New Album Review: The Lemon Twigs 『Look For Your Mind!』

 The Lemon Twigs 『Look For Your Mind!』


Label: Captured Tracks

Release: 2026年5月8日

 

Review

 

今や、キャプチャード・トラックスの看板バンドとなったニューヨークのインディーロックデュオ、レモン・ツイッグス。最新作『Look For Your Mind!』は聴けば、一目でレモン・ツイッグスのアルバムだと分かる。


ビーチ・ボーイズ、ラズベリーズ、ルビノーズを筆頭とするパワー・ポップ、そしてダダリオ兄弟のボーカルの美しいハーモニーを生かしたメロディアスなロックソング、なおかつ卓越したロックバンドとしての演奏技術、どれをとっても申し分のない作品である。しかし、同時に、従来のパワー・ポップソング路線を重視しながらも、実験的な試みを取り入れた作品である。それはロックンロールの原初的なスタイルから、アルバムの最後を飾るサイケロック風の実験的なローファイまでロックソングのアトラクションがずらりと並んでいるような印象を受ける。

 

本作の冒頭では、イギリスのマージー・ビートが炸裂し、「Look For Your Mind!」が始まる。60年代のビートルズ的なアプローチだけではなく、The Whoのモッズロックのようなサウンドが融合している。しかし、単なる懐古主義とも言いがたい。シャリッとしたハイハット/シンバルやクリアなギターの音像、そしてボーカルのほんのりと甘いテイストなどは、『Rubber Soul』時代のビートルズが蘇ったかのようだ。そして今回は、やや激しい唸るようなシャウト気味のボーカルも披露する。ダダリオ兄弟のロック観のようなものがアルバムの冒頭から明哲になる。続く「2or 3」はどちらかと言えば、従来になくエバーグリーンな感覚を押し出したセンチメンタルなパワー・ポップソングである。相変わらず、良いメロディーやハーモニーに焦点を絞り、60年代から70年代のレコードからそのまま飛び出てきたかのような素敵な旋律を奏でる。

 

そういった中で、メロディアスなロックソングの真骨頂が出てくる。「Nothin’ But You」は、たった3つのコードを中心に進行していく。しかし、ダダリオ兄弟のボーカルのメロディーセンスは依然として秀逸であり、センチメンタルなエモーションに縁取られている。十代の思い出を綴るようなどことなく切ない感覚が滲んでいる。ゆったりとしたリズムの中で、Nilssonのような琴線に触れるメロディーを書く才能においては、レモン・ツイッグスに叶うバンドはいないかもしれない。


さらに、今回、シンセサイザーの演奏を大々的に押し出して、レトロなバロックポップ風のアレンジを施している。前作の延長線上にありながらも、様々な試行錯誤の跡が見出される。続く、「Gather Round」はバロックポップを下地にして、ビートルズ風のマジカルなサウンドを再現する。『Magical Mystery Tour』のようなシアトリカルなロック/ポップソングである。

 

「I Just Can't Get Over Losing You」は勇気づけられるような曲で、レモン・ツイッグスの代名詞的な一曲である。どことなく爽快感というか、青春のテイストを残しつつ、やはりダダリオ兄弟らしいグッドメロディーが満載である。こういったサウンドはビーチ・ボーイズというよりも、以前のレビューでも挙げたラズベリーズやルビノーズのサウンドに近いニュアンスである。しかし、60年代のロックソングが現在でも通用するのか。通用してしまうのがレモン・ツイッグスの凄さである。これはロック・バンドとしてのグルーヴィーな演奏の賜物でもある。

 

「Fire and Gold」はどちらかと言えば、イギリスのモッズロックの雰囲気に近く、The Whoの最初期やThe Jamに近い音楽的なアプローチである。こういった小気味よいジャッキとしたギターの音色は、フリークならばニヤリとほくそ笑んでしまうような内容だ。また、アナログからデジタルに切り替わるようなサウンドにも注目しておきたい。また、Cメロのような箇所では、転調を交えたりして楽曲に変化を加えている。これもまた彼らのソングライティングの持ち味である。

 

ほろりとさせるバラード「Mean to Me」のあと、一転してサーフロック調のアップテンポなロックソングが続いている。楽曲のタイプとしては古いといえば古いのだが、レモン・ツイッグスがこういった古典的なロックンロールをやるとなぜかダサくはならないのが本当に不思議である。いや、むしろ、スタイリッシュな印象すら感じられる。 ジョージ・ルーカスの名画『アメリカン・グラフィティ』から飛び出てきたような曲で、レモン・ツイッグスが出演していないのが残念でならない。もちろん、おそらくまだ彼らは生まれていないと思われるが。「Yeah I Do」はビートルズのポール・マッカトニー風のバラード風のロックソングである。それほどほろりとさせる旋律はないが、なぜか彼らの曲には、琴線に触れるようななにかがある。

 

唸ってしまったのが、続く「I Hurt You」である。イントロのギターが素晴らしく、その後、恋愛における過去の贖罪のような歌詞が歌われる。サビで聴かせるというよりも、一つずつの言葉を頼りに、その後にメロディーがついてくるような珍しい内容である。基本的には、バロックポップ風であるが、その中にはちょっとシティ・ポップっぽさもある。このアルバムの中では、意外にも日本のポップソングに近い内容になっていると思う。

 

ダダリオ兄弟は最初のリリースのとき、「つい新しいことをやってしまう」と語っていた。まあ、その辺りの新鮮な試みは、最終盤に登場する。「Joy」ではクラシックギター風の演奏を披露し、彼らがおそらく初めてロック・バンドとしてクラシック音楽を挑戦しようと試みている。演奏は少しジミー・ページ風で、その演奏には気品のようなものがあって良い。 フォーク・ミュージックをクラシックギターとして演奏したような感じで、非常に素晴らしいと思った。


また、ジャグリーなギターロックソング「My Heart Is In Your Hands Tonight」は、特にパーカッションの点で同じくキャプチャードトラックスからデビューしたBeach Fossilsの最初期のシングルを少しだけ彷彿とさせる。ローリング・ストーンズの荒削りさとビーチ・ボーイズが融合したような良質な楽曲である。前作よりも堂々たる雰囲気を持ったロックソングを聴くことが出来る。

 

ミニマリズムをもとにしたギターから始まる最終曲「Your True Enemy」は、意外にも不敵な感じがしてとてもかっこ良い。 特に、楽曲の転調の巧みさ、少しサイケデリックなボーカルの雰囲気など、アルバムのなかでは最も個性的な楽曲として楽しめる。前作とは異なり、徹底して1960年代から70年代の古典的なロックに焦点を絞ったのは本当に勇気のいることだったはずだ。これは、世界中見渡してもダダリオ兄弟の他の誰にも真似できないことなのだ。 グレート!!

 

 

 

88/100 

 

 

「2 or 3」

 


▪️アルバムの視聴 

▪Listen/Stream:  The Lemon Twigs 『Look For Your Mind!」


▪️過去のレビューを読む:


・THE LEMON TWIGS 「A DREAM IS ALL WE KNOW」