New Album Review: Lande Hekt  『Lucky Now』

 Lande Hekt  『Lucky Now』


Label: Tapete

Release: 2026年1月30日

 

 

Review

 

イギリスのシンガーソングライター、Lande Hekt(ランデ・ヘクト)は2022年のアルバム『House Without A View』以来の最新作『Lucky Now』を先週末にリリース。2022年のシングル「Romantic」を聴くと分かるように、パワーポップやジャングルポップを中心とする良質なソングライターで、甘酸っぱく切ないメロディーをさらりと書き上げる能力を持ち合わせている。『Lucky Now』は前作の延長線上に位置するアルバムで、良曲揃いのアルバムとなっている。

 

アルバムのサウンドは、インディーフォークやネオアコースティックが主体となっている。本作の冒頭曲「Kitchen Ⅱ」は、思わず口ずさんでしまいそうなキャッチーなフレーズ、どことなく懐かしい感じのするメロディーで満載となっている。ほどよく力が抜けたボーカル、そしてドラム、ベースと聞きやすさを重視したサウンドで、爽やかで軽快なオープナーとなっている。

 

タイトル曲は、同じくネオアコースティックに属するが、ランデ・ヘクト持ち前の甘酸っぱいメロディーセンスを活かした良曲となっている。これらのサウンドは、アズテック・カメラ、オレンジ・ジュース、パステルズ、ヤング・マーブル・ジャイアンツなど、このジャンルの代名詞となるグループを彷彿とさせるものがある。決して現代的なサウンドとは言えないけれども、独特な雰囲気の曲展開、そして柔らかな曲の雰囲気についつい惹き込まれてしまうことがある。


また、「Rabbits」などを聴くと分かる通り、The Undertonesのような北アイルランドのパンクバンドの影響を感じさせることもある。 そういった中、ギターに薄いフェイザーをかけたようなサウンドを中心とする「Favourite Pair of Shoes」は前半の一つのハイライトとなりえる。ボーカルメロディーの親しみやすさもさることながら、ギターワークに光る部分があるのに注目だ。『Lucky Now』は、純粋なボーカルアルバムというよりも、その向こうから聞こえるギターリフに一瞬のきらめきが込められている。ドラム、ベースというシンプルなバンド構成がそれらの曲をほんのり引き立てている。また、曲全体から感じられる叙情的な音楽性からはどのような風景が思い浮かべられるだろうか。曲そのものが何らかの換気力に富んでいるのにも着目したい。

 

そういった中で、インディーフォークに舵をとった「Middle Of The Night」は新鮮な響きが込められている。クリアな雰囲気の中で、美麗なギターのアルペジオ、そしてバンジョーのような響きが聞こえてくる。さらに、夜の澄んだ空のような神秘的な雰囲気が立ち上ってくることがある。ここには、ランデ・ヘクトの吟遊詩人的なミュージシャンの姿を捉えられる(かもしれない)。


パワーポップやジャングルポップの雰囲気で繋がる「Circular」は、おなじみの陰影のある曲調に、ザ・リプレイスメンツのようなサウンドが加わる。そしてそれらは、全般的なロックの文脈の中で行われ、依然としてキャッチーな曲調を維持している。また、ここでもサビ(コーラス)の最後の方で、チューブアンプを中心としたギターワークがキラリと光る。それはランデ・ヘクトのソングライティングの中で、ギターソロが大きな割合を占めることの証でもある。

 

 アルバムの後半では、さらにインディーフォークやネオ・アコースティックの性質が強まり、「My Imaginary Friend」ではレモンヘッズ、ザ・ポウジーズ、ヴェルヴェット・クラッシュにも比する甘酸っぱいメロディーが満載である。それらがセミアコースティックギターの演奏を中心にボーカルと合わさり、爽やかな雰囲気を呼び込む。今回のアルバムで少しわかったことは、ランデ・ヘクトのソングライティングは、物申すような自己主張的なサウンドではなく、控えめで抽象的なサウンドである。それが80年代から90年代にかけてのインディーロックやパワーポップと結びついている。それはまた続く「The Sky」にも共通する点であると思われる。

 

最終盤ではこれまでの主要な楽曲とは異なる雰囲気の曲が出てくる。異色ではあるが、良曲ぞろいである。「Submarine」、「Coming Home」などは、ビートルズやビーチボーイズのサウンドをパワーポップやジャングルポップの側面から再構築している。 特に、アルバムをしっかりと聴いたファンはきっと、「Submarine」が隠れた名曲であることに気づくはずだ。楽曲の構成は以前よりもダイナミックになっていて、より大きな構想を練っているような気配も感じられる。この曲でもギターソロがクールな箇所がある。2分以降を聞き逃さないようにしてもらいたい。


まだ、このアルバムで最終的な答えが出たとは言えないかもしれない。しかし、ランデ・ヘクトの音楽性はいよいよ核心に近づきつつある兆候を捉えられる。クローズ曲「Coming Home」は叙情的なサウンドで聴かせる箇所があり、フォークとロックの中間にある淡い感覚を見出せる。

 

 

 

78/100 


 

 「Submarine」- Best Track





▪️過去のレビュー


LANDE HEKT 『HOUSE WITHOUT A VIEW』


▪️リリース情報


LANDE HEKTが三作目のアルバム『LUCKY NOW』を発表。 1月30日にTAPETEよりリリース

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