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©︎Samuel Bradley

ウェールズのエレクトリックミュージシャン、Kelly Lee Owens(ケリー・リー・オーウェンズ)が4枚目のスタジオ・アルバム『Dreamstate』を発表した。オーウェンズは、エンヤからスロッピンググリストルまでを吸収し、チャーチズのポスト世代に位置するエレクトロポップを提供する。


ダーティー・ヒットは、dh2主催のクラブミュージックのスペシャルイベントを7月11日に開催したばかりだ。イベントには、ケリー・オーウェンズ、ジョージ・ダニエル、オスカー・ファレルが出演した。サヤ・グレイを始めとする注目のエレクトリックミュージシャンを擁するが、今後、ダーティーヒットは傘下のレーベルではベースメントのクラブミュージックを押し出していきそうな気配だ。その中心となるのがジョージ・ダニエルとケリー・オーウェンズとなる。


Bicep、ケミカル・ブラザーズのトム・ローランズ、そしてダニエル自身がプロデューサー兼ライターとして参加している。新曲「Love You Got」は、サミュエル・ブラッドリーが監督したビデオとともにリリースされる。


「Love You Got は、自分自身の内なる幸福感を発見する好奇心から生まれた曲で、他者とのつながりの中で究極の至福を見出すために、自分自身の中の闇と光のバランスをとっているんだ」とオーウェンズは声明で説明している。



「Love You Got 」




2022年の『LP.8』に続くアルバムは、The 1975のジョージ・ダニエルが率いるダーティー・ヒットの新しいエレクトロニック・ミュージック・インプリント、dh2から10月18日にリリースされる。


Kelly Lee Owens 『Dreamstate』


Tracklist:

Dark Angel
Dreamstate
Love You Got
Higher
Rise
Ballad (In The End)
Sunshine
Air
Time To
Trust & Desire


©︎ Nikolas Soelter

 

ニューヨークのWater From Your Eyes(ウォーター・フロム・ユア・アイズ)がカバーEP『MP3 Player 1』を発表した。このEPには、アデル、アル・グリーン、サード・アイ・ブラインド、そして、チュンバワンバの楽曲のカヴァーが収録されている。彼らはチュンバワンバの1997年のトラック「The Good Ship Lifestyle」のカヴァーを発表した。以下よりお聴きください。


レイチェル・ブラウンとネイト・エイモスは、デビュー作『Everyone's Crushed』のレコーディングと同時期に『MP3 Player 1』を制作した。この曲は、デュオが2021年にリリースしたカヴァーLP『Somebody Else's Songs』で確立した伝統を引き継いでいる。

 

「これらは、『Everyone's Crushed』を完成させるのと同時に作ったカヴァーなんだ。ネイトが『Good Ship Lifestyle』を選び、レイチェルが他の3曲を選んだ」


「Chumbawambaは、明らかに僕らのお気に入りだけど、The Cure風のAdeleとAl Greenの中間のような、僕らが選べる中で最も畑違いのカヴァーなんだ。かなり面白いし、いい曲だと思うけど、最終的にはリスナーが自分で決めることになるだろうね」

 


MP3 Player 1 



Tracklist:


1. The Good Ship Lifestyle (Chumbawamba)

2. Someone Like You (Adele)

3. Tired of Being Alone (Al Green)

4. Motorcycle Drive By (Third Eye Blind)



The Good Ship Lifestyle (Chumbawamba)

Jon Hopkins announces new album "RITUAL".


イギリスのエレクトリックプロデューサー、ジョン・ホプキンスが新作アルバム『RITUAL』を発表しました。ホプキンスは前衛的なエレクトロニックからアンビエントに至るまで、幅広い音楽を制作することで知られている。以前、ブライアンイーノとのコラボレーションも行っているようです。


このアルバムはジョン・ホプキンスの22年のキャリアを通して探求されてきたテーマの集大成。2021年のアルバム『Music For Psychedelic Therapy』と対をなす作品となります。『RITUAL』はドミノから8月30日にリリースされます。


『RITUAL』についてホプキンスは次のように説明しています。「作曲しているとき、自分が何をしているのかまったくわからない。どこから来て、どこへ行くのかもわからないし、それが重要なことだとも思えない」


「だから私にできることは、最後まで自分の気持ちを感じ取り、何が起こっているのかを回顧的に分析し、その目的が何なのかを見つけ出そうとすることだけなんだ。はっきりしているのは、この作品は儀式の構造を持っているということ。私にとっては儀式なのだが、あなたにとっては違うものだろう。この儀式が実際に何であるかについて杓子定規にならないことが重要だと感じる」


「それは、自分の内なる世界の扉を開き、隠され埋もれているものを解き放つための道具のような気がする。体の緊張によって固定されているものを解き放つための。だから "アルバム "という感じはしない。同時にアルバムには物語性があるように感じる。私が経験しているプロセスの物語であり、私たち全員が経験していることなのかもしれない。創造、破壊、超越の物語でもあるのかもしれない。たぶん、それは典型的な英雄の旅の物語であり、忘却と記憶の旅なのだろう」

 


「RITUAL(evocation)」

 

 

 

2nd Single- 「RITUAL(Palace)」

©Mogene Barron

イギリスのベテランプロデューサー、Jon Hopkins(ジョン・ホプキンス)が、次作「RITUAL (palace)」のプレビュー第2弾を公開した。アルバムのメロディックな核心を覗く窓」と形容されるこの曲は、先に公開された「RITUAL (evocation)」に続くもの。以下からチェックしてほしい。


「2022年、私はDreamachineというプロジェクトのために作曲を依頼された。アーティスト、科学者、哲学者のチームによって作られた美しい没入体験で、2022年中、そしてその後もツアーを続けながら何万人もの人々が体験した。RITUAL (palace)』は、そのプロジェクトのために作曲した音楽を進化させたものだ。関わってくださったすべての方々にとても感謝しています」


Dreamachineのアーティスティック・ディレクターであるジェニファー・クルックは、「Dreamachineは、観客をパワフルで新しい種類の集団体験に巻き込む、学際的なコラボレーションです。

 

ジョンがDreamachineのために作曲したオリジナル曲は、この頭脳的な旅に不可欠な鼓動を与え、内なるつながりを築くようにデザインされています。RITUALは、彼の作曲を進化させ、このユニークなコラボレーションを見事に構築し、この特別な音楽をさらに多くの聴衆に届ける。



「Ritual (Palace)」

 

 

Jon  Hopkins『Ritual』 - New Album


Label: Domino

Release: 2024年8月30日


Tracklist:


part i – altar

part ii – palace / illusion

part iii – transcend / lament

part iv – the veil

part v – evocation

part vi – solar goddess return

part vii – dissolution

part viii – nothing is lost

 

Floating Points

このところ、単独のシングルを続けてリリースしていたフローティング・ポインツが待望のニューアルバムを発表した。『Cascade』はニンジャ・チューンから9月13日にリリースされる。


同アルバムには、以前シェアされたトラック「Birth4000」と「Del Oro」が収録されている。また、宇多田ヒカルもレコーディングに参加している。

 

この発表に合わせて、ニューシングル「Key103」がリリースされた。この曲は、「私が熱心に聴いていたマンチェスターのアンダーグラウンドなラジオ局」にちなんで名付けられたとサム・シェパードは説明している。ビデオでは、東京を拠点に活動するアーティスト、中山晃子とのコラボレーションを続けており、アルバムのアートワークも中山が手掛けている。以下からチェックしてほしい。

 

「私はいつも挑戦を追い求めているんだ。常に物事を動かし続け、自分自身をエキサイトさせることに全力を尽くしたいと思っている。たとえ、それが100人編成のオーケストラとバレエをやることであろうと、自分ひとりでラップトップを使うことであろうとね......」


 

 

 「Key103」

 

 

近年、フローティング・ポインツことサム・シェパードは、サンフランシスコ・バレエ団と共同で制作した初のバレエ・スコア『Mere Mortals』を手掛け、スピリチュアル・ジャズの巨匠であり、偉大なサクスフォン奏者のファラオ・サンダースの遺作『Promises』にキーボードで参加し、 宇多田ヒカルの『Bad Mode』の制作にも参加している。以降、フローティング・ポインツは単発のシングルをリリースしている。プロデューサーは2024年のフジロックにも出演する。

 

Floating Points 『Cascade』



Label:  Ninja Tune

Reelase: 2024年9月13日 


Tracklist:


1. Vocoder (Club Mix)

2. Key103

3. Birth4000

4. Del Oro

5. Fast Forward

6. Ocotillo

7. Afflecks Palace

8. Tilt Shift

9. Ablaze

 

Alva Noto

 

ドイツ人天才サウンドアーティスト、アルヴァ・ノトが多彩な作曲技法を探求する新シリーズ<HYbr:ID>の第三弾が7月12日にNOTONから発売される。

 

<HYbr:ID>の第三弾の先行シングルの3曲、「HYbr:ID Sync Inter」、「HYbr:ID Sync Dark」、「HYbr:ID Script Broken Conversation」のミュージックビデオが公開されているので、下記よりご覧ください。

 

第3弾は、振付家リチャード・シーガルと彼のダンス・カンパニー”Ballet of Difference”によるダンス作品『BALLET OF (DIS)OBEDIENCE』のための楽曲集。


日本の伝統芸能である能楽からインスピレーションを得て、音楽的なルールの排除に取り組んだという本作。


リズムとノン・ビートを織り交ぜながら、彫刻的な質感と美しく共鳴し合う音色による瞑想的なサウンドスケープを構築する。今作には収録曲13曲それぞれの音と音響記号に基づいたグラフィック図形譜が付属している。

 

 

 「HYbr:ID Sync Inter」

 

 

 「HYbr:ID Sync Dark」

 

「HYbr:ID Script Broken Conversation」

 

 

 

ーー「HYbr:ID 」シリーズのアルバムは個々の楽曲としてだけでなく、ひとつの作品として認識されるものであり、これらのアルバムを正しい曲順で聴いて、全体として体験する可能性を特に重要視している。

 

また、これらのアルバムはバレエ作品のために作曲されただけではなく、純粋な音楽作品としてそれぞれのアルバムが機能しており、彫刻的な質感を生み出すような方法でエレクトロニック・サウンドと構造を作り上げることに強く焦点を当てた、私にとっての新しい特質を示している。ーーカールステン・ニコライ


CD パッケージは Alva Noto の諸作品でお馴染みの、縦 18cm x 横 12.5cm の特殊サイズ紙ジャケ仕様。さらに、収録曲それぞれの音と音響記号に基づいたグラフィック図形譜を付属。再発盤の CD パッケージは縦 18cm x 横 12.5cm の特殊サイズ紙ジャケ仕様。



Alva Noto 『HYbr:ID Ⅲ』



発売日:2024年7月12日(金)
アーティスト:Alva Noto
タイトル:HYbr:ID Ⅲ
レーベル:NOTON
ジャンル: ELECTRONIC / AMBIENT
流通 : Inpartmaint Inc. / p*dis


フォーマット①:国内流通盤CD/ 品番: AMIP-0364 / 本体価格:2,900円(税抜)/ 3,190円(税込)
フォーマット②:輸入盤CD / 品番 :  N-064-1 / 価格: オープンプライス
フォーマット③:輸入盤LP / 品番 :  N-064-2 / 価格: オープンプライス
フォーマット④:デジタル配信


【TRACK LIST】

 
1. HYbr:ID Noh Talk
2. HYbr:ID Sync Dark
3. HYbr:ID Noh Human
4. HYbr:ID Sync Inter
5. HYbr:ID Collective Open
6. HYbr:ID Obsessive Behaviour Day
7. HYbr:ID Obsessive Behaviour Night
8. HYbr:ID Para Contamination
9. HYbr:ID Script Solitude
10. HYbr:ID Script Sacre Drone
11. HYbr:ID Script Broken Conversation
12. HYbr:ID Rehuman
13. HYbr:ID Épilogue

 

Kiasmos
Kiasmos ©︎Erased Tapes


本日、アイスランドの作曲家オラファー・アーナルズとフェロー諸島のミュージシャン、ヤヌス・ラズムセンによるデュオ、Kiasmosが待望のセカンド・アルバム『II』を引っ提げてカムバックを果たす。


キアスモスが2000年代後半に活動を開始したとき、パートタイムのスーパーグループが成層圏に突入することになるとは、本人たちも知る由もなかった。それは、近隣の島々(アイスランド)からやってきた2人の旧友が、それぞれが得意としていたピアノとエレクトロポップの音楽に対して殴り込みをかけ、ベルリン風のビートへの愛着を熱く分かち合うというものであった。しかし、2人のペアは、世界を席巻するライブ・アクトに成長し、その音楽は10年間を定義することに。


さて、エレクトロニック・ミュージック界で最もダイナミックなデュオの一組は、今更ながら次に何を企てているのだろう。彼らの新しいアートワークにそのヒントがありそうだ。キアスモスの特徴的なダイヤモンドのモチーフは、''炎に包まれたのち、灰の中から再び蘇る''というもの。


キアスモスは『II』によって、新しく生まれ変わり、復活を遂げる。2014年リリースされたセルフタイトルのデビュー作で、オーケストラのような華やかさと重さを感じさせないプロダクションでミニマル・テクノを再構築した。このアルバムは、わずか2週間で大部分を作り上げた。『II』の制作は、彼らの友情の試金石であると共に、素晴らしい音楽的な化学反応がいかに長い時間を経ても変わらずに存在しえるかを証明付けるものである。「当初、私たちは何のサウンドも確立していなかったので、作曲するのは簡単だった」とヤヌスは言う。


『II』では、奥深いアコースティックなテクスチャー、アトモスフェリックなアンビエンス、忙しないグルーヴ、野心的なストリングス・アレンジなど、キアスモスがサウンド・アーキテクトとして、どのように進化したかをはっきりと聴きとることができる。アルバムの各曲は、エレクトロニック、クラシック、レイヴの間を難なく行き来し、息つく暇もなく引き戻される小さな叙事詩を意味する。これは『Kiasmos』だが、さらにワイドスクリーンだ。「サウンドもプロダクションも大きくなった」とヤヌスは言う。「音楽は成熟しているけど、遊び心もある」


2020年から2021年にかけての失われた1年間、彼らはバリ島にあるオラファーのスタジオを訪れるなど、「II」の制作に熱心に取り組んだ。「私たちはそこで1ヶ月を過ごし、レコードに収録される数曲を書きました」とヤヌスは言う。2人はガムランなど伝統的なバリ島のパーカッションをサンプリングし、ヤヌスが録音した自然環境のフィールド・レコーディングを取り入れた。


キアスモスは、インストゥルメンタル・ミュージックで複雑な感情や喚起的なビジュアルを伝えることにかけては、うらやませるほどの才能を持っている。しかし今回は、プロデューサーとしての経験がより活かされている。アルバムの広がりは、オラファーがグラミー賞にノミネートされた作曲家として、さらに映画やテレビで著名なサウンドトラッカーとして活躍するまでの歳月と綿密にリンクしている。また、伝統的な4ビートからUKダンス・ミュージックの熱狂的なブロークン・ビートへと微妙にシフトチェンジし、BPMをより実験的に変化させている。


「エモーショナルなレイヴミュージックだ!」とオラファーは言う。Kiasmosの魔法は、ライブで起こりうるカタルシスの解放にも求められる。「''ダンスフロアで泣かせる''というアイデアをよく話すんだ。それが僕らの''非公式スローガン''になっている」「しかし、僕たちはまた、自分たちを含め、すべての人を飽きさせないことを望んでいる」とヤヌスは言う。もちろん、ささやくような静かなアトモスフィアから、ソックスを吹き飛ばすような爆発的なダンスビートへと移行するKiasmosの特徴的なスタイルは健在だ。彼らの不死鳥は灰の中から蘇り、飛び立つ準備が整っている。



Kiasmos  『II』-Erased Tapes

 

オラファー・アーナルズとヤヌス・ラスムセンの二人は、2014年から数年間の間隔を経て、スタジオ・アルバムを発表しつづけている。特に、オラファー・アーナルズに関してはソロミュージシャン、グラミー賞ノミネートの作曲家として様々なプロジェクトを手掛けているため、Kiasmosの活動だけに専念するというわけにもいかない。

 

前回は3年、今回は7年というスパンを置いても、キアスモスのサウンドは、普遍的で、相変わらず熱狂的なエレクトロサウンドが貫流している。


2014年からおよそ10年が経過したが、キアスモスのサウンドの核心には二人のダンスミュージックへの愛情、シンセサイザー奏者としての熱狂的な感覚が含まれている。いかなる傑出したミュージシャンであろうとも、10年という月日を経れば何かが変わらざるを得ないが、内的な変化や人間としての心変わりがあろうと、”Kiasmons"として制作現場に集えば、才覚を遺憾なく発揮し、誰よりもハイレベルのEDMを制作する。これぞプロフェッショナルな仕事なのだ。

 

今回、インドネシアのバリ島に制作拠点を移したキアスモスは、本人いわく”エモーショナルなレイヴ・ミュージック”を志向しているというが、実際的にはリゾート地の空気感を反映した清涼感のあるダンス・ミュージックの真髄が体現されている。基本的なハウスの4ビートを踏襲しながらも、リズムの構成の節々にフックを作り、それらを取っ掛かりにし、強固なうねるようなグルーヴを作り出す。

 

彼らのサウンドのアイデンティティでもあるEDMとしての熱狂性をビートの内側に擁しながらも、Bonobo(サイモン・グリーン)の『Migration』に見いだせるパーカッションやシンセリードの要素が圧倒的なエネルギーの中に静けさと涼し気な音響効果を及ぼす。全篇がボーカルなしのインストゥルメンタルで貫かれる『Ⅱ』は、あらゆるダンスミュージックの中でも最もコアな部分を抽出した作品と称せるかもしれない。


クラシカルなハウス/ディープハウスのビートを踏襲し、ベースラインのような変則的なリズム性を部分的に付け加え、独特なノリ、特異なウェイヴ、うねるようなグルーヴを呼び覚ます。もちろん、映画などのサウンドトラックも手掛けてきたオラファー・アルナルズは、作曲家としてだけではなく、プロデューサーとしても超一流だ。彼は熱狂的なアトモスフィアを刻印した覇気のあるダンスミュージックに、ストリングやピアノのアレンジを交え、アイスランドやフェロー諸島の雄大な自然の偉大さを思わせる美麗で澄み渡った音楽的な効果を付け加えている。

 

Kiasmosのプレイヤーとしての役割分担は明確である。しなやかなビートを作り出すリズムの土台を形作るラスムセン、それらにリードや演出的な効果を付加するアーノルズ。彼らは演奏の中で流動的にそれらの役割を変えながら、一つの形にとらわれない開放的なEDM(Electric Dance Music)を制作し、そしてダンス・フロアの熱狂をレコードの中で体現させようとしている。


アルバムのオープニングを飾る「#1 Grown」は、神秘的なシンセ・パッドを拡張させ、開放的で清涼感のあるアトモスフィアを作り出す。モジュラーシンセのビートが緻密に組み上げられていき、背景となる大気の空気感を反映させたシークエンス、そしてオラファーの代名詞である美麗なポスト・クラシカルのピアノの演奏を交えながら、連続した音のウェイブを作り出す。


基本的にミニマル・テクノをベースにしているが、Tychoの系譜にあるサウンド・デザインのような意味を持つシンセ・リードがトラックそのものの背景となるシークエンスにカラフルな音の印象を及ぼす。そして、オーケストラストリングやピアノの演奏を付け加えながら、単一の要素で始まったダンスミュージックは驚くほど多彩な印象に縁取られ、その世界観を広げていき、そして奥行きを増していく。反復的なミニマルの音の運びがアシッドビートのように何度もそれが執拗に繰り返されると、オラファー・アルナルズのカラフルなシンセリードの演出効果により、ダンスミュージックの祝福されたような瞬間をアルバムのオープニングで作り出す。

 

エモーショナルなレイヴの要素は「#2 Burst」に見いだせる。同曲は今年のダンス・ミュージックのハイライトとなりそう。今回、 ”伝統的な4ビートからUKのダンスミュージックを反映させた”ということで、Burialの最初期のダブステップやUKベースライン、ブレイクビーツの影響を交え、しなるようなビートを築き上げる。もちろんキアスモスとしての特性も忘れていない。


90年代、00年代から受け継がれるダンスミュージックの内省的な要素を反映させ、レイヴやアシッド・ハウスの外交的なスタイルに昇華させる手腕は天才的である。次のセクションの前に強拍を置き、それらを断続的に連ねながら、キアスモス特有のグルーヴを発生させ、連続的なエネルギーを上昇させ、青空に気球がゆっくりと舞い上がるかのようなサウンドスケープを呼び覚ます。 そしてフィルターを掛けながら、トーンを自在に変化させたり、映画音楽のようなストリングを交えたりと、ジャンルそのものを超え、音楽の合一へと近づく様は圧巻である。”泣かせるダンスミュージック”というのが何なのか、この曲を聞いたら明らかではないだろうか。

 


「Burst」-Best Track

 

 

音楽における旅を続けるかのように、「#3 Sailed」は映画音楽をテクノ/ブレイクビーツとして再解釈し、ドラマティックなイメージを呼び起こす。南国の海の波の音をリズムの観点から解釈し、Tychoのようなリード、民族楽器のフルートを模したシンセ、ガムランのようなインドネシアのリズムの特性を織り交ぜ、”エスニック・テクノ”という未曾有のジャンルを作り上げる。


これらは、2010年代後半にBonoboが試みていたエスニックなテクノにキアスモスの独自の解釈を付け加え、それらを洗練させたり改良させたりする。色彩的な音楽の要素は「#4 Laced」でも続き、Four Tetの系譜にあるサウンド・デザインのようなアウトプット、それから、ピアノやホーンのリサンプリングの要素を重層的に重ねながら、コラージュ的なテクノを構築する。曲の複合的なリズムはもちろん、キアスモスは一貫して旋律進行の側面を軽視することはない。


同曲の後半では、ダブステップやネオ・ソウルのトラック制作で頻繁に使用されるオーケストラ・ストリングやホーンのサンプリングの技法を凝らしながら、変幻自在で流動的なサウンドを作り出す。これらのサンプリングは裏拍を強調したアップビートと重なりあい、最終的にはアシッドハウスの範疇にあるコアなグルーヴを発生させる。

 

Erased Tapesのプレスリリースでは”BPMの変化に工夫が凝らされている”と書かれている。ところが意外なことに、本作の序盤ではBPMが驚くほど一定で、同じようなビートの感覚が重視されている。つまりテンポはほとんど変わらない。しかし、これは”リズムの魔術師”である二人の遊び心のようなもので、終盤にある仕掛けが施されている。


そして、少なくともBPMの観点から言えば、一定のテンポという概念を逆手に取り、その中に組み込まれる大まかな音符の分数の割当により、リズムの性質に変化を及ぼし、最終的にはリズムの構造性を変容させる手法が目立つ。変拍子は登場しないが、他方、トーンの変化ーーフィルターを調節し、音の聞こえ方を変化させることで、ビートに微細な変化を及ぼしている。これは、彼らのKEXPのライブ・パフォーマンスを見てもらえるとよく分かるように、ターンテーブルの出力の遅れを始めとする音の発生学をシンセプレイヤーとして体感的に捉えたものである。

 

続く「#5 Bound」はディープ・ハウスの4ビートに軸足を置きながら、シンセのモジュラー機能によってほんわかしたシーケンスを作り出し、最終的にはそれらを清涼感のあるレイヴの形へと繋げる。やはり一貫してBPMは一定であるが、トーンのシフトを調節しながら、出力を引き上げたり、正反対に引き下げたりしながら、ラウドとサイレンスを自由自在に行き来する。もちろん音程もそれに応じて、手動で上昇させたり、下降させながら、流動的なウェイブを作り出す。これらにエモーションを与える役割を果たすのが、曲の後半で演出的に導入される映画音楽の影響下にあるオーケストラストリングだ。これはとりも直さず、フロアのクールダウンの役割を果たしている。アウトロで演奏される内省的なローズピアノがほのかな余韻を残す。

 

 

前半では、キアスモスらしからぬトラックが多いように思える。しかし、「#6 Sworn」では両者が2014年頃から追求してきたアイスランド/フェロー諸島の持つ土地柄を反映させたテック・ハウスが展開される。


2017年に発表された「Blurred」のタイトル曲の系譜にあり、ピアノを元に深妙なイントロを作り出し、内的な熱狂性を込めたミニマルテクノを展開させる。しかし、アルナルズのシンセリードの演奏は、以前よりも円熟味を増し、彼が言うように「エモーショナルなレイヴ」の感覚を呼び起こす。


確かに、キアスモスらしい音の運び方であるものの、7年を経て、何かが変わったような気がする。オーケストラ・ストリングを含めたサウンドプロダクション、アンビエントのようなシークエンス、金属的なパーカッションのリズムセクション、シンセの音の破壊とマニュピレーションというように、以前よりも多角的な要素が散りばめられ、背後にはファンク・ソウルの影響もちらつき、最終的に二人の合奏やサウンドコントロール下にあるタイトな音楽を構築する。


思うのは、キアスモスは、2020年代のダンス・ミュージックだけではなく、90年代やミレニアム時代のテクノの醍醐味を体感的に知っているということである。もちろん、ダンスミュージックは、他のいかなるジャンルよりも感覚的なもので、リズムそのものに身を委ねられるか、体を揺らせるか、何より、音のイメージから読み取るべき何かが存在するというのが必須である。


「#7 Spun」は、Bonobo(サイモン・グリーン)の影響下にある、複合的なリズムを織り交ぜた4/8の構成のテックハウスで、複雑化の背景には、リズムの簡素化がある。要するに、どれほど音を積み重ねようとも、根底にあるリズムは単純明快で、無駄な脚色は徹底して削ぎ落とされている。


常に優れたデザインが簡素であるように、キアスモスのサウンドは一貫してシンプルなビートとリズムを重視している。これが俗に言うグルーヴ感を呼び起こし、アシッドハウスの質感を伴う”うねるようなウェイヴ”が出現する。ここにも、以前、サイモン・グリーンが語っていたように、”どれほど多くの機材を所有し、音の選択肢が広がろうとも、良い音楽を作れるわけではない”ことが示されている。グリーンは以前、''機材の多さを重視するミュージシャンに辟易している''と話していたが、良いダンスミュージックを制作するために必要なのは知恵と工夫である。


今回、キアスモスはエキゾチックな雰囲気を持つトラックを制作している。同じように、「#8 Flown」は、パーカッシヴな効果を活かしたBonoboの系譜にあるEDMとなっている。それらを太鼓のようなドラム、インドネシアのガムランに見出される民族音楽の金属的なパーカッションという形式を通じて、チルアウトの気風を反映させる。そして、ガムランの音の特徴というのは微分音にある。つまり複数の倍音の発生させることによって、涼し気な音響効果を及ぼすということ。


微分音というのは、平均律をさらに微分によって分割したもので、倍音の音響がいくつもの階層に分かたれていることを証明付けている。この音響学の性質をキアスモスは知ってか知らずか、金属的なパーカションを反復させ、太鼓のようなスネアの音、三味線やサントゥールのような民族楽器のサンプリング、そしてピアノやストリングのコラージュを散りばめることで、バリ島の制作現場の空気感を反映させたリゾート感たっぷりの魅惑的な音の世界に導くのである。

 

BPM(Tempo)の極端な変化という点は、アルバムの最終盤に出現する。アップビートのディープハウスによるトラック「Told」は、EDMの愉悦を体現させている。バスドラのキックを活かし、ラウドとサイレンスを巧みに交差させ、明るい印象に縁取られたダンスミュージックの究極系に近づく。曲の中盤に導入されるオーケストラストリングスは、ほんの飾りのようなもので、基本的にはトーン・シフトやフィルターの使用を介し、音の印象に変化を及ぼすというキアスモスのスタイルに変更はない。そして、アッパーなビート、ダウナーなビートという、2つの対比の観点から、メリハリのあるダンスビートを作り上げ、最も理想的なダンスミュージックが造出される。アウトロでは、制作現場の雰囲気を反映させたような楽園的なストリングスがフェードアウトしていく。この曲の後半には、音楽の最高の至福のひとときを体感できる。

 

グラミー賞ノミネートのピアニスト/作曲家としても活躍するオラファー・アルナルズであるが、もうひとつの制作者の表情が続く「Dazed」に見いだせる。お馴染みの蓋を開けたアップライトピアノのレコーディングは、モダンクラシカルの曲を期待するリスナーに対するミュージシャンのサービス精神の表出である。バリ島でフィールド録音したと思われる水の音のサンプルは、従来のアイスランドの気風を持つピアノ曲とは若干異なり、南国の気風に縁取られている。アップビートの後の涼しげなピアノ曲は、アルバムの重要なオアシスとなるにちがいない。


キアスモスは、エレクトロニックの文脈において、フローティング・ポインツのような大掛かりなトラックを制作する場合もある。


アルバムのクローズを飾る「Squared」は、ヨハン・ヨハンソンを彷彿とさせるモダンクラシカル風のオーケストラストリングスの立ち上がりから、ミニマルテクノ/ハウスへと移行していく。もしかすると、このクローズ曲には、富士銀行のアルバム・ジャケットで有名なMOGWAIへのオマージュが捧げられているかもしれない。特にリズムの側面では、マーチングのような行進のリズムが内包されている。そして、その向こうからぼんやりと立ちのぼってくる90年代のレトロなシンセリードは、エキサイティングであるにとどまらず、勇ましさすら感じとることができる。まさしく、ファンにとって待ってましたといわんばかりのダンスチューンである。 


キアスモスのバックカタログにある「Loop」の構造を踏まえ、同じようにミニマル・テクノ/ハウスの中間に位置するパワフルなEDMで『Ⅱ』は締めくくられる。オラファーによるトーンの操作も素晴らしく、ヤヌスのベースの抜き差しも聞き逃せない。リアルタイムで録音したからこその刺激的なキラーチューン。これ以上の理想的なEDMは今年登場しないかもしれない。アウトロの二人の個性がガッチリ組み合わされ、刺激的な音のハーモニクスを描く瞬間は圧倒的である。このアルバムではダンスミュージックの本当のかっこよさを痛感することができるはず。

 


 

95/100

 

 

 

「Squared」-Best Track



Kiasmosのニューアルバム『Ⅱ』はErased Tapes Records Ltd.から本日(7月5日)リリース。 ストリーミング等はこちら。商品のご購入は全国のレコードショップにてよろしくお願い申し上げます。

 

Masayoshi Fujita
Masayoshi Fujita

ドイツ/ベルリンで活躍する日本人ヴィブラフォン奏者のマサヨシ・フジタがニューアルバム『Migratory』を制作を発表した。アルバムは9月6日にErased Tapesから発売され、Moor MotherとHatis Noitがゲスト参加している。藤田はアルバムからの最初のシングル「Tower of Cloud」を公開した。


この曲について藤田マサヨシは、「''Tower of Cloud''は、数年前のツアーのためにライブ・セットを準備していたときに形になり、ヨーロッパやタイで演奏するうちに進化していきました。シンセのリフは夏の終わりを感じさせ、積乱雲を連想させます。マリンバのメロディに合わせて、ツバメが空に悠々と羽ばたき、円を描いている様子が目に浮かぶようです」と述べている。


『Bird Ambience』と同様、藤田は仲間からインスピレーションを受けている。このアルバムのタイトル『Migratory』は、アフリカ、東南アジア、日本のどこかを旅する渡り鳥の印象に由来する。鳥たちが下界から音楽を聴き、上空から世界を見る視点が、音楽と土地の境界を曖昧にする。


また、アルバムに参加しているアーティストも、国境を越え、他の国々を旅したり、住んだりすることで、他の土地の音楽に影響を受けつつも、同時に自分たちのルーツへとつながっていく。


藤田にとって自然はインスピレーションの源であり、『Migratory』では自然が主役となっている。アルバムの穏やかで配慮されたフィールド・レコーディングでそれを聴くことができる。が、最も重要なのは、「自然にはリスナーが音楽から呼び起こすイメージがある」ということ。著名な小説家で旅行作家でもあるピコ・アイヤーが書いたレコードのスリーブノートには、彼が座って音楽を聴くときに耳にする日本について書かれている。それは、藤田の想像上の鳥が音楽の移動の本質を鮮やかに描き出すのと同じように、私たちの心をやさしく包み込む。



「Tower of Cloud」



Masayoshi Fujita  『Migratory』


Label: Erased Tapes

Release: 2024年9月6日


Tracklist:

Tower of Cloud

Pale Purple

Blue Rock Thrush

Our Mother's Lights (feat. Moor Mother)

Desonata

Ocean Flow

Distant Planet

In a Sunny Meadow

Higurashi (feat. Hatis Noit)03:36 Valley

Yodaka

Sachi Kobayashi - 『Lamentations』 

 


 

Label: Phantom Limb

Release: 2024年6月28日

 

Review

 

埼玉県出身のサチ・コバヤシによるアルバム「Lamentations」は、UK/ブライトンのレーベル、Phantom Limbからの発売。


すでにBBC(Radio 6)でオンエアされたという話。ローレル・ヘイロー、ティム・ヘッカー、バシンスキーの系譜にあるサンプリングを特徴としたエレクトロニックで、アシッドハウス、ボーカルアートを織り交ぜたアンビエント、モダンクラシカルと多角的な視点から制作されている。

 

「Lamentationsは、身をもって体験した心の痛みという現代的な物語を織り交ぜている。現在の戦争に対する私の悲しみと嘆きから生まれた」と小林はプレスリリースを通じて説明しています。「一日でも早く、人々が平和で安全に暮らせるようになってほしい」


制作の過程については「最初の素材集を作った後、カセットテープを使って自作曲を編集し、ループさせ、歪ませ、時間調整し、それらのバージョンをスタジオで再加工することで、テープ録音特有のアナログ的な残像や予測不可能な音のトーンの変化を取り入れた新しい作品を生み出した」と説明します。

 

本来、小林さんは、Abletonを中心に制作する場合が多いとのことですが、今回のアルバムの制作ではテープデッキを使用したのだそうです。


『Lamentations』は、ボーカルのサンプリングを用い、クワイアのような現代音楽の影響を反映させた実験音楽、ティム・ヘッカーやローレル・ヘイローのような抽象的なアンビエントまで広汎です。


カセットテープを使用した制作法についてはニューヨークのプロデューサー、ウィリアム・バシンスキーの『The Disintegration Loops』を思い浮かばせるが、曲の長さは、かなり簡潔である。


制作のミックスに関しては、マンチェスター周辺のアンダーグラウンドのエレクトロニック、強いて言えば、”Modern Love”、もしくは"Hyper Dub"のレーベルの方向性に近い。その中には、ベースメントのダブステップやベースライン、トリップ・ホップのニュアンスが含まれています。


これが、対象的なクワイア(賛美歌)の音楽的な感覚の再構成、それらにアシッドハウスの要素を加味した、きわめて前衛的なエレクトロニックの手法が加わると、気鋭の前衛音楽が作り出されます。アンビエントは基本的にノンリズムが中心となっていますが、少なくとも、このアルバムにはAutechreのように”リズムがないのにリズムを感じる”という矛盾性が含まれています。


オープニング「Crack」は、アシッド・ハウスやミニマル・テクノを一つの枠組みとしてモジュラーシンセの演奏を織り交ぜている。


解釈の仕方によっては、ベースを中心にそれとは対比的にマニュピレートされた断片的なマテリアルが重層的に重なり合う。現代の中東の戦争を象徴づけるように、それは何らかの軋轢のメタファーとなり、異なる音の要素が衝突する。


たとえば、ゴツゴツとした岩石のような強いイメージのあるシンセの音色で、遠くて近い戦争の足跡をサウンド・デザインという観点から綿密に構築してゆく。


重苦しいような感覚と、それとは異なる先鋭的な音のマテリアルの配置がここしかないという場所に敷き詰められ、まるでパレスチナのガザのいち風景の瓦礫の山のように積み重なっていく。この曲にはエレクトロニックとしてのリアリズムが反映されている。


「Unforgettable」は一転して、自然のなかに満ち溢れる大気の清涼感をかたどったようなアシッド・テクノ。イントロのシークエンスから始まり、一つの音の広がりをモチーフとしてトーンの変容や変遷によって音の流れのようなものを作り上げる。その後、アルペジエーターを配置し、抽象的なノンリズムの中にビートやグルーヴを付加する。アルペジエーターの導入により、反復的な構成の中に落ち着きと静けさ、そして癒やされるような精妙な感覚を織り交ぜる。しかし、アウトロはトーンシフトを駆使し、サイケデリックな質感を持つ次曲の暗示する。

 

続く「Aftermath」は、断片的な音楽のマテリアルですが、現在の実験音楽の最高峰に位置しており、ローレル・ヘイローやヘッカーの作品にも引けを取らない素晴らしい一曲。他のアーティストの影響下にあるとしても、日本人のエレクトロニック・プロデューサーから、こういう曲が出てきたということが本当に感激です。


オーケストラ・ストリングや金管楽器の要素をアブストラクトなドローンとして解釈し、アシッド・ハウスの観点からそれらを解釈しています。シュトックハウゼンのトーン・クラスターや、ローレル・ヘイローのミュージック・コンクレートの解釈は、サチ・コバヤシのサイケデリックやアシッドという文脈において次の段階へと進められたと言える。


アルバムの後半では、サチ・コバヤシのボーカルアートとしての性質が強まる瞬間を見出せる。特に、クワイア(賛美歌)をアンビエント/ドローンから解釈した「Lament」はクラシック音楽を抽象性のあるアンビエント/ドローンとして再解釈した一曲で、前曲と同じように、ここにも制作者の美学やセンスが反映されている。


緊張感のあるアルバムの序盤の収録曲とは異なり、メディエーションの範疇にある癒やしのアンビエントのひとときを楽しむことができるはずです。また、サンプリングを交えたストーリー性のある試みも次の曲「Memory」に見いだせる。


ガザの子供の生活をかたどったような声のサンプリングが遠ざかり、その後、ロスシルや畠山地平の系譜にあるオーガニックで安らげるシンプルなアンビエント/ドローンが続いています。これらの無邪気さの背後にある余白、その後に続く、楽園的な響きを持つアンビエントの対比が何を意味するのか? それは聞き手の数だけ答えが用意されていると言えるでしょう。

 

終盤では、クラシック音楽をドローンとして解釈した「Pictures」が再登場する。この曲は、グスタフ・マーラーの「Adagietto」のオーストリアの新古典派の管弦楽の響きを構図とし、イギリスのコントラバス奏者、ギャヴィン・ブライヤーズの傑作「The Sinking Of Titanic」の再構築のメチエを断片的に交えるという点ではやはり、Laurel Haloの『Atlas』の系譜に位置づけられる。


ドローン音楽による古典派に対する憧れは、方法論の継承という側面を現代的な音楽としてフィーチャーしたものに過ぎません。けれども、チャイコフスキーのような大人数の編成のオーケストラ楽団を録音現場に招かずとも、サウンド・プロダクションの中で管弦楽法による音響性を再現することは不可能ではなくなっています。そういった交響曲の重厚な美しさをシンプルに捉えられるという点で、こういった曲には電子音楽の未来が内包されているように思える。

 

 

アルバムの最後の曲は、デジタルの音の質感を強調したサウンドでありながら、ブライアン・イーノのアンビエントの作風の原点に立ち返っている。


抽象性を押し出した''ポストモダニズムとしての電子音楽''という点は同様ですが、ぼんやりした印象を持つシークエンスの彼方に神秘的な音のウェイブが浮かび上がる瞬間に微かな閃きを感じとれる。


それは夏の終わりに、暗闇の向こうに浮かび上がるホタルの群れを見るかのような感覚。こういった音楽は、完成度や影響されたものは度外視するとしても、アンビエントミュージックやエレクトロニックが方法論のために存在する音楽ではないことを思い出させてくれる。音の印象から何を感じ取るのか? 


もちろん聞く人によって意見が異なり、それぞれ違う感覚を抱くはずです。そして、どれほど完成度の高い音楽であろうとも、人間的な感覚が欠落した音楽を聴きすぎるのはおすすめしません。

 

これは、「Autobahn」の時代のクラフトワークの共同制作者であり、アメリカのAI開発の第一人者でもある、ドイツ人芸術家のエミール・シュルト氏も以前同じような趣旨のことを語っていた。彼はまた音楽に接したとき感じられる「共感覚」のような考えを最重要視すべきと述べていた。そういう側面では、シュルトが話していたように、音楽は今後も数ある芸術の中でも”感情性が重視される媒体”であることは変わりなく、今後の人類の行方を占うものなのです。



 

 

 

92/100

 

 

 


 

James Blake & Lil Yachty

James Blake(ジェイムス・ブレイク)とLil Yachty(リル・ヨッティ)は、クオリティ・コントロール・ミュージック/ポリドールよりコラボレーション・アルバム「Bad Cameo」を発表した。Lil & Jamesは今後どうなるのかひそかに楽しみにしたいコラボレーションの一つである。

 

このデュオは、アンビエントとエレクトロニカの要素を、ジャージー・クラブ、アシッド・ハウス、ブレイクビートと融合させ、夜の冥界に位置するワイドスクリーンのレコードに仕上げた。スタイル、サウンド、テクスチャーの実験的なタペストリーである「Bad Cameo」は、リル・ヨッティのサイケデリック・ラップの実験作「Let's Start Here」とは一線を画している。

 

サウンドクラウドのラップの世界と壮大なインストゥルメンタルを融合させながら、両者は互いの技術に興味と主張をもってアプローチする。2人はヴォーカルを自然に織り交ぜ、対照的な1つの声を体現させる。声を媒体として異なるエネルギーが重なり合うような奇妙なイメージに縁取られている。

 

新作アルバムのリリース後、ブレイクとヨッティーはゼイン・ロウとの独占インタビューに応じた。業界における挑戦、芸術的自律性、ソングライティングの進化、合成創作の没入感について語りながら、創造的な絆を解き明かした。アルバムの試聴とタイトル曲のビジュアライザーは下記より。

 


「Bad Cameo」

 

 

Isik Kral


トルコ出身で現在はグラスゴーに在住する電子音楽家、Isik Kral(イシク・クラル)がニューアルバム『Moon In Gemini』のリリースを発表した。RVNGから9月6日にリリースされる。


このリリースの収益の一部は、モル・チャトゥ女性シェルター財団に寄付される。同財団は、連帯センターとシェルターにおける社会的活動を通じて、自由で平等な条件のもと、ジェンダーに基づく差別や男性からの暴力に妨げられない生活を築く女性たちを支援している。


クラルの電子音楽は聞き手を幻想的で童謡的な可愛らしい世界へと誘う。彼の音楽は受け手の心に平穏をもたらしてくれる。


「ムーン・イン・ジェミニの曲は、リスナーに届くまで時間がかかることも、ゆっくりであることも気にしない」とイシクは言う。「このフレーズが、ある物、ある時間、ある場所を同時に表現するのに使われるのが面白かったんだ」


アルバムの大部分は、トルコのアマスィヤとイシクの現在の住まいであるグラスゴーの間で、家庭内とスタジオの両方のレコーディング環境で実現され、さらに彼の個人的なレコーディング・アーカイブから発掘されたトラックが、みずみずしい色合いを与えている。


トルコで育ち、マイアミ、ヘルシンキ、グラスゴーで音楽エンジニアリングを学びながら録音した街角の音など、彼の人生と仕事の過去15年にわたる未発表曲や未完成のアイデアを再構築するための肥沃な空間としてこのアルバムは生まれた。


ニーナ・シモン、オルダス・ハーディング、グリズリー・ベアーのエド・ドロステなど、時に誤解されることもあるが、象徴的なシンガーを聴いてインスパイアされたイシクは、『ムーン・イン・ジェミニ』で、斬新なレコーディングやミキシングのテクニックを試しながら、自分の声のための新しい空間を切り開くことを目指した。


アマスィヤにある彼の叔母の農家で、3週間にわたるレコーディング・セッションの間に録音されたこの作品では、イシックのヴォーカルがミックスの高い位置で、前面に、そして中心に、新たな表現力を発揮している。


『双子座の月』は、自然のイメージと子守唄のような音色が溢れる。日常の不思議に満ちた音を聴き、感じ、その詩が完璧に不完全である状態、目に見えないものが一歩前に踏み出す状態、勇敢な亡霊があらゆる場所で待ち構え、遊びが魂を豊かにする状態、鳥のさえずりが太陽の光を浴びた午後を満たし、魅惑的な夜へと私たちを羽ばたかせる状態にチューニングを合わせる。


イシク・クラル『Moon In Gemini』はレコード、日本輸入盤CD、デジタル盤で2024年9月6日にリリースされる。(日本盤はPlanchaから発売)



「Almost a Ghost」



Isik Kural 『Moon In Gemini』


Label: RVNG(国内盤はPlancha)

Release: 2024年9月6日


Tracklist:

01. Body of Water

02. Prelude

03. Almost a Ghost

04. Grown One Iota

05. Interlude

06. Redcurrants

07. Mistaken for a Snow Silent

08. Gül Sokağı

09. Stems of Water

10. After a Rain

11. Behind the Flowerpots

12. Daywarm Birds

13. Birds of the Evening

14. Most Beautiful Imaginary Dialogues


 

Black Decelerant


Contuour(コンツアー)ことKarlu Lucas(カリ・ルーカス)とOmari Jazz(オマリ・ジャズ)のデュオ、Black Decelerant(ブラック・ディセラント)は、コンテンポラリーな音色とテクスチャーを通してスピリチュアルなジャズの伝統を探求し、黒人の存在と非存在、生と喪、拡大と限界、個人と集団といったテーマについての音の瞑想を育んでいる。セルフ・タイトルのデビュー・アルバム、そしてこのコラボレーションの核となる意図は、リスナーが静寂と慰めを見出すための空間を刺激すると同時に、"その瞬間 "を超える動きの基礎を提供することである。


『Black Decelerant』は、プロセスと直感に導かれたアルバムだ。2016年に出会って以来、ルーカスとジャズは、形のない音楽を政治的かつ詩的な方法で活用できるコラボレーション・アルバムを夢見ていた。彼らは最終的に、6ヶ月間に及ぶ遠隔セッション(それぞれサウスカロライナとオレゴンに在住)を経て、2020年にプロジェクトを立ち上げ、即興インストゥルメンタルとサンプル・ベースのプロダクションを通して、彼らの内と外の世界を反映したコミュニケーションを図った。


ルーカスは言う。「それは、私たちがその時期に感じていた実存的なストレスに対する救済策のようなものでした。特にアメリカでは、封鎖の真っ只中にいると同時に、迫り来るファシズムと反黒人主義について考えていました。レコードの制作はとても瞑想的で、私たちをグラウンディングさせる次元を提供してくれるように感じていました」


リアルタイムで互いに聴き合い、反応し合うセッションは、黒人の人間性、原初性、存在論、暴力や搾取から身を守るための累積的な技術としてのスローネスをめぐるアイデアを注ぎ込む器となった。このアルバムに収録された10曲の楽曲は、信号、天候、精神が織りなす広大で共鳴的な風景を構成しており、記憶の中に宙吊りにされ、時間の中で蒸留されている。


ブラック・ディセラント・マシンは、アーカイブの遺物や音響インパルスを、不調和なくして調和は存在しない、融合した音色のコラージュへと再調整する。レコードの広大な空間では、穏やかなメロディーの呪文の傍らで、変調された音のカデンツの嵐が上昇する。ピアノの鍵盤とベース・ラインは、トラック「2」と「8」で、ジャワッド・テイラーのトランペットの即興演奏を伴って、リリース全体を通して自由落下する。


このデュオは、アリア・ディーンの『Notes on Blacceleration』という論文を読んで、その名前にたどり着いた。


この論文は、資本主義の基本的な考え方として、黒人が存在するかしないかという文脈の中で加速主義を探求している。「Black Decelerant」は、このレコードが意図する効果と相まって、自分たちと、自分たちにインスピレーションを与えてくれるアーティストや思想家たちとの間に共有される政治性をほのめかしながら、音楽がスローダウンへの招待であることに言及している。


「その一部は、自然な状態以上のことをするよう求め、過労や疲労に積極的に向かわせる空間や、これらすべての後期資本主義的な考え方に挑戦することなんだ」とジャズは言う。「黒人の休息がないことは、様々な方法で挑戦されなければならないことなのです」


ルーカスとジャズが説明するように、このレコードは、資本主義や白人至上主義に付随する休息やケアについて、商品化されたり美徳とされたりするものからしばし離れ、心身の栄養となることを行おうとする自然な気持ちに寄り添うという、生き方への入り口であり鏡ともなりえるかもしれない。


『BlackDecelerant』は、音楽と哲学の祖先が築き上げた伝統の中で、強壮剤と日記の両方の役割を果たす。


『Black Decelerant』は2024年6月21日、レコード盤とデジタル盤でリリースされる。アルバムは、NYのレーベル''RVNG Intl.''が企画したコンテンポラリー・コラボレーションの新シリーズ『Reflections』の第2弾となる。

 

 

『Reflection Vol.2』 RVNG Intl.


先週は、ローテクなアンビエントをご紹介しましたが、今週はハイテクなアンビエント。もっと言えば、ブラック・ディセラントは、このコンテンポラリー・コラボレーションで、アンビエント・ジャズの前衛主義を追求している。


ルーカスとジャズは、モジュラーシンセ、そしてギター、ベースのリサンプリング、さらには、バイオリンなどの弦楽器をミュージック・コンクレートとして解釈することで、エレクトロニック・ジャズの未知の可能性をこのアルバムで体現させている。


ジャズやクラシック、あるいは賛美歌をアンビエントとして再構築するという手法は、昨年のローレル・ヘイローの『Atlas』にも見出された手法である。さらには、先々週にカナダのアンビエント・プロデューサー、Loscil(ロスシル)ご本人からコメントを頂いた際、アコースティックの楽器を録音した上で、それをリサンプリングするというエレクトロニックのコンポジションが存在するということを教示していただいた。つまり、最初の録音で終わらせず、2番目の録音、3つ目の録音というように、複数のミックスやマスターの音質の加工を介し、最近のアンビエント/エレクトロニックは制作されているという。ご多分に漏れず、ブラック・ディセラントも再構築やコラージュ、古典的に言えば、ミュージック・コンクレートを主体にした音楽性が際立つ。


ニューヨークのレーベル”RVNG”らしい実験的で先鋭的な作風。その基底にはプレスリリースでも述べられているように、「黒人としてのアイデンティティを追求する」という意義も含まれているという。黒人の人間性、原初性、存在論、暴力や搾取から身を守るための累積的な技術、これはデュオにとって「黒人としての休息」のような考えに直結していることは明らかである。今や、ロンドンのActressことダニエル・カニンガム、Loraine Jamesの例を見ても分かる通り、ブラックテクノが制作されるごとに、エレクトロニックは白人だけの音楽ではなくなっている。

 

このアルバムは複雑なエフェクトを何重にもめぐらし、メタ構造を作り出し、まるで表層の部分の内側に音楽が出現し、それを察知すると、その内側に異なる音楽があることが認識されるという、きわめて難解な電子音楽である。

 

それは音楽がひとつのリアルな体験であるとともに、「意識下の認識の証明」であることを示唆する。アルバムのタイトルは意味があってないようなもの。「曲のトラックリストの順番とは別の数字を付与する」という徹底ぶりで、考え次第では、始めから聞いてもよく、最後から逆に聞いてもよく、もちろん、曲をランダムにピックアップしても、それぞれに聞こえてくる音楽のイメージやインプレッションは異なるはず。つまり、ランダムに音楽を聴くことが要請されるようなアルバムである。ここにはブラック・ディセラントの創意工夫が凝らされており、アルバムが、その時々の聞き方で、全く別のリスニングが可能になることを示唆している。

 

そして、ブラック・ディセラントは単なるシンセのドローンだけではなく、LAのLorel Halo(ローレル・ヘイロー)のように、ミュージックコンクレートの観点からアンビエントを構築している。その中には、彼ら二人が相対する白人至上主義の世界に対する緊張感がドローンという形で昇華されている。これは例えば、Bartees Strangeがロックやソウルという形で「Murder of George Floyd」について取り上げたように、ルーカスとジャズによる白人主義による暴力への脅威、それらの恐れをダークな印象を持つ実験音楽/前衛音楽として構築したということを意味する。そしてそれは、AIやテクノロジーが進化した2024年においても、彼らが黒人として日々を生きる際に、何らかの脅威や恐れを日常生活の中で痛感していることを暗示しているのである。

 

アルバムの序盤の収録曲はアンビエント/テクノで構成されている。表向きに語られているジャズの文脈は前半部にはほとんど出現しない。「#1 three」は、ミックス/マスターでの複雑なサウンドエフェクトを施した前衛主義に縁取られている。それはときにカミソリのような鋭さを持ち、同じくニューヨークのプロデューサー、アントン・イリサリが探求していたような悪夢的な世界観を作り出す。その中に点描画のように、FM音源で制作されたと思われる音の断片や、シーケンス、同じく同地のEli Keszler(イーライ・ケスラー)のように打楽器のリサンプリングが挿入される。彼らは、巨大な壁画を前にし、アクション・ペインティングさながらに変幻自在にシンセを全体的な音の構図の中に散りばめる。すると、イントロでは単一主義のように思われていた音楽は、曲の移行と併行して多彩主義ともいうべき驚くべき変遷を辿っていくことになる。

 

ブラック・ディセラントのシンセの音作りには目を瞠るものがある。モジュラーシンセのLFOの波形を組み合わせたり、リングモジュラーをモーフィングのように操作することにより、フレッシュな音色を作り出す。

 

例えば、「#2 one」はテクノ側から解釈したアンビエントで、テープディレイのようなサウンド加工を施すことで、時間の流れに合わせてトーンを変化させていくことで、流動的なアンビエントを制作している。

 

これはまたブライアン・イーノとハロルド・バッドの『Ambient Music』の次世代の音楽ともいえる。それらの抽象的な音像の中に組みいれられるエレクトロニックピアノが、水の中を泳ぐような不可思議な音楽世界を構築する。これはまたルーカスとジャズによるウィリアム・バシンスキーの実質的なデビュー作「Water Music」に対するささやかなオマージュが示されているとも解釈できる。そして表面的なアンビエントの出力中にベースの対旋律を設けることで、ジャズの要素を付加する。これはまさしく、昨年のローレル・ヘイローの画期的な録音技術をヒントにし、よりコンパクトな構成を持つテクノ/アンビエントが作り出されたことを示唆している。

 

アルバムの音楽は全体的にあまり大きくは変わらないように思えるが、何らかの科学現象がそうであるように、聴覚では捉えづらい速度で何かがゆっくりと変化している。「#3 six」は、前の曲と同じような手法が選ばれ、モジュラーシンセ/リングモジューラをモーフィングすることによって、徐々に音楽に変容を及ぼしている。この音楽は、2000年代のドイツのグリッチや、以降の世代のCaribouのテクノとしてのグリッチの技法を受け継ぎ、それらをコンパクトな電子音楽として昇華させている。いわば2000年代以降のエレクトロニックの網羅ともいうべき曲。そして、イントロから中盤にかけては、アブストラクトな印象を持つアンビエントに、FM音源のレトロな質感を持つリードシンセのフレーズを点描画のように散りばめ、Caribou(ダン・スナイス)のデビューアルバム『Starting Breaking My Heart」の抽象的で不確かな世界へといざなうのだ。

 

一箇所、ラップのインタリュードが設けられている。「#4 Seven 1/2」は、昨年のNinja TuneのJayda Gがもたらした物語性のあるスポークンワードの手法を踏襲し、それらを古典的なヒップホップのサンプリングとして再生させたり、逆再生を重ねることでサイケな質感を作り出す。これは「黒人が存在するかしないか」という文脈の中で加速する世界主義に対するアンチテーゼなのか、それとも?? それはアルバムを通じて、もしくは、戻ってこの曲を聴き直したとき、異質な印象をもたらす。白人主義の底流にある黒人の声が浮かび上がってくるような気がする。

 

 

アルバムの中盤から終盤にかけて、最初にECMのマンフレッド・アイヒャーがレコーディングエンジニアとしてもたらした「New Jazz(Electronic Jazz)」の範疇にある要素が強調される。これはノルウェー・ジャズのグループ、Jaga Jazzist、そのメンバーであるLars Horntvethがクラリネット奏者としてミレニアム以降に探求していたものでもある。少なくともブラック・ディセラントが、エレクトロニックジャズの文脈に新たに働きかけるのは、複雑なループやディレイを幾つも重ね、リサンプリングを複数回施し、「元の原型がなくなるまでエフェクトをかける」というJPEGMAFIAと同じスタイル。前衛主義の先にある「音楽のポストモダニズム」とも称すべき手法は、トム・スキナーも別プロジェクトで同じような類の試みを行っていて、これらの動向と連動している。少なくとも、こういった実験性に関しては、度重なる模倣を重ねた結果、本質が薄められた淡白なサウンドに何らかのイノヴェーションをもたらすケースがある。

 

「#5  two」では、トランペットのリサンプリングというエレクトリック・ジャズではお馴染みの手法が導入されている。更に続く「#6  five」は同じように、アコースティックギターのリサンプリングを基にしてアンビエントが構築される。これらの2曲は、アンビエントとジャズ、ポストロックという3つの領域の間を揺れ動き、アンビバレントな表現性を織り込んでいる。しかし、一貫して無機質なように思える音楽性の中に、アコースティックギターの再構成がエモーショナルなテイストを漂わせることがある。これらは、その端緒を掴むと、表向きには近寄りがたいようにも思えるデュオの音楽の底に温かさが内在していることに気付かされる。なおかつこの曲では、ベースの演奏が強調され、抽象的な音像の向こうにジャズのテイストがぼんやりと浮かび上がる。しかし、本式のジャズと比べ、断片的な要素を示すにとどめている。また、これらは、別の音楽の中にあるジャズという入れ子構造(メタ構造)のような趣旨もうかがえる。 

 

 

「five」

 

 

 

シンセの出力にとどまらず、録音、そしてミュージック・コンクレートとしてもかなりのハイレベル。ただ、どうやらこの段階でもブレック・ディセラントは手の内を明かしたわけではないらしい。解釈次第では、徐々に音楽の持つ意義がより濃密になっていくような印象もある。「#7 nine」では、Caribou(ダン・スナイス)の2000年代初頭のテクノに焦点を絞り、それらにゲームサウンドにあるようなFMシンセのレトロな音色を散りばめ、アルバムの当初の最新鋭のエレクトロとしての意義を覆す。曲の過程の中で、エレクトリックベースの演奏と同期させ、ミニマル・ミュージックに接近し、Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース)とFloating Points(フローティング・ポインツ)の『Promises』とは別軸にあるミニマリズムの未知の可能性が示される。


一見、散らかっていたように思える雑多な音楽性。それらは「#8 eight」においてタイトルが示すようにピタリとハマり、Aphex Twinの90年代のテクノやそれ以降のエレクトロニカと称されるmumのような電子音楽と結びつけられる。そして、モダンジャズの範疇にあるピアノのフレーズが最後に登場し、トランペットのリサンプリングとエフェクトで複雑な音響効果が加えられる。これにより、本作の終盤になって、ドラマティックなイメージを見事な形で呼び覚ます。

 

「#9 four」は、一曲目と呼応する形のトラックで、ドローン風のアンビエントでアルバムは締めくくられる。確かなことは言えないものの、この曲はもしかすると、別の曲(一曲目)の逆再生が部分的に取り入れられている気がする。アウトロではトーンシフターを駆使し、音の揺らめきをサイケに変化させ、テープディレイ(アナログディレイ)を掛けながらフェードアウトしていく。 



85/100




「two」

 

 

 

Black Decelerant - 『Reflection Vol.2』はRVNG Intl.から本日発売。アルバムの海外盤の詳細はこちら

 Peggy Gou 『I Hear You』


Label: XL Recordings

Release: 2024/06/07



Review    A stunning debut album



ペギー・グーのキャリアは、南ドイツのハイデルベルクのベースメントのクラブシーンから出発した。以後、Ninja Tuneをこよなく愛するクラブビートの愛好者、そして、Salamandaなど気鋭の実験的なエレクトロニックデュオを発掘して育成するレーベルオーナー、そして、それ以後、イギリスのクラブシーンに関わりを持つようになったDJというように、かなり多彩な表情を持つ。どうやら、今年の夏、日本の音楽フェスティバルで準ヘッドライナーを務めるという噂もある。表向きには、新進気鋭のプロデューサー、DJというイメージを持つリスナーもいるかもしれないが、それは完全な誤りである。ペギー・グーは2010年代ごろからドイツのベースメントのクラブシーンに慣れ親しんでおり、満を持してXLとのライセンス契約を結んだと言える。こんな言い方が相応しいかはわからないけれど、意外に下積みの長い音楽家なのである。

 

ペギー・グーのクラブビートへの親しみは、南ドイツの哲学者の街、ネッカー川や古城で有名なハイデルベルクに出発点が求められる。


当初、ペギーは、ハイデルベルクの地元のレコードショップを務めていた名物DJ/プロデューサー、D Manと親しくしていたようで、それゆえ彼女のクラブビートは正確に言えば、イギリスのロンドン/マンチェスター由来のものではない。ヨーロッパのクラブビートの色合いが滲んでいる。


だからなのか、ベルリン等の大型のライブフェスで聴けるようなハリのあるサウンドがこのデビュー・アルバムで繰り広げられる。ある意味では、ペギー・グーはドイツのハイデルベルクのベースメントのクラブミュージックを背負い、デビューアルバムに詰め込んでいる。それは形骸化したクラブ・ミュージックとは異なるもの。アーティストのデビュー作への意気込みやプライドのようなものがオープニングから炸裂する。

 

アルバムから醸し出される奇妙なクールさは実際に聞かないとわからない。「Your Art」ではユーロビートの次世代のビートを込め、スポークンワードを散りばめ、ドイツ的なものからイギリス的な表現へと移り変わる過程が描かれている。その中にダブの録音だったり、Tone 2のGradiatorのような近未来的なアルペジエーターを多彩に散りばめ、魅惑的なトラックを作り上げている。


ミックスにより表面的なトラックの印象が押し出されているが、その内実はかなり細かいところまで作り込まれたサウンドであることが分かる。ただ、録音的には、イギリスのレコーディング技術が駆使されているとはいえ、ペギーがプロデューサーとして体現させるのは、ユーロ的な概念なのである。いわば、ここにコスモポリタンとして生き残ってきたグーの姿が浮かび上がる。


「Back To One」は、例えば、ロンドンのクラブで鳴り響いているようななんの変哲もないディープ・ハウスのように思えるかも知れないが、その中にユニークなサンプラーやシンセの音色を散りばめることで、 カラフルな印象を持つサウンドを構築していく。ただ、やはりIDMではなくEDMに軸足を置いているのは一曲目と同様で、やはりクラブでの鳴りの迫力を意識している。ここにはやはりヨーロッパで活躍する電気グルーヴのような親しみやすいテクノからの影響も含まれている。一貫して乗りやすく、親しみやすいビートを作り出している。 


インストゥルメンタルを中心とする曲が続いた後、クラブビートを反映させたボーカルトラックが収録されている。アルバムのハイライト「I Believe In Love Again」では、レニー・クラヴィッツが参加している。このことに由来するのか、クラブビートはややソウルやR&Bの性質が色濃くなる。キャッチーなボーカルやビートはお決まりの内容なのだが、よく聴くと分かるように、意外と深みが感じられる。ここには直接的なリリックとしては登場しないが、愛情という考えの裏側にある孤独や寂しさといったような考えが、ボーカルのニュアンスの背後からぼんやり浮かび上がってくる。


アルバムの中盤ではサンプラーの引用によってR&Bを抽出する''ジャングル''というダンスミュージックが色濃く反映されている。ここではロンドンのベースメントのクラブ・ミュージックを反映させ、それは数年前にペギーが実際にダンスフロアで体験した音楽が追憶のような形で繰り広げられている。ここにはやはり、アーティストの音楽的な背景が示唆されるにとどまらず、リアルな生活、日頃どのような暮らしを送っているのか、そういったバックグラウンドを感じ取ることが出来る。それは実際、かなりリアルな感覚をもって聞き手の感覚を捉えてやまないのだ。コラボレーターとして参加したVillano Antilannoは、ヒップホップという側面で貢献している。そして複雑さでははなくて、簡素さという側面で、この曲の雰囲気を上手く盛り上げている。


「It Goes Like) Nanana」では、DJ/プロデューサーのアーバンフラメンコやレゲトンといった最新のクラブビートへの親しみがさりげなく示される。しかし、ここではロザリアとは異なり、チープな音色を取り入れ、軽やかなクラブビートを作り出す。夏のリゾート地で活躍しそうなナンバーで、涼やかで爽やかな気風が反映されている。意外なことに、この曲にはTM Network(小室哲哉)のような日本のレトロなテクノサウンドへのオマージュが示されている。

 

こういった古いタイプのダンスチューンは今聞くと、意外と新鮮な感覚を覚える。ペギーは、チープさを徹底して押し出すことで、いわく言いがたい「新しさ」を添えている。また、それに続く「Lobster Telephone」でも、YMO/TM Networkからのサウンドの引用がある。どうやらアーティストによる日本の平成時代のカルチャーへの親しみがさりげなく示されているようだ。

 

アルバムの中盤で、日本のテクノシーンへさりげないリスペクトが示された後、ようやく韓国的なクラブビートが展開される。「Seoulsi Peggygou」は大胆にも京城とアーティスト名をタイトルに冠しているが、ここにはリナ・サワヤマのロンドンでの活躍に触発されてのことか、ディアスポラの概念とホームタウンへの熱い思いが織り交ぜられる。ドラムンベースの影響下にある変則的なリズムから三味線や胡弓のような音色でエキゾチズムを込め、アジアのテイストを添えている。ここにはアーバンフラメンコを始めとするスパニュッシュの文化に対抗する「アジアイズム」が分かりやすい形で反映されている。言うまでもなく、この曲にはDJとしての手腕が遺憾なく発揮され、ドラムンベースを主体とするビートはSquarepusherのようなドライブ感を帯びる。しかし、こういったベースメントのクラブサウンドを展開させても、それほどマニアックにならない理由は、シンプルな構成を心がけているからなのかもしれない。



ボーカルトラックとして強くおすすめしたいのが「I Go」である。やはりペギー・グーはデトロイト発祥の古典的なテクノサウンドをベースにし、涼やかな印象を持つトラックを制作している。アルバムの中では、K-POPのようなニュアンスを持ち合わせている曲だが、ただこれらの音楽のベースにあるのは、韓国由来のものだけにとどまらない。どちらかと言えば、MAX、安室奈美恵、BOA、それに類する日本の平成時代のダンスミュージックの影響を感じ取ることが出来る。これらの「Avex Sound」と呼ばれるものは、日本では長らく忘れ去られていたタイプの音楽だが、海外で活躍する女性シンガーが意外とセンスよく昇華させているに驚きを覚える。日本のポップシーンに言いたいのは、平成時代の音楽に原石が眠っているということなのだ。


ここまで聞きやすい曲を揃えておいて、アルバムの終盤ではペギー・グーの抑え込んでいた趣味や衝動が全開になり、バイクで夜道を爆走するような迫力満点のクラブビートが繰り広げられる。「Purple Horizon」では、イギリスのベースメントのクラブミュージックを反映させつつ、そしてアシッドハウスの色合いを添える。マニアックな曲だが、一番聴き応えがある。ここでは、Four Tetのようなカラフルなサウンド・デザインを描き、音楽家としてのデザインのセンスがうかがえる。ペギー・グーはサンプラーのビートを巧みに配し、サウンドパレットの中に大胆なシーケンスを取り入れている。大掛かりな仕掛けを持つテクノミュージックとして楽しめるはず。

 

アルバムの最後の「1+1=11」は、明らかにD Manのアシッド・ハウスのビートを意識していて笑ってしまった。やはり、ここには、イギリスのクラブミュージックへのリスペクトもあるが、その裏側で南ドイツからキャリアを出発させたDJとしての底意地のようなものが揺らめく。デビュー作であるものの、三作目のアルバムのような雰囲気があるのも面白いのでは。ダンス・ミュージックの楽しさ、軽快さ、爽やかさという基本を追求した素晴らしいアルバム。

 

 


85/100




 

「I Go」

 

 

 

コロンビアのプロデューサー、エラ・マイナスが新曲「COMBAT」をドミノから発表した。エレクトロニックながら静かな雰囲気のある佳作となっている。曲の途中から瞑想的なスペイン語のボーカルが加わる。


デビュー・アルバム『2020's acts of rebellion』以来となるコロンビア人プロデューサー兼シンガーのソロ曲だ。ロスモスが監督した以下のビデオでチェックしてみよう。


"『COMBAT』の基盤は、数年前にレコーディングしたパフォーマンスから来ている "とマイナスは声明で説明している。


「その時、この曲の魂となるコード進行を即興で制作しました。ジェシー・シャイニンは、私がこの曲のために書いた木管楽器の美しい演奏をしてくれました。この曲は、願わくば呼び起こされるような強烈な感情や感覚を表現している。苦闘の末に強くなる。音楽がそれを物語ってくれることを願っています」


 Actress 『Statik』

 

Label: Smalltown Supersound

Release: 2024/06/07

 

 

Review


ロンドンのエレクトロニック・プロデューサー、ダニエル・カニンガムによるプロジェクト、Actressは、摩訶不思議なサウンドテクスチャーを作り上げる。イギリス/ロンドンのベースメントのクラブミュージックを反映させ、ベースラインからダブステップ等、変則的なリズムを配し、ブレイクビーツに基軸を置いたアブストラクトなテイストを持つエレクトロニックを制作する。

 

カニンガムの作風は、ロサンゼルスのローレル・ヘイローの最初期の作風を想起させ、いわば電子音楽によるミステリアスな世界へとリスナーを誘う。音のモジュレーションの変化により、トーンが徐々に変化していき、その中にリサンプリングの手法を交え、グリッチノイズやダブステップのリズムを配置する。

 

アルバムの収録曲には、Autechre(オウテカ)のようにノンリズムによる構成も見受けられる。ヒップホップのチョップやブレイクビーツの手法が織り交ぜられ、ミニマルテクノの範疇にある前衛的なリズムが構築されている。ただ、2022年のアルバム『Karma & Desire』を聴くと分かるように、ダニエル・カニンガムの作風は、なかなか一筋縄ではいかないものがある。彼のテクノは、リチャード・ジェイムスの系譜にあるモダンクラシカルとエレクトロニックの中間にあるものから、Four TetやBibloの系譜にあるサウンドデザインのようなものまで実に広汎なのだ。

 

このアルバムのリリースに関して、カニンガムは現代詩のような謎めいたメッセージを添えていた。それはまるでダンテの『神曲』のような謎めいたリリック。ある意味では、Oneohtrix Point Neverの最新アルバム『Again』のような大作かと身構えさせるが、意外にもコンパクトな作品に纏まっている。『Statik』はヒップホップのミックステープのような感じで楽しめると思う。アルバムのオープナーを飾る「Hell」は、2000年代のローファイでサイケなヒップホップのトラックを思い起こさせる。アシッド・ハウス風のサンプラーによるリズムが織り交ぜられることによって、現代的なデジタルレコーディングとは対極にあるアナログ・サウンドが構築される。続くタイトル曲はドローン風のアンビエントをモジュレーションによって作り出している。

 

その後、どちらかといえば、IDMとEDMの中間にあるディープなクラブミュージックが展開される。「My Way」は、ダニエル・カニンガムの代名詞的なサウンドで、Boards Of Canada、Four Tetに代表されるカラフルな印象を持つミニマルテクノとして存分に楽しめる。今回、カニンガムはボーカルサンプリングを配して、Aphex Twinの系譜にあるサウンドに取り組んでいるようだ。「Rainlines」はバスドラムを強調したアシッドハウス/ミニマルテクノ風の作風だが、アクトレスの他の作風と同じように言い知れない落ち着きと深みがある。バスドラムの響きが続くと、その中に瞑想的な響きがもたらされ、最終的にはチルウェイブ風の安らぎがもたらされる。

 

ダニエル・カニンガムは、90年代や00年頃のテクノブームの時代の流行を踏まえ、それらの作風にややモダンな印象を添えている。「Ray」は、例えば、Sam Prekopのような懐古的なサウンドと現代的なサウンドを結びつけている。それほど革新的ではないものの、新鮮な息吹を持つミニマルテクノを制作している。ハイハットをグリッチサウンドのように見立てて、叙情的なモーフィングシンセのシーケンスを配し、水の上に揺られるような心地よいヴァイヴを作り出す。

 

アルバムのオープナー「Hell」を除けば、プレスリリースの現代詩のようなイメージとは異なるサウンドが展開されている。しかし、後半部に差し掛かると、制作者の志向する異質なエレクトロニックを垣間見ることが出来るはずだ。例えば、「Six」では、ダウンテンポの作風を選び、モーフィングやモジュレーションによってミステリアスな印象を持つシーケンスを作り出す。しかし、カニンガムのサウンドは一貫して落ち着いており、連続的なリズムに聞き手の注意を引き付ける。いわば、軽はずみな多幸感や即効性を避けることによって、曲に集中性をもたらす。


現代的なテクノの依拠した収録曲もある一方で、アクトレスはやはり90年代や00年代初頭や、それよりも古いレトロな電子音楽のサウンドに軸足を置いているらしい。「Cafe De Mars」は、サウンドのパレットをモーフィングのような形で捉え、巧みなトーンの変化を生み出している。「Dolphin Spray」では、モジュレーションによりシンプルなビートを作りだし、それにレトロな感じの旋律を付け加えている。解釈次第では、Silver Applesの時代のアナログテクノの原点にあるビートを踏まえ、ゲーム音楽の系譜にあるチップチューンのエッセンスをさり気なく添えている。ここにカニンガムの制作者としてのユニークな表情をうかがい知ることが出来よう。

 

その後も意外に聞きやすい曲が続いている。表向きにはディストピア的な考えはほとんど出てこない。ただアルバムの中盤のリスニングの際の面白い点を挙げるとするなら、「System Verse」は、最初期のローレル・ヘイローのような抽象的で摩訶不思議なサウンドに挑んでいる。これらは遊びや思いつきの延長線上にあると思われるが、聴いていて不思議な楽しさがある。


そしてようやくプレスリリースでのコンセプチュアルな試みが「Doves Over Atlantis」で表れる。この曲では、ダニエル・カニンガムのかなり意外な幻想主義が表れ、アトランティス大陸に関するファンタジックなイメージを、彼のアーティスティックな感性と上手い具合に結びつける。


さらにファンタジックな印象が最後の最後で浮かび上がってくる。「Mellow Checx」は、同じく抽象的なサウンドだが、従来のアクトレスとは異なるナラティヴな試みが含まれている。ダニエル・カニンガムは、楽園を描くでもなく、地獄を描くでもなく、中間にある煉獄やそれにまつわる幻想を結びつけ、独特な雰囲気のエレクトロニックを制作している。アルバムを聞くかぎり、現行のエレクトロニックは、他の総合芸術のような意味を持ち始め、その中に絵画的なニュアンス、あるいは文学や映像的なニュアンスを込めるのがトレンドになりつつあるらしい。

 

近年、モダン・クラシカルの作品であったり、トム・ヨークとのコラボレーションやボーカルトラックに取り組んでいるClarkはいわずもがな、WarpのSlouson Malone 1のような現代的なプロデューサーが示唆するように、エレクトロニックは音の集合体という枠組みを超越し、いよいよ別の総合芸術との融合を図る段階に来ているのだろうか。これは例えば、リチャード・ジェイムスがライブでサウンドインスタレーションのような試みを始めているのを見ると分かりやすい。

 

 

 

78/100

 

 


Caribou(カリブー)がニューシングル「Broke My Heart」で帰ってきた。このプロデューサーは、4月にリリースした3年ぶりのシングル「Honey」で春に火をつけ、2025年2月に一連のツアーを発表した。さらに日程を追加し、カリブーは夏の季節に間に合うように新しい何かを携えて戻ってきた。


「私はいつも、曲が完全に形になって届くという「夢の中で思いついた」という話を信じるのは難しいと思う。ある日、ピアノの前に座ったら、ストリングスのリフが指先のすぐそこにあって、ボーカルのメロディがそのすぐ後ろに付いてきたんだ。全部がそんな風になればいいのに」


カリブーは10月14日に来日公演を開催します。


「Broke My Heart」

 



メトロノミーが7月12日にNinja TuneからコラボレーションEP『Posse EP Volume 2』をリリースする。今回、彼らは3枚目のシングル「Contact High」を公開した。試聴は以下からどうぞ。


バンドのリーダーであり、唯一のパーマネント・メンバーであるジョー・マウントは、プレスリリースの中で、この曲について次のように語っている。「メトロノミーを聴くといつも自分の声が聞こえてきて、イライラするんだ。曲から自分を切り離すことができないから。コンタクト・ハイ』を聴くと、『わぁ、僕はこれに関わっているんだ』と思うんだ。何度でも聴けるよ」

 

以前のプレスリリースでマウントは、なぜ新人アーティストとのコラボレーションをフィーチャーしたEPをリリースするのが好きなのかを説明している。

 

「これは音楽業界において、自分には価値があるのだと気づくためなんだ。新人アーティストにとって、あなたは何か力になれるということなんだ。あなたは彼らにはないリーチを持っていて、彼らはそれに興奮する。自分が参加したような波とのつながりを感じることができるんだ......。他の人たちと一緒に何かをやればやるほど、また自分の音楽をやりたい、という気持ちが強くなるんだ......。僕にとっては、過去20年間やってきたことから自分を切り離す方法なんだ」

 

 

Caribou
 

カナダ出身のエレクトリック・プロデューサー、ダン・スナイスがCaribou名義での約9年ぶりとなる来日公演を行う。Smash−jpn主催のイベントはSpotify O-EASTで10月14日(月)に開催され、バンドセットでの出演を予定している。

 

近年、ダン・スナイスはサイドプロジェクト”Daphni”名義でのリリースに専念していたが、今年に入り、Caribouとして三年ぶりのシングル「Honey」を発表。グリッチ/ミニマルシーンをリードする敏腕プロデューサーが今秋、Spotify O-EASTにおいてダンサンブルな旋風を巻き起こす。

 

オフィシャル先行予約のチケットは本日(5月29日)から販売されます。 詳細については、Smash-jpnの公式HPをチェックしてみよう。公演のフライヤー、及び、詳細については下記よりご確認下さい。



Caribou Live Tour


カナダ出身ロンドン在住のダン・スナイスによるソロ・プロジェクトCARIBOU
の3年振りの新曲「Honey」をリリース!約9年ぶりのバンドセットによる来日公演が決定!



 

【オフィシャル先行予約】
受付期間:5/29(水)12:00〜6/9(日)23:59


 

受付URL:https://eplus.jp/caribou/






東京公演:


2024/10/14 (Mon) Spotify O-EAST 

OPEN 18:00 START 19:00
スタンディング 前売り:¥8,500



ドリンク代別 


お問い合わせ
: 

SMASH 03-3444-6751 

 


Caribou Biography:

 

カナダ出身ロンドン在住、ダン・スナイスのソロ・プロジェクト。元々はマニトバ名義で活動をスタートし、Leafから『Start Breaking My Heart』(2001年)『Up in Flames』(2003年)にリリースした後、現在のCaribouに名義に変更。そして2005年にサード・アルバム『The Milk of Human Kindness』を発表し、初来日を果たす(共演はフォー・テット、ムーギーソン)。

 

その後、City Slang / Mergeへと移籍し、4作目『Andorra』をリリースし、カナダの”マーキュリー・プライズ” にあたる国民的音楽賞、ポラリス・ミュージック・プライズを受賞した。2010年にリリースした『Swim』、2014年『Our Love』2020年『Suddenly』とコンスタントに傑作をリリースしトップ・クリエイターとしての地位を確立し、2012年にはフジロックに初出演、ホワイト・ステージでパフォーマンスを行った。

 

Caribouとしての活動の傍ら、Daphni名義でも多くの楽曲をリリースしており、盟友Four tetらとの活躍が、ハウス・シーンでも注目を浴びている。今年4月に突如、約3年ぶりにカリブー名義の新曲『Honey』をリリース、3年ぶりとなるバンドセットでのワールドツアーが発表された。ツアー皮切りとなる東京公演は実に9年ぶりのバンドセットでの来日公演。貴重な1夜をお見逃しなく!

 

 

ジェイムス・ブレイクが自主レーベルからシングル「Thrown Around」を発表した。秀逸なナンバーで、強固なビートを反映したクラブミュージックとブレイク特有のポップネスが融合している。昨年までの気負いはほとんどなく、音楽そのものは楽しさと喜びに満ちあふれている。

 

「『Thrown Around』は、私がイギリスで聴いて育った音楽のいくつかにちなんだものだ。ドム・メイカーと一緒に作ったアンビエント作品から始まったんだ」とブレイクは声明で語った。

 

「この曲は反抗的な曲なんだ。それが私たちの人生に何をもたらすのか。この曲は、仕事に多くの時間を費やしすぎることの欠点を扱っている。私たちには共同体への原動力はない。私たちは皆、成功に向かって突き進んでいる。そして私たちは孤独を感じる。この曲は人々をひとつにする。それは反抗を通じたつながりでもあるんだ」

 

 

 

「Thrown Around」

 

 

 

James Blake:

 

ロンドン、エンフィールド出身のシンガーソングライター、プロデューサーとして活躍するアーティスト。フランク・オーシャンの『Blonde』、ケンドリック・ラマーの『DAMN』、JAY-Zの『4:44』、ビヨンセの『Lemonade』など数多くの作品にプロデューサーやゲストとして参加しており、影響力のあるアルバムの制作を支えるミステリアスな存在としても知られている。

 

トラビス・スコットの大作『ASTRROWORLD』でスティービー・ワンダーやキッド・キューディと共演した「Stop Trying to Be God」や、チャートを席巻した『ブラックパンサー』でジェイ・ロック、ケンドリック・ラマー、フィーチャーと共演した「King’s Dead」など、さまざまな作品にもクレジットされている。「King’s Dead」はトリプル・プラチナを獲得しただけでなく、第61回グラミー賞でジェイムス・ブレイクはベスト・ラップ・パフォーマンス部門で自身初のグラミー賞を受賞した。


ジェイムス・ブレイクはソロ作品でもポップ界で最も有名な異端児として認知されるようになった。2011年にリリースしたデビューアルバム『ジェイムス・ブレイク』では独特のサウンドが話題となり、ピッチフォークは、このアルバムに10点満点中9.0点という高評価を与え、「10年間で最も優れアルバム100枚(2010年-2014年)」の一つに挙げられた。

続く2ndアルバム『オーヴァーグロウン』(2013)で第56回グラミー賞の最優秀新人賞にノミネート、マーキュリー賞を受賞するなど、ジャンルを超越した深遠なるエレクトロ・サウンドで世界から高い評価を得る。

3rdアルバム『ザ・カラー・イン・エニシング』(2016)は批評家から絶賛の声が上がり、その後リリースした4thアルバム『アシューム・フォーム』(2019)では、ビルボードトップ200の21位にランクインし、これまでの最高順位を記録、リリースから1年以内に3億回の累積ストリーミングを記録した。

このアルバムは第62回グラミー賞の最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞にノミネートし、タイム誌やビルボードなど多くのメディアから「2019年のベストアルバム」のリストに選ばれるなど評価された。自身5作目となるアルバム『フレンズ・ザット・ブレイク・ユア・ハート』を10月にリリースし、ジェイムス・ブレイクのポピュラー音楽への影はますます拡大している。

 


デビューアルバム『I Hear You』のリリースに先駆け、ペギーは新曲「Lobster Telephone」がを公開した。ディープハウス風のシングルは、キックの鳴りもあるが、少しユニークなポップスの色合いがある。レニー・クラヴィッツとコラボした「I Believe In Love Again」、最初の世界的ヒットとなった「(It Goes Like) Nanana」に続く先行シングルである。以下よりチェックしてほしい。

 

グーのアウトプットは、K-POPのトレンドにあるのではなく、TM Networkのようなレトロな感覚とダンスミュージックの軽やかさに重きが置かれている。トレンドからほどよく距離を置いた感じに面白さがある。

 

ペギー・グーは今夏のフジロックフェスティバルに出演予定である。 デビューアルバムは6月7日にXLからリリースされる。フェスティバル参加者は、ぜひチェックしておきたいアルバム。

 

 

 


Charli XCXがニューシングルとビデオ「360」を公開した。このニューシングルは近日発売予定のアルバム『BRAT』の収録曲となっています。最初の試聴曲である「Von dutch」は、パリのシャルル・ド・ゴール空港で撮影された混沌とした見事なビデオとともに今月初めに到着した。


2022年の「CRASH」に続く「BRAT」は6月7日(金)にリリースされる。プレスリリースでは「ハイアートの引用と社会的な論評を中心に構築された爽快なクラブレコード」と説明されている。


「360」