アンビエントの巧みなプロダクション The Dead Texan「Dead Texan」

Dead Texan

 

Daed Texanは、Adam WitltzieとChristina Vanzouによって結成されたアンビエントユニット。このアルバム一作で活動を終わってしまったので、幻のプロジェクトと言ってもいいかもしれません。


Dead Texanの楽曲の特徴を説明すると、サウンドエンジニアAdam Wiltzieが後に始めたプロジェクト、Stars of the Lidの世界観にそのまま引き継がれていくような心地よいふわふわとしたアンビエントです。


基本的には、環境音の中に紛れ込むようにして、ピアノ、アコースティックギターといったフレーズが静かに奏でられる。


ピアノのシンプルで美しい旋律が反復的に演奏され、それに加え、ストリングス、シンセサイザーのパッド、SEといった音の要素が主旋律の背後にドラマティックでダイナミックな奥行きを作っています。


ピアノの音色というのも、ディレイ等の多少特殊なリミックスが施されている。たとえば、同レーベルのTim Heckerのような先鋭的なサウンドエフェクトは、このアルバムにはそこまで感じられない。


ピアノの音をそのまま大切に活かしているように思え、確かにサウンドエンジニアらしく、玄人好みの音作りとなっています。 


 

「Dead Texan」 2004

 



このアルバムはシカゴのレーベル「Kranky」からリリースされた。ぼんやりしているうちに、あっという間に終わってしまう。いかにもアンビエントらしい楽曲ばかりずらりと並んでいる。その後のStars of the LidやChristina Vanzouのソロプロジェクトのような先鋭さこそないものの、二人の抜群のセンスの良さというのが遺憾なく発揮された幻のアンビエント名盤に挙げられる。


ここでは、アンビエントのジャンルにおいて屈指の名曲、「Aegina Airline」「La Baladde D'alain George」をごく簡単に紹介しておきます。

 

「AeginaAirline」

 


ブライアン・イーノの「Music for Airports」の世界観をそのまま継承したような感じがあるので、イーノ好きの方にはおすすめしたい。


この楽曲において表現されているのは、ガラス張りの窓の向こうに飛行機が飛び去っていくときをぼんやり眺めている感じ。そして、空港の整然とした建築デザインや、ピカピカに磨かれた壁や天井、そして、発着ロビーを旅行かばんを持ってせわしなく行き交う旅行客。もしくは、レストランやカフェで食事を楽しんでいる人々。それぞれ行動の目的は異なるのに、その建築的な均一性を見て、たとえば、天井、床、窓、壁、通路といった全ての配置、それらの存在に洗練された印象を見てとる際、なにか私達の心の中に呼び覚まされずにはいられない奇妙で爽やかなアトモスフェールが余すところなく音楽というかたちで緻密に「設計」されている。


ピアノが、静かに、淡々と、同じフレーズを紡ぎ出す中、向こうに奥行きを持って広がりをましていく、シンセサイザーのパッド。ときに、飛行機が実際に飛び立っていくときのエンジン音のSEの効果を得て、少し創造力を働かせさえすれば、空港のガラス窓の外に飛び去っていく旅客機を見るかのような感覚に浸れる。

 



・「La Baladde D'alain George」



「Aegina Airline」の続曲のような趣があり、上品で印象的なピアノのイントロからはじまり、その背後に、上品で洗練されたシンセサイザーのパッド、そして、ストリングスのシーケンスが心地よい清流の流れのように揺蕩している。


ときには、シンセのパッドの音が増幅され、ドラマティックな効果も発揮されています。途中で聴こえてくる逆再生の効果もてきめんで、曲自体の雰囲気を存分に盛り上げています。このトラックも短い反復的なフレーズが繰り返されることによって、均衡のとれた構成となっている。


アウトロでエピローグのように付加されるピアノの伴奏に静かに耳をすましていると、美しい映画のエンドロールを眺めているかのような気分をおぼえる。