ブルース・スプリングスティーン 近年のチケット販売制度、今後のリリースについて語る



 

先日、カバーアルバム『Only The Strong Survive』を発表したばかりのブルース・スプリングスティーンは、アメリカン・ロックの祖であるにとどまらず、長年、レコード業界とショービジネスに深く携わってきたミュージシャンだ。今回、スプリングスティーンは、その長年の音楽業界の表から裏までを知り尽くしている人物としてのチケットマスターの制度改革を公に訴えています。

 

チケットマスターというのは、米国のチケット販売を斡旋するライブ・ネイションが管轄する企業であり、この企業がもたらすチケット販売制度の利便性自体は以前よりも高いものになっているが、公平にチケットを購入しようとするファンに、その権利が与えられないといった問題が生じています。つい、一昨日には、このチケットマスターの販売に明らかな欠陥が生じたため、米国の大人気シンガーソングライター、テイラー・スウィフトのコンサートチケットの販売が急遽中止されている。専売的にチケットを販売することは、そのチケットを求めようとするファンに不公平性を与えるのではないか。近頃ではそんな話も囁かれるようになりました。

 

ブルース・スプリングスティーンは、音楽が一大的なショービジネスとして確率した時代からプロのミュージシャンとして活躍してきた人物であるがゆえ、一家言を持っており、彼は、2023年のツアーチケットの価格に対するファンの反発について、初めてローリングストーン誌に、チケットマスターのダイナミック・プライシング・アルゴリズム(公平な販売制度)を利用するべきではないかという提言を行い、その発言の根拠を説明しました。また、広範な話題のインタビューの中で、ボスは、将来のアーカイブ・リリースに関する長年の噂についても触れています。


「私がやろうとしていることは、とてもシンプルなことなんだよ」と、ブルース・スプリングスティーンは、夏の一次販売期間中に5,000ドルに達したこともあるチケット価格について語った。

 

「私は部下に、”他の人たちが何をしているのか見て来なさい。もう少しチケットを安くしようじゃないか?”と言うんです。それが、大まかな指示なんだ。彼らは、それを実行に移す。過去49年間、あるいは、それ以上の期間、私たちはほとんど市場価格以下でライブをプレーしてきました。私はそれを楽しんできた部分もあった。ファンにとってもそれが最善だろうと思って。今回は、『おい、俺は73歳だぞ。みんなそこにいる。みんながやっていること、同業者と同じことをしたいんだよ』ってね。だから、そうなった。彼らはそうしてくれたんだ(笑)」


「しかし、近年のチケット購入制度がどのように販売されているのかについては、ファンだけでなく、アーティストにとっても非常に分かりにくくなっていることは事実ですね」とスプリングスティーンは続けた。


「そして、肝心のチケットはというと、ほとんどがお手頃価格だということ。でも、どうせ、どこかで高値がつくようなチケットもあるんでしょうね。きっと、チケットブローカーか誰かがそのお金を横取りしようとしてるんだよ。そもそも、そのお金を、毎晩3時間も汗水たらして働いている人たちのために使うべきでは? 私達はそのための機会を作ろうとした。それで、その時点で、私たちはそれを実行に移しました。一部のファンから不評だったのは知っていますよ。でも、途中で苦情が出たら、お金を返してもらえばいいじゃないですか?」


チケット価格がアーティストでもなく、ファンでもなく、売り手側の都合により高騰するという難点について、ファンの怒りの反応がどう影響したのかとローリング・ストーンに聞かれたスプリングスティーンは、「まあ、僕は年だから。多くのことを冷静に受け止めることができるようになったんだよ(笑)。誰も彼も批判されるのは好きではない。もちろん、高いチケット代の広告塔になるのも嫌だろう。それは一番なりたくないものだ。でも、そういうことなんですよ。自分の決断は、自分で行い、ベストを尽くさなければいけない・・・。それが私の考えです。もし、皆さんがショーに足を運んでくれたら、きっと素晴らしい時間を過ごしてもらえると思うから」


さらに、以上のようなチケット販売の公平性を担保すべきと主張した上で、今後の自身のライブツアーにおいて、オンセールスでダイナミック・プライシング(価格変動性:商品やサービスの価格について、一定の標準価格を設定し、その商品・サービスの売れ行きにより価格を随時変動させる仕組)を導入するかどうかについては明言を避けている。「いや、それはまだわからないことだよ。将来的には、もちろんそれについて話すことになると思うけど(笑)。そもそも、ツアーの種類によって価格も全然変わってしまうからね。でも、また、ツアーに来ることになる。きっと、多少は、今よりも屋外で演奏することになるだろう。それが実現したら、また別の話になるんだけど・・・。今は何も明確なことを言いたくないが、今後しばらくどうなるか静観してみようじゃないか」


インタビューの中で、ブルース・スプリングスティーンは、今後の彼自身のアーカイブをリリースする”Vaultプロジェクト”の計画についても、初めて詳細に語っている。


このコレクションは、彼にとって「90年代は素晴らしい10年ではなかった」という考えを覆すためにあるとスプリングスティーンは語っている。スプリングスティーンは80年代に『Born In USA』という傑作を残しているが、90年代にはスタジオ・アルバムを二作発表したのみで、その他はほとんどライブアルバムやスタジオセッションを中心にリリースしていた。このミュージシャンの全てのバックカタログ、及び、全般的なアメリカン・ロックにもたらした大きな功績を鑑みると、表向きには、物足りなさを感じる90年代との評価を受ける場合もあるが、それはミュージシャン/ロックスターとして眠っていた時期ではなかったとスプリングスティーンは説明している。「いや、私はあの時期にたくさんの音楽を作ったんだ。実際にアルバムも作っていたし。ある理由で、タイミングが合わなかったりして、アルバムを出さなかっただけなんだよ」


さらに彼は、補足的な説明を加え、「バンドが演奏している古いものもあれば、その期間に私が構想していた新しいものもある。その時期に私がやっていたことを再評価してもらうきっかけになるだろう。また、本当に奇妙なものが多いんだ。本当に......、その一部に対する反応を見るのが待ちきれない(笑)」と話している。スプリングスティーンはまたドラムループに支配された神話的なアルバムをリリースする準備が整っていて、「人々が思っているほど奇妙なものだ」と語ったが、そのアルバムはどうやら "近い将来 "リリースされるボックスセットには含まれないという。


その他、ブルース・スプリングスティーンは、インタビューの中で、発売されたばかりのソウル・カヴァー集『Only the Strong Survive』の続編を75%完成させたこと、来年初めのEストリート・バンドのツアー復帰に向けてセットリストをすでに構想していること、さらに、それらのショーは3時間程度に及ぶはずだとも語っている。いまだ73歳という年齢を感じさせないアメリカン・ロックのボス。二作目のカバー集のリリース、そして、今後、ライブ業界に対して最善に働きかけ、これからも音楽業界に清々しい息吹をもたらしてくれるはずだ。