Weekly Recommendation  Lutalo 「Once Now,Then Again」EP

 
 
 
Label: Lutalo
 
Release Date: 2022年6月9日 
 
 
 
 
 
 
米国、バーモント州を拠点に活動するロタロ・ジョーンズは、ミュージシャン兼プロデューサー。しかし、現時点ではそれほど知名度があるミュージシャンではありません。このあたりの事情については、あまり詳しくありませんが、ロタロ・ジョーンズは、ニューヨークのインディーフォークバンド、Big Thief(ビック・シーフのAdrian Lenker(エイドリアン・エンカー)と従兄弟の関係にあたる人物であり、さらに、フリート・フォクシーズのファンとして知られているようです。
 
 
今週の金曜日にリリースされたばかりの「Once Now,Then Again」は、ロタロの記念すべきデビューEPとなり、先行シングル「For Now」が、フルEPの発売前にリリースされています。

 

私は、実存的な質問に取り組む傾向にある。テクノロジー、インターネット、関係、世界の政府、住宅...大人になることの意味と、それがどのように見えるかについて、私たちの定義がどのように変化するのかを発見しつつ、このプロジェクトに対する私が持っている展望は、サウンドベースでもなく、またジャンルベースでもありません。

 

作品として提示される音楽は、私自身を反映したものでしかない。これまで何かを強いて表現しようとしては来なかったため、上述したような境界線は必要ありませんでした。何らかの方法で、音楽に新たな表現性を追加したいだけです。

 

                   Lutalo
 
 
デビューEPは、ロタロ・ジョーンズの音楽的な探求であると同時に、哲学的な探求でもあるようです。というと、大げさに思えるかもしれませんが、音楽自体はそれほど難解ではなく、ルタロ・ジョーンズは、Big Thief、Bon Iverのように、緩やかで、しなやかな印象を持ったコンテンポラリー・フォークを提示する。アコースティック・ギター、ヴォーカル、サンプリングの音形を巧みに複合的に掛け合わせ、現代的であり、涼やかな雰囲気を擁するフォーク音楽を完成させている。ミドルテンポのフォークトロニカに近い手法が取り入れられ、それらがインディーロック/ローファイと融合を果たし、爽やかな雰囲気を持った心地よい作風に仕上げられています。
 
 
ロタロ・ジョーンズの音楽性は、上記のコメントからは予想外にも、それほど思想に凝ったものではなく、やんわりとした絵画的な印象に彩られている。
 
 
ロタロ・ジョーンズの作風は、現実的でもあり、幻想的でもある。彼は表現の中に境界線を設けず、その2つの空間の中を音楽を介して繰り広げられる細やかな物語を自由自在に往来している。収録されている6つの曲は、一貫してのんびりしたミドルテンポで構成され、そこに、アコースティックギター、ローファイの影響を受けたリズムトラック、ジャック・ジョンソンのように寛いだ印象のあるロタロのヴォーカルが乗せられる。フォークでありながら、ダンサンブルでもあり、ビート感が強い、という側面においては、初期のBon Iverに近い方向性ともいえる。そして、ロタロ・ジョーンズのヴォーカルはほどよく力が抜けているので、奇妙な親近感を覚える。
 
 
また、近年アメリカで盛んなオルタネイティヴ・フォークの要素に加え、ストリングスのアレンジ、シンセサイザーの色付けがなされている点は、アイスランドのエレクトロニカ/フォークトリカ、ベッドルームポップにも親和性がありそうです。しかし、それらの幻想性は、北欧のものとは別様に表現され、あたたかな太陽の下でゆったりくつろぐようなニュアンスが込められています。 
 
 
EPの全体像は、小さな曲の連なりのように構成されていて、始めから最後まで一貫した作風が提示されている。楽曲の中に、移調がさりげなく駆使されている点が、デビュー作ではありながら、このアーティストのソングライターとしての潜在能力の高さが表れ出ているように思えます。
 
 
「Once Now,Then Again」EPは2000年代の、アイスランド、ノルウェー周辺のフォークトロニカ/トイトロニカに親しんでいるリスナーにとっては、それほど真新しさは感じられかもしれないかもしれませんが、一方で、アメリカ人アーティストとしてのインディー・ローファイに対する矜持、そして、主張性も込められているのがこのEPの素晴らしい側面です。特に、先行シングル「For Now」では、黒人や先住民が直面している米国社会の問題がさらりと歌いこまれているのが見事です。
 
 
音楽としては、さほど主張性が強いわけではないものの、歌詞中に込められた隠されたメッセージ、ロタロ・ジョーンズの考えの表明が、ゆるやかな印象を持つコンテンポラリーフォークの強いアクセントになっています。デビュー作の六曲は、緻密な構成がなされており、それらの中に、ほどよい主張性が込められているため、純度の高いプリズムにも比する美麗な輝きを放っている。 
 

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