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イギリスのプロデューサー、DJ,ソングライター、ニア・アーカイヴス(Nia Archieves)がニューシングル「Unfinished Business」をリリースした。


音楽性の代名詞であるドラムンベースの軽快なビートを背景にシンガーはクールなリリックを紡ぐ。アーティストはDJセットのライブで名高い。同時公開のMVではサウスロンドン風のクラシカルな雰囲気とモダンな空気感を融合させている。


「Unfinished Business」は先日発表されたデビューアルバム『Silence Is Loud』の収録曲となる。『Silence Is Loud』は4月12日(金)にHIJINXX/Island Recordsからリリースされます。

 


「Unfinished Business」

 

 

新作アルバムから「Crowded Roomz」、昨年の「Off Wiv Ya Headz」「Bad Gyalz」が先行配信されています。

 

 

 


ベルリンを拠点に活動するミュージシャン、プロデューサー、作家のF.S.Blummが、LEITERよりニューアルバム『Torre』を発表した。アルバムの先行シングル「Aufsetzer」がリリースされた。


2021年にリリースされたニルス・フラームとのコラボレーション・アルバム『2X1=4』に続き、「大人のための癒しの音」という副題が付けられたこの新譜は、イタリアのリビエラで過ごした数ヶ月にインスパイアされ、「村の教会の鐘の音と犬の鳴き声の間の静寂の隙間」でギターが録音された。


ベルリンを拠点に活動するミュージシャン、プロデューサー、作家のF.S.Blummが、4月26日にLEITERからリリースするニューアルバム「Torre」の詳細を発表しました。


このアルバムは、2021年にリリースされたニルス・フラームとのコラボレーション・アルバム「2X1=4」、2022年に自身のインプリントであるBlummrecからリリースされた最新ソロ・アルバム「Kiss Dance Kiss」に続く作品。


Soothing Sounds For Adults(大人のための癒しの音)」という非公式なサブタイトルを持つこの新作は、イタリアのリヴィエラで過ごした数ヶ月にインスパイアされたもので、ギターは「村の教会の鐘の音と犬の鳴き声の間の静寂の隙間」で録音された。チェリストのアンネ・ミュラーとクラリネット奏者のミヒャエル・ティーケをはじめ、複数のミュージシャンが全13曲に参加し、F.S.ブルム・トリオとしてブルムのライヴに参加する。


ブルムは、かつてピッチフォーク誌で「とても魅力的な音楽」と称賛されたことがある。1998年に17曲入り33回転7インチ『Esst Obst!』のフラームとの複数のリリースのほか、デイヴィッド・グラブスやリー・スクラッチ・ペリーとのレコーディングなど、多作な共同制作で知られてきたが、ラジオドラマのプロデューサーとしても権威ある賞を受賞している。


しかし、『Torre』では、古典的な訓練を受けたギタリストとしてのルーツに戻り、2006年の『Summer Kling』を筆頭に、以前のレコードのスタイルをさらに発展させ、彼がインストゥルメンタルの「チェンバー・ポップ」、あるいは、もっとロマンチックに「遠くを見つめるための音楽」と呼ぶものにアレンジしている。


「Torre』には、著名なチェリスト、アンネ・ミュラーとクラリネット奏者、ミヒャエル・ティーケをはじめ、高名なミュージシャンが13曲すべてに参加しており、ブルームはF.S.ブルーム・トリオとしてライブに参加する。「Torre』は4月26日より限定盤と全デジタル・プラットフォームで発売されます。



F.S Blumm 『Torre』



Label: Leiter

Release: 2024/04/26


 Tracklist:


1.Da Ste (Intro)

2.Aufsetzer 

3.Bitter Mild

4.Di Lei

5.Schein Es

6.Kurz Vor Weiter Ferne

7.Bhf Bral

8.Wo Du Wir

9.Frag

10.Hollergrund

11.Daum

12.Shh

13.Da Ste (Coda)



 


ロンドンを拠点に活動するエレクトロニック・コンポーザー、Hinako Omori(大森日向子)が昨年のフルアルバム『stillness,softness』の収録曲「cyanotype memories」のジョー・ゴダードによるリミックスをリリースした。ジョー・ゴダードはHot Chipのメンバーとしても活動している。

 

このボーカル曲で、アーティストはシアノタイプ印刷にテーマを置き、内的な静けさを探求していた。


「cyanotpe memories」は、大森曰く「私たちの内なる静けさに再びつながり、戻り、未知のものに身を委ねることをテーマにしています。しかし、自分の内なる羅針盤を信じるとき、物事は最も美しく、予期せぬ方法で私たちに明らかにされる」


ゴダードのリミックスによって、原曲よりもBonoboふうにリメイクされ、ダンサンブルで親しみやすいナンバーに生まれ変わった。アーティストは間もなくテキサスの音楽フェス”SXSW”に出演する。

 

   

「cyanotype memories」- Joe Goddard Remix


 

大森は自分の音楽について深く考え、リスナーに惜しみなく提供する作曲家である。横浜で生まれ、3歳の時に渡英、ロンドン在住。クラシックピアノから音楽の道を歩み始め、後にサウンド・エンジニアとしての訓練を受け、アナログ・シンセ(「a journey...」ではProphet 08とMoog Matriarchを使用)を扱うようになった。
 

ソロ作品をリリースする以前には、Kae Tempest、Georgia、EOBなど、著名なミュージシャンのツアーに参加したり、レコードに参加したりしてきた。バイノーラル・フィールド・レコーディング、アナログ・シンセサイザー、拡張されたヴォーカルで全世界を表現する「a journey...」のビジョンを顕在化させるスキルの基盤となるのはサウンド・エンジニアリングの仕事である。
 
 
最新作 『stillness,softness』は現地のメディアからも好評を得た。Line Of Best Fitがこのアルバムをベストリストに選出した。Music Tribuneでは2024年のアルバムオブザイヤーを獲得した。

 

©Devyn Galindo


レイナ・トロピカル(Reyna Tropical)は、3月29日にリリースされるデビューアルバム『Malegría』から軽快なディープハウスのトラック「Conexión Ancestral」を発表した。コンゴ、ペルー、クンビアのリズムやメ キシコ人ギタリストでシンガーのChavela Vargasからの音楽と文化的伝統から大きな影響を受けて現在に継承したファビ・レイナによるプロジェクト。

 

「"Conexión Ancestral”は、私の祖先の別の部分と関係を持つための旅を始めることについて歌っている "とトロピカルは声明で説明した。

 

「私にとって、それは先住民の祖先とつながることであり、土地とその本来の管理者たち、ひいては私自身と私のコミュニティへの愛と傾聴を通して、私が受け継いできた知識とつながることだ。それは、地球と互恵的な信頼関係を築くチャンスのため、私がこれまで知っていたすべてを犠牲にすることを厭わないということで、その関係が私の帰属への道しるべとなることを認めるということ」


「私たちの土地、歴史、物語、コミュニティから切り離された私たちの人々は、何世代にもわたって、どこに行けばいいのかわからなくなっている」とレイナは説明する。「ステージでは、自分の動きが自分の動きでないと感じることがある。ステージ上では、自分の動きが自分の動きではないと感じることがある。私の祖先がそこにいるとき、決断が私たちであるとき、私は自分の体でわかるのです」



「Conexión Ancestral」

 

 

 

 Reyna Tropical『Malegría』

https://www.inpartmaint.com/wp-content/uploads/2024/02/PSY040-scaled.jpg 

 

Tracklist:


1. Aquí Te Cuido
2. Radio Esperanza
3. Cartagena 03:32
4. Goosebumps
5. Lo Siento
6. Singing
7. Conocerla
8. Movimiento
9. Suavecito
10. Ñeke
11. La Mamá
12. Malegría
13. Pajarito
14. Puerto Rico
15. Mestizaje
16. Cuaji
17. Queer Love & Afro-Mexico
18. Conexión Ancestral
19. Guitarra
20. Huītzilin 

 寺田創一(Soichi Terada) 『Apes In The Net』


 

Label: Far Eat Recording

Release: 2024/ 03/08

 


Review

 

 

日本のハウスシーンの先駆者、寺田創一。『Apes In The Net』はプレイステーション用ゲーム『Ape Escape』(サルゲッチュ)のサウンドトラックからの6曲を集めたコンピレーションである。


ドラムンベースやブレイクコア、もしくはアシッド・ハウスを思わせるエレクトロが凝縮されている。寺田さんはゲーム音楽で知られるサウンドクリエイターではあるものの、実際の作品を聴くと、スクエアプッシャーに匹敵するほど本格派のプロデューサーで、熟練の卓越した技術を感じる。

 

APHEX TWINのデビュー作やSQUAREPUSHERの実質的なデビュー作『Feed Me Weird Things』の系譜にあり、デトロイトハウスの直系に位置する。近年のブレイクビーツやドラムンベースに親しんでいるリスナーにはリズムがシンプル過ぎるように感じられるかもしれない。


しかし、その簡素さゆえに、寺田のダンスミュージックは本格派の雰囲気を醸し出す。それに加え、寺田は、SF的なアナログシンセやMIDIのアウトプットの手法を知り尽くしている。ゲーム音楽で培われた熟練のプロデューサーによる思慮に富んだビートメイクは、ゲームセンターのビートマニアのはるか上を行き、エレクトロの真髄ともいうべき硬質なグルーブ感を生み出す。

 

「Spectors Factory」では4つ打ちのデトロイトハウスに焦点を絞りつつも、ブレイクコアのようなマニアックなクラブ・ミュージックの性質が反映されている。この曲は日本のゲーム音楽がオーケストラとともにダンスミュージックを中心として発展してきたということを思い返させてくれる。


原始的なハウスのビートのシークエンスを執拗に繰り返しながら、そこにちょっとした脚色、つまり、コナミの名作ゲーム『グラディウス』のようなスペーシーな色合いを加えている。性急なビートが矢継ぎ早にボクシングのジャブのように繰り出されるが、アシッド・ハウスを吸い込んだ奇妙な高揚感がリスナーを惑乱と幻惑の奥底へと誘う。


基本的なシークエンスにローエンドのベースライン、ゲームサウンドのチップ・チューンのマテリアルが宝石のように散りばめられ、まるでビートそのものが宙を舞うような高揚感を生み出す。ハウスをベースにしながらも電気グルーブのレイヴ・ミュージックのような恍惚とした感覚を生み出すのだ。

 

「Coaster」は原始的なドラムンベースを下地に置いたトラックで、SQUAREPUSHERが得意とするアウトプットに近いニュアンスも見いだせる。ベースラインはドラムンベース寄りだと思うが、ハイエンドに導入されるゲームのSEのような効果音は、初期のSQUAREPUSHERに近いニュアンスである。時々、その中に細分化され、圧縮されたビートが付属的に導入されると、楽曲はにわかにドラムンベースからドリルンベースに近づいていく。これらはベースやリズムの徹底した細分化が行われた90年代のテクノを復習するような内容となっている。クラブミュージックの実制作者にとっても参考になるのではないか。トラックの中盤ではスリリングな展開が訪れ、聞き苦しくない程度にノイズやグリッチの要素が付け加えられる。シンプルなドラムンベースではあるものの、複雑化したこの最近のジャンルを見るにつけ、新鮮なものが感じられる。


「Spectors」はAPHEX TWINの「Come To Daddy」の時代のテクノの系譜にあり、それほど過激なアプローチはないにせよ、先鋭的な要素が感じられる。ビートに対するメロディーは「グラディウス」やインベーダーゲームの系譜にあり、癒やしの感覚が漂う。8ビットで音楽を出力していた時代のチップチューンやアナログのテクノの懐かしさをどこかに留めている。曲の中盤でブンブン唸るベースラインは迫力があり、寺田サウンドのオリジナリティーが刻印されている。曲の終盤では、ゲームセンターで聞こえるプリクラのSE的な効果がファンシーな雰囲気を醸し出す。これらはゲームのサウンドクリエイターとしての手腕が凝縮されている。

 

『サルゲッチュ』のゲームは1999年にソニーから発売されたが、続く「Haunted House」を聴くと、いかにこのサウンドトラックが時代の最先端を行くものであったのかがわかる。


このトラックでは、アシッド・ハウスの手法を選んでいるが、ゲームの射幸性と熱狂性を表すとともに、長時間のゲームプレイに耐えうるように、音楽のなかに落ち着きと静けさが織り交ぜられている。また、ここには、サウンドデザイナーとしての寺田の手腕が遺憾なく発揮されている。どのシークエンスをどこに配置するのかという設計者としての直感が満載なのである。


リズムやビートは90年代のUKテクノの系譜にあり、シークエンスの中に、細分化され圧縮されたリズムが導入される。とにかく理論的なアウトプットの手段を選ぼうとも情感を失わないのが凄い。リードシンセやシークエンスを散りばめ、ミステリアスな感覚を生み出す。このトラックは今聴いても新しいエレクトロなのだ。

 

寺田創一はハウスやドラムンベースの基本的なスタイルを選んでいるが、「Mount Amazing」ではエキセントリックでトリッピーな技法が発揮される。寺田は得意とするドライブ感のあるビートを下地に、ピッチベンドを駆使し、トーンのうねりを生み出したり、清涼感のあるピアノのフレーズを散りばめ、安らいだ感覚を生み出す。


BPM、ビートやリズムは性急なのに、奇妙な落ち着きを作り出すプロデューサーとしての手腕は見事としか言いようがない。とりわけ、ピッチベンドの使用はシークエンスだけではなく、ベースラインにも導入され、これが全体的なウェイブのうねりを作り出し、所々に聞き手を飽きさせないような工夫が凝らされている。

 

EPの最後に収録されている「Time Station」 は、シュミレーションのような趣を持つトラックだ。これは、ゲームの効果音がアクション、バトル、ロールプレイングの動きのある側面とは異なる「システムのエディット」という要素があったことに拠る。この曲の中で、寺田はバトルやロールプレイング的なアグレッシヴな要素とは別の安らいだ感覚を電子音楽で示唆している。

 

少なくとも、90年代と00年代の日本の全般的なゲーム音楽は、オーケストラ、映画音楽、ダンスミュージックはもちろん、ロック、メタル、民族音楽など、あらゆる音楽の要素を網羅していた。恐るべきことに、グレゴリオ、古楽、さらには、日本の古典的な民謡に至るまで、驚くべき情報量を誇っていたのだった。EP『Apes In The Net』は、ダンス・ミュージックとしても一級品なのは事実だが、日本のゲームカルチャーの変遷のようなものが示されているのがとても素敵である



 

 

85/100


 

©Jacob Boll


ロサンゼルスを拠点に活動するミュージシャン、プロデューサー、ヴィジュアル・アーティストのマル・ノット・バッド(Mal Not Bad)が、デビュー・アルバム『This Is Your New Life』を発表した。

 

アルバムは今年後半にリリースされる予定で、ニューシングル「No Worries」がリリースされた。以下よりチェックしてほしい。


「"No Worries "は、プロテスト・ソングとコミュニケーションの難しさを反映した曲です。この曲はパンデミック(世界的大流行)真っ只中の時期に書いた。それは、言葉や写真やドキュメンテーションがその力と意味を失ったときに起こる混乱を指し示している」

 

「この強烈なサイクルは、振り払うことがほとんど不可能に感じられ、私たちの身近にいる人々との日常的な会話にまで落とし込むことができる。このことを理解することで、意図と忍耐をもって耳を傾け、話すことができるようになる」

 

 「Worries」は、マル・ノット・バッドの音楽作りに対する大胆不敵なアプローチを示している。ファイスト、エイフェックス・ツイン、デヴィッド・トゥインなど、多様な影響からインスピレーションを得ている、 エイフェックス・ツイン、デヴィッド・バーンなど、様々な影響からインスピレーションを得ている。アヴァンギャルドなエレクトロニック・エレメントと生楽器をシームレスに融合させた。魅惑的で革新的な音の風景を生み出している。

 

 

Mal Not Bad 『This Is Your New Life』

 

 

Tracklist:


1. Far Gone

2. AP

3. No Worries

4. Cycle

5. Cycle (outro)

6. Come On/Hard Times

7. Inst II Pt. I

8. Inst II Pt. II

9. Life

10. Mustang [feat. Junaco]

11. Inst I

12. Dodgeball

 


「No Worries」

 


ケヴィン・バーンズのプロジェクト、Of Montreal(オブ・モントリオール)がニューアルバム『Lady on the Cusp』の制作を発表した。

 

オブ・モントリオールはファーストシングル「Yung Hearts Bleed Free」のミュージックビデオを公開した。また、新しいツアー日程も発表された。『Lady on the Cusp』は5月17日にPolyvinylからリリースされる。

 

プレスリリースによると、バーンズは「あなたが差し出すどんな代名詞にも答える」という。1996年以来、ジョージア州アテネの音楽シーンに定着していたバーンズと彼のパートナーであるミュージシャンのクリスティーナ・シュナイダー(別名ロケテS、1)は、最近、より先進的なバーモント州へと南部を離れた。

 

この引っ越しは、バーンズが30年近くアテネで音楽を作ってきたことを振り返りながら、彼らが引っ越しの準備をしているときに書かれ、レコーディングされた新しいアルバムに影響を与えた。


『Yung Hearts Bleed Free』について、バーンズはプレスリリースで次のように語っている。

 

「レオス・カラックス監督の映画『Boy Meets Girl』、ブーツィーの『Rubber Band』、そして最近買ったヤマハのTG33とカワイのK1Mに影響を受けた。闊歩するような、セクシーで小さなバンプのような曲を作りたかったんだ」

 


Of Montreal 『Lady on the Cusp』


Label:  Polyvinyl

Release: 2024/05/17


Tracklist:


1. Music Hurts the Head

2. 2 Depressed 2 Fuck

3. Rude Girl on Rotation

4. Yung Hearts Bleed Free

5. Soporific Cell

6. I Can Read Smoke

7. PI$$ PI$$

8. Sea Mines That Mr Gone

9. Poetry Surf

10. Genius in the Wind

 

Pre-order(INT):

 

https://of-montreal.ffm.to/lady-on-the-cusp 

 

 

 「Yung Hearts Bleed Free」

 

UKで最も人気のあるエレクトリックプロデューサー、Fred Again...(フレッド・アゲイン...)が最新シングル「stayinit」を発表した。

 

今回、フレッド・アゲインは、アトランタのラッパー、Lil Yachty(リル・ヨッティー)と昨年デビュー作を発表したスコットランドのエレクトロニックデュオ、Overmono(オーバーモノ)とタッグを組む。

 

ミュージックビデオは、Lil Yachty(リル・ヨッティー)が初めてサウンドシステムからこの曲を聴いた瞬間をリアルに捉えている。「彼が、この曲を聴く前は、携帯電話を通してしか聴いていなかったかもしれないね(笑) 」とプロデューサーはジョーク交じりに説明文に書いている。「そして、この曲は、明らかにこのようなアナログな空間と音のために作られたものなんだ」


ニューシングル「stayinit」は、12月にカルフォルニアのラッパー、Baby Keem(ベイビー・キーム)がアシストした「leavemealone」、ジョジーとの「ten」、オボンジャヤールをフィーチャーした「adore u」に続く、Fred Again...のコラボレーション・シリーズの最新作。


「stayinit」


 

©Lola Banet


DJ/ソングライター、Nia Archieves(ニア・アーカイヴス)は、デビューアルバム『Silence Is Loud』を発表しました。4月12日にHIJINXX/Island Recordsから発売されます。


先行シングル「Crowded Roomz」に続き、タイトル・トラックを公開しました。アルバムのジャケットとトラックリストは以下の通りです。


ニア・アーカイヴスは、FKA TwigsやDavid Byrne(デヴィッド・バーン)との仕事で知られるソングライター兼プロデューサーのイーサン・P・フリンと新譜の制作に取り組みました。「より歌に焦点を当て、ジャングルに面白いサウンドを乗せるものを作るつもりだった」と述べています。 

 

 

『Silence Is Loud』



Nia Archives 『Silence Is Loud』


Label: HIJINXX/Island Records

Release: 2024/04/12

 

Tracklist:


1. Silence Is Loud

2. Cards On The Table

3. Unfinished Business

4. Crowded Roomz

5. Forbidden Feelingz

6. Blind Devotion

7. Tell Me What It’s Like

8. Nightmares

9. F.A.M.I.L.Y

10. Out Of Options

11. Silence Is Loud (Reprise)

12. Killjoy !

13. So Tell Me…

 

©T-Bone Fletcher


ロンドンのクラブミュージックの象徴的な存在であるMount Kimbie(マウント・キンビー)は、約7年ぶりとなるアルバム『The Sunset Violent』を発表した。ダブステップの先を行くポスト・ダブステップに関連付けられるプロデューサーの作品がどのような内容になるのか。

 

2017年の『Love What Survives』に続くこのアルバムは、4月5日にWarpからリリースされる。新曲「Fishbrain」はテゲン・ウィリアムズが監督したミュージック・ビデオも公開された。(ストリーミングはこちら

 

『サンセット・ヴァイオレント』はカリフォルニアのユッカ・バレーで書かれ、ロンドンで完成した。11月にリリースされた「Dumb Guitar」のほか、盟友とも言えるキング・クルールとの2曲(以前シェアされた「Boxing」を含む)が収録されている。日本盤は各レコードショップにて。

 

 

 「Fishbrain」




Mount Kimbie 『The Sunset Violent』


Label: Warp 

Release: 2024/04/05


Tracklist:


1. The Trail

2. Dumb Guitar

3. Shipwreck

4. Boxing [feat. King Krule]

5. Got Me

6. A Figure in the Surf

7. Fishbrain

8. Yukka Tree

9. Empty and Silent [feat. King Krule]

 

Pre-order:

https://mountkimbie.warp.net/ 


エレクトロ・ポップの伝説、ペット・ショップ・ボーイズがニューアルバム『Nonetheless』を発表、そのファースト・シングル「Loneliness」のミュージックビデオを公開した。『Nonetheless』はパーロフォンから4月26日発売予定。「Loneliness」のビデオはアラスデア・マクレランが監督。アルバムのトラックリストとジャケットアートワークは以下の通り。

 

『Nonetheless』のプロデュースを手掛けたのは、ジェームス・フォード(アークティック・モンキーズ、デペッシュ・モード、ブラー、ゴリラズ、シミアン・モバイル・ディスコなど)。

 

このデュオ(ニール・テナントとクリス・ロウ)は、プレスリリースで新作について次のように語っている。

 

「このアルバムは、私たちを人間たらしめているユニークで多様な感情を祝福するものにしたかった。ダンス寄りのトラックから、美しいストリングス・アレンジが施された内省的なバラードの生々しい切なさに至るまで、各々のトラックが物語を語り、アルバム全体の物語に貢献している」

 

「ジェームス・フォードと一緒に仕事ができたのは本当に素晴らしいことだった。ジェームスは、あえて僕らをもう少しミニマルにすることもしてくれたし、最終的な結果は、僕らがとても誇りに思っているレコードになった」

 


「Loneliness」

 

   

 

 

 

 「Through You (Extended Remix)」

 

 

 

 

Pet Shop Boys 『Nonetheless』



 

Label: Parlophone

Release: 2024/04/26

 

Tracklist: 

 

Loneliness
Feel
Why am I dancing?
New London boy
Dancing star
A new bohemia
The schlager hit parade
The secret of happiness
Bullet for Narcissus
Love is the law

 

©Matilda Hill-Jenckins

 

アフロ・ビートとエレクトロを融合させる多国籍のグループ、Ibibio Sound Machine(イビビオ・サウンド・マシーン)が次作『Pull The Rope』を発表した。2022年の『Electricity』に続くこのアルバムは、Mergeから5月3日にリリースされる予定。


「”Got to Be Who U Are”は、私たちを結びつけるものは、私たちを隔てるものよりも強いという考えについて歌っている」とバンドはプレスリリースで説明している。

 

私たちを隔てる場所や物事は、信じられているほど重要ではない。自分が誰であるか、何であるかに幸せと誇りを持とう。


音楽的には、この曲は伝統的なアフリカのムビラのパートでメッセージを述べて始まり、同じようなヴォーカルになり、今度はエレクトロニック・ダンス・ヴァイブになる。

 

サビの中で出てくる "スルレレ、イサレ・エコ、イコイ、ヤバ "という場所はすべて、イーノ・ウィリアムズが育ったナイジェリアのラゴスにある地域だ。音楽の異なる部分は、まったく異なる音を使っているにもかかわらず、つながっており、世界中を移動する人々や、どこにいても場所と人の根本的なつながりを象徴している。

 

 

「Got to Be Who U Are」



ロンドンは、スペシャルズを筆頭に、1970年代から人種を越えたグループを輩出してきた。音楽という言語は国境を超えざるを得ないことを考えると、Ibibio Sound Machineはエズラ・コレクティヴのように、音楽の持つ本来の意義を呼び覚ます重要なグループだ。それはかつてアフリカの一地域でとどまっていたアフロビートが世界的な音楽と認められるようになった証拠でもある。



Ibibio Sound Machine 『Pull the Rope』


Label: Merge

Release: 2024/05/03

 

Tracklist:


1. Pull The Rope

2. Got To Be Who U Are

3. Fire

4. Them Say

5. Political Incorrect

6. Mama Say

7. Let My Yes Be Yes

8. Touch The Ceiling

9. Far Away

10. Dance in the Rain


Squarepusherが新作アルバム『Dostrotime』の制作を発表した。3月1日にWarpからリリースされる。


アルバムのリード・シングル「Wendorlan」はBMPを極限まで引き上げたドリルンベースにブレイクビーツを対比的に配置している。幻のデビューアルバム『Feed Me Weird Things』の時代の作風を思わせるものがある。


同時公開されたミュージックビデオは、まるで原子核の視点がセルンのハドロン衝突型加速器の中を旅しているように見えるかもしれない。しかし、実際はトム・ジェンキンソン自身がオシロスコープを使って作ったビデオである。フラッシュが苦手な方はご視聴をお控え下さい。


このミュージックビデオについて、ジェンキンソンはこう語っている。「トラック・オーディオとコントロール・データのコンポーネントからXY信号を生成するカスタム処理を使い、CRTオシロスコープで1テイクで撮影した。土壇場でスコープを貸してくれたデビッドに感謝したい」


「私にとって、2020年のパンデミックのロックダウンは、その恐怖の直感的なものだけでなく、その斬新で不気味で崇高な静寂のために、注目すべき時間として常に際立っているんだ。何もしないこと、つまり、音楽のレコーディングをはじめとする重要なことを邪魔しようとする絶え間ない雑念から、私(そして間違いなく他の幸運な一匹狼たちも含めて)を解放してくれたんだ」



「Wendorlan」

 



Squarepusher  『Dostrotime』


Label: Warp

Release: 2024/03/01


Thy Slaughterがデビューアルバムの制作を発表した。A.G.Cook&EASYFUNによるプロジェクト。

 

「Soft Rock」は、PC Musicから12月1日に発売。先行シングルとして、SOPHIEとの共作でウルフ・アリスのエリー・ロウセルが参加した「Lost Everything」と「Reign」の2曲がリリースされる。


PC Musicの新譜リリースの最終月にあたるこのレコードでは、デュオは友人でありコラボレーターでもあるCharli XCX、Caroline Polachek、Alaska Reidとも共演している。 

 

 

「Lost Everything」

 

 

 「Reign」

 



Thy Slaighter 『Soft Rock』

Label: PC Music

Release: 2023/12/1


Tracklist:

 

Sentence

Immortal

Reign

Heavy

Bullets

If I Knew

Flail

Lost Everything

O Fortuna

Shine A Light

Don’t Know What You Want

Fountain


Craig Armstrong
 

 

Massive Attackのコラボレーターとして、また『ロミオ+ジュリエット』や『ムーラン・ルージュ』など数々の映画音楽で知られるスコットランド出身の作曲家、Craig Armstrong(クレイグ・アームストロング)の楽曲をausがリミックス。2曲入りのリミック・シングルはNocturne 8 (aus Remodel)として、Modern Recordingsからデジタルで発売となった。配信リンクとアートワークは下記よりご覧ください。

 

この曲は、ロックダウン中に2台のピアノのために制作された『NOCTURNES - MUSIC FOR TWO PIANOS』に収録されていた。Alva Noto、Mogwai、Scott Fraserらが参加してきたリミックス・プロジェクトの最後を締めくくる作品となっている。



Massive Attackとの長年に渡るコラボを経て、Massive Attackのレーベル”Melankolic” (Virgin Records)から、リリースしたソロ・アルバムの二枚、『The Space Between Us』と『As If To Nothing』でソロ・アーティストとしてのキャリアをスタートしたクレイグ・アームストロング。

 

その後、クラシック、映画音楽などジャンルの壁を越えて、繊細かつ詩情溢れる色彩豊かな音楽を発表することで高い評価を築いてきた彼の作品を、日本人プロデューサーausがリミックス、本日リリースした。

 

aus

 

クラシカルでメロディックな楽曲の世界を引き継いだ「aus Remodel」、躍動感溢れるパーカッションとシンセを加え、メランコリックなダブ・エレクトロニカへと変貌させた「aus Reprise」の2曲を収録。




Craig Armstrong - Nocturne 8 (aus Remodel)

 




発売日:2023年11月10日
フォーマット:DIGITAL
レーベル:MODERN RECORDINGS



Tracklist:

 
1. Nocturne 8 (aus Remodel)
2. Nocturne 8 (aus Reprise)

 

配信リンク:


https://aus.lnk.to/CraigArmstrong

 

 

 
 NOCTURNES: MUSIC FOR 2 PIANOS:



『ロミオ+ジュリエット』や『ムーラン・ルージュ』、『華麗なるギャッツビー』などのバズ・ラーマン監督映画のスコアや、マッシヴ・アタックとのコラボレーションで知られるスコットランドはグラスゴー出身の作曲家/アレンジャー/現代音楽/エレクトロ・アーティスト、クレイグ・アームストロングが贈る、長く、静かな夜の癒しのピアノ・ナイト・ミュージック。

 

ロックダウン中に制作された『NOCTURNES - MUSIC FOR TWO PIANOS』。本作には彼が2020年から2021年の間に制作した14曲が収録されているが、そのほとんどが、英国中がロックダウンとなっていた時期に、外出禁止となっていた夜の間で作られたものだという。

 

アームストロング曰く、「2台のピアノのための楽曲としたことで、より抽象的な曲を作ることができ、メロディーやハーモニーの輪郭がぼやけた拡散した音を作ることができた」という。収録されているノクターンは繊細なメロディの断片に焦点を当て、作曲の過程を明らかにしながら展開されている。そして、それぞれの小品は独立していながらも、各楽章の雰囲気や意図は全体としてまとまったものになっている。



自宅で作曲・録音した本作の制作は、アームストロングにとってパンデミックの中である意味、癒しの時間でもあったという。

 

それゆえに彼は、アルバムの音の美しさと音楽の内省性が、リスナーにとってこの奇妙な時代に慰めを見出す助けになるかも知れないと思っている。本作『NOCTURNES』をアコースティックなアルバムにしたいと考えたのも、「この形式であれば、演奏したいと思う2人のピアニストがいれば、誰でも楽曲を演奏することができるから」と彼は語った。音楽の持つ癒しの力が込められた本作『NOCTURNES: MUSIC FOR 2 PIANOS』。長く静かな夜にぴったりの作品である。


Peggy Gou/ Lenny Kravitz


韓国出身のDJ/プロデューサー、さらにはレーベル・オーナーとしても活動するPeggy Gouが大スター、Lenny Kravitzと組んでニューシングル「I Believe In Love Again」を発表した。この曲は、来年リリース予定のペギー・グーのデビュー・アルバムに収録される。

 

Peggy Gouは、”Gudu Recording”を主宰し、エレクトロニック・デュオ、Salamanderを輩出した。ペギーは、元々、ドイツのハイデルベルクのアンダーグランドのクラブシーンに関わりを持ち、その中でこの都市のシーンの重要な立役者、D-Man(昨年、Move Dと組み、南ドイツのダンスミュージックの集大成を形成するアルバム『All You Can Tweak』 をリリース)と親交を持つようになった。

 

以後、イギリスのダンス・ミュージックシーンに傾倒するようになった。今年に入り、ペギーは、XL Recordingと契約を交わし、ソロアーティストとしても注目が高まっている。

 


90年代は、私の音楽に大きな影響を与えてくれた。当時のダンス/ハウス/レイヴ・シーンに対する私の愛は知られているけど、私はずっとR&Bの大ファンだったし、レニーの大ファンでもあった。

 

彼の1998年のアルバム『5』は個人的にお気に入りなんだけど、彼のディスコグラフィ全体が素晴らしく、時代を超越している。彼はスタジオに来て、ガイド・ヴォーカルを魔法に変え、新しい歌詞を書き、素晴らしいギター・リフを作り上げた。『I Believe In Love Again』は前向きさと希望の強いメッセージで、この曲を聴いてみんながそう感じてくれることを願っている。



今年初め、Peggy GouはXL Recordingsでの初シングル「(It Goes Like) Nanana」を発表した。

 

John Tejada 『Resound』

 

 

Label: Palette Recordings

Release: 2023/11/3

 

Review

 

オーストリア出身で、現在ロサンゼルスを拠点に活動するジョン・テハダ。もはや、この周辺のシーンに詳しい方であればご存知だろうし、テック・ハウスの重鎮と言えるだろうか。テクノ的なサウンド処理をするが、ハウス特有の分厚いベースラインが特徴である。もちろん、ジョン・テハダのトラックメイクは、ダンスフロアのリアルな鳴りを意識しているのは瞭然であるが、アルバムの中にはいつも非常に内的な静けさを内包させたIDMのトラックが収録されている。さらに、数学的な要素が散りばめられ、理知的な曲の構成を組み上げることで知られている。近年のジョン・テハダの注目曲を挙げておくと、「Father and Fainter」、「Reminische」等がある。 



今年既に3作目となる『Resound』はテハダ自身がこれまで手掛けてきた音楽や映画からインスピレーションを得ている。クラシックなアナログのドラムマシンとフィードバック、そしてノイジーなディレイによるテクスチャを基盤として、テハダは元ある素材を引き伸ばしたり、曲げたり、歪ませたりしてトーンに変容をもたらす。さらにはシンセを通じてギターのような音色を作り出し、テックハウスの先にあるロック・ミュージックに近いウェイブを作り出すこともある。

 

「Simulacrum」は、テハダの音楽性の一貫を担うデトロイトテクノのフィードバックである。さらに、Tychoが近年、ダンスミュージックをロックやポップス的に解釈するのと同じように、テハダもロック的なスケールの進行を交え、ロックに近いフレーバーを生み出していることがわかる。ただ、複雑なEDMの要素を散りばめたダンスビートの底流には、CLARKのデビュー作で見受けられたロック的な音響性や、ダンスミュージックの傑作『Turning Dragon』でのゴアトランスの要素が内包されているように思える。これらのベテランプロデューサーらしい深い見地に基づくリズムの運行は、ループサウンドを徐々に変化させていくという形式を取りながらも、より奥深い領域へとリスナーを導いてゆく。ダンスフロアでの多幸感、それとは対極にある冷静な感覚が見事に合致した、ジョン・テハダの代名詞的なサウンドとして楽しめる。

 

 続く「Someday」では、Authecre(オウテカ)の抽象的なビートと繊細なメロディーを融合させている。ベースラインを元にしたリズムに、Tychoのようなギターロックの要素を加味することにより、一定の構造の中に変容と動きをもたらしている。その中には、Aphex Twinの「Film」に見受けられるような内省的な感覚が含まれているかと思えば、それとは対極に、ダブステップのしなやかなリズムが強固なコントラストを形成している。その後、ノイジーなテクスチャーが音像の持つ空間性をダイナミックに押し広げ、その中にグリッチテクノで使用されるようなシンプルかつレトロなシンセリードが加わる。リズム的には大げさな誇張がなされることはないにせよ、入れ子構造のような重層的なリズムが建築さながらに積み上げられていき、しなやかなグルーブを生み出す。曲のクライマックスでは、ノイジーなテクスチャーに加えて崇高な感覚のあるシークエンスを組み合わせることで、シネマティックな効果を及ぼしている。

 

 

三曲目の「Disease of Image」はテックハウスの代名詞的なサウンドといえるかもしれない。ループサウンドを元に、複数のトラック要素を付け加えたり、それとは反対に減らしながら、メリハリのあるダンストラックを制作している。特にリズム、メロディー、テクスチャーの3つの要素をどこで増やし、どこで減らすのか。細心の注意を払うことによって、非常に洗練されたサウンドが生み出されている。5分40秒のランタイムの中には音によるストーリー性や流れのようなものを感じ取ることもできる。アウトロに至った時、最初のループサウンドからは想像もできないような地点にたどり着く。こういった変奏の巧緻さも醍醐味のひとつ。

 

「Fight or Flight」ではテハダのバンド、オプトメトリーのパートナーであるマーチ・アドストラムがボーカルを担当している。ビートのクールさは言わずもがな、このボーカルがトラック自体に奇妙な清涼感を与えている。Massive Attackの黄金時代のサウンドを思わせる瞬間もある。こういったボーカルトラックが今後どのような形で集大成を迎えるのかを楽しみにしたい。

 

 次の「Centered」は、シンセの音色の選択と配置がかなりユニークな魅力を放つ。 反復的なビートはアシッド・ハウスのエグみのある幻惑の中に誘う。バスドラムのビートに対比的に導入されるシンセベースは色彩的な響きを生み出し、さらに続いてゴアトランスのような抽象的なサウンドへと行き着く。 テハダは、アルバムの序盤のトラックとおなじようにトーンシフターを駆使し、音響性に微妙な変化を与える。しかし、音の運びは、脇道にそれることは殆どなく、力学的なベクトルやエネルギーを、中心点に向け、的を射るかのように放射する。これが実際に表向きに鳴らされるサウンドに集中性を与え、音に内包される深層の領域に踏み入れることを促すのである。

 

「Trace Remnant」は、ダウンテンポのイントロからしなやかなテックハウスに展開していく。この曲でも従来のループ構造のトラック制作から離れ、より劇的な展開力のある曲構成へと転じており、ドラムに関してはロック的な効果が重視されている。これらはTychoが近年制作しているような「ポップスとしてのダンスミュージック」の醍醐味を味わえる。アルバムのクローズでも凄まじい才覚が迸る。「Different Mirror」は、TR-909によるドラムマシンのジャムである。しかし、アシッド・ハウスの核心をつく音楽的なアプローチの中には、アルバムの全般的なトラックと同様、遊び以上の何かが潜んでいることが分かる。

 

 

86/100

 


「Fight or Flight」

 Sofia Kourtesis 『Madras』


 

Label: Ninja Tune

Release: 2023/10/27

 


Review



ドイツ、ベルリンを拠点とするシンガーソングライター、ソフィア・クルテシスの最新アルバム『Madras』は、ハウスをベースとして、清涼感と強いグルーブを併せ持つ快作となっている。


『マドレス』は、レーベルのプレスリリースによると、クルテシスの母親に捧げられた作品だ。しかし、もっと驚くべきことに、この曲は世界的に有名な神経外科医ピーター・ヴァイコッツィにも捧げられている。世界的に有名な神経外科医がこのレコードのライナーノーツに登場することになった経緯は、粘り強さ、奇跡、すべてを飲み込む愛、そして最終的には希望の物語である。オープニング曲「Madras」を聴くと分かる通り、原始的なハウスの4つ打ちのビートを背に、ソフィア・クルテシスの抽象的なメロディーが美麗に舞う。歌の中には取り立てて、主義主張は見当たらない。しかし、そういった緩やかな感じが心地よさを誘う場合がある。メロディーには、ジャングルの風景を思わせる鳥の声のサンプリングが導入され、南米やアフリカの民族音楽を思わせる時もあり、それが一貫してクリアな感じで耳に迫る。フロアで聴いても乗れる曲であり、もちろんIDMとしても楽しめる。オープニングの癒やしに充ちた感覚はバックビートを背に、少しずつボーカルそのものにエナジーを纏うかのように上昇していく。

 

アルバムの制作の前に、アーティストはペルーへの旅をしているが、こういったエキゾチックなサウンドスケープは、続く「Si Te Portas Bonito」でも継続している。よりローエンドを押し出したベースラインの要素を付け加え、やはり4ビートのシンプルなハウスミュージックを起点としてエネルギーを上昇させていくような感じがある。さらにスペイン語/ポルトガル語で歌われるボーカルもリラックスした気分に浸らせてくれる。Kali Uchisのような艶やかさには欠けるかもしれないが、ソフィア・クルテシスのボーカルにはやはりリラックスした感じがある。やがて、イントロから中盤にかけて、ハウスやチルと思われていたビートは、終盤にかけて心楽しいサンバ風のブラジリアン・ビートへと変遷をたどり、クルテシスのボーカルを上手くフォローしながら、そして彼女の持つメロディーの美麗さを引き出していく。やがてバック・ビートはシンコペーションを駆使し裏拍を強調しながら、 お祭り気分を演出する。もし旅行でブラジルを訪れて、サンバのお祭りをやっていたらと、そんな不思議な気分にひたらせてくれる。

 

クルテシスの朗らかな音の旅は続く。北欧/アイスランドのシーンの主要な音楽であるFolktoronica/Toytoronicaの実験的な音楽性が、それまでとは違い、おとぎ話への扉を開くかのようでもある。しかしながら、クルテシスはこの後、このイントロの印象を上手く反転させ、スペインのバレアック等のコアなダンスフロアのためのミュージックが展開される。途中では、金管楽器のサンプリング等を配して、この南欧のリゾート地の祝祭的な雰囲気を上手くエレクトロニックにより演出する。しかしながらクルテシスのトラックメイクはほとんど陳腐にならないのが驚きで、トラックの後半部では、やはりイントロのモチーフへと回帰し、それらの祝祭的な気風にちょっとしたエスプリや可愛らしさを添える。ヨーロッパの洋菓子のような美しさ。


「How Music Makes You Better」では、Burialのデビュー当時を思わせるベースライン/ダブステップのビートが炸裂する。表向きには、ダブステップの裏拍を徹底的に強調したトラックメイクとなっているが、その背後には、よく耳を済ますと、サザン・ソウルやアレサ・フランクリンのような古典的な型を継承したソフィア・クルテシス自身のR&Bがサンプリング的に配されている。それらのボーカルラインをゴージャスにしているのが、同じくディープソウルの影響を織り交ぜたゴスペル/クワイア風のコーラスである。そしてコーラスには男性女性問わず様々な声がメインボーカルのウェイブを美麗なものとしている。 曲の後半部ではシンセリードが重層的に積み重ねられ、ビートやグルーヴをより強調し、ベースラインの最深部へと向かっていく。


「Habla Con Ella」は、サイモン・グリーンことBonoboが書くようなチルアウト風の涼し気なエレクトリックで、仮想的なダンスフロアにいるリスナーをクールダウンさせる。しかし、先にも述べたようにこのアルバムの楽曲がステレオタイプに陥ることはない。ソフィア・クルテシスは、このシンプルなテクノに南米的なアトモスフィアを添えることにより、エキゾチックな雰囲気へとリスナーを誘う。ビートは最終的にサンバのような音楽に変わり、エスニックな気分は最高潮に達する。特に、ループサウンドの形態を取りつつも、その中に複雑なリズム性を巧みに織り交ぜているので、ほとんど飽きを覚えさせることがない。分けてもメインボーカルとコーラスのコールアンドレスポンスのようなやり取りには迫力がある。ダンスビートの最もコアな部分を取り入れながらも、アルバムのオープナーのようなくつろぎがこぼたれることはない。

 

 

「Funkhaus」はおそらくベルリン・ファンクハウスに因んでいる。2000年代、ニューヨークからベルリンへとハウス音楽が伝播した時期に、一大的な拠点となった歴史的なスタジオである。この曲では、スペーシーなシンセのフレーズを巧みに駆使し、ハウスミュージックの真髄へと迫る。00年代にベルリンのホールで響いていたのはかくなるものかと想像させるものがある。しなるようなビートが特徴で、特に中盤にかけて、ハイレベルなビートの変容を見いだせる。このあたりは詳細に説明することは出来ない。しかし、ここには強いウェイブとグルーブがあるのは確かで、そのリズムの連続は同じように聞き手に強いノリを与えることだろう。この曲もコーラスワークを駆使して、リズム的なものと、メロディー的なものをかけあわせてどのような化学反応を起こすのかという実験が行われている。それはクライマックスで示される。

 

一転して「Moving House」はアルバムで唯一、アンビエント風のトラックに制作者は挑戦している。テープディレイを用いながら、ちょっとした遊び心のある実験的なテクノを制作している。ただこの曲もまたインストでは終わらずに、エクスペリメンタルポップのようなトラックへと直結していく。しかし、こういったジャンルにある音楽がほとんどそうであるように、ボーカルは器楽的な解釈がなされている。これはすでにトム・ヨークが「KID A」で示していたことである。



アルバムの終盤にかけては、タイトルを見るとわかる通り、南欧や南米のお祭り的な気分がいよいよ最高潮を迎える。「Estacion Esperanza」は、土着的なお祭りで聴かれるような現地の音楽ではないかと思わせるものがあり、それは鈴のような不思議な音色を用いたパーカッション的な側面にも顕著に表れている。ただイントロでの民族音楽的な音楽はやはり、アーバン・フラメンコを吸収したハウスへと変遷を辿っていく。この両者の音楽の相性の良さはもはや説明するまでもないが、特にボーカルやコーラスを複雑に組み合わせ、さらに金管楽器のコラージュを混ぜることで、単なる多幸感というよりも、スパニッシュ風の哀愁を秘めた魅惑的なダンスミュージックへと最終的に変遷を辿っていく。ベースラインを吸収し、「Cecilla」はサブウーファーを吹き飛ばす勢いがある。さらにダンス・ミュージックの核心を突いており、おしゃれさもある。クローズ「El Carmen」はタイトルの通り、カルメンをミニマル的なテクノへと昇華させて、南欧的な雰囲気はかなり深い領域にまで迫っていく。これらの音楽は南欧文化にしか見られない哀愁的な気分をひたらせるとともに、その場所へ旅したかのような雰囲気に浸ることができる。そういった面では、Poolsideの最新作とコンセプト的に非常に近いものがあると思う。



82/100


Weekly Music Feature


Hinako Omori


大森日向子 ©︎Luca Beiley


大森日向子にとって、シンセサイザーは潜在意識への入り口である。ロンドンを拠点に活動するアーティスト、プロデューサー、作曲家である彼女は、「シンセは、無菌的で厳かなものではありません」と話す。

 

「ストレスを感じると、シンセのチューニングが狂ってしまうことがあった。一度、シンセの調子が悪いのかと思って修理に出したことがあるんだけど、問題なかった。だから、私が座って何かを書くとき、出てくるものは何でも、その瞬間の私の気持ちに関係している。音楽は本当に私の感情の地図になる」


大絶賛されたデビュー作『a journey...』(2022年、Houndstooth)が、その癒しのサウンドで他者を癒すことをテーマにしていたとすれば、大森の次のアルバムは思いがけず、自分自身を癒すものとなった。stillness,softness...』の歌詞を振り返ると、「自分自身の中にある行き詰まりを発見し、それと平穏な感覚を得るための内なる旅でした」と彼女は言う。


大森はとりわけ、シャドウ・セルフ、つまり私たちが隠している自分自身の暗い部分、そして自由になるためにはそれらと和解する必要があるという考えに心を奪われた。「自分自身との関係は一貫しており、それが癒されれば、そこから素晴らしいものが生まれるのです」と彼女は付け加えた。


2022年のデビューアルバム「a journey...」で絶賛されて以来、大森日菜子はクラシック、エレクトロニック、アンビエントの境界線を曖昧にし、イギリスで最も魅力的なブレイクスルー・ミュージシャンの一人となった。

 

日本古来の森林浴の儀式にインスパイアされたコンセプト・アルバム「a journey...」は、自然に根ざしたみずみずしいテクスチャーで、Pitchforkに「驚くべき」と評され、BBC 6Musicでもヘビーローテーションされた。以後、ベス・オートン、アンナ・メレディス、青葉市子のサポートや、BBCラジオ3の『Unclassified』で60人編成のオーケストラと共演、今年末にはロサンゼルスのハリウッド・ボウルで、はフローティング・ポインツのアンサンブルに加わり、故ファロア・サンダースとのコラボ・アルバム『Promises』を演奏する。


「stillness、softness...」は、大森のアナログ・シンセの世界ーー、すなわち、彼女のProphet '08、Moog Voyager、そしてバイノーラルで3Dシミュレートされたサウンドを生み出すアナログ・ハイブリッド・シンセサイザー、UDO Super 6ーーの新たな音域を探求している。このアルバムは、彼女の前作よりもダークで広がりがあり、ノワールのようにシアトリカル。デビュー作がインストゥルメンタル中心だったのに対して、本作ではヴォーカルが前面に出ており、「より傷つきやすくなっている」と彼女は説明している。夢と現実、孤独、自分自身との再会、そして最終的には自分自身の中に強さを見出すというテーマについて、彼女は口を開いている。


大森は「静けさ、柔らかさ...」を「実験のコラージュ」と呼び、それを「パズルのように」つなぎ合わせ、それぞれの曲が思い出の部屋を表している。最終的にはシームレスで、13のヴィネットが互いに出たり入ったりする連続的なサイクルとなっている。「とてもDIYだったわ」と彼女は笑う。「誰も起こしたくなかったから、マイクに向かってささやいたの」


大森は日本で生まれたが、ロンドン南部で育ち、サリー大学でサウンド・エンジニアリングを学習した。彼女がマシン・ミュージックに興味を持ち始めたのは、それ以前の大学時代、アナログ・シンセサイザーを授業で紹介した教師のおかげだった。「好奇心に火がつきました」と大森は説明する。


「クラシック・ピアノを習って育った私が、初めてシンセサイザーに出会った瞬間、完全に引き込まれました。シンセサイザーでは、サウンドを真に造形することができる。それまで考えたこともなかったような、無限の表現の可能性が広がった」


大学卒業後、大森はEOB、ジェイムス・ベイ、KTタンストール、ジョージア、カエ・テンペストといったインディーズ・ミュージシャンやアリーナ・アクトのツアー・バンドに参加した。「これらの経験から多くのことを学びました」と大森は言う。「素晴らしいアーティストたちとの仕事がなかったら、今のようなことをする自信はなかったと思います」 


彼女の自信はまだ発展途上だというが、それは本作が物語っている部分でもある。タイトルは "静寂、柔らかさ... " だけど、このアルバムは成長するために自分自身を不快にさせることをテーマにしている。「それは隠していたいこと、恥ずかしいと思うことを受け入れるということなのです」と彼女は言う。


アルバム全体を通して、大森はこれまでで最も親しみやすく、作曲家、アーティスト、アレンジャー、ヴォーカリスト、そしてシンセサイザーの名手としての彼女の真価が発揮された1枚となっている。このアルバムは、タイトル・トラックで締めくくられ、ひとつのサイクルを完成させている。


「自分の中にある平和な状態を呼び起こすような曲にしたかった」と大森。「毛布のようなもので、とても穏やかで、心を落ち着かせるものだと思っています」。その柔らかさこそが究極の強さなのであり、自分自身と他者への愛と思いやりをもって人生を導いてくれるものなのだ」と彼女は言う。




「stillness、softness...」/Houndstooth

 

大森日向子は既に知られているように、日本/横浜出身のミュージシャンであり、サウスロンドンに移住しています。


厳密に言えば、海外の人物といえますが、実は、聞くところによれば、休暇の際にはよく日本に遊びにくるらしく、そんなときは本屋巡りをしたりするという。ロンドン在住であるものの、少なからず日本に対して愛着を持っていることは疑いのないことでしょう。知る限りでは、大森日向子は元々はシンセ奏者としてロンドンのシーンに登場し、2019年にデビューEP『Auraelia』を発表、続いて、2022年には『A Journey...』をリリースした。早くからPitchforkはこのアーティストを高く評価し、ピッチフォーク・フェスティバル・ロンドンでのライブアクトを行っています。

 

エクスペリメンタルポップというジャンルがイギリスや海外の音楽産業の主要な地域で盛んなのは事実で、このジャンルは基本的に、最終的にはポピュラー・ミュージックとしてアウトプットされるのが常ではあるものの、その中にはほとんど無数と言って良いくらい数多くの音楽性が内包されています。エレクトロニックはもちろん、ラップやソウル、考えられるすべての音楽が含まれている。リズムも複雑な場合が多く、予想出来ないようなダイナミックな展開やフレーズの運行となる場合が多い。このジャンルで、メタルやノイズの要素が入ってくると、ハイパーポップというジャンルになる。ロンドンのSawayamaや日本の春ねむりなどが該当します。

 

先行シングルを聴いた感じではそれほど鮮烈なイメージもなかったものの、実際にアルバムを紐解いてみると、凄まじさを通りこして呆然となったのが昨夜深夜すぎでした。私の場合は並行してデ・ラ・ソウルやビースティー・ボーイズのプロデューサーと作品をリリースを手掛けているラップアーティストとのやりとりをしながらの試聴となりましたが、私の頭の中は完全にカオスとなっていて、現在の状況的なものがこのアルバムを前にして、そのすべてが本来の意味を失い、そして、すぐさま色褪せていく。そんな気がしたものでした。少なくとも、そういった衝撃的な感覚を授けてくれるアルバムにはめったに出会うことが出来ません。このアルバム「stillness,softness…」の重要な特徴は、今週始めに紹介したロンドンのロックバンド、Me Rexのアルバムで使用されていた曲間にあるコンマ数秒のタイムラグを消し、一連の長大なエレクトロニックの叙事詩のような感じで、13のヴィネットが展開されていくということなのです。

 

アルバムには、独特な空気感が漂っています。それは近年のポピュラー音楽としては類稀なドゥームとゴシックの要素がエレクトロニックとポップスの中に織り交ぜられているとも解釈出来る。前者は本来、メタルの要素であり、後者は、ポスト・パンクの要素。それらを大森日向子は、ポップネスという観点から見直しています。このアルバムに触れたリスナーはおしなべてその異様な感覚の打たれることは必須となりますが、その世界観の序章となるのが、オープニングを飾る「both directions?」です。ここでは従来からアーティストみずからの得意とするアナログ・シンセのインストゥルメンタルで始まる。シンプルな音色が選択されていますが、音色をまるで感情の波のように操り、アルバムの持つ世界を強固にリードしていく。アンビエント風のトラックですが、そこには暗鬱さの中に奇妙な癒やしが反映されています。聞き手は現実的な世界を離れて、本作の持つミステリアスな音像空間に魅了されずにはいられないのです。

 

続いて、劇的なボーカル・トラックがそのインタリュードに続く。#2「ember」は、アンビエント/ダウンテンポ風のイントロを起点として、 テリー・ライリーのようなシンセサイザーのミニマルの要素を緻密に組み合わせながら、強大なウェイブを徐々に作りあげ、最終的には、ダイナミックなエクスペリメンタル・ポップへと移行していく。 シンセサイザーのアルペジエーターを元にして、Floating Pointsが去年発表していた壮大な宇宙的な感覚を擁するエレクトロニックを親しみやすいメロディーと融合させて、それらの感情の波を掻い潜るように大森は艶やかさのあるボーカルを披露しています。描出される世界観は壮大さを感じさせますが、一方で、それを繊細な感覚と融合させ、ポピュラー・ミュージックの最前線を示している。それらの表現性を強調するのが、大森の透き通るような歌声であり、ビブラートでありハミングなのです。これらの音楽性は、よく聴き込んで見るとわかるが、奇妙な癒やしの感覚に充ちています。

 

このアルバムには創造性のきらめきが随所に散りばめられていることがわかる。そしてその1つ目のポイントは、シンセサイザーのアルペジエーターの導入にある。シンセに関しては、私自身は専門性に乏しいものの、#3「stalactities」では繊細な音の粒子のようなものが明瞭となり、曲の後半では、音そのものがダイヤモンドのように光り出すような錯覚を覚えるに違いありません。不用意にスピリチュアルな性質について言及するのは避けるべきかとも思いますが、少なくとも、シンセの音色の細やかな音の組み合わせは、精妙な感覚を有しています。これらの感覚は当初、微小なものであるのにも関わらず、曲の後半では、その光が拡大していき、最初に覆っていた暗闇をそのまばゆいばかりの光が覆い尽くしていくかのような神秘性に充ちている。

 

 「cyanotype memories」

  

 

 

続く「cyanotype memories」は、アルバムの序盤に訪れるハイライトとなるでしょう。実際に前曲の内在的なテーマがその真価を見せる。イントロの前衛的なシンセの音の配置の後、ロンドンの最前線のポピュラー・ミュージックの影響を反映させたダイナミックなフレーズへと移行していく。そして、アルバム序盤のゴシックともドゥームとも付かないアンニュイな感覚から離れ、温かみのあるポップスへとその音楽性は変化する。エレクトロニックとポップスを融合させた上で、大森はそれらをライリーを彷彿とさせるミニマリズムとして処理し、微細なマテリアルは次第に断続的なウェイブを作り、そしてそのウェイブを徐々に上昇させていき、曲の後半では、ほのかな温かみを帯びる切ないフレーズやボーカルラインが出現します。トラック制作の道のりをアーティストとともに歩み、ともに体感するような感覚は、聞き手の心に深く共鳴を与え、曲の最後のアンセミックな瞬間へと引き上げていくかのような感覚に充ちている。この曲にはシンガーソングライターとしての蓄積された経験が深く反映されていると言えます。 

 

 

 

#5「in limbo」では、テリー・ライリー(現在、日本/山梨に移住 お寺で少人数のワークショップを開催することもある)のシンセのミニマルな技法を癒やしに満ちたエレクトロニックに昇華しています。そこにはアーティストの最初期のクラシックへの親和性も見られ、バッハの『平均律クラヴィーア』の前奏曲に見受けられるミニマルな要素を現代の音楽家としてどのように解釈するかというテーマも見出される。平均律は元は音楽的な教育のために書かれた曲であるのですが、以前聞いたところによると、音楽大学を目指す学習者の癒やしのような意味を持つという。本来は、教材として制作されたものでありながら、音楽としての最高の楽しみが用意されている平均律と同じように、シンセの分散和音の連なりは正調の響きを有しています。素晴らしいと思うのは、自身のボーカルを加えることにより、その衒学性を衒うのではなく、音楽を一般的に開けたものにしていることです。前衛的なエレクトロニックと古典的なポップネスの融合は、前曲と同じように、聞き手に癒やしに充ちた感覚を与える。それはミニマルな構成が連なることで、アンビエントというジャンルに直結しているから。そして、それはループ的なサウンドではありながら、バリエーションの技法を駆使することにより、曲の後半でイントロとはまったく異なる広々とした空へ舞い上がるような開けた展開へとつながっています。

 

 

#6「epigraph…」では、アンビエントのトラックへと移行し、アルバムの序盤のゴシック/ドゥーム調のサウンドへと回帰する。考えようによっては、オープナーのヴァリエーションの意味を持っています。しかし、抽象的なアンビエントの中に導入されるボーカルのコラージュは、James Blakeの初期の作品に登場するボーカルのデモーニッシュな響きのイメージと重なる瞬間がある。そして最終的に、ミニマルな構成はアンビエントから、Sara Davachiの描くようなゴシック的なドローンを込めたシンセサイザー・ミュージックへと変遷を辿っていく。しかし、他曲と同じように制作者はスタイリッシュかつ聴きやすい曲に仕上げており、またアルバム全体として見たときに、オープニングと同様に効果的なエフェクトを及ぼしていることがわかるはずです。 

 

 

「foundation」



しかし、一瞬、目の前に現れたデモーニッシュなイメージは消えさり、#7「foundation」では、それと立ち代わりにギリシャ神話で描かれるような神話的な美しい世界が立ち現れる。安らいだボーカルを生かしたアンビエントですが、ボーカルラインの美麗さとシンセサイザーの演奏の巧みさは化学反応を起こし、エンジェリックな瞬間、あるいはそのイメージを呼び起こす。音楽的にはダウンテンポに近い抽象的なビートを好む印象のある制作者ではありながら、この曲では珍しくダブステップの複雑なリズム構成を取り入れ、それを最終的にエクスペリメンタルポップとして昇華しています。しかし、ここには、マンチェスターのAndy Stottと彼のピアノ教師であるAlison Skidmoreとのコラボレーション「Faith In Strangers」に見られるようなワイアードな和らぎと安らぎにあふれている。そして、それらの清涼感とアンニュイさを併せ持つ大森の歌声は、イントロからまったく想像も出来ない神々しさのある領域へとたどりつく。そして、それはダンスミュージックという制作者の得意とする形で昇華されている。背後のビートを強調しながら、ドライブ感のある展開へと導くソングライティングの素晴らしさはもちろん、ポップスとしてのメロディーの運びは、聞き手に至福の瞬間をもたらすに違いありません。

 

アルバムのイメージは曲ごとに変わり、レビュアーが、これと決めつけることを避けるかのようです。そしてゴシックやドゥームの要素とともに、ある種の面妖な雰囲気はこの後にも受け継がれる。続く、#8「in full bloom」では、アーティストのルーツであるクラシックの要素を元に、シンセサイザーとピアノの音色を組み合わせ、親しみやすいポピュラー音楽へと移行する。しかし、昨晩聴いて不思議だったのは、ミニマルな構成の中に、奇妙な哀感や切なさが漂っている。それはもしかすると、大森自身のボーカルがシンセと一体となり、ひとつの感情表現という形で完成されているがゆえなのかもしれません。途中、感情的な切なさは最高潮に達し、その後、意外にもその感覚はフラットなものに変化し、比較的落ち着いた感じでアウトロに続いていく。

 

 

前の曲もベストトラックのひとつですが、続く「a structure」はベストトラックを超えて壮絶としか言いようがありません。ここではファラオ・サンダースやフローティング・ポインツとの制作、そして青葉市子のライブサポートなどの経験が色濃く反映されている。ミニマル・ミュージックとしての集大成は、Final Fantasyのオープニングのテーマ曲を彷彿とさせるチップチューンの要素を絶妙に散りばめつつ、それをOneohtrix Point NeverやFloating Pointsの楽曲を思わせる壮大な電子音楽の交響曲という形に繋がっていく。本来、それは固定観念に過ぎないのだけれど、ジャンルという枠組みを制作者は取り払い、その中にポップス、クラシック、エレクトロニック・ダンス・ミュージック、それらすべてを混合し、本来、音楽には境目や境界が存在しないことを示し、多様性という概念の本質に迫っていく。特に、アウトロにかけての独創的な音の運びに、シンセサイザー奏者として、彼女がいかに傑出しているかが表されているのです。

 

アヴァンギャルドなエレクトロニックのアプローチを収めた「astral」については、シンセサイザーの音色としては説明しがたい部分もあります。これらのシンセサイザーの演奏が、それがソフトウェアによるのか、もしくはハードウェアによるのかまでは言及出来ません。しかし、Tone 2の「Gladiator 2」の音色を彷彿とさせる、近未来的なエレクトロニックの要素を散りばめ、従来のダンス・ミュージックやエレクトロニックというジャンルに革命を起こそうとしています。アンビエントのような抽象的な音像を主要な特徴としており、その中には奇妙なクールな雰囲気が漂っている。これはこのアーティストにしか出し得ない「味」とでも称すべきでしょう。

 

 

これらの深く濃密なテーマが織り交ぜられたアルバムは、いよいよほとんど序盤の収録曲からは想像もできない領域に差し掛かり、さらに深化していき、ある意味では真実性を反映した終盤部へと続いていきます。「an ode to your heart」では驚くべきことに、日本の環境音楽の先駆者、吉村弘が奏でたようなアンビエントの原初的な魅力に迫り、いよいよ「epilogue...」にたどり着く。ホメーロスの「イーリアス」、ダンテ・アリギエーリの「神曲」のような長大な叙事詩、そういった古典的かつ普遍性のある作品に触れた際にしか感じとることが難しい、圧倒されるような感覚は、エピローグで、クライマックスを迎える。海のゆらめきのようにやさしさのあるシンセサイザーのウェイブが、大森の歌声と重なり、それがワンネスになる時、心休まるような温かな瞬間が呼び覚まされる。その感覚は、クローズで、タイトル曲であり、コーダの役割を持つ「stillness,softness…」においても続きます。海の上で揺られるようなオーガニックな感覚は、アルバムのミステリアスな側面に対する重要なカウンターポイントを形成しています。

 

 

100/100

 

 

Hinako Omori(大森日向子)のニューアルバム「stillness,softness…」は、Houdstoothより発売中です。

 Wild Nothing  『Hold』 

Label: Captured Tracks

Release: 2023/10/28



Review


2010年に発表された『Gemini』からニューヨークのキャプチャード・トラックスの屋台骨となり、同レーベルの象徴的な存在として名を馳せてきたWild Nothing(ワイルド・ナッシング)こと、ジャック・テイタム。

 

デビュー時からの盟友とも称せるBeach Fossils(ビーチ・フォッシルズ)のジャスティン・ペイザーと同様に、ミュージシャンとしての道のりを歩む傍ら、家庭を持つに至り、人生における視野を広げ、新たな価値観を作りあげつつあるのを見ると、確実に十三年という時の流れを象徴づけている。5thアルバムは、ジェフ・スワン(キャロライン・ポラチェックやチャーリーXCXの作品を手掛ける)がミックスを担当。パンデミック時に書かれ、現代的な時代背景から「模索的で実存的な音楽になるのは必然だった」とレーベルのプレスリリースには明記されている。

 

デビュー当時の名曲「Golden Haze」(同名のEPに収録)の時代からインディーロックやシューゲイズ/ドリーム・ポップのポスト世代の担い手として日本国内でも紹介されてきたワイルド・ナッシングではありながら、プレスリリースでも言及されている通り、オルタネイトなロックのみが、このアーティストの音楽的なバックグランドを構築しているわけではないことは瞭然である。そして、ひとつこのアルバムを聴くとよく分かることがあるとするなら、シューゲイズ/ドリームポップと、ポスト世代で多くのバンドが追求してきた当該ジャンルの主要な要素であるメロディーの甘美さや陶酔感と併行して、ダンス・ミュージックからの強いフィードバックが、テイタムのオルタナティヴ・ロックサウンドの背後には鳴り響き、重要なバックボーンを形成していたという意外な事実である。さらに、「ピーター・ガブリエルとケイト・ブッシュに最も触発を受けた」とテイタム自身が説明している通り、彼がこの13年間を通じて、良質なポピュラー音楽から何かを掴み、それを一般的に親しめる曲としてアウトプットしてきたという事実を物語っている。つまり、表面上からは伺いしれないワイルド・ナッシングの本質的な音楽性にふれることが出来るという点に、本作の最大の魅力が反映されているのだ。デビュー時の派手な印象は薄れてはいるものの、一方、かなり聴き応えのある作品となっている。少なくとも、オルトロックファンとしては素通りできないレコードとなるかもしれない。おそらく、このアーティストの作品に幾度となく慣れ親しんできたリスナーにとどまらず、新たにワイルド・ナッシングの作品に触れようという方も、そのことを痛感いただけるものと思われる。

 

ファーストシングルとして公開された「Headlights On」は、ホルヘ・エルブレヒトやBeach Fossilsのトミー・デイヴィッドソン、ハッチーが参加し、「アシッド・ハウスに匹敵するベースグルーヴとブレイクビーツが特徴ではあるが、このクラブの雰囲気はミスディレクション」と記されている。テイタムはオープニング曲を通じて、バランスを取ることを念頭に置いており、背後のダンスビートの中にAOR/ソフト・ロックに象徴される軽やかで涼し気なサウンドを反映させる。表面的な印象に関しては、ダンスロックやシンセポップからのフィードバックを感じ取る場合もあるかもしれないが、同時にビリー・ジョエルのサウンドに関連付けられる良質なバラードやポップスにおけるソングライティングがグルーブの中に何気なく反映されている。モダンなトラックとしても楽しめるのはもちろんなのだが、往年の名バラードのような感じで聞き入る事も出来るはずだ。「Headlights On」は、いわば、キャッチーさと深みを併せ持つ音楽の面白みを凝縮させたシングルなのである。アルバムのイントロとも称すべき一曲目で、懐かしさと新しさの融合性を示した後、#2「Basement El Dorado」では、さらにユニークなダンス・ポップが続く。Dan Hartmanの「Dream About You」を思い起こさせる懐かしのシンセ・ポップを背後に、テイタムはそれとは別の彼らしいオリジナリティを発揮する。現在、ニューヨークでトレンドとなっているシンセ・ポップのモダンな解釈を交え、それらにHuman Leagueのような軽やかなノリを付加している。

 

こういった新鮮な音の方向性を選んだ後、#3「The Bodybuilder」では2010年のデビュー当時から続くドリームポップのメロディー性を踏襲し、新鮮な音楽性を開拓しようとしているように感じられる。メロディーの中にはSheeranのようなポップネスもあり、LAのPoolsideと同様にヨット・ロックからのフィードバックも感じとれる。リゾート的な気分を反映しつつも、Cocteau Twinsのような陶酔的なメロディーもその音の中に波のように揺らめいている。しかし、曲の途中からは雰囲気が一変し、マーチングのようなドラムビートを交えた聴き応えのあるギターロックへと移行していく。断片的なバンドサウンドとしての熱狂性を見せた後、クラブのクールダウンのような感じで、曲も落ち着いた印象のあるコーラスが続き、そして再び、サウンドのバランスを取りながら、それらの二つの音楽性を融合させ、メロディーとビートの両方の均衡を絶妙に保ち、曲はアウトロへと向かう。そのサウンドの中に一瞬生じるグルーブは旧来のワイルド・ナッシングの音楽とは別の何かが示されていると思う。

 

中盤でもダンスミュージックを意識したモダン/レトロのクロスオーバー・サウンドが続く。 「Suburban Solutions」でも、やはりドリーム・ポップの基礎的なサウンドを形成しているAOR/ソフト・ロックのサウンドからの影響を織り交ぜ、MTV時代のディスコサウンドに近いナンバーとして昇華している。こういったサウンドでは、旧来よりもエンターテイメント性に照準を絞っているという印象も受ける。実際に、そのことはアウトロでのコーラスワークに反映されており、単なる旋律の良さにとどまらず、清涼感を重視した意外性のあるナンバーとなっている。その後、「Presidio」でも同じように、比較的新しい試みがなされ、アンビエント/エレクトロニックの中間の安らいだ電子音楽を制作している。クオリティーの高さに照準を置くのではなくて、聴きやすさと安らぎに重点を置いているのに親近感を覚える。電子音楽ではありながら、シンセ音源のシンプルな配置を通じて、温かい感情が波のように緩やかに流れていく。こういった心がほんわかするような気分は、もちろん、次の曲でも健在だ。「Dial Tone」では日本のJ-POPの音楽性にも近い叙情的なインディーロック・サウンドが展開される。この曲もまた同様にローファイな感覚が生かされていて、欠点があることに最高の美点が潜んでいる。

 

 「Histrion」でもダンス・ミュージックとソフト・ロックが曲の核心を形成しているが、その中にはやはりオープニング曲と同じように現代的なポップネスが反映されており、彼が尊敬するガブリエルやケイト・ブッシュの良質なソングライティング性を継承し、それらをどのような形で次のポピュラー音楽に昇華するのかという試行をリアルなサウンドメイクにより示している。それはまだ完全に完成されたとは言えない。ところが、その中に何かきらめいた一瞬を見出せる。デペッシュ・モードを彷彿とさせるダンスビートを背に歌われるボーカルラインの節々に本質的な概念が現れ、きらびやかな印象を醸し出す。そのことをひときわ強く象徴づけるのが、アウトロにかけて導入されるダンスビートをバックに歌われるアンセミックなフレーズなのだ。

 

「Prima」では、アルバムのハイライト、象徴的な音楽性が表れている。言い換えれば、今までになかった次なる音楽が出現したという感じだ。ミステリアスな印象のあるシンセサイザーのシークエンスの中に、それらの抽象的な空間に向けて歌われるジャック・テイタムのボーカルに要注目である。和音的な枠組みの中にテイタムのボーカルのメロディーが対旋律のような効果を与える瞬間がある。従来のインディーロックという枠組みを離れて、まだ見ぬ未知の段階にアーティストが歩みを進めた瞬間でもある。レーベルのプレスリリースにも書かれている通り、ジャック・テイタムは、地球の温暖化や、その他、政治的な問題に無関心というわけではない。しかし、それらの考えを言葉でストレートに表現するのではなく、言葉の先にある音楽という形に落とし込んでいる。つまり咀嚼しているということなのだ。ワイルド・ナッシングの音楽に対する探究心は尽きることがないし、それは本作のクライマックスを飾る収録曲においても断続的に示されている。「Alex」では、親しみやすい良質なインディー・フォーク、「Little Chaos」ではエレクトロニック/アンビエント。クローズ曲は『Toto Ⅳ』に見いだせるような、爽やかな感じで、アルバムはさらりと終わる。

 

 

 

88/100