アイリッシュ・パンクの渋さ


 

さて、今回は、爽快感のあるアイルランドパンクバンドを3つほど紹介しようと思います。


このアイリッシュパンクバンドというのは、面白いことに、アイルランドよりも意外にもアメリカのバンドが多く見つかるのは偶然だろうか。これは、メイフラワー号にビューリタンとして米国に渡った移民としての慕情がそうさせる、とまでは、はっきり断言しないでおいたほうが良さそう。


とにかく、アイルランドの民謡だったり、あるいはケルト音楽に使用される楽器、フィドルやパクパイプ、他にも、ウッドベース、マンドリン、アコーディオン等を取り入れているのがこれらのバンドの特色。音は、痛快で、渋く、純粋に、カッコいい。野暮ったい説明はもうコレで十分です。

あとは、それぞれ好きに音を楽しんで。押し付けがましいところが全然ないのがこれらのバンドの良さ。人の数だけ、それぞれ楽しみ方がある。アイリッシュパンクには、クールなバンドが多く見出せるはず。


 

1.Flogging Molly 


 


まずは、マンドリン、フィドル、そして、なんといっても、パグパイプを楽曲中に使用するバンド、フロッギン・モリーを紹介しておかないといけません。


結構最近まで、あまりに本格的なケルト音楽の堂々たる雰囲気を感じさせるため、アイルランド近辺のバンドだろうと思っていたら大きな勘違いをしていたことを彼等にまず謝っておきます。あらためて、フロッギン・モリーは、アメリカ、カルフォルニアの六人組の大所帯バンドです。ただ、このパンクロックバンドのギター、ボーカル、そして、作曲を担当する中心人物、デイブ・キングだけはアイルランド、ダブリン出身ということは付記おかなければならないでしょう。


思わず、ビールを片手に乾杯を仲間とともに叫び、肩を組んで踊りだしたくなってしまうのがこのフロッギン・モリーというバンドの良さ。ケルト音楽を素地にしてキャッチーで疾走感のあるパンク・ロックを奏でる。そのスタイルは、デビュー当時から現在にいたるまで信念のような形で貫かれてます。


フロッギン・モリーの楽曲の風味はいわばアイルランド民謡とアメリカン・カントリー、そして、痛快なパンクロックが見事に融合した渋い音楽。聞いていると、一緒にシンガロングしたくなってくるほどの力感が込められています。


その中に、弦楽器のマンドリンをはじめ、フィドルの飾り付けがおこなわれることで、渋い音楽性としての雰囲気が醸し出されています。


また、フロッギン・モリーの楽曲のメロディには、独特なアイリッシュな哀愁がこもっているのもまた魅力のひとつといえ、それはデイブ・キングのダブリンからの移民としての慕情が込められているからなのでしょう。そして、彼の渋い楽曲と声質を他のメンバーが強固にささえているのが強み。このバンドの音楽の痛快さというのは多くの人に受けいられるものであると思います。


Folling Mollyを知るのに最適なアルバムは名作「Drunken Lullabye」をまずおすすめしておきます。

 

2.Dropkick Murphys 

 

  

1996年結成、ドロップキック・マーフィーズもまた、米マサチューセッツ州ボストンのど直球パンク・ロックバンド。


上記のフロッギン・モリーのように、マンドリン、パグパイプを使用した楽曲が多く、メロディック・パンク色の強いバンドです。 


音楽性はパワフルで、ハードコアパンク勢からの影響も色濃く感じられる硬派なパンクロックバンドといえる。ただ、その音楽性をさらに個性味あふれるものにしているのは、ケルト音楽への深い理解と傾倒があるからでしょう。 


実は、フロッギン・モリーより先にマーフィーズがアメリカのロックバンドとしてバグパイプを導入し、アメリカのパンクシーンに新風を吹かせた。もちろん、現在も大活躍しているバンド。


ドロップキック・マーフィーズ、通称、マーフィーズは、実は、ライブバンドとしても有名です。もちろん、スタジオ・アルバムもいいけれども、ステージでこそ彼等の音楽の華やいだ魅力が体感できるはず。彼等のステージへの登場の際、サッカーのチャントのような”レッツゴー・マーフィーズ”というコールで観客からあたたかく迎え入れられ、そして、高らかなパグパイプの行進のようなリズムと一緒に、華やかにステージに登場するというスタイルをとっている。


彼等の音楽性の興奮というのを理解するのに一番最適なのは、ボクサーの拳闘の様子をクールにデザインした名作「Warrior's Code」をオススメしておきたい。また、ライブアルバム「Live On the St.Patrick Day」も捨てがたく、彼等のライブバンドとしての魅力が心ゆくまで堪能できる一枚となってます。                 

 

 The Pogues


 

最後に紹介しておきたいのは、やはり、アイルランド・パンクの祖ともいえるThe Poguesでしょう。 現在まで、多くのメンバーチェンジを経てきているものの、中心人物のマガウアンだけは不変の象徴的な存在。


アイルランドで、最も伝説的なバンドのひとつといえるでしょう。また、ここで、アイリッシュ・パンクロックバンドとしてあげるのは、彼等ポーグスの作品中に、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーがゲスト参加しているから。つまり、ジョー・ストラマーは彼等ポーグスの音楽を認めていたのでしょう。


このバンドの発起人、ボーカリストのシェイン・マガウアンのキャラクターというのは強い異彩を放ち続けている。それはキャラクターの上辺の良さではなく、どちらかといえば、アクの強さともいうべきものです。 


これまでのロック史を見渡しても、コレほど深い業を背負ったミュージシャンというのも見当たらない。


言うまでもなく、シェイン・マガウアンは、音楽史で歴代一、二を争うほどの酒豪である。彼の大酒飲みというのは世界的に有名で、おそらくジェイムズ・ジョイスに対抗できる存在はこの人物をさしおいて他に見当たりません。


一方で、そんな表向きのキャラクターとは別の美しい楽曲こそが、このザ・ポーグスというバンドの魅力でしょう。フィドル、バクパイプ、アコーディオン、こういったケルト音楽の伝統を踏襲した音楽性というのは、上記のバンドとなんら変わらない。そして、その音楽というのもどことなくクラッシュを彷彿とさせる間口の広いアプローチ。何より彼らの楽曲は、軽快で親しみやすい。


しかし、ポーグスこそアイリッシュパンクの本家ともいうべき存在。それは、何が理由なのかというと、やはり、このボーカリストの酒豪としてにじみ出る本物の人生の妙味なのでしょう。このマガウアンの歌声は、お世辞にもきれいということはできない。なのに、彼の歌声には何かしら不思議なほど人を惹きつけ、圧倒させるものがある。これは、やはり、ジェイムス・ジョイスの時代から受け継がれるアイルランド人としての伝統芸能の矜持があるのかもしれません。


そして、音楽という系統でバッカス神の祝福を受けたのが、このシェイン・マガウアンといえそう。彼の個性を端的にあらわした楽曲は、彼等ポーグスの代名詞であり、世界的にヒットした「Fairtales of New York(feat,Kirsty MacColl)」。


この曲というのは、ポップソングス史上稀にみる名曲で、マック・コールとの歌としての掛け合いは、「美女と野獣」的な響きが込められていて面白い。


酒に焼けて、呂律も回らず、音程もあやふやになるほどのガラガラ声から、ふと、一瞬こぼれ落ちるこの世に稀な美しい声の響きに滲んでいるのは、世界を見渡してもマガウアンにしか紡ぎ得ない人生の渋み、彼の表層の印象には見えない内側にある精神の清らかさなのでしょう。


ザ・ポーグスの生み出す音楽は、単なる酒飲みのものではなく、とても奥深い、人生の酸いも甘いも味わい尽くした人間しか紡ぎえない高い芸術性を擁するアイルランドのトラッドミュージック。


彼等は、アイルランド民謡を世界的に普及させたという功績がある。つまり、彼等はアイルランドの伝統性の継承者というように敬意を表して言っておきます。


深い人間としてのたゆまざる営みをアイルランド民謡的な伝統性を受け継いで、そしてまたそれを愛情というもので彩り、新たなロック音楽として世界に誇らしく示してみせたことが、ザ・ポーグスの凄さでしょう。ポーグスは、まずベスト盤を聴いておくのが間違いないと思います。しかし、ほかのスタジオ・アルバムにもたくさん良曲が揃っていて聞き逃がせません。彼等の、代表的な名曲としては、「Fairtales of New York(feat,Kirsty MacColl)」の他にも、

  

・「Sally Maclennane」

・「Stream Of Wiskey」

・「The Irish River」

・「The Sunnyside of Street」

・「Thuesday Morning」

 

が挙げられる。


それから、もうひとつ、なんといっても、トラディショナルフォークの名曲として「A Rainy Night in Soho」もオススメです。

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