アルベルト・アインシュタイン 物理的思考と音楽的思考の深い関連性

 

音楽は、常に、芸術的な優雅さが欠かせないのと同じく、常に、物理学、数学的思考がなければならない。

 

そして、この考えに非常に近い考えを持っていたのが、世に傑出した相対性理論を証明したかのアルベルト・アインシュタイン氏です。アインシュタインは、これまで歴史上多くのパイオニアにインスピレーションを与えてきましたが、彼自身の概念的思考の発展において、音楽というのは、非常に特別な役割を果たしていました。その生涯において、ヴァイオリン、ピアノ、更に、晩年、エレキギターを演奏していたともいわれるアインシュタインの音楽へのたゆまざる愛情は、単なる物好きなどでなくて、彼の世界観や宇宙観を形成する永続的な情熱だったのです。


幼い頃から音楽に親しんでいたアルベルト・アインシュタインは、「もし、科学に人生を捧げていなかったら、音楽家になりたかった」と後に語っています。「もし、物理学者でなかったら、おそらく音楽家になっていただろう。私は、よく音楽の中で考える。白昼夢も音楽で見ている。私は自分の人生を音楽の観点から見ています...私は人生のほとんどの喜びを音楽から得ているのです」


アルベルトの母親パウリーネ・コッホは、音楽家であり、幼い時代の彼に音楽の勉強をするように促しましたが、5歳の時、将来のノーベル賞受賞者は動じなかったそうです。13歳の時、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタに出会い、独学でヴァイオリンを弾くようになり、音楽に目覚めたのでした。


アルベルト・アインシュタインは生前、モーツァルトへの深い愛着を持ち続けていたが、ベートーベンの曲は演奏が得意だったにもかかわらず、それほど感動することはなかったという。高校時代、アインシュタインは、実際にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを演奏し、試験官から「この少年は音楽に対する情熱が素晴らしく、その演奏に洞察力がある」と称賛された。


アインシュタインは、モーツァルトに加え、バッハの熱狂的な大ファンとして知られていて、「2つのヴァイオリンのための協奏曲」をよく演奏していました。アルベルト・アインシュタインがヴァイオリンの才能に恵まれていたことをご存じの方は多いはずですが、2番目の妻エルザは、物理学者と恋に落ちたのは、彼の弾くモーツァルトの演奏が崇高だったからだと明かしています。


また、アルベルト・アインシュタインは、モーツァルト、バッハの他に、ヴィヴァルディ、シューベルト、スカルラッティ、アルカンジェロ・コレッリなどをはじめとするドイツ、オーストリア、イタリアの古典派やロマン派の作曲家を好んで演奏していた。

 

しかし、彼は、リヒャルト・ワーグナーを倦厭しており、以下のような有名な言葉を遺している。「言うまでもなく、リヒャルト・ワーグナーの創意工夫には感心しますが、彼の建築的構造の欠如はほとんど退廃的としか思えません。さらに、「私にとって、ワーグナーの音楽的性格は、何とも言えず不快なものであり、ほとんどの場合、嫌悪感を持ってしか聴くことができません」と述べています。しかし、これらの問題には、ドイツ生まれのユダヤ人としてのアインシュタインの民族性における音楽的志向、つまり、ワーグナーとナチの密接な関係が少なからず潜んでいるように思えます。


相対性理論、重力波といった難解な理論的テーマ、それを解き明かすためのアルベルトの長期間にわたる物理学的構想は、彼の音楽的構造への深い理解に左右されているとさえ主張する専門学者も中にはいます。たとえ、そのような主張が突飛なものであったと仮定するにしても、彼が仕事のプロセスに音楽を取り入れ、しばしば音楽を通して障害を乗り越えていたことは間違いありません。


アルベルト・アインシュタインは、相対性理論を証明した最初の科学者としても知られていますが、その点の功績を取り上げられると、彼は、生前、「誰よりも長く、一つの問題に集中して取り組んできただけである」と説明しています。しかしながら、その間には、様々な難問をくぐりぬけねばならなかったはずであり、彼はこの問題解決へのアプローチと独自の作業プロセスについて一家言もっており、生前、次のように語っています。「しかし、即興ーインプロヴァイゼーションで、何かを成し遂げようとしているとき、セバスティアン・バッハの明快な構成力が是非とも必要になるのです」以上のアルベルトの言葉は、セバスティアン・バッハのインヴェンション、平均律、イギリス、フランス組曲といったピアノ曲の構造性、マタイ受難曲を始めとする論理的な構造をなす、長大な宗教曲や交響曲が、いかに彼の物理的思考に強いインピレーションを与え、さらに、重力波や相対性理論といった人類の難問を解き明かすための大きな助力となっていたのか伺えるのです。


ご存知の通り、アルベルト・アインシュタインは、原子爆弾の開発に携わった人物ではあるものの、それ以外にも他の人物にはなしえない物理学、数学に大きなイノヴェーションもたらした偉人でもある。モーツアルトやバッハといった上記のような先見の明のある人たちの作品を通して、それらの構造的な音楽の内奥に長きにわたり接することにより、その物理学的な構造の中にある核心のようなものを捉え、さらには、未知の領域に踏み出すための適切なインスピレーションを得、まったく驚くべきことに、宇宙に関する我々の理論を180°変えてしまった。つまり、未来における物理の常識を覆してしまった。かれは、最も有名な「相対性理論」の中で、光の伝達する速度について、難解な数式を介して解き明かしてみせた偉大な人物でもありますが、しかしまた、音楽の関係性を通じて、科学と芸術の融合の想像を絶する進歩、前例のない創造的な発見をもたらすことを証明したわけです。もちろん、以上のエピソードから、もし、アルベルトが生涯にわたり、バッハやモーツアルトの音楽に深い親しみを覚えていなかったら、と最後につけくわえておかなければなりません。数々の偉大な物理学の証明もなければ、数々の発明品もこの世に生まれでることはなかったはずなのです。