New Album Review Helvetia 「Dishes Are Never Done but Good Luck」

 Helvetia

 

ヘルヴェティアは、米国ワシントン州シアトル出身のオルタナティヴ・ロックバンド。ジェイソン・アルベルティーニは、Dusterの解散後、このヘルベティアを始動させた。最初のレコード「The Clever North Wind」を2006年に発表する。彼らのバンドとしての知名度を高めたのは、Built To Spillとのツアーで、その後、オルタナティヴロックバンドとしての地位を固めていった。

 

バンドのライナップは、ジェイソン・アルベルティーニを中心に、ローテーション制が敷かれ、ドーヴ・アンバー、ジム・ロス、スコット・プルーフがメンバーとして関わり、珍しい活動形態を行っている。 

 

ヘルヴェティアのこれまでの代表作としては、4トラックマシンで制作が行われた「Headless Mashine Of The Heart」(2008)、最初期のトラック集「Gladness」(2001−2006)、「Dromomania」(2015)「This Devastating Map」(2020)などが挙げられる。

 

 

 

「Dishes Are Never Done but Good Luck」 

 

Jason Cleto Albeltini 3/30 2022

 



CD1:


01 – Jangle
02 – Cool Snacks
03 – Under Rocks
04 – A Fuss
05 – Oh Hey
06 – Wasting Old
07 – Dish Master
08 – Zala
09 – Hiss
10 – Stoners
11 – Tables
12 – Heat, Rain and Shine
13 – Believe Again
14 – Go Dubs
15 – For Sam
16 – Close


CD2:


01 – On Tail
02 – Clean Hollow Bone
03 – Aleve
04 – Fright Night
05 – Some Hat
06 – Long in the Know What Prt. 2
07 – Up in a Tree
08 – Leach
09 – What Life Was
10 – Crickets
11 – One Percent
12 – Stay Here
13 – Under Scramble Lights
14 – Fantastic Unexplained Phenomena
15 – Find Me Tumble
16 – Vision
17 – Hasen
18 – And Then What
19 – Rain on Me Often
20 – Clean
21 – The End of the World

 

 

このあたりのシーンのバンドにはそれほど詳しくないので、あまり的確なレビューにはならないかもしれないと、あらかじめおことわりしておきたい。ワシントン州シアトルで結成されたヘルヴェティアは、Dusterの後のバンドとして始動し、現在は、ポートランドを拠点に活動している。これまでジェイソン・アルベルティーニを中心に、数年おきにコンスタントに制作発表を続けている。ダスターの新作「Together」とリリースが重なったのは因果関係があるのだろうか。

 

少なくとも、このアルバムは、メイントラックの間に、ジャムセッションを取り入れたデモトラックに近いラフなレコードであるため、実際ほどには長さや退屈さは感じない作品である。スロウコアサウンドの中核にある、まったりとしながら暗鬱で叙情性あふれる淡いサウンドを特徴とし、それを、アート・ロック、グランジ、マージー・ビートといった多角的なアプローチをこころみている。一見、ちょっと無愛想にも思える音楽性だが、よく目を凝らすと、その向こうに、ジェイソン・アルベルティーニのレコードフリークとしての矜持が垣間見えなくもない。

 

時代に逆行したサウンド・・・、アルベルティーニは、シンセ・ポップ/オルタナ・ポップのトレンドを尻目に、時代の底へ底へと潜り込んでいく。果しない地中を掘り進めるかのようなワイアードな試みだ。アルベルティーニが、二枚組の37曲収録の大きなヴォリュームを持つ最新作で見据えるのは、ペイブメント、いや、それよりさらに奥深い、USインディーロックの原点なのである。 


そこには、Meat Puppets,Red House Painters,Built To Spill,Garaxie 500・・・、名を挙げていくだけで目がくらんで来そうな、80-90年代の最もプリミティヴかつローファイなUSインディーサウンドへの原点回帰しようという意図も伺えなくもない。この時代のインディーロックバンドは、今なお奇妙な魅力を持っているが、まだまだ、このあたりの音楽には大きな可能性が潜んでいるように思える。過去に置き去られたインディーロックサウンドに呼応するかのように、アルベルティーニ擁するヘルヴェティアは、時代から遠ざかろうとしている。作品を発表するごとに、彼らは現代から徐々に遠ざかっていくのだ。37つのトラックは、4トラックのMTRレコーダーで録音を行ったかのようなザラザラとした質感を持っている。それは堆積した山肌から突き出た大岩のように無愛想な印象を放つが、またフリークにとっては奇妙な親しみと癒やしが感じられる。

 

今日のすべての音楽が商業的な製品として作られるわけではないし、また、そのために必ずしも存在するわけではないことを、彼らは、このプリミティブなサウンドによって見事に明示してみせている。実に、この2022年のデジタルサウンドの主流ーー精妙でハイエンドが奇妙に持ち上げられたモダンサウンドーーとはおよそかけ離れたものである。ヘルヴェティアは、ロウへ、ロウへ、ラフへ、ラフへ、荒削りで芸術性あふれるサウンドへ突き進んでいく。それは、ひょっとすると、多くのインディー・ロックバンドが2000年代にデジタル社会に適応していくうちに見失ってしまった”何か”なのだろうか。それが何なのかは指摘できかねるものの、少なくとも、このアルバムにはアナログ媒体の魅力がふんだんに詰め込まれていることは確かなのだ。



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