米国における2022年度のレコードの売上が歴代最高に テイラー・スウィフトの最新作『Midnights』が最大の売れ行き

 

2022年度の米国のレコード産業を支えたテイラー・スウィフトの最新作『Midnights』

レコードは過去の産物なのか?? いや、少なくとも、英国と米国の音楽市場では必ずしもそれは事実であるとはいいがたい。むしろ、レコード産業は復活の兆候を見せ始め、成長産業の1つに位置づけられる。

 

Apple MusicやSpotify、Deezerを始め、音楽をインスタントに聴くことが出来るストリーミング・サービスが主流となっている2022年の音楽市場において、一般的には、レコードは過去の産物と見なされる場合もある。ところが、よりコアな音楽ファンの間でレコード人気が高まっているのは事実で、依然としてアナログの音楽を好むヘヴィー・リスナーが多いことが明らかとなった。

 

2021年度、音楽マーケットのシェアを多くを占める英国と米国でレコードの売上が好調であることは以前に報じた。しかし、これはロックダウン等の外的な状況によって自宅でのリスニングの時間が増加したことによる一時的な結果なのではないかとの推測もなされた。しかしながら、翌年に入っても、レコードの売上は依然として堅調である。

 

Billboardによると、12月22日までの週に米国のレコード盤の売り上げは現代の最高記録を更新し、全体で223万2000枚が販売された。

 

これは、1991年に音楽の売り上げをデジタルで集計して以来、1週間のビニール・アルバムの売り上げの最高記録の更新となった。さらに、1週間のビニール・アルバムの売り上げが 200万枚を超えたのは、1991年以降で二度目のことである。この新記録が最初に塗り替えられたのは一年前で、2021年12月23日に集計を終了した週に211万5000 枚を売り上げ、過去最高のレコードを記録。以上のデータから、前年度に比べ、売上が10万枚以上増加していることが分かる。

 

2022年12月22日に終了した週のビニール・アルバムの売り上げは、ホリデー・ギフトのショッピング(クリスマス用のプレゼント)の販売に支えられ、前週と比較して46.7%増加している。直近の1週間で最も売れたビニール・アルバムは、やはり、米国の大人気ソングライター、テイラー・スウィフトの『Midnights』で、68,000枚ものセールス記録を誇っている。(『ミッドナイツ』のヴァイナルの売り上げは、5種類のヴァイナル・バージョンで収益を上げている)

 

12月22日に終了した週の米国のアルバム総売上の57% (389.7万枚中 223.2万枚) と、物理的なアルバムの全売上高の63% (352.6万枚中23.2万枚) をビニール・アルバムの売上が占めている。(アルバム全体の売上には、物理的なダウンロード・アルバムの購入とデジタル・ダウンロード・アルバムの購入の双方が含まれる。物理的なアルバムの売上には、ビニール・アルバム、CDとカセット、その他、物理的なフォーマットが含まれる)さらに、2022年度のビニール・アルバムの売り上げは、4,189万1000枚で、2021年の同じ時点と比較して3.6%増加している。

 

今回の調査の集計では、TikTokやストリーミング等で音楽を一瞬で聴きこなすリスナー層と、それとは別に、レコードで音楽をじっくりと聴くリスナー層に二分されつつあることが分かる。

 

物理的なレコードの一番の難しさは、管理のための空間を必要とすることと、レコードを陳列棚から探さなければならないという点にある。しかし、家の中に小さなライブラリーを設け、それを眺めることにロマンを感じる音楽ファンにとっては、大量のレコードを所蔵し、それを陳列棚に並べ、部屋にオーディオ・ルームを設けることは夢のような話でもある。その他にも、利点としては、アナログ・バージョンの音質は、デジタルと異なり、山下達郎が指摘するように、一般的に、深みや温かみのある音であると言われる。もちろん、ストリーミングもレコードもそれぞれ良い特性があるため、シチュエーション別に音楽を聴くと、リスニング自体の楽しみが増えるはずだ。

 

最近のLPレコードは、オーディオ機器も小型化されており、さらに家具のように、デザインがおしゃれで凝ったものが多い。さらに、レコードのデザインも所有欲をそそらせるものとなっている。アートワークを眺めるのが好きなファンにとって、ビニール・レコードは現在も魅力的な媒体と言えるのではないか。ぜひ、機会があれば、レコードの沼に潜り込んでもらいたい。

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