New Album Reviews Saloli 「The Island :Music For The Piano part .1」

 Saloli

 

サロリは、オレゴン州ポートランドを拠点に活動するメアリー・サットンのソロプロジェクト。 


サロリは、アナログシンセサイザー、ピアノを演奏し、電子音楽、実験音楽やアンビエントといった幅広い音楽を生み出している。

 

サロリは、オーバーダビングやポストプロダクションといったレコーディングの技術を用いずに、アナログ・シンセサイザーを使用した自然な音色の楽曲を書き、またライブでもシンセサイザーの演奏をするのが特徴である。

 

その音楽は、とくに、アナログシンセサイザーを使用していながら、どことなく温かみに溢れており、さらに人間味を感じさせる。

 

これまでに、サロリは、アメリカ、シカゴのクランキー・レコードから、2018年に「The Deep End」をリリースしている。デビュー作は、アナログシンセを用いた実験音楽。日本の環境音楽の先駆者のひとり、吉村弘に近い癒やしの質感をもった作風でデビューしている。


 

 

 

 

「The Island :Music For The Piano part .1」Mary Elizabeth Sutton

 

 



1.Bells

2.Mirror

3.The Island

4.Shadow

5.Promenade

6.A Good Rainy Day

7.Mediation

8.Winter



bandcamp


https://saloli.bandcamp.com/album/the-island-music-for-piano-vol-i


クランキーレコードからのデビュー作となった2018年の「The Deep End」で、サロリは、アナログシンセを用いた環境音楽や電子音楽の領域にある作風を提示しています。彼女はこの一作目について、サティとサウナにインスピレーションを受けたと述べています。

 

今回、自主制作盤としてリリースされた二作目の「The Island Piano:Music For The Piano part .1」でサロリは、シンセサイザーではなくピアノを用いた印象派に近い楽曲に挑んでいます。

 

アルバムに収録されている作品は、一作目とは打ってかわって、ポスト・クラシカルの王道をいくような楽曲がずらりと並んでいます。サロリの演奏は、一貫して瞑想的であり、静けさに満ちています。そして、そこに、小瀬村晶やGoldmundを彷彿とさせるような抒情性な内向性が加味されています。さらに、近代フランスのサロン音楽に対する憧憬も伺えます。表向きには、技巧的な演奏から距離を取っているものの、時折、ドビュッシーのような低音の組み立て方をするので侮れないものがあります。楽曲の中に、主旋律に対比してセンスよく組み入れられる低音が楽曲の節々にドラマティックかつダイナミックな効果をもたらしています。

 

ピアノの演奏自体はミニマルフレーズが多く、繰り返しが多いですが、その中にも旋律自体の運行がこのアーティストらしいダイナミックス、そして意図的に崩された色彩感のある和音構造が、リラクゼーション効果を発揮し、それらの反復性が嫌にならないどころか、聴いていて心地良さを与えてくれます。

 

「The Island Piano:Music For The Piano part .1」は、コンセプト・アルバムのような意図を持って作られた作品かと思われますが、楽曲のわかりやすさに加えて、サティやドビュッシーといったフランスの近代の印象派に近い性格をもったピアノ曲が数多く収録。全体的な作品として聞きやすく、クラシックにそれほど詳しくない方でも充分楽しんでいただけだろうと思います。喧騒や刺激といった性質から距離をおいた、聞き手に何かを深く考え込ませるような音楽です。


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