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英国/ウェールズ出身のシンガーソングライター、グウェノー・ピペットは、ソロ3作目となる新作アルバム「Tresor」をHeavenly Recordingsから7月1日に発表します。


Gwenno


既に、グウェノーは、アルバムの先行シングル「An Stevel Nowydh」「Men I Toll」を二曲リリースしていますが、5月11日にチェンバーポップ調のアルバムのタイトルトラック「Tresor」を新たに公開しています。


ソロ3作目となる本作「Tresor」は、ほぼ全編をコーンウォール語で書き下ろした2枚目のフルアルバムでもあります。


アルバム名は、ケルネウェク語で「宝物」を意味し、2020年のCOVID-19によるロックダウンの直前にコーンウォールのセント・アイヴスで制作が行われました。この新作アルバムの制作は、共同プロデューサーで頻繁にコラボレーションを行っているリース・エドワーズとともに、パンデミック中にカーディフのグウェノーの自宅で完了した。


Ithell Colquhoun、コーンウォール語の詩人、Phoebe Proctor、Maya Deren、Monica Sjööなどの女性作家やアーティスト、そして、坂本龍一、Eden Ahbez、William Basinskiなどのミュージシャンの名前が、このアルバムに影響を与えたアーティストや作家として挙げられています。幻想的なノスタルジックな雰囲気を持つアルバムのタイトル曲のビデオは、下記でご覧いただけます。










Gwenno 「Tresor」




Label: Heveanly Recordings


Release Date:2022年7月1日


1.An Stevel Nowydh
2.Anima
3.Tresor
4.N.Y.C.A.W
5.Men An Toll
6.Ardamm
7.Kan Me
8.Keltek
9.Tonnow
10.Porth Ia

 

Gordi


オーストラリア/シドニーを拠点に活動するフォークトロニカシーンの気鋭シンガーソングライター、Gordiこと、ソフィー・ペイテンは、”Jagujaguwar"から六曲入りの新作EP「In Human」のリリースを発表しました。アルバムは、7月15日にリリースされます。

 

「Inhuman」のリリース告知に伴い、ゴールディーは、 映画「Three Months」に関連する「Wait」以来の新作シングル「Way I Go」を公開。同時にトリアーナ・エルナンデスの手掛けるミュージックビデオが到着しています。 

 

 

 

ゴールディは、この新曲について、以下のように説明しています。 


「Way I Go」は、恋をすることの新しい感覚、そして、反面、古びた相反する感覚について歌われています。

 

それがどのようにあなたの心を飽和させ、温め、かつ拡大し、さらには変容させるのか。このビデオは、ある午後に撮影され、地元のグッドウィルストアから5ドルで購入した埃っぽいピンクのブレザーを着て、メルボルンのブランズウィックの町を歩くというものです。

 

一方、監督を担当したトリアーナ・エルナンデスは、以下のように付け加えています。

 

「Way I Go」のビデオは、愛する人の家に向かって歩き、途中で花を集めるという一見ミニマルなコンセプトですが、その中で起こっている乱高下する感情のレベルが、メルボルン北郊の通りをはるかに超えた、幽玄かつ有機的な体験に変えています。



ゴールディーが、新作として発表した6曲入りのEP『Inhuman』は、愛やアイデンティティから信仰や宗教まで、人間の試練を探求し、悲しみから祝福に至るまでの大きなスペクトルを横断しています。EPを構成する複数のトラックについては、レイキャビク、ロサンゼルス、メルボルン、ウィスコンシン州オークレアでの長年にわたる様々なセッションから生み出されたものです。

 

今年の初めまで、ソフィー・ペイテンは、医師としての仕事も両立させ、COVID-19の流行時には、メルボルンやオーストラリア地方の人手不足の病院を手厚く支援していました。


 

スウェーデンのシンガーソングライター、Alice Bomanはセカンドアルバム「The Space Between」を10月21日にリリースすると発表しました。これに伴い、The War On Drugsの「Red Eyes」に続く先行シングル「Night And Day」を、アリス・ボーマンは公開しています。


Bomanは、ジャンル・ルーラ・ショーボー監督のビデオを同時に公開しており、「私にとって、これはアルバムで最も直接的で特別な意味を持つ曲の一つです。私は、過去の経験による関係、抵抗を手放し、完全に愛に浸る瞬間について、そして、他の人に存在し、完全に没頭し、一緒になりたいという願望について歌っています」と、この新曲「Night And Day」について説明しています。 

 

 

 

10月下旬にPlay It Again Samからリリース発売予定のアルバム「The Space Between」はBomanの2020年のデビューアルバム「Dream On」に続くものです。この新作で、ボーマンはパフューム・ジーニアスとコラボレーションしているのにも注目。さらに、ボーマンは、「Dream On」のプロデューサー、パトリック・バーガー(これまで、ロビン、ラナ・デル・レイの作品を担当している)を再度レコーディングに迎え、新作のレコーディングを行っています。



アリス・ボーマンは、パンデミックが新作の制作段階において大きな弊害になったことを明らかにし、新作アルバムのレコーディングの過程を以下のように回想しています。

 

「COVIDが到来した時、私はすべての予定をキャンセルしなければならなくなった。昨年の秋、停滞していた状況が変わった。プロデューサーのパトリック・バーガーとドラマーのニルス・トルンクヴィストとの最初のジャムセッションが成功に終わり、私たちは、レコード制作に取り組むため、パトリック・バーガーのストックホルムのスタジオに向かった。とても遊びごころのあるレコーディングプロセスだったのを覚えています。私とパトリックは、多くの曲で別々のシンセサイザーで一緒に演奏しました。多くの場合、即興の演奏だった。以上のインプロヴァイゼーションや遊び心の要素は、実際のプロダクションを介して感じていただけると思っています。


また、パフューム・ジーニアスとのコラボレーションについて、「私たち一人ひとりが、別々の詩的な感性を持ち、最後に一緒に協力して歌っています」とアリス・ボーマンは説明しています。

 

 

 Alice Boman「The Space Between」

 

 


 

Label:  Play It Again Sam

 

Release Date: 2022年10月21日

 

Tracklisting

 

 

1.Honey

2.Feels Like A Dream(feat.Perfume Genius)

3.Maybe

4.What Happens To The Heart

5.Night And Day

6.Soon

7.In Circles

8.Where To Put The Pain

9.On And ON

10.Space



Preo-Order On Drift


Waxahacheeとして活動するワイノナ・ジャッド、さらに、USインディーポップの大注目のシンガーソングライター、ケイティ・クラッチフィールドは、新たにコレボレーションを行い、ニューシングル「Otherside」をリリースしました。二人のパフォーマーは、今回のシングルトラックの制作に際して、ナッシュビル郊外のワイノナの農地で一緒にレコーディングを行っています。ワイノナ・ジャッドは、プレスリリースを通じて、この新曲について以下のように説明しています。

 

最近、起こったことすべての中で、私は歌い続ける。そのために私はここにいるんです。去年、ケイティ・クラッチフィールドに会い、すぐに意気投合しました。ナッシュビルの農場のスタジオで「Otherside」を録音しましたが、これはこれまで体験した中で最もお気に入りのレコーディング体験となりました。次世代を担うであろう偉大なシンガーソングライターと一緒に歌う機会が与えられたことに感謝しています。

 

 

一方、コラボレーターのケイティ・クラッチフィールドは、以下のように話しています。

 

ワイノナは私にとってアイコンそのものであり、知恵の泉のようなもの。彼女とレコーディングスタジオで空間をともにし、一緒に新たな曲を制作することは、私にとって、喜びと名誉をもたらしました。彼女の精神性は、私のクリエイティヴィティを毎日のように刺激し、サボテンと一緒に素晴らしいチームが組めました!! この曲を共有できることを嬉しく思います。

 

 

米ニュージャージー州のシンガーソングライター、Fousheéがニューシングル「I'm fine」を発表しました。この曲は、昨年のデビュープロジェクト「time machine」、そのヒット曲「deep end」に続くものです。

 


「I'm fine」は、Fousheéが、複雑な内向性とメタル調のノイズの間を行き来しながら、相反する力を融合させているのがわかります。


BNYXと共に制作されたこのビデオは、Fousheé自身が監督を務め、この曲の矛盾する要素を突き詰めている。


「i'm fine」は、この新しいプロジェクトのために最初に書いた曲です」とFousheéは語っています。前作から 「i'm fine」ができるまでの間、多くのことが抑圧されていた。きれいな外見と混沌とした内面とのコントラストが強調されている。このコントラストが最終的にプロジェクト全体にインスピレーションを与えた。

 

Victoria Canal
 

ロンドン在住のシンガーソングライター、ヴィクトリア・カナルは、ミュンヘンで生まれたスペイン系アメリカ人の女性で、国際的な生育環境で培われた感性によって、周囲の人々に大きな共感をもたらす存在です。

 

現在、米アトランタの男性シンガーソングライター、テディ・スウィムズと共に、イギリス、アイルランド、二国間のツアーを予定するヴィクトリア・カナルは、新作EP「Elegy」を9月16日にリリースすると発表しました。告知に合わせて、涼やかで癒やしにとんだ麗しいポップスが魅力の先行シングル「ownme」をドロップしています。

 

「ownme」は、複雑なピアノラインを中心とする柔らかな雰囲気が曲で、次作EPの強力なイントロダクションとなる。ドイツのニルス・フラームのような繊細なミニマリズムを駆使し、サウンドプロダクションにおいてハンマーの反響を活かし、 繊細なピアノのタッチ、ハンマーの軋む音を実際に耳にすることが出来ます。

 

ヴィクトリア・カナルの歌声は終始、落ち着いており、また聴いていて安心感に満ちています。言葉遊びもありますが、それらがつや消しのような役割を果たし、美しい響きを楽曲の印象にもたらしている。R&B調でもあり、クラシカル調でもある独特な雰囲気のあるシングルについて、カナルは以下のように説明しています。

 

私がこの曲を最初に書いた時、とてもおそろしいくらいに正直すぎて、なおかつ、私のいうことが許されているかどうかわからない幾つかの出来事を歌っていたため、私はこの曲を誰かに聞かせるなんてことは出来なるはずがなかった。

 

それでも、偶々、その後、友人た家族がこの曲を最初に聴いて純粋に涙をながしてくれた時、この曲を世に送り出すとしたら、それは自分のためではないんだと考えるようになった。この歌は、喪失を経験し、それらの悲しみをすべてキレイに洗い流す過程にある人々の奉仕のためのもの、ようやく、世に送り出すことに決めました。


 


 


 NY、ブルックリンを拠点に活動するシンガーソングライター、グレース・アイヴスは、次作アルバム「Janky Star」のプレビューシングル「Angel Of Buiness」を発表しました。新曲は前作の「Lullaby」に続くものとなります。このシングルについて、グレース・アイヴスは以下のように説明しています。

 

私はミュージシャンのキャリアを始めた時、(それほど昔のことではありませんが)厳しい時期を過ごしながら、この曲を書いています。不快な会議、過剰に作成されたアカウント、及び卑劣なスーツについての私の考えが反映されています。これは、将来に信頼をおいてほしいという私なりのメッセージが込められています。


新作アルバム「Janky Star」は6月10日にTrue Panther/Harvestからリリースされる予定です。

 


アイルランド・ダブリンを拠点にするシンガーソングライター、シネイド・オブライエンは6月10日にリリース予定のデビューアルバム「Time Bend And Break Times Coming」に収録される2ndシングル「Multitudes」を公開。今回のシングルリリースは4月のタイトルトラックの公開に続くものです。

 

 

「Multitudes」は、魅力的な楽曲であり、オブライエンのダイナミックで独創的なアプローチは、リスナーの心に深い共鳴を与えます。オブライエンは、この新曲について以下のように説明しています。

 

「Multitude(多数)」というセンテンス自体がソングライティングを行う際、私の最初の選択視の一つとなりました。何も、それは改まった感じではなくて、 ルーズエンド、オープンエンドを表しています。たとえば、逆向きの力と矛盾に取り組む私たちの日常生活に浸透している何らかの障壁にたいする問いかけ、あるいは、もっと身近な欲望と創造性にまつわる楽曲です。

 

この曲から、「Time Bend And Break Times Coming」というタイトルが私の頭に不意に浮かんで来て、一連の制作のモチーフに繋がっていった。しかし、このことは、レコードを生み出すに際して、私に大きな強迫性を与えた考えでもある。それは非常に積極的な役割を果たし、時間の象徴が拡大されていき、私の活動を見守る月のように迫り、私にはたらきかけているような気分でした。自己に対する妨害、さらに追われているような感覚のさなかに滴り落ちる何か・・・、それは「Multitudes」において語っているセンテンス、あるいは、その意味を押し広げるものです。私の中に立ち現れる、忠実で常に始点に戻ってくるような奇妙なイメージ、言葉、創造性、そう、まさにそれは想像と呼ぶべきもので、それが、今、私が話しているものなのです。

 

Phoebe Green

 

マンチェスターを拠点に活動するシンガーソングライター、フィービー・グリーンは、UKの”Chess Club”と契約後、最初のアルバムを8月12日にリリースすると発表しました。この知らせに合わせて、新作アルバムのタイトルトラック「Lucky Me」を公開し、ピアーズ・デニス監督が手掛けたミュージックビデオも同時に到着しています。

 

フィービー・グリーンがプレスリリースを通して以下のように新曲「Lucy Me」について話しています。

 

「Lucky Me」は、一見簡素な生活を送ることに対する罪悪感のため、自己破壊的な行動パターンを取り繕うことに関する私なりの考えを探求したものです。

 

私は多くの点で、これまで非常に幸運にもそういった困難を体験してこなかったことに、それほど感謝しているわけではありません。というのも、私は必死になって、些細で具体的な苦痛の原因をたえず探るような癖を持っているから、そうすることにより、深く内面を掘り下げたり、少し精神的にめちゃくちゃになったりすることを受け入れたりする必要がなくなるからです。その後、他の人が私の行動をどんなふうに見ているのかを想像すると、困惑し、沈黙するよりほかなくなる。この新曲は、他の誰よりも早く私の感情を無かったものとする、一般的な防衛本能について描かれているんです。


「Lucky Me」をアルバムのタイトルトラックに据えたのは、このことが、非常に継続的で普遍的なテーマを擁しているから。人々はそれらを消化しやすいと感じるから、その感情を感じるのではなく、自分の経験や感情を客観的に分析しているんです。タイトルについては、ちょっとだけ皮肉っぽく感じられるかもしれませんが、ユーモアがあり、普遍的なテーマがあるため、この作品にふさわしいだろうと考えていました。

 

 

 

Phoebe Green 「Lucky Me」

 

 

Label: Chess Club

 

Release Date: 2022年8月19日

 

 

Tracklist

 

1.Break My Heart

2.Lucky Me

3.Make it Easy

4.Crying In The Club

5.Sweat

6.Clean

7.Just A Game

8.One You Want

9.Won't Sit Still

10.Die Die Die

11.I Wish You Never Say Me Cry

12.Leach

13.I Don't Wanna Make You Cold

 

 

 

 

今年6月に待望のニューアルバム「Big Time」のリリースを控えているシンガーソングタイターのAngel Olsenが、「All The Good Time」に続く、二曲目のシングル「Big Time」をリリースしました。同時に、昨日、ミュージックビデオが公開されています。ファーストシングルはハートランドロックの影響を取り入れていたエンジェル・オルセンは、今回のシングルでは、カントリー調の曲風に挑んでいます。派手な印象を放つペダルスティール、エンジェルオルセンのソウルフルなボーカルが取り入れられ、アメリカの古典的な雰囲気が取り入れられた一曲。

 

今度のシングル作「Big Time」には、ステージ上で登場人物に扮し、マイクを前に歌うオルセンと共に、ペアでダンスをする演者たちがフューチャーされたミュージックビデオについてこの映像を手掛けたキンバリー・スタックウィッシュ監督は、この作品について以下のように説明しています。

 

 

「ビッグ・タイム」で、振り付けや、色彩、ワードロープを通して、人間がどのように時代を措定し、過去の昔ながらの二元性と社会的/内面化された性別を覆すためのコンセプトに着手しました。社会に存在する厳密な定義の外に出ることは、非常に難しく、映画という芸術的な分野ですら、その居場所を与えられない場合があります。これは、映像中に空間性を設けることに、前向きな視点を持ち、自分が自分よりも遥かに自分そのものであるということを、世界に対して示す機会を今回設けたわけです。

 

「ビッグ・タイム」は、 私達が本当のアイデンティティを表現しない影から抜け出して、最も本物の自分を見出す時、また真の自由を見出した時に起こる素敵なことです」と、キンバリー・スタックウィッシュ監督はさらに付け加えています。単色、ダンスは単調そのものです...性別適合の役割がそこには存在する。でも、くるくるとステップを踏んで、回転するたびに、何らかの素敵な不思議な出来事が起こり、キャストとエンジェルの双方が自由に生き始めます。スポットライトとは関係なしに、服装が明るくなり、踊りが高まり、感情を失っていたバーという空間に、登場人物のそれぞれのキャラクターが収まりきっていく。私達のキャストの80%とクルーの50%が非バイナリーで構成されていますことを、私は何より誇りに思っています。

 

 

アイスランドのシンガーソングライターのLaufeyは、アイスランドと中国、北欧とアジアにルーツを持つアーティストです。

 

ビリー・アイリッシュやBTSのVも注目しているシンガーソングライターということなので、これから人気が出そうなアーティストです。

 

ラーフェイは、4月21日に、ニューシングル「Everything I Know About Love」をリリースしています。ラーフェイは、自分の音楽をモダンジャズとして定義づけていますが、その他にも、R&Bやベッドルームポップに近い雰囲気を持っています。

 

彼女の音楽は、バークレー音楽院で培った体系的な知識、加えて、幼い時代からのクラシックの素養、ラヴェル、ショパン、ガーシュウィンの影響、さらに、グレート・アメリカン・ソングブック、リチャード・ロジャース、ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、クラシックからロック、ジャズまで幅広い音楽を吸収してきています。

 

もちろん、それらの幅広い音楽の影響を親しみやすく清々しさのあるポップとして昇華させているのが、アイルランドのシンガーソングライター、ラーフェイの音楽の最大の魅力でしょう。また、ラーフェイは、今年の夏頃にデビュー・アルバムをリリース予定ですので楽しみです。

 

ラーフェイは、この新曲について、以下のように述べています。

 

「この曲「Everything I Know About Love」は、愛と言われた魔法のようなものの全てについて歌われていますが、実際、私は、その本質を経験したことはほとんどありません。何度も試みたものの、幾度も失敗しました。結局、私は、愛の本質について何も知らないんです。今回は、 チェロで作曲を行いましたが、この演奏の中では、母と妹もヴァイオリンで参加しています」

 

Album of the year 2021 

 

ーSinger-Songwriterー 

 

 



 

・Angel Olsen

 

「Aisles」 jagujaguwar

 

 


 

通称、シンガーソングライターというのは、男性アーティストにしろ、女性アーティストにしろ、そのミュージシャンの個性、キャラクターがバンド形態よりはるかに色濃く出る場合がある。


そのことをこれまでの快作において示してきたのが、素晴らしい声量、そして伸びのある美しい歌声を持つ、ノースカロライナ州アシュビル出身のシンガーソングライター、Angel Olsenである。


エンジェル・オルスンは、ジョアンナ・ニューサム以降のフォーク・ロック、オルタナ・カントリーの系譜から登場したと言われていて、作品のプロモーションビデオごとに様変わりするド派手なキャラクターを演じるユニークなアーティストだ。


表向きの演出に加え、音楽性についても個性的であり、カントリー、フォーク、グラムロック、シンセ・ポップ、グランジ、1960年代から1990年代までの、幅広いポピュラー音楽を自由自在に縦断し、新鮮味あふれる未来のポップス/ロックの作風を、これまでの作品において展開している。そのスター性は、ミネアポリスサウンドの立役者Princeのド派手な雰囲気に近い、と言っても差し支えないかもしれない。

 

8月にjagujaguwarからリリースされたEP「Aisles」は、シャロン・ヴァン・エッテンとのコラボレートした名シングル「Like I Used To」に続く作品で、1980年代のクラシックソングのカバーで構成されている。


「Aisles」は、2020年の冬、アッシュビルのDrop of Sun Studioでレコーディングされ、エンジニア、Adam Mcdanielをと共に制作された一作である。


アダム・マクダニエルの妻のエミリーは、自宅を提供し、エンジェル・オルソンに実際の録音を始めるまで、様々な創造性と安心感を与えた。


その甲斐あってか、この作品は、全てカバー曲で構成されているが、シンセサイザーを介して自由性の高いアレンジメントが行われている。さらに、それに加えて、この夫妻とともに睦まじい時間を過ごしたエンジェル・オルセンの、のびのびとした歌声を全曲に渡って聴くことができる。


特に、オリジナル曲から想像だにできない独創的なアレンジが行われていることに注目である。その点については、作品中の一曲、「Gloria」についてのエンジェル・オルセン自身のコメントに共感を見出していただけるはず。



「クリスマスで家族で集まったときにはじめて、”Gloria"を聴いたのですが、皆が立ち上がって踊りまくっているのに驚きました。そこで、スローモーションで踊って皆が笑っている姿を想像してみたら、なんだか楽しそうで、実際にこんなふうにやってみようかなと思いついたんです」

  


 




 

 


・Sam Fender 

 

「Seventeen Going Under」Polydor



 


Seventeen Going Under  

 

 

サム・フェンダーは、イギリス、ノースシールズ出身のシンガーソングライター。


個人的にこのアーティストを何度か推すのは、ヴォーカリストとして高音のビブラートの伸びが独特であること、そして、歌詞についても、若者がぜひともいわなければならないことをまったく気後れなく歌っており、監視社会、フェイクニュース、セクシャル・ハラスメント、と、社会的な問題について、自分なりの考えを歌詞を通じて歌っているアーティストであるがゆえなのだ。


特に、今夏にリリースされた「Seventeen Going Under」はアルバムとして聴いても粒ぞろいの楽曲ばかりで聴き応えも十分といえるし、また、現代の歌手らしいメッセージ性溢れる傑作といえる。

表題曲の「Seventeen Going Under」は、イギリスのミュージックシーンの新たな象徴的な楽曲ともいえる影響力を持った一曲。国内の若者の苦悩に寄り添ったヒットナンバーのひとつで、サム・フェンダーは、社会全体の若者の苦悩を自らの体験に根ざし、明るい側面ではなく暗い側面をあるがままに見据え、それを秀逸なポップソングとして昇華しているのが見事である。


サム・フェンダーは、既にブリットアワードの批評家賞を受賞していて、UKの音楽評論家の評価についてはお墨付きといえるが、これから一般のリスナーにも、その楽曲の持つ良さが理解されていくはず。未だブリット・ポップというジャンルはイギリスに健在であること、そして、自分が気骨あるアーティストだと示してみせたのが「Seventeen Going Under」なのである。

 

これまで、サム・フェンダーがボブ・ディランやニール・ヤングといった大御所のサポート・アクトを務めているのには明確な理由があって、それは、UKの音楽シーンが彼に大きな期待を寄せているからなのだ。これから、世界で大きな人気を獲得しそうな雰囲気のあるアーティストとしても注目である。

 

 

 

 

 




・Courtney Barnett 

 

「Thinking Take Time,Take Time」Marathon Artists


 



Things Take Time, Take Time

 


Covid19のパンデミック、それに伴う社会的活動の制限という抜き差しならぬ問題は、私達一般の市民はもとより、アーティストにも何らかの行き止まりに突き当たらせ、そして、そこで、新しい考えに転換を図らざるをえなくなる契機となった。しかし、一方で、それは何らかの重要な教えをもたらすことでもあった。そのことを示すのが、オーストラリア、メルボルン出身のシンガーソングライター、コットニー・バーネットの最新作「Things,Take Time,Take Time」といえる。

 

コットニー・バーネットは、私達が日々直面する問題や障壁について、それほど重苦しく考えず、長く生きていると、そういった出来事もあるんだから、そのことについてそれほど重く思い悩む必要などない、気長にやっていこう、というメッセージをこのアルバム自体にこめているように思える。


それは表題にある通り、「なにかをなすのには長い、長い時間を要する」と銘打たれている通りで、バーネット自身が音楽を完成させること、アーティスト活動を通じて、物事がより良い方に向かうには、それなりの長い時間の経過が必要であることを熟知しているから。この作品で展開されるサウンドアプローチは、これまでのコットニー・バーネットの作風に通じるもので、Pavementを始めとする、1990年代のインディーロックに対する深い愛情が込められていて、それがゆったりして穏やかなローファイ感あふれるニュアンスと見事な融合を果たしている。

 

そして、この作品が、2021年に生きる、それから2022年以降を生きていく人にとってマストアイテムともなりえるのは、ひとつひとつの問題についてあまりにも現代の人はその瞬間にすぐさま解決へ導こうとしていて、それがそのまま社会の疲弊につながっているのはないか、ということにあらためて気が付かせてくれるからなのだ。偶には、時間にゆとりをもち、本当の意味でのゆったりとした時間を大切にすることが幸福に繋がる。

 

コットニー・バーネットの新作「Thinking Take Time,Take Time」は、なにも、おおそれた幸福ばかりではなく、目の前にあるささやかな幸せ、そういうものも尊いということにあらためて気付かせてくれる。


もちろん、そういった難しい問題を度外視したとしても、この作品の素晴らしさは、失われることはない。「Write A List Of The Things To Looking Foward To」を始め、インディーロックの名曲が数多く収録された2021年の隠れた傑作として挙げておきたい。

 

 

 

 



 

 

 

・Oscar Lang

 

「Chew The Scenery」 Dirty Hit



 


 Chew The Scenery [Explicit]

 

 


オスカー・ラングは、「インディーロック界の鬼才」とも呼ばれている、今最も注目するべきシンガーソングライターのひとりだ。

 

今年、華々しいデビューを飾ったばかりの18歳のイギリスロンドン出身のシンガーソングライターである。


サイケデリックをはじめ、ピアノポップ、ローファイ、多種多様なサウンドを自在にクロスオーバーした楽曲を、これまでに四枚のEPを通じて発表している。今まさにUKのミュージックシーンの中でもホットで話題性あふれるアーティストと言えるだろう。


オスカー・ラングのデビューアルバム「Chew The Scenery」は、ギターロックにノイズ性を交え、そこに絶妙なポップセンスが加味された作品で、あふれんばかりの創造性がこの作品には溢れ出ている。


もちろん、ノイズ性を徹底的に押し出したロックサウンドというのは、表面的にサイケデリック、いくらかアヴァンギャルドの色合いさえ併せ持つのだが、何と言っても、この作品を魅力的にしているのは、オスカー・ラングの天性のポップセンス、ブリット・ポップの時代を彷彿とさせるノスタルジア感満載の旋律を次々に生み出す、類まれなるソングライティング能力。それにくわえて、無尽蔵のはちきれんばかりのクリエイティヴィティを感じさせるギターの演奏の迫力にある。

 

2020年代のニューミュージックというべきフレッシュな音楽性を引っさげて台頭したユニークなシンガーソングライター、オスカー・ラングのデビューアルバム「Chew The Scenery」を聞き逃すことなかれ。UKロンドンのミュージックシーンにあざやかな息吹を吹き込んでみせた痛快な作品と呼べる。

 


 


 


アメリカのニューヨークを拠点に活動するインディー・ロックアーティスト、スネイル・メイル、リンジー・ジョーダンが、昨夜、自身の公式youtubeチャンネルで、「Madonna」のNYのアービントンのアルモアスタイナー・オクタゴンハウスでのライブ映像を公開しました。


 

このニュースを昨夜、他のメディアに先んじて報じたのはイギリスのローリングストーン誌で、情報伝達の早さは流石という感じでした。ローリングストーンについで、海外の有力紙、NME、Stereogum、Pitchfolkが約一時間後にこの報道に続き、海外で話題沸騰中となっているシングル作品です。

 

この「Madonna」の映像の公開に伴って、先行シングル「Valentine」、「Ben Franklin」、そしてアルバム「Valentine」のリリースに続いて、スネイル・メイル、リンジー・ジョーダンは、このNYのアービンとんでのライブ映像公開と同時に、三曲収録シングル「Madonna」を、ニューヨークの名門インディーレーベル、”Matador”から、昨日10月27日に発表しています。

 

新作「Madonna」という楽曲について、リンジー・ジョーダンは、「この曲を皆さんと共有できることに私は大変興奮しています。要約しますと、このマドンナという曲は、人間と人間の概念の間に愛は存在しえないということについて歌われています」というコメントを出しています。

 

11月から、スネイルメイルは、新作のスタジオアルバム「Valentine」と二作のシングル「Ben Franklin」「Madonna」を引っさげて、米ヴァージニア州リッチモンドでの公演を始まりとして、2021年から2022年にかけて、北米、英国、ヨーロッパの世界ツアーを控えているスネイル・メイル。現在、最も世界で注目をあびているインディーロックアーティストの活躍から目が離せません。




Snail Mail 

「Madonna」 Live At The Armor-Stiner Octagon House 

 

Shannon Lay 


Shannon LAY ... 

 

SUB POPといえば、80-90年代のシアトルのグランジシーンを牽引したアメリカでも最重要インディペンデントレーベルであることをご存知の方は多いハズ。

かつて、Nirvanaを世に送り出し、Green River、Mudhoney,TADといったシアトルグランジの代表格を数多く輩出、90年代のアメリカのインディー・ロックシーンを司っていたレコード会社です。 しかし、2010年代くらいからはアメリカではロックシーンが以前に比べると下火になったのはたしかで、近年このレーベルから90年代のような覇気を持ったバンドが台頭してこなかったのも事実。

最近のサブ・ポップはどうなってるのかと言えば、 90年代よりも取り扱うジャンルの間口が広くなっていて、近年のリリースカタログをザッと見わたした感じ、アメリカ出身のインディー・ロックのマニア向けのアーティストを取り扱っており、その中には、コアなクラブ・ミュージック、R&B系統のアーティスト、ラップ系アーティストのリリースも積極的にリリースするようになっています。

このあたりは、サブ・ポップもさすが、昨今のアメリカのインディー・シーンの売れ線に対して、固定化したシーンの一角に、一石を投ずるかのような鋭〜い狙いを感じます。その一石がどのような波紋を及ぼすのか、かつてのニルヴァーナのように、ミュージックシーンを揺さぶるようアーティストが出てくるのかは別としても、サブ・ポップが、なんとなく全盛期の勢いを取り戻したようなのを見るにつけて、熱烈なインディー・ロックファンとしては嬉しいかぎり。

さて、NYのラナ・デル・レイを筆頭に、シャロン・ファン・エッテン、エンジェル・オルセンといった個性的な面々がシーンの華やかに彩るアメリカのインディー・ロック/フォークシーンにおいて、知性の溢れる音楽を引っさげて、サブ・ポップから満を持して台頭した女性シンガーソングライターがいます。

"Shannon LAY ..." by Patrice Calatayu Photographies is licensed under CC BY-SA 2.0

この”シャノン・レイ”という赤髪のひときわ素敵な女性SSWは、現在、2020年代のサブ・ポップレーベルが一方ならぬ期待をこめて送り出すミュージシャンです。レーベル公式のアーティスト紹介の力の入れようを見るかぎり、会社側もこのアーティストに相当な期待を込めている雰囲気が伝わって来ます。

彼女の2021年発表の最新スタジオ・アルバム「Geist」の完成度に対してレーベル、アーティスト双方が「よし、これは行ける!」と大きな手応えを感じているからなのでしょう。

作品紹介に移る前に、このシャロン・レイのバイオグラフィーについて簡単にご説明しておきましょう。 シャノン・レイは、カルフォルニア、レドンド・ビーチ出身のミュージシャン。

13歳の時からギターの演奏に親しみ、17歳の時、生まれ故郷レドンドビーチを離れて、LAに向かう。ほどなくして、Facts on Fileというロックバンドのリードギタリストとして活動。

その後、Raw Geronimoというロックバンドに参加。このバンドは、後に”Feels”と名乗るようになる。シャノン・レイはFeelsのメンバーとして「Feels」2016、「Post Earth」2019の二作のオリジナル・アルバムをリリースしていますが、レイはこのFeelsというバンドを2020年1月に脱退しています。

このロックバンドFeelsの活動と並行して、ソロアーティスト”シャノン・レイ”としての活動をはじめる。最初のリリースは、Bandcamp上で楽曲を展開した「Holy Heartache」2015となるが、この作品について「バンドキャンプで作曲した楽曲を公開しただけに過ぎず、公式な作品であるとは考えていない」と彼女自身は語っています。

その後、"Do Not Disturb"から10曲収録のスタジオ・アルバム「All This LIfe Gonig Down」を発表し、SSWとして正式にデビューを果たす。

その後、二作目のアルバム「Living Water」をWoodsist/Mareからリリース。さらに、2019年、シアトルの名門”SUBPOP”と契約を結び「August」を発表。2021年、最新作「Geist」をリリース。

この作品はアメリカの音楽メディアを中心に大きく取り上げられており、好意的な評価を受けています。他にも「Sharron Lay on Audio Tree Live」2018「Live at Zebuion」2020と二作のライブアルバムを発表しています。


Sharron Layの主要作品


「All This Life Going Down」2016  Do Not Disturb 

 

 

 

TrackLists

1.Evil Eye

2.All This Life Going Down

3.Warmth

4.Anticipation

5.Leave Us

6.Backyard

7.Parrked

8.Ursula Kemp

9.Thoughts of You

10.Jhr

 

シャノン・レイの公式なデビュー作「All This Life Going Down」。フォーク音楽、あるいはケルト音楽に近い雰囲気の清涼感のある格式あるフォーク音楽としてのイメージを持つシャノン・レイは、このデビュー作にて、その才覚の片鱗を伺わせつつある。

ローファイ感あふれるインディーロックを展開しており、ディレイ/リバーブを覿面に効かせたインディー・ロックが今作では繰り広げられていますが、その中にも何となく、ケルト音楽に近い民謡的、あるいは牧歌的な雰囲気を感じさせる楽曲が多い。アメリカをはじめとする多くの音楽メディアはこの音楽について、ベッドルームポップと称しているようですが、今作は民謡的な音楽性をインディー・ロック、ローファイとして表現していると評することが出来るかもしれません。

今作においてのシャノン・レイの音楽は徹底して穏やかで知性のあふれる質感によって彩られています。ディラン、サイモン&ガーファンクルに代表されるような穏やかで詩情あふれる清涼感のあるアメリカンフォークをよりコアなオルタナティヴ音楽として現代に引き継いだと言う面で、後年のシャノン・レイの音楽性の布石となる才覚の片鱗が感じられる知性あふれるフォーク音楽。詩を紡ぐように歌われるヴォーカル、ナイロンギターの指弾きというのも真心をこめて丹念に紡がれていく。なおかつ、ゆったりした波間をプカプカと浮かぶような雰囲気があり、これは彼女の故郷、カルフォルニア、レドンド・ビーチに対する深い慕情にも似た「内的な旅」なのか。

シャノン・レイは、ボストンの”Negative Approach”をはじめとするDiscord周辺のハードコア・パンクに深い影響を受けているらしく、ロックとしての影響は、この陶然として雰囲気を湛えるインディーフォークに表面的にはあらわれていない印象を受けますが、 ハードコアパンクのルーツは、彼女のフォーク音楽に強かな精神性、思索性を与え、音楽性をより強固にしているのかも知れません。

アルバム全体として、穏やかで、まったりとした空気感の漂うデビュー作。近年のアメリカのインディーシーンには存在しなかった旧い時代の民謡にも似た温かな慕情に包まれている。

 

「Living Water」2017 Woodsist/Mare

 

 

 

TrackLists

1.Home

2.Living Water

3.Orange Tree

4.Caterpiller

5.Always Room

6.Dog Fiddle

7. The search for Gold

8.The Moons Detriment

9.Recording 15

10.Give It Up

11.ASA

12.Come Together

13.Coast

14.Sis

 

海際の崖に座り込むシャノン・レイを写し込んだアルバムワークを見ても分かる通り、前作の牧歌的でありながらどことなく海の清涼感を表現したような作風は、二作目「Living Waterにおいてさらなる進化を遂げています。

一作目はアメリカンフォークに対する憧憬が感じられましたが、今作はさらにその詩的な感情は、美麗なヴァイオリンのアレンジメントにより強められたという印象を受ける。

前作に続いて、ディラン直系のフォークが展開されていきますが、このストリングス・アレンジによる相乗効果と称すべきなのか、アメリカンフォークというよりケルトの伝統楽器フィドルを用いた「ケルト音楽」にも似た音楽の妙味が付加されたという印象を受けます。

このスタジオ・アルバムの表向きの表情ともいえる表題曲「Living Water」に代表されるように、前作に比べて音楽性はより内面的な精神のあわいを漂いつつ、そのあたりの外界と内界の境界線にうごめく切なさがこの音楽において、前作のようなアコースティック弾き語りのフォーク音楽により表されています。前作が爽やかさを表したものなら、より今作は、悲しみとしてのフォーク音楽が体現されているようにも思えます。

 しかし、そういった主要な楽曲の中に「Caterpiller」「Always Room」で聴くことの出来る心休まる牧歌的なフォーク音楽もまたこのアルバムの見逃せない聞き所といえる。これは2020年代のアメリカの男性ではなく、女性によって紡がれる新たなフォーク時代の到来の瞬間を克明に捉えた作品。

 

「August」2019 Sub Pop 


 

 

TrackLists


1.Death Up Close
2.Nowhere
3.November
4.Shuffing Stoned
5.Part Time
6.Wild
7.August
8.Sea Came to Shore
9.Sunday Sundown
10.Something On Your Mind
11.Unconditional
12.The Dream
 

シアトルの名門インディーレーベル「Sub Pop」に移籍しての第一作「August」でよりシャノン・レイの音楽性は一般的なリスナーにも分かりやすい形となってリスナーに対して開かれたと言えるかもしれません。

二作目に続いて、ストリングス・アレンジを交えて繰り広げられるギャロップ奏法を駆使したシャノン・レイのアコースティックギターの演奏は精度を増し、トロット的な軽快なリズム性において深くルーツ音楽に踏み入れています。

もちろん、フォーク、カントリー音楽のルーツに対して深い敬意をにじませつつ、シャノン・レイの音楽はアナクロニズムに陥っているというわけではありません。そこにまた、新奇性や実験性をほんのり加味している点が今作の特徴であり魅力でもあります。さらには、レコーディングのマスタリングにおいて、豪華なサウンド処理が施され、ルーツミュージックの影響を漂わせながら、ポップ音楽として聞きやすく昇華された作品。

以前のリリース作に比べ、収録曲の一部には、サブ・ポップのレーベル色ともいうべきオルタナティヴ性も少なからず付け加えられた印象もあります。

噛めばかむほど、味わいがじわりと広がっていく渋みのあるフォーク音楽。今作ではシャロンレイの才気がのびのびと発揮されています。

大いなる自然の清涼感を感じさせる牧歌的でさわやかな雰囲気は次作の布石になっただけではなく、最早、シャロン・レイの音楽性の代名詞、あるいは重要なテーマのひとつとして完成されたというような雰囲気も伺えます。特に、今作において、シャノン・レイのシンガーとしての才覚、音楽性における魅力は華々しく花開いたといえる。

 

「Geist」2021 Sub Pop 

 


 

TrackLists 

1.Rare To Wake
2.A Thread to Find
3.Sure
4.Shores
5.Awaken and Allow
6.Geist
7.Untitled
8.Last Night
9.Time's Arrow
10.July

2021年10月8日に前作と同じく「SUB POP」リリースされた「Geist」はドイツ語で「概念」の意味。

コラボレーション作で、Devin Hoff 、Tu Segallが参加、そしてプロデューサーにJarvis Taveniereを迎え入れたスタジオ・アルバムとなります。このシャノン・レイの最新スタジオ・アルバムで目を惹かれるのはサイケデリックフォークの第一人者、Syd Barretの「Late Night」のカバーのフューチャー。

アコースティックギターに歌という弾き語りのスタイルはこれまでと変わりませんが、ピアノ、エレクトリック・ピアノ、ストリングスアレンジの挿入をはじめ、パーカッションの導入にしてもかなりダイナミックな迫力が感じられる傑作となっております。

そして、以前の三作ではぼんやりとしていたような音像が今作は、より精妙なサウンド処理が施されているよりハッと目の醒めるような彩り豊かな叙情性溢れるサウンドが生まれ、そして、インディーフォーク作としてこれまでの歴代の名作と比べてもなんら遜色のない、いや、それどころかそれらの往年のフォーク作品をここでシャノン・レイは上回ったとさえ言い得るかもしれません。

これまでのレイの音楽性はより清涼感を増し、このフォーク音楽に耳を傾けていると、さながら美しい自然あふれる高原で清々しい空気を取り込むような雰囲気を感じうることができるでしょう。表題曲「Geist」をはじめ、「A Thread To Find」「Sure」と、フォークの名曲が目白押し、さわやかな癒やしをもたらしてくれるインディー・フォークの珠玉の楽曲ばかり。アルバム全体が晴れ晴れとした精妙さがあり、特に、ラストトラックを飾るインスト曲「July」を聴き終わった時には、音楽をしっかり聴いたというような感慨を覚え、音楽の重要な醍醐味、曲が終わった後のじんわりした温かな余韻を味わえるでしょう。

シャノン・レイの最新作「Geist」は、アメリカのフォーク音楽の2020年代を象徴するような作品で、これから女性アーティストのフォークがさらに盛り上がりを見せそうな予感をおぼえます。


 Soccer Mommy


Soccer Mommy


サッカー・マミーは、ソフィー・アリソンのソロ・プロジェクト。ライブパフォーマンスにおいてはサポートメンバーを交えて四人組ロックバンドの形態を取る。ソフィー・アリソンはスイス生まれで、その後、米、テネシー州ナッシュビルにて育つ。六歳の頃からギターを始め、ソングライティングに親しんだ。ナッシュビルの芸術学校に学び、ジャズのスイングバンドに属した。


ソフィー・アリソンは、その後、ニューヨーク大学に進学、音楽ビジネスを中心に専攻するが、在学中、ベッドルームポップ、宅録プロジェクトを立ち上げて、サッカー・マミーとしてバンド活動開始する。2015年から、WEB上のインディーズ音楽視聴サイト、BandCamp上で楽曲の発表を行い、後に「Collection」として収録される楽曲をインターネット上で展開させていく。


大学在学中、サッカー・マミーとしての最初のギグをNYブルックリン区のブッシュウィックにて行う。その後、故郷ナッシュビルに戻り、サッカー・マミーとしての活動を本格的に開始する。2016年には、ベッドルームポップシーンを牽引するNYのインディーレーベル、”Orchid Tapes”から「For Young Heart」をリリース。


その後、デビュー・アルバム「Clean」2017をFat Possum Recordから発表する。これまで、カルフォルニア州インディオで二週間に渡って行われる野外音楽フェスティヴァル”Coachella”、そして、スペイン、バルセロナにて年一度開催される十万人規模の音楽フェスティヴァル”Primavera Sound”に出演し、サッカーマミーは着実にインディー・ロックアーティストとして知名度を高めていく。


これまでMitski,Jay Som,Slowdive,Frankie Cosmos,Phair Phebe Bridgersらと共演している。また、追記として、今年には、イギリスのテクノポップトリオ、Kero Kero Bonito(フロントマンは日本人)とコラボ作品「Rom Com 2021」をリリースしている。


その音楽性は、ローファイ、インディー・ポップ寄りのカテゴリに属する。親しみやすい楽曲が多い。Garaxie 500、Guide By Voices,Superchunk、Pavementといった80、90年代のアメリカの良きインディー・ロックバンドの趣向性を彷彿とさせ、またそこに、クレイロのような現代的なベッドルーム・ポップの音楽性も持ち合わせている。特に、「For Young Hearts」「Clean」はローファイの良作といえ、アメリカのインディーロックバンドの音楽性を思い起こさせる。


Fender社のムスタングを介してのギターの音色作りは職人的であり、穏やかで心地よい音色に重点を置く。スコットランドのバンド、The Pastelsの方向性に近い温和な雰囲気が感じられ、ネオアコ、ギターポップバンドとの共通点も見いだされるはずである。

 

 

1.「For Young Hearts」 2016

 


デジタル、カセット形式でリリースされた「For Young Heart」」はベッドルームポップとして聴くことも出来なくないものの、彼女の実質的なデビュー作にして最良のローファイ作品として挙げても良いはず。


ここではアメリカのインディー・ロック、カレッジ・ロックの系譜、それを見事に受け継いでおり、上記したように、Garaxie 500、Superchunkを彷彿とさせるような穏やかなギターロックを堪能できる。後の作品に比べると、こじんまりとしているようにも思えるが、特にメロディー面でのソングライティングの才覚は他のアーティストに比べて頭ひとつ抜きん出ている。テネシーの雄大な自然を思わせるような穏やかで和やかな良質なギターロックで、そこにまた内省的な詩情を漂わせる。つまり、今作はギターを介しての詩的表現ともいえる。


こういった音楽性は、実のところ、80、90年代のアメリカのインディー・シーンにはありふれていたはずなのに、2000年代から、ぱたりと途絶えていったような印象を受けなくもない。しかし、サッカー・マミーは、音楽フリークとして、その80、90年代のアメリカンインディーの旨味を巧みに抽出し、宅録、ベッドルームポップとして2010年の時代に見事にリバイバルさせている。


今作「For Young Heart」は、以後の作品と比べ、大げさな感じや派手さはない。しかし、音楽性においては純朴で良質なのである。この作品に収録されている多くの楽曲では、メロディーやフレーズの中には音楽フリークとしての深い矜持が滲んでいるように思え、サッカー・マミーという表向きのキャラクターの印象とはまた異なり、硬派な音楽家としての佇まいが感じられる。アルバム作品の最初を美しく彩る「Henry」をはじめ、どことなく切ない質感に彩られた叙情的な楽曲で埋め尽くされている。


これはエモという類型的な言葉で言い表し難いなにかで、詩的なテネシーの大自然への慕情が現れた新しい時代のフォーク音楽といえるかもしれない。本作「For Young Heart」は、アメリカらしいインディー・ロックの醍醐味の旨味が凝縮されていると言っておきたい。特に、この音源で見られるFender、ジャズマスター、ムスタングらしいプリミティヴな音の質感は本当にグレイト!!


 

2.「Collection」 2017



一作目「For Young Heart」の後に、WEB上の音楽配信サイトBandCampで最初に発表を行っていた最初期の音源をコレクションとして集めた作品。ファットボッサムレコードからリリースされている。


もちろん、これらの作品の多くはニューヨーク大学の在学中に録音された宅録作品ともえいるが、そういったデビュー前のレア・トラックスという先入観を持って聴くと、完全に実際の楽曲の良さに面食らうはずである。音楽の方向性は「For Young Heart」と通じるものがあり、インディーロック、あるいはネオアコにも近い音楽性である。どことなくひねくれたようなポップセンスが加わっている辺り、オルタナティヴロックとして聴くことも出来なくもない。


特に、朗らかな印象のある「For Young Heart」と比べると、より内省的な雰囲気を持ったセンチメンタルな楽曲が多く見受けられるように思え、独特な行き場の見つからない揺れ動くような心情がギターロックとして描かれた作品。最初の方向性としてはベッドルームポップを志していた雰囲気。


後に若干の音楽上にモデルチェンジを果たすサッカー・マミーであるが、この作品は、彼女のデビュー前のレア・トラックとしてのみならず、その音楽性のルーツが伺える快作。この「Collection」の中では「Allison」「3AM at a Party」の出来が際立っているように思える。ここに垣間見える女性的な内向性は切なげな爽やかさに彩られている。


3.「Clean」 2018


本作は、ミシシッピのファットボッサムレコードからリリースされたサッカー・マミーの正式なデビュー作。


ここでは上記の二作品と比べ、プロダクションとしての音楽性に重点が置かれている。つまり、聴き応えがある作品に仕上がったと言うべきか、エフェクトにしてもマスタリング処理にしても現代のアメリカのポップスの王道を行くようなスタイリッシュでクールな雰囲気を漂わせている。 


最初期の作品の中では、このデビュー作がポピュラー音楽性が強く、ローファイ色は他の作品に比してちょっとだけ薄められている。しかし、最初期のサッカー・マミーらしいローファイな音楽性が消えているわけではない。たとえば、リードトラックの「Still Clean」は、よりマーケティングを意識した楽曲でありながら、素朴なインディーロックシンガーとしての音楽性が伺える。

最初期のインディー・フォークとしての最初の集大成が「Blossom(Wasting All Time)」で既に表れ出ており、ニューヨークの都会性、テネシーの自然性、この二つの大きく隔たった土地の間を常に揺れ動くかのような楽曲で、雄大な自然を思わせる楽曲があったかと思えば、「Your Dog」に代表されるように、InterpolのようないかにもNY的な雰囲気を持つコアな楽曲も収録されている。


エレクトリック、そして、アコースティックギターの双方が楽曲中には主に取り入れられており、アメリカのインディーロックの王道を行く作風といえるかもしれない。マスタリングにおいて深くディレイエフェクトを掛けたりと、独特なサウンド処理も伺え、音楽上の実験性も少なからず込められている。特にシンガーとしてのサッカーマミーの魅力が最もつかみやすい作品といえ、特に、ヴィブラートの高音部において、他のシンガーと違う独特なギューンという伸び方をするのがこのサッカー・マミーのシンガーとしての声質の最大の魅力のように思える。


「Color Theory」2020


アメリカの主要な音楽メディアでも大きく取り上げられた「Color Theory」はこれまでの内向きなエネルギーを外側に転換してみせた作品。ソングライティングの面では、よりこのアーティストらしい独特な個性が滲み出ている。一曲の中で、ドラッギーというべきなのか、普通では考えられないようなエフェクトを施し、楽曲の中にキラーチューンとして多次元性をもたらしている。 

初めてこの作品を聴くと、驚く場合もあるかもしれない。しかし、最初期からのポップセンス、メロディーセンスは健在、いや、さらに磨きがかけられ、作曲面でも洗練された印象である。もちろん、その洗練性がこのアーティストの個性を帳消しにしたわけではなく、楽曲面での親しみやすさ、深みがましただけにすぎない。特に、歌手としての才覚は以前よりはるかに魅力的なものが感じられ、ビックアーティストへの道のりを歩みだしたという雰囲気も伺える。


このスタジオアルバムに表されている楽曲の性質は、ややもすると、以前、誰かしらが書いてきたものなのかもしれない。しかし、それは新しくこの秀逸なソングライターの手によりアップデートされている。今作は、2020年のインディー・ロックという音楽の歩みを一歩先に進めた革新性に溢れた楽曲ばかり。往年のポピュラー音楽と未来のポピュラー音楽を、サッカーマミーは今作を起点として、希望に満ち溢れた橋を架けるような役割をはたしているように思える。


「rom com 2004ーsingle」


そして、 もう一作ぜひとも紹介しておきたいのがシングル「rom com 2004-single」である。 これはJapanese Breakfastがゲーム・サントラを手掛けたのと関連があるのかまでは定かでないものの、特に、PVが8ビットの古いドットゲームのようなコンセプトで制作されたユニークなシングル作品。


少し、ゲーム音楽をモチーフにした電子音楽のひとつチップチューンに対する果敢なアプローチを感じるユニークなリリースといえるかもしれないが、凄くシンプルな楽曲ではあるものの、サッカー・マミーのポップセンスの敏腕性が感じられる超がつくほどの快作。


独特なドラッギーな感覚として描かれる多次元性というのもこのミュージシャンの大きな魅力、それは、少し妙な喩えかも知れないが、ケンドリック・ラマーのトラックメイクにも比する痛快なぶっ飛び具合なのである。


最後に、もちろん言うまでもなく、ポップソングを書く技術にかけて、サッカー・マミーは並み居るインディーロックアーティストの中で秀抜しており、これからどのような楽曲をリリースしてくれるのか、たのしみで仕方がないシンガーソングライターであることに変わりないように思える。もちろん、後にリミックスとしてリリースされた日本人女性シンガー擁するイギリスのポップ・トリオ、Kero Kero Bonitoとのコラボ作「rom com2021」も注目したい作品である。

 

 

References

 

Virgin MUSIC carolineinternational.jp

https://carolineinternational.jp/soccer-mommy/soccer-mommy/

last.fm  

https://www.last.fm/music/Soccer%20Mommy

 

 

 

  Vagabon


ヴァガボン、LaetitiaTamkoは、1992年カメルーン生まれ、ニューヨーク育ちというバイオグラフィーを持つマルチタレントアーティスト。 

 ソロアーティストともいえるが、実際のライブ活動はベース、ドラムのサポートメンバーを交えて行われ、三人体制で行われる場合が多い。つまり、レコーディングの際には複数の楽器を演奏するマルチタレントという括りに属するものの、基本的にはギタリスト、シンガーソングライターという表現がぴたりと当て嵌る。


20191030-DSC05553"20191030-DSC05553" by CoolDad Music is licensed under CC BY-NC-SA 2.0

 

元々、Laetitia Tamkoは、アフリカ、カメルーンの首都、ヤウンデという州都で生を受けた。

この土地は、Wikipediaによると、元々、象牙の貿易都市として栄えた一世紀以上の歴史を持つ場所。最初の開拓者は、19世紀終わりのドイツ軍で、当初、ヤウンデは象牙貿易都市として栄えた。21世紀初頭に入ってからは、フランス統治下となった。カメルーン国家として独立後も長らくフランス語が主要な使用言語であった都市であり、ヤウンデという200万人ほどの人口を抱える土地で生を受けたLaetitia Tamkoは、歴史的な慣例に倣い、幼い頃、フランス語を母国語としていた。

その後、17歳の頃、彼女の母親がアメリカのロースクールで勉強をはじめる関係で、家族と共にカメルーンからニューヨークに移民として渡る。アフリカからはるばるアメリカに渡るくらいだから、彼女の生家は相当な知的階級にある家庭といえるだろう。言うまでもなく、ニューヨークに移住当初は、たとえ、ニューヨークという土地が多くの人種で構成される多文化の世界都市と断定付けられるとしても、彼女は、この移民の際にカルチャーショックを受け、アフリカとアメリカの文化の違いに戸惑いを覚えたらしいが、次第しだいに英語を習得していき、アメリカの文化に慣れ、溶け込んでいこうとした。その延長上に、ハイスクールへの進学と、シティカレッジ・オブ・ニューヨークでの勉強の時代が彼女のインテリジェンス性をさらに高める手助けとなった。

Laetitia Tamkoのミュージシャンとしての目覚めは17歳の時。面白いのは、なんと大型量販店のコストコで購入したFender!!が音楽家になるための布石を作った。アメリカのコストコでは、Fender USAが普通に買えるというのが滅茶苦茶羨ましいかぎり。

それから彼女は、ギターの演奏に夢中になる。ギターの技術習得は、主に教則レッスンDVDを介してだった。 その後、ギターだけでなく、シンセサイザー、ドラム、といった楽器も習得していった。

2014年に、音楽家”Vagabon”としての彼女のキャリアが始まる。ヴァガボンの最初のリリースはEPの「Persian Garden」。ここでは、Tamkoの天才性が遺憾なく発揮されており、楽曲性としては、ローファイポップ、あるいは、インディーロックの境界線上にある。まだ、音楽性としては完全に定まっておらず、模索を続けている段階にあると思えるが、Latitina Tamko特有の歌声の個性、魅力が痛感できる作品となっている。

とくに、Vagabonの歌声について言及するなら、白人のシンガーとは明らかにビブラートの伸び方が全然異なっていることに着目しておきたい。この異質なビューン!と伸びのある声質は、他のシンガーソングライターには見られないもので、異様な迫力が込められている

このフランス語を母国語とするヴァガボンというシンガーの英語歌には、どことなく鼻にかかるようなフランス語の独特な発音の影響が残っているように思える。しかも、ギタリストとしても相当見どころがあって、ただ、単に、飾りでギターを持っているわけではない事がわかる。

特に、この最初のEPでは、ソニック・ユースを彷彿とさせる激烈なロックギタリストとしての表情を滲ませ、また、あるいは、落ち着いたフォークギタリストとしての別の表情を見せるあたりも、インディーロックに相当な造詣を持っているのが伺える。

デビュー当時から既に、彼女の天真爛漫でありながら切ない雰囲気のある歌声、そして、奥行きのあるソウルフルで激した歌声は、異質な魅力を放ち、我々の心を鷲掴みにする。この最初の作品を聞けば、彼女が既に、歌姫、ポップスターとしての抑えきれないポテンシャルを持つことが感じられる。

もちろん、それは楽器の技術習得自体は彼女自身の努力の賜物といえようが、歌声についてはアフリカ大陸から、アメリカ大陸への移民としての背景、そして、カメルーンという土地に引き継がれているDNAのようなものが彼女の歌声を清廉たらしめ、なおかつ、他のアメリカのシンガーよりも遥かに力強くパワフルにさせているように思える。

つまり、この歌声は、付け焼き刃でない天賦の才覚といえる。またもうひとつ、特筆すべきは、シンガーソングライターとしても、高い評価が与えられるべきであり、天才的メロディメイカーとしての才覚がこの最初の作品「Percian Garden」全体にほとばしり、鮮やかな印象と荒削りさを併せ持っている。



Vagabonとしてのデビューアルバムは2017年、Father/Doughter recordsからリリースの「Infiniteworld」である。

ここで、Vagabonは楽器のマルチプレイヤーとしての才覚を十二分に発揮し、ギター、ドラム、シンセをすべて自分自身の手で演奏に加え、サウンド面でのプロデュースも彼女自身の手で行われているDIYな作品。

 

Infiniteworld 2017

 

ここでは、最初のEP作品「Percian Garden」の特性を受け継いでおり、ローファイあふれる魅力的なアルバムに仕上がっている。


ニューヨークらしい初期衝動性とも称すべきか、往年のパンクサウンド、The Sonicsのようなガレージロックの雰囲気が感じられるあたりも聴き逃がせない。また、このアルバムの中の一曲「Cleaning House」では、懐深さのある歌姫としての資質を伺わせる。深い叙情性もあり、艶気もある歌声という点には、他のシンガーソングライターにない資質が感じられるはず。

また、ソングライティング、あるいは、サウンドプログラミング能力としても卓越した洗練性、そして、抑えがたい才覚のほとばしりが感じられる。それは、シンセサイザーの心地よいフレージングにより、さらに楽曲がオシャレでスタイリッシュになっているのに驚く。

そして、このデビューアルバムでは、激したソウルフルな迫力味のあるシンガーとしてのヴァガボン、それから、穏やかな温かみのあるシンガーとしてのヴァガボン、この対照的な二つの歌声を楽しむことが出来る。 

 

 

Vagabon on Audiotree Live 2017

  

それから二年間、シカゴのAudiotreeでのLive作品リリースを重ね、 着実に米インディーシーンでの知名度を高めていく傍ら、三つのシングル作品を経て発表された2019年の「Vagabon」は、アメリカのインディーシーンにおいて、エンジェル・オルセンと共に再注目の作品である。


既にオルセンの方は、既に母国だけでなく、イギリスでも音楽メディアに高い評価を受けている女性版プリンスという雰囲気を感じさせるアーティストではあるが、もしかすると、Vagabonもまた黒人シンガーとしてその次に大きく取り上げられるかもしれない。

ヒップホップを主なフィールドとしての活躍する女性ミュージシャンは多いものの、実は、常に、正統派の黒人女性ポップミュージシャンを世界の音楽シーンは待ち望んでいるのだ。

コアなジャンルではなく、世界中の大人から子供まで安心して楽しめる女性シンガー。それは、これまでのポップス史を見ると分かるように、古くはアレサ・フランクリン、こういったシンガーは世界を変える魔性の力を持っている。そして、それこそ真の「デーヴァ」と呼ばれるアーティストである。

 

そして、ヴァガボンも、デビュー時こそインディー色の強い音楽性を打ち出していたが、2019年を境にして、世界的な歌姫の系譜に位置づけられるポップ・ミュージシャンとしての道をあゆはじめているように思える。 

「Vagabon」は、自主レーベル「Vagabon Music」からのリリースで、何がしかの決意が感じられる作品。

言い換えれば、不思議でミステリアスな魅力あふれる作品である。又、これは、ヴァガボンの実質的なデビュー・アルバムといえ、このアーティストの才覚が次の段階に進んだことを証明付ける素晴らしい作品となっている。 

 

Vagabon 2019

 

これまでのヴァガボンの作風はプリミティブな質感に覆われていたが、ここではさらにシンセ・ポップの爽やかさが前面に引き出された作品となっている。デビュー作品ではどこかしら刺々しさもあった歌声は完全に洗練され、聞きやすくなった印象を受ける。しかし、もちろん最初期のほとばしるような歌の魅力はそれで帳消しになったかといえばそうではない。依然としてその歌声は奇妙なほどの美しい輝き、艶気が漂っている。

 

楽曲についても同じである。それまではインディーローファイ、かなりアクの強い音楽性はそれまでコアなファンにはたまらないものではあったかもしれないが、一般的な音楽として表現されていたわけではなかった。それが今作「Vagabon」で、見事な変貌ぶりを見せたといえるかもしれない。ここでは、全体的にシンセポップあるいはエレクトロ・ポップという領域に舵取りを進めたことにより、Vagabonというキャラクター自体も変容した。そのモデルチェンジは勿論、良い方向に転じたように見える。

 

爽やかで涼やかな歌声、そして全体的な楽曲性を演出することに成功している。以前とは異なり、ゆったり聴く事も出来、そして、踊る事も出来、また陶然とすることも出来るという、多角的な音楽の魅力がリスナーにより広い選択肢を与え、自由な音楽を、Vagabonは提示するようになった。近年の流行の音楽、ポップ、ロック、R&B,クラブミュージック、そして、電子音楽、さまざまな要素を取り込んで、見事な”Vagabon”というひとつのジャンルをここで確立してみせている。楽曲のバランスもすぐれていて、クラブ・ミュージック、そしてシンセ・ポップ、また、落ち着いてしっとりしたバラードと、楽器のマルチプレイヤーらしく、アルバムのトラック全体に、幅広い音楽性がバランス良く、宝玉のように散りばめられているといった印象である。

 

このキラキラとした眩しいほどの感じ、他の人に出し得ない不思議で奇異なミステリアスな感覚は、いつもブレイクする直前のアーティストに感じられるものだ。そして、歌声についても、張り、艶、そして、力強さが歌声に滲み出るようになって来ている。

勿論、女性シンガーの歌を表現することは一筋縄ではいかない部分がある。声質が良いとか、ピッチが安定しているとか、ヴィブラートが良いとか技術的なことはいくらでもいえるかもしれないが、良いミュージシャンを探すためには、最後は直感がものをいい、つまり、その音楽に正直に接した時、ピン!とくるかどうか、しかないのである。そして、それは自分の中にしか正解がないので、理論的に証明付けることは困難をきわめる。しかし、このヴァガボンの歌声、あるいは、このアルバムの楽曲を聴いてみると、この歌声は「善なるもの」であるというように私は考えた。多くの人達の考えを正しい方向に導くような何かがあるように思えたのだ。このなんともいえない、スタイリッシュで美しく、穏やかな歌声をなんとたとえればよいのか? 

 

かなり短絡的な考えではあるかもしれないが、どことなく、このアルバム全体には、それまでになかった要素、カメルーン人としてのアフリカ音楽への憧憬のようなものも見えなくはない。以前は、ニューヨークの音楽または文化性にとらわれていたヴァガボンは、その領域から這い出ることに成功し、より自分らしい音楽を素直に追究していっているように思える。もちろん、歌声についてもしかり、以前よりも遥かに自然で力みのないナチュラルな歌い方となっている。

 

このアルバム全体は、ロマンティックな美しさに彩られている。また、この作品「Vagabon」で聴くことの出来る素直で嘘偽りのない歌声には、心を平らかにする何かが込められているという気がしてならない。

表側の世界には現れない普遍的な美しい概念によってこの音楽は強固に支えられている。仮に、音楽という表現形態がその人の感性だけではなく、人格も映し出す素直な鏡であるとするなら、もしかすると、ひょっとすると、これは彼女の博愛主義的な資質、優れた人格から滲み出てくる素直さだとか、清々しさのようなものなのだろうか?? 

  

 2021年月に、コットニー・ヴァーネットをゲストに迎え入れたニューシングル「Reason To Believe」をリリースし、話題沸騰中のアーティストと言える。このカメルーン出身のアーティスト、ヴァガボンは、自身の歌によって世界を美しく変えうるほどの不思議な力を持っているのだろうか? 

そこまでは明瞭に断言しないでおきたいが、ともかく、ヴァガボンはこれからが楽しみな素晴らしい黒人シンガーソングライターのひとりであることには変わりないはずだ。




Vagabon 公式HP

 

https://vagabonvagabon.com/ 

 

Bandcamp

 

https://vagabon.bandcamp.com/ 

 

 

 

 

参考サイト 



https://en.wikipedia.org/wiki/Vagabon

 

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%87


Y La Bamba

 

 

今回、歌姫、Divaとしてご紹介する"Y La Bamba"は、メキシコをルーツに持つ女性アーティストである。

 

Y La Bambaは、現在、アメリカ、オレゴン州のポートランドを拠点として活動しているインディーロックミュージシャンではあるが、やはり、良い意味で現代アメリカのアーティストらしくはない。どことなく儚げでありながら、ワイルドさも感じられる。彼女自身が生み出し、そして完成品としてパッケージされる涼し気な楽曲からは、独特なスタイリッシュさが感じられる、現代のポップス界隈のミュージシャンには感じ得ない特異な歌姫の感性が読み取れるはずだ。 

 

 

Y La Bamba at KEXP - Seattle on 2012-06-27 - _DSC1768.NEF"Y La Bamba at KEXP - Seattle on 2012-06-27 - _DSC1768.NEF" by laviddichterman is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

 

 

一体、Y La Bambaは、他のアーティストと何が違うのだろう? とにかく、その佇まいにも異質な雰囲気が滲んでいる。もちろん、見かけだけではなく音楽性についても同様で、どの現代のポップス、ロック・ミュージックにも似ていない。そのルーツからして、全く異なる気配が滲んでいる。

 

まるで、往年の名画、「バグダッド・カフェ」のサウンドトラックで聞くことのできるような音楽の雰囲気である。サボテン、砂漠、荒野、砂嵐、こういった風物が彼女の音楽を聴くと、おのずと脳裏によぎる。

 

ジャンルとしても、非常に類する音楽を探すのに労を要するはずだ。ラテンとも、スパニッシュとも、また、メキシカンともいえない独特な感性を持ったアーティストといえそうだ。

 

これは、多種多様な文化が生活圏にあってこそ生まれ出るような音楽なのかもしれない。そして、ファッション性でも、群を抜いて奇抜、風変わりで、近年流行のボーイッシュなスタイルを追究しているとてもクールなアーティストである。

 

率直に言うと、Y La Bambaの音楽には、実に不思議な魅力が宿っている。近年の欧米のポップスブームからは想像もつかない得意な音楽である。それを自身の音作り、マスタリング作業において古いレコードタイプのノイズを楽曲に掛けることにより、楽曲に古風な演出をほどこしている。

 

実にサウンドエンジニアとしても見事な手腕である。彼女の楽曲には、すでにデビュー当時から特異なノスタルジアが滲んでいて、これが他の現代アーティストにはない魅力を生み出している 。

 

分けても、1950年代に活躍したRed Foleyというアメリカの第二次世界大戦後の年代に活躍したカントリーアーティストの音楽性、もしくは、さらに古い、1930年代のアルゼンチンタンゴの音楽性の復古を現代の地点から試みようとしているように思える。


また、これまでのリリース作品には、Y La Bamba自身が生まれる以前にあった音楽への憧憬と残影がはっきりと滲んでいる。

 

それも、クールかつスタイリッシュに滲んでいる。Y La Banmbaの音楽を聞いていると、体験したこともない、古い時代にタイムスリップを果たすかのような錯覚にとらわれる。

 

Y La Banbaのアコースティック、エレクトリックギターの演奏も、他のアーティストとは異なる。

 

 

それは、どことなくローファイ感を出すことで、より、渋みのあるアプローチも見られる。コードやアルペジオを「弾く」というのでなく、ギターを介して、そっと語りかけるような情感がある。

 

ジプシーのように自由で、抒情性のあるギター演奏、それはジプシーが街角で奏でるようなワイルドな音楽を彷彿とさせる。そして、その中に、バランス良くクールさも込められている。

 

もちろん、歌姫、ディーヴァとしての資質は十分。Y La Bambaの声の性質には艶があり、他のビックアーティストのスター性にもまったく引けを取らない、妖しげなボーカルにリスナーは魅了されるはず。

 

そして、Y La Bambaは自身の声の多重録音という要素はアシッド・ハウス的な効果も演出する。しかも、艶やかさとともに、そこに、女性アーティストとしてのワイルドさを併せ持つのだから、リスナーとしては白旗を上げるしかない。

 

 

ところが、どうも音楽的なアバンギャルド性が一般的なリスナーには倦厭されているのか。それとも、ただ一般的に知られていないだけなのか、どちらともつかないけれども、世界的な知名度という側面では、残念ながら実際の実力に比べると、まだまだという気がする。

 

ここで、あらためて、最注目すべきアーティストの一人として挙げられる、”Y La Bamba”の素敵な作品を取り上げていきましょう。

 

 

「Alida St」2008  

 

 

 

”Gypsy Record”からリリースされたY La Banbaの衝撃的なデビュー作である。

 

 

 

 

 

 TrackListing

 

1.Alida St.

2.Festival of Panic

3.Fasting in San Francisco

4.My Lukewarm Recovery

5.Isla de Hierva Buena

6.Winter's Skin

7.Las Aguas Venenosas

8.Bravo Gustavo

9.Borthwick Magic

10.Knuckles

 

 

独特なサウンドプロダクションが施されていて、つまり古い時代のレコードのピンクノイズのような演出効果を図ることにより、およそデビュー作とは思えないほどの渋みのある作品となっている。

 

これは近年のWAVESといったマスタリングソフトにより、古めかしい音を容易に加工することができるようになったからこそ生み出し得た秀逸なサウンドプロダクションである。

 

この作品「Alida St.」で展開される音楽性について、どこかで聞いたことがあるなと思っていたが、その源泉のようなものを辿ることに非常に苦労をした。最初、1950年代のカントリーフォークへの憧憬が垣間見える作品と思っていたが、彼女が探し求める音楽の観念は、それよりさらに二十年以上昔になった。

 

多分、その音楽的な理想というのは驚くべきことに、1930年代のCarlos Gardelの奏でていたようなアルゼンチン・タンゴの雰囲気だったのである。このアルゼンチンタンゴからのラテンの匂いがこのアルバムの随所に充溢している。それがこの作品をただのポップスではなく、ローファイ味あふれる渋い雰囲気にさせているという感じがする。

 

 

少なくとも、この作品にはすでに何作かリリースしてきたような風格、経験の蓄積が感じられるのはデビュー以前にも様々な音楽的な冒険、実験を試みてきたからかもしれない。

 

 

アルバムはほとんど二、三分代の短いトラックで占められている。

 

 

一曲目の表題曲「Alida St.」は他の曲とは異なり、現代的なローファイポップ寄りのアプローチが見え、すでに聞き手の心を捉える。

 

そして、「Fasting in San Francisco」で見せる奥行きのあるボーカル、そして、穏やかなインディーフォークというのも、Y La Bambaのギターのフレーズもシンプルでいいし、さらに、さらりと無理なく歌いのけていることにより、涼し気な雰囲気にさせてくれることだろう。

 

また、この後の作品でも同じように、彼女はこの作品において、英語とスペイン語の両方の言語を歌詞上で巧みに使い分ける。見事という表現が稚拙に思えるくらい、その言語の雰囲気、特徴を掴んでいるからこそ、こういった美しい歌唱法を内側から引き出すができるのかもしれない。

 

スペイン語の独特な響きの美しさが感じることができるのが、アルバム五曲目に収録されている「Isla de Hierva Buena」。

 

ここで、驚くべきことに、英語の歌い方とはまた異なる歌唱法を採り、スタイリッシュな洗練性が読み取れる曲。ジャンク感もありながら、それが全然チープに感じられないのは、作曲の高度さ、そして本格派の歌唱によって、この楽曲がぎりぎりのところで支えられているからだろう。

 

 

また、九曲目「Borthwick Magic」ではインディーローファイを街角で流しの演奏しているようなアンビエンスを演出しているあたりも通好みといえる。

 

 

アルバムの最後を飾る「Knuckles」は、内向的な雰囲気を醸し出す鳥肌の立つような美しく切ない感じのある楽曲である。いきなり、ぶつっと曲が急に終わってしまうあたりにも、このアーティストの抜けさがない感じが現れているのは、この作品の次があると確信したからこそである。

 

 

この鮮烈なY La Bambaのデビュー作に一貫しているのは、涼やかなボーカルの風味であり、これはかの世界的な歌姫のひとりとして挙げられるセイント・ヴィンセントのデビュー作にも存在していた資質である。



 

「Entre Dos Ros」2019

 

 

Y La Bambaは、それほど世界的な知名度を得なかったせいか、自身の作品制作及びライブ活動に集中、よりその才覚に磨きを掛け、音楽性もまた洗練させてきた。

 

デビュー作「Alida St.」での瑞々しさというのは、十年経っても不思議なことに薄れるどころか、さらにより強くなってきているようにも思える。

 

 

 

 

 

 TrackListing

 

1.Gabriel

2.Entre Los Dos

3.Rios Suektos

4.Octavio

5.Sonadora

6.Las Platicas

7.Los Gritos

 

 

そして、Y La Bambaの近年の作品リリースにおいて、ミュージシャンとしての勢いが最もよく際立って現れているのが2019年リリースのアルバム「Entre Dos Ros」である。

 

実に完成度の高い楽曲で占められていて、またそこには以前よりも痛快さが加わったというような印象を受ける。 

 

この作品では、Y La Bambaのアップテンポの楽曲、ロック音楽に対する歩み寄りのようなものも感じられ、ヴァリエーションの富んだ傑作となっている。そして、デビュー作からのラテンミュージックに対する深い理解、それを独自のスタイルとして完全に確立したような気配を今作には感じていただけるはず。

 

一曲目の「Gabriel」からしてサンバ調のリズムで構成されるアップテンポなナンバーが目を惹く。その中には、デビュー作よりもはるかに、本格派としての歌姫の資質が遺憾なく発揮されている。

 

二曲目に収録されている表題曲「Entre Dos Ros」では、シンガーとして着実な成長というのが見えるかと思う。ここで、Y La Bambaは、往年のあるアルゼンチンタンゴの歌手のように、一般的なビブラートをさらに強めた独特な歌唱法に挑戦している。この歌、本物の歌に込められた美しさは言葉に尽くしがたいものがある。

 

また、このアルバム興味深い点を見出すとするなら、「Sonadora」においては、ポスト・ロック風のアプローチにも挑戦してみせていることは、実験音楽としての狙いのようなものも伺える。

 

まさに、音楽に対する貪欲さ、あるいは真摯さというミュージシャンになくてはならない資質がY La Bambaには備わっていて、彼女という存在を今日まで絶えず成長させつづけてきた要因であることが、今作からは明瞭に読み取っていただけるだろうと思う。

 

そして、この作品で示されている音楽性は、あくまで、Y La Bambaの通過点の一つに過ぎないように思える。この先、さらに一歩踏み込んだ、Diva、歌姫としての高い完成形が残されていると言い得る。末恐ろしいポテンシャルを持ったシンガーソングライターとして御紹介しておきます。