Tallies 『Patina』

 Tallies    『Patina」

 

 

Label: Bella Union

Release: 2022年7月29日 

 

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カナダ・トロントの5人組インディーロックバンド、タリーズのセカンド・アルバム『Patina』は、バンドが敬愛してやまないコクトー・ツインズのベーシスト、サイモン・レイモンド氏の主宰するUKのインディペンデントレーベル、Bella Unionと契約を結んで最初のリリースとなります。

 

ファースト・アルバムと同様、この新作で繰り広げられるのは、ディレイ、リバーブ、フェーザー満載のギターロックサウンドです。それらの抽象的なサウンドをタイトでシンプルなドラムビートとベースが支えています。アルバムは、ドリーム・ポップの代名詞ともいえるような夢見がちなサウンドに彩られており、そこには、チルアウトのような涼し気な質感と、ベッドルームポップのような可愛らしいキャラクターも深奥に見え隠れしています。全9曲の収録楽曲の中には、ポスト・シューゲイズ寄りのディストーションソング「Wound Up Tight」も収録されていますが、先行シングル「Heart Underground」「Special」に見られるように、コクトー・ツインズやジーザス&メリーチェイン、アメリカのAllison's Haloを彷彿とさせる王道のインディーポップ/ドリーム・ポップソングがこのレコードには貫流しています。それに加え、スコットランドのネオ・アコースティック/ギター・ポップの爽快な雰囲気も仄かに漂っています。

 

タリーズは、このアルバムで、「光と闇」という大掛かりなテーマを掲げながら、それほど高い位置に立つのではなく、聞き手と同じ位置からこういったテーマを掘り下げているように感じられます。これらの楽曲の歌詞についてはおおよそが個人の人生や人間関係を歌い上げており、その点はリスナーに少なからず親近感を与えると思われます。そして、楽曲にカナダの若者のカルチャーの何らかの反映を込めようという意図も見受けられる。バンドサウンドとしても、メンバー全員が同じ方向を向き、真摯に自分たちの音楽を追求しているように思えます。

 

5人という編成でありながら、バンドサウンドは常に核心を取り巻くようにして、多彩な音楽性を持つ魅力的な曲が展開されています。

 

もちろん、その核心にある感性のようなものが、コクトー・ツインズのように明瞭となっているとまでは言いがたいものの、後のバンドの可能性の萌芽もここに顕著に見て取れるのも事実です。フロントマン、シンガーのサラ・コーガンの歌い上げる美麗なメロディーラインは、バンドの音楽にドリーミーでロマンティックな感覚を与え、フランクランドのリバーブ満載のギターライン、そして、シアン・オニールのシンプルなドラミングが緻密に折り重なることにより、タイトでエッジの効いたバンドサウンドが提示されています。


このアルバムでは、オープニングトラックとして収録されている「No Dreams of Fayes」を始めとする、2020年代のドリーム・ポップのクラシックとなりそうな曲が収録されており、さらに、ジョニー・マーの生み出すスミス・サウンドの影響が色濃く反映された「Am I The Man」「When Your Life Is Not Over」の二曲では、マッドチェスター・サウンドへの傾倒も見せています。ここでは、1980年代のマンチェスター・サウンドのオリジナルのダンサンブルな要素を極力排し、このバンドの音感、感性の良さをこの作品で継承しているように感じられます。

 

二作目の「Patina」は、シューゲイズ、ドリームポップを起点とし、ネオ・アコースティック、マッドチェスターサウンド、バンドの幅広いバックグランドを感じさせる作風となっており、近年のドリーム・ポップシーンの中で、個性的な雰囲気が感じられる作品です。少なくとも、デビュー・アルバム後の三年間で、タリーズは大きな成長を見せており、この作品で何らかの手応えを掴むことに成功している。それは言い換えれば、ソングランディングにおけるメロディーセンス、バンドの演奏力がより洗練され、磨きがかけられたということにもなるはずです。

 

 

Rating:  74/100

 


 「No Dreams of Fayres」

 

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