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Militarie Gunは10月17日にロマ・ヴィスタからニューアルバム『God Save The Gun』を発表した。 『Life Under The Gun』(レビューを読む)の続編となるこのアルバムには、バンドリーダーのイアン・シェルトンが監督したミュージック・ビデオが収録されている。 


"私は、悪徳を讃えるビデオを作りたかった。決して真に反省することなく、過ちを犯した瞬間を振り返っている自分の新しいイテレーションを作りたかった。 "これは、私たちがこれまでに行った中で最も技術的に困難なビデオであり、"悪い考え "という言葉を綴った歌にしか合わないものだった"


ミリタリーガンは、プロデューサー/エンジニアのライリー・マッキンタイア(アーロ・パークス、ザ・キルズ)と共に14曲入りの作品に取り組んだ。 God Save the Gun』には、フィリップ・オドム、デイジーのジェイムズ・グッドソン、MSPAINTのニック・パネラも参加している。


「このように傷つきやすいことで、私の個人的なトラウマがこのアルバムのマーケティングのフックになることは十分承知している」とシェルトンは付け加えた。 「でも、それを刺激しないまでも、私はそれでいいと思っている。 ここ数年、依存症の影響を受けている人の視点から依存症について話すうちに、自分が依存症に苦しんでいる人になってしまったんだ。 ある状況に入り、その結果を十分に理解した上で、とにかくやってみるというのは茶番的な論理なのだ」

 

 

『BAD IDEA』 





Militarie Gun 『God Save the Gun』



Label:Loma Vista

Release:2025年10月17日

Tracklist:


1. Pt II

2. B A D I D E A

3. Fill Me With Paint

4. Throw Me Away

5. God Owes Me Money

6. Daydream

7. Maybe I’ll Burn My Life Down

8. Kick

9. Laugh At Me

10. Wake Up And Smile

11. I Won’t Murder Your Friend

12. Isaac’s Song

13. Thought You Were Waving

14. God Save The 


Pre-save:  https://fm.militariegun.com/GSTG

Anamanaguchi   『Anyway』 


 

Label: Polyvinyl 

Release:2025年8月8日

 

 

 

Listen/Stream

 

Review

 

ポリヴァイナルから新譜をリリースしたニューヨークのパンクロックバンド、Anamanaguchi(アナマナグチ)は、最新アルバム『Anyway』において、まるでデビューバンドのような鮮烈なイメージを与える。ご存知の通り、このアルバムの家は、シカゴのロックバンド、アメリカン・フットボールの『LP1』のアートワークとして写真で使用されている。いわばエモの名物的な物件なのだ。

 

つい数年前、ポリヴァイナル・レコードは、この文化財を救済するため、競売にかけられたこの一軒家をバンドと共同で購入した。私自身は僭越ながら、Anamanaguchiというバンドを今年までよく知らなかったが、どうやらチップチューンの先駆者であると彼らは自称しているらしい。アナマナグチは、このシカゴ郊外でニューアルバム『Anyway』のレコーディングに取り組んでいる。長い間、この物件は、''モラトリアムのメランコリア''ともいうべきシカゴの象徴的な文化財であったが、今回のアナマナグチは、はつらつとしたパンクエナジーでその先例を打破する。

 

アメリカンフットボール・ハウスの中にある改装されたリビングルームでは何が行われていたのか。それを知るためには、このアルバムを聴いてみるのが一番だと思う。『Anyway』では、デジタルプロセスで制作された一般的なアルバムとは少し異なり、''同じ部屋で集まり、そして一緒にアルバムを作り上げた''とピーター・バークマンは述べている。つまり、トラック別のライン録音ではなく、同時録音を中心に構想されたアルバムではないかと推測される。おそらく、ベースとなる録音を制作し、その後にボーカル・トラックなどを被せていったのではないか。


さて、結果的に生み出された産物は、ロック、パンクの激しいエナジーが放たれ、スタジオライブのように緊密な空気感を録音に聴くことが出来る。そのライブサウンドとしての象徴的な音楽性が冒頭曲「Sparkler」から目に見えるような形で炸裂している。ハードロックやパンクの中間にあるギターは、近年インディーズ界隈では倦厭されつつあるギターヒーローらしいサウンド。マーシャルのアンプを積み上げたライブステージのように重厚なイントロを形成している。


ドラムのフィルが入った後、コテコテのインディーズ・パンクサウンドを展開させる。彼らのロックサウンドは疾走感があり、爽快感もある。さらにギターソロがシンボリックに鳴り響く。勢いのあるパンクロックチューンの中で、シンガロングを誘発させるボーカルが織り交ぜられる。オープニングトラックとして申し分のない、素晴らしい楽曲がアルバムをリードしている。


 

 「Sparkler」

 

 

「Rage」は2000年代のUSインディーズロックの時代に回帰したような楽曲だ。このジャンルのファンの心を捉えるであろうと予測される。 Saves The Day、Third Eye Blind、Motion City Soundtrackを彷彿とさせるインディーズロックのリバイバルの楽曲である。全般的なロックの方向性の中で、エモの性質が垣間見えることがある。その中で、エレクトロパンクとエモやパワーポップを融合させた切ないフレーズが骨太のロックソングに内在するという点に注目すべきだ。彼らのロックサウンドは基本的にはインディーズ贔屓であり、USインディーズという概念を実際的なサウンドを介して復刻するような内容である。さらに、''チップチューンの先駆者''を自称するアナマグチであるが、今作では、1990年代のグランジ、ミクスチャーロック、オルタナティヴロックのテイストを吸収し、かなり際どいサウンドにも挑戦していることが分かる。


「Magnet」はアメリカのロックミュージックの多彩さがパワフルに反映されている。彼らのサウンドはメタリックにもなり、パンキッシュにもなり、スタンダードなロックにもなる。曲の中で熱帯雨林の生物のように変色し、セクションごとにまったく別の音楽を聴くような楽しさに満ちあふれている。そして全般的には、1990年代のRage Against The Machineの主要曲を彷彿とさせるミクスチャー・ロックのリズムがベースになっているが、その中には、Pixies、Weezer、Radioheadのようなオルタネイトなベース/ギターが炸裂し、クロマティック・スケールを最大限に活用したクールなロックサウンドが前面に押し出され、オルタナファンをノックアウトする。

 

「Lieday」は、The Gamitsのような2000年代初頭の良質なメロディックパンクサウンドに縁取られている。しかし、こういった曲は、さほど古びておらず、いまだにそれなりの効力を持っているのだ。ただ、アナマナグチの特色はベースメントのパンクサウンドの要素を押し出し、チップチューンのようなサウンドを疾走感のあるパンクソングに散りばめている。アナマナグチのサウンドの運び方は秀逸であり、飽きさせないための工夫が凝らされている。曲の後半のチャントは、1990年代以前のシカゴのエモコア勢に対する愛に満ち溢れている。結局、リバイバルエモへと受け継がれたチャント的なコーラスが、この曲のハイライトになるだろう。その後、商業的なポップパンクソング「Come For Us」では、Get Up Kidsの音楽性を踏襲し、エモパンクのお手本を見せている。「Buckwild」は最近のエモラップへの返答ともいうべき楽曲だ。

 

『Anyway』は、こういったエモ/パンクがアルバムの音楽性の中核部を担っている。一方で、チップチューンを織り交ぜたシンセの近未来的なサウンドが入る時、アナマグチの魅力が顕わとなる。「Sapphire」では、スペーシーなシンセがポップパンク/メロデイックパンクの要素と結びつき、ポップパンクのポスト時代の台頭を予見している。これらはどちらかと言えば、The Offspring、Sum 41のような骨太なロックやメタルの延長線上にあるパンクソングという形でキッズの心を捉えそう。ただ、アナマナグチの多趣味は、ロック/パンクの領域を超える瞬間もある。「Valley Of Silence」はニューヨークのエレクトロポップシーンと共鳴する楽曲である。Porches、Nation of Languageのサウンドを彷彿とさせる清涼感のあるポップソングのフレーズは、アルバムの全体的なノイジーなロックサウンドの中にあるオアシスのような意味をもたらす。

 

ただ、全般的には、Reggie And The Full Effectとポップパンクを結びつけたような個性的なサウンドがアルバムの中枢を担っている。「Fall Away」では、Fall Out Boyのような、やんちゃなパンクスピリットを反映させているが、同じようにスペーシーなシンセサイザーが独特なテイストを添えている。また、楽曲のBPMを下げて、テンポを緩めて、リズムがゆったりすると、彼らのメロディセンスの良さが表側に引き出されて、Weezer、The Rentals、Fountains of Wayneのような甘酸っぱいパワーポップ/ジャングルポップに接近する。「Darcie」は最も親しみやすい曲として楽しめるはず。また、アルバムの終盤でも、荒削りではあるけれども、良いバイブレーションを放つパンク/ロックソングが収録されているため、聴き逃さないようにしていただきたい。


「Really Like to」は、Fall Out Boyのようなシカゴの代名詞への尊敬の念が感じられる。その他、ベテランのバンドらしからぬ鮮烈な勢いを収めた「Nightlife」はアナマナグチの重要な音のダイアログの一つ。多彩なパンクロックを収録したユニークなアルバムがポリヴァイナルから登場。

 

 

 

84/100

 

 

「Magnet」

 

Snooperがニューアルバム『Worldwide』を発表。ガレージ・ロックに彼ららしい疾走感を加えたタイトル曲を発表した。スヌーパーはギタリストのコナー・カミンズとヴォーカリスト/ヴィジュアル・アーティストのブレア・トラメルによって結成された。

 

今年2月、スヌーパーは自然発生的にロサンゼルスでジョン・コングルトンとレコーディングすることになった。 それまではプロデューサーと仕事をすることなど考えたこともなかったが、コングルトンはファンであり、バンドはこのプロセスがアーティストとしての成長に不可欠だったと振り返っている。 「このアルバムの全体的なアイデアは、実験と変化だった」とカミンズは言う。


2023年リリースの『Super Snõõper』は、長い間路上でテストされ、ファンに承認されてきた既成曲を再レコーディングしたもので、バンドは『Worldwide』を真のデビューアルバムと見なしている。

 

「Worldwide」


▪️Review:  SNOOPER  『SUPER SNOOPER』



Snooper 『Worldwide』



Label: Third Man

Release: 2025年10月3日


Tracklist:


1.Opt Out

2.On Line

3.Company Car

4.Worldwide

5.Guard Dog

6.Hologram

7.Star *69

8.Blockhead

9.Come Together

10.Pom Pom

11.Relay

12.Subdivision

 

 

Pre-save: https://ffm.to/snooperworldwide 


アメリカのロックバンド、Bright Eyes(ブライト・アイズ)は、最近のアルバム『Five Dice, All Threes』からカットされたスカ曲について、すでにいくつかのヒントを出している。 バンド・リーダーのコナー・オバーストは、この曲はいずれリリースされると約束していたが、遂にそれが実現した。


ブライト・アイズはインスタグラムに、"ska is back "と書かれたマクドナルドの看板の画像を投稿した。 この投稿には、"Coming soon... "というシンプルなキャプションが付けられている。


コナー・オバーストは以前、この曲が "1st World Blues "と呼ばれていることを明かしていた。

 

「実はとても気に入っていて、キャッチーだと思うんだけど、スカの曲なんだ」とオバーストはポッドキャスト『Broken Record』に語っている。 というのも、彼ら(レーベルの担当者)は、"これをレコードに入れたら、誰もが "ブライト・アイズはスカになった "としか言わないだろう "とか何とか言っていたんだ。 よくわからないけどね」


今回発表された未発表曲は、バンドが『Five Dice, All Threes』の音源を送ったとき、Dead Oceansから収録を反対されたという。しかし、今回、ようやくこのスカ・パンクがお目見えとなった。たとえ "First-World Blues "がアルバムに収録されなかったとしても、"Bright Eyes Goes Ska"はなかなか面白いと話題になりそうだ。 将来的にリリースされるであろう曲は8曲ほど残されているという。続報を楽しみに待ちたい。

 

 

 「1st World Blues」

University 『McCartney, It'll Be OK』


 

Label: Transgressive

Release: 2025年6月20日

 

Review

 

英/クルーを拠点に活動する四人組パンクバンド、Universityの新作 『McCartney, It's OK』は彼らのデビュー・アルバムである。デビュー・アルバムということで、無謀でハチャメチャで大胆なパンクソングのアプローチが図られている。彼らのなんでも出来るという感覚は、このデビュー作の最大の武器だろう。それらが、苛烈であるが、無限のエナジーに縁取られている。エキサイティングで、アグレッシヴ、そして先の読めないハードコアタイプのパンクアルバムだ。

 

 Universityのサウンドは、イギリスのバンドでありながら、アメリカのミッドウェストのサウンドに触発されている。このデビュー作において、四人組の志すところは、ポスト・ハードコア時代のエモであり、それはボーカリストのジョエル・スミスも明らかにしている。 彼らのサウンドは、American Footballの前身で、キンセラ兄弟を擁するCap N' Jazzのようなアンダーグランドのエモに縁取られているが、一般的なエモよりもヘヴィーな重力があることはおわかりだろう。

 

力強く打数の多いドラム、音を過剰なほど詰め込むギター、それに付随するベースが作り出す混沌として幻惑的なサウンド。その向こうにインディーズらしいラフなボーカルが揺らめく。それらはポストエモがイギリスの新しいインディーズミュージックの重要なイディオムであることを伺わせる。

 

このアルバムは、青いエナジーを凝縮させ、無謀なほどに邁進する次世代の四人組の姿を、スナップショットのような形で収めている。それは例えば、シカゴのライフガードのように洗練されたものとは言い難いが、彼らと同じように、人生の瞬間的な輝きを、ロックソングの中に凝縮している。全体的な曲想は重要ではなく、瞬間的に現れる感覚的な良いエナジーを汲み取れるかが、今作の最大の聞き所となるかもしれない。ラウドであることを恐れず、叫ぶことを恐れない。この精神は、彼らが見てくれの音楽を志すのではなく、心底から湧き出る音楽を率直に表現しようとしていることを伺わせる。コーラスも練習不足を感じさせるが、その荒削りなボーカルがラフな魅力を作り出している。不協和音とノイズを徹底的に全面に押し出したサウンドは、たしかにノイジーであるが、その向こうに、うっすらとセンシティブなエモが鳴り渡る。

 

ダイヤルアップの音から始まり、カオティック・ハードコアの獰猛性へと突き進む「Massive Twenty One Pilots Tattoo」で、彼らは挨拶代わりのジャブを突き出す。そして、ストップ・アンド・ゴーを駆使した嵐のように吹き荒れるノイジーな轟音サウンドの中、無謀とも言えるジョエル・スミスのボーカルが、わずかにエモーショナルな感覚を滲ませる。ダイナミックなサウンドであり、大型のライブ会場よりも、スタジオライブや小さな会場で少なからず熱狂の渦を生み出しそうな気配がある。そういったスタジオレベルでのコミュニティを意識したサウンドがアルバムの代名詞となっている。

 

一方、バンドアンサンブルの一体感を表した「Curwen」に少なからず期待値を見いだせる。轟音サウンドの後、エモ的な静かで奥行きのあるサウンドへ移行し、さらに変拍子を駆使して、変幻自在な音楽性へと移行していく。その後、再び疾走感のあるポスト・パンク・サウンドへと舞い戻る。これらの獰猛なサウンドは、Bad Brainsのような最初期のDCハードコアを彷彿とさせる。

 

「Gorilla Panic」は、 即興的なノイズサウンドの後、米国のミッドウェスト・エモに移行する。前のめりな勢いで、ドラムに先んじて他のパートの楽器が前につんのめるように演奏しているが、これらの内側から滲み出る初期衝動こそパンクロックの本意とも言えるだろう。この曲がゴリラ・ビスケッツに因んだものなのかは不明だ。ただ、スミスのボーカルは背景のアンサンブルのダイナミクスに引けを取らず、異質なほど迫力がある。3分半以降のエモーショナル・ハードコアの目眩く展開には感嘆すべきものが込められている。これらは、ユニバーシティの音楽が、シカゴのCap N' Jazzのエモの原点に接近した瞬間でもある。(* エモの歴代名盤セレクションはこちら)

 

ユニバーシティは、パンクにとどまらず、メタルコアに傾倒する場合もあるようだ。「Hustler's Metamorphosis」は脳天をつんざくようなハードなサウンドだ。2000年以降のニュースクールハードコアのメタルを踏襲し、重力を感じさせるヘヴィーなサウンドで縁取っている。ユニバーシティのサウンドは縦ノリのリズムだけが特色ではない。2分以降に現れる横ノリのリズムは、モッシュピットを引き起こし、熱狂を呼び起こしそうだ。内的で鋭いエナジーを持つパンクサウンドはメインストリームに飽食しきったリスナーに撃鉄を食らわすかのよう。これらのカオティック・ハードコアサウンドには稀に、CANのような実験性を見いだせることもある。

 

さて、ポストエモの楽曲「GTA Online」は、スタジオのジャムをそのまま楽曲にパッケージした感じ。作品として作り込みすぎず、一発録りのラフなデモソングのような感じでそのまま録音するというのが、デビューアルバムの主な指針であることを伺わせる。それはまた、商業的な指標とは異なる音楽の悦楽をはっきりと思い出させてくれる。これらの荒削りな音楽は、バンドセッションとして深い領域に達する場合がある。


この曲の2分以降の展開には、即興的な演奏からしか引き出されない偶発的なサウンドが見いだせる。2分後半以降、ジョエル・スミスのボーカルは絶叫に近くなるが、感覚的には温和な空気感が漂う。このプロフェッショナリティとは対極にあるアマチュアリズムが現時点のバンドの魅力だ。同じように、「Diamond Song」にも激情ハードコアの魅力が3倍増で濃縮されている。

  

終盤を飾る「History Of Iron Maiden 1-2」はどうだろう。未完成のデモをそのまま収録したような感じだ。これらの2曲にはバンドの趣味が満載となっており、それらがノイズをベースに構築される。エモ、ハードコア、ゲームのチップチューン、即興的なアートパンク……。このアルバムでは何でもありで、タブーのようなものは存在しない。先の見えない暗闇の中、音楽でしかなしえない禁忌を探る。彼らのサウンドには、音楽の無限性のようなものが潜在的に眠っている。

 

 

 

76/100

 

 

 

Best Track - 「Gorilla Panic」




*初掲載時にタイトルに誤りがありました。訂正致します。


アトランタのニュースクールハードコアバンド、Upchuck(アップチャック)が衝動的な若さに満ち溢れたニューシングル「Plastic」を発表した。ストレイトエッジ風のハードコアナンバーだ。同時にバンドはドミノとの契約を発表している。

  

バンドの煽情的なライヴ・ショーはすでに伝説化しつつあり、アップチャックはカオスの軌跡を残している。 激しくパンクな音楽性を持つ5人組は、今年、グリーンマン、ピッチフォーク・ロンドン、シンプルシングスのフェスティバルに出演する予定だ。

 

アップチャックは、2018年にアトランタの20代前半のスケーターからなるバンドとして誕生し、魅力的なパフォーマーKTを前面に押し出した。

 

2022年にはブルックリンのFamous Class Recordsからデビュー・フル・アルバム『Sense Yourself』をリリースし、その後すぐにタイ・セガールがプロデュースした2023年の『Bite The Hand That Feeds』がリリースされた。Freaky 「や 」Facecard "といった初期のシングルは、イギー・ポップやヘンリー・ロリンズから支持を受け、彼らのラジオ番組で演奏された。

 

急成長するアップチャックのライヴ・ショーの伝説は国際的に広がり続け、同じアトランタ出身のフェイ・ウェブスター(アップチャックをお気に入りのバンドと呼ぶ)は、アミル&ザ・スニファーズ、ソウル・グロー、OSEES、キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードのサポート・ツアーに参加し、コーチェラ2024では注目を集めた。

 

SXSWで彼らのライブを観たローリング・ストーン誌は、「すべてが爆発する。クラブは音の大砲と化し、最大限の破壊をもたらす。どの曲も、これでもかというほどヒットする」と評価している。

 

「Plastic」

 MOULD 『Almost Feels Like Purpose』EP 

 

Label: 5dB Records

Release: 2025年4月24日



Review

 

 

ブリストル/ロンドンに跨って活動するMOULD。 2024年デビューEPをリリースし、BBC Radio 6でオンエアされ、DORKでも特集が組まれた。イギリスの有望なパンクロックトリオである。『Almost Feels Like Purpose』EPは間違いなく先週のベストアルバムの一つに挙げられる。パンクロックの魅力は完成度だけではない。時には少しの欠点も魅力になり得ることも教えてくれる。

 

モールドのサウンドは、Wireのようなニューウェイブを絡めたイギリスのポストパンク、エモ、ハードコア、Fugaziのようなポストロック、グランジ、そして時々、最初期のグリーン・デイのようなメロディックパンクの雰囲気を持つ。デビューEPでは、まだ定かではなかった彼らのサウンドは『Almost Feels Like Purpose』において、より鮮明さを増したと言えるかもしれない。侮れないものがある。

 

MOULDは、特定の決められたサウンドを目指しているわけではないという。ただもちろん、思いつきのみでパンクをやっているというわけでもない。モールドの曲は緻密な構成を持つ場合があり、バンドアンサンブルとして玄人を唸らせる。こだわり抜いた職人気質のギターサウンド、ニューウェイヴに依拠したしなやかなベースライン、そしてメチャクチャ打数が多いが、バンドのラウドなサウンドをタイトにまとめ上げるドラム等、聞き所は満載だ。これらはジェイムスが言う通り、このバンドよりも前にやってきたことの成果が巧緻なサウンドにあらわれている。

 

 二作目のEPは、昨年の夏に彼らのホームタウンのブリストルでレコーディングされた。同時に全般的なサウンドとして音圧のレベルが上がっている。いわば、リスナーの元にダイナミックなモールドのサウンドが届いた。デビューEPのサウンドと地続きにあり、同時にファーストEPでは見られなかった新しいサウンドの萌芽もある。



「Oh〜!」というサッカースタジアムのチャントのように陽気に始まる「FRANCES」では、従来のStiff Little Fingersのようなガレージロックサウンドのようなブギーで粘り気のあるギターリフを00年代以降のメロディック・パンクのイディオムと結びつけ、軽快なサウンドを作り出している。このバンドの持ち味のシャウトやドライブ感のあるパンクロックが所狭しと散りばめられているが、一方で、楽曲の展開の面で工夫が凝らされている。つまり、変拍子、静と動、緩急を生かしたサウンドが、性急で疾走感のあるパンクサウンドを巧みに引き立てているのだ。

 

MOULDのサウンドは「落ち着きのない人のための音楽」と言われることがあるとジェイムスさんから教えていただいたが、それはジェットコースターのようにくるくると変化する曲調に要因がありそう。そして、実際的に、これはMOULDの現在の大きな武器や長所、そして特性でもある。「TEMPS」は、Wireのようなニューウェイブ系のパンク・ロックサウンドを印象付け、そしてこのトリオらしいシンガロングを誘うキャッチーで温和なメロディーで占められている。


さらに、このバンドの持ち味であるガレージロック風の硬質なギターリフを中心とし、パブでの馬鹿騒ぎをイメージづけるような、ノリの良いパンクロックソングが繰り広げられる。時々、ラウドとサイレンスを巧みに行き来しながら緩急のある構成力を活かし、全般的には、最初期のグリーン・デイのように、ロックンロールの要素が心地良いサウンドを作り上げていく。

 

また、MOULDのサウンドはバイクで疾走するようなスピード感が特徴である。これらのデビューソング「Birdsong」と地続きにあるのが「Snails」である。ガレージ・ロックの系譜にある骨太なギターラインで始まるこの曲は、バクパイプの残響を思わせるギターの減退の後にボーカルが加わると、驚くほどイメージが様変わりし、メロディックパンクの次世代のサウンドの印象に縁取られる。いわばモールドらしいコミカルなパンクサウンドが顕わになるのである。


「Snails」は、ドラムの演奏が巧みで、爆発的なリズムやビートを統制するスネア捌きに注目である。さらに、曲調がくるくると変化していき、曲の中盤から後半にかけて、シンガロングなボーカルのフレーズが強い印象を放つ。ロックソングのメロディー性に彼らは重点を置いている。特に、この曲のサビは素晴らしく、モールドの爽快感のあるエモーションが生かされている。

 

 

また、モールドは単なるパンクバンドではなく、音楽性が幅広く、そして何より器用である。さらに、柔軟性も持っている。単一のジャンルにこだわらない感じが、彼らのクロスオーバー性を作り出し、そして多角的で奥行きのあるロックサウンドを作り上げていく。 パンクロックソングの中にあるロックバラードの性質、言わば、泣きの要素が続く「Wheeze」に示唆されている。


この曲では、ゆったりとしたテンポが特徴のオルタナティヴロックソングである。同じようなフレーズが続くのに過ぎないのだけれど、実験的なホーンが取り入れられたりと、アメリカン・フットボールのエモを巧みに吸収しながら、モールドらしいサウンドとして抽出している。


さらに、曲の中盤では、ビートルズ・ライクのサウンドも登場したりと、音楽的な魅力が満載である。そしてモールドらしく熱狂性が曲の後半で炸裂し、ピクシーズの「RIver Ehphrates」のようなチョーキングでトーンが変調するサウンドや、チェンバーポップ風のチェンバロをあしらったアレンジメントが登場したりと、オルタナティヴロック・バンドとしての表情も伺わせる。

 

EPの後半では、ハードコアやヘヴィーなロックサウンドに傾倒する。しかし、曲の展開の意外性、先の読めなさというのが今作を楽しむ際の最大のポイントとなるだろう。


ハードなエッジを持つポストハードコア・サウンドで始まる「Brace」であるが、その後はコミカルな風味を持つキャッチーなポップパンクソングに変遷していく。このあたりの''変わり身の早さ''が、モールドの最大の魅力といえるか。この曲は少しずつギアチェンジをしていくように、三段階の変化をし、最初はポスト・ハードコア、そして、ポップ・パンク、ジョン・レノン風のロックソング、あるいはビートルズのホワイトアルバムのようなサウンドへと移ろい変わる。

 

曲の後半では、Bad Religionのようなエッジの効いたパンクロックソングを聴ける。この曲で、近年、ハードになりがちなパンクに安らぎや癒しを彼らはもたらそうとしている。このEPはモールドの多趣味さや音楽的な幅広い興味が満載である。何度聴いても飽きさせないものがある。

 

アンプリフターから放たれる強烈なフィードバックノイズをイントロに配した「Chunks」は、昨年の「Outside Session」でも披露された。Fugaziのような実験的なポスト・ハードコアサウンドだが、その途中に若さの奔流が存在する。


ハイハットのマシンガンのような連射、グランジのように低く唸るベースライン、タムのドラムのヘヴィーな響き、マスロックやトゥインクルエモ(ポストエモ: メロディックパンクとエモの複合体)の性急なタッピングギター、そして、結成当初はハードコアパンクを前面に押し出していたBeastie Boys(ビースティボーイズ)のように、ラップからパンクに至るまで変幻自在なジャンルを織り込んだボーカルスタイルが織り交ぜられ、モールドの持つ”宇宙的な広大さ”が露わとなる。


そして彼らは、サウンドをほとんど限定することなく、思いつくがままに、刺激的で緻密なパンク/ロックサウンドを展開させる。


アークティック・モンキーズの最初期のスポークワードやラップの影響下にあるロックサウンドを垣間見せたかと思えば、曲の中盤から、デスメタル/グラインドコア風のシャウトの唸り、そして、疾走感のある痛快なパンクロックサウンドへと移ろい変わっていく。曲の展開はまるで怒涛の嵐さながら。これぞまさしく、若いバンドだけに与えられた特権のようなものであろう。

 

デビューEPは曲の寄せ集めのような初々しさがあったが、二作目のEP『Almost Feels Like Purpose』ではいよいよモールドらしさ、音楽の流れのようなものが出てきた。ライヴレコーディングのような迫力、そして若いバンドらしい鮮烈さに満ち溢れている。聞いたところによると、まだまだ持ち曲はたくさんあるということ。今後もモールドのアクティビティに注目だ。

 

 

 

85/100 

 

 

Mouldの特集記事:

MOULD  Bristol up-and-comer explains about making debut EP  -ブリストルの新進気鋭  デビューEPの制作について解き明かす- 


 

謎めいたビデオで予告していたTurnstileが、2021年のNo.1アルバム『Glow On』の待望の続編を発表した。 ビルボードで予告されていた通り、アルバムのタイトルは『Never Enough』で、現在リリースされているファーストシングルの名前でもある。 

 

この曲は、ターンスタイルが『Glow On』で追求したドリーミーでシンセサイザーな音で始まり、『Glow On』のリードシングル/オープニング・トラック "Mystery "と同じようなグランジパンクバンガーに変わる。 一聴すれば、2語のコーラスを口ずさみ、もっと聴きたくなること間違いなし。  

 

Turnstileのヴォーカリスト/キーボーディスト、ブレンダン・イェーツがプロデュースし、ブレンダンはギタリストのパット・マックローリーと新しいミュージックビデオの共同監督も務めている。 『Never Enough』は6月6日にリリースされり。ターンスタイルにとって、共同設立者であるギタリスト、ブレイディ・イバートの脱退後、2023年からツアーを共にしている新ギタリスト、メグ・ミルズ(ビッグ・チーズのギタリストでもある)との初アルバムでもある。


本作はニューヨークのヘヴィロック/メタルの名門”Roadrunner”からのリリース。ターンスタイルは、ニュー・アルバム発売翌日のプリマヴェーラ・サウンドをはじめ、いくつかのフェスティバルへの出演も控えている。 今年の6月6日は近年にない大豊作のウィークとなりそうだ。



「Never Enough」




Turnstile 『Never Enough』

Label: Roadrunner

Release: 2025/6/6

 

 



  3月7日、パンクシーンのレジェンドがこの世を去った。伝説のUKパンク・バンド、The Damnedの結成時ギタリストであり、初期の主要ソングライターであったブライアン・ジェイムズさんが70歳で死去した。ジェイムズの死去は自身のフェイスブックで報告され、死因は記載されていない。 1955年ロンドン生まれのギタリストは、2月18日に70歳を迎えたばかりだった。


  ダムド以前は、ニューヨーク・ドールズ、モット・ザ・フープルのようなバンドを目指したロンドンSS(クラッシュのミック・ジョーンズ、ジェネレーションXのトニー・ジェイムスが在籍)、キャプテン・センシブルらと結成されたザ・サブタレイニアンズ(ダムドの前身バンド)、バスタードで活躍。 1976年、シンガーのデイヴ・ヴァニアン、ベーシストのキャプテン・センシブル、ドラマーのラット・スキャビーズとともにダムドを結成。


  ジェームズのミュージシャンとしてのキャリアは18歳に始まった。デビューギグから数カ月後のデビュー・シングルをリリースし、UKパンクの時の人となった。彼はバンドの最初の2枚のアルバム『ダムド・ダムド・ダムド』(10時間でレコーディングが行われた伝説的な作品)と『ミュージック・フォー・プレジャー』のほとんどの曲を書いた。 しかし、彼はこの2枚のアルバムがリリースされた1977年末にバンドを脱退した。彼は、少なくともパンクがメジャー化し形骸化する前に、もしくはその動きを察知して最初のパンクシーンから身を引いている。


  その後、Tanz Der Youthというバンドを結成した後、スティヴ・バートルズとThe Lords of the New Churchというグループを立ち上げ、80年代初頭に数枚のアルバムをリリースした。 ソロアルバムも数多くリリースしており、最新作は2015年の『The Guitar That Dripped Blood』である。


  ジェイムズは80年代後半に短期間ダムドを再結成し、2022年には英国での一連のライヴのために再びダムドを再結成した。 ギタリストのフェイスブックに掲載された声明全文は、彼のキャリアを次のように要約している。


  音楽界の真のパイオニアのひとりであり、ギタリスト、ソングライター、そして真の紳士であるブライアン・ジェームスの死を、大きな悲しみとともにお知らせします。 ダムドの創設メンバーであり、史上初のUKパンク・シングル「ニュー・ローズ」の作者であるブライアンは、1977年2月にリリースされたバンドのデビュー・アルバム『ダムド・ダムド・ダムド』の主要ソングライターだった。 


  ニック・メイソンがプロデュースしたセカンド・アルバム『ミュージック・フォー・プレジャー』のリリース後にダムドと袂を分かったブライアンは、短命に終わったタンツ・デル・ユースを結成し、その後、友人でロッカー仲間のスティヴ・ベイターズとザ・ローズ・オブ・ザ・ニュー・チャーチを結成した。


  ブライアン・ジェイムズとスティヴ・バトルスという興奮の波の中で、ロード・オブ・ザ・ニュー・チャーチは3枚のスタジオ・アルバムを成功させ、"Open Your Eyes"、"Dance with Me"、"Method to My Madness "といったシングルを生み出した。

 

   常に新たな挑戦を求め、様々なミュージシャンとの共演に意欲的だったブライアンは、その後数年間、ザ・ドリッピング・リップスを結成し、様々なレコードにゲスト参加する一方、ブライアン・ジェームス・ギャングを結成し、ソロ・アルバムに取り組んだ。


  ブライアンは、60年以上に及ぶキャリアの中で、その音楽は映画やテレビのサウンドトラックを飾り、ザ・ダムドやロード・オブ・ザ・ニュー・チャーチに加え、イギー・ポップからウェイン・クレイマー、スチュワート・コープランドからチーター・クロームまで、パンクやロックンロールの最高峰と数多く共演した。


  最近では、エポックメイキングな「New Rose」のリリースから40年以上を経て、ダムドのオリジナル・メンバーが2022年に一連の特別で感動的なイギリス公演のために再結成した。妻のミンナ、息子のチャーリー、そして義理の娘のアリシアのそばで、ブライアンは2025年3月6日木曜日に静かに息を引き取った」


  ダムドはデイヴ・ヴァニアン、キャプテン・センシブル、ラット・スカビーズ、ポール・グレイ、モンティ・オクシモロンというラインナップでツアーを続けている。この投稿の時点では、バンドはジェームスの死去に関する声明を発表していません。


▪️The Damnedの作品の詳細についてはUKパンクの名盤ガイドをご覧下さい。

 

©︎Steve Gullick

イギリス・クルーの4人組、UNIVERSITYが生々しい衝動的なパンクロックソング「Massive Twenty One Pilots Tatoo」をトランスグレッシヴからリリースした。 オールドスクールの荒削りなパンクロックソング。バンドの生々しい生命力の表れ。(楽曲のストリーミングはこちらから)


ニューシングルは、バンドとKwes Darko(Slowthai、Overmono)、Andrea Cozzaglio(Inhaler、Beebadoobee)の共同プロデュースによる楽曲である。

 

「世界で最悪のタトゥーは何だろう」というゲームから名付けられた。ヘヴィでハードコアなサウンドはそのままに、「Massive Twenty One Pilots Tattoo」は、広大で煽情的なパンク・ロックの中に、よりソフトで明瞭な音楽の瞬間を切り取っている。


 
UNIVERSITYはザック・ボウカー(ヴォーカル/ギター)、ユアン・バートン(ベース)、ドラマーのジョエル・スミス、エディ(マスコット)の4人で結成された。無粋なユーモアは、彼らの音楽に溶け込んでいる。レーベルと契約し、「ビジネス面 」に真剣に取り組んだ後、彼らは自分たちの音楽をより過激に、より不条理な場所へと押し進めることで、この大人びた態度を相殺することにした。バンドは、自分たちの最も奇妙で滑稽な衝動を信じようと決意している。


 

2023年5曲入りのデビューEP『Title Track』には、「King Size Slim」、「Notre Dame Made Out Of Flesh」、「Egypt Tune」が収録されている。

 

『タイトル・トラック』は、その揺るぎない爆発的なサウンドとエネルギーが評価され、Dork誌は「ノイズ・パンク界で最も有望な新人バンドが放つ暴動的な耳の虫」、NME誌は「今年聴いたことのないエネルギーの爆発」と評した。

 

UNIVERSITYはこれまでに魅力的なライブイベントに出演してきた。グレート・エスケープ、グリーン・マン、エンド・オブ・ザ・ロード、ミューテーションズ・フェスティバル、ピッチフォーク・フェスティバル・パリ。そして、最近ではカーディフのSWNフェスティバルとブリクストンのインディペンデント・ヴェニュー・ウィークのザ・ウィンドミルに出演し、フェスティバルのサーキットを切り拓いてきた。

 

この若きカリスマは、テキサス州オースティンで開催される今年のSXSWに複数回出演するほか、4月10日にはサード・マン・レコードのザ・ブルー・ベースメントでロンドン公演を行う。 

 

 

 「Massive Twenty One Pilots Tatoo」(*センシティブな表現があるのでご視聴の際はご留意下さい)

 

 



サンタクルーズのニュースクール・ハードコアバンド、Scowl。この五人組はターンスタイルに続く、今最もホットなパンクアウトフィットとして名乗りを上げている。すでに北米の大規模なパンクフェスにも出演済みであるが、知名度という側面で懸念があった。しかし、彼等は名門レーベル、デッド・オーシャンズとの契約を経て、世界規模のバンドへと成長しつつある。

 

先月、Scowlはニューアルバム『Are We All Angels』を発表したのに続いて、本日、最新曲 「Tonight (I'm Afraid) 」を配信した。ボーカリストのモスのボーカルとスクリームが混在した次世代のハードコアナンバー。彼等の音楽的なアプローチには90年代のミクスチャーロックやヘヴィーロックも含まれているが、現代的なハードコア/メタルの要素がそれらにアンセミックな要素をもたらしている。この先行シングルは従来の中で最も重力を持ったトラックである。

 

「Tonight (I'm Afraid) "は、アンセミックなコーラスとパンチの効いたベースライン、そしてキャット・モスの直感的なスクリームによってドライブされる、スカウルの最も繊細な一面を垣間見ることができる。この曲は、AdultSwim.comのクリエイティブ・ディレクターであるアダム・フックスがイラストを手掛けたフリップブックのMVと同時に到着した。この曲は、これまでのシングル 「B.A.B.E」、「Not Heaven, Not Hell」、「Special」 に続いて配信された。


最新プロジェクト『Psychic Dance Routine EP』を手掛けたウィル・イップ(Turnstile、Title Fight、Mannequin Pussyなど現代のUSパンクハードコアの錚々たるバンド)がプロデュースした『Are We All Angels』は、毒舌で拮抗的なバンドが、自分たちの攻撃性をより拡大した形で表現している。

 

アルバムのミックスはリッチ・コスティ(フィオナ・アップル、マイ・ケミカル・ロマンス、ヴァンパイア・ウィークエンドなど)が担当。 このアルバムは、疎外感、悲嘆、そしてコントロールの喪失が特徴的で、その多くは、過去数年間バンドを受け入れ、彼らを避雷針のような存在にしたコミュニティであるハードコア・シーンにおける彼らの新たな居場所と格闘している。


Are We All Angels』では、バンドはあらゆる場面で野心的な新しい方向性を模索し、ジャンルの常識を曲げている。モスの進化が最も顕著に表れているのは、バンドの前作にあった唸らせるようなサウンドをやめ、より質感のある、時には繊細なアプローチに変えていることだ。彼女は、熱心なスカウルファンをも驚かせるハーモニーとメロディックな感性を発揮している。

 

モスは、ビリー・アイリッシュからレディオヘッド、カー・シート・ヘッドレストからジュリアン・ベイカーまで、ハードロック以外の幅広い影響を受けている。「このバンドが始まったとき、私たちの大半は本当にミュージシャンとして熟練していなかった」と彼女は認めている。

 

赤ちゃんの最初のハードコアバンドのようなものだった。でも今は、自分たちが何をやっているのかまだわからないけれど、自分たちが何をしたいのかよくわかるようになった。

 

ツアー経験を経て、演奏面でも洗練され、原石がダイヤモンドになりつつある。インストゥルメンタルの面では、Negative Approach、Bad Brains、Hole、Mudhoney Garbage、Ramones、Pixies、Sonic Youth、Rocket From The Cryptなどからの影響を挙げている。ベーシストのベイリー・ルポは、「新譜の曲作りは、これまでのスカウルの歴史の中で最も協力的だった。

 

みんながたくさんのアイデアを持ち寄ってくれて、それをじっくり分析することができた。私たちは皆、折衷的な嗜好、影響、個性を持っていて、このアルバムの隅々までそれを感じることができるはずだ。


「Tonight(I'm Afraind)」


カナダのパンクバンド、PUPが5thアルバム『Who Will Look After The Dogs?』のリリースを発表した。

 

PUPは、ステファン・バブコック、ネスター・チュマック、ザック・マイクラ、スティーヴ・スラドコウスキーからなる。彼らは、『The Unraveling Of PUPTHEBAND』に続く作品を5月2日にLittle Dipper / Rise Recordsからリリースする。

 

彼らはまたニューシングル『Hallways』のプレビューを行い、ステファン・バブコックがその裏話を語っている。

 

偶然にも『The Unraveling Of PUPTHEBAND』というタイトルの前作を発表した数日後、私の人生は予期せず崩壊した。

 

『Hallways』の歌詞を書いたのは、そんなことが起こっている最中だった。 奇妙な1週間だった。 『Who Will Look After The Dogs? 』というタイトルは破壊的だと思うけど、”なんてこった、これは大げさなんだ!”という感じだ。 少なくとも、その前の行の文脈から見ればね。 それが僕らにとっては面白いんだ。

 

私たちが暗いときに言う大げさな言葉も、少し冷静になれば滑稽なものになる。 それを面白ろがる人がいるかどうかはわからないんだけど、時には自分自身を笑うことも必要なんだよ。 それが奈落の底から抜け出す唯一の方法なんだ。 信じてほしい。

 

「Hallways」



PUP 『Who Will Look After The Dogs?』


Label:Little Dipper / Rise Records

Release: 2025年5月2日

1. No Hope

2. Olive Garden

3. Concrete

4. Get Dumber

5. Hunger For Death

6. Needed To Hear It

7. Paranoid

8. Falling Outta Love

9. Hallways

10. Cruel

11. Best Revenge

12. Shut 

 

 

最も冒険的でマキシマムなフルアルバム、2022年の『The Unraveling of PUPTHEBAND』のリリース後、バンドの生活は大きく変化した。ギタリストのスティーヴ・スラドコフスキーは結婚し、ベーシストのネスター・チュマックは父親としての生活に落ち着き、ドラマーのザック・マイクラはトロントの新しい場所に引っ越し、自宅スタジオを拡張することができた。他のメンバーたちが大きな決断を下し、行動を共にする中、バブコックは孤独を感じていた。彼は10年来の交際に終止符を打ち、バンドメンバーとも距離を置いたばかりだった。

 

「レコードを作っているときは仲が悪いから、引きこもりがちになるんだ」とバブコックは言う。「以前は別の人に安らぎを見出したものだが、今回は一人だった。退屈で寂しかったから、ただひたすら曲を書き始めたんだ」。以前のアルバムでは、12曲を完成させるのに2〜3年かかったが、『Who Will Look After The Dogs?』では一年で30曲をスピーディーに書き上げた。

 

作曲中、バブコックには内省する時間があり、もしかしたら成長したかもしれない。「初期の曲の多くは、自分がいかにダメな人間であるかを歌っていた。「それは今でも変わらないけど、若い頃ほど自分を嫌いになることはなかったし、周りの人たちもありのままの自分を受け入れてくれた。PUPの前作がバブコックの人生の6ヵ月を覗く窓のような役割を果たしたのに対し、このアルバムでは彼の恋愛関係、交友関係、そして若い頃から現在に至るまでの自分自身への接し方を全体的に捉えている。ある意味、このアルバムを書くことは、彼の心の成長を映し出す鏡のような役割を果たした。それは大変で、時には最悪だったが、最終的にはそれだけの価値があった。
 

彼らはアルバム全体を3週間でレコーディングした。『The Unraveling of PUPTHEBAND』を作るのにかかった時間の半分以下だ。「このアルバムのために歌詞を書き始めたとき、すべてが本当に重く感じられた」とバブコックは言う。

 

「レコーディングする頃には、暗い曲でさえ軽くて楽しいものに感じられた。このアルバムを作っている間は、喧嘩もしなかった。すべてがクソ素晴らしい感じだった」

 

 

【PUP — 2025 Tour Dates】

 
05/07/25 – Birmingham, UK @ XOYO Birmingham*&
05/08/25 – Leeds, UK @ Project House*&
05/10/25 – Manchester, UK @ O2 Ritz*&
05/11/25 – Glasgow, UK @ SWG3 (TV Studio)*&
05/12/25 – Newcastle, UK @ Newcastle University*&
05/13/25 – Bristol, UK @ Marble Factory*&
05/15/25 – Southampton, UK @ Engine Rooms*&
05/16/25 – London, UK @ O2 Forum Kentish Town*&
05/18/25 – Amsterdam, NL @ Melkweg*
05/20/25 – Cologne, DE @ Club Volta*
05/21/25 – Hamburg, DE @ Logo*
05/22/25 – Berlin, DE @ Hole44*
05/23/25 – Munich, DE @ Strom*
05/25/25 – Paris, FR @ Bellevilloise*
05/27/25 – Madrid, ES @ Sala Mon
05/28/25 – Barcelona, ES @ Upload
05/29/25 – València, ES @ Loco Club
05/30/25 – San Sebastian, ES @ Dabadaba



* support from Illuminati Hotties
& support from Goo

  Lambrini Girls 『Who Let The Dogs Out』

 

Label: City Slang

Release: 2025年1月10日


Listen/Download


Review


ブライトンのノイズパンクデュオ、ランブリーニ・ガールズのデビュー・アルバム『Whor Let The Dog Out』は年明け早々、痛撃だったと言える。デビュー・アルバムらしからぬ完成度、あるいはデビューアルバムらしい初期衝動を収めこんだ正真正銘のハードコア・パンクアルバムとなっている。ランブリーニ・ガールズこと、フィービー(ボーカル)、リリー(ベース)は、Banksyという謎めいたドラマーとレコーディングに挑んでいる。ランブリーニ・ガールズはライオット・ガールパンクの先駆者的な存在、Bikini Kllを聴いて大きな触発を受けたという。そして、彼女たちもまた次世代のライオット・ガールのアティテュードを受け継いでいるのは間違いない。

 

プレスリリースでは、すでに家父長制度や女性に対する性的搾取など、現代の社会が抱える病理のようなものに対し唾を吐きかける。吐きかけるというのは、実際的に、ランブリーニ・ガールズのボーカル(実際にはスポークンワードとスクリームによる咆哮)にはっきりと乗り移り、すさまじい嵐のようなハードコアサウンドが疾駆する。実際的には、ランブリーニガールズのパンクは、現在のポスト・パンクの影響がないとも言いがたいが、Gorlilla Biscuits、Agnostic Frontといったニューヨークのストレート・エッジがベースにありそうだ。ゴリゴリというべきか、無骨なパンクサウンドは、ベースとギターの唸るようなハイボルテージにより、地獄の底から業火が吹き上がるようなサウンドがオープナー「Bad Apples」から炸裂する。ランブリーニ・ガールズは実際的なサウンドにとどまらず、ウィットに富んだ表現を兼ね備えている。さらにタブーをタブとも思わない。続く「Company’s Culture」において悪しき企業文化(どのような国家にも存在する)をチクリとやり、オフィスで性的な視線を向ける男性社員をシニカルに描写し、アメリカンコミック的な雰囲気でやり込める。実際的に、バンドの二人はステージでセクハラを受けたこともあるというが、これらもまた人生から引き出された個性的なサウンドである。そしてヴォーカルのフレーズごとに抑揚を変化させ、怒りを巧みに表現する。



ランブリーニ・ガールズは、ウィットとユーモアも忘れていない。「Big Dick Energy」は、下卑た笑いを湧き起こすが、実際的に風刺的なシニカルさは乾いたような笑いを巻き起こす。しかしながら、両者は、パンクという枠組みの中で、空想や絵空事を描こうというのではない。実際的な恐怖や腐敗、退廃等を相手取り、それらに痛快な一撃をお見舞いする。それらはオールドスクール・ハードコアの領域に属した荒削りなパンクソングーーBad Brains、Gorlilla Biscuitsーーといった原初的なハードコアパンクのイディオムの中で繰り広げられる。そのサウンドは、Black Flagのようなカルフォルニアパンクの元祖から、ストレイトエッジの原点に迫る場合もあり、このジャンルの祖であるTeen Idlesのような衝動に任せたパンクソングが組み上がる。Bad Religionのように政治的でないがゆえ、むしろ直情的なパンクとも言える。しかし、曲の途中では、スポークンワードというよりも、ステートメントのように変わるのも面白い。フィービーはヴォーカルの性格を曲の途上でたえず変化させ、別人のように変わることもある。

 

 

パンクソングという側面から見ると、Bikini Killの系譜にある「No Homo」もかなり楽しめるはずだ。カルフォルニアパンクの文脈を受け継いだ上で、同じ海岸沿いという都市の性質を活かし、それを見事にブライトン一色に染め上げる。この曲では、彼女たちはパンクというよりも、それ以前のロックンロール性に照準を絞り、タイトなロックソングに昇華している。ギターのプレイに関しては、グレッグ・ギンの系譜にあり、スリーコード中心であるが、ザラザラとした音作り、分厚い音像を徹底的に突き出し、ライブサウンドに相応しいサウンドを創り出す。ライブアクトとして国内で旋風を巻き起こしているランブリーニガールズの象徴的なトラックと言える。中盤でも、モチベーションを保持しながら、バランスの取れたサウンドで勢いを維持している。特に、「You're Not From Around Here」はロックソングとして聴いてもかっこいいし、ライブでも映えるようなナンバーであると思う。ローファイの側面を強調した分厚いギターで始まり、ハイハットの裏拍の強調により、この曲は見事なほどまでにドライブ感を増す。さらに、それらのサウンドにフィービーのボーカルは引けを取らない迫力で聴覚を捉える。

 

全般的にはオールドスクールハードコアをベースにしたサウンドであるが、「Filthy Rich Nepo Boy」は、どちらかといえば、メタルをクロスオーバーさせたニュースクールハードコアに属する。基本的には、オールドスクールとニュースクールの相違点は、縦ノリか横ノリかという違い、もしくは観客のダンスという点でモッシュ的な動きか、腕を振り回しながら踊るという違いでしかないが、ここではカオティックハードコアの系譜を踏まえ、これらの二つの乗りを同期させ、曲の構成ごとに異なるビート感覚を組み上げる。これらはむしろ、ストップ&ゴー(ブレイクを挟んで早いテンポに変わる)が満載だったストレイトエッジのサウンドの次世代の象徴とも成りうる。表面上はストレートで直情的なようでいて、入念にサウンドが作り込まれているのに驚き。さらに不協和音を生かしたギターはグレッグ・ギンに匹敵するかっこよさ。

 

ランブリーニ・ガールズにとって「ノイズ」というのは、この世に蔓延る仕来り、倫理観、常識といった道徳とは正反対にある概念に対する違和感である。それらが内側に蓄積され、そしてそれらが長いあいだ堆積を経たのち、怒りによってメラメラと燃えあがると、表面上にハードコア・パンクという形で現出することになる。ノイズ、軋轢、退廃、アナーキズムといったパンクの原初的なイデアを濾過し、現代的な感覚に置き替えたともいえるだろう。アルバムの終盤にも興味をひかれる曲が満載となっている。「Special Different」ではランブリーニ・ガールズが他の並み居るバンドとは一線を画すことを示し、最初期のデイヴ・ムスティンのようなスラッシーでメタリックなサウンドが炸裂。この瞬間、多くの現代のパンクバンドが見失いかけていた”重力”をランブリーニ・ガールズは手中に収めることになった。これらのヘヴィネスは、アルバムの終盤でも維持され、そしてやはり十分な勢いを保ったまま突き進んでいく。「Love」はニューメタルの代名詞的なトラックで、今後のランブリーニの布石となりそうだ。デュオは、ニューメタルの止まりかけた時計の針を一秒だけすすめ、去り際に痛烈なポストメタルソングをリスナーにお見舞いする。最後はエレクトロポップな感じでサラッと終わるのも◎。

 

 

 

85/100

 


Best Track 「You're Not From Around Here」


新年の幕開けとして、ポリヴァイナルは、シカゴのインディーズシーンの重要なバンドであり、また、エモコアの源流を形作ったキャップン・ジャズのアルバム『ブリトー』、『インスピレーション・ポイント』、『フォーク・バルーン・スポーツ』、『カード・イン・ザ・スポークス』、『オートマティック・バイオグラフィー』、『カイト』、『カンフー』、『トロフィー』、『バナナの皮で滑った』、『卵の殻をつま先で踏んだ』(愛称:シュマップン・シュマッツ)の30周年記念ヴァイナル・リイシューを発表する。


この新しいプレス盤は、レコードのオリジナル・テープから制作されたリマスター・オーディオをフィーチャーし、その影響力のあるサウンドをレコードに蘇らせた。


1991年、シカゴ郊外に住む4人の子供たち、ティム&マイク・キンセラ兄弟、ヴィクター・ヴィラレアル、サム・ズリックがキャップン・ジャズを結成した。その3年後、デイヴィ・フォン・ボーレンの助けを借りて、エモ・カルテットは唯一のフル・アルバムをレコーディングした後、解散した。


昨年ラスベガスで開催されたベスト・フレンズ・フォーエヴァー・フェスティバルでの砂漠での記念すべき再結成に続き、バンドは今年プリマベーラ・サウンド・バルセロナとポルトのステージに戻ってくる予定だ。


元々Man With GunレーベルからリリースされたShmap'n Shmazzは、バンド解散後すぐに廃盤となり、最終的に1998年にJade Tree RecordsからリリースされたAnalphabetapolothologyコンピレーションに収録された。


オープニング・トラックの「Little League」で聴ける比類なき激しさと、エキセントリックで詩的な歌詞が相まって、この象徴的なアルバムはリリース以来、数え切れないほどのアーティストに影響を与えてきた。ピッチフォークはこのアルバムを「中西部エモの試金石」と呼び、ヴァルチャーは「史上最も偉大なエモ100曲」の第3位に「リトル・リーグ」を選んだ。ミュージシャンのデヴェンドラ・バンハートは、2017年のジョーン・オブ・アークのドキュメンタリーでバンドへの愛を表明し、ティムの力強く印象的なヴォーカルを 「動物園にクアールードを飲みに行くが、他の動物はみんなスピードに乗っている 」ようだと表現した。


バンドの影響力のある遺産に加え、キャップンジャズは、アメリカン・フットボール、オーウェン、バースマーク、ジョーン・オブ・アーク、オウルズ、プロミス・リング、メイク・ビリーヴ、ゴースト・アンド・ウォッカなど、オリジナル・メンバーを擁する他の著名なバンドの結成のきっかけとなった。


昨年、キャップンジャズは、キンセラ兄弟を交えてシカゴでライブ活動を始めており、ヨーロッパツアーを計画している。2025年に本格的な活動を開始すると言う話も。いずれにしても続報に期待したい。



Cap N' Jazz   「Shmap'n Shmazz」(Burritos, Inspiration Point, Fork Balloon Sports, Cards in the Spokes, Automatic Biographies, Kites, Kung Fu, Trophies, Banana Peels We’ve Slipped on, and Egg Shells We’ve Tippy Toed Over)



Tracklist


1. Little League

2. Oh Messy Life

3. Puddle Splashers

4. Flashpoint: Catheter

5. In The Clear

6. Yes, I am Talking to You

7. Basil's Knife

8. Bluegrassish

9. Planet Shhh

10. Precious

11. ¡Qué Suerté! 

 Fucked Up 『Someday』

 

Label: Fucked Up Records

Release: 2024年11月1日

 


Review

 

カナダ・トロントの伝説的なハードコアバンド、Fucked Upは、一日で録音された『One Day』、今夏に発売された『Another Day』に続いて、『Someday』で三部作を完結する。今作は、エレクトロニックとハードコアを融合させた前二作の音楽性の延長線上に属するが、他方、ハードコアパンクのスタンダードな作風に回帰している。

 

それと同時に、ボーカルの多彩性に関しても着目しておきたい。例えば、『One Day』と同じように、ハリチェクがリードボーカルを取っている。4曲目の「I Took My Mom To Sleep」ではトゥカ・モハメドがリードボーカルを担当している。他にも、8曲目では、ジュリアナ・ロイ・リーがリードボーカルを担当。というように、曲のスタイルによって、フォーメーションが変わり、多彩なボーカリストが登場している。従来のファックド・アップにはあまりなかった試みだ。

 

アルバムの冒頭では、お馴染みのダミアン・アブラハムのストロングでワイルドなボーカルのスタイルが激しいハードコアサウンドとともに登場する。しかし、そのハードコアパンクソングの形式は一瞬にして印象が変化し、バンドの代名詞である高音域を強調した多彩なコーラスワークが清涼感をもたらす。バンドアンサンブルのレコーディングの音像の大きさを強調するマスターに加え、複数のコーラス、リードボーカルが混交して、特異な音響性を構築する。少し雑多なサウンドではあるものの、やはりファックド・アップらしさ満載のオープニングである。


また、従来のように、これらのパンクロックソングの中には、Dropkick Murphysを彷彿とさせる力強いシンガロングも登場する。2010年代からライヴバンドとして名をはせてきたバンドの強烈かつパワフルなエネルギーが、アルバムのオープニングで炸裂する。しかし、今回のアルバムでは、単一の音楽性や作曲のスタイルに依存したり固執することはほとんどない。目眩く多極的なサウンドが序盤から繰り広げられ、「Grains Of Paradise」では、ボブ・モールドのSugarのようなパンクの次世代のメロディックなロックソングをハリチェクが華麗に歌い上げている。一部作『One Day』の9曲目に収録されている「Cicada」で聴くことができた、Sugar,Hot Water Musicのメロディックパンクの原始的なサウンドが再び相見えるというわけなのである。

 

一見すると、ドタバタしたドラムを中心とする骨太のパンクロックアルバムのように思えるが、三曲目の後、展開は急転する。アナログのディレイを配した実験的なイントロを擁する「I Took My Mom To Sleep」では、ガールズパンクに敬意を捧げ、トゥカ・モハメドがポピュラーかつガーリーなパンクを披露する。察するに、これまでファックド・アップがガールズ・パンクをアルバムの核心に据えた事例は多くはなかったように思える。そしてこの曲は、バンドのハードコアスタイルとは対極にある良質なロックバンドとしての性質を印象付ける。また、2000年代以前の西海岸のポップパンクを彷彿とさせるスタイルが取り入れられているのに驚く。さらに、アルバムはテーマを据えて展開されるというより、遠心力をつけるように同心円を描きながら、多彩性を増していく。それはまるで砲丸投げの選手の遠心力の付け方に準えられる。

 

「Man Without Qualities」は、ロンドンパンクの源流に迫り、ジョン・ライドンやスティーヴ・ジョーンズのパンク性ーーSex PistolsからPublic Image LTD.に至るまで--を巧みに吸収して、それらをグリッターロックやDEVOのような原始的な西海岸のポスト・パンクによって縁取っている。彼らは、全般的なパンクカルチャーへの奥深い理解を基に、クラシカルとモダンを往来する。

 

最近では、米国やカナダのシーンでは、例えば、ニューメタル、メタルコア、ミクスチャーメタルのような音楽やコアなダンスミュージックを通過しているためなのか、ビートやリズムの占有率が大きくなり、良質なメロディック・ハードコアバンドが全体的に減少しつつある。しかし、ファックド・アップは、パンクの最大の魅力である旋律の美麗さに魅力に焦点を当てている。「The Court Of Miracles」では、二曲目と同じように、Sugar、Husker Duのメロディック・ハードコアの影響下にある手法を見せ、それらをカナダ的な清涼感のある雰囲気で縁取っている。

 

ミックスやマスターの影響もあってか、音像そのものはぼんやりとしているが、ここでは、アブストラクト・パンク(抽象的なパンク)という新しい音楽の萌芽を見て取ることも出来る。つまり、古典的なパンクの形式を踏襲しつつ、新しいステップへと進もうとしているのである。そして、パンクバンドのコーラスワークという側面でも、前衛的な取り組みが含まれている。

 

例えば、続く「Fellow Traveller」は、メインボーカルやリードボーカルという従来の概念を取り払った画期的な意義を持つ素晴らしい一曲である。この曲では、ファックド・アップのお馴染みのストロングでパワフルな印象を擁するパンクロックソングに、ライブステージの一つのマイクを譲り合うかのように、多彩なボーカルワークが披露されるのである。いわば、この曲では、バンドメンバーにとどまらず、制作に関わる裏方のエンジニア、スタッフのすべてが主役である、というバンドメンバーの思いを汲み取ることが出来る。これはライヴツアー、レーベル、業界と、様々な側面をよく見てきたバンドにしか成し得ないことなのではないかと思われる。


そして、全般的なパンク・ロックソングとして聴くと、依然として高水準の曲が並んでいる。彼らは何を提示すれば聞き手が満足するのかを熟知していて、そして、そのための技術や作曲法を知悉している。さらに、彼らは従来のバンドの音楽性を先鋭化させるのではなく、これまでになかった別の側面を提示し、三部作の答えらしきものを導き出すのである。音楽はときに言葉以上の概念を物語ると言われることがあるが、このアルバムはそのことを如実に表している。

 

「In The Company of Sister」は報われなかったガールズパンクへの敬愛であり、それらの失われた時代の音楽に対する大いなる讃歌でもある。パンク・シーンは、80年代から女性が活躍することがきわめて少なかった。Minor Threatの最初期のドキュメンタリー・フィルム等を見れば分かる通り、唯一、アメリカのワシントンD.C.の最初期のパンクシーンでは、女性の参加は観客としてであった。つまり、パンクロックというのは、いついかなる時代も、マイノリティ(少数派)を勇気づけるための音楽であるべきで、それ以外の存在理由は飽くまで付加物と言える。近年、女性的なバンドが数多く台頭しているのは、時代の流れが変わったことの証ともなろう。

 

ファックド・アップは、いつも作品の制作に関して手を抜くことがない。もちろん、ライヴに関してもプロフェッショナル。一般的なパンクバンドは、まずこのカナダのバンドをお手本にすべきだと思う。「Smoke Signals」では軽快なパンクロックを提示した上で、三部作のクライマックスを飾る「Someday」では、かなり渋いロックソングを聴かせてくれる。このアルバム、さらに、三部作を全て聴いてきた人間としては、バンドの長きにわたるクロニクル(年代記)を眺めているような不思議な感覚があった。 ということで、久しぶりに感動してしまったのだ。

 

 

 

88/100

 

 

 




◾️ 【Review】  FUCKED UP 『ONE DAY』



Ekko Astralは、ボーカル/ベースのJael HolzmanとドラマーのMiri Tylerが、アメリカ人ユダヤ人としてイスラエルがパレスチナに対して過去1年間行ってきた恐ろしい暴力を目撃した経験について書いた6分半の新曲とビデオ「Pomegranate Tree」をリリースした。プレスリリースの中で、ミリはこう語っている。


幼い頃のコミュニティの象徴が大量虐殺の象徴に変貌するのを見たり、かつて尊敬していた人々が過激な右翼政府の行動を擁護するのを見るのは、疲れるほど心が痛みます。ジャエルと私はアメリカでユダヤ人として育った。私たちには義務がある "祖国 "があると教えられた。それ以前にそこに住んでいた人間については教えられなかった。私たちは勝利を祝うことを教えられた。私たちは単に、彼らが私たちを憎んでいると教えられた。この暴力は正義だと教えられた。ホロコーストのユダヤ人生存者を含む世界中の専門家が、IOFが行っている暴力はまさに大量虐殺であると認めている。そして、こうした残虐行為が私たちの信仰、文化、コミュニティの名のもとに行われているという事実は、私たちを夜も眠らせないのに十分なものだ。



 

Scowl
Silken Weinberg


サンタ・クルスのパンク・グループが名門インディーレーベルと契約を発表した。Scowlは、Dead Oceansとの契約発表に伴い、新曲「Special」をリリースした。この曲はウィル・イップがプロデュースし、リッチ・コスティがミックスした。この曲のビデオを以下でチェックしよう。


「もともと(ギタリストの)マラチ(・グリーン)がデモを送ってきたのは、僕らがUKツアーをしている時だった」とボーカルのキャット・モスはプレスリリースで説明している。「コール(・ギルバート)がドラムでフレアを加え、(ベーシストの)ベイリー(・ルポ)がブリッジを担当し、最後に(ギタリストの)マイキー(・ビフォルコ)がリードを作った。


「『スペシャル』は神風だ。歌詞の内容は、自分自身の「本当は何が欲しいんだ」という問いに答えるために、明らかに絶望しながら「本当は何が欲しいんだ」と問いかけて聴衆を脅すというもの。でも、答えは簡単だ。"生きていることを実感したいんだ」

 


「Special」




©Jessie Cowan

名門パンクレーベル、Epitaphに所属するカルフォルニアのティーネイジ・パンクの注目株、The Linda Lindas(ザ・リンダ・リンダス)は、新作アルバムの撃鉄ハードコア・ナンバー「No Obligation」を公開した。

 

ライオット・ガールとしてのパンク・スピリットは以前より迫力味を増し、ボーカルのエッジはこれまでになく激烈。リンダリンダズのサウンドは、デビュー当時のガレージパンクのテイストを残しつつも少しずつ変化してきていて、いよいよファストコアやストレートエッジのハードコアパンクに近づきつつある。前のめりな勢い、気忙しい焦燥感、渦巻くようなエナジー。これらは若いパンクバンド特有の魅力でもあろう。


さらに、今回のアルバムのニューシングルでは、サーフロックの影響に加えて、Dead Kennedysのジェロ・ビアフラのボーカルに比する不敵なアジテーションを纏う。タイトル曲は紛うことなきカルフォルニアのパンクロックであり、The Linda Lindasのベストトラックの一つに挙げられる。

 

この曲は、"Weird Al" Yankovicをフィーチャーした前作「All In My Head」と「Yo Me Estreso」に続いてストリーミング配信された。ライブツアーの映像を収録したミュージックビデオは以下からご覧ください。


The Linda Lindas(ザ・リンダ・リンダズ)はプレスリリースの中で「No Obligation」について次のように語っている。

 

「私たちは義務で音楽を作っているのではなくて、愛で音楽を作っています。そして、日本に行って、少年ナイフのナオコを含むチームとミュージックビデオを制作したように、音楽が与えてくれた全ての機会に心から感謝しています! お楽しみに!!」

 

The Linda Lindas(ザ・リンダ・リンダズ)の新作アルバム『No Obligation』はエピタフから10月11日に発売予定。



「No Obligation」

 

 

◾️THE LINDA LINDAS    ニューアルバム『NO OBLIGATION』を発表 エピタフから10月11日にリリース

 

Amyl & the Sniffers

Amyl & the Sniffers(アミル&ザ・スニッファーズ)は、10月25日にラフ・トレード・レコードからリリースされる3作目のアルバム『Cartoon Darkness』を発表した。このアルバムには、以前シェアされたトラック「U Should Not Be Doing That」とニューシングル「Chewing Gum」が収録されている。アルバムの詳細は以下から。


「Chewing Gum' 」についてエイミー・テイラーはこう語っている。


「人生の逆境とは、決して満たされることのない欲望です。皿洗いをしながらも、決して食事をすることはなく、近くにいながら決して十分ではなく、若さという無知を奪われながらも、それを謳歌しようとする。喜びに身を委ね、ビジョンに身を委ね、自分自身の力で、論理ではなく感情に基づいて決断を下すことが解放につながるからだ。外的な地獄にもかかわらず、炎をくぐり抜け、無傷で立ち去る。人生は仕事であり、人生は自由ではない。最終的なゴールが存在しない以上、十分に働くことはできない」


2021年の『Comfort to Me』に続くこの作品は、2024年初頭にロサンゼルスのフー・ファイターズの606スタジオで、プロデューサーのニック・ロウネイとともにレコーディングされた。カートゥーン・ダークネス』は、気候危機、戦争、AI、政治という卵の殻の上でつま先立ちをすること、そして、現代の神であるビッグ・テックのデータ獣を養っているだけなのに、オンラインで声を上げることで助けているように感じる人々について歌っているんだ」とテイラーは説明した。「私たちの世代は、匙で情報を与えられている。私たちは大人のように見えるが、いつまでも殻に閉じこもった子供なのだ。私たちは皆、受動的に、喜びや感覚や喜びを引き起こすこともなく、ただ無感覚を引き起こすだけの気晴らしを飲み込んでいる」


彼女は続けた。「カートゥーン・ダークネスは、未知の世界へ、恐ろしいと感じながらもまだ存在すらしない、迫り来る未来のスケッチへと真っ向から突っ込んでいく。子供のような闇。中途半端に悪魔に会ったり、今あるものを嘆いたりしたくない。未来は漫画であり、処方箋は暗いが、それは斬新なものだ。ただのジョークだ。ジョークだ」


「Chewing Gum」




Amyl & the Sniffers 『Cartoon Darkness』


Label: Rough Trade
Release: 2024年10月25日


Tracklist:

1. Jerkin’
2. Chewing Gum
3. Tiny Bikini
4. Big Dreams
5. It’s Mine
6. Motorbike Song
7. Doing In Me Head
8. Pigs
9. Bailing On Me
10. U Should Not Be Doing That
11. Do It Do It
12. Going Somewhere
13. Me And The Girls

 

©Jessie Cowan


Epitaphが送り出す若きティーンネイジャー・パンクバンド、The Linda Lindasは、学校の授業や宿題の合間にソングライティングやライブ活動をこなし、若きパワーでパンクシーンに活力をもたらす。パンクバンドという触れ込みで紹介されるが、ロック性に魅力があるのは明らかだ。

 

米国のテレビ番組への出演、サマーソニックへの出演等、国内外問わずワールドワイドな活躍をする。デトロイトのNikki & Corvettes、ニューヨークのBlondie、ロサンゼルスのL7といった新旧のガールズバンドの系譜に属するリンダ・リンダズは、商業音楽のライオット・ガールとしての重要な一面を受け継ぎながら、軽快なカルフォルニアのパンクサウンドのおおらかさで包み込む。そのキャッチーなソングライティングは幅広い年代層のリスナーに支持されている。



デビュー・アルバムでの初々しさや衝動性、そして荒削りさは、続くセカンド・アルバムでは「パンクバンドとしての大胆不敵さ」に変化するかもしれない。少なくとも、四人組が新しいフェーズに差し掛かったことを意味している。今年の秋に発売される次回作『No Obligation』からのセカンドシングル「Yo Me Estreso」は、ウィアード・アル "ヤンコヴィックをアコーディオンでフィーチャーしている。リンダ・リンダズらしいフックがあり、そして骨太なギターリフに加えて、彼女たちのもうひとつのルーツであるスペイン語のシラブルを交えて、ワルツのリズムをベースに、ティーンネイジャーらしい楽しさをロックソングにより全身全霊で表現する。


「"Yo Me Estreso "は、いつもストレスがあり、いつも不安で本当は怒っていないのに人が怒っていると思っていることについて。この曲は、コリージョス・トゥンバドス、バンダ、デュランゲンセを聴いてインスピレーションを受け、それを自分たちのパンク・スタイルで作った」という。


The Linda Lindasの次作アルバム『No Obligation』は10月11日にエピタフからリリースされる。

 


「Yo Me Estreso」