今も至高であり続けるクレモナのヴァイオリン 16世紀から続く進化の歴史を読み解く

イタリア・クレモナ


ヴァイオリンは16世紀に登場した楽器である。その後、17世紀から18世紀にかけて器楽として発展していった。ヴァイオリンは、小さなヴィオラという意味。最初の時期に制作されたものを、オールドヴァイオリンといい、その後、改良が加えられたものをモダンヴァイオリンと呼びます。

 

ヴァイオリンのルーツには諸説あるが、西アジアのラバーブやカマーンチェが原型であるという説が一般的です。これは弓奏楽器の一つで、動物の皮張りを施したリュートのことを言います。


この楽器は、アフガニスタンやウズベキスタン、タジキスタンの地域に存在し、他の多くの楽器と同じように、海上貿易によって西洋にもたらされたと見るのが妥当でしょう。ちなみに、スペイン王宮のアルフォンソは、イスラムやアジア圏の楽器に拠るエキゾチックな音楽を作曲している。これが数世紀を経て、職人たちの手により、ヨーロッパ独自の楽器となったと推測されます。

 

一般的な楽器は原型が存在し、それに似せて作られることが多い。しかし、問題は、北イタリアの名工アマティ家の職人たちがどのような楽器を参考にしたのかという点に不分明な箇所が残されていることでしょう。それゆえ、まったくのオリジナル制作だと言われる場合もあります。

 

ヴァイオリンの最初の名産地となったのが、イタリア北部のクレモナという地域。現在は、ポー川の近郊に博物館もある。ヴァイオリンの制作の黄金期は、17世紀から18世紀のイタリアに到来した。一般的にはストラディヴァリが有名ですが、それ以前にアマティ家の職人達が活躍した。彼らはカエデ材などを用い、ほとんど高級な家具のような楽器、そして、魂柱を仕上げ、器楽の歴史に革新をもたらしました。世界最古と言われるヴァイオリンは、アンドレア・アマティが考案した1565年頃の作品です。アンドレア・アマティの出身地である北イタリアのクレモナにヴァイオリンの工房を設立し、ここから彼の弟子たちが数々の名器を生み出しました。

 

ニコロ・アマティ

 

アマティ家の中で最も優れた名工として名を馳せたのが孫のニコロ・アマティでした。彼が活躍した時代には、ジュゼッペ・ガルネリ、そしてアントニオ・ストラディヴァリなど名工が次々に登場し、ヴァイオリンの黄金時代が到来。その後、ヴァイオリンは16世紀ごろまでは、伴奏楽器として使用されていました。

 

17世紀以降になると、ヴァイオリンは器楽の支柱的な存在となり、華やかな地位を獲得するようになった。この頃、コレッリ、トレッリ、ヴィヴァルディ、ジェミアーニ、タルティーニが、トリオソナタ、合奏協奏曲、独奏協奏曲を作曲し、バロック/古典の最盛期が形成された。より美しい音色を音楽に込めたいという作曲家や演奏家の願望が、実際の器楽に取り入れられたことで、新しい楽器が生み出され、そして新しい演奏法や楽器の発声法が発展していく契機ともなった。

 

 

初期のヴァイオリンは現在のような音量が出なかった。その後、16世紀から19世紀にかけて、楽器の改良が行われ、コンサートホールのような大きな会場での音響性にふさわしい音量を得るようになった。ピアノの音階が時代の経過と合わせて増加していったように、指板が長くなり、駒の位置が高くなり、豊かな響きと華麗な音色が導き出せるように工夫が施されました。

 

また、楽器の発展に即して、優れた演奏家や作曲家が登場し、ヴァイオリニストは花形の演奏家になった。改良されたバイオリンを活かして、超絶技法を駆使する演奏家パガニーニが登場し、その後、ヴァイオリン教本を記したルイ・シュポーア、ブラームスと親交を持ったヨーゼフ・ヨアヒム、『トィゴイネルワイゼン』など名曲を残したサラサーテなどが活躍するようになった。音楽としてもヴァイオリンは全般的な表現性を押し広げた。風のように微細なアンビエントのような内容から、陶然とした美しい音色、また、落ち着いた平和な音色、それとは対照的な激しい感情性、より深遠な響きにいたるまで幅広い音楽的な表現をもたらすことになった。

 

一般的に、古い時代に生産されたヴァイオリンに高価な値段が付けられるのは、その作品に希少性があり、現在の素材で再現することが難しいからです。また、伝統的な歴史が込められているというのも要因でしょう。また、ギターやピアノなどのヴィンテージの楽器は、新品に比べると、その個体しか持たない独自の音色を生み出すことがある。

 

例えば、同じ楽器でも、演奏したり、使い込んでいくうちに、新品の時期とは異なる響きが出てくることがあります。ヴィンテージ楽器ならではの特性でしょう。これが俗に言われるように、”味のある音色”を象徴づけるのかもしれません。こういった理由により、物理的には、再現可能であろうとも、ヴィンテージ楽器には、説明しがたい神秘的な音色が宿ると広く信じられている。21世紀でも、16世紀に制作されたクレモナのヴァイオリンが最も優れていると言われます。ただ、現在市場に出回っているヴァイオリン楽器もそのほとんどが改良が施されています。

 

ぜひ、ヴァイオリンの演奏を聞くときには、 こういった数世紀に及ぶ歴史に思いを馳せてみて下さい。下記にご紹介しますのは、Voice of  Musicによる「四季」。小規模の室内楽ながら迫力のある演奏をお楽しみいただけます。

 



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