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アメリカ系カナダ人のメタル・トリオ、SUMAC、フィラデルフィアを拠点に活動する詩人/作曲家のMoor Motherがコラボレーションアルバムの詳細を明らかにした。この作品は4月25日にThrill Jockeyからリリースされ、オープニングトラックであるインダストリアルで閉所恐怖症的な「Scene 1」が現在公開されている。

 

本作は、エンジニア/ミキサーのスコット・エヴァンスと共にスタジオ・リトグラフでレコーディングされた。SUMACは2024年に最新アルバム『The Healer』をリリース。ムーア・マザーの最新アルバム『The Great Bailout』も昨年リリースされた。

 

『The Film』は、SUMACのメタル、ジャズ、ノイズのテクスチャーの探求、そして、Moor Motherのヒップホップに実験性を加えるという両アーティストの作品の特徴を取り入れ、音楽的パターンの変化や表現力に共通点を見出したアルバムだ。このアルバムは、それぞれの分野における伝統的なアプローチを音楽的に否定するものであり、革新的で力強いアルバムである。


このフィルムなる名称は、本作がアルバム、一連なりの物語、物語として構想され、提供されているという事実を如実に物語ろうとしている。

 

Moor Motherはこの作品について次のように述べている。 

 

このアイデアは、既成概念にとらわれない瞬間を創り出すこと。これは芸術作品です。アルバムや曲のコレクションではなく、フィルムとして作品を考える。すべてを消費という箱に押し込めようとする業界では、この作業はほとんど不可能だ。

 

アートワークが完成するまでは、その全貌を理解することも得ることもできない。この仕事は発展途上であり、クリエイティブ・プロセスの中でより多くのエージェンシーを要求している。この作品には明確なテーマがある。 テーマは、土地、移住、気候、人権と自由、戦争と平和、逃げ出すという考えなど、普遍的なものです。

 

 

「Scene 1」



SUMAC/Moor Mother 『The Film』


Label: Thrill Jockey

Release: 2025年4月25日


Tracklist:

1.Scene 1

2.Scene 2: The Run

3.Hard Truth

4.Scene 3

5.Scene4

6Camera

7.The Truth Is Out There

8.Scene 5: Breathing Fire

Mastdon

アトランタのニューメタルゴッド、マストドンとラム・オブ・ゴッドが新曲「Floods of Triton」でタッグを組んだ。


先日リリースされたこの新曲は、マストドンの『リヴァイアサン』とラム・オブ・ゴッドの『アッシュズ・オブ・ザ・ウェイク』の20周年と同時に行われたバンドの共同ヘッドライナー・ツアーの後に発表された。


このコラボレーションは、マストドンのアトランタのスタジオ、ウエスト・エンド・サウンドでレコーディングされ、映画音楽作曲家のタイラー・ベイツと共同プロデュースされた。また、この作品はマストドンの新レーベル、ロマ・ヴィスタからの初リリースでもある。試聴は以下から。



「Floods of Triton」

Yonaka


YONAKAに起きた異変……。2014年にブライトンで結成されたYONAKAは当初、ロックバンドという触れ込みで活動していたが、四人組からトリオ編成になるにつれ、ドラスティックな音楽性の転換を図ろうとしている。YONAKAはライブを活動のベースに置き、いつも観客にどのような影響を与えられるかを考えてきた。もちろん、ライブ・パフォーマンスを通してである。

 

テレサ・ジャーヴィス(ヴォーカル)、アレックス・クロスビー(ベース)、ジョージ・ウェルブルック・エドワーズ(ギター)の3人組は、ポップ、パンク、ヒップホップを融合させ、ヒプノティックなオルタナティヴ・ロックのハイブリッドに仕上げた。このグループは、明確な意図と広大なビジョンを持ち、メンタルヘルス、エンパワーメント、そして「今、ここ」のテーマを深く掘り下げようとしている。1億5,000万回以上のストリーミングを記録し、幅広い賞賛を得たYONAKAは、LAVA/Republic Recordsからリリース予定のEPで次の章をスタートさせることになった。

 

テレサ・ジャービスは不安や抑うつ状態など、自身のメンタルヘルスの問題から、 それらをモチーフにしたロックソングを書いてきた。YONAKAは他のロックバンドと同じように、問題を抱える人の心を鼓舞し、最も暗い場所から立ち上がる手がかりを与える。そしてジャービスは自分と同じような問題を抱えるリスナーに”孤独ではないこと”を伝えようとしてきた。それらのメッセージがひとつの集大成となったのが昨年に発表された『Welcome To My House』だった。


2024年に入って、YONAKAは劇的な変化を遂げた。テレサ・ジャービスのソングライティングは昨年まではまだクリーンな曲が中心だったが、年明けすぐに発表された「Predator」ではホラーパンクともSFチックなニューメタルともつかない最もヘヴィーなロックバンドへと変身を果たした。昨年まではスクリームやシャウトをすることに関してためらいを持っていたテレサ・ジャーヴィスのボーカルには、なんの迷いもなくなり、SlipknotやArch Enemyに匹敵するエクストリームなボーカルを披露するようになっている。バンドサウンドに重要なエフェクトを及ぼすのが、ニューメタルに触発された考えられるかぎりにおいて最もヘヴィーなギターである。昨年まではロックバンドとしての印象を大切にしていたため、ギター・ソロを披露することに遠慮があった。しかし、今年に入ってから何が起きたのか、ジョージ・エドワーズのダイナミックなギターが曲の中を縦横無尽に駆け回り、およそミクスチャー以降のニューメタルの系譜にある迫力のあるギターソロが稲妻のように駆けめぐり、そしてエナジーを極限まで引き上げる。それはスリーピースのバンドとは思えぬほどのヘヴィネスであり、そして激しさなのである。


今週末、LAVAからリリースされた「Fight For Right「権利のために闘う」)では、ボーカリストのテレサ・ジャーヴィスはシンプルに自分たちの権利を守るために歌を歌っている。ここには主張性を削ぎ落とした結果、ニュートラルになったバンドとは全く異なる何かが含まれている。彼らは口をつぐむことをやめ、叫ぶことを是としたのだ。

 

トリオは昨年までのロックバンドとしての姿を留めていたが、年明けのシングル「Predator」と合わせて聴くと、全然異なるバンドへと変貌を遂げたことがわかる。ライブイベントやファンとの交流の中で、”ファンの声を聞き、それを自分たちの音楽に取り入れることが出来た”と話すテレサ・ジャービスが導き出した答えは、YONAKAがニューメタルバンドとしての道を歩みだすことだったのだろうか。「Fight For Right」は彼らが書いてきた中で、最もグルーヴィな一曲。彼らはトレンドから完全に背を向けているが、その一方、最もサプライズなナンバーだった。誰にでも幸福になる権利があり、そしてそれは時に戦うことにより獲得せねばならない。

 

 

 「Fight For Right」


ブライトンの四人組のロックバンド、YONAKAが2024年の幕開けを告げる「Predator」を発表した。


このニューシングルは、旧来のバンドのアプローチとは異なり、メタルコアやラップメタルの影響を交えたミクスチャー・サウンドとなっている。その音楽性は90/00年代のミクスチャーロックにヒントがありそうだが、もちろんそれを2020年代の形にアップデートしているのは言うまでもない。

 

2023年、ユニバーサルミュージックから発表されたEP『Welcome To My House』では、マンチェスターのPale Wavesのように、ポップ・パンクとハイパー・ポップを融合させたスタイルで話題を呼んだ四人組。だが、YONAKAを単なる「ニューライザー」等と称する段階は過ぎているのではないだろうか。Evanescence(エヴァネッセンス)を基調としたメタルコアに近い音楽性、チャーリーXCXのハイパーポップ、現代的なUKラップを吸収し、それらをポピュラーミュージックとして昇華したスタイルは劇的である。今後さらに多くのファンベースを獲得しても不思議ではない。昨年のG2、Jeris Johnsonとのコラボレーション曲「Detonate」の進化系がニューシングル「Predator」で遂にお目見えとなった。問題無用のベストニュートラックだ。

 

YONAKAは、2023年、イギリスの最大級の都市型の音楽フェスティバル、レディング/リーズに出演し、続いて彼らの新たな代名詞となるアンセムソング「PANIC」を発表した。今後、急上昇が予想されるブライトンのロック・バンドに注目したい。

 

 

「Predator」

 


イギリスの硬派なメタルバンド、Architects(アーキテクツ)は、力強いニューシングル「Seeing Red」で2023年の活動を締めくくった。

 

この曲は、昨年リリースされた彼らの最新アルバム『The Classic Symptoms Of A Broken Spirit』以来のリリースとなり、現在すべての主要なデジタル・プラットフォームで視聴可能です。


ニュー・アルバムを引っさげての大規模ツアーやメタリカのオープニングを務めるなど、絶好調の1年を過ごしたサム・カーターのバンドにとって、2024年はビッグ・イヤーとなりそうです。


 King Gizzard & The Lizard Wizard  『PetroDragonic Apocalypse〜』

 

 

Label : KGLW

Release: 2023/6/16

 

 

Review

 

オーストラリアのキング・ギザードはこれまで、得体の知れないロックバンドというふうにみなされて来た。ライブの熱狂性には定評があるものの、彼らの生み出すハイエナジーかつハイボルテージなサウンドは、ヘヴィ・ロックから少しおしゃれなサイケ・ロック、ローファイと様々な音楽性が綯い交ぜとなっている。昨年、一ヶ月で三作のフルアルバムを発表し、86曲収録のライブアルバムを発売するという、ギネス級の離れ業を難なくやってのけたキング・ギザードは、今年に入っても好調を維持している。作れば作るほど、新しいイメージが湧き上がってきてしまうのが、このオーストラリアのロックバンドの凄さなのである。


昨年の『Omnium Gatherum』の収録曲「Gaia」に、その予兆は見えていたが、彼らはアルバムの発表とともに、神話や伝承の要素を取り入れた『PetroDragonic Apocalypse〜』が明確なヘヴィメタル・アルバムであることを公言して憚らなかった。アルバムは、音楽からファンタジックな物語が生み出されたわけではなく、ストーリーを下地に曲を書き上げ、一つのマテリアルに何らかの符牒をつけ、それらを連続したコンセプト・アルバムのように組み上げていったという。キング・ギザードは、このアルバムを「逆向きに作られた」作品であると説明しているが、こういった名人芸を難なく披露出来るのは、彼らの潜在的な演奏力の凄さと構想力の高さがこのバンドの屋台骨ともなっているからである。しかし、ファンタジックなコンセプト・アルバムとして制作されたとはいえ、「現実の中からテーマを作り出し、それを地獄へと放り込む」とプレスリリースで述べていることからもわかるとおり、このアルバムは完全な空想から生み出されたわけではなく、現実と空想が混在したメタル・アルバムと捉えることが出来る。

 

これまでキング・ギザードの作品には現代的なヘヴィロックバンドとしての気負いのようなものが前作のフルレングスまで存在していたが、この最新作については、ほとんどそれまでのプライドをかなぐり捨てたような赤裸々なメタルサウンドが冒頭の「Motor Spirit」から全開となっているのに驚く。 


これまで、アルバムごとにボーカルのキャラクターがまるで別人のように移り変わってきたが、今作では、よりその変身ぶりの多彩さを伺い知ることが出来る。モーター・ヘッドのレミー・キルミスター、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードなど、稀代のヘヴィロックバンド/メタルバンドのボーカルの影響を交えた拳の効いたワイルドなサウンドで初っ端からエンジンを全開にして疾走していく。しかし、彼らの志向するのは、時代の中に埋もれてきたB級メタルバンドのサウンドだ。アクセプト、アンスラックス、ランニング・ワイルドといったコアなメタルフリークとしての彼らの姿が、このオープニング・トラックを通じて捉えることが出来、それらの断片を元にニューメタルとしてどう組み上げていくのかがこのアルバムの主題ともいえる。80年代のメタルバンドを愛するリスナーにとっては、これらのレトロなメタルを爽快に演奏する姿にユニークさすら感じるはずである。しかし、このユニークなアプローチこそ、このバンドの真骨頂でもあるのだ。

 

 二曲目以降は、NWOHMの要素が強くなっていき、「Supercell」では『British Steel』や『Screaming For Vengeance』の時代のジューダス・プリーストの影響を交えた渋すぎるメタルサウンドで、そのエンジンのギアをアップしていく。彼らはロブ・ハルフォードに次ぐメタル・ゴッドの二代目の称号を得ようとしているのか、そこまではわからないことだが、キング・ギザードの演奏は、真正直か愚直ともいうべきブリッティシュ・メタルのオマージュやイミテーションを通じて展開されていく。80年代のメタル・フリークにとってはコメディーのような雰囲気があるため、ニヤリとさせるものがある。しかし、それらの硬派で気難しげなメタル・サウンドへのオマージュやイミテーションの中にも、じっくりと聞かせる何かが込められていることも理解できるはずである。なぜ、これらのB級メタルサウンドの中に聞かせるものが存在するのだろうか。それはキング・ギザードのバンドの演奏力が世界的に見ても際立って高いこと、ライブ・セッションの面白みをそつなくレコーディングの中に取り入れているからなのだろう。


その後、「Converge」はハードコアパンクのイントロからNWOHMの直系のサウンドに飛躍していく。ボーカルとギターのリフに関しては、ジューダス・プリーストを忠実になぞられている。そして、ロブ・ハルフォードに倣う形で、キング・ギザードはメタルとはかくなるものといわんばかりに、それらのブリティッシュメタルの最盛期のサウンドの核のみを叩きつけていこうとする。

 

その後も、彼らは「現代的なメタル」など眼中にはないとばかりに、古典的なメタルの全盛期を駆け巡っていく。ブラジルのSepulturaの『Roots』に触発されたと思われるニューメタルの名曲「Gaia」で繰り広げられていた、オーストラリアの文化性のルーツに迫るアプローチは、この曲でも健在だ。

 

それらがドゥーム・メタルの黎明期のサウンドとシンプルに絡み合いながら、奇妙ないわく言い難い硬派なメタルサウンドが確立されている。これらの拳の効いたメタル・サウンドが果たして、In Flamesのような音楽性を下地にしているのか、それとも、Acceptのようなダサさのある音楽性を基調にしているのかまではよくわからない。しかし、ここで奇妙な形で繰り広げられる、愚直なシンガロングのフレーズは、やはり、80年代の奇妙な熱狂性に近い雰囲気が漂っている。「Witchcraft」では、  そういった古き良きメタルのロマンへと、キング・ギザードは迫ろうとしているのかもしれない。これらのサウンドに対して、拳を突き上げるのか、一緒にシンガロングするのか、それとも冷静に距離を置くのか、それは聞き手の自由に委ねられている。

 

さらにキング・ギザードの面々は、80年代のメタル・サウンドの最深部へと下りていく。アルバムの先行シングルとして公開された「Gila Monster」は、メタリカの『Ride The Lightning』に近い音楽性を選択し、北欧メタルへの親和性を示している。メタリカのこの曲に見られたアラビア風の旋律の影響を交えたギター・ソロは必聴で、ツインリードの流麗さと、ベタなフレーズを復刻しようとしている。この曲は、現代の簡略化されたメタルサウンドへの強いアンチテーゼともなっている。彼らは、あえて無駄と思われることを合理主義的な世界の中で勇敢に行おうというのだろうか。その中には消費主義に対するバンドの反駁的な思いも読み取ることが出来る。

 

それ以降の「Dragon」では、Halloweenというよりも、Rhapsody、Impellitteriを彷彿とさせる、ベタなファンタジー・メタルへと続いていく。タイトルの『PetroDragonic Apocalypse〜』のテーマがこの曲に力強く反映されており、なおかつ彼らのメタル・フリークの度合いを計り知ることも出来る。これらのサウンドを聴いて、若い時代にメタルにハマったときの熱狂性を思い出させれば、キング・ギザードとしてはしめたものなのだ。彼らは見栄や体裁を張らず、純粋なファンタジックなメタルを再興しているが、これはなかなか出来ることではない。

 

アルバムの最後に収録されている「Flamethrower」では、民族音楽的なパーカッションのイントロに続いて、やはりアルバムの核心にある、疾走感溢れるスラッシュ・メタルが展開される。どれくらいザクザクとしたリフが刻まれているのかは実際の音源で確認してみてほしい。またこの曲には、彼らのバンドを始めたばかりの頃の青春時代のような美しさが刻印されている。Slayerのようなクールさはないが、このアルバムには妙な親しみをおぼえさせるものがある。それはリアルタイムではなかったけれど、メタルを聴き始めた若い時代を思わせるものがあるからなのかもしれない。

 

『PetroDragonic Apocalypse〜』はキング・ギザードのメンバーが主人公となって、ファンタジックな世界を経巡るような面白い作品で、シリアスになりがちな人々ユニークな視点を持つことの大切さを教えてくれる。メタル・フリークにとっては、奇妙なノスタルジアを覚えさせるし、また、メタルミュージックを知らない人にとっても、記憶に残る作品となるのではないだろうか。

 


77/100

 

 

「Gila Monster」