Weekly Recommendation NoSo 『Stay Proud Of Me』

 Noso  『Stay Proud Of Me』




Label:  Psartisan Records


Release: 2022年7月8日

 

 

NoSoは、 LAを拠点に活動するソングライターで、今後、再注目の実力派のシンガーです。『Stay Proud Of Me』はNoSoの記念すべきデビュー・アルバムとなります。

 

シンガーソングライターがこのデビュー作品で展開するのは、Mitski,最初期のSt.Vincentのような清涼感のあるエレクトロ・ポップであり、現在のトレンド音楽と呼べそうです。それがこのシンガーの歌唱力自体の力によって独特の空気感のようなものが生み出されています。Nosoの歌唱力は、現在の世界のシーンにおいても抜きん出ており、ST,Vincentが登場したときのような圧倒的な存在感もある。しかし、現在のところ、 Nosoというシンガーソングライターは秀逸な才覚を有しながらも、それをどのように使いこなすのか、試行錯誤している段階とも言えます。これは、このシンガーがクィアを公言しており、そして、人種差別を受けたバックグランドからどのように自信と誇りを取り戻していくかの過程にあるともいえるのかもしれません。

 

オープニングトラックを麗しく飾るシンセ・ポップのアンセムソング「Parasite」からして、このシンガーが類まれなる存在感と実際の歌唱力を持つことは、耳の肥えたリスナーなら理解してくれるだろうと思われます。Nosoの歌声には、聞き手を酔わせる力があり、楽曲の中で一つの音楽の世界を作る表現力を有しています。それらが歌というより、語り聞かせるような穏やかなトーンにより、このシンガーは自分の自信を取り戻すための試みを繰り広げていきます。

 

アルバムの中盤を形作る「I Feel You」では、インディー・ロックとポップ・バラードを組合せたような、しっとりとした楽曲にも挑戦しています。特に、この曲では、NOSOの抜群のメロディーセンスが発揮され、それが涼し気な質感を持った起伏に富んだ音楽として昇華され、それらがシンセサイザーポップのグルーブ感と相まって、独特のうねりのパワーのようなものを巻き起こしていく。これらは多くのリスナーを乗せる力を持っているようにも思えます。さらに、「I'm Embarressed~」では、Nosoは、前曲よりもさらに情感のあるバラードを歌いこんでいます。

 

特に、歌手として才覚をみる際の指針となるのが、それほどダイナミックではない平坦な楽曲で、それらの単調になりがちな曲を、歌だけの力だけでどのように独特な世界観を生み出すのかという点です。そして、NoSoは以上のことを難なくやり遂げてしまっているのには驚嘆するしかありません。歌手としての表現力がすば抜けているのを感じさせるのが、アルバムの中盤の山場となる「Sorry I  Laughed」。この曲は、それほどダイナミックな音域を持つわけではありませんが、歌のトーンの微妙な強弱、叙情的な表現の細やかな変化、さりげないビブラートの変化のみで、曲の表情づけしている。この点に、このシンガーの底知れない才覚を感じさせます。また、歌詞についても、このあたりには、アイロニックな表現が見いだれるように思われ、クィアというマイノリティととして生きること、また、アジア系アメリカ人として生きることにセンチメンタリズムのような感覚が、独特な表現性を持って生み出されているように感じられます。

 

アルバムの終盤は、ギター・ロックとポップスを巧みにかけ合わせた音楽が展開されていきますが、これらの曲が深く聞かせるところがあり、このアーティストに何かあると思わせるのは、近年のモダン・ポップだけでなく、このアーティストがR&Bやゴスペルのような音楽がバックグラウンドにあるからなのかもしれません。そのブラック・ミュージックからのクールな影響は、アルバムの序盤には弱い光として表れているが、アルバムの終盤により力強く表れ出てきます。

 

そして、このアルバムが今週発売された中で、最も優れている部類に入る、と言わざるをえないのは、人の心を揺り動かす力強い響きを持っているからです。表面的には、繊細であり、叙情的で聴きやすいシンセポップでありながら、その核心には、このアーティストの強い感覚的な光輝が満ちあふれている。少なくとも、このデビュー・アルバムにおいてNoSoは、自分自身の歌の力を心から信じきって、「自分自身のプライドを維持する」ことに成功したと言えます。『Stay Proud Of Me』は、センセーショナルな話題を巻き起こすような作品ではないかもしれませんが、Mitskiの『Laurel Hell』と同じレベルか、ひょっとすると、それ以上のハイレベルな作品です。 



Critical Rating:

94/100

 

 

 

Weekend Featured Track 『Parasite』

 

 

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