New Album Review: Shame 『Cutthroat』 

 Shame 『Cutthroat』


 

Label: Dead Oceans

Release: 2025年9月5日

 

Listen/Stream 

 

 

Review

 

Shameのニューアルバムは、メタリックな雰囲気を持つ硬派のポストパンクのスタイルを選んでいる。とはいえ、2025年の世界のミュージックシーンの中でも、彼らは最もロックなバンドの一つにあげられる。もっといえば、ボーカリストのチャーリー・スティーンの歌詞には、国際的な政治問題に関する思想が込められているが、十代の若者のような純粋な眼差しがそそがれている。若い頃の''なぜ''という疑問は、いつしか世の中の体制的な概念に絡め取られてしまう。年齢を重ねるにつれて、それが当たり前のことになり、ある意味では感覚が鈍化してしまう。どうにもならないのだから仕方がない。だが、Shameの面々にはそのような言葉は当てはまらない。

 

Shameの音楽が期待感を抱かせる理由は、彼らは基本的には主流派に対して、カウンターの役割を担っているからである。アルバムの冒頭を飾る「Cutthroat」をきいてみてほしい。彼らは他のいかなるものにも魂を売り渡さない。


前作アルバムと同様に、ブリット・ポップやポストブリット・ポップのサウンドを織り交ぜながら、2025年のロックソングとはかくあるべきという理想形を突きつける。チャーリー・スティーンのユーモア満載のボーカルも最高の域に達しているが、コイル・スミスが中心となる電子音楽のトリッピーなサウンドも目の覚めるような輝きを放つ。重厚なギターやベースが織りなす骨太のサウンドは聴いていて惚れ惚れするほど。現代ロックの最高のエンジニア、コングルトンの手腕が表れ出た瞬間だ。ダンサンブルなロックは、全盛期のBlurのような響きを持ち、ボーカルの扇動的なアジテーションと混在している。これはおそらく、かれらがライブを意識したレコーディングを心がけているから、こういったドライブ感のあるサウンドが出てくるのだろう。



「Cutthroat」-Best Track



全力で疾走するかのような勢いは、続く「Cowards Around」でも維持されている。スネアのロールのような連打から始まり、緩急のあるヴォーカルがこの曲を先導していく。この曲では、スティーヴ・アルビニやBig Blackのメタリックなサウンドワークがギラリと光る。

 

 

こういった軸となるサウンドは後半にもぽつりと出てくるが、今回のアルバムでは、Shameとしてはいくつか新しい試みが取り入れられている。イギリスのバンドが本気でアメリカーナのロックをやるとどうなるか。その答えが「Quiet Life」で示されている。カントリーとロックの融合で、ジョニー・キャッシュの曲をポストパンクに組み替えたかのようである。しかし、この曲もShameの手にかかると、奇妙なオルタネイトな曲展開となり、オフキルターなリズムが形成される。カントリーとポストパンクの融合といった感じで、このバンドらしいユーモアが満載。


「Nothing Better」は、オーバードライブのかかったベースを中心とするポストパンクソングだ。ヴォーカルのスポークンワードは、このジャンルの定形ともいえるが、コーラスの箇所に至ると、お馴染みのShameの節回しが出てくる。P.I.Lのサウンドを通過したような不協和音を生かした歪んだギターがリズミカルに演奏され、強烈な印象を及ぼす。これぞポスト・パンクの真骨頂だ。また、このバンドは、ポストパンクの以外にもロックバラードの名手である。続く「Plaster」を聴けば、そのことがよくわかるのではないかと思う。オアシスやヴァーヴの系譜にあるポピュラーなロックバラードだが、電子音楽の要素が加わり、従来のShameの曲よりも未来志向になっている。また、この曲のスポークンワードは、コテコテのお好み焼きのような味わいだが、それもまたこのバンドらしさ。曲の後半ではオアシスのフォロワー的なサウンドに至る。

 

「Spartak」は、スミスやオアシスの初期のサウンドを受け継ぎ、哀愁に満ちたオルタナティヴロックに昇華している。また、サウンドの中には、Happy Mondays、Inspiral Carpetsのような''マッドチェスター''からの影響も伺え、80年代後半のUKロックのサウンドを継承している。この曲から立ちのぼる哀愁のあるロックサウンドはイギリスのバンドならではといえるか。


「To and Fro」では、英国のポストパンクが新しいサウンドに移行した瞬間を捉えられる。この曲は、サビ(コーラス)の部分が最高で、バンドのポップセンスが遺憾なく発揮されている。シンガロングを誘い、ライブでかなり盛り上がりそうな一曲である。曲の終わりでは一音ずつ上昇していき、アウトロにかけての期待感を盛り上げている。アルバムの中では異色の曲といえる「Lampiao」では、伝説的な盗賊団のリーダーをポルトガル語で揶揄している。

 

 「After Party」では従来にはなかった試みで、驚くことに、Shameはテクノポップに挑戦している。シンセのメロディがきらびやかに響き、メロディアスで叙情的なボーカルと合致している。激しいポストパンクサウンドの後のチルアウトともいうべきゆったりした瞬間を楽しめる。Shameの落ち着きのないサウンドは以降も健在だ。以後、ドライブ感に満ちたポストパンクソング「Screwdriver」に戻り、眠りかけたリスナーを畳み掛けるようなサウンドで起き上がらせる。


最も前衛的なトラック「Packshot」では、Jesus Lizardや初期のグランジのような不協和音を押し出したパンクサウンドで、このアルバムをまとめにかかる。スロウバーナーの曲であるが、奇妙な重さがあり、不穏な響きに圧倒されてしまう。世界の紛争を描いた曲であるかのごときリアリズムが奔出し、戦時下のサイレンのような不穏なノイズが、ギター、シンセ、ベース、ドラムで描かれる。ボーカルのチャーリー・スティーンはシェイクスピアの戯曲を制作時に読んでいたというが、この曲は間違いなく印象主義のポストパンクであり、どことなく映像的である。

 

『Cutthorat』はハチャメチャに陽気なダンスナンバーで締めくくられる。「Axis of Evil」はどことなくSparksのサウンドを彷彿とさせる。Underworld、New Orderを想起させる大胆不敵なダンスロックは、Shameのバンドとしてのポテンシャルの高さを印象付けている。アルバム全体としても相当聴きごたえがある。何度も聴くたびに面白い発見があるかもしれない。Shameは必ずしも単一のジャンルにこだわらず、広大なイマジネーションを働かせ、良質なアルバムを制作している。アルバム全体を聴きとおすのに、かなりの精神力とカロリーを消費するはずだ。奇異な作品である。

 

 

 

85/100

 

 

 

 Best Track-「Cowards Around」

0 comments:

コメントを投稿