現代シューゲイズ・リバイバル 重要アーティスト

シューゲイズ・ドリーム・ポップシーンはどのように変遷してきたのか?

 

1980年代のイギリスからはじまったシューゲイズムーブメント。Jesus And Mary Chain、Chapterhouse,My Bloody Valentine、RIDE、Slowdiveという際立ったロックバンドの台頭、またはミュージックシーンでの彼等の華々しい活躍によって、シューゲイザーというジャンルは今日まで多くのリスナー、ミュージシャンを魅了してきました。

近年、十年代のアメリカのインディーズシーンで一時的な盛り上がりを見せていたこのリバイバルの動きが活発になってきています。

2010年代から、ニューヨークには、Wild Nothingというバンドがこのジャンルを掲げて活動してきましたが、あくまで近年までは、一部のコアなファンを対象にしたディレッタンティズムのような見方をされていたように思えます。

ところが、さらに20年代に入ると、どうもミュージック・シーンの風向きが変わってきて、テキサスのリンゴ・デススターをはじめとする、ビルボードチャートの常連になりそうなアーティストが数多く出てきてます。どうやら、この動きは、”Nu Gaze”というふうに海外で称されてるらしい。

ここ、日本では、はっきりとしたムーブメントはなかったように思えるものの、ドリーム・ポップ寄りの音楽というのは、これまでに結構あって、元々は、スーパーカー、サニーデイ・サービスも日本語歌詞でこそあるけれど、このあたりの音楽に影響を色濃く受けたロック/ポップ音楽をやってました。

ここ数年、日本でも、”羊文学”や”揺らぎ”といったロックバンドをはじめ、シューゲイザー寄りの音楽を奏でるバンドが多くなって来ているような印象をうけます。

これから、インディーズだけでなく、メジャーシーンでも、シューゲイザー、ドリームポップのジャンルに属する有名なアーティストの台頭、リバイバル・ムーブメントが日本でも到来しそうな予感があります。今回、このシューゲイザー、ドリームポップというジャンルについて、簡単におさらいしておきたいと思います。

 

1.シューゲイズとは? 

 

そもそも、このシューゲイズ、シューゲイザーというジャンルは、80年代終わりのイギリスで発生したロック音楽のジャンルです。

一般に聞き慣れないこの語「シューゲイズ」の由来は、当時、上記のロックバンド、Jesus And Mary Chain、Chapterhouse,My Bloody Valentine、RIDE、Slowdiveが、きわめて内省的なステージングを行っており、基本的には、ミュージシャンが客席の方に視線を目を向けず、”ステージ上でうつむいて、自分の靴を見つめて演奏する”スタイルから、こんなふうに呼ばれるに至ったようです。

シューゲイズの音楽性としては、ギターの出音という側面において、他のジャンルとは明らかに異なる特徴が見受けられる。

ディストーションエフェクトを深く掛け、そして、その上に、アナログ/デジタルディレイのエフェクトを掛ける。そして、ディストーション・ギターの音を切れ目なく持続させることにより、音像をぼんやりさせる。そして、ギターのピックアップという部位に付属している”トレモロアーム”を活用し、音調(トーン)にうねりを生み、音の揺らぎのニュアンスを最大限に引き出す前衛的な手法を採ったわけです。以前は、ジミ・ヘンドリックスやジェフ・ベックというアーティストが、このトレモロアームを頻繁に活用し、魅力的な音楽を生み出してましたが、演奏時に邪魔になるため、以前ほどは使われなくなり、八十年代のロック・ミュージックシーンで使用するミュージシャンはほぼ皆無でした。近年、このトレモロアームを使用するミュージシャンが徐々に増えてきているように思われます) 

 

つまり、この”シューゲイズ”というジャンルは、激しいディストーションによる轟音性というのが主な音楽性の特徴であって、時に、それは”レイヴミュージック”や”ユーロビート”のようなドラッギーな効果をもたらす音楽であるというように一般的には言われています。 

他のスタンダードなロック音楽よりもはるかにリズム性が希薄という面で、クラブ・ミュージック、取り分けアンビエントの雰囲気に近い。また、その轟音性という特徴において、”アンビエント・ドローン”の先駆けといえるかもしれません。この音楽は、当時、相当、前衛的だったといえ、八十年代のマンチェスターで流行したダンス・ロックムーブメントに飽きてきていた当時のイギリスの音楽愛好家達を魅了したことでしょう。そして、もう一つ、このジャンルの主要な特徴は、轟音フィードバックノイズの中に、甘く切ない陶酔感のあるメロディーがちりばめられていること。

この”甘く切ない旋律”というのが、シューゲイザー・オリジナルムーブメントを牽引したロックバンド、Jesus And Mary Chain、Chapterhouse,Slowdive、Ride、My Bloody Valentineの音楽性の主要要素でした。

そして、このシューゲイズの骨格をなす轟音フィードバックノイズの要素を取り払うと、聞きやすくて、シンプルで、親しみやすい、現在、アメリカのインディーズシーンで流行しているような気配が伺える”ドリーム・ポップ”という、ニューロマンティックに近い雰囲気の音楽が残るわけです。

この”シューゲイザー”というジャンルの中で有名なアルバムは、言うまでもなく、MY Bloody Valentineの「Loveless」1991でしょう。              


My Bloody Valentine 「Loveless」1991

この「Lovelless」という名作は、それまでのマンチェスターシーンのダンスロックを引き継いで、より現代的なアプローチを試みたという点で、非常に画期的な作品でした。長期的な視点でみたセールスとしては大成功を収めたけれども、どちらかと言うなら、瞬時にメガヒットを生み出したというよりか、徐々に、じわじわと、このバンドの作品の本質的な良さが広まっていった現象であったかと思える。そして、このアルバム、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは、イギリスだけにとどまらず、世界のロックシーンの代名詞的存在として一般的に認知されるようになっていく。  

 惜しむらくは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは、この「Loveless」という作品をリリースした後に、長らくシーンから遠ざかり、表舞台から完全に姿を消してしまった。そして、実に、二十二年という長年月の沈黙を破り、2013年の「mbv」で、華々しく復活を遂げるまで、長期間、このシューゲイズ・ムーブメントで最も欠かさざるピース、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインという存在を欠いたまま、イギリスのミュージック・シーンは、空転したような状態で後代に流れていく。

そして、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは、実に、謎に包まれたような神秘的な存在となり、コアなロックファンによって、年代を経るごとに神格化されていった感がある。このあたりに、このシューゲイズという音楽に対して渇望を覚えていたロックファン、後発のミュージシャンに、このシューゲイズという”ジャンル”に対する心残りのような感慨を与えたのでしょう。

つまり、心ゆくまで、このジャンルを味わい尽くせなかった心残りのようなものが、それぞれの、当時の音楽ファン、そして、ミュージシャンにはあったようです。つまり、このシューゲイズというジャンルは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの「Loveless」以外においては、完璧といえる作品が出てくることがそれほどなかった。つまり、このジャンル自体が謎に包まれたまま、よくわからないままで、00年のミュージックシーンに突入していってしまったというわけです。


2.マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの後の世代

 

そして、オーバーグラウンド、もしくは、メインストリームの音楽の流行という側面において、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、通称”マイブラ”の長い不在は、このジャンルの一般的な拡がりを抑制したといえるかもしれません。

その後、”Ride”と”Slowdive”というシューゲイズを代表するロックバンドが、マイブラが表舞台に姿を見せないでいる間、イギリスの音楽シーンで気炎をあげるというような状態でした。

しかし、この2つのバンドも、リアルタイムでは、一時的なシューゲイズムーブメントが落ちついてから、Rideは、96年に、Slowdiveは、95年のアルバムリリース後に、実質的な活動休止状態に至る。また、メンバーを入れ替えながら苦心して活動を続けていた”Pale Saints”というドリーム・ポップ寄りのロックバンドも、94年のリリース後、解散状態となる。これらの事実からみると、一度目のシューゲイズ・ムーブメントは、”1995年前後””で一度衰退したという見方が妥当かもしれません。

しかし、このシューゲイズというジャンルは、確かに、大きなブリットポップのようなムーブメントとしては成長しなかったものの、インディーシーンのコアなファン向けのジャンルとしてひっそりと残り、地下に潜り、独自の発展を遂げていく。一般的には、95年から00年代には完全に衰退した、過去の音楽のように見なされていたかもしれない。

 

2000年代から、このシューゲイズ/ドリーム・ポップの再興が起こり、21年現在のアメリカでのムーブメントへの足がかりを着々と形成する。その事の起こりというのは、意外にも、シューゲイズという音楽を生み出した聖地の英国でなく、他のヨーロッパの地域、アメリカだった。

このあたりの年代、つまり、2005年前後から往年のシューゲイズバンド、マイブラ、スローダイブ、ライドに強い影響を受けたロックバンドが世界各地のインディーズ・シーンで台頭してくるようになります。

 

前置きが長くなってしまいましたが、以上が、英国で発生したオリジナル・シューゲイズシーンのあらましです。

 

今回の記事は、一度は完全に衰退したように思えたこの2000年代、シューゲイズというジャンルが見向きもされなかった時代、流行とは全然関係なく、このジャンルを旗印として掲げ、今日のドリーム・ポップ、ベッドルーム・ポップに、音のバトンを引き継いでいった魅力的なロックバンドを紹介しておきます。 

 

 

シューゲイズ・リバイバルの名盤 

The Radio.Dept 「Pet Grief」 2006

 

 

 

1.It's Personal

2.Pet Grief

3.A Window

4.I Wanted You to Feel the Same

5.South Slide

6.The Wost Taste in Music

 

九十年代のシューゲイズブームは終焉した、もうあのような音楽は鳴り響かないであろう、と完全に思わせておいてから、2千年代に入ってから、このジャンルの再興が起こる。つまりこれがリバイバルと呼ぶべきもので、その流れの始まりは、世界的に散逸していて、どの地域から発生したと明確に断定づけることは難しいものの、一番早く、この流れを自分たちの元に見事に呼び込んでみせたのは、スウェーデンのレディオ・デプトというロックバンドだったでしょう。

彼等は、95年以降のマイブラ不在の時代の寂しさを埋め合わすべく台頭した頼もしい存在といえるでしょう。当時、すでに廃れたと思われていたこの音楽を大手を振ってやるのには相当な勇気が必要であったと思え、そういった面でもこのレディオ・デプトには大きな賞賛を送りたい。

シューゲイズリバイバルのお勧めの一枚目に取り上げる「Pet Grief」は、レディオ・デプトの鮮烈なデビュー作です。

ラディオ・デプトの音楽性としては、オリジナルのシューゲイズバンド、とりわけ往年のライドの持つクラブミュージックの要素が込められている。リズムマシーンの規則的なビートに、シューゲイズ的な要素である甘く切ないメロディーを散りばめ、見事にシューゲイズという音楽を復活に導いた作品。

同世代、アメリカ、ニューヨークのザ・ストロークスの後の期待のロックバンドとして華々しくデビューを飾ったニューヨークのIntepolのデビュー作「Turn On The Blight Lights」のような、冷ややかでダンディなクールさも滲んでいるあたりは、インディーミュージックの系譜にあると言えるでしょう。

まさに、このアルバムに展開されるのは、旧時代のシューゲイズとクラブミュージックをよりスタイリッシュ。この2つの要素を見事にクールに融合してみせたという側面で、このレディオ・デプトの方向性には、いかにも00年代のロックの音楽らしい特徴があるといえるはず。また、後のBlack Marbleのような宅録シンセ・ポップの台頭を予感させるような時代に先んじた音楽です。

この後、レディオ・デプトは、次作のスタジオ・アルバム「Climbing to a Shame」で世界的な知名度を得るに至る。この鮮烈なデビュー作「Pet Grief」には、既に、そのヒットの理由がこのアルバムの中に垣間見えるよう。2000年代中盤のシューゲイズ・リバイバルの動きを語る上では絶対欠かすことのできない鮮烈的なマスターピースです。名曲「The Worst Taste in Music」収録。 

 

Amusement Parks on Fire 「Out Of The Angels」 2006

 

 

  

Disc1

1Out Of the Angels

2.A Star Is Born

3.At Last The Night

4.In Flight

5.To the Shade

6.So Mote It be

7.Blackout

8.Await Lightning

9.No Lite No Sound

 

Disc2

1.The Day It Snowed

2.I Think of Nothing

3.City of Light

4.Alafoss Exit

5.Solera la Reina

6.Motown Ritual

7.Back to Flash

  

アミューズメント・パークス・オン・ファイヤーは、2006年にデビューしたイギリスのポストシューゲイズのロックバンドです。

彼等のデビュー作「Out Of The Angels」のアルバムジャケットには、日本語の文章「見かけの大きさの変化」という言葉が、特に、なんの脈絡もなく使われていて、レコード店で購入した時には日本のバンド??と最初勘違いしていましたが、改めていうと、イギリスのロックバンドです。

上記のラディオ・デプト比べると、シンセ・ポップ的な要素はほとんどなく、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン直系のストレートなロック・バンドとして挙げられるでしょう。シューゲイズの欠かさざる要素、歪んだディストーションギター、そして、トレモロアームでのトーンの揺らぎの魅力を限界まで引き出した痛快なロックンロール。

楽曲のポップセンスというのも抜群に秀でており、特に、このアルバムの四曲目に収録されている「In Flight」は、シューゲイズというジャンルきっての名曲と銘打っても何ら差し支えないでしょう。また、このバンドの中心的なメンバー、マイケル・フィーリックの浮遊感のあるボーカルの妙味は、リアルタイムのマイブラ、ライド、スローダイブの音楽を経たからこそ生み出し得るキラキラした質感がある。

意外と上記のラディオ・デプトに比べると知名度としていまいちのように思えますけれども、非常にかっこよい正統派のシューゲイズバンドとして、再評価が待たれる良質なロック・バンドのひとつです。しつこいようですが、あらためて、もう一度だけ言っておくと、イギリスのロックバンドです。

 

Asobi Seksu 「Citrus」2007

 

 

  

1.Everything Is On

2.Red Sea

3.New Years

4.Goodbye

5.Lions And Tigers

6.Nefi + Girly

7.Exotic Animal Paradise

8.Mizu Asobi

9.All Through The Day

10.Strawberries

11.Thursday

12.Strings

13.Pink Cloud Tracing Paper

 

Asobo Seksi、アソビ・セクスは、ウチダテ・ユキ(Vo.Key)を中心として、ジェイムス・ハンナ(G)、グレン・ウォルドマン(B)、キース・ホプキン(Dr)によって、2001年にニューヨークで結成されたロックバンド。 

2000年代で最も時代に先駆けたシューゲイザー/ドリーム・ポップムーブメントの立役者とも言える存在。十数年前から個人的に作品をチェックし続けていた思い入れのあるロックバンドです。

音楽性においては、シューゲイズという枠組みには囚われない、幅広いジャンルを内包するバンド名からは想像できないような真摯さを持つロックバンドといえるでしょう。

アソビ・セクスのデビュー作「Asobi Sekus」では、轟音性の強い荒々しいシューゲイズ寄りの音を特徴としていた。そして、他のバンドにはない要素、女性ボーカルの独特なポップセンスがこのバンドの強みといえるでしょう。

このデビューアルバムの内ジャケットには、古い日本の時代の街の写真、あるいは、日本人学生の古いアルバム写真が挿入されている。驚きなのは、ライナーノーツの日本語の殴り書きには、ちょっと儚げで危なげな感じの文言が見られること。しかし、この危っかしい感じこそ、ロックになくてはならない要素であるというのは、往年のロックファンの方には理解してもらえるだろうと思います。 

1stアルバムもかなり良い曲が多いです。「Soon」や「Walk on the Moon」といった名曲に代表される、シンセサイザーの音を生かし、そこに、この日本人、内館さんの美麗な高音域の強いボーカルが添えられるあたりが、このバンドの他では味わえない音楽の主な特色といえるでしょう。何かしら切なげで哀感が込められていて、同時に、力強さもまた感じられるのが彼女のボーカルの特質であり、引いてはこのロックバンドの美質でもある。そして、彼女のシンセサイザーの演奏というのも、このバンドのドリームポップ感、夢見がちな世界観を強固にしている。

そして、二作目「Citrus 」は、よりポップパンドとして前進し、より素晴らしく成長したような印象を受ける。ギターのサウンドプロダクションがクリアになったせいで、バンドとしての方向性というのもより理解しやすくなった印象を受けます。

もちろん、シューゲイザーバンドとして、トレモロギターのトーンの揺らぎという要素を踏襲した上で、ユキ・ウチダテの独特なドリームポップワールドがさらに往年のシューゲイズの要素に加わったといえるでしょう。

そこはかとなく、往年の日本のアイドル・ポップに近い音楽性も込められているように感じるのは、おそらく彼女の幼い頃のアメリカへの移住、日本という国に対する淡い慕情があるからかもしれません。

それは、このアルバムに収録されている「Lions And Tigers」や「Thursday」といった珠玉の楽曲によって証明されているはず。

また、「Red Sea 」「Pink Cloud Trasing Paper」といった楽曲は、2000年代の作品ではありながら、シューゲイザーのドン、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの名曲に匹敵するほどの出来映えといえるでしょう。

近年、アコースティック・ライブ作品「Rewolf by Asobi Seksu」2009のリリースによって、アメリカのインディーズ・シーンで大きな注目を集めているバンドです。これからも、ウチダテさんには、シューゲイズシーンの中心的な日本人アーティストとして頑張っていただきたい所です。 

 

The Reveonettes 「Raven In the Grave」2011

 

 

 

1. Recharge & Revolt

2.War In Heaven

3.Forget That You're Young

4.Apparitions

5.Summer Moon

6.Let Me on Out

7.Ignite

8.Evil Seeds

9.My Time's Up


いかにも全部のバンドを知ってますという顔をして、この記事を書き綴っていますが、正直、ここだけの話、この”レヴォネッツ”というバンドだけは長い間知らなくて、つい最近、偶然見つけた素晴らしいシューゲイズ・ロックバンドです。

レヴォネッツは、シャリン・フー、スーン・ローズ・ワグナーによって、デンマーク、コペンハーゲンにて結成され、2002年から作品リリースを続けており、近年まで北欧シューゲイズシーンを牽引しています。

もし、仮に、このレヴォネッツに、他のシューゲイズバンドと異なる特色を見出すとするなら、デュオという最低限の編成である弱点を宅録風ののアレンジ色を突き出すことにより、短所をすっかり長所に代えてしまっているあたりでしょう。そして、今回ご紹介する彼らの名作スタジオ・アルバム「Raven In the Grave」は、通算五作目となるスタジオ・アルバムとなります。

どちらかというなら、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインというより、チャプターハウス、ジーザス・アンド・メリーチェイン寄りのアプローチを感じさせる音楽性で、つまり、どことなくドリーミーでふわふわしたポップセンスが随所に感じられる作品。そして、そこに、スーン・ローズ・ワグナー、シャリン・フーの男女ボーカルがアルバム全体でバランスよく配置されています。

心なしか、往年のニューロマンティック、あるいは、ゴシックロックを思い起こさせるようなノスタルジックな雰囲気があり、もちろん、良い意味で、およそ2000年代のロックバンドとは思えない懐かしさが随所に感じられる。このなんともいえない古臭い感じは、むしろ現代の耳に新しく聞こえるように思えます。この男女のツインボーカル体制のドリーム・ポップバンドとしては、4AD所属のペール・セインツの音楽性を思い起こさせるような懐かしさがある。

思えば、この作品のリリースは、2011年ということで、のちに起こったシューゲイザーリバイバル、あるいは、ニュー・ゲイズ更にその先にあるベッドルーム・ポップの先駆けの音楽をいち早く、しかも、あろうことか、センス抜群に取り入れた驚愕すべき二人組ユニットです。本作品のデラックスバージョンも再発されたことから、再評価の機運が非常に高まっていると言える。いや、世界的にもっと評価されるべきシューゲイズバンドのひとつとして最後に挙げておきます。

 

 

追記 


この後の世代にも、非常に魅力的なシューゲイズ・シーンのロックバンドが数多く活躍しています。

特に、ここ日本でも、近年、さまざまなシューゲイズに影響を受けた素晴らしいバンドが輩出されている。そのあたりのバンド、もしくは名盤についてはまた機会を改めて特集していこうかと思っています。

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