パンク・ロッカーの音楽的なルーツを探る  Billie Joe Armstrong「NO FUN MONDAYS」  


2020年から、ビリー・ジョー・アームストロング名義のシングルがリリースされはじめました。すると、いよいよアルバムリリースかと椅子から立ち上がりかけたところ、やはりこのアルバムがワーナーからリリースされました。
 
ここに収録されたカバー曲を聴いてみると、およそサイドプロジェクトとは思えないほどの力の入れようであり、彼のミュージシャンとして真剣さが感じられます。
 
そして、選りすぐりの原曲が、いかにも彼らしい親しみやすい”ポップ・チューン”として巧みにアレンジされています。
 
ビリー・ジョーの歌声にも、只ならない情熱がこめられているのがわかり、彼の真摯な魂の叫びのごときが楽曲のいたるところにはっきりと込められています。とにかく聴いていると、理由もないのに元気に充ちあふれてきてしまうのが、このカバーアルバムの面白いところでしょうか。

選曲自体は、メジャーなものから彼の音楽的な土壌が伺える少しマニアックなものにいたるまで、実に遊び心満載です。
 
アルバムでは、ビリー・ジョーがスペイン語に挑戦した可愛らしげな印象のあるDon Backey原曲の「Amico」がなんとなく目を惹きます。
 
また、KIm Wildeの「Kids in America」Tiffanyの「I Think We're Alone Now」往年にヒットしたポピュラー音楽のカバーにいたるまで、グリーン・デイのライブで演奏されても違和感のないシンガロングでキャッチーな楽曲が収録されています。
 
また、Starjetsの「War Story 」であったり、BIlly Braggの「New England」を選んでくる辺りは、彼のロックファンとしてのマニアックでありながらセンスあふれる趣味が伺えるかのようです。そして、これらがメロコアという音によってこれ以上はないというくらい見事に元の楽曲が新鮮味をもって作り代えられています。
 
もうひとつ特筆すべきなのは、通常、レコーディングでは、口をマイクに近づけるほど、息遣いのニュアンスを拾い上げることになりますが、彼はここでレコーディングの際に、かなりマイクに口を近づけて情熱的に歌をうたっているようです。
 
これは彼の本プロジェクトであるグリーン・デイでのレコーディングではそれほど感じられない点でしょう。
 
また、このアルバムの曲をよく聴くと、ビリー・ジョーの生唾を飲み込むような音もマイクでしっかり拾い上げられていて、そこにはまた彼が非常に緊迫感をもって、レコーディングに臨んでいる気配が感じとられます。どうも、「NO FUN MONDAYS」は一発取りに近い形で録音されたものかもしれません。
 
このアルバムを通して聴いていると、ビリー・ジョーの歌声、ひいては彼の存在感が妙にリアルに、身近に感じられます。このアルバムについては、ビリー・は、自分のキャリアの原点回帰をはたしたように思え、「生きた音」もしくは「そのままの音」を録音し、それを完成品とする意図が感じられます。
 
レコーディングでしか出し得ない味のある演奏。
 
この音楽の持つ本来の魅力を、今回、ビリー・ジョーは、いわばバンドに比べると自由性の高いソロプジェクトで試してみたかったのだろうという気がします。
 
サウンドプロダクションの過程を大切にして、そこに彼なりのプロ・ミュージシャンとしての、もしくは、ライブ・ミュージシャンとしての絶対に譲れない強い信念が込められているように思えます。
 
今作、「NO FUN MONDAYS」は、彼のスタジオ・ライブをそのまま生で録音したかのような迫力のある楽曲ばかりがずらりと並べられていて、彼の気配が近いところに感じられるアルバムとなっていて、彼のソロプロジェクトでしか味わえない魅力が詰まった作品となっています。どうも、楽曲のピカイチの出来栄えを見ると、ビリー・ジョーのキャリアの中で一、二を争うくらいの代名詞的な作品となりそうですよ。

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