Album Of The Year 2023  今年のベスト・アルバム40をピックアップ (Part 2)

 Music Tribune Presents ”Album Of The Year 2023” 

 

 



・Part 2 ーー移民がもたらす新しい音楽ーー


近年、ジャンルがどんどんと細分化し、さらに先鋭化していく中で、ミュージシャンの方も自分たちがどのジャンルの音楽をやるのかを決定するのはとても難しいことであると思われます。

 

あるグループは、20世紀はじめのブロードウェイのミュージカルやジャズのようなクラシックな音楽を吸収したかと思えば、それとは別に2000年代以降のユース・カルチャーの影響を取り入れる一派もいる。

 

およそ無数の選択肢が用意される中で、Bonoboのサイモン・グリーンも話すように、「どの音を選ぶのかに頭脳を使わなければならない」というのは事実のようです。多様性が深まる中で、移民という外的な存在が、その土地の音楽に新たな息吹やカルチャーをもたらすことがある。最初に紹介するカナダのドリームポップ/シューゲイズの新星、Bodywashのボーカルは実は日本人の血を引いており、彼はカナダでのビザが役所の誤った手続きにより許可されず、住民の権利が認可されなかったという苦悩にまつわる経験を、デビュー・アルバムの中で見事に活かしています。

 

さらに、Matadorから登場したロンドンのトリオ、Bar Italiaのメンバーも公にはしていないものの、同じように移民により構成されると思われ、三者三様のエキゾチズムがローファイなインディーロックの中に個性的に取り入れられています。さらに、ニューヨークのシンガー、Mitskiも日本出身の移民でもある。その土地の固有の音楽ではなく、様々な国の文化を取り入れた音楽、それは今後の世界的なミュージック・シーンの一角を担っていくものと思われます。

 

 

・Part 2  - New Music Brought by Immigrants-



As genres have become more and more fragmented and even more radical in recent years, it can be very difficult for musicians to decide which genre of music they are going to play.

One group may have absorbed classical music such as Broadway musicals and jazz from the early 20th century, while another faction has embraced the influences of youth culture from the 2000s onward.

With approximately countless options available, it seems true that, as Simon Green of Bonobo also speaks, "you have to use your brain to choose which sound to choose". As diversity deepens, the external presence of immigrants can bring new life and culture to local music. The vocalist of the first new Canadian dream-pop/shoegaze star, Bodywash, is actually of Japanese descent, and he makes excellent use of the experience of his anguish over a Canadian work visa whose residents' rights were not approved due to a mishandling by the authorities on his debut album. The album is a great example of the artist's ability to use his own experiences to his advantage.


In addition, the members of Bar Italia, a London trio that appeared on Matador, are also thought to be composed of immigrants as well, although they have not publicly announced it, and the exoticism of all three is uniquely incorporated into their lo-fi indie rock music. Furthermore, New York singer Mitski is also an immigrant from Japan. Music that is not indigenous to a particular region, but incorporates the cultures of various countries, is expected to become a part of the global music scene in the future.(MT- D)



 Bodywash 『I Held The Shape While I Could』



Label: Light Organ

Release: 2023/4/14

Genre: Dream Pop/ Shoegaze /Experimental Pop

 

 

今年、登場したドリーム・ポップ/シューゲイズバンドとして注目したいのが、カナダのデュオ、Bodywash。シンセサイザーと歪んだギター組みあわせ、独創的なアルバム『I Held The Shape While I Could』制作した。デュオは収録曲ごとに、メインボーカルを入れ替え、その役割ごとに作風を変化させている。

 

シューゲイズのアンセムとしては「Massif Central」がクールな雰囲気を擁する。その他にも、アンビエントやエクスペリメンタルポップが収録されている。アルバムの終盤では、「Ascents」や「No Repair」といったオルタナティヴロックの枠組みにとらわれない、新鮮なアプローチを図っている。 

 

 

 Best Track「Massif Central」



Best Track 「No Repair」




Hannah Jadagu 『Aperture』

 

 

Label: Sub Pop

Release: 2023/5/19

Genre: Indie Rock



Hannah Jadagu(ハンナ・ジャダグ)は、テキサス出身、現在はニューヨークに活動拠点を移している。

 

アーティストはパーカッション奏者として学生時代に音楽に没頭するようになった。以後、最初のEPをiphone7を中心にレコーディングしている。今作でレベルアップを図るため、Sub Popと契約を交わし、海外でのレコーディングに挑戦した。Hannha Jadaguは、彼女自身が敬愛するSnail Mail、Clairoを始めとする現行のインディーロックとベッドルームポップの中間にある、軽やかな音楽性をデビューアルバムで体現させている。

 

『Aperture』はマックス・ロベール・ベイビーをプロデューサーに招いて制作された。アルバムを通じてアーティストが表現しようとしたのは、教会というテーマ、そしてハンナ・ジャダグが尊敬する姉のことについてだった。

 

「Say It Now」、「Six Months」、「What You Did It」を中心とするインディーロック・バンガー、正反対にR&Bのメロウな音楽性を反映させた「Warning Sign」に体現されている。アルバムのリリース後、アメリカツアーを敢行した。インディー・ロックのニューライザーに目される。「Say It Now」では、「Ikiteru Shake Your Time」という日本語の歌詞が取り入れられている。

 

 

Best Track  「Say It Now」


 



Bar Italia  『Tracy Denim』

 

 

Label: Matador

Release: 2023/5/22

Genre: Indie Rock



当初、Bar Italiaは、ローファイ、ドリーム・ポップ、シューゲイザーを組み合わせた独特な音楽性で密かに音楽ファンの注目を集めてきた。Matadorから発表された『Tracy Denim』は、ロンドンのトリオの出世作であり、音楽性に関してもバリエーションを増すようになってきている。


現在は、その限りではないものの、当初、Bar Italiaは、「カルト的」とも「秘密主義」とも称されることがあった。『Tracy Denim』はトリオのミステリアスな音楽性の一端に触れることが出来る。最初期のローファイな作風を反映させた「Nurse」、トリオがメインボーカルを入れ替えて歌うパンキッシュな音楽性を押し出した「punkt」、Nirvanaのグランジ性を継承した「Friends」等、いかにもロンドンのカルチャーの多彩さを伺わせる音楽性を楽しむことができる。

 

アルバムのプロデューサーには、ビョークの作品等で知られるマルタ・サローニが抜擢。バンドは、Matadorからのデビュー作のリリース後、レーベルの第二作『The Twits』(Review)を立て続けに発表し、さらにエネルギッシュな作風へと転じている。今後の活躍が非常に楽しみなバンド。         

 

 Best Track 「punkt」





Gia Margaret 『Romantic Piano』

 


Label: jagujaguwar

Release: 2023/5/26

Genre: Modern Classical/ Post Calssical/ Pop

 

 

シカゴのピアニスト、マルチ奏者、ボーカリスト、Gia Margaret(ジア・マーガレット)の最新アルバム『Romantic Paino』は、静けさと祈りに充ちたアルバム。ピアノの記譜を元にして、閃きとインスピレーション溢れる12曲を収録。過去のツアーでの声が出なくなった経験を元にし、書かれた前作と異なり、単に治癒の過程を描いたアルバムとは決めつけられないものがある。

 

アルバムの冒頭を飾る「Hinoki Woods」を筆頭に、シンセサイザーとピアノを組みわせ、ミニマリズムに根ざした実験的な作風に挑んでいる。しかしピアノの小品を中心とするこのアルバムには、何らかの癒やしがあるのは事実で、同時に「Juno」に象徴されるように瞑想的な響きを持ち合わせている。

 

「Strech」は、現代のポスト・クラシカル/モダンクラシカルの名曲である。他にもギターの音響をアンビエント的に処理した「Guitar Piece」もロマンチックで、ヨーロピアンな響きを擁する。ボーカル・トラックに挑戦した「City Song」は果たしてシカゴをモチーフにしたものなのか。アンニュイな響きに加え、涙を誘うような哀感に満ちている。静けさと瞑想性、それがこのアルバムの最大の魅力であり、とりもなおさず現在のアーティストの魅力と言えるかもしれない。

 

 

Best Track 「City Song」

 

 


Killer Mike 『MICHAEL』

 

 


Label: Loma Vista

Release:2023/6/16

Genre: Hip Hop / R&B

 

ヒップホップのカルチャーの歴史、現在のこのジャンルの課題を良く知るキラー・マイクにとって、『MICHAEL』の制作に取り掛かることは、音楽を作る事以上の意味があったのかもしれない。つまり、近年、法廷沙汰となっているこのジャンルの芸術性を再確認しようという意図が込められていた。そしてヒップホップに纏わる悪評の世間的な誤解を解こうという切なる思いが込められていた。それはブラック・カルチャーの負の側面を解消しようという試みでもあったのです。

 

キラー・マイクは、結局、かつては友人であった人々が法廷に引っ張られていくのを見過ごすわけにはいかなかった。そこで彼は、ヒップホップそのものが悪であるという先入観をこの作品で取り払おうと努めている。また、キラー・マイクはブラックカルチャーの深層の領域にある音楽をラップに取り入れようとしている。このアルバムを通じて、マイクはゴスペル、R&Bへの弛まぬ敬愛を示しており、ブラック・カルチャーの肯定的な側面をフィーチャーしている。

 

取り分け、このアルバムがベストリストにふさわしいと思うのは、彼が亡くなった親族への哀悼の意を示していること。タイトル曲の録音で、レコーディングのブースに入ろうとするとき、キラー・マイクの目には涙が浮かんでいた。彼はブースに入る直前、様々な母の姿を思い浮かべ、それをラップとして表現しようとした。ヒップホップは必ずしも悪徳なのではなくて、それとは正反対に良い側面も擁している。キラー・マイクの最新作『MICHAEL』はあらためて、そういったことを教えてくれるはず。アーティスト自身が言うように、芸術形態ではないと見做されがちなこのジャンルが、立派なリベラルアーツの一つということもまた事実なのである。

 

 

Best Track  「Motherless」

 

 

 

 

McKinly Dixson 『Beloved!Paradise! Jazz!?』

 

 

Label: City Slang

Release: 2023/6/2

Genre:Hip Hop/ Jazz

 

 

City Slangから発売された『Beloved!Paradise! Jazz!?』の制作は、アトランタ/シカゴのラッパー、マッキンリー・ディクソンが、母の部屋で、トニ・モリスンの小説『Jazz』を発見し、それを読んだことに端を発する。

 

おそらく、トニ・モリスンの小説は、女性の人権、及び、黒人の社会的な地位が低い時代に書かれたため、現在同じことを書くよりも、はるかに勇気を必要とする文学であったのかもしれない。私自身は読んだことはありませんが、内容は過激な部分も含まれている。しかしマッキンリー・ディクソンは、必ずしも、モニスンの文学性から過激さだけを読み取るのではなく、その中に隠された愛を読み取った。もっと言えば、既に愛されていることに気がついたのだった。

 

マッキンリー・ディクソンの評論家顔負けの鋭く深い読みは、実際、このアルバムに重要な骨格を与え、精神的な核心を付加している。

 

音楽的には、ドリル、ジャズ、R&Bという3つの主要な音楽性を基調とし、晴れやかなラップを披露したかと思えば、それとは正反対に、エクストリームな感覚を擁するギャングスタ・ラップをアグレッシブかつエネルギッシュに披露する。アトランタという街の気風によるのでしょうか、ヒスパニック系の音楽文化も反映されており、これが南米的な空気感を付加している。

 

『Beloved!Paradise! Jazz!?』では、若いラップアーティストらしい才気煥発なエネルギーに満ち溢れたトラックが際立っています。新時代のラップのアンセム「Run Run Run」(bluをフィーチャーした別バージョンもあり)のドライブ感も心地よく、「Tylar, Forever」でのアクション映画を思わせるイントロから劇的なドリルへと移行していく瞬間もハイライトとなりえる。ジャズの影響を反映させた曲や、エグみのある曲も収録されているが、救いがあると思うのは、最後の曲で、ジャズやゴスペルの影響を反映させ、晴れやかな雰囲気でアルバムを締めくくっていること。もしかするとこれは、キラー・マイクに対する若いアーティストからの同時的な返答ともいえるのでは。

 

 

Best Track 「Run, Run, Run」

 

 

 

 M.Ward 『Supernatural Thing』 

 

Label: ANTI

Release:2023/6/23

Genre: Rock/Pop/Folk/Jazz

 


シンガーソングライターとして潤沢な経験を持つM.Ward。本作の発表後、ウォードはノラ・ジョーンズとのデュエット曲も発表した。

 

『Supernatural Thing』の制作は、M.Wardがふと疑問に思ったこと、ラジオの無線そのものが別世界に通じているのではないか、というミステリアスな発想に基づいている。実際、パンデミックの時期にM.Wardは、よくラジオを聴いていたそうですが、そういった目まぐるしく移ろう現代の時代背景の中で、人生の普遍的な宝物が何かを探求したアルバムと呼べるかもしれない。

 

アルバムには、アーティストのオリジナル曲とカバーソングが併録されている。音楽的には、Elvis Presleyの時代の古典的なロックンロール、パワー・ポップ、ジャングル・ポップ、コンテンポラリー・フォーク、ブルース・ロック、スタンダード・ジャズを始めとするノスタルジックなアプローチが図られている。しかし、それほど新しい音楽でないにも関わらず、このアルバムを良作たらしめているのは、ひとえにM.Wardのソングライティング能力の高さにあり、それがアーティストの人生を音楽という形を介してリアルに反映されているがゆえ。

 

本作のもう一つの魅力は、スウェーデンの双子のフォーク・デュオ、FIrst Aid Kitの参加にある。実際、アルバムに収録されているデュエット曲「Too Young To Die」、「engine 5」は、M. Wardのブルージーな音楽性に爽やかさや切なさという別の感覚を付与する。その他にも、アーティストが夢の中で、ロックの王様こと「エルヴィス」に出会い、「君はどこへだっていける」とお告げをもらう、ロックンロール・アンセム「Supernatural Thing」も珠玉のトラック。

 


Best Track 「Supernatural Thing」

 

 

Best Track 「engine 5」

   

 

 

 

 Oscar Lang  『Look Now』



Label: Dirty Hit

Release: 2023/7/2

Genre: Pop/Indie Rock/Alternative Rock

 


11歳で作曲を始めた(6歳くらいからピアノで曲を作っていたという説もある)マルチ・インストゥルメンタリストのオスカー・ラングは、2016年頃に楽曲を発表し始めた。高校在学中に、Pig名義で『TeenageHurt』や『Silk』のプロジェクトを発表し、実験的なポップと孤独の青春クロニクルで多数のファンを獲得した。2017年、ベッドルーム・ポップの新鋭、BeabadoobeeとのKaren Oの「The Moon Song」のカヴァーは、バイラル・ヒットとなり、数百万ストリーミングを記録し、2019年までに両アーティストはロンドンのレーベル、Dirty Hitと契約した。

 

『Look Now』は、オスカー・ラングが体験した幼馴染の恋人の別れの経験を元に書かれた。ギターロック色が強かったデビュー作とは対象的に、ビリー・ジョエル等の古典的なポップスから、リチャード・アッシュクロフトのVerveを始めとするブリット・ポップへの傾倒がうかがえる。

 

幼い頃に亡くなった母との記憶について歌われた「On God」の敬虔なるポップスの魅力も当然のことながら、バラードに対するアーティストの敬愛が全編に温かなアトモスフィアを形作り、ソングライターとしての着実な成長が感じられる快作となっている。「Leave Me Alone」、「Take Me Apart」、「One Foot First」等、聴かせるロックソングが多数収録されている。



Best Track「One Foot First」

 

 

 

 

Far Caspian   『The Last Remaining Light』-Album Of The Year 



 

 


 Label: Tiny Library

Release: 2023/7/28

Genre: Alternative Rock/Lo-Fi

 


リーズのJoseph Johnston(ダニエル・ジョンストン)は、デビューEPのリリース後、3年を掛けて最初のフルレングスの制作に取り掛かった。2021年にファースト・アルバム『Ways To Get Out」を発表後、ジョセフ・ジョンストンの持病が一時的に悪化した。このツアーの時期の困難な体験は、日本建築に対する興味を込めた「Pet Architect」に表れている。ジョンストンは、日本の狭い道に多くの建物が立て込んでいるイメージに強く触発を受けたと語る。

 

アルバムの制作中に、ジョセフ・ジョンストンはブライアン・イーノの『Discreet Music』を聴いていた。タイトルはTalking Headsの名作アルバム『Remain In Light』に因むと思われる。

 

『The Last Remaining Light』はオルタナティヴ・ロックの範疇にあるアルバムではありながら、ギターサウンド、ドラムのミックスに、ミュージック・コンクレートの影響が反映されている。本作は一時的な間借りのスタジオで録音され、音源を「タスカム244」の4トラックに送った後、それをテープ・サチュレーションで破壊し、最終的にLogicStudioに落としこんだという。

 

「デビュー・アルバムのミックスをレーベルに提出した翌日から、すぐ二作目のアルバムの制作に取り組んだ」とジョンストンは説明する。「ファースト・アルバムを完成させるのに精一杯で疲れきっていた。でも、アルバムが完成したとき、次の作品に取りかかり、失敗から学ぼうという気持ちになった。長いデビュー作を作った後、10曲40分のアルバムを書きたいとすぐに思った」

 

アルバム全体には荒削りなローファイの雰囲気が漂う。さらに、Rideへのオマージュを使用したり、American Footballのようなエモ的な質感を追加している。特にドラムの録音とギターの多重録音には、レコーディング技術の革新性が示唆される。本作の音楽性は、懐古的な空気感もあるが、他方、現代的なプロダクションが図られている。オルタナティヴ・ロックの隠れた名盤。

 

 

Best Track「Cyril」

 

 

 

 

 No Name 『Sundial』


Label: AWAL

Release; 2023/8/11

Genre: Hip Hop/R&B

 


シカゴのシンガー、No Nameは実際、良い歌手であることに変わりはないでしょうし、このアルバムも深みがあるかどうかは別としてなかなかの快作。

 

2021年にローリング・ストーン誌に対して解き明かされた新作アルバム『Sundial』の構想や計画をみると、過激なアルバムであるように感じるリスナーもいるかもしれないが、実際は、トロピカルの雰囲気を織り交ぜた取っ付きやすいヒップホップ・アルバムとなっている。多くの収録曲は、イタロのバレアリックで聴かれるリゾート地のパーティーで鳴り響くサマー・チルを基調にしたダンス・ミュージック、サザン・ヒップホップの系譜にあるトラップ、それから、ゴスペルのチョップ/サンプリングを交えた、センス抜群のラップ・ミュージックが展開されている。


少なくとも本作は、モダンなヒップホップを期待して聴くアルバムではないけれど、他方では、ヒップホップの普遍的なエンターテイメント性を提示しようとしているようにも感じられる。良い作品なので、アルバムジャケットを変更し、再発を希望します。

 

 

Best Track 「boomboom(feat. Ayoni」

 

 

 

 

Olivia Rodrigo 『GUTS』

 


Label: Geffen 

Release: 2023/9/15

Genre: Alternative Rock/Punk/Pop



米国の名門レーベル、ゲフィンから発売されたオリヴィア・ロドリゴの『GUTS』は主要誌、Rolling Stone、NMEで五つ星を獲得したものの、独立サイト系は軒並み渋めの評価が下された。


しかし、それもまた一つの指標や価値観に過ぎないだろう。オルタナティヴ・ロックという観点から見ると、少なくとも標準以上のアルバムであることがわかる。オリヴィア・ロドリゴは、アルバムの制作時、ジャック・ホワイトにアドバイスを求め、若いアーティストとして珍しく真摯に自作の音楽に向き合った。「Snail Mail、Sleater-Kinney、Joni Mitchell、Beyoncé、No DoubtのReturn Of Saturn、Sweetなど、お気に入りの曲を記者に列挙しており、「今日は『Ballroom Blitz』を10回も聴いた。なぜかは全然わからない」とNew York Timesに話している。

 

『Guts』では、ベッドルームポップの要素に加え、インディーロック、グランジ、ポップ・パンクの要素を自在に散りばめて、ロックのニュートレンドを開拓している。特に、現在の米国のロックアーティストとしては珍しく、アメリカン・ロックを下地に置いており、ティーンネイジャー的な概念がシンプルに取り入れられていることも、本作の強みのひとつ。ときに商業映画のようにチープさもあるが、一方で、アーティストは、その年代でしかできないことをやっていることがほんとうに素晴らしい。これが本作に、全編に爽快味のようなものを付加している。

 

それほど洋楽ロックに詳しくない若いリスナーにとって、オリヴィア・ロドリゴの『GUTS』は、入門編として最適であり、ロックの魅力の一端を掴むのに最上のアルバムとなるはずだ。このアルバムを聴いて、Green Dayの『Dookie』を聴いてみても良いだろうし、Nirvanaの『Nevermind』を聴いても良いかもしれない。その後には、素晴らしき無限の道のりが続いている!?

 

 

Best Track 「ballad of a homeshooled girl」

 

 

 

 

 Mitski 『The Land Is Inhospitable and So We Are』-Album Of The Year

 

 

Label: Dead Oceans

Release: 2023/9/15

Genre; Pop/Rock/Folk/Country

 

 

三重県出身、ニューヨークのシンガーソングライター、Mitski(ミツキ)の7作目のアルバム『The Land Is Inhospitable and So We Are』は、前作『Laurel Hell』のシンセ・ポップを主体としてアプローチとは対象的に、オーケストラの録音を導入し、シネマティックなポップ・ミュージックへと歩みを進めた。歌手としての成長を表し、たゆまぬ前進の過程を描いた珠玉のアルバム。


「最もアメリカ的なアルバム」とミツキが回想する本作は、フォーク/カントリーを始めとするアメリカーナの影響を取り入れ、それらを歌手のポピュラーセンスと見事に合致させた。オーケストラとの生のレコーディングという形に専念したことは、実際、アルバムにライブレコーディングのような精細感をもたらしている。それを最終的にミックスという形で支えるプロデューサーの手腕も称賛するよりほかなく、ミツキのソングライティングや歌に迫力をもたらしている。

 

現時点では、「My Love Mine All Mine」がストリーミング再生数として好調。この曲は、今は亡き”大瀧詠一(はっぴーえんど)”のソングライティングを想起させるものがある。クリスマスに聞きたくなるラブソングで、ミツキの新しいライブレパートリーの定番が加わった瞬間だ。

 

他にも、全般的にポピュラー・ミュージックとして聴き応えのある曲が目白押し。フォーク、ゴスペルの融合を試みた「Bug Like An Angel」、ミュージカル、映画のようなダイナミックなサウンドスケープを描く「Heaven」、歌手自身が敬愛する”中島みゆき”の切なさ、そして、歌手としての唯一無二の存在感が表れた「Star」等、アルバムの全編に泣ける甘〜いメロディーが満載である。このアルバムの発売後、Clairoが「My Love Mine All Mine」をカバーしていた。


 

Best Track 「My Love Mine All Mine」

 

 

 Best Track「Star」

 

 

Part.3はこちらからお読み下さい。

 

Part.1はこちら


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