!!!(chk chk chk)「Let It Be Blue」

 !!!(chk chk chk)「Let It Be Blue」

 

 

 

 Label:Warp Records


 Release:May 6th,2022



 chk chk chkは、1995年に結成されたカルフォルニア州サクラメントのロックバンド。当初、タッチ・アンド・ゴーからデビューを果たし、その後、英国のワープ・レコードと契約し、27年にも及ぶ息の長い活動を続けています。

 

 2000年頃のアメリカのインディーバンドの中には、ディスコロックバンドが複数在籍しており、チック・チック・チックを始め、Brainiac、また、DiscordにはQ And Not Youといった魅力的なバンドが多く台頭してきましたが、二十年経ってみると、チック・チック・チックをのぞく、他のディスコパンクバンドは、結果として、一般的な知名度を得ることはありませんでした。しかし、当時、2004年のデビュー・アルバムにおいて、彼らが他よりも際立った存在であったかというと、必ずしも、そうではなかったかもしれません。しかし、チック・チック・チックは、近年フジロックなどでも来日公演を行なっており、現在では、世界で根強い人気を誇るロックバンドとしての地位を確立しています。ちょっとした不思議ではあるものの、この理由は、チック・チック・チックがバンドの発足当初から、それほどスパンを置かず、コンスタントなリリースを行ってきた多作なロックバンドというキャラクターを持つからなのでしょう。

 

 先日リリースされたばかりの新作「Let it be blue」においても、チック・チック・チックの音楽の基本的特徴は2004年のデビュー「Louden Up Now」頃から大きく変わりません。一曲目だけはコンテンポラリーフォークに近い手法をとり、「別のバンドに生まれ変わった?」というような驚きがリスナーに与えますが、二曲目からは、以前からのファンの期待に添うようなノリの良いディスコロック、チック・チック・チックらしいバンドサウンドが貫かれ、グルーブ感満載のエレクトリックにロックの風味を加味したカラフルなサウンドが展開されています。2000年代から、良い意味で、時代のトレンドに流されない良質なサウンドを掲げてきたバンドとしての風格、気迫が今作「Let it be blue」には顕著に滲んでいます。


レコードとしての音質の良さは、さすがはワープ・レコードからのリリースといえるでしょう。一見、ハイエンドが強調されたサウンドでありながら、エレクトロのように低音域もしっかり出ていて、完成度の高いタイトなサウンドが体現されています。それに加え、バンドが先行シングルを公開時、「クールダウンの後に、フロアにノリノリで戻れるような音を作りたかった」と説明しているように、リスナーに強いビート感を与えるダンサンブルな曲を中心に作品の世界が繰り広げられていきます。特に、タイトルトラック「Let It Be Blue」では、マイケルジャクソンの全盛期「スリラー」の楽曲のような、強いインパクトを持ったR&Bソングが生み出されています。この辺りに、チック・チック・チックのR&Bフリークとしてのただならぬ矜持が感じられ、また、往年のソウル・ミュージックファンを、ニヤリとさせるものがあるはず。

 

 そういった、前々から引き継がれるこのバンド(チック・チック・チック)のクラシックなソウルミュージックの特質に加え、モダンソウルに近い印象を持つ楽曲に、彼らは取り組んでいます。長年、培ったダンスミュージックに対する深い愛着が「Here's What I Need to Konw」をはじめとする曲で花開き、モダンソウルのクールさが引き出されているのにも注目です。さらに、アルバムには、チック・チック・チックらしいエモーショナルな雰囲気も伺えます。

 

 アルバムのラストを飾る「This Is Pop 2」は、バンドのキャリアの集大成をなす楽曲であり、ダイナミックなシンセ・ポップが生み出されています。他にも、どれほど沈んだ心も陽気にさせるような、ハイテンションでありながら理性を失わない質の良いダンスチューンがバランスよく収録されています。


 チック・チック・チックは、近年も、リスナーを喜ばすため、心楽しく踊らせるため、コンスタントにリリースを続けています。同様に、「Let It Be Blue」は、ポピュラーソングとしての理解しやすさが重要視されてはいるものの、反面、十八年のキャリアを誇るバンドとしての円熟味も所々に感じられるアルバムです。アクの強いダンスミュージックではありながら、聴けば聴くほど本来の魅力がジワジワ引き出されるような渋さのある作品といえるかもしれません。

 

 

Score72/100 

 

 

 

 

 

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