Friko 『Something Worth Waiting For』
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Label: ATO
Release: 2026年4月24日
Review
フジロックに出演予定のシカゴのインディーロックバンド、Friko(フリコ)は先週末にセカンドアルバム『Something Worth Waiting For』をリリースした。じんわりとした温かさを感じさせるエバーグリーンな良作である。
音像の大きなディストーションのギターワーク、ニコ・カペタンの抒情的なボーカルは多彩さがある。テレビジョンやレディオヘッド的な繊細さと知性を併せ持ち、ときに激情的になることも。2ndアルバムの冒頭を飾る「Guess」は、基本的なアルトロックの形式を踏襲しつつも、意外なノイズロック的な展開を見せることもある。しかし、少なからず、アヴァンギャルドな性質があるとはいえ、基本的にはエバールグリーンなロックソングが通じている。そこには最近、主流のバンドにありがちな感情の抑制ではなく、原始的なパンクのような荒削りなボーカルや叫びがジョン・コングルトンが得意とする奥行きのあるサウンドワークに反映されている。
手探りで聴き進めていくと、意外にもガレージロック風のサウンドが印象に残る。「Still Around」はニューヨークのプロトパンクを意識しつつも、ボーカルにはメロディアスな性質がある。これが彼らのロックソングを聴きやすくしている理由かもしれない。そしてこのロックソングはたしかに、80−90年代前半期のレディオヘッドのような哀愁をどこかに漂わせている。カペタンのボーカルは、『Bends』時代のトム・ヨークのつややかなボーカルを彷彿とさせる。バンドアンサンブルも強固である。フロントマンのボーカルを際立たせるために、ドラマーのベイリー・ミンゼンバーガー、ギタリストのコーガン・ロブ、ベーシストのデヴィッド・フラーは縦横無尽に躍動する。明らかにスタジアムレベルでのライブを意識したナンバーである。さらに、アンセミックなコーラスワークも魅力で、この曲のハイライトとなるに違いない。
ただ、個人的なイチオシは続く「Choo Choo」のような陰影を感じさせるアルトロックソングである。テレビジョンに比する詩情とロック精神を兼ね備えたフリコのソングライティングは、アンサンブルとたくみに合致し、バンドとして不可欠な一体感を呼び起こすことに成功している。静と動のセクションを交互に配置したり、メインボーカルとコーラスを対比させるなど、随所に工夫が凝らされている。この曲はインディーロックとして新風を呼び込むことに成功している。ライブなどでも注目してほしいが、ドラムワークが秀逸であり、この曲に強いハネを与えている。メロディとリズム、そして熱量などがバランスよく溶け合った一曲となっている。また、もう一つ注目すべきは、この曲に漂う若さや青さに象徴されるエモの雰囲気である。
「Alice」も良い曲で、ここでもレディオヘッドの『OK Computer』時代のロックバラードからの影響を読み取ることが出来る。しかし、90年代のデジタルなサウンドとは異なり、自然味溢れるアナログ風のサウンドが押し出されている。それゆえ、ラフさや粗さのような要素も一つの魅力となる。続く「Certainly」は70年代のシンフォニックバラードの影響が反映された形である。ピアノを中心として、ボーカルと掛け合うように、ストリングスが爽やかな旋律線を描く。
こういった冒険心のある音楽的なアプローチに加えて、スタンダードな「Hot Air Baloon」のような楽曲が強い印象を残す。ここでもニューヨークのプロトパンクや、2000年前後のガレージ・ロックリバイバルを踏襲し、テレビジョンやストロークスのようなギターワーク、そしてボーカルを通じて、クールなロックサウンドを紡ぎ出している。これらは、ニューヨークのロックシーンからの影響が特に色濃いことを伺わせる。しかし、彼らをシカゴのバンドらしくしている理由は、全般的なフォークミュージックからの影響が込められているからだろう。曲をぼんやり聴いていると、サウンドから自然味溢れる爽快感を感じ取ることが出来る。多分これはデビューアルバムから引き継がれた要素ではないだろうか。また、いくつかのセクションを経て、曲の後半でハイライトがやってくる。静かで落ち着いたロックソングのイントロからシンガロングを誘発するパッションとエナジーが奔流する終盤の展開は聴き逃がせない。前の曲で指摘したようなフォークミュージックからの影響は、続く「Seven Degree」に表れる。ここではアコースティックギターによるフォークロックで、スプリングスティーン的な雰囲気を放つ。
フリコはアメリカの音楽だけではなく、UKロックを吸収し、それらを上手く混合させる。タイトル曲「Something Worth Waiting For」のような曲は、シガー・ロスからの影響が滲み出ている。ビョークとのライブでのコラボ曲のような感じで、この曲はアルバムの中で、唯一、北欧(アイスランド)のフォークミュージックからの影響を捉えることが出来る。そしてどことなくさわやかである。恬淡としたアルトロックソングやバラード、あるいはフォークが中心となっているセカンド・アルバムであるが、前作よりもはるかに音楽的な間口が広くなっている。
さらに、2ndアルバムのクローズ「Dear Bycycle」では大掛かりな仕掛けを持つ一曲に仕上げている。ここでは、Wilcoのようなバンドの次世代の実験的なフォークロックのアプローチをもとに、エレクトロニクスやポストロック/マスロックのような文脈を加え、新鮮味のあるサウンドを確立している。最後の曲は相当力が入っている。インディーロックバンドという表向きの呼称とは裏腹に、広角に聴き込めるようなアルバムである。ライブに行く人はぜひ聴いてみよう。
82/100
「Still Around」
▪Listen Here: Friko 『Something Worth Waiting For』
