Ozzy Osbourne 「Patient Number 9」

 Ozzy Osbourne  「Patient Number 9」

 

 


Label: Epic/Sony Music Entertainment

 

Release: 2022年9月9日


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Review

 

なぜ、オジー・オズボーンという人物が神格化されるのか、そして、米国のNFLのオープニングセレモニーに出演するまでのスターになったのか。

 

それは取りも直さず、このアーティストの生命力の強さ、そして、生来のエンターテイナーとしての輝きそのものにあるものと考えている。オズボーンは、ライブステージに投げ込まれた生きた鳩をレプリカと思い込んで、それをかじった後に奇跡的に生還した。その後、交通事故にあっても、病室でのビートルズの音楽の支え、家族、友人たちの支えにより二度目の生還を果たし、そして、今回はパーキンソン病の大手術から3度目の奇跡的な生還を果たしたのでした。


オジー・オズボーンの最新作「Patient Number 9」は、そういった人間としての生命力の強さ、そして、彼の生粋のエンターテイナーとしての輝きを余すところなく体現させたアルバムと言えます。このアルバムには、ブラック・サバス時代からのバンドメイト、トニー・アイオミ、そして、ソロバンド時代のザック・ワイルド、さらには、イギリス国内の最高峰のギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ガンズ・アンド・ローゼズのダフ・マッケイガンもアルバムレコーディングに参加しています。しかし、これは、単なる友情共演と捉えるべきでなく、正真正銘のコラボレーション、白熱したオズボーンとの共演を心ゆくまで楽しむことが出来るはずです。

 

最新アルバムにおいても、オズボーンは「ヘヴィ・メタル」という形に頑なにこだわっています。彼は、ブラック・サバスとともに、ヘヴィ・メタル音楽の先駆者である。メタルの流儀をやめるときは、プロのミュージシャンとしての看板を下ろすときなのかもしれません。そして、アメリカの作家、ウィリアム・バロウズが初めて考案した「メタルー鉱物的な音楽」という概念を最初に体現したアーティストとしての強い自負心のようなものも、この最新アルバムには反映されているように見受けられます。

 

オズボーンが精神病患者を舞台俳優のように演じることにより、ゴシック/コミックホラーのような雰囲気を演出するタイトルトラック「Patient Number 9」は、引き立て役に回ったジェフ・ベックのタイトなギター・プレイに支えられ、このアーティストらしい相変わらずのコミカルさ、ユニークさを見せつつ、多くのリスナーの共鳴を獲得するような王道のヘヴィ・メタル/ハード・ロックサウンドとなっています。この曲で、オジー・オズボーンは、持ち前のポピュラー性を維持しつつ、ストーナー・ロックのように、重く、図太いヘヴィ・ロックサウンドで聞き手を魅了してみせます。

 

アルバムの注目曲は他にも目白押しで、トニー・アイオミが参加した「Degradation Rules」では、ブラック・サバス時代の、泥臭い、ブルース・ハープを取り入れた渋いハードロック・サウンドに回帰を果たしていますが、以前よりもアイオミのギタープレイは刺激的で円熟味を増しているように思える。

 

さらに、ザック・ワイルドと共演を果たした「Nothing Feels Right」では、「Shot In The Dark」を彷彿とさせる抒情性あふれるメタルバラードを聴かせてくれます。この曲では、オズボーン自身が”ザ・ガーディアン”のインタビューで話していたとおり、パーキンソン病における苦しい闘病時代の経験に根ざして書かれたもので、その時代の感情を真心を込めて歌っている。このメタルバラードは、このアルバムではハイライトであるとともに、きっと、新時代のクラシックソングとなるはずです。ザック・ワイルドのギタープレイは相変わらず、世界で最も重く、低く、誰よりもタフですが、やはり、このギタリストの弾くフレーズは繊細さと淡いエモーションを兼ね備えている。

 

その時代の流行の音楽を巧みに融合させることで、今日まで伝説でありつづけてきたオズボーンは、本作のクローズ・トラックにおいて、意外な作風「ブルース・メタル」に挑戦している。この曲は、デルタ・ブルースのように、渋く、ワイルドな雰囲気を漂わせている。「Darkside Blues」において、オジー・オズボーンは、米国の文化に多大な敬意と感謝を表するとともに、住み慣れたもうひとつの故郷に友好的な別れを告げる。これは、いかにもオズボーンらしい、ヘヴィ・メタルの「フェアウェル・ソング」とも言えるのではないでしょうか?

 

このアルバムは発売当初から、英国では売上が好調で、オジー・オズボーンのこれまでのキャリアでチャートの最高位を獲得していて、それも頷けるような内容となっています。


また、本作は、「Diary Of A Madman」を始めとする最初期の名盤群に匹敵するようなセンセーショナル性は乏しいかもしれませんが、幅広い年代のリスナー層が安心して聴くことの出来るヘヴィ・メタルの良盤と言えそうです。


オジー・オズボーンは、73歳という年齢になっても、若い時代からそうであったように、今もなお、清涼感のあるハイトーンの声質を維持しているのはほとんど驚異です。そのボーカルは、彼がこれまでの人生で関わりをもって来た素晴らしい友人たち、そして、伝説的なロックミュージシャンたちの支えもあってか、以前よりもさらに力強い性質が引き出されているように思えます。


84/100


 

Featured Track 「Patinet Number 9」


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