ラベル Electronic の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Electronic の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

 


ロンドンの実験音楽のデュオ、MARMOは2ndアルバム『Epistolae』のリリースを発表しました。新作は7月7日にUtterからデジタル(Bandcamp)とVinyleで発売されます。先行シングルには抑えがたいような鋭い才覚が迸っている。2023年度のアンダーグラウンドシーンのエレクトロニックの重要作となる可能性有り。最初の先行シングル「Sacrificio equated」を以下よりご視聴下さい。

 

MARMO(マルモ)は、Christian Duka (クリスティアン・デュカ:  Vādin / Amoenus) と Marco Maldarella (マルコ・マルダレッラ: Sinestesie) の共同プロジェクトで、友情と音楽制作への情熱の共有から生まれた。10年近く前にメタルバンドのギタリストとシンガーとしてキャリアをスタートした2人は、アンビエントとダンスミュージックの間に位置するエレクトロニックミュージックの様々なフレーバーを経て、Utterから初のアルバムとなる本作で独自の美学に到達しました。


ラテン語で「書かれた手紙」を意味する「Epistolae」は、COVID-19のパンデミック時にロンドンとボローニャの間で制作された。MARMOにとり、このアルバムは友情への賛歌であり、孤立した分離の時代につながりを保つための方策を意味する。各トラックは、順番に互いのトラックへ無理なく流れていきます。


このアルバムは、1つの連続する音楽体験として考えられており、まさに「音とも称することが出来る。アンビエントテクスチャーがパーカッションのクラッシュ音に変わり、囁きや話し言葉が混在し、ダウンテンポ、ダブ、ブレイク、テクノ、トライバル・エレクトロニカの影響を受けたリズムが刻まれ、感情を共通項とする、うねるような電子音のコラージュが組み上げられていく。


 

 


MARMO 『Epistolae』


Label: Utter

Release: 2023/7/7

 

Tracklist:

1.Introduzione
2.Sacrificio Quotidiano 
3.Respiro
4.Gotta Light?
5.Traveling Without Moving
6.Demetra
7..Vortice
8.Demetra
9.Vortice
10.Carezza 
11.Mollusco
12.Liturgia Lisergica
13.Finale

 



Depeche Modeは、3月にColumbia Recordsから発売されたニューアルバム『Memento Mori』に収録されていた「Wagging Tongue」のビデオを公開しました。ミュージックビデオの監督はThe Sacred Egg、クリエイティブディレクションはAnton Corbijnが担当しています。以下からご覧ください。

 

プレスリリースによると、このビデオは "対人コミュニケーションを支配するルールが厳格でシュールな映画的宇宙を舞台にしている "とあります。そして、「人里離れた小さな村に住む若いカップルが、隣人たちと対立する儀式に参加し、弁護士、ビジネスマン、牧師、警官、さらにはデペッシュ・モードのマーティン・ゴアとデイヴ・ガハンなど、あらゆる階層の参加者を引きつける」というストーリーが描かれているそうです。


『Memento Mori』は、2022年5月に60歳で他界したバンドのアンディ'フレッチ'フレッチャーの死後、初めてリリースされるデペッシュ・モードのアルバムである。昨年10月に発表された。


フレッチャーはこのアルバムの制作に携わっていた。『メメント・モリ』はバンドにとって15枚目のスタジオ・アルバムで、2017年の『スピリット』に続く作品である。メメント・モリ』ツアーは、バンドにとって5年ぶりのツアーとなり、バンド全体では19回目のツアーとなる。フレッチャーの死去により、デペッシュ・モードの正式なラインナップはデイヴ・ガハンとマーティン・ゴアとなった。


ゴアは以前のプレスリリースで、このアルバムについてこのように語っています。私たちはパンデミックの初期にこのプロジェクトに取り掛かり、そのテーマはその時に直接インスピレーションを受けたものだった。フレッチが亡くなった後、私たちは、これが彼の望んだことだと確信し、このプロジェクトを続けることにしました。ガハンは、「フレッチもこのアルバムを気に入っていただろう。もうすぐ皆さんと共有できることを本当に楽しみにしています」と付け加えた。


 

Sylvan Esso


Amelia MeathとNick Sanbornによるエレクトロニック・デュオ、Sylvan Esso(シルヴァン・エッソはニューヨークの伝説的なレコーディングスタジオでのライブを収録した『Live At The Lady』をリリースしました。このEPの収録曲では、アルバム『No Rules Sandy』の人気曲5曲を演奏したほか、故ミミ・パーカーが所属したスロウコアバンド、Lowの「Will The Night」もカバーしている。


 


シルヴァン・エッソは、グラミー賞を受賞したAttacca Quartet(アタッカ・カルテット)、Gabriel Kahane(ガブリエル・カハネ)による特別なストリングスアレンジ、そして、バンドコミュニティーのミュージシャンたちと一緒に、6曲のコレクションに参加しています。

 

Jenn Wasner(Bon Iver、Flock of Dimes、Wye Oak)、ドラマーのTJ Maiani(Neneh Cherry、Weyes Blood)、Joe Westerlund(Megafaun, Califone)、ギターリストのMason Stoopsは、昨年秋MeathのデュオThe A's でマーカス・マフォードのツアーを行った際に出会った。

 

「アメリアも私もLowの大ファンで、ミミ(パーカー)が亡くなったことを聞いてとても悲しくおもっていた」とSylvan EssoのNick Sanborn(ニック・サンボーン)は話している。


10代の頃、初めて「The Curtain Hits The Castfor」を聴いて、すぐに「Anon」に衝撃を受けたのを今でも覚えています。今まで聴いたことのないような、心に残る、内臓に響くような曲で、何年も経った今でもよく聴いています。今年の1月、エレクトリック・レディセッションのセットリストを作っていたとき、アッタカ・カルテットが参加することが分かっていたので、すぐにミミへのトリビュートとして「Will The Night」をカバーしようと思いつきました。彼らの曲の中でもずっと好きな曲のひとつで、美しくシンプルで時代を超えた、暗闇の中の光です。

 

 

 

スウェーデンのエレクトロ・ポップ・バンド、Little Dragonが7月7日に発売されるニューアルバム『Slugs of Love』の最新シングル 「Gold」を公開しました。以前、バンドは二作のシングル「Stay」「Kenneth」を公開しています。


リトル・ドラゴンはプレスリリースで、「Gold 」は "お金では買えない豊かさについての考察 "だとまとめています。


Little Dragonは、エリック・ボディン(ドラムス、パーカッション)、フレドリック・ワリン(ベース)、ホーカン・ウィレンスターンド(キーボード)、そして、ナガノ・ユキミ(ボーカル)です。「Slugs of Love」は、ヨーテボリの彼らのスタジオでレコーディングされました。このアルバムには、1曲でデイモン・アルバーン、別の曲でアトランタのラッパー、JIDが参加している。


バンドは、以前のプレスリリースで、このアルバムについてまとめて次のように語っています。

 

私たちは、コラボレーションとコミュニケーションのさまざまな方法を模索してきました。パターンを分解し、新しいものを作る。

 

好奇心を持って鍵盤を押したり、時には激しく、時には優しく様々なものを叩いたり、弦を叩いたり、音を録音したり、音にどれだけ手を加えることができるか、その限界を調べたり...前へ、後ろへ、横へ、あらゆる方向に進化するこの音楽に合わせて、一緒に開発、再生、ダンス、泣いたり、笑ったりしてきたが、ついに完全な傑作になった...これは今まで一番良い出来だと思う。私たちはとても誇りに思っています。

 

 

 「Gold」

 

Lorain James


イギリスのエレクトロニック・プロデューサー、歌手であるLoraine Jamesは、9月22日にHyperdubからリリースされるニューアルバム『Gentle Confrontation』を発表しました。

 

このアルバムは、2022年のJulius Eastmanのトリビュートと再解釈「Building Something Beautiful For Me」、そしてセルフタイトルの「Whatever The Weather」に続く作品となります。

 

『Gentle Confrontation』には、keiyaA、Marina Herlop、George Riley、Contour、Eden Samara、RiTchieが参加している。VasudevaのCorey Mastrangeloが参加した「One Way Ticket To The Midwest(Emo)」という曲も収録されています。アートワークとトラックリストは下記でご確認ください。 

 

「2003」

 

アルバム発表と同時に、ロレインはシングルとビデオ「2003」を発表しました。この曲は、親密な歌詞(「私が7歳の時、父は天国に行った/可能性がある」で始まる)とグリッチで息の長いシンセのプロダクションが合致しています。

 

プレスリリースによると、彼女の過去に直接言及した "2003 "は、Gentle Confrontationのトーンを設定します: "彼女は、これは10代のLoraineが作りたかったレコードであり、その時代を反映した音楽的傾向も持っていると言っています。



Loraine James 『Gentle Confrontation』

 
Label: Hyperdub
Release: 2023/9/22
 
 
Tracklist: 

1. Gentle Confrontation
2. 2003
3. Let U Go ft KeiyaA
4. Déjà Vu ft RiTchie
5. Prelude of Tired of Me
6. Glitch The System (Glitch Bitch 2)
7. I DM U
8. One Way Ticket To The Midwest (Emo) ft Corey Mastrangelo
9. Cards With The Grandparents
10. While They Were Singing ft Marina Herlop
11. Try For Me ft Eden Samara
12. Tired of Me
13. Speechless ft George Riley
14. Disjointed (Feeling Like a Kid Again)
15. I’m Trying To Love Myself
16. Saying Goodbye ft Contour
 
 
Pre-order:
 

  Eluvium 『(Whirring Marvels In)Consensus Reality』

 

 

Label: Temporary Residence Ltd.

Release: 2023/5/12


 

Review


米国オレゴン州ポートランドの電子音楽家/現代音楽家、Eluvium(マシュー・ロバート・クーパー)は、2020年と翌年のロックダウン中に、アメリカ・コンテンポラリー・ミュージック・アンサンブル、ゴールデン・レトリバー、ブダペスト・スコアリング・オーケストラのメンバーを集め、リモート会議を通じて、このアルバムのために各楽団のオーケストラを録音した。

 

『Consensus Reality』の制作中、マシュー・ロバート・クーパーは肩と腕の痛みに悩まされ、左腕の運動に支障をきたしていたという。そのため、何年もかけて書き留めておいた思考、詩、考察、陰謀、科学的な観念、自己存在の哲学的な思考といった事柄が記されたノートから、アルゴリズムにより、それらの内容を抽出し、電子的なオートメーションや旧来のソングライティングを駆使し、電子音楽とオーケストラレーションを合致させた作風にチャレンジしたというのである。

 

この数年、マシュー・クーパーは、アンビエントの連作『Virgla』の立て続けに二作発表しており、三作目が来るものと考えていたが、予想に反して本作は新規のオリジナル音源であり、連作のアンビエントとは明らかに作風が異なる。これまでシンセサイザーを基調としたエレクトロニカ、オーケストラ音楽に根ざしたピアノ音楽、果てはドローンまで多角的にエレクトロを追求してきた音楽家は、むしろ都市の閉鎖という現実性に抵抗を示すかのように、人や演奏家とのコミュニティに重点を置き、時代の要請する奇妙な虚偽に争ってみせる。オーケストラストリングスの芳醇な響きを持つ「Escapement」を筆頭にして、音楽家が当時、どのような状況に置かれていたのか、そしてその暗澹たる状況に対する反駁のような考えが示されている。神秘的な鐘の音を交えたイントロから続くストリングスのハーモニーは聞き手を現実性から遠ざけ、それと正反対に創造性豊かな領域へと導き入れる。終盤にかけてベルを取り入れているのを見ると、現実性を追求した作品というよりも、理想主義的な側面を取り入れたアルバムと推察することが出来る。実際に、そのベルの音色は、高らかな天上の啓示とも解釈できるわけである。


それからアルバムは、二曲目の「Swift Automations」を通じてオーケストラの音源を駆使した反復的な弦楽の格調高いパッセージを交え、爽やかな雰囲気へと導かれていく。マシュー・クーパーは弦楽器のサンプルをオートメーション化し、それを電子音楽の反復的な要素として導入している。そしてこのストリングスのパッセージに加え、ピアノのフレーズを組み込み、それらを構造的な音楽として解釈しようとしている。曲は、ヴァイオリンの繊細なトレモロにより、高揚感のある雰囲気へと引き継がれていくが、しかし、それは一貫して清涼感に富んでいる。


続く3曲目のタイトル曲では、いわゆるフルオケのような形で、電子音楽とオーケストラレーションを融合させている。マシュー・クーパーは、指揮台の上でタクトを振るうコンダクターのさながらに、それらのノートを一つずつ吟味し、慎重に配置している。曲の中盤では、グロッケンシュピールの音色を交えつつ、ダイナミックな起伏を作り、低音部を強調するチェロを始めとする弦楽器の厚みがその神秘性を支え、アルヴォ・ペルトの「Fratress」に代表される弦楽器の短いパッセージの反復の技法を駆使することで、中盤から終盤部にかけて、タイトル曲は宇宙的な壮大さ、及び、それにまつわるロマンチズムを表した曲調へと変化をたどるのである。

 

アルバムの中盤部では、木管楽器(オーボエ)のレガートのたおやかな演奏ではじまり、まさにその後の展開の呼び水のような役割を果たしている。その後、和音を重んじて挿入される弦楽器の複数の調和は聞き手を陶然とした境地に誘い、低/中音域を強調した重厚な和音が物語性を引き出し、音楽家の哲学的な思考を鮮明にする。微細なパッセージの強弱の変化、及び、繊細な抑揚の変化は、およそリモートを通じて録音されたとは思えず、実際のコンサートホールで聴くようなリアリティとエモーションを兼ね備えており、深い情感を聞き手に授けてくれるはずだ。


さらに続く、「Phantasia Telephonics」では電子音楽のミニマル・ミュージックに方向性を転じる。サウンドトラックとしても聴くことが可能であるこのトラックは、アルバム全体の連結部のような効果を及ぼしている。


中盤からは、ドローンやノイズの要素を強烈に押し出すが、対象的にクライマックスではアルバムの冒頭部のように、クラシカルへと転じていき、モーリス・ラヴェルの色彩的な管弦楽法のように精妙な弦楽器のフレーズを短くつなげている。曲の終盤部の木管楽器と弦楽器のダイナミックなオーケストラレーションは、イタリアの作曲家、オットリーノ・レスピーギの『ローマの松」に比するファンタジックな領域に踏み入れる。電子音楽とオーケストラによる交響詩のような緻密な構造性が、この音楽家の豊かな創造性を通じて繰り広げられていくのである。


それに続く「The Violet Light」は、ミニマルの構造性を持つ一曲であるが、ピアノと木管楽器の音響性をうまく踏まえて、それを作曲家の得意とする抽象的な音楽形式に落とし込んでいる。ピアノと木管楽器の合奏のような形式を取るが、少なくとも、持続音の後に訪れる減退音をディレイやリバーブの加工をほどこして、楽器の持つ音響の可能性を拡張するようなトラックである。特に音が響いている瞬間ではなく、音が消えた後の瞬間に重点が置かれるという点にも着目したい。


続く「Void Manifest」は、アルバムで唯一ボーカルのサンプリングを交え、オーケストラレーションと融合させている。しかし、そのボーカルのサンプリングは飽くまで器楽的な音響性を重視しているので、聞き入らせる力を持つ。中盤からは電子音楽のオペラの形に転ずるが、その後、アンビエントやドローン、ノイズというマシュー・クーパーの旧来のキャリアの中で蓄積してきた技量を遺憾なく発揮することによって、前衛的な音楽が終盤部において完成するのである。

 

ここまでのストリングスとエレクトロの融合性を重視した楽曲群が第二部であると解釈すると、以後の第三部の収録曲は、旧来よりマシュー・クーパーが得意としてきた静謐なピアノ曲の印象が際立っている。「Clockwork Fables」は、モダンクラシカル/ポスト・クラシカルの主流の曲であり、Goldmund(キース・ケニフ)が書いたとしても、それほど不思議ではない。ピアノのフレーズは一貫してシンプルであり、とても落ち着いているが、シューベルトをはじめとするオーストリアのロマン派の作曲家の書いたささやかな小品に近い淡い叙情性を漂わせている。


それ以前の収録曲と同様、オーケストラと電子音楽の融合を図った「Mass Lossless Interbeing」を挟み、「A Floating World of Dreams」では、ピアノとシンセを基調とするポスト・クラシカルに舞い戻り、このアルバムな安らかな境地へと導かれる。クローズトラック「Endless Flower」でも、シンプルなピアノの楽節の構成を通じ、平らかではあるが劇的な音楽性を完成させている。


今回のアルバムを通じて、アーティストは様々な概念や領域を経巡るが、最後にはストリングスのトレモロの効果により、晴れやかな地点へと落着し、クライマックスは、クラシックの交響詩に匹敵する晴れやかなワンシーンが用意されている。最後の曲を聞くかぎりでは、オーケストラ作品としてはかなり仰々しさがあるにしても、マシュー・クーパーが作り出そうと試みる音楽性には好感が持てるし、この音楽が以後どのように完成するのか大いに期待させるものがある。

 

 

78/100

 


 

Salamanda


ドイツを拠点に活動する韓国人DJ、Peggy Gou(ペギー・グー)が主宰する新興レーベル、Gudu Recordsは新しいコンピレーションシリーズを開始しました。本日、その第一弾となるアルバム『Gudu & Friends Vol.1』が発売されました。(juno download)

 

韓国のアンビエント・デュオ、Salamanda(サラマンダ)の昨年、ニューヨークのレーベル、Planchaから発売となったフルアルバム『Ashbalkum』以来の新曲「Mocking Bird」が収録されています。Clarkの「Ted」を彷彿とさせるブレイクビーツ主体のハウス/テクノで、最近のダンスミュージックのリリースの中ではベストトラックの一つです。下記よりビデオをご視聴下さい。


「Mocking Bird」ーSalamanda



2019年にドイツ/ベルリンでローンチされたGudu Recordsは、ドイツ在住のPeggy Gou (ペギー・グー)が立ち上げました。彼女はこれまでにNinja TuneとPhenicaから複数のEPを発売しています。


Peggy Gou

 

Peggy Gouは元々、ドイツ/ダルムシュタットのテクノ/ハウス・プロデューサー、Roman Flugel(ロマン・フリューゲル)のファンで、フェニカでEDMのレコードを中心に買い求めていました。彼女はロンドンからドイツに転居後、フライブルグのMove D(昨年、D-manとの共同名義で傑作『All You Can Tweak』をリリース、当サイトのWMFに選ばれた)とも親交を持つようになります。当時、Move-Dの近くにはゲルト・ヤンソンが住んでおり、彼女は様々なアドバイスをもらったという。


Gudu Recordsは2019年の設立以来、英国のDMX KrewやJRMS、イタリアのHiverやDukwa、韓国のMogwaa、インドネシアのDea、ウクライナのBrain de Palma、南アフリカのRiff、米国のMaurice Fultonなど、グローバルなアーティストたちの音楽を率先して提供しています。また、ヨーロッパ各地でレーベルのショーケースを積極的に開催し、Pleasure Gardensフェスティバルでは、独自のステージを企画しています。


レーベルのコンピレーション『Gudu & Friends Vol.1』では、レーベルの既存アーティストとニューフェイスによる新曲を収録しています。


レーベルを代表するDMX Krew、Mogwaa、Hiver、Dukwa、Brain de Palmaをはじめ、韓国の最もエキサイティングな才能、Salamandaは、ブレイク主体「Sonder」と広い視野でマレット主体の「Mockingbird」を提供している。ビートダウン界のファーストレディ、Lady Blacktronikaは、ヒプノティックなグルーヴを持つ「He Can Never Love You」をコンピレーションに提供しています。


グドゥ&フレンズのコンピレーションは、旧正月(2月10日)にちなんだウサギのアートワークが施されています。第一弾となる『Gudu & Friends Vol.1』では、Gudu Mixシリーズのイラストを手がけるイラストレーターのJin Young Choiが、卯年にちなんだアートワークを担当しています。



『Gudu & Friends Vol.1』

 

Label: Gudu Records

Release: 2023/5/16


Tracklist:

 
01. Mogwaa - 11Hz
02. Hiver - Lunar
03. Salamanda - Mockingbird
04. DMX Krew - One Take
05. Dukwa - Time Out
06. Brain de Palma - Road to Tatooine
07. Lady Blacktronika - He Can Never Love You
08. Closet Yi - Sonder


 

長崎/五島市出身の伝説的なギタリスト/プロデューサー/作曲家、ワールズ・エンド・ガールフレンドは今年発売される新作アルバム『Resistance & The Blessing』の先行シングル「Ave Maria(Short Edit)」を公開しました。同時に公開されたビデオは下記よりご覧下さい。

 

ワールズ・エンド・ガールフレンドは、ソロ作品としては2016年の『Last Walz』以来となる全35曲144分、LP4枚組/CD3枚組の新作を年内にリリースします。既にアルバムの制作作業が大詰めに差し掛かっているとのことです。

 

日本のエレクトロニカの歴代の最高傑作の一つである『Ending Story』(近年、入手困難だった幻の伝説的なオリジナル音源が再発された)、「うみべの女の子」、「Starry Starry Night」をはじめとする映像作品のサウンドトラック、『Heartbeat Wonderland」、『The Lie Land』などの傑作をリリースしてきた敏腕プロデューサーのキャリアきっての超大作となるようです。また、このニューアルバムについては、bandcampで楽曲を購入したリスナーが、もれなくアルバムのクレジットに名前を記載してもらえるという特典付き。無記名も可。詳細はこちらをご参照下さい。

 

 

「Ave Maria(Short Edit)」

 

©Alejandro Carrion


Natural Wonder Beauty Concept(Ana RoxanneとDJ Pythonによるニュープロジェクト)は、セルフタイトルのデビューアルバムを発表した。アルバムは7月14日にMexican Summerから発売となる。「Sword」が最初のテースターとして公開されているので下記よりご視聴下さい。

 

「このプロジェクトは、私たちに自由という創造的なライセンスを与えてくれた。それは、私たちがたまたま感じていたことや影響を受けていたことであれば、何でも試してみる良い機会となりました」

昨年、DJ PythonはEla MinusとのコラボEP「♡」をリリースした。(リミックスはRicardo Villalobosが担当)Anna Roxanneのデビューアルバム『Because of a Flower』は、2020年に発売された。 

 

「Sword」




Natural Wonder Beauty Concept 『Natural Wonder Beauty Concept』

 

Label: Mexican Summer

Release: 2023/7/14

 

Tracklist:

1. Fallen Angel
2. Sword
3. III
4. The Veil I
5. Natural Wonder Beauty Concept
6. The Veil II
7. Young Adult Fiction
8. Driving
9. Clear
10. World Freehand Circle Drawing

 Alva Noto  『Kinder De Sonne』

 

 

Label: Noton

Release: 2023/5/5


Purchase

 

 

Review

 

オーストリアのエレクトロニック・プロデューサー、アルヴァ・ノトの最新作『Kinder De Sonne」は、1905年のロシア革命を背景に書かれたマキシム・ゴーリキーの戯曲『太陽の子どもたち」に由来する。正確に言えば、この作品は、同名の演劇のために書かれた作品で、ドイツ語の題名である。サウンドトラック制作に携わるのは、坂本龍一との共作『Revenant』以来のことであり、スクリーンではなく、ステージの演劇のために効果を与えるような音作りを行っているという。

 

アルバムのジャケットに描かれた黒い環については、2019年の池田亮司のインスタレーションのアート作品に因むものと思われる。 今でもよく覚えているのだが、この年、池田亮司は、空間の中に突如、この宇宙的なモチーフを登場させ、既存のファンに少なからずの驚きを与えたのだった。特に、記憶に新しいところでは、アルヴァ・ノトは坂本龍一とのリイシューのリリースを行っていた。『V.I.R.U.S』というように、パンデミックに因んで、既発作品の頭文字を取って盟友である坂本との作品の再発を行い、彼が主催するレーベル共々、がんと闘病を続けていた氏の功績を讃えようとしたわけだったが、結局のところ、今年に入ってリリースされた『12』が彼の遺作となってしまったのである。そして、先週に入り、アルヴァ・ノトは21年以来の一年ぶりの最新作、また、戯曲のサウンドトラック『Kinnder De Sonne』をリリースする運びとなったわけなのだが、直感として思い、また、あらためてレビューの中で言及しておきたいのは、製作者が意図するかしないかに関わらず、この作品は本来ソロのオリジナルとして制作されたわけではないというのに、坂本龍一の遺作『12』とまったく無縁ではないということなのである。もちろん、この作品はオーストリアのプロデューサーの得意とするところの、グリッチ、ミクロというアナログ信号のエレクトロニック・ミュージックが作曲の中心に置かれており、また、その音作りの奥行きに関しては、既存の作品と同様にアンビエントに属するといっても大きな違和感はあるまい。


しかし、イントロとして導入される「Kinder De Sonne」を聴く限り、子供のための戯曲という解釈から見ると、特異な作品であることが分かる。イントロからアルヴァ・ノトの作り出すアンビエント、また一般に言われるミクロなサウンドは、確かに少し可愛らしい感じのグロッケンシュピールのシンセの音色を交え、舞台のストーリー性を引き立てるように始まる。そこにはアルヴァ・ノトらしい精細なノイズ、奇妙な清涼感すらもたらすノイズとシンプルなシンセの音色が絡みあうようにしてはじまる。静かではあるが、音の奥行きには、宇宙的な何かが感じられる。地上の出来事を表しておきながらも、そこには、より時代を超越するような概念が込められているというわけである。

 

二曲目の「Verlauf」を聴くと分かる通り、もはやこの段階で、単に子供のための音楽であると定義づけることは難しくなってくる。アルヴァ・ノトは純粋なノイズやミクロサウンドへの興味をこれまでの主要な音楽の核心に置いていたという印象もあるが、今作では必ずしもその通念は当てはまらない。これまでの作風の中で、(ノトらしくなく)神秘的な何か、人智では計り知れない何かへの接近を彼は試みている。まさにそれは盟友の病やその状況を知っていたか知っていないかに依らず、その魂の変遷を音楽を通じて捉えるか、はたまたなぞらえるかするようなものである。もっと言えば、この二曲目は坂本の遺作「12」に非常に近い何かを感じ取ることもできる。そういった意味では、たしかに第三者的な視点と並行するようにして、子供が見る世界という視点を通じて音は制作されているようだが、一方で、その小さな目が捉えようとするロシア革命の時代の核心を描き出すべく彼は試みている、そんな感覚を実際の音楽から汲み取ることができる。またそういった神秘的なサウンドの他に、対比的なシューマンの子供向けのピアノの小品のような音楽も3曲目の「Die Untergrundigen」に見出すことができる。それは、ピアノではなくアナログのシンセの柔らかな音色としてドイツロマン派の形式は受け継がれている。しかし、その小さな音に内包される巨大なミクロコスモスという点ではその前の二曲と同じなのである。

 

中盤の収録曲「Sehnsuchtsvoll」、「Ungewisheit」は、叙情的なアンビエントという形で続いていくが、しかし、それはロシア革命の本質がそうであるように、必ずしも明るい側面ばかりを反映しているわけではない。ただレーニンの時代の出来事は、ある意味では、現代のロシア国家を把捉する際、本質を見誤らせる要因ともなりえる。その点をアルヴァ・ノトは熟知しており、一方方向からの音を作ろうというのではなく、多岐にわたる視点から多次元的な電子音を組み上げる。既存のプロデューサーとしての技術を駆使し、それを直感的に捉えようとするアーティストの感覚の鋭さが、これまで以上によく体感できるトラックとなっている。そして、ドイツ語の連語と同じように、多重構造の音楽を作り出そうとするアーティストの意図もこの二曲には伺える。それに続く一曲目の再構成となる「Kinder De Sonne Reprise」は、音の減退を活かして、アンビエントとして一曲目を組み直しているが、アルヴァ・ノトの編曲における卓越性がキラリと光る。

 

その後、「Unwohl」は孤独の雰囲気を感じ取ることができる。それは革命時の時代的な反映か、それとも他の神智学的な何かが描かれているのかまでは厳密に言及出来ないけれど、ある意味では、人間としての孤独というより、魂の孤独とも称するべき概念がシンプルなシンセの音色に反映されている。そして、これもまた単なる推測にすぎないと断っておく必要があるのだが、アルヴァ・ノトがこの演劇音楽の中で捉えようとするのは、生身の人間の時代における生存ではなくて、より謎めいた宇宙的な存在に相対する生命の本質的な動き、蠢きであるようにも見受けられる。これが単なる叙事的な意味を擁する戯曲のサウンドトラックにとどまらず、音の配置や休符により深い神秘的な感覚を感じとることができる主な要因となっているのである。 


再構成の「Sehnsuchtsvoll reprise」では、原曲のピアノに近いトーンをよりパーカッシヴなシンセ、マレットシンセのような音色を駆使し、ドビュッシーの最晩年の作風「沈める寺」のような不可思議な世界を探究する。フランスの印象派の作曲家は全盛期は華美な音楽を主流として作っていたが、突如、晩年になると、フランツ・リストと同じように、静謐で神秘的な音楽性を追求するようになっていった。生前の坂本龍一もまたドビュッシーに触発を受けたと思われる言葉、--芸術は長く、人生は短い--を座右の銘としていたようではあるが、この曲の中で、まさにサウンドトラックの制作という点とは関連なしに、盟友の魂の根源へと最接近したとも称せるのである。つまり、アルヴァ・ノトは坂本と同じく華やかな雰囲気から離れ、それとは対極にある禅的な静けさへと沈潜していくかのようである。


そして、アルバムの終盤に差し掛かると、序盤や中盤において示された神秘的で宇宙的な雰囲気はその出発点から離れ、より荘厳なスケールへと歩みを進めていく。以前、『12』のレビューの中で、無限という概念への親和性と私は書いたのだったが、アルヴァ・ノトはまさに生命の根源的な何かへと脇目も振らず突き進んでいくようにも感じられる。そのことを端的に表しているのが、「Ungewiss」、「Aufstand」、さらに3曲目の再構成である「Die Untergrundigen Redux」となる。オーケストラ音楽の影響を交えて、クロテイルの音色を駆使し、アルヴァ・ノトはこれまでの電子音楽家としてではなく、現代音楽作曲家としての意外な才覚をこれらの曲で発揮している。「Virus」は、タイトルからも明らかなように、坂本へ捧げるべき弔いの曲であり、 彼は共作を行った時と同じように、これまでのグリッチ/ミクロの視点を通じ、前衛的な響きを生み出している。そして、アルバムのクライマックスに至ると、まるでその根源的な魂が一つであることを示すかのように、「12」の作風に近づいていく。宇宙的な音響性を持ちあわせ、そして無限に対する憧憬が示されたとも言える「Son」は、これまでにアルヴァ・ノトの作風とは相容れないような画期的なトラックである。

 

ノトのノイズ/アンビエントによる音作りはゴーリキーの戯曲の本質を捉えるとともに、彼のキャリアの集大成を形作る一作である。この隠れたタイトル曲を通じ、アルヴァ・ノトは、我々が日頃見ようとする生命のまやかしから距離を置き、宇宙の根源的な生命の本質の核心へと迫ろうとしているように思えるが、たとえそれがアートワークに描かれたようなものであるとしても何の驚きもないだろう。本作の最後に収録される「Nie anhaltender Storm」において、ノトは、Tim Heckerの最新作『No Highs』に近い暗鬱なドローンを制作していることに驚く。しかし・・・、アルヴァ・ノトは、アルバムの終盤の段階で、サウンドトラックの持つ音響効果の他に何を表現しようとしたのか、その点についてはすべて明らかになったわけではなく、余白の部分が残されている。今後のリリース作品を通して、その謎は徐々に解きほぐされていくかもしれない。


86/100


Brian EnoとFred again.がコラボレーションしたアルバム『Secret Life』がFour TetのText Recordsから本日リリースされました。アルバムのストリーミングはこちらからどうぞ。


イギリスの人気プロデューサー、Four Tetは『Secret Life』をソーシャルメディア上で発表し、"2023年で最も美しいアルバム "と呼んだ。このプロジェクトは、CDとヴァイナルも発売されています。さらに、"イギリス時間の午後10時にしばらく毎日放送している "Secret Lifeのラジオ局を公開した。


このレコードは実は、フレッドとイーノとの最初のコラボレーションではありません。DJはイーノの隣で育ち、10代のころにはプロデューサーのスタジオでアカペラグループに参加しました。2人のアーティストが初めてプロとして仕事をしたのは2014年で、Fred again...はイーノとカール・ハイドのアルバム『Someday World』と『High Life』にソングライターとして参加しました。フレッド・アゲイン...は前者のプロジェクトで共同プロデューサーも務めている。


イーノは、昨年、Apple Musicのインタビューで、デヴィッド・ボウイやトーキング・ヘッズの名盤(自身の作品はもちろん)に参加しているにもかかわらず、フレッド・アゲインのプロデューサーとしての手腕を語っています。曲の中で素早く切れる「ノンリニア」ループを得意とする彼は、「フレッドの作り方を見ていたら、音楽の聴き方が変わってきたんだ」と、はにかんだ。


このプロジェクトは、Fred again.とFour Tetの再会でもあり、彼らは最近、Frank Oceanがカリフォルニアのフェスティバルから脱落した際、Skrillexと共にCoachellaを閉幕しました。その前には、Skrillexの最近のアルバム『Quest for Fire』と『Don't Get Too Close』を記念して、マディソン・スクエア・ガーデンでマラソン・ライヴを行ないました。

 



 

ジョン・ホプキンスが「Tayos Caves, Ecuador (Meditation Version)」と「Ascending, Dawn Sky (Meditation Version)」をリリースします。

 

この2枚は、2021年のアルバム『Music For Psychedelic Therapy』の収録曲を拡張再加工したもので、特に音の瞑想として使用するために制作されました。"Tayos Caves, Ecuador (Meditation Version)" は、アルバムに収録されている "Tayos Caves, Ecuador" の3つのパートを1つの超越した全体としてまとめています。


ジョン・ホプキンスはこの新曲について次のように語っています。 「Music For Psychedelic Therapyは、瞑想用のアルバムとして書かれたものではありませんが、何かをリリースしたら、自分自身の見方を捨てて、それ自身のものにした方がいいということがわかりました」

 

そこで、中心的な作品のひとつ「エクアドル、タイオス洞窟」を、より瞑想に適したバージョンにしたらどうだろうかと考えました。そのために、フィールドレコーディングをすべて削除し、特定のイメージが思い浮かばないようにしました。このバージョンは、よりニュートラルで、より穏やかなものです。この音楽をもう一度聴くと、とてもインスピレーションが湧くので、「Ascending, Dawn Sky」も同様にシンプルに仕上げました。

 

 

 

 

 


 aus 『Everis』

 


 

Label: FLAU

Release: 2023/4/26


Listen/Purchase



Review

 

 

おそらくリワーク、リミックス作品等を除くと、フルレングスとしては2009年以来のニューアルバム『Everis』でausはカムバックを果たす。


ausは東京のレーベル"FLAU”の主宰者でもあり、ポスト・クラシカルやモダンクラシカルを始めとするリリースを率先して行っている。しかしご本人に話を伺ったところでは、あるジャンルを規定しているというわけではなく、幅広いジャンルの良質なリリースをコンセプトに置いているという話である。

 

かなり久しぶりのフルアルバムは、レーベルオーナー/アーティストとしてどのような意味を持つのだろうか?

 

少なくとも、アルバムに触れてみた時点の最初の印象としては、前作のフルレングスの延長線上にあるようでいて、その実、まったく異なるジャンルへのアプローチも窺い知ることが出来る。

 

これはもちろん、そのミュージシャンとしての空白の期間において、アーティストがまったく音楽に関して没交渉ではなかったこと、つまり、リリースしていなくとも、ミュージシャンでない期間はほとんどなかった、という雰囲気を伺わせるのである。アンビエント風のイントロからはじまる「Halser Weiter」から続くのは、時間という不可解な概念を取り巻く抽象的なエレクトロニカであり、また、喩えるなら、このジャンルをひとつの大掛かりなキャンバスのように見立て、その見えない空間に電子音楽というアーティストの得意とする形式によって絵筆をふるおうというのだ。そして、それは作品という空間の中で様々な形で音楽という概念が流れていく。少なくとも、自分の考えとしては、それほど以前のようにジャンルを規定せず、現時点の自らの力量を通じ、どのような音楽が生み出されるのかを実験していったようにも感じられる。

 

先行シングルとして公開された「Landia」は、実際にアーティストご本人に伝えておいたのだが、春の雰囲気を感じさせるトラックで、麗しい空気感に満ちている。かつてのレイ・ハラカミの「lust」の作風にも通じる柔らかなシンセのアプローチは聞き手の心を和ませる。ダウンテンポやハウスの影響を交えたこのシングルは、終盤のコーラスにより、アーティスト自身がテーマに込めたフォークロアの要素を盛り上げる。そして、この民謡のようなコーラスは確かにノスタルジックな雰囲気を漂わせており、古い日本の町並みや、黄昏のお祭りの中を歩くかのような郷愁がこめられている。

 

その後は、パーカッシヴな効果を取り入れ、さらに、既存の作品よりもミニマル・ミュージックの要素を取り入れた「Past Form」では、スティーヴ・ライヒや、フィリップ・グラスの現代音楽の要素をエレクトロニカの観点からどのように組み直そうか苦心したように思える。そして、ausはその中にアバンギャルド・ジャズの要素を部分的に導入し、そのミニマルの反復的な平坦なイメージの中にアクセントをもたらそうとしている。 終盤では、シンセサイザーのストリングスのレガートを導入することで、ミニマルの中にストーリー性をもたらそうとしているようにも感じられる。

 

アルバムの中で最もミステリアスな感覚を漂わせているのが、「Steps」である。ここでは、コラボレーターのGutevolk(アート・リンゼイ、ヨ・ラ・テンゴの前座も務めたことがある)が参加し、イントロのチェンバロのような繊細な叙情性を掻き立てる。そして、イントロの後は、一つのジャンルを規定しないクロスオーバーの音楽性に繋がる。Gutevolkのボーカルはアンニュイな効果を与え、アヴァン・ポップを絡めた前衛的なボーカルトラックとして昇華される。捉え方によってはボーカルトラックを、アヴァン・ポップをよく知るアーティストとしてどのように組み直すことが出来るかに挑んだように思える。そして、そのアンビエントの要素を多分に含んだ音楽性は、最初のチェンバロに近い音色に掛け合わさることにより、最後でノイズに近い前衛的な雰囲気をもたらすことに成功している。

 

続く、「Make Me Me」ではさらに別の領域へと足を踏み入れ、アシッド・ハウスやトリップ・ホップ、ローファイヒップホップの要素を絡めた一曲を生み出している。ここでもまた、クラシカルの要素を加味し、コラボレーターのGrand Salvoのボーカルが加わることで、アヴァン・ポップへと繋がっていく。ただ、このボーカルは前曲とは異なり、ニュージャズや現代的なオペラのように格式高い声楽の要素が込められている。暗鬱な雰囲気に彩られているが、何かしら傷んだ心をやさしく労るような慰めが漂っている。そして、バックトラックのアシッド・ハウス寄りのビートがその雰囲気を盛り立てる。続く「Flo」は、前曲のトリップホップの気風を受け継ぎ、それをモダンクラシカルの要素を交えることで、アルバムの中で最も幻想的な空間を生み出している。そして、それは形而上の深い領域へと音楽そのものが向かっていくようにも思える。

 

後半部にかけては、 「Make Me Me」の後に続くアルバムの前半部の雰囲気とは一風異なる真夜中のような雰囲気を持ったトラックが続く。


「Swim」ではピアノの響きを取り入れながら、それをポストモダニズムの要素、ノイズやリズムの破壊という観点からアバンギャルドな雰囲気を持つアンビエンスを取り入れている。そして、意外にもそれほどニッチにもマニアックにならず、すっと耳に入ってくる何かがある。この曲にも部分的にボーカルのサンプリングが導入されるが、それはポーティスヘッドのような陶酔した雰囲気や蠱惑的な雰囲気に彩られているのである。


この曲以降は、一気呵成に書いた連曲のような形式が続き、一貫性があり、連続した世界観を作り出している。ただ、最後の曲「Neanic」だけは、静かなポスト・クラシカルの曲として楽しめる。この曲だけは2010年前後の作風に近いものが感じられ、最後にアーティストらしいアンビエントという形でクライマックスを迎える。

 

しかし、果たしてこれらの音楽は十年前に存在したものだったのだろうか。いや、少なくとも数年前からこのアーティストの音楽を知る者にとってはその印象はまったく異なっている。世界が変わったのか、それともミュージシャンが変わったのか、きっとその両方なのかもしれない。


ぜひこのニューアルバムを通じて、日本のエレクトロニカアーティストの凄さを実感していただきたい。

 

 80/100

 

 

  ausの新作アルバム『Everis』はFLAUから発売中です。全曲のご購入/ストリーミングはこちらから。


 

©Frack Lebon

 

ヒップホップ、フュージョン、ポスト・パンク、エレクトロニカ、と様々な音楽をクロスオーパーし、独自の音楽性を追求するイギリスのシンガーソングライター、Archy Marshall(アーチー・マーシャル)が、King Krule名義での4枚目のスタジオアルバム『Space Heavy』を発表しました。この新作アルバムはXL Recordingsから6月9日にリリースされる予定です。

 

リード・シングル「Seaforth」は、Jocelyn Anquetilが監督したビデオと共に本日公開されています。また、Space Heavyの詳細は以下をご覧下さい。

 

2020年の『マン・アライヴ!』に続く本作は、マーシャルが2020年から2022年にかけて、ロンドンとリバプールの間で書き上げた。その後、頻繁なコラボレーターでありプロデューサーのディリップ・ハリス、そして長年のバンドメイトであるイグナシオ・サルバドーレス(サックス)、ジョージ・バス(ドラム)、ジェームス・ウィルソン(ベース)、ジャック・タウエル(ギター)と共に制作が行われています。

 

「Seaforth」

 

 

 

 King Krule 『Space Heavy』

 

Label:XL Recordings

Release:2023/6/9

 

Tracklist:

 
1. Flimsier


2. Pink Shell


3. Seaforth


4. That Is My Life, That Is Yours


5. Tortoise Of Independency


6. Empty Stomach Space Cadet


7. Flimsy


8. Hamburgerphobia


9. From The Swamp


10. Seagirl


11. Our Vacuum


12. Space Heavy


13. When Vanishing


14. If Only It Was Warmth


15. Wednesday Overcast

 

Pre-order:

 

https://kingkrule.ffm.to/1r6bbkv

 


4月22日のレコード・ストア・デイに合わせて、ブライアン・イーノは、最新アルバムを再構成したインストゥルメンタル作品『FOREVER VOICELESS』をリリースする予定です。前作『FOEVERANDEVERMORE』は作者が気候変動対策などへの提言を織り交ぜたアンビエント作品だった。

 

新しい再構築バージョンのリリースに先駆けて、ブライアン・イーノはこのプロジェクトの先行曲「Who Are We」を公開しています。この曲は、オリジナル・アルバムの「Icarus Or Blériot」を補完するもので、ギリシャ神話とフランスの有名な飛行士の物語を融合させたものだという。

 

製作者自身の手による再構築バージョンのリリースは近年増えつつある。一例ではアイスランドのOlafur Arnoldsもピアノの再構築作品を発売している。かの作曲家曰く、「作品はリリースして終わりではない」ということである。作曲家としてだけでなく、トーキング・ヘッズやU2の名作を手掛けたプロデューサーとしても知られるイーノの再構築のマジックがどのような形で作品に変化を与えるのかに着目したい。なお、この再構築アルバムは日本国内でもレコード・ストア・デイに合わせて特製ヴァイナルとしてタワー・レコードから発売される予定である。

 

 

ロンドンのエレクトロニック・プロデューサー、Rival Consoles(ライバル・コンソールズ)がニューシングル「Spirit Loop」を発表しました。

 

Ryan Lee Westライアン・リー・ウェストは昨年のアルバムに引き続き、ピアノを中心にしたエレクトロニックに挑戦している。Rival Consolesはこのリリースに関して以下のように述べています。


この作品は、私が作ったピアノのループを中心に構成されており、その結果は完全に偶然の産物でした。

 

右手でピアノを弾きながら左手で録音し、わずか数秒の間にループを作り上げた。ループの種類には何の意図もなかったのですが、なぜかすぐに親近感が湧くものになりました。テープループは、グリッドや通常のカウントに従わないので、より自由な感覚で音楽を作ることができるのが気に入っています。時間を数えるのをやめると、聞こえ方も考え方も違ってくる。

 

この作品は大きく2つに分かれていて、1つ目の再生スピードと、2つ目の時間が完全にスローになった時に、新しい世界が開けるように感じます。

 

作品には繊細なアンビエントサウンドを重ねたが、実はメインループをリサイクルしてさまざまな方法で加工した。私は音楽において、一つのソースから多くの素材を作ることで、より深いつながりを持たせることが好きです。

 

この作品と「Quiet Home」は、フリーフォームのミニマリズムのエクササイズだと考えています。テクスチャーとアンビエンスに満ちたローファイな世界。

 

 最新アルバム「Now Is」で、ミュージシャンはピアノを中心としたコンポジションを制作している。

 

 

UKのエレクトロニック・デュオ、ケミカル・ブラザーズが2023年最初の新曲「No Reason」を携えてカムバックを果たした。


この新曲は、彼らの最近のライブ・セットのハイライトでもあり、2019年のアルバム「No Geography」、さらに2021年にリリースしたシングル「The Darkness That You Fear」と「Work Energy Principle」に続く。デュオは、現在、フォローアップの制作に取り掛かっているという。


「No Reason」の付属ビデオはSmith & Lyallが監督、Gecko Theatreの振付をフィーチャーしています。


また、このトラックは、未発表のB面「All Of A Sudden」と共に限定版の赤い12インチ・ヴァイナルとして4月28日より発売されます。


©Matilda Hill-Jenkins


サム・サウスゲート率いるイギリスのロックバンド、ニューレイブシーンの一翼を担うLA Priestが、ニューアルバム「Fase Luna」の詳細を発表しました。(最初の掲載時にfalse lunaと記載していましたが、正しくは「Fase Luna」となります。大変失礼いたしました)

 

LA Priestは、5月5日にDominoからリリースされるニューアルバム『Fase Luna』を発表しました。2020年の『GENE』に続く本作について、サム・エストゲートは声明で「聴いた人が自由になれるような感覚を与えたい。"現実に引き戻す "のではなく、"逃避 "なんだ」と述べている。


最初に公開されたリード・シングル「It's You」はEoin Glaisterが監督、Juliet Cowanが主演したビデオと同時に公開。このビデオは、Eoin Glaisterが監督し、Juliet Cowanが出演している。


「It's You」について、サウスゲートは次のように説明している。「この曲は、海の人魚や水の精に恋をした男が、陸での生活と海での生活のどちらかを選ばなければならない話だ。彼が狂気の淵にいるように聞こえるものもある」


「It's You」




LA Priest 『Fase Luna』
 
 

Label: Domino

Release Date: 2023年5月5日

 

Tracklist:

1. On
2. Silent
3. It’s You
4. Misty
5. Star
6. Sail On
7. Neon
8. Ocean
9. No More

 
Pre-order:
 

 

©Edward Bishop


Everything But the Girl(エヴリシング・バット・ザ・ガール)は、次作アルバム『Fuse』から最新シングルをリリースしました。「Run a Red Light」と名付けられたニューシングルには、Charlie Di Placidoが監督したビデオが付属しています。以下、チェックしてみてください。


"クラブランドで過ごした数年間、様々な人物に出会った。すべての虚勢と善意は、弱さを隠しているのさ"


ビデオは、物語の夢のようだった、とTracey Thorn(トレイシー・ソーン)は付け加えました。

 

「このアルバムでわかったのは、振付をすることで、文字通りに表現することなく音楽の感情を表現できるということに尽きる。キャラクター、衣装、動き、演出、すべてがぴったり嵌った。チャーリーと彼のチームは、私たちが目指している感情を理解してくれていた。素晴らしいコラボレーションになったよ」


1999年の『Temperamental』以来となるデュオのアルバム『Fuse』は、4月21日に発売される予定です。このアルバムには、「Caution to the Wind」「Nothing Left to Lose」が収録されています。



「Run a Red Light」
 

 

©Anton Corbijn

Depeche Modeは、近日発売のアルバム『Memento Mori』から新曲を発表しました。この曲は「My Cosmos Is Mine」と呼ばれ、以前にリリースされた「Ghosts Again」に続くものです。以下よりお聴きください。


2017年の『Spirit』に続く『Momento Mori』は、3月24日にColumbiaからリリースされる予定です。