Beach Bunny 『Emotional Creature』

 Beach Bunny  『Emotional Creature』

 


 

 

 Label : Mom+Pop

 

 Release : 2022年7月22日

 

 

『Emotional Creature』を解題する上で欠かすことが出来ないのが、バンドのボーカリスト、フロントマンであるLilli Trifilio(リリー・トリフォリオ)のSFストーリーへのたゆまぬ愛情、Jonas Brothersのような彼女の子供時代のアイドルのY2Kポップに大きく影響されたという制作のバックグランドである。

 

ビーチバニーは、2020年のデビュー作『Honeymoon』に続くこの最新アルバムを、Fall Out Boy、Motion City Soundtrackといったポップパンク・レジェンドとの仕事で知られるプロデューサー、ショーン・オキーフと共にシカゴのShirk Studiosにてレコーディングを行っている。


私達は、常に変化し、成長し、適応している - それは人間の経験の深く根付いている部分だ、私たちは、より強くなろうと努力し、より賢くなろうと信じ、快適さと幸福を求めて人生の大半を過ごす。しかし、人間の素晴らしいところは、私たちが進化し、暗い瞬間を美しくすること、つまり、生き残るための新しい方法を見つけることです。人間は感情的な生き物で、このアルバムでそれを捉え、人間の経験がいかに複雑で、時には悲劇的で、そして、ほとんどが素晴らしいものであるかを示したかったのです。

 

少し前に、大学でジャーナリズムの学位を取得したリリー・トリフォリオは、このアルバムの中に人生に根ざしたメッセージを込めており、それは明るい世の中を体現するための社会学を提示しようとしているとも言える。 しかし、既にビーチ・バニーの音楽をよく知るリスナーならば、このバンドがそういった難しさとは正反対のキャッチーでポップネスに彩られたパンク・ロックソングを擁することをご存知のはず。もちろん、最新作『Emotinal Creature』では、Fall Out Boy、Motion City Soundtrack直径のシンガロング性の強いポップ・パンクソングがずらりと並んでいることを見出すはずだ。そして、そのストレートなポップパンクの雰囲気の中に、このバンド特有のエモーションが滲んでいることもビーチバニーのファンであればご存知のはずである。


それらのファンの期待にビーチ・バニーは存分に答えてみせている。この作品には、上述したようにSFに対するリリー・トリフォリオの愛着、それがユニークなキャラクター性の変わり、疾走感のあるパワーポップ風の楽曲と融合を果たす。ビーチバニーの楽曲はポップネスを明示することに抵抗がないため、爽快感すら覚えるはずである。ここには、現代の若者としての文化、そして趣味を余すことなく表現し、しかも、それが晴れやかな印象を持つポップパンクとして昇華されているとあれば、この音楽に抵抗感を示す人は、一般的に見て少ないと断言できるだろう。


この最新作において、スターウォーズをはじめとするこのバンドのSF的な趣味が音楽の中に深く定着しているとまでは言い難いもの、このアルバムはポップネスを実生活に根ざした趣味性と合致させ、それを聴きやすいアリーナ級のパンクソングに仕立てている。この点は、トリフォリオを中心とするバンドメンバーの高い演奏力、そしてヴォーカリスト、リリー・トリフォリオの繊細で心やさしい感覚、そしてソングライティング能力の高さを顕著に示している。

 

『Emotional Creature』は、王道のメロディックパンクに準じたもので、多くのリスナーに受け入れられる可能性を秘めている。アルバムのハイライト「Entropy」、「Oxygen」、「Fire Escape」に象徴されるように、爽快感があるポップパンクソングは言うまでもなく、日本のカルチャーへの興味を込めた「Karaoke 」等、インディーロックのアンセムソングが多数収録されている。少なくともビーチ・バニーはこの最新作において、単なるアマチュアバンドではなく、世界水準のプロフェッショナルなバンドであることを世界に示すことに成功している。さらに、フロントマンのトリフォリオのSF趣味が今後どのように磨きが掛けられていくか、パンクロックソングとSFの世界観をどのように融合していくのかが、このバンドの未来を占うともいえるか。

 

 

Rating: 79/100

 

 

Featured Track  「Oxygen」

 

 

 

 

 

Listen/Stream:  

 

 https://beachbunnymusic.co/emotionalcreature



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