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ーー元パレスのベーシストでマルチ・プロデューサーのウィル・ドーリーによるプロジェクト、スキンシェイプの新作が発売決定! 先行シングル「Can You Play Me A Song」も配信スタート!!ーー

Will Dorey

イギリスのマルチ奏者でプロデューサー、ウィル・ドーリー(Will Dorey)のソロ・プロジェクト、Skinshapeの9作目のスタジオ・アルバム『Another Side of Skinshape』が9月27日(金)に発売されることが決定した。早速新曲「Can You Play Me A Song」も本日より配信開始。(「Can You Play Me A Song」の配信リンクはこちらから: https://orcd.co/xadbk7r )

 

ウィルの最新アルバムは、これまでの彼のどの作品とも似つかない内容となっている。とは言え、彼の音楽には、常に一貫したスキンシェイプのサウンドが脈打っており、それは、例えるなら太陽が照りつける午後に神秘的な郷愁を呼び起こす、一種の音の夢幻のようである。

 

幼少期の思い出やエチオピアのリズムからインスピレーションを得たと言う今作は、ウィルの心の最も難解な部分にアクセスしている。

 

このアルバムについてウィル本人は、「1990年代へのオマージュのような曲もあれば、1960年代や1970年代に敬意を表した曲もある。ただし、受け取る側によってはそういった表現だと感じ取れない人もいるかもしれない。いずれにせよ、このアルバムが楽しく、一日の流れにさりげなく溶け込むことを願っているよ」と話している。

 

なお、アルバムのアートワークを手掛けたのは、2020年リリースの『Umoja』同様、日本人デザイナーのKenichi Omura。


クルアンビン、エル・ミシェルズ・アフェアー、テーム・インパラ、エズラ・コレクティヴといったサイケ/フォーク/インディ/ファンク好きに突き刺さること間違いなしのニュー・アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』に乞うご期待!

 

 

 「Can You Play Me A Song」

 

 

Skinshape 『 Another Side of Skinshape』 - New Album




タイトル:Another Side Of Skinshape(アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ)

発売日:2024年9月27日(金)

レーベル: Lewis Recordings


トラックリスト

1. Stornoway

2. Mulatu Of Ethiopia

3. Can You Play Me A Song?

4. Lady Sun (feat. Hollie Cook)

5. It’s About Time

6. How Can It Be?

7. Ananda

8. Road

9. Massako

10. There’s Only Hope


アルバム配信予約受付中!

Pre-order/ Pre-Add (配信リンク): https://orcd.co/0db0e46



「Can You Play Me A Song?」- New Single




タイトル:Can You Play Me A Song?(キャン・ユー・プレイ・ミー・ア・ソング?)

配信開始日:配信中!

レーベル: Lewis Recordings


<トラックリスト>

1. Can You Play Me A Song?


配信リンク: https://orcd.co/xadbk7r



Will Deary 【バイオグラフィー】:

 

ロンドンのインディ・シーンを拠点に活動するマルチ・プロデューサー、ウィル・ドーリーによるソロ・プロジェクト。

 

2012年結成のロンドンのアート・ロック・バンド、パレスの元ベーシストとしても知られている。これまで、ソウル、ファンク、サイケ、ソフト・ロック、ヒップホップ、アフロビートといった様々なサウンドをキャリアで築いてきた彼は、身近にある楽器はドラム以外、ほぼ全て(ギター、ベース、キーボード、パーカッション、シタール、フルート、そしてヴォーカル)自らが手がけるという、まさにマルチ・プレイヤー。2012年に4曲入りセルフ・タイトルEPでデビューし、2014年には同名のアルバムをリリース。

 

そして、これまでにスキンシェイプとして8枚のアルバムを発表している。2014年にはロンドンのインディー・バンド、パレスにベーシストとして参加し、2015年の『チェイス・ザ・ライト』、2016年の『ソー・ロング・フォーエヴァー』といった2枚のアルバムの制作に携わっている。

 

その後、スキンシェイプの活動に専念するために同バンドを脱退。来る2024年9月に9作目のアルバムとなる『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』をリリースした後は、UK/USツアーが決定している。

 

M.Ward


米国のシンガーソングライター、M. Ward(M.ウォード)が新しいベスト・アルバム『For Beginners: The Best of M. Ward』を発表した。『For Beginners』は、ディスコグラフィから抜粋された14曲で構成され、新曲「Cry」が追加収録される。Mergeから9月13日にリリースされる。

 

新たにレコーディングされた 「Cry」を含め、Merge Recordsのディスコグラフィーの中から14曲を集めた『For Beginners』は、入門書であると同時に、お気に入りの曲を新たな命を吹き込む形で並べたミックステープでもある。



2006年の『Post-War』に収録された「Chinese Translation」と「Poison Cup」に始まり、『For Beginners』ではスタジオでの録音の腕を上げたウォードに迫る。2003年の『Transfiguration of Vincent』に収録されたボウイの「Let's Dance」の特異なカヴァーから、2009年の『Hold Time』に収録された陽気な「Never Had Nobody Like You」へと展開する。

 

時系列的なアレンジが示唆する整然とした進化のラインよりも、『For Beginners』をひとつにまとめているのは、ウォードの完璧な演奏である。彼のサウンドは、ローファイなホーム・レコーディングからエレクトリックなものへとその意義を拡大させようとしている、 ラジオで聴けるようなストンプまでを網羅している。M.Wardの魅力を知るのに最適な一枚となるだろう。

 

 

昨年、M.ウォードは、ソロアルバム『supernatural thing』を発表したほか、ドクター・ドッグのセルフタイトル・アルバムに収録されたシングル「Love Struck」でフィーチャーされている。コナー・オバースト、ジム・ジェイムズ、マイク・モギス、そして、今回のウィル・ジョンソンも参加するスーパーグループ、モンスター・オブ・フォークは、最近、ボーナストラック入りのセルフタイトル・アルバムの15周年記念リイシューを発表した。




M. Ward  『For Beginners: The Best of M. Ward』

Label: Merge

Release: 2024年9月13日

 

Tracklist:


1. Chinese Translation

2. Poison Cup

3. Let’s Dance

4. Never Had Nobody Like You

5. Lullaby + Exile

6. Duet for Guitars #3

7. Vincent O’Brien

8. For Beginners

9. Magic Trick

10. Outta My Head

11. Undertaker

12. Rollercoaster

13. Hold Time

14. Cry

Why Bonnie


テキサス出身のブレア・ハワートンのプロジェクト、Why Bonnie(ホワイ・ボニー)が8月30日にFire Talkからニューアルバム『Wish On The Bone』をリリースする。そのアルバムからの新曲「Rhyme or Reason」とツアー日程が発表された。新曲とツアー日程は以下の通り。


プレスリリースによると、"Rhyme or Reason "のインスピレーションの源は、「彼女がソングライターとして本領を発揮し始めた頃に起きた、ハワードンの兄を亡くした後の希望感の再生について」だという。それに対処するために、彼女は次から次へと曲を書き、苦しみながらもカタログを作り、そうすることでスピリチュアリティとの新しい関係を築いた。


ハワードンはこう付け加えた。 「『Rhyme or Reason』は、人生の諸行無常と折り合いをつけること、そしてそれがいかに恐ろしくもあり、また本当に美しいかを歌っている」

 

ホワイ・ボニーは2022年、デビュー・アルバム『90 in November』をKeeled Scalesからリリース。2023年、彼女は次作アルバムには収録されていない新曲「Apple Tree」を発表した。以前は、このプロジェクトはバンドとして発表されることが多かったが、現在はソロ活動という意味合いが強いようだ。


「あのアルバムから私は変わったし、これからも変わり続けるだろうと信じている」とハワードンはデビューからの年月について語る。

 

 「Rhyme or Reason」

 

Why Bonnie Tour:


Fri. July 26 - Brooklyn, NY @ Union Pool *

Thu. Aug. 29 - Brooklyn NY @ Union Pool ^

Fri. Sep. 20 - Boston, MA @ Deep Cuts

Sat. Sep. 21 - Montreal, QC @ Cabaret Fouf

Sun. Sep. 22 - Toronto, ON @ Monarch Tavern

Tue. Sep. 24 - Chicago, IL @ Hideout

Wed. Sep. 25 - Cleveland, OH @ Beachland Tavern

Thu. Sep. 26 - Washington, DC @ Comet Ping Pong

Fri. Sep. 27 - Philadelphia, PA @ Milkboy

* w/ poolblood

^ w/ Sex Week

 

©︎Pryce Pul


Peel Dream Magazineは、次作アルバム『Rose Main Reading Room』からの最新シングル「Wish You Well」を発表した。このシングルは、リード曲「Lie in the Gutter」に続く。以下のビデオでチェックしてみよう。


「"Wish You Well "は、私たち誰もが持っている生気と、それがいかに私たちの最悪の部分を引き出すかについて歌ったものだ」とプロジェクトのジョー・スティーヴンスは声明で説明している。


「ローズ・メイン・リーディング・ルームは、文明世界と自然世界の接点を多く扱っている。この曲は、人生の様々な局面で私を振り回した人々の影響から自分を解放するような、声明として書いたんだ」

 

「ミュージック・ビデオでは、オリビアと私は密かに他人を貶めようとする人々を描いている。みんなの行動は、自然の残酷で暴力的なシーンや、DNAや細胞のイメージと重ね合わされ、完全に本質的なものだという考えを確立している。このビデオは、Otiumと名乗る素晴らしい映像作家と一緒に撮影し、ロサンゼルスのダウンタウンにあるサイクロラマの壁の前で、さまざまなパフォーマンス・セットアップで遊ぶことができた。


『Rose Main Reading Room』は9月4日にTopshelf Recordsよりリリースされる。



ワシントンD.C.のオルトロックバンド、Enumclawがニューシングル 「Not Just Yet」を発表した。この曲は、Run For Cover Recordsから8月30日にリリースされるアルバム『Home in Another Life』からの「Not Just Yet」に続くシングル。


この曲は、バンド・メンバーであるアラミス・ジョンソンとイーライ・エドワーズのマイク叔父さんへの頌歌として書かれた。最近、初期のアルツハイマー病と診断されたアラミスは、"彼にすべてを教えてくれた "マイク叔父さんともっと一緒にいたいと切望している。


このシングルと同時に、エナムクローは、リード・シングル 「Change」のビデオも監督したジョン・C・ピーターソンとタッグを組み、長いズームアウト・ショットを中心とした爆発的なミュージックビデオを制作した。


このビデオは、アンドリュー・ダーギン・バーンズがRizzoとQuasi Skateboardsのために描いたペインティングから始まった。


「バーンズのペインティングにはストーリーがあり、ワンテイクのミュージックビデオにしたいとずっと思っていた。1年以上前にアラミスに僕のアイデアを話したら、彼はずっと『やるしかない』と固辞していた。「Not Just Yet」は完璧な曲だ。短くて甘い。大音量で。絵に命を吹き込むためにベストを尽くしたし、正当な結果を残せたと思う。バーンズが撮影現場にいて、私たちのやっていることを認めてくれたことはありがたかった。テクノクレーン、街の路地、爆発物、そして子供たちを必要とするミュージックビデオを制作するのは結構難しいことがわかった」



©︎Patrick Gunning

UKのロックバンド、Sports Teamがサード・アルバム『Boys These Days』を発表した。アルバムは来年の2月28日に発売される。


アルバムの発表と合わせて、日本車のSUBARUをテーマにした「I'm in Love」がリリースされた。夏の暑さを和らげるような清涼感あふれるナンバー。ソフィスティポップをベースにしたきらびやかなポップナンバーで、心なしかシティポップのようなアーバンでバブリーな空気感がゆらめく。この曲を聴く限りでは、今回のアルバムはやや前作とは異なる音楽性になるに違いない。

 

久しぶりにスポーツ・チームが帰ってくる。音楽のペダルをメタルに踏み込み、サクソフォンを全開にしたマーキュリー賞ノミネートの6人組が、3枚目のスタジオ・アルバム『Boys These Days』を届けてくれる。マーキュリー賞にノミネートされた「Deep Down Happy」(2020年)と「Gulp!」に続く新作アルバムだ。



プレファブ・スプラウトとロキシー・ミュージックを足したようなこのバンドは叙情的な洞察力と、これまでで最もダイナミックな音楽パフォーマンスを併せ持つ。スポーツ・チームはコンテンツのさらなる深淵に分け入ろうとしている。

 

「Boys These Days」は、広告の誇大広告から人間関係の機能不全に至るまで、デジタルの潮流がIRLの岸辺に押し寄せる地点に位置するあらゆるものに焦点を絞っているが、彼らの視点は、スポーツ・チームが我々と一緒にスクロールしているように、その風景に没入することにある。


ニューアルバムは、ブラックメタル発祥の地であるベルゲンでレコーディングされた。2024年初頭のセッションで、スポーツ・チームはこれまでで最も輝かしく魅力的なレコードを作り上げた。


スポーツチームのボーカルのアレックス・ライスはニュー・シングル「I'm In Love(Subaru)」についてこう語っている。

 

「この曲は、どんな欲望も投影できる艶やかな無生物と、その背後に忍び寄るあらゆるものとの間の緊張感をとらえている。この曲は、車や人々の関係の捉え方について語る、とても単純なラブソングであるんだ」

 

 

 「I'm In Love(Subaru)」

 

 

 

Sports Team 『Boys These Days』


Label: Bright Antenna/ Distiller Records

Release: 2025年2月28日

 

oso oso


ジェイド・リリトリは、oso osoのニューアルバム『life till bones』を8月9日に自身のレーベルYunahonからリリースすると発表した。前作アルバムでは、亡き兄弟のためにセンチメンタルなエモパンク/ジャングルポップを制作した。次作アルバムはどういった内容になるのか楽しみです。

 

次作アルバムには、最近のシングル「all of my love」と新曲「that's what time does」が収録されている。アルバムのジャケットとトラックリストは下にスクロールしてください。


「ライフ・トゥ・ボーンズ」は、頻繁にコラボレーションを行なっているビリー・マンニーノがプロデュースした。この10曲入りの作品は、2022年の『sore thumb』に続くものとなる。

 

 「that's what time does」



oso oso 『life till bones』


Label: Yunahon

Release: 2024年8月9日

Tracklist:


1. many ways

2. the country club

3. all of my love

4. that’s what time does

5. stoke

6. dog without its bark

7. seesaw

8. application

9. skippy

10. other people’s stories

 

 

 「all of my love」

Japandroid
©︎Dan Monick


バンクーバー出身のインディーロックユニット、Japandroid(ジャパンドロイド)がニューアルバム『Fate and Alcohol』を発表しました。2017年の『Near to the Wild Heart of Life』以来となるバンクーバー出身のデュオのアルバムは彼らのラストアルバムでもあり、ANTI-から10月18日にリリースされます。本日の発表と合わせて、新曲「Chicago」が公開されました。下記よりご視聴下さい。


ジャパンドロイドは、長年のコラボレーターであるジェシー・ガンダーと『Fate and Alcohol』を共同プロデュースした。

 

「前作では、ジャパンドロイドの曲の定義を広げたかったので、わざとデモをかなりオープンにし、スタジオでより柔軟に実験できるようにしたんだ」とブライアン・キングは声明で語っている。

 

「当時、このアプローチは新しくエキサイティングで、もっと大胆に、もっとチャンスを狙っていた。自分たちの特徴的なサウンドをよりシネマティックにすることを目指していた。今回は、ジェシーが曲を聴く前に、すべての曲が私たちのジャム・スペースでリッピングされていることを確認した」

 

「”Chicago”の最初のデモを聴くと、レコードで聴くよりも明らかに荒削りだが、すべてがそこにある。iPhoneで録音したものでも、エネルギーは明らかだったし、フィーリングははっきりと伝わってきた」


もう一人のメンバーであるデイヴ・プラウズはこう付け加えています。「そして、世界で最も独創的で挑戦的なバンドでもない。でも、僕らはいつも自分たちのやることに情熱を注いできたし、それが多くの人の心に響いたと思う。そして、私たちがそのようなバンドになれたことに本当に感謝しているよ」

 

 

「Chicago」




Japandroid 『Fate and Alcohol』

Label: ANTI

Release: 2024年10月18日


Tracklist:


 1. Near To The Wild Heart Of Life
 2. North East South West
 3. True Love And A Free Life Of Free Will
 4. I'm Sorry (For Not Finding You Sooner)
 5. Arc Of Bar
 6. Midnight To Morning
 7. No Known Drink Or Drug
 8. In A Body Like A Grave



 Land Of Talk  『The EPs』 


 

Label: Saddle Creek

Release: 2024年7月12日

 

 

Review

 

現在、オルタナティヴロックの再興が起こっているのが、カナダのモントリオール。ジャズフェスティバルを中心に栄えてきたモントリオールのバンドは、米国のオルタナティヴロックの系譜に属しながらも、音楽性の性質が少し異なることで知られています。


そして、無名のバンドであっても、意外とベテランのバンドが多い。エリザベス・パウエル率いるLand Of Talkは、デビューからキャリア18年目に突入しているが、今なおデビュー当時のバンドのような熱情や鮮烈さを失わずに活動をつづけています。

 

「The EPs」はバンドの最初期の音楽性を踏襲し、テクスチャーとトーンの実験性を活かし、憧れと贖罪をテーマにしている。ポスト・パンクからのフィードバックがあるという点では、同地のColaと同様だが、ボーカリストのエリザベス・パウエルのボーカルが独特なキャラクター性を付け加えている。


オープナー「Sixteen Asterisk」は、ポスト・パンクサウンドとオルトロックの中間を行く楽曲であるが、パウエルのボーカルは何かに対する憧憬を示すかのように、ポピュラーの要素を付加する。しかし、バンド全体のサウンドは平凡なものにはならず、少しひねりが付け加えられている。


もちろん、変拍子を織り交ぜた立体的なサウンド、そしてシンセサイザーの要素がポスト・パンクバンドとしての性質を強化し、ニューヨークのBodegaのような先鋭的な音楽性をもたらす。さらに、ジャキジャキとした不協和音を活かしたギターが、それらに独自のテイストをもたらす。テクスチャーとトーンの複雑性という実験的な要素がありながらも聞きやすいのは、エリザベスのボーカルがポップネスを意識しているからでしょう。

 

 

懐古的なメロディーを擁するシンセピアノで始まる「May You Never」は、どことなく映画音楽のようなピクチャレスクな印象をもたらす。バンドの実験的な性質を象徴づけている。そして、その後、米国のフィラデルフィアのバンドとも共鳴付けられるようなオルトロックソングへと移行する。


特に、シンプルなドラムのプレイから引き出される、アンセミックなパウエルのボーカルは、米国のバンドとは異なるエキゾチズムをもたらす。ボーカルと呼応するようにして暴れまわるギターラインは、Land Of Talkの象徴的なサウンドと言えるでしょう。


しかし、その後、ディストーションを配したローファイなギター、さらにはドライブ感を持つドラムサウンドがバンド全体を巧みにリードし、ボーカルを上手く演出したり、引き立てたりしている。いわばベテランのバンドとしての巧みな展開力やリズムの運びが、曲に聴きごたえをもたらす。荒削りであるが、米国の90年代や00年代のSebadohのようなサウンドは、かなり魅力的です。


Land Of Talkのようなバンドは、男性のボーカリストをフロントマンに擁するバンドとは異なり、その夢想的な雰囲気や恋い焦がれるようなアトモスフィアが含まれる場合が多い。それらが硬派なオルトロック・バンドとしての枠組みの中、絶妙なバランス感覚をもたらすことがある。Alvveys、Ratboys、Wednesdayといった現代の注目すべきオルトロックバンドは、このバランス感覚を上手に活かしながら、聞きやすく乗りやすいインディーロックソングを制作している。

 

ご多分に漏れず、Land Of Talkも同様に、「As Me」「A Series of Small Flames」といった中盤のハイライトの中で、これらの幻想性と夢想的な感覚をオルトロックソングの中に織り交ぜている。ドラムの演奏がバンドの司令塔や大きな骨組みとなっているのは事実だが、その前面で変幻自在に展開されるギターやボーカルは、シューゲイズ風のギターを披露したり、また、それとは別に、90年代の米国のオルタナティヴロックのように乾いた質感を持つフレーズを演奏している。 


これが全体的に合わさることで、ボーカルのThrowing Musesの系譜にあるファンシーなロックソングが構築される。一方、「A Series of Small Flames」では、Ratboysを彷彿とさせる夢想的なインディーロックソングである。続いて、「As Me」では、ギターがシューゲイズの範疇を越えて、アートのドローイングのような色彩的なテクスチャーを作り上げ、最終的にサイケデリックな性質を帯びる。これらは、彼らが平均的なバンドではないことの証立てになるかもしれません。

 

「Leave It Alone」、「Moment Feed」に関しては、エクスペリメンタルポップを下地にしたオルトロックソングに移行する。


これらはエリザベス・フレイザーのような現代的なアートポップソングを重視したバンドサウンドと称せるかもしれない。 後者の「Moment Feed」では、アルバムの序盤のポストパンクの系譜にある変則的なリズム、立体的なサウンドのテクスチャーを構築し、リアルなサウンドを作り上げる。ベースラインが全体的なサウンドから浮かび上がってくる時、バンドのもう一つのキャラクターである"シックな印象"が立ちのぼる。


「Something Will Be Said」では、バンドのローファイ、サイケ、R&Bなどの意外な性質がにじみ出て、EPの全体的な印象はガラリと一変する。最後の曲には、パウエルのソングライターとしての才覚が遺憾なく発揮されているようにおもえる。ギターとシンセのテクスチャーが組み合わされると、夢想的とか幻想的とかいう月並みな言葉以上の深さがにじみ出てくるのです。

 

"音楽によるアトモスフィア"といえばそれまでに過ぎませんが、この最後の曲には、バンド全体のスピリットのようなものが宿っている。アウトロの流れを生み出す熱狂的なギターソロ、背後のテクスチャーを構成するギター、シンセが組み合わされ、イントロからは予測しえないような壮大なエンディングを生み出す。この曲では、全体で一つになるような理想的なサウンドが味わえます。


本来は分離した存在がアンサンブルを通じて、どのような一体感をもたらすか? これは、バンドや複数のミュージシャンのセッションという形態でしかなしえないことでもある。

 

多くの方がご存知の通り、現在は有力な各メーカーの開発力によって、レコーディング技術が日々進歩し続けているため、ソロアーティストでもバックバンドやコラボレーターの協力を得ることにより、バンドに引けを取らない高い水準のサウンドを制作出来るようになっています。そのため、今後は、バンドでなければいけない理由を示すことが重要になってくるかもしれません。

 

 

78/100 

 

 

©Violet Teegardin

 

Luner Vacation(ルナー・ヴァケイション)は、近日発売予定のアルバム『Everything Matters, Everything's Fire』のニューシングル「Sick」を発表した。「Set the Stage」に続くセカンドシングルを以下からチェックしてみよう。


ギター&ヴォーカルのゲップ・レパスキーは、「この曲は、偶然オープンマイクのスタンドアップ・コメディ・ショーに行った後に生まれた。誰も面白くなかったし、ほとんどのジョークは私たちを犠牲になった。でもツアー中にこの曲を再び取り上げて、マンハッタンに向かう車の中で書き終えたんだ。崩壊しつつあるインフラについての歌詞にインスピレーションを得ている」と説明している。


2021年の『Inside Every Fig Is a Dead Wasp』に続くLunar Vacationの新作LPは、9月13日にKeeled Scalesからリリースされる。

 


「Sick」

 Horse Jumper of Love announces new album "Disaster Trick".


マサチューセッツのインディーロックバンド、Horse Jumper of Love(ホース・ジャンパー・オブ・ラブ)は、現在もなお根強い人気を誇るスロウコアのシーンの一角を担う存在である。バンドはアルバム『Disaster Trick』を発表した。Run For Coverから8月16日に発売。リードトラックとなる「Snow Angel」は、MJ・レンダーマンとリス・フラワーをフィーチャーしている。


リード・ヴォーカル兼ギタリストのディミトリ・ジャンノポラスは、プレスリリースで新曲について次のように語っている。


「僕の曲の多くはイメージから始まり、そこから意識の流れが引き継がれるんだ。私の曲の多くはイメージから始まり、そこから意識の流れが引き継がれる。それは、『Actual Air』の最初の詩『Snow』に由来している。この作品を通して、デイビッド・バーマンは雪というアイデアを比喩的かつ抽象的に探求している。彼は、雪が降っているときの屋外の響きを部屋のように表現し、スノーエンジェルを農夫が撮影し、無防備で孤立している......私は、寒さの中で外にいて何かを欲しているという感覚を利用したかったのです」


アイコニックなビデオ・ディレクターのランス・バングスは、この曲のビデオについてこう語っている。


「『スノー・エンジェル』は、視覚を混乱させるようなキネティックで包み込むような弾幕として視覚的に表現したいと感じた。私たちは仕掛けを作り、新しいテクニックを考案し、様々なスピードで曲の大音量バージョンを準備した。あるテイクを撮った後、私たちは連続したショットの中に、それまで見たことのないようなものを思い浮かべ、目をそらしたり、他のものに切り替えたりしたくないと思った」





2nd Single 「Today's Iconoclast」


Horse Jumper of Loveは、Run For Coverから8月16日にリリース予定のアルバム『Disaster Trick』から新曲「Today's Iconoclast」を公開した。Rhys Scarabosio監督による「Today's Iconclast」のビデオは以下から。


リード・ヴォーカルでギタリストのディミトリ・ジャンノポロスは、プレスリリースで新曲について次のように語っている。

 

「パゾリーニの映画を見ていて、誰かが彼のことをイコノクラストと表現しているのを読んだんだ。私はその言葉と考えに取りつかれた。良いものを作るためには、ある種の信念を破壊しなければならない。変化を受け入れ、適応できなければならない。多くの人が不幸や不満足に終わってしまうから、みんなできるだけ象徴的な存在になるべきだと思った。自分の欲望について、自分が真実だと信じているものを破壊する努力をすれば、みんなもっと幸せになれると思うんだ"


ジャンノプロスの最近の断酒を踏まえて、彼はこのアルバムについて次のように語っている:「このアルバムは、とてもクリアな心で臨んだ初めてのアルバムだった。以前は、ただスタジオに来て、酒を飲んで、レコーディングしていた。ここでは、すべてが目的を持っているように感じた。


 -WHY?- Announces New Album "The Well I Fell Into" 


ヨニ・ウルフが、5年ぶりとなる”WHY?”名義のアルバム『The Well I Fell Into』を発表しました。オハイオ/シンシナティで90年代から活動するヒップホップ/インディーズロックバンドです。

 

ウルフとバンドメイトのジョサイア・ウルフ、ダグ・マクディアミド、アンドリュー・ブローダーは、ウィスコンシン州オークレアのハイブ・スタジオで、ブライアン・ジョセフ(スーフィアン・スティーヴンス、ボン・アイヴァー)とレコーディングを行い、ジア・マーガレット、フィノムのマシー・スチュワート、ララ・ララのリリー・ウェスト、セレンゲティ、エイダ・リアらが参加している。


「”WHY? "のアルバムを作ることは、私の人生の一時期を締めくくる機会なのです」とウルフは言う。「私は、自分がどう感じているのか、何かがその瞬間にどう影響しているのかを自覚するのが苦手なんだ。でも、書くということは、自分の棚卸しをすることなんだ」


ファースト・シングルは、瑞々しく、揺れ動くストリングスに満ちた「The Letters, Etc.」である。

 

「この曲は1、2年前から部分的に書いていたんだけど、人生の経験が重なって今の形になるまで、完成させる言葉が浮かばなかった。偏執的な憶測となる可能性もあるが、この曲は、困難な長期の別離に踏み出す際に、ただ最善を尽くしてほしいという願いを込めた、受容の歌でもある」 



「The Letters, Etc.」
 

 

 

 2nd Single  「G-dzillah G'dolah」



WHY?は、ニューシングル「G-dzillah G'dolah」で次のアルバム『The Well I Fell Into』をプレビューした。Bon Iverの影響下にある柔らかなポップソングである。リード・シングル「The Letters, Etc.」に続くこの曲には、スコット・フレデットが監督したビデオが付いている。


バンドのヨニ・ウルフは声明の中でこう説明している。「飛行機の中で、しばらく会っていなかった恋人に会うために飛んでいるこの男は、間近に迫った婚約の予感に小ささと無力さを感じている。彼女不在の間に、彼は彼女を彼の愛情の中にそびえ立つ怪物、G-dzillah G'dolah-究極の神の影の悪役に再構築した」


「彼は彼女に、会えば「仲直り」すると断言するが、彼が過去のぼろぼろを掴んでいるだけなのは明らかだ。彼はそれを感じ、彼女は離れていく。彼は最高に怯えていて、そもそも彼女を失った自分を憎んでいる。この歌はすべて、出会いを予期して3万フィート上空から語られている」


WHY?のニューアルバム『The Well I Fell Into』は8月2日にWHY?の自主レーベルから発売。

 

 

 

「G-dzillah G'dolah」

 

 

3rd Single 「Jump」


WHY?は、ニューアルバム『The Well I Fell Into』の最新シングルとして「Jump」を公開した。「Jump」は、同じような絶望的で絶望的な気持ちから様々な時期(2014年頃から始まり、2022年に完成)に書かれました」とWHY?。


「確かに悲観的な曲だが、少なくとも手を差し伸べている。助けを求めている。確かに悲観的な曲だけど、少なくとも手を差し伸べている。僕らの音楽は、クソみたいな経験をしながらも、より良い存在になろうとしている人たちのためにあるような気がしている。つまり”Jump"は、そのようなクソの奥底から書かれたものなんだ。でも、その先にはいつも朝日が昇る。あなたの周りにはいつも誰かがいて、声をかけてくれる。つまりそこには優しさがあるんだ」



映像を手掛けたフレデット監督は、このビジュアルについて次のように説明している。

 

「『G-dzillah G'dolah』のよりテクニカルなビデオと、ヨニの妥協的な病気の発作の後だったので、彼はDIYで生々しく、素早くやりたかった。トイレンズ1本とライト1個を使って、3晩で撮影し、数日で編集した(エヴァン・カトラー・ワトルズに感謝)」

 

「撮影を始める前にやったことといえば、どのような歩き方が後ろ姿に一番映えるかを確認するための動作テストだけだった。ほとんど計画を立てず、撮影しながら作り上げていった。貴重なものではなかったし、それがWHYのいいところだと思うよ」


『The Well I Fell Into』は8月2日にWaterlinesよりリリースされる。


「Jump」

 

 

WHY? 『The Well I Fell Into』

Label:Waterlines

Release:  2024/08/02

 

Tracklist:


1. Lauderdale Detour

2. Marigold

3. Brand New

4. G-dzillah G’dolah

5. When We Do The Dance

6. Jump

7. Later at The Loon

8. Nis(s)an Dreams, Pt. 1

9. The Letters, Etc.

10. What’s Me?

11. Sin Imperial

12. Atreyu

13. Versa Go!

14. Sending Out a Pamphlet

 STONE 『Fear Life For A Lifetime』

 


Label: Polydor

Release: 2024年7月12日

 

 

Review   


リバプールの四人組 STONEの鮮烈なデビューアルバム

 


リバプールの四人組、STONEは2022年頃からイギリス国内の注目のライブ・バンドとしてファンベースを着実に拡大させてきた。シングル「Money」 、デビューEP「Punkadonk」などバンドの最初期の必須アイテムはもちろん、OASIS、Verveの次世代のUKロックバンドとしての存在感を見せつけてきた。四人組は、記念すべきデビューアルバムをポリドールからリリースする。彼らのファンやイギリスの複数の音楽メディアにとっては、このアルバムがそれなりのスマッシュヒットを記録したとしても、さほど大きな驚きはないかもしれない。彼らは上記のシングルやEPで他のインディーロックバンドとは異なる力や影響力を対外的に示してきたのだから。


エネルギッシュで痛快なロックというのがリバプールのストーンの最大の持ち味である。青臭さや拙さは、実際的なライブアクトで培われた演奏技術、そして、ポリドールの高水準の録音技術によって弱点となるどころか、むしろエバーグリーンな感覚を引き立てている。ストーンのロックソングは、ポスト・ブリットポップに位置づけられるが、商業的な音楽性とベースメントのロックが混在している。このデビュー・アルバムは、"STONEとは何者か?"ということを対外的に示すにとどまらず、イギリス国外にも彼らの名を轟かせる機会になってもおかしくない。

 

 

曲は青春物語として展開され、若者時代の激動の経験を掘り下げている。リッチ・コスティのプロデュースによるこのアルバムは、愛、野心、自信喪失、帰属意識など、さまざまなテーマに取り組んでいる。いわば、ロイル・カーナーが持つテーマをオルタナティヴロックバンドとしてストーンは探求している。すでに言ったように、音楽をそれほど知り尽くしていないことは長所となる場合があり、まだ見ぬ地点に向けてストーンは肩を組みながら歩き始めたところだ。

  

デビュー当時のアークティック・モンキーズのように、ヒップホップやポストパンク、それからブリットポップ、それ以前のマンチェスターサウンドの影響を交えながら、彼らは挨拶代わりのタイトルトラック「Fear Life For A Lifetime」で壮大なSEを背景にスポークンワードを吐露する。内的な告白のようでいて、勇敢で自負がある。彼らは、この曲がデビューアルバムの始まりを飾ることを自覚している。それは稀に、実際的な音楽以上の迫力とダイナミックさをもたらす。無謀であること……、これはデビューを果たすバンドのみに許された特権でもあり、恐れ知らずが多くのオーディエンスの人気を獲得する場合がある。かつてのカサビアンのように。

 

もちろん、それはデビューバンドが陥りがちな罠、無謀さが傲慢さに繋がる恐れがあるが、少なくともストーンのファーストアルバムには、そういったものがほとんど感じられない。 彼らの音楽から読み取れるのは、実直さとひたむきさである。90年代のブリット・ポップの熱狂的な雰囲気を収めた「My Thoughts Go」は、確かにバンガー的なものを狙っているが、純粋なエネルギーが放出されている。これはライブ・バンドとして出発したストーンが地元のコミュニティやファンに支えられてきたことへの報恩、あるいは感謝を示しているのではないだろうか。


確かに、Smith,Stone Roses,OASIS、Verveといった80、90年代前後のUKロックの象徴的なサウンド、ボーカル、ギターを彼らは継承している。しかし、ステレオタイプのロックであろうとも形骸化せず、サビのコーラスに入ると、口ずさませるものがある。そして、サビに続いてドライブ感のある痛快なサウンドがUKロックらしい哀愁を漂わせる。デビュー当時のカサビアンのようなエキゾチックなシンセを交え、スタジアム級のアンセムナンバーを作り上げる。彼らにはすでに目に浮かんでいるのかもしれない。この曲で多くの観客がシンガロングする姿が。


「My Thoughts Go」- Best Track


「Roses」、「Train」を聴くと、ストーンがどれほどUKロックをこよなく愛しているのか手に取るように伝わってくる。しかし、スタンダードな2曲を挟んだ後、彼らはオルタナティヴなロックソングを選んでいる。


内省的な感覚を織り交ぜたギターロック「Say It Out Loud」はストーンのエネルギッシュなロックバンドとは異なるアンニュイでセンチメンタルな一面を示している。これらは、バンドとして手の内をすべて明かしておらず、曲の引き出しやバリエーションを持つことの証しとなるかもしれない。


丹念に作り込まれたローファイ寄りのギターロックは、80年代以降のブリット・ポップの潜在的な音楽性を暗示している。彼らはリバプールの現代的な若者の声や生き方を反映させ、それらを現代的なオルトロックに組み替える。同レーベルのサム・フェンダーのソングライティングに近い。つまりストーンは、この曲を通じて傷んだ若者の肩を支えるような共感性をもたらす。

 

少なくとも、ストーンは高い場所から歌をうたったりするのではなく、他の若者と同じ目線で歌をうたう。彼らは、国内のライブで人気を獲得しても自分たちを特別視したり神聖化することはない。それは地元のファンや近郊のファンに支えられていることを理解しているからなのか。

 

1970年から2020年の音楽シーンの流れを見ると、商業的に売れるロックアルバムを制作する上で重要なことは、バンガー的な理解しやすいアンセミックな曲と、バンドが心からやりたい曲を共存させることかもしれない。

 

アルバムの序盤でバンガーをバンドは提供した後、ストーンは、新人バンドとしてただならぬ才覚を見せつける。「Save Me」のハスキーなボーカルとガレージ・ロック/ストーナーロックの系譜にあるアグレッシヴなサウンドは、力感がありすぎたり気負いがあるけれど、デビューバンドとして絶妙な領域にとどまっている。オルタネイトなバンドであるべきか、それともメインストリームにあるバンドであるべきか? それらの戸惑いを示したロックソングと言える。これらの苦悩を元にした力強いパンキッシュなロックソングこそ、イギリスの音楽ファンの共感を誘うものとなるだろう。ストーンは、サム・フェンダーと同じように、若者の苦悩の代弁者となり、ヘヴィーなグルーヴを擁する痛快なビートに乗せ、丹念に歌をうたいこんでいる。この曲にはデビュー作に持ちうるすべてを詰め込もうというバンドの心意気が感じられる。 


それは最終的に現代のトレンドであるポスト・パンク、メタル、スクリーモ、エモ、ミクスチャーロックと、その時々に形を変えながら移ろい変わっていく。ヤングブラッドのような掴みがある素晴らしい一曲であるが、ストーンの武器はそれだけにとどまらない。英国のティーンネイジャーの多感さ、そして気持ちの移ろいの早さ、絶えず揺れ動く国内の政変の中、たくましく生きていこうとする若者の生き方が、この曲に体現されているとしてもふしぎではないのだ。

 


アルバムの後半でも聴き逃がせない曲がある。着目すべきは、曲のタイトルがそのままバンドからのメッセージとなっていて、シンプルでわかりやすい内容となっている。実際、タイトルと曲の雰囲気も合致していて、ストーンはファンの期待を裏切ることはない。オルタネイトなバンドでありながらバンガーも書けるという点では、要注目のバンドであることに疑いはない。

 

「Never Gonna Die」は、アンフィールドのアンセム「You'll Never Walk Alone」を思い起こさせ、FCリバプールに対する地元愛が示されているのかもしれない。実際的には、Underworld、New Orderの系譜、あるいは、Killersの次世代に位置づけられる痛快なダンスロックナンバーを提供している。この曲は、「My Thoughts Go」「Save Me」といったトラックと合わせてライブの定番になりそうだ。他にも現代的なスポークンワードとパンクの融合というトレンドの形を踏まえ、「Sold My Soul」というファイトスピリット満載のアンセムナンバーを作り上げている。そしてストーンは、他のバンドよりもライブスペースで映えるソングライティングを意識しているように思える。これらの曲がより大きめの会場でどのように聞こえるのか楽しみにしたい。

 

「Hotel」では、Bad Bunnyの系譜にあるプエルトリコのラップからの影響を活かしている。それが最終的にアートワークに象徴づけられるような癒やしと開放感を生み出す。やはり、ストーンは、同年代の若者に対して同じ目線で歌をうたい、「Save Yourself」ではラップを絡めたオルトフォーク風のサウンドで本作を締めくくっている。しかし、ストーンの歌詞はパワフルであり、言葉が上滑りしたりすることがない。彼らの曲は偽りがなくて、誠実な感覚を感じさせる。

 

ストーンの曲は生きているかのようにエネルギッシュに躍動することがある。もちろんボーカルにもリアルな言葉の力がある。それがポップソングそのものの説得力に加えて、彼らの年齢からは想像しえない渋く円熟味のある音楽性をもたらす場合がある。


現時点では、音楽のジャンルにこだわらず、その時々に音楽を選んでいるような感じがあるため、自由な気風に充ちたアルバムとして楽しめるはず。収録曲にはストーンの今後の飛躍のヒントになりそうな"ダイヤモンドの原石"が隠されている。それを見つけるという楽しみもありそうだ。

 


 

86/100

 

  

 

STONE-『Fear Life For A Lifetime』はポリドールから7月12日にリリース。ストリーミングはこちら

Tanukicyan announces new EP "Circles

 

オークランドのハンナ・ヴァン・ルーンによるシューゲイザー・プロジェクト、Tanukicyan(タヌキチャン)が、昨年の『GIZMO』に続く新作EPをリリースする。『Circles』はCarparkから9月20日にリリース予定で、リード・シングル「City Bus」を下記より視聴できる。

 

従来、ヴァン・ルーンの作品はToro y Moiのチャズ・ベアがプロデュースしてきたが、新作EPでは代わりにフランコ・リードと組んでいる。

 

10月までに、彼らはシングル「NPC」でタッグを組んだ。そして今回、彼らのコラボレーションにより、タヌキチャンのドリーミーでファズアウトなサウンドのダークな側面を追求した5曲入りのEPが完成した。このEPには、TikTokのシューゲイザー・スター、ウィスプが参加している。


ハンナ・ヴァン・ルーンは "City Bus "について次のように語っています。

 

「この曲は、少しバラバラで、意識の流れのようなもので、記憶と現在から作られています。アイデンティティのアイデアや、世界や社会における自分の居場所を扱っている。フランコが送ってくれた最初のデモを聴いて、それをもとに曲を書き始めたとき、SFでバスに乗って街中を走り回っていた子供時代に戻った気がした。SFの様々な人々、音、匂いに囲まれながら、街を通り過ぎるのを眺めながら、たえず発進と停止を繰り返す動きに揺さぶられ、バランスを保っていました」

 

「City Bus」

 

 

*動画を貼り間違えていました。訂正とお詫び申し上げます。



Tanukicyan 『Circles』 EP

 

Label: Carpark

Release: 2024年9月20日
 

Tracklist:
 

1. City Bus
2. Circles
3. It Gets Easier
4. Low
5. In A Dream

 

Pre-order:

https://found.ee/tanukichan_circles 

 Tasha announces new album "All This and So Much"

Tasha
©Alexa Viscius

シカゴ出身のアーティスト、Tasha(ターシャ)が新作アルバム『All This and So Much More』を発表した。2021年の『Tell Me What You Miss the Most』に続くこのアルバムは、9月20日にBayonet Recordsからリリースされる。

 

先にリリースされた「Michigan」に加え、新曲「The Beginning」が収録されている。LPのカバー・アートとトラックリストは下記より。


「このアルバムのために最初に書いた曲のひとつである'The Beginning'は、この1年を通して自分自身を発見する旅(そして、そこから生まれた曲)の序章のような感じがする」とターシャは声明で説明している。

 

「この曲は、不確かさ、悲しみ、つながりを求める気持ちに触れている一方で、最初の一行、"これは終わりではない、始まりに過ぎない "という言葉には、私がすべてを乗り越えて辿り着いた希望と可能性の感覚が凝縮されている。私にとっては、グレッグ・ウルマンの紡ぎ出すギター・ソロのアウトロの終わりに興奮の余韻がある。その場ではわかりにくいかもしれないが、大きな結末は、想像もしなかった冒険への幕開けであることがとても多い」



「The Beginning」





Tasha 『All This and So Much More』


Label: Bayonet

Release: 2024年9月20日


Tracklist:


1. Pretend

2. The Beginning

3. Be Better

4. Good Song

5. Michigan

6. Party

7. Nina

8. Eric Song

9. So Much More

10. Love’s Changing

 

 

「Michigan」

Galaxie 500 announces  the release of its first archival material in almost 30 years.

Galaxie 500
©︎Michael Macios

マサチューセッツの伝説的なインディーロックバンド、Galaxie 500が、約30年ぶりとなるアーカイヴ音源のリリースを発表した。シルバー・カレント・レコードとバンド自身のインプリント20/20/20から9月20日にリリースされる『Uncollected Noise New York '88-'90』は、Noise New Yorkのスタジオ録音全24曲からなり、未発表アウトテイク、B面曲、アルバム未収録曲を収録している。


バンドによって編集され、スタジオでの初期のレコーディングから最後のレコーディングまで、彼らのキャリアをたどることができる。アルバム『Today』のセッションから「Shout You Down」、アルバム『On Fire』のセッションから「I Wanna Live」の2曲の未発表音源を聴き、全トラックリストは以下をチェック。


ギャラクシー500は、マンハッタンにある彼のスタジオ、ノイズ・ニューヨークで、プロデューサーでありシミー・ディスク・レーベルのボスであるクレイマーと5回のスタジオ・セッションを行い、3年間で3枚の名作LPをレコーディングした。


オリジナル・アルバム『Today』、『On Fire』、『This Is Our Music』とともに、『Uncollected Noise New York '88-'90』には、この時期にノイズ・ニューヨークで録音されたギャラクシー500の全音源が収録されている。


8曲以上の未発表スタジオ・トラックが復元され、時系列に並べられ、過去にリリースされたがレアな音源も含まれている。このセットは2xLP、2xCD、2xTapeで発売される。


ドラムのデイモン・クルコウスキーは声明でこう語っている。


「これらのテープ・ボックスを開けると、まるで古い日記やデータブックを覗き込んでいるようだった」


ベーシストのナオミ・ヤンはこう振り返る。


「音楽のプルースト的な力。これらの初期のレコーディングを聴いていると、自分がどのようにベースを弾きたいかを考えているのがわかる」


シンガー兼ギタリストのディーン・ウェアハムは言う。


「これらの曲のいくつかを保管庫に残した理由はわかるが、今聴くと喜びがある。ノイズ・ニューヨークだったレンガ壁の部屋でギャラクシー500が演奏しているように、とても生き生きと聴こえる」


シルバー・カレントのレーベル・オーナーであるイーサン・ミラーは、このセットの範囲についてこう説明している。


「これは単なる "オッズ・アンド・サッズ "コレクションではなく、音楽で語られるバンドの秘密の歴史なんだ。バンドの成長と創造的拡大の弧を着実に歩んできた、知られざる物語を余すところなく伝えている。それはバンドの別の歴史というよりも、最初から最後まで鏡の向こう側から見た彼らの実際の歴史の別の視点を明らかにするものである」





ギャラクシー500 (Galaxie 500)はアメリカで活動していたロックバンド。1987年に結成され、1991年に解散した。活動期間は4年と決して長くはなかったが、その後のインディー・ロックやスロウコア、シューゲイザーやドリーム・ポップなどのジャンルのバンドに影響を与えた。バンドの傑作としては、1988年の『Today』、翌年にリリースされた『On Fire』などが挙げられる。



Galaxie 500 『Uncollected Noise New York '88-'90』



Tracklist:

​(February 1988 session)
1. Shout You Down (previously unreleased)
2. See Through Glasses (previously unreleased)
3. On the Floor (Noise NY version) (previously unreleased)
4. Can’t Believe It’s Me (Ryko Box Set bonus CD, otherwise unreleased)
5. Oblivious (Ryko Box Set bonus CD, Chemical Imbalance fanzine 7-inch)
6. King of Spain (Today CD bonus track, Aurora Records 7-inch B-side)
(July 1988 session)
7. Jerome (Ryko Box Set bonus CD, otherwise unreleased)
8. Song in 3 (Ryko Box Set bonus CD, otherwise unreleased)
9. Crazy (Ryko Box Set bonus CD, European Today CD bonus track)
(February 1989 session)
10. I Wanna Live (previously unreleased)
11. I Will Walk (previously unreleased)
12. Cold Night (On Fire CD bonus track, Rough Trade BlueThunder EP)
13. Ceremony (On Fire CD bonus track, Rough Trade BlueThunder EP)
(August 1989 session)
14. Never Get to Heaven (previously unreleased)
15. Maracas Song (Ryko Box Set bonus CD, otherwise unreleased)
16. Victory Garden (On Fire CD bonus track, Rough Trade BlueThunder EP)
17. Blue Thunder (w/sax) (Ryko Box Set bonus CD, Rough Trade EP)
(June1990 session)
18. Cheese and Onions (Ryko BoxSet bonus CD, Rutles Highway Revisited Shimmy Disc LP)
19. Fourth of July (video mix)
20. Cactus (previously unreleased)
21. Moonshot (previously unreleased)
22. Them (Ryko Box Set bonus CD, otherwise unreleased)
23.Final Day (Ryko Box Set bonus CD, otherwise unreleased)
24. Here She Comes Now (This Is Our Music CD bonus track, Rough Trade Fourth of July 12-inch B-side)


Our Girl announces second album "The Good Kind"

Our Girl
 

ロンドンを拠点に活動するトリオ、Our Girl(アワ・ガール)がセカンドアルバム『The Good Kind』を11月8日にベラ・ユニオンからリリースすると発表した。

 

この発表に合わせて、彼らは先行カット「Relief」に続くシングル「Something About Me Being a Woman」を公開した。以下よりチェックしてほしい。


"この曲は、私をあまり良く扱ってくれない人に我慢の限界に達した後、多くのフラストレーションをぶつけるのに最適な場所だと感じた "と、シンガー/ギタリストのソフ・ネイサンは声明で語っている。

 

「でも今回はそれが行き過ぎていて、他人の先入観や、彼らが私をどう扱う権利があると思っているのかに対処するのに疲れてしまった。アルバムの大きなテーマは、ベストを尽くすこと。愛情にあふれたアルバムだけど、この曲ではただフラストレーションを吐き出してみたかった」

 

 

「Something About Me Being a Woman」

 



Our Girl 『The Good Kind』


Label: Bella Union

Release: 2024年11月8日

 

Tracklist:


1. It’ll Be Fine

2. What You Told Me

3. Who Do You Love

4. The Good Kind

5. Something About Me Being A Woman

6. Relief

7. Unlike Anything

8. Something Exciting

9. I Don’t Mind

10. Sister

11. Absences



アメリカのパワー・ポップバンド、Charly Bliss(チャーリー・ブリス)が新作アルバムの制作を発表しました。彼らはラッキーナンバーから『FOREVER』を8月16日にリリースする。ラッキー・ナンバーはオーストラリアのMiddle Kidsが所属しており、ユニークなロースターを擁する。

 

本日、彼らは新曲「Nineteen」を公開した。ヴォーカルのエヴァ・ヘンドリックスは新曲について次のように説明しています。

 

「私はいつも愛と、なかなかうまくいかず、失恋の津波をもたらす関係に魅了されている。躁的な喜びの波の上に乗せてくれるのと同じように、岩にぶつかるような愛から遠ざかれば遠ざかるほど、その全容が見えやすくなる。初恋はクレイジーだ」


『FOREVER』は、2019年の『Young Enough』に続く5年ぶりのニューアルバムとなります。

 


「Nineteen」

 

 

2nd Single 「Calling You Out」



チャーリー・ブリス(Charly Bliss)が8月16日にラッキー・ナンバーからニューアルバムをリリースする。そのセカンド・シングル「Calling You Out」のミュージック・ビデオが公開された。下記より。


Charly Blissはエヴァ・ヘンドリックス、サム・ヘンドリックス、スペンサー・フォックス、ダン・シュアの4人組。サム・ヘンドリックスは、ジェイク・ルッペン(Hippo Campus)、ケイレブ・ライト(Samia)とアルバムを共同プロデュースした。


ヘンドリックスはプレスリリースで "Calling You Out "について次のように語っています。 


「素敵な人と恋に落ちたとき、それまでの恋愛と同じで、嫉妬に陥らないようにする方法がわからなかった。最初のころは、それがすべて本当のことなのかどうか確かめるために、穴を開けようとして多くの時間を浪費した。私は自分を守ろうとしていたのだと思う!しかし、キャッチはなかった。」


アダム・コロドニーが監督した "Calling You Out "のビデオは、プレスリリースによると、"1989年のビースティ・ボーイズの "Shake Your Rump "のミュージック・ビデオと1995年のウォン・カーウァイの映画 "Fallen Angels "にインスパイアされた "という。



「Calling You Out」

 

 

3rd Single 「Waiting For You」


Charly Blissが、8月16日にLucky Numberからリリースされるアルバム『Forever』からニューシングル「Waiting for You」をドロップした。


この曲は頻繁にコラボレートしているヘンリー・カプランが監督したビデオとセットになっている。以下からチェックしてみよう。


バンドのエヴァ・ヘンドリックスによると、「Waiting for You」は「バンドメンバーへのラブソング」だという。パンデミックの間、サム、スペンサー、ダンと離れ離れになっていたとき、ライヴのビデオを見て、『どうしてこんなことが当たり前だと思っていたんだろう』と思ったのを覚えている。すべてが本当に美しくて、自分たちがどれだけ幸運だったのかがわからなかった。あんなに長い間離れ離れになっていたのは苦しかったけど、役に立った。


付属のビデオクリップについて、カプランはこう語っている。


「この部屋は、個人的な小さなチャーリー・ブリスのイースター・エッグでいっぱいだ。サムの娘の初めての学校での写真、8歳の時にショッピングモールで親友のアマンダと一緒に作ったTシャツ、誕生日カード、手紙、メモ。歌詞がいかに感傷的であるかにマッチするように、個人的なものでなければならず、ヘンリーをはじめとするチーム全員がそれを可能にするために懸命に働いてくれた」





Charly Bliss 『FOREVER』

 

Label: Lucky Number

Release: 202408/16

 

Tracklist:


1. Tragic

2. Calling You Out

3. Back There Now

4. Nineteen

5. In Your Bed

6. I’m Not Dead

7. How Do You Do It

8. I Don’t Know Anything

9. Here Comes The Darkness

10. Waiting For You

11. Easy To Love You

12. Last First Kiss

 The Voidz Announces production of third album "Like All Before You".

The Voidz

The Voidz(ジュリアン・カサブランカス+ザ・ヴォイドス)が、3枚目のスタジオ・アルバムをリリースする計画を発表した。

 

タイトルは『Like All Before You』で、9月20日にデジタルリリースされ、10月18日にフィジカルリリースされる。

 

アルバムは、アイヴァン・ウェイマン(ビヨンセ、マイリー・サイラス、ザ・ウォー・オン・ドラッグス)、ジャスティン・ライゼン(ヤー・ヤー・ヤーズ、キム・ゴードン、イヴ・トゥーマー)、サッド・ポニー(リル・ヤッティー、ドレイク)がプロデュースした。


『Like All Before You』は、2018年の『Virtue』以来となるグループのアルバムだ。そのリリースから数年の間に、カサブランカスのもうひとつのバンド、ザ・ストロークスは2020年にニュー・アルバムをリリースし、ツアーを行っている。


ティーザーには、フロントマンのジュリアン・カサブランカスが語る1分間の意味深なモノローグが収録されている。知る限りでは、ジュリアンがリアリズムを鋭く抉った独白をしたことはなかった。シンガーは社会的な発言を控えてきたイメージもある。しかし今回はその限りではない。

 

「抑圧的な男たちの息詰まるような終わりなき話は、同じ志を持った無関心な殺し屋を影で操り、社会の夜明け以来、不運な人々を支配し、不幸に陥れてきた、見せかけの価値観を作り上げてきた」


「やがて我々は、これまでのすべての人々と同じように、かさぶたに覆われ、塵と化すだろう。しかし、今がチャンスで、今がその窓なのだ。人は、曲がったファサードを越えて、知識を得るために手を伸ばせばいい。そして、彼らが私たちの周りに築かれた偽りの壁の向こうに、すべてがある」

 





The Voidz  『Like All Before You』


Label: Cult Records

Release: 2024年9月20日(LP:10月18日)


Tracklist:

1. Overture
2. Square Wave
3. Prophecy of The Dragon
4. 7 Horses
5. Spectral Analysis
6. Flexorcist
7. Perseverance–1C2S
8. All The Same
9. When Will The Time of These Bastards End
10. Walk Off (Outro)
 
 
 
「Overture」

 Loma 『How Will I Live Without A Body?』


 

 

Label: Sub Pop

Release: 2024年6月28日



Review   


 

テキサス出身のオルトロックバンド''Loma''は、限られたリソースから創造性溢れる音楽性を作り上げた。


制作時にはAIからの返答を得たりと新たな試みも行われた。レコーディングでは、木管楽器を取り入れたり、ブライアン・イーノからのエレクトロニックの手法を受け継いだりというふうにオルトロックバンドとして多種多様な工夫が凝らされている。このアルバムはそういった制約のある中で、どういった新しいサウンドが生み出せるか、試行錯誤のプロセスが示されている。

 

ひとえにオルト・ロックといっても、シューゲイザー/ドリーム・ポップ、パンク、ポスト・パンクやニューウェイヴの系譜にあるサウンド、さらには、2010年代頃にニューヨーク周辺のベースメントで流行したサーフロックや60年代の古典的なロック、古典的なハードロックをモダンにアレンジしたものまでかなり広汎に及ぶ。その他にも、エモやパンクなどをごった煮にしたサイケデリックなサウンドもある。ただ、リバイバルのような意味を持つオルトロックは、ジャンルの最前線のイギリスのロンドンやアメリカのニューヨークの事例を見ると、2020年代に入り、新しいものが容易に出てこないため、やや停滞化しつつあるのは事実である。


そういった側面から言うと、ロマは硬化しかけたオルトロックシーンに新風を吹き込むような存在である。メンバーはバンドのサウンド、制作している音楽に対して無自覚な場合が見受けられるが、面白い概念や新しい表現は、必ずしも自覚的に生み出されるわけではない。それがライブセッションの結果、もしくは制作過程の試行錯誤の段階で恣意的に発生する場合がある。

 

これまでのロックシーンでは、暗鬱な感情性に浸された音楽というのがいついかなる時代も存在した。本作も同じように、近年、多くのオルトロック・バンドが忌避してきた暗さを徹底的に活かそうとしている。ロマは、内面の奥深くに生じた海の底を覗き込むかのように、内省的な悲しみを吐露する。その憂いは、怒涛のように押し寄せるのではなく、一貫して冷静な感情からもたらされる。波打ち際を寄せては返すさざ波のように静かにひたひたと流れ込んでくる。


ようするに、Lomaの音楽は、夜更けの海岸のような寂しさと人気の無さを感じさせる。しかし、寂しさだけで終わるわけではない。その海岸の向こうに目を凝らすと、街の明かりがぼんやり見えたり、あるいは灯台のテラスサーチライトが暗い海の向こうを走るように、闇の向こうから温かい灯火がうっすら立ち上がる。そして最終的に、その純粋な結晶からなる悲しみは、地上にいる私達をそっと照らし出そうとする。さながら暗闇の中に生じた灯火を遠目にぼうっと見つめるような催眠性と神秘性を兼ね備えたオリジナリティ溢れる音楽と呼べるのである。

 

明晰な意識から作り出される音楽があるのと同様に、ぼんやりとした意識から生み出されるアンニュイなロックというのが存在する。多分、ロマの場合は後者に属している。いわば、抽象的で、夢現とか夢幻、ないしは、半睡とか微睡というような感覚である。彼らは、言葉では言い表しづらい意識状態を的確に捉え、彼らの得意とするオルトロックのフィールドに持ち込む。


ロマの音楽は目の覚めた状態とは対蹠点(アンティポデス)に位置する。しかし、明晰であることが制作者にとって必ずしも良いことだとは限らない。分からないもの、得難いもの、探求しつくせぬもの、跋渉しきれない限界が何処かに存在すること……。これらはバンドやミュージシャン、シンガーソングライター、DJ、プロデューサーにとっての幸福を意味する。それは、このアルバムにおけるロマの制作プロセスやテーマに関しても共通するものがあるかもしれない。

 

オルトロックの中にオーケストラやジャズの楽器を取り入れることは、現在、マンチェスターのCaroline、ロンドンのBC,NR、Goat Girlといったバンドが率先して取り組んでおり、ポストパンクの次世代のロックとしてミュージックシーンの一角を担っている。しかし、一方、これらは未曾有の音楽というわけでもない。例えば、カナダのGod Speed You Black Emperror、オーストラリアのDirty Three、アイスランドのSigur Ros、他にもRadhioheadなどが2000年代以降に取り組んでいたポストロックの原初的なモチーフの継承でもある。 さらに時代を遡ると、90年代頃にはジェフ・パーカーのTortoiseのようなバンドがジャズをロックの領域に引き入れ、前衛的な音楽を構築していた。ロマはこれらのポスト・ロックの第3世代に当たるグループとも言えよう。

 

ロマの音楽は、ドリーム・ポップからトリップ・ホップ、スロウコア、サッドコア、ジャズやクラシックのテイストを込めたロックまでかなり間口が広い。音楽的な多彩さが完全な形になったとまでは明言出来ない。


しかし、それでも、アルバムのオープニング「Please Come In」は目を瞠るような才気煥発の旋律性が感じられる。トラックにはグランジやトリップ・ホップ、それらの表面上の音楽性を覆うゴシック的なニュアンスが渾然一体となり、バンド特有のオルトロックのスペシャリティが築き上げられる。


そして、サイケデリックに傾く場合もある音の塊は、実験的なサウンドプロダクションを通じて新奇性がもたらされる。ロック・バンドにとって、ジャズやクラシックで使用される楽器を録音に導入することは、2024年では稀有な事例ではなくなったということが分かる。これらはまだ散らかっていて、まとまりのないサウンドの範疇にあるが、バンドの未来の有望性や未知の潜在的な能力がそれらの弱点を補って余りある。

 

90年代のミクスチャーの領域は、今やロックやメタル、パンクに付随するジャンルにとどまらず、従来では考えられなかったような意外なジャンルへと概念を広げようとしている。中盤に収録される「Arrythmia」、「Unbraiding」、「How It Starts」といった楽曲はロマが一般的なロックバンドではなく、つまり''オルトの末裔''であることのエヴィデンスともなっている。上記の三曲はポストクラシカルの範疇にあり、特に「How It Stars」ではガブリエル・フォーレの「Sicilienne- シシリエンヌ」をモチーフにし、それらをゴシック的な雰囲気によって縁取っている。


「Arrythmia」、「Unbraidin」はアイスランドのクラシカルな音楽性の系譜にある。この曲では彼らの暗鬱な音楽性を付け加えている。ジャズのリズムを元に曲を展開させ、最終的にはクラシカルとロックのクロスオーバーを図っている。クラシックロックというと、まったく意味が異なるので、適切な呼称とは言えないが、上記の三曲には少なくとも新鮮な気風が漂っている。

 

ロマはクラシカルの他、ジャズ、実験音楽の要素を実験的に取り入れる場合もある。トータスが90年代にPro Toolsでエレクトロニック・サウンドをトラックに導入し、新しいスタイルを生み出したのと同様に、ロマもオルトロックという領域でジャズをどのように調理できるかを模索している。


「Dark Trio」は、ジャズの文脈とサイケロックを結びつけ、Meat Puppetsのような南米のエキゾチックなテイストを持つ曲に昇華している。 また、ライヒ、グラスの系譜に属するミニマル・ミュージックの要素とエレクトロニック、ロックを結びつけ、「A Steady Mind」という形に昇華している。次いで民族音楽からの影響もある。「I Swallowed Stone」では、ガムランの打楽器をイントロのモチーフにし、ピアノのサンプリングを散りばめながら、トリップ・ホップやネオ・ソウルをオルトロックの領域に持ち込もうとしている。そしてボーカルから引き出される暗鬱な感情性が、それらの前衛的な手法と合わさり、稀にポピュラリティを及ぼす場合がある。

 

中盤は実験的な音楽性が目立ち、先鋭的な印象を受けるが、終盤に至ると、バンドの才覚煥発の瞬間を捉えられる。


「Pink Sky」は、トリップ・ホップ、サイケ、ローファイを結びつけており、ロマの特性である暗鬱な叙情性がボーカルとバンドサウンドによって立ちのぼってくる。様々な試みを通じて制作された本作の中では、オープナー「Please Come In」と合わせて「Affinity」が異彩を放っている。ロマはバロック・ポップ、フレンチ・ポップ(イエイエ)、ボサノヴァといった複数のジャンルを手繰り寄せ、アンセミックな瞬間を作り上げることに成功している。この曲の中で導入された木管楽器は、表向きのイメージとは異なり、スタイリッシュな感じの音楽性を生み出す。

 

クローズは、エリオット・スミスの作風を彷彿とさせ、サッドコアとオルトフォークの融合というテーマが見受けられる。収録曲は、表面的には前衛的な要素が押し出されているようでいて、トリオのオルタナティヴに対する普遍的な愛情が溢れている。それが結果的には派手ではないにせよ、本作を聞き終えた時、温かさを感じさせる理由なのだろう。もしかすると、グランジの次世代の音楽ーーPost-Grungeーーというのは、こういったスタイルになるかもしれない。

 

「Please Come In」、「Affinity」にはテキサスのバンドの才気煥発の瞬間が捉えられる。曲としてもかなり素晴らしい。音楽を一点に集中させると、さらに良質な作品が出来上がるかもしれない。

 

 

 

78/100 

 

 

Best Track-「Please Come In」