Weekly Recommendation  New Dad 「Banshee」EP

 

 

New Dad



New Dadは、アイルランドのゴールウェイ出身の四人組のインディーロックバンド。メンバーは、Julie Dawson,Andle O'Beirn,Fiachra Parslow, Sean O 'Dowdで構成されている。

 

ドリームポップ、シューゲイザーの合間を縫うかのような絶妙なオルタナティヴサウンドは、これらのジャンルを生み出した同郷アイルランドのマイ・ブラッディヴァレンタインの後継バンドと称すことが出来るかもしれない。また、そこに、独特なアイルランドのバンドらしい叙情性が滲んでいる。

 

英国の音楽メディアNMEは、New Dadのサウンドについて、The Cure、Beabadooobee、Just Mustardといったバンドを引き合いに出している。また、Atwood Magazineは、New Dadのバンドサウンドについて、「皮肉じみた個性が表向きに感じられるが、そこには誠実さも滲んでいる。音には色彩的な視覚性が感じられ、歌詞には時に痛烈なメッセージが込められる」と評している。


New Dadは、2020年に自主レーベルからデビューを果たした新進気鋭のロックバンドであり、これまでに7枚のシングル作、及び、一枚のEP作品「Waves」をFair Youthからリリースしている。

 

アイルランド、ウェールズのブレコン・ビーコン国立公園で毎年8月に開催されるグリーンマン・フェスティヴァル、アメリカのピッチフォーク・ミュージックフェスティヴァル(パリ開催)、それからアイルランドのテレビ番組にも出演している。

 

1980年代のUKサウンド、スージー・アンド・バンシーズ、コクトー・ツインズ、ジーザス・メリーチェインズ、ライド、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、上記のザ・キュアーを彷彿とさせる轟音性とポピュラー性にくわえ、淡い叙情性を兼ね備えた性質がNew Dadの魅力。四人というシンプルな編成であるがゆえのタイトな演奏、甘く美しいサウンドを主な特徴としている。

 

 

 

 

 

「Banshee」 EP Fair Youth

 

 

 


 

 

 

Tracklisting

 

1.Say It

2.Banshee

3.Spring

4.Thinking Too Much

5.Ladybird

 

 

 

今週の一枚として取り上げるアイルランドのNew Dadの2月9日にFair YouthからリリースされたEP「Banshee」。前作の「Waves」に続いて、このバンドの将来の明るさを証明付ける作品です。

 

「Banshee」は、アイルランドのベルファストで録音され、アメリカの傑出したSSW,ラナ・デル・レイやフィービー・ブリジャーズらの作品を手掛けているジョン・コルグルトンをリミックスエンジニアに選び、これまでよりもバンドとしてステップアップを図った意欲作というように称せるかもしれません。「Banshee」は、ジョン・コルグトンのエンジニアとしての敏腕がこの上なく発揮された秀逸なミニアルバムであり、スタジオ録音の作品ではあるものの、ライブバンドとしての若々しさ、みずみずしさ、溌剌さを余すところなく一発録りに近い瞬間の音として捉えています。

 

New Dadは、地元の学校仲間を中心に結成され、その後、アイルランドのバンドとして孤立している部分もありましたが、盟友ともいえる、Fountains DC,The Murder Capitalらの成功によって、イギリスひいてはワールドワイドのミュージックシーンへの大きな活路を見出していきました。

 

2020年始め、元々はスリーピースとして活動していましたが、フロントマンのジュリー・ドーソンが自分で演奏したり歌ったりするのが嫌という理由で、四人目のメンバー、ベーシストのショーン・オダウトが加入。

 

それに伴い、バンドサウンドとしても洗練され、厚みのあるグルーヴ感がもたらされました。バンドサウンドとしてのひとつの到達点が前作の「Waves」で、Slowdive、The Cureを彷彿とさせるような内省的なサウンドの雰囲気、歪んだディストーション、ドリームポップサウンドが絶妙に合致し、青春時代の切なさを感じさせるポップワールドが展開されるのが、このバンドの音楽性の醍醐味というようにも言えるでしょう。

 

New Dadの最新作「Banshee」は、New Dadがロックダウンに直面した際に、ソングライティング、レコーディングが行われている。バンドは、プレスリリースにおいて、「不安、ロックダウンの最中の多くの人が直面していた落ち着かなさ」について主題を絞っていると語ります。

 

十代の恋愛の片思いについて、フロントマンのジュリー・ドーソンが歌った「Say It」に始まり、スローダイヴやキャプチャーハウスを彷彿とさせる夢見心地なドリームポップサウンドが全力ど展開されていく。さながらMCなしのライブパフォーマンスを目の前で見ているかのように、息をつくまもない勢いで5つの楽曲は進行していきます。

 

まったりした印象を持つ秀逸なポップソング「Banshee」、バンドサウンドとして絶妙な緩急を交え展開される「Spring」に続いていき、「Thinking」で一息ついた後、この作品の評価を決定づけるフランジャーギターを活かした、前半部の雰囲気とは異なる華やいだ明るさを持つポピュラー・ソング「Ladybird」で、この作品は、ゆっくりと、静かに幕を下ろしていきます。

 

特に、このEPの中で、注目すべきなのが最終トラックとして収録されている「Ladybird」。フロントマンのジュリー・ドーソンが、アメリカのグレタ・ガーヴィグ監督の「レディー・バード」を鑑賞した後に書かれた作品で、この映画の中で流れている楽曲がデイヴ・マシューの曲を思い出させた。ドーソンは、この映画の中に人間関係の困難な部分や、苦労に直面した際に多くの人が感じる不安や恐れという感情に焦点を当て、そのときの感覚を新たな歌詞として提示しています。

 

この作品「Banshee」には、多くの人の共感を呼ぶような感情によって彩られています。それは特別な人ではなく、世界のどこにでもいるであろう、ごく普通の人たちにこそ相通じる普遍的な感覚のひとつ。それは別の言い方をしてみれば、社会不安にさらされがちな現代人の心に共鳴する「何か」がこの作品には込められていると思えるのです。