Runner 『Like Dying Star,We're Reaching Out』/ Review

Runner  『Like Dying Star,We're Reaching Out』
 

 

 


Label: Run For Cover

Release: 2023/2/17

 




Review

 

 

LAをベースに活動するRunner(ノア・ワインマン)は、近年のローファイ、エレクトロニカ、オルト・フォークを融合させた米国の最新のミュージックシーンに呼応したサウンドをこのセカンドで作り出しています。


「私は、ただ、簡単に識別できないような、少しオリジナルなサウンドを作りたいだけなんだ」とワインマンは説明していますが、その言葉通りのユニークさを今作には見出すことができるはずです。学生時代にはトランペットとジャズを学んだというRunnerは、それらの下地に加えて、バンジョー、ピアノ、ギター、友人の声のサンプリングなど、楽器とサンプリングを絶妙に加工し、緩やかで穏やかな音響の世界を全12曲に内包させている。

 

バック・トラック自体は相当複雑に作り込まれていますが、背後のビートにナチュラルで優しさのある70年代のフォーク・ミュージックを彷彿とさせるボーカルがアルバムの世界を軽妙に牽引していきます。さらに実際に紡ぎ出される歌詞も、「アルバムに収録する曲を決めようとデモを整理していたら、言葉の限界というテーマに気がつき始めた。誰かに何かを伝えようとしたとき、うまく伝わらなかったり、結局、何も言えなかったりする。親しい人に自分を表現するのに苦労するのは、私の人生でもよくあるパターンなんだ」と語るように、表向きの言葉を越え未知なる感覚的な言葉の世界を探求しているようにも感じられます。この点が、曲を聴いている際に、ワインマンの言葉が耳に深く馴染み、浸透していくように思える理由なのかもしれません。

 

全編に一貫しているギターとバンジョーの軽妙な掛け合いは、Runnerの詩人のような性質を明確に感じさせるものとなっていますが、加えて、シンプルな演奏をサンプリングやコラージュの手法でループさせ、独特なグルーブ感をもたらしており、これは、ローファイミュージックの影響が楽曲に巧みに吸収されている事を表す。そして、Runnerのボーカルは朗らかでどことなく開放感に満ちあふれている。きっとこのアルバム全体を聴いていると、不思議と清々しい気分になるでしょう。


Alex Gを始め、近年、ローファイとフォークを融合させた複数の魅力的なアーティストが存在感を示しているが、Runnerもまたその筆頭格に挙げられるだろうと思われます。上記のアーティストに比べ、ノア・ワインマンの音楽は、とくに、ナチュラルなオルト・フォークの性格を強く反映させています。そのことは、「plexigrass」、「raincoat」 を始めとするゆったりした存在感のある曲に加えて、Superchunkのオルト・ロック性に近い盛り上がりを見せる「chess with friends」といった曲を中心に顕著な形で表れ出ているように思える。

 

Runnerの書き上げる楽曲は最近のインディーミュージックファンの耳に馴染みやすいものとなっていますが、プレスリリースでも説明されている通り、簡潔な音楽にはアーティストのささやかな慈しみが垣間見える。友人との関係性をはじめとするノア・ワインマンの普遍的な感覚が全体に飾らない形で表現されています。実際の人間関係と同様、一筋縄ではいかないような内容によって彩られているものの、どのような出来事もノア・ワインマンは愛着を持って、さらりと歌い上げる。この点に気づきというか、何かしらふと考えさせられるものがあると思います。

 

 

78/100