New Album Review: Mandy, Indiana 『URGH』

 Mandy Indian 『URGH』

 

Label: Sacred Bones

Release: 2026年2月6日

 

 

Review 

 

昨年、 好印象のアルバムを立て続けに輩出したSacred Bones。所属グループがゴールドディスクを獲得し、勢いに乗っている。2026年最初のリリースは、マンチェスターの話題のグループ、Mandy, Indianの最新アルバム『URGH』となる。本作は画期的なサウンドで、音楽ファンの度肝を抜くことは必須だろう。UKベースライン、ブレイクビーツ、ドラムンベースなどを吸い込んだ''EDMメタル''ともいうべき衝撃的なアルバム。現時点のところ、ストリーミング再生数はガツンとは伸びていない。まだまだ、このアルバムがどのような評価を受けるのかは未知数である。しかし、二番煎じを徹底して疎い、アバンギャルドなダンスミュージックを展開させた野心作であることは確かだ。

 

マンディ・インディアナは、ボーカリストのヴァレンタイン・コールフィールド、ギタリスト兼プロデューサーのスコット・フェア、シンセ奏者のサイモン・キャトリング、ドラマーのアレックス・マクドゥーガルからなる4人組だ。本作の大半はリーズ郊外の不気味なスタジオハウスでのレジデンシー期間中に執筆され、ベルリンとグレーター・マンチェスターの二箇所でレコーディングされた。 


制作過程でコールフィールドとマクドゥガルが健康問題に直面したこともあってか、環境は苛烈を極めた。『URGH』は広範な世界の暴力的で断片化された状態を反映している。コールフィールドの歌詞は暴力性、制度的な無関心、遍在する苦痛とたえまなく格闘し、美と連帯の瞬間を主張する。アンドレアス・ヴェサリウスの解剖学的図解をフィーチャーしたカーノフスキーのアートワークは、身体とその限界に対するこのレコードの内臓的な対峙を強調している。

 

『URGH』はアンダーグランドのクラブの熱気に縁取られている。狂乱的でときに催眠的なダンスミュージックがアシッドハウス風のグルーヴを導き出す。「Magazine」はその象徴となるトラックで、遠目に鳴り響くレイヴやユーロビートのような空間性のあるサウンドが再現される。ドラムンベースのドラムのリズム、内的な暴力性を赤裸々に吐露するサウンドはあまりに苛烈だ。

 

これらは制度に対する怒りの感覚がリアリティを持って体現される。また、ミュージックコンクレート/コラージュアート的なサウンドが、強烈なノイズやパルス状のビートと重なりあいながら激しく炸裂する。独特な緊張感を持つヒリヒリとしたアヴァンギャルドなダンスミュージックは、ときに魔術的なボーカルと組み合わされ、また、アフリカのような地域のリズムと融合する。


「Dodechahedron」はそういった中で、メタリックな印象を持ちながら、神秘的な電子音楽に傾倒していく。また、インダストリアルミュージックのイメージを持つ「A Brighter Tomorrow」は悪夢的な雰囲気に浸される。


これらは内的な恐怖と戦うドゥームサウンドと言え、外側の外的な状況とせめぎ合いを続ける。それらの恐怖感は「Life Wax」で最高潮に達し、エクストリームなノイズミュージックとして昇華される。NINを通過したようなインダストリアルの冷淡さ、そして狂気的なノイズミュージックが続いてから、突如、ニューメタルやポストハードコアのようなサウンドへと傾倒していく。

 

本作の収録曲で注目したいのが、「ist halt so」である。ダンスミュージックをベースにしたヘヴィロックで、 ブンブン唸るベースと苛烈でアグレッシヴなボーカルが特徴である。また、ヒップホップを参照し、プエルトリコのヒップホップと連動するようなサウンドを作り出す。90年代以降のミクスチャーの末裔とも言える音楽性なのだが、そこに商業的な香りはほとんどない。ノイズやインダストリアルミュージックの無機質なサウンドを明確に押しだし、奇異な領域に近づいている。また、ドラムの側面は、Sepuluturaのような南米のヘヴィメタルからの影響を感じさせる。イギリスのアンダーグランドのダンスミュージックとニューメタルが合体したようなサウンドである。後半には、ドリルンベースが出てくる瞬間もある。Aphex Twinをメタルから解釈したような一曲で、 その重力のあるサウンドはほとんど嵐のごとく過ぎ去っていく。

 

ただ、Billy Woods(ビリー・ウッズ)が参加した「Sicko! 」は、イントロはさておき、とっつき易い。アブストラクトヒップホップとヘヴィロックのエッセンスが融合し、パーカッションは過激な印象に満ちているが、ビリー・ウッズのラップが上手い具合に融和している。同楽曲では、アーマンド・ハマーとのコラボに見受けられるヒップホップの解体と再生の要素が垣間見える。面白いアルバムだと思うのだが、全体的な集中性にかける部分もある。しかし、その破壊性や衝動性すら彼らの計算の内とすれば、それこそが本作の無尽蔵のエナジーを生んだ理由なのだ。アルバムの後半では、多言語のボーカルやグリッチが出てきたりと、かなり難解な作品のように思えた。 

 


 

75/100 

 

 

 「ist halt so」-Best Track

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