この”サマージャム ’95”は近年、環ROY、鎮座DOPENESS、U-zhaanの三アーティストによりカバー曲として見事に復活を果たし、再注目されているJ-HipHopの名曲です。

 

改めて、聴いてみると、やはり、単純にカッコいい曲と思います。ヒップホップの基本的な技法、スクラッチ音とか、サンプリングの最低限の技法を、しっかり抑えておきながら、チルアルトとの中間点に存在するような感じで、センスあふれるおしゃれな楽曲。


とりわけ、夏の記憶についてのライムが交互に情感たっぷりに歌われており、しかも、理想と現実の間で歌詞が揺れ動いているのが面白い。リア充になりたいんだけれど、なりきれない。等身大の自分の姿を描き出し、気負いというのが感じられない。聴いていて、なんとなく、リラックスできちゃうのが、この楽曲「サマージャム’95」の良さ。

 

中には、結構、家の近所で見かけるような日常的な情景が描かれていて、そして、懐かしい夏の記憶がさらっと歌いこまれる。ヒップホップ、チルアウト、でありながら、その音楽としての下地にはやはり、日本の歌謡曲があって、それに対するリスペクトを込めた上で、クールなクラブ・ミュージックのノリをもたらしている。一見、ちゃらいようでいて、結構、トラックメイカーとしては硬派なアーティストだと分かるはず。

 

スマートフォンでも聴いても、素晴らしく音が良いのに驚きます。このあたりは、大手EMIからリリースというのもあるでしょうが、やはり、この”スチャダラパー”という三人組のトラックの作り込みの精度の高さ、ライムの配置の的確さにあるという気がする。おそらく、リアルタイムで、この曲を聴いていなくとも、この「サマージャム’95」を気に入ってくれる方は少なくないでしょう。


  

Def Tech  


Def Tech 「my way」

 

 

 

次に紹介しておきたいのは、これも平成時代に非常に人気のあった二人組アーティスト、デフ・テック。 

 

この楽曲「My Way」の歌詞には夏という言葉は、直接的には登場しませんが、海が良く似合うユニットであり、日本人とアメリカ人の混合アーティストとして平成時代に一世を風靡しました。

 

一度、幕張海岸の夏フェスの海岸沿いのステージで見るチャンスが一度だけあったんですが、彼等のステージを見そびれてしまいました。他のパンク・ロックの洋楽のアーティストを追っていたためです。でも、今、思うと、見ておけばよかったなとつくづく後悔。

 

小室ファミリーやエイベックスのアーティストをはじめ、平成時代から続々と英語と日本語を絶妙にかけ合わせた歌謡曲、ポップスが数多く出てきたような感がありました。Aメロ、Bメロは日本語歌詞だけれども、サビだけ英語とか。この時期の音楽は、言語的な実験をしていた時期でもあった。

 

特に、デフテックについては、本場ハワイ仕込みのネイティヴの英語歌詞ということもあり、他のアーティストと比べてクールさが際立っていた記憶。レゲエという括りで出て来たユニットではあるものの、この楽曲「My Way」だけにとどめて言うなら、クラブ・ミュージック寄りのJ-Pop。

しかし、時を経て、じっくり、このサーフ・サウンドを聴いてみると、楽曲の印象ががらりと変わるはず。

例えば、アメリカのシンガー・ソングライター、ジャック・ジョンソンのような、爽やかなアコースティック・フォークの本格的な雰囲気がある。トラック自体の作りもカッコいい、言葉の節回しというのもかなはら早口で、ヒップホップに近いものがあるようで、今、聞いても、新鮮で爽やか。なぜかしれないが、二人の友情に結びついた勇気づけられるような力強い歌詞が記憶に残る。夏を彩るソングとして抑えておきたい定番の一曲。 

  

 

 

久石譲  

 

「Summer」 菊次郎の夏(オリジナル・サウンドトラック)


 

最後にご紹介するのは、フランスで絶大な人気を誇る北野武の初期の映画のサウンドトラックの一曲「Summer」です。 

 

フランスでは、十年前くらい、テレビで「風雲!たけし城」を再放送していると、フランスから観光に来たアマチュア映画監督から聞きました。しかも、結構高視聴率だとか。キタノ・タケシのコメディアンとしての人気は、現地では不動のものであるらしい。

 

一方、この映画の音楽を担当した久石譲さんは、あらためて紹介するまでもない気がします。

 

もちろん、日本の劇伴、映画音楽界の巨匠といわれる方で、夏の名曲としては多くの記憶に残る名曲があります。

 

もちろん、ジブリの夏にまつわる楽曲も捨てがたいですけれども、やはり、久石さんの夏の名曲といえば、北野映画の名作「菊次郎の夏」のサウンドトラックは外せない。

 

久石さんは、これまでのご自身のキャリアにおいて、「もののけ姫」、「ハウルの城」などのジブリ作品に代表される名サントラを数多く残し、静かでありながら、深みのあるピアノ曲を数多く残している。シンプルで、誰にでも親しめる、癒やしの味わいある職人気質の名曲を生み出すという点では、比肩する作曲家は見当たらないかもしれません。

 

久石さんの作風は、目にありありと美しい情景を浮かび上がらせる。それは自身の記憶とむすびついて、うるわしく彩られる。まさに、久石さんこそサウンドトラックの名手。

この「菊次郎の夏」の代表的なサウンドトラックの名曲「Summer」は、日本では多くの方が一度くらいは聴いたことがあるはず。なんとなく、日本の夏の代名詞な名曲のような気がします。

 

この曲には、日本としての美しさが克明に描かれています。海外の美とはことなる日本の美というのが、「Summer」では、淡く深い情感をまじえ、丹念にピアノ曲として描き出されているように思える。聞いていると、不思議と元気に満ちあふれてくる永遠の名曲。