イライジャ・クヌッツェンは、ソロ・プロジェクトの新作アルバム『Ultracoming』をリリースした。彼の特異とするアンビエントから、スロウコア、D&B、ノイズなどが渾然一体となった作品である。レーベルによるトラック・バイ・トラックが紹介されているので、下記よりお読み下さい。
ポートランドを拠点に活動するエクスペリメンタル/アンビエント・プロデューサーで、その作品は日本のニューエイジ・コンセプト・アルバムからシューゲイザーの実験作まで多岐にわたる。イライジャの音楽は、フィールド・レコーディングとメランコリックなギター・ワークが絡み合い、ノスタルジーと切なさをテーマにしている。2020年3月、イライジャは自身の音楽をアメリカ、イギリス、日本のオーディエンスにリリース、販売する手段として、レーベル 「Memory Color「を立ち上げた。
このレーベルは、80年代から90年代にかけての日本のアンビエント・ムーブメントに大きな影響を受けており、フィジカル・リリースという手段を通じて、「環境音楽」というジャンルをアップデートすることに重点を置いている。レーベルを立ち上げて以来、イライジャの作品は日本(Music Tribune)、アメリカ、ニュージーランドの音楽誌や、ポートランドを拠点とするウィラメット・ウィーク紙などで紹介されている。
イライジャは現在、オーストラリアを拠点に活動するミュージシャン、Panda Rosaとポストロック・グループ "Pacific Weather Patterns "の別名義で2枚目のコラボレーション・アルバムを制作中である。
『Ultracompact』は、洗練され、エモーショナルで、露骨で、ネオンカラーで、雑然とした音のコラージュである。
トラック1:「Ultracompact」‐ 激しいジャングル/ノイズ・ポップの壁で始まる。すぐにプラグが抜かれ、アルバムはメランコリックなリード・シングルへと導かれる。
トラック2:「A Dream」 - 失われた愛と悲しい人間関係に捧げる「Wish-esque」のような陽気な曲。シンプルなプロダクションだが、正確なドラムとベースが、悲しげなギターとかすれたヴォーカルを通してリードしている...。
トラック3:「Superlilac」‐マイクロ・サウンド、ジャングル、ブレイクビーツをブレンドしたソフトでドライヴ感のある「Superlilac」。アーティストが珍しくクラブ・ビートへの信奉を示したトラックである。
トラック4:「You Are the One」- 長編ポストロック・プレインソング。以前からポスト・ロックの楽曲を書いてきたアーティストはこの曲で新境地を開拓してみせている。前曲のエレクトロニックな埃を振り払い、このナンバーは、ベース・トラックと爆発的なギター/ドラム・セクションを伴い、推進力のあるシューゲイザーへと移行する。ジェフレ・カントゥ=レデスマにインスパイアされたギター曲は、ノイズと繰り返しの絶望的な肖像を描く。オレンジ色に燃え盛るノイズの柱は、ゆっくりとフェードアウトするにつれ、美しいメランコリアの感覚を残す。
トラック5「No End Is Slight」‐ ドゥーム・メタルともノイズコアともつかないジャンクなノイズギターで始まる。それほど大きな起伏もなく、中音域をさまよいながら音響派さながらに抽象的なギターの音像を形成する。
トラック6:「The Drowning Machine」‐ どんな美しい感情も、やがてザ・ドラウニング・マシーンという、のたうち回る、醜い、機械的な、スローコアの巨人にどうしようもなく窒息させられる。自己嫌悪と死のマントラを唱える露骨な言葉が、不潔な流水静電気の固まりを切り裂く。不気味なドラムが亡霊のようなギターのリリックが延々と重なり合う波の中をさまよい続ける...。
クローズド・トラック「Goodbye」‐前曲からの甘い解放で、アルバムにふさわしい終わりを告げる。短い一分ほどの楽曲ではあるが、かのアーティストのアンビエントをギターロックという観点から追求したトラックである。
イライジャ・クヌートセンのインタビューはこちらよりお読みいただけます。