Floating Points ニューシングル「Someone Close」を発表

 

Floating Points

 Floating Pointsがニューシングル「Someone Close」を11月9日にリリースした。この曲はミニマルの構造を持つエレクトロニカであるとともに、微細なトーンの変化/ダイナミクスの変化により独特な抑揚をもたらし、曲にトリッピーな浮遊感を与えている。これまでの三曲の先行シングルとは明らかに異なり、宇宙的な音響性すら兼ね備えている。この曲は、単なるエレクトロニカではなく、電子音楽の天文学的なオーケストラレーションと称すことが出来る。

 

中盤では、ワンフレーズの反復の上に、バックトラックにアンビエントのようなサウンドスケープが薄く、また、別のシンセ・リードのフレーズが反対に厚く、連続して重ねられることにより、多重的な複雑な構造が生み出される。これらの音響性がデジタル信号の上限まで拡張された後、クライマックスでは、最初のモチーフが完全に消えさり、それまで表向きに聴くことが出来なかった静謐なアンビエント風のシークエンスだけが残され、神妙な余韻をもたらしている。

 

この中盤からクライマックスにかけての展開はほとんど「圧巻!」というよりほかなく、(皆既月食や天王星食の月や星の満ち欠けの微細な推移のように)聞き手はそこに存在しなかったと思っていた何かが「その空間中に既に存在していた」ことを発見し、驚かざるをえなくなる。この最後の絶妙というよりほかないフレーズの抜き方と曲構成の意外性に、サム・シェパードの天才性がはっきりと表れ出ているように思える。


ここでは、まさに、サム・シェパードの電子音楽のスタイルの真骨頂が体感できるにとどまらず、宇多田ヒカルの「バッドモード」や、故ファラオ・サンダースの「Promises」において様々なジャンルの音楽家とコラボレーションを重ねてきた敏腕プロデューサーとしての表情も窺える。

 

このニューシングルは、先日公開された「Grammar」、「Vocoder」、「Problems」と合わせて、12月16日にNinja Tuneから限定12インチ・ヴァイナルに収録される。「Someone Close」の試聴は以下よりどうぞ。