New Album Review Superchunk 「Wild Loneliness」



Superchunk

  

スーパー・チャンクは、1989年にノースキャロライナ州の小さなカレッジタウン、チェペルヒルで結成された伝説的なアメリカのインディー・ロックバンド。

 

オリジナルメンバーは、Mac McCaughan(ボーカル)、Laura Ballance(ベース)、Chuck Garrison(ドラム)、Jack Macook(ギター)の四人。

 

バンド名の「Superchunk」は、ドラマーのChunk Garrisonの名に因む。その後、チャック・ガリソンとジャック・マコックがバンドから脱退、代わりに、Jim Wilbur(ギター)とJon Wurster(ドラム)が加入し、現在の主要な編成となる。

 

パンクロックの影響を色濃く受けたローファイサウンドが魅力。Throwing MusesやYo La Tengoに比する雰囲気を持つが、スーパー・チャンクの方がよりパンクサウンドとの親和性が高い。The Pixies、Breedersと共に、1990年代のUSインディー・ロックシーンを定義づける存在で、ヴォーカリストのマック・マコーンの主宰するマージ・レコードから多くのリリースを行っている。

 

1990年代にアメリカ・シアトルからグランジムーブメントが最盛期を迎えた時代、メジャーレコードからの契約の話もあったが、彼らはメジャーとの契約を拒絶した。その後、頑なにインディーズレーベルからの作品リリースを続け、グランジムーブメントが終焉に向かい、凋落していくメジャーバンドを尻目に、DIYな活動形態を一貫して続けるかたわら、「Here's Where the Strings Come In」1995、「Cup Of Sound」2003といった傑作を残し、着実にインディーロックファンの人気を獲得し続けた。


2013年には、ベースのローラ・バランスが今後バンドのライブに参加しないと声明を発表した。彼女は聴覚喪失にも似た症状に苦しんでおり、これ以上のライブ活動は難しいとの判断からこの決断が行われた。

 

しかし、バンドとしての活動は2022年現在も続けている。新たにリリースされた「Wild Loneliness」は、バンドの30周年を記念してリリースされた作品。いまだ変わらない1990年代のインディーロック、DIY精神の本質を次世代に引き継いでいる素晴らしいロックバンドである。

 

 

 

「Wild Loneliness」 Merge

 

 

 

 

 

Tracklist

 

1.City Of Dead

2.Endless Summer

3.On The Floor

4.Highly Suspect

5.Set It Aside

6.This Night

7.Wild Loneliness

8.Refracting

9.Connecting

10. If You're Not Dark

 

 

変な喩え話になってしまうが、バンド活動を長く続けていく上で一番難しいのは、精神的根幹ともいうべき何かを絶えず持ち続けられるかどうかということである。それは、バンド関係における人間関係であるとか、時代背景、また、人生上の様々な環境が、その根幹ともいうべき音楽性というのを持ちつづけることが難しいからに他ならない。

 

もっとわかりやすく言えば、結成当初から一貫した音楽性を、何十年にもわたって作品として提示しつづけることは至難の技と言える。それは、音楽の流行り廃れだとか、また、自分たちへの音楽における確固たるアイデンティティといったものなしには、同じスタイルの音楽を続けることは困難と言える。そういった例、何十年にもわたって良い意味で音楽性が変わらないという例は、知るかぎりでは、AC/DC、そして、このスーパーチャンクぐらいしか見当たらない。

 

そういった意味で、1990年代からカレッジタウン、チャペルヒルの音楽シーンを象徴づけてきたスーパーチャンクの30周年を記念してリリースされた「Wild Loneliness」はほとんど奇跡的な作品である。

 

1990年代からアメリカの音楽シーンは年ごとに絶え間ない変化を続け、ロック音楽がヒップホップに取って代わられ、この音楽自体が2000年代に入って時代遅れになっても、インディーロックを奏で続けた。2010年代、2020年代に入っても、スーパーチャンクがやることに変わりはない。それは、自分たちの音楽を深く理解し、また信じ切っているからでもあるのだろう。


今作「Wild Loneliness」は、ノースキャロライナ州がロックダウン期間に入った時代にレコーディングが行われた。

 

そして、スーパーチャンクのフロントマンのマック・マコーンは、作品コメントでも述べている通り、そういった暗い時代をなんとか明るくしたいという思いを込めてソングライティングを行っている。


彼は、パンデミックのロックダウンが訪れても、西洋がウクライナ戦争の混乱にさらされても、どのような暗澹とした時代、不穏な時代にも、1990年代から、不変のコンセプトを保ち続ける。明るく、爽やかで、ほがらかな気持ちを失わず、その思いを歌にこめつづける。そのコンセプトは、この2022年も同じで変わることがないのだ。

 

最新作において、スーパーチャンクは、過去に留まることなく、未来に進み続ける。既存のインディー・ロック、インディー・ポップ、コンテンポラリー・フォーク、さらに、ローファイの質感を交えた親しみやすさのある音楽性に加え、ストリングス、ホーンアレンジなどを積極的に取り入れ、現代のロックバンドとしてのチャレンジ性を失うことはない。


もちろん、往年のファンの期待に沿うような素敵な楽曲も数多く収録されている。「Endless Summer」「The Night」「High Suspect」といった、スーパーチャンクの全盛期を彷彿とさせる可愛らさのあるインディー・ロックの珠玉の名曲群は、多くの人を励まし、勇気づけてくれるにちがいない。

 

ロックバンドとしての精神的な根幹。何のために音楽を作るのか。また、何のために歌を歌うのか。これらのことを、スーパー・チャンクは、豊富な経験により熟知しているように思える。そう、他でもない、マック・マコーンという人物は、1990年代初頭から、三十年にもわたって、世の中を明るくしていきたい。ただ、それだけのために、誰よりも真摯にインディーロックを演奏し続けてきた素晴らしい人物なのである。



・Featured Track  「The Night」

 


 

 

 

 

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