![]() |
本日、LAのRocketが待望のデビューアルバムをリリースします。幼稚園時代から幼馴染の四人組は、およそ10年の歳月をかけて練り上げた青年期の集大成ーーそれは彼らの記憶の集大成ーーをリリースする。
ロックファンとしての無類の姿が、全10曲という完結な構成の中に現れている。フー・ファイターズのデビュー当時のようなパンチ力とメロディアスな抒情性を兼ね備えたラウドロックを引っ提げてミュージックシーンに登場。今年のロックアルバムの最重要作品の一つとなりそうだ。
Tuttle(ヴォーカル、ベース)、Baron Rinzler(ギター)、Cooper Ladomade(ドラムス)、Desi Scaglione(ギター)からなるRocketは、ここ数年多忙な日々を送ってきた。
幼少期からの友情を持つロサンゼルスのクルーは、2021年に結成され、無名の小屋でデビューEPを録音した。 彼らの誰もが「バンド」というアイデアに真剣に取り組んだのは初めてのことだった。にもかかわらず、燃え上がるような気密性の高い曲で完全な形になった。
4人組のデビューアルバム『R is for Rocket』は、華やかでラウド、アンセミック、爆音、美しいサウンドの地形を駆け抜ける歓喜の旅である。まったく新しいサウンドでありながらノスタルジーを呼び起こすという稀有な偉業を達成しており、一瞬で人を魅了する曲で構成されている。
2024年初めにアルバムの制作を開始した当時、彼らはほぼ絶え間なくツアーを続けており、彼らのヒーローであるライド、サニー・デイ・リアル・エステート、シルバースン・ピックアップスの前座として、数えきれないほどの時間をツアーで過ごした。その後、ドラマーのクーパー・ラドメイドの両親の庭にあるささやかなスタジオで、サウンドの洗練と拡大に努めていた。
彼らのロックソングが洗練された理由は、実際のステージでサウンドテストを行ったからである。「ツアーを続けたことで、曲はさらに良くなった」とアリシアは言います。「さまざまな観客の前で演奏し、何がうまくいき、何がうまくいかなかったかを聞くことができたからです」 ツアーから帰宅するたびに、彼らは進行中の曲の仕上がりをどうするかという新しいアイデアに溢れ、Rocket がその磨きをかける時間のおかげで、多くの曲が大幅にアップグレードされました。
「アルバムの後半を前半から8ヶ月後に録音したことで、私たちは自分たちが何をしているかについて多くの時間を考えることができました」と、バンドのツインギタリストの1人であるデシ・スカリオーネは付け加えます。「3曲を再録音したのは、より良いものができると感じたからです」
そして、デシ・スカリオーネが再びプロデューサーとして指揮を執り、ロケットはロサンゼルスの2つのレコーディングスタジオで、両極端のバランスを完璧に保ったレコーディングを行いました。彼らはハイランドパークの64サウンドで、静かで親密な曲に最適なヴィンテージ機材を豊富に揃えたスタジオで、内省的な要素を収録しました。より重厚な部分は、ノースリッジのフー・ファイターズの''スタジオ606''でのセッションで収録された。ここでは、『Crossing Fingers』や『Wide Awake』のようなトラックに求める巨大なドラムサウンドを得ることができた。
2023年のデビューEPは、ピッチフォーク、ローリングストーン、ステレオガム、ブルックリンビーガン、ペースト、コンシークエンスなどのメディアから賞賛された。NMEはバンドの最初のカバーストーリーを掲載した。最近、ロケットは、Paste Magazineによって「Best of What's Next」として特集されたばかり。同誌は彼らを「ポップチャートのために曲を書くSonic Youth」と評しています。彼らはまた、2026年のヨーロッパのヘッドラインツアーを発表した。
ご存知のとおり、ロケットは2024年の多くのスケジュールをライブツアーに費やしてきた。The PixiesのFrank Black、Ride、Sunny Day Real Estate、Silversun Pickups、Julie、Bar Italia、Hotline TNTなどのアイコニックバンドのオープニングを開始しました。その後、バンドは、ウェイ・アウト・ウェスト、グリーンマン・フェスティバル、ピッチフォーク・ロンドン&パリ、バンバーシュート、ベスト・フレンズ・フォーエバーなど、世界中のフェスティバル・ステージに出演。
Rocket 『R Is For Rocket』 Transgressive/ Canvasback
![]() |
Transgressiveと契約を交わしてリリースされたRocketによるデビュー・アルバムは鮮烈な印象を持つ王道のロックソング集となっている。
四人組の音楽には、グランジ、エモ、またLAの80年代のハードロックなどが含まれ、それらが渾然一体となって、強固な世界観を形成している。ラウドロックとしての重力を持ち合わせながらも、適度なポップネスがあり、驚くほどその楽曲の印象は軽やかである。これらは結局、Nirvana亡き後に発足したデイブ・グロール率いる、Foo Fightersの登場を彷彿とさせる。
フー・ファイターズの最初期のアルバム『Foo Fighters』、『The Colour And The Shape』のように、『R Is For Rocket』は90年代のオルタナティヴロックやミクスチャーの全般的な音楽用語であるラウド・ロックに根ざしている。しかし、ロケットの音楽は新鮮に聞こえる。現代的な感性を織り込んだ秀逸なセンス、それらは、アリシア・タトルのボーカルのメロディアスな叙情性、そして不協和音やクロマティックスケールを強調したバロン・リンズラー、デシ・スカリオーネの轟音ギター、それから何と言っても、現代の音楽シーンで傑出した演奏力を誇るドラムのクーパー・ラドメイドの素晴らしいリズムセクションのすべてに現れ出ている。
楽曲のバランスの良さも際立っている。90年代-00年代のオルタナティヴロックに根ざしたものから、Fountains of Wayneの名曲「Stacy’s Mom」のようなパワーポップ/ジャングルポップの系譜にある甘酸っぱいメロディー、American Footballのような若い年代の象徴的なジレンマなど、幅広さがある。それらにロックソングのヘヴィーさを付加しているのが、Pearl Jamのような重厚なサウンドである。ロック史としては、94年にグランジが死んだと一般的には言われている。だが、他方では、アメリカの音楽シーンでグランジそのものがどこかで生き続けていたことを伺わせる。つまり、ポスト・グランジに該当する音楽は、一般的には脚光を浴びることはなかったものの、ひっそりとアメリカのロックシーンの一端を担い続けていたのである。
これらを総合的に網羅し、新たなロックの段階へと導くのが、ロケットのデビューアルバムである。幼馴染で結成されたこのバンドのサウンドは数々の著名なロックバンドのツアーサポートの経験を経て、この上なく洗練され、高い密度を持つロックソングに昇華されることになった。
バンド全体が協同して一つの目標に向かうような感じがあるので、非常に好感が持てる部分がある。デビュー・アルバム『R is for Rocket』は、ロケットのメンバーの人生のスナップショットであり、それらは様々な感情を交え、重層的な音楽的な世界を形成している。バンドサウンドとして冗長な側面もあるのだが、それは彼らのジャムやスタジオセッションの記憶を現在へと引き継ぐものである。それらは結局、人物の来歴だとか、バイオグラフィーとも呼ぶべき内容である。多少、初々しい音楽性があるとしても、彼らはそれを容認し、そのままにしている。これがリアルな感覚を持ったロックソングとして、聞き手の心に響く理由なのだろう。
1.「The Choice」
「The Choice」は、テープディレイをかけたボーカルのイントロで始まり、 象徴的に響き渡る。そして、その後、このバンドの精神的な支柱であるクーパーのドラムは圧巻である。ライブハウスのPAを意識したかのようなバスとスネアを強調したドラムが心地よいリズムを刻む。クーパーのドラムはロケットのサウンドの基礎を形成しており、単体で聴いたとしても迫力が満点だ。
その後に、ポスト・ロックの系譜にあるミニマルなギターが加わり、そしてルートを意識したベースラインが加わる。バンドアンサンブルとしてはラウドロックだが、ボーカルは驚くほどキャッチーでポップである。これらのメロディアスな音楽性とラウドネスを兼ね備えた対比的なロックソングがロケットの最大の持ち味である。それらは結局、80年代のメロディアスなハードロックの音楽性に近い感覚が含まれている。ポスト・ロック的な構成が際立つが、飽くまでそれは、聴きやすいロックとして解釈されている。時折、実験的なロックの要素を交えながら、この曲はラウドロックへと傾倒していく。楽曲の構成の中でギアを少しずつ上げていき、終盤では、ハードロック/ミクスチャーロックとシューゲイズの中間にある独特なラウド性が登場する。
2. 「Act Like Your Title」
オーバードライブの効いたベースラインは、90年代初頭のシアトル/アバディーンのグランジを彷彿とさせる。「Act Like Your Title」はポスト・グランジに位置づけられるが、特に、フー・ファイターズのようなメロディアスなヘヴィロックの要素や、00年代の西海岸のポップパンクの要素が融合し、聴きやすく乗りやすいロックソングが形作られる。ヘヴィーロックというのは音楽そのものの粗さがひとつの魅力ではあるのだが、彼らはそれらをヒットチャートに沿う内容に洗練させている。特にヴァースからそのままコーラスへ移行する瞬間に注目だ。清涼感に満ちたメロディアスなボーカルが、アンセミックな響きを作り上げるための重要な役割を担っている。特に、彼らの楽曲は、ギターヒーローの姿を復刻させる。曲の中盤のトレモロのギターが素晴らしい。シンプルなロック・バンドの構成から生み出される音楽は、ベタであることを恐れず、渾然一体となったポストロックの音響派の超大な響きを作り出し、曲の最後ではアンサンブル全体が一体となって、アウトロへと向かっていく。新しい時代のスタジアムロックのお手本と呼ぶべき素晴らしい一曲として楽しめるに違いない。
3.「Crossing Fingers」
続いて、「Crossing Fingers」もハイライト曲の一つ。前曲のオリジナル世代のグランジというより、ポスト時代のフー・ファイターズのサウンドの影響を見出すことが出来る。しかし、同時にそれは模倣的なサウンドとも言いがたい。この曲にオリジナリティを与えているのがタトルのボーカルの叙情的な側面で、それらはメロディアス・ハードロックとエモの中間点に位置づけられる。ロックソングとしても構成の側面でもかなりの工夫が凝らされている。意外性のある休符(ブレイク)を挟みながら、切れ味の鋭いシャープなロックソングに昇華している。協和音の中に内在する不協和音が強調され、それらがボーカリストの内的な感覚を象徴するかのように揺れ動く。こういった曲には、若いロック・バンドらしい魅力を感じ取ることが出来る。コーラスの箇所が終わると、すぐにアウトロのギターのフィードバックでフェードアウトする。このあたりの構成の巧みさもまた、このデビューアルバムの一つの醍醐味である。
4.「One Million」
このアルバムで最もロサンゼルスらしい気風を反映しているのが、続く「One Million」である。80年代のLAメタルに依拠したイントロのギター、そして伸びやかで大陸的な雄大さ、そして美しい旋律、誰かが忘れ去った西海岸のレガシーを見事に受け継いでいる。イントロはギター・ソロから始まり、現代的な音楽的な常識としては冗長である側面をあえて押し出しているのが素晴らしい。その後、ドラムのロールの演奏を中心として、ロケットの静かなロックソングの構成が組み上げられる。そして前の曲の作風を受け継いで、メロディアスなハードロックを展開させる。そしてこの曲に現代的な感性を付与しているのがやはり、タトルのボーカルである。そのボーカルは、00年代のニューメタルからパンクのサブジャンルに至るまでを網羅しており、そしてその核となる性質を受け継いでいる。これらは結局、フィーファイターズの音楽にも関連性があるが、この曲の場合はよりメロディアスでエモに近い。ラウドなロックソングの向こうに立ち上ってくるドリーム・ポップ風の切ない旋律が、バランスのとれた構成をかたちづくる。これらのラウドーーサイレンスーーラウドを行き来する対比的なサウンドが最大な魅力だ。
5.「Another Second Chance」
冒頭にFontains fo Wayneの名前を挙げた理由は、続く「Another Second Chance」で明らかになる。この曲はアルバムの中でパワーポップの良曲として楽しめるに違いない。最初に聴いたときは、ウィーザーの「Buddy Holly」の影響が感じられたが、正確に言えば、FOWの「Stacy's Mom」に近いコード進行が特徴である。 例えば、オリヴィア・ロドリゴのようなロックスターも、ウィーザーを若い時代に聴いていたというが、結局、どういったロックファンも、こういった曲を一つの入門編として、どこかの時期に聞いているわけである。ミュージックビデオでは、彼らのロックのヒーローたちが登場し、音楽的なバックグラウンドを伺わせる。ロックソングとしての楽しさを凝縮した内容で、曲の後半ではセンチメンタルな音楽が顕わとなり、心なしか切ない余韻を残している。それらが最終的にカルフォルニアの解放的な気風を反映させている。同楽曲は、ロックソングの普遍的な魅力を見事な形でパッケージしている。
6.「Pretending」
この曲も80年代のLAの産業ロックを彷彿とさせる。それらがグランジと組みわされ、ポスト・グランジの範疇にある音楽が生み出されている。音楽的な形としては、形骸化してはいるものの、曲自体から滲み出るファストファッションのような独自の気風が、魅力的な雰囲気を作り上げている。気軽に楽しめるロックソングを意識して制作しているような感じがある。そして、曲全体からは、バンドとしての楽しい瞬間やツアーの時期の充実した瞬間などを読み取ることが出来る。ただ、オルタナティヴな要素も稀に登場し、オーバードライブのベースソロを浮かび上がらせたり、強烈なノイズを表現したディストーションギター等、ロケットらしさが満載である。曲の後半では、再び、華麗なギターソロが登場する。多くの場合、現代的なロックソングのプロデュースではカットされる箇所も残している。しかし、ロケットの場合、その冗長さが最大の武器である。ある意味では、音楽の合理化の側面に鋭い牙をむく。合理化されたものしかこの世に残らないとしたら、それこそ最大の損失となるだろう。
7.「Crazy」
ロックとメタルの中間に位置づけられるロケットの楽曲は、むしろこのバンドが最初期のグランジのような音楽性を内包させていることの証立てでもある。 ヘヴィーな印象を放つベースやドラムを中心にこの曲は構成されているが、依然として、Alice In Chains、Soundgarden、Pearl Jamを最初に聞いたときのような感動を蘇らせる。暗鬱であるが、どことなくポップに聞こえるという、グランジの核心を、ロケットは見事に捉え、それらを現代に復刻させている。例えば、クリス・コーネルの楽曲を女性ボーカリストが歌ったら、こんな感じの曲になるのかもしれない。近年、ドリーム・ポップなどの台頭を期に、暗鬱なインディーポップソングの流行はまた異なる形へと生まれ変わったが、この曲は、いままで見過ごされていたラウドロックの可能性を再発掘していると思う。マイナー調の楽曲、そこから滲み出てくる抽象的なエモーションを組み合わせて、独特な雰囲気を持つ楽曲に仕上げている。これもまた、USロックの一つの象徴的な形でもあるのだろう。
8.「Number One Fan」
アルバムの中で異色の一曲と言えるのが、「Number One Fan」である。この曲では、ロックバラードの形式を復活させ、アコースティックギターの弾き語りを中心とした、静かに聴かせるための音楽を体現している。 近年流行のアメリカーナとロックの融合を図った曲であるが、ロケットの場合は、それほど他のバンドと似通った曲にならないのが驚きである。彼らのアンサンブルの核心にあるヘヴィネスの要素を失わず、絶妙な均衡を保ったままで、静かに聴かせるバラードを書いている。デビュー・アルバムとしての初々しさと若い感性を、リアルな形で表現している。十年後になると、おそらく、このような曲を書くことは難しいかもしれない。そのときには、まったく別の人間に変わっているからである。この曲は、円熟した感覚とは対象的に、青年期の若々しい感性を見事に体現させている。
9.「Wide Awake」
ロケットはまた、狂騒的になることを少しも恐れていない。メタリックな印象を持つロックソング「Wide Awake」はその象徴となるはずだ。アルバムの収録曲の中で不安や恐れの領域を赤裸々に吐露するロックナンバーである。他のグランジソングは、Pearl Jam、Soundgarden、Alice In Chainsのオルタナティヴ性を受け継いでいるが、この曲は、明確にゲフィン時代のNirvanaの楽曲を意識している。コバーンのような強烈なスクリームはないものの、旋律的な側面を重視し、アンニュイな雰囲気を持つグランジに仕上げている。考えてみれば、グランジはファションから発生した言葉であるが、 これほど感覚的なロックの形式は、それまで存在しなかった。ロケットは、言語外の音楽的な表現を駆使して、クラシカルなロックを見事に復刻させている。
10.「R is for Rocket」
前の曲で終わらなかったというのが一番重要だ。このタイトル曲はRocketの有望な潜在能力を示している。ライブセッションの中で生み出された一曲と推測され、何度も述べたように、ロックソングの合理化に反発し、冗長な構成から感動的な瞬間を作り上げている。バンドのメンバーの粘り強い胆力、そして、幼い頃からの知り合いという彼らの背景が明瞭に反映されている。 イントロはベースから始まり、その後キャッチーなポップパンク/ハードロックへと移行していく。この曲は、アルバムを通して聞いたとき、かなり強いインパクトを及ぼす。
特に、マスロックやポストロックの系譜を受け継いだ、反復的なギターの構成から、混沌とした楽曲構成を経て、最終的には、アメリカン・フットボールの『LP1』のような深遠な音楽的な世界へと直結している。
ただ、それらのオルタナネイトなロックの要素は、ロケットの場合、ラウドロックという形で展開される。繊細さと力強さを兼ね備えた、本作のフィナーレを飾るに相応しい、素晴らしい楽曲である。ギターのフィードバックを最大限に生かした録音、それから単旋律のリフからは、このバンドしか持ち得ない特異な叙情性が立ち上ってくる。
最後の最後で超大かつ迫力のある音楽性が出てきた。これこそ、この数年にかけて、スマッシング・パンプキンズを始めとする著名なロック・バンドとのツアーをこなしてきた成果であろう。デビューバンドらしからぬ、圧巻の迫力をぜひ体感してほしい。
90/100
Best Track- 「Act Like Your Title」
▪Rocket 『R is for Rocket』は本日、Transgressiveから発売。ストリーミング等はこちらから。
▪️リリース情報:
ロサンゼルスの四人組ロックバンド、ROCKETがデビューアルバム『R IS FOR ROCKET』を発表 10月3日にリリース
0 comments:
コメントを投稿