New Album Review Feeder 「Torpedo」

 

Feeder

 

フィーダーは1994年に、イギリス・ニューポートで結成されたブリティッシュ・ロックバンド。現在のメンバーは、グラント・ニコラスとタカ・ヒロセ。中心メンバーの一人、タカ・ヒロセは岐阜県出身の日本人であり、バンドを始める以前、中日新聞のロンドン支局に記者として勤務していた。 


フィーダーは1990年代のグランジ/オルタナティヴの最盛期から活躍するバンドで、二十年以上の長いキャリアを誇るロックバンドである。

 

これまで11枚のスタジオ・アルバム、12枚のコンピレーション、4枚のEP,43枚ものシングル作をリリースしている。

 

1997年から2012年の間に、多くのヒット作をUKチャートの送り込んだ。商業的な成功のピーク時には、英国の伝統的なメタル雑誌「ケラング」から2度にわたって賞を受けている。(2001・2003)

 



「Torpedo」 Big Tech Music  2022  3/18




Tracklist

 

1.The Healing

2.Torpedo

3.When It All Breaks Down

4.Magpie

5.Hide and Seek

6.Decompress

7.Wall Of Silence

8.Slow Strings

9.Born To Love You

10.Submission

11.Desperate Hour

  


Listen/Stream

 

 

1990年代、アメリカではニルバーナの登場と並行して、(それ以前から活動していたのだが)数々のグランジバンドがオーバーグラウンドに台頭した。アリス・イン・チェインズ・サウンド・ガーデン、 そして、スマッシング・パンプキンズ・・・。ピクシーズの後に登場した渋みのあるバンドは、主要なメンバーを死によって失われるか、長い活動期間においてメンバーが脱退したことにより全く別のグランジとは別の音楽性に路線変更を強いられることになった。

 

今日の2020年代のミュージックシーンを見渡せば、既に、メタルとパンクの融合体として登場したグランジやポスト・グランジはほとんど絶滅寸前のように思える。しかしながら、そんな中、メタルとパンクの伝道師として息の長い活動を続けているのが、イギリスの名バンド、フィーダーである。彼らは、1990年代から2000年代に多くの名曲を残し、ヒット作をチャートに送り込んだものの、上に列挙したバンドほどには華々しく取り上げられてこなかったためなのか、コンスタントに作品を残し続け、メンバーを自殺により失ったとしても現在もしぶとく良曲を残しています。

 

フィーダーの新作「Torpedo」は、1990年代のサウンドガーデンのような渋さ、そして耳に残るような作品です。暗鬱なポップ性をサウンドガーデンを始めとするバンドは掲げてミュージックシーンに台頭したが、その奇妙なシアトルサウンドの暗鬱さというのが長いあいだ多くのリスナーにとっては不可解なものとして記憶に残り続けている。それはクリス・コーネルがこの世を去ったことによって、よりいっそうグランジファンにとっては理解しづらいものとなったように思えてなりません。彼らの提示した暗鬱でダウナーサウンドは一体何であったのか??

 

そのうやむやになった1990年代の渋みのあるグランジサウンドを、フィーダーは2022年の新作「Torpedo」で蘇らせています。このアルバムを再生するや、別世界が一面に打ち広がっている。ここには嵐が渦巻くはてしない砂漠の中をおぼろげに歩き回るようなワイルドさ、そして、デフ・レパードのような大衆ロック性、ブリットポップのリアルタイムの体験者としての証言のようなものが音によって表れ出ています。これらは、1990年代から2000年代にかえてのアーカイブのような印象を放っている。それを今回、あらためてリスナーは確認することになるはず。

 

得てして、「Torpedo」の楽曲は、いまだロックというものが終わったわけではないと雄弁に物語っている。シンセ・ポップやモダン・オルタナが席巻する現代の主要なミュージックシーンの中において、今作は奇異な印象を放ち、グランジサウンドを熟知するリスナーの琴線にふれるようなサウンドの質感を持つ。そして、安堵感や癒やし、晴れ渡った青空を仰ぐような爽快感をリスナーに与えてくれる。以前のような社会的な制約がなかった時代のおおらかなロックといえるかもしれません。


最新作「Trpedo」において、フィーダーは流行とは別の普遍的な音楽性を発見しようと努めているように思える。彼らは、長い音楽の見識を踏まえて、グランジ/オルタナティヴの領域を超え、ブリティッシュロック/メタルの王道に踏み入れている。これは、20年以上のベテランバンドにしか出し得ない渋みのある正真正銘の硬派なロック音楽。オルタナティヴ・ロック、ブリティッシュロック、これらの一見して相容れない二つの音楽性を見事に融合させた、どっしりとした安定感に満ちた痛快な作品です。

 

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