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今年、最新アルバム『This Stupid World』をリリースし、さらにフジ・ロックでの公演を予定しているヨ・ラ・テンゴの単独ジャパンツアーの開催が決定した。Smashが主催する本公演は、11月6日、東京/ザ・ガーデンホール、8日に名古屋/クラブ・クアトロ、大阪/ビッグキャットで3日間にわたって開催される。オフィシャル先行予約は、本日(7/18)からeプラスにて受付中となっている。

 


 

・オフィシャル先行予約


受付期間:7/18(火)17:00〜8/1(火)23:59


受付URL:https://eplus.jp/yolatengo/

 

 

・東京 

 

2023/11/6 (Mon) The Garden Hall


OPEN 18:00 START 19:00
スタンディング 前売り:¥7,800

ドリンク代別

お問い合わせ:
SMASH 03-3444-6751 

 

・名古屋

 

2023/11/8 (Wed) NAGOYA CLUB QUATTRO


OPEN 18:00 START 19:00


スタンディング 前売り:¥7,800

ドリンク代別

お問い合わせ:

NAGOYA CLUB QUATTRO 052-264-8211 

 

・大阪


2023/11/9 (Thu) BIGCAT

 

OPEN 18:00 START 19:00


スタンディング 前売り:¥7,800

ドリンク代別

お問い合わせ:


SMASH WEST 06-6535-5569 


 

本公演のさらなる詳細は公式ホームページよりご確認下さい。

 

 

Yo La Tengo

 

1984年、当時音楽ライターをしていたアイラとジョージアを中心にニュージャージー州ホーボーケンにて結成。91年にジェームズが加入し、現在のスリー・ピースの形となってからは97年発表の『I Can Hear the Heart Beating as One』をはじめ世界中のオルタナ・ファンを魅了し続ける名作をいくつも生み出してきた。2023年2月には話題となった奈良美智とのコラボレーションEP「Sleepless Night」を挟んで、バンドのノイズとアコースティック双方の魅力を携えた16作目となる最新アルバム『This Stupid World』をリリース。長きに渡る活動の軌跡はまさにUSオルタナ〜インディの理想形とも言えるヨ・ラ・テンゴが2013年のグリーン・ステージ以来、実に10年ぶりにフジロック出演。そしてこの秋5年ぶりの単独ツアーが決定!

 


Yo La Tengoは、金曜日の夜にシカゴで行われた25曲の大規模なセットで、盟友とも言えるWilcoをステージに呼び、感慨深い共演を果たしました。

 

Yo La Tengoは、2月から3月にかけて17枚目のスタジオ・アルバム『This Stupid World』をサポートするワールド・ツアーのUSレグを終えたばかり。3月24日(金)夜にシカゴで行われた前哨戦のセットでは、Wilcoの「If Ever I Was A Child」のカバーを含む25曲のセットを披露しています。


現在、2022年の2枚組LP『Cruel Country』のリリース記念ツアー中のWilcoは、偶然にも同時期にシカゴで3回の特別公演(セットリストに繰り返される曲はない)を行い、Yo La Tengoのアンコールでステージに現れ、ファンを驚かせました。


コニーアイランド/キーストーン・パークで2009年という昔から一緒に演奏してきた2つのバンドは、一緒にカバーを演奏した。先週の4曲のアンコールでは、ビートルズの「She's A Woman」やボブ・ディランの「Love Minus Zero/No Limit」、ザ・ハートブレイカーズやフェアポート・コンベンションをカバーしています。アンコールの全貌は以下からご覧下さい。


 Weekly Recommendation

 

Yo La Tengo 『This Stupid World』 

 



Label: Matador Records

Release Date: 2023年2月10日



 

 ニュージャージ州ホーボーケンのオルタナティヴ・ロックバンド、Yo La Tengoは84年の結成時からおよそ40年にもわたる長いキャリアを持つトリオです。

 

うろおぼえではあるものの、多分同じくらいのキャリアを持つ日本のある有名なロックバンドが、以前、このようにインタビューか何かで話していた記憶があります。「長く良いバンドでありつつづけるために必要なのは、売れすぎないことである」と。これは当事者から見ると、身も蓋もない話であるけれど、売れてしまうとミュージシャンとしての強いモチベーションが失われてしまうことを彼らは身をもって言い表していたように思えます。傑出した才能に恵まれながらも熱意を失ってしまった実例を、そのバンドメンバーは実際の目で見てきたのです。そして、伝説的な存在、ヨ・ラ・テンゴが、約40年目にして最も刺激的なアルバムを制作していることを考えると、この良いバンドである続けるための箴言はかなり言い得て妙なのかもしれません。

 

この新作アルバム『愚かな世界』のアートワークが公開された時、熱心なヨ・ラ・テンゴのファンは、すぐ気がついたことでしょう。これは、1993年の『Painful』、そして2000年の『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』の続編のような意味を持つのかも知れない、と。もちろんこれは憶測に過ぎませんが、『This Stupid World』は少なくともヨ・ラ・テンゴのキャリア、そして、ニュージャージーやニューヨークのその時々の音楽ムーブメントとの関わり方を見ると、一つの節目にあたる作品であると共にキャリアを総括するような作品と言えるかも知れません。


プレス・リリースでは、近年、プロデューサーと協力して作品を生み出してきたヨ・ラ・テンゴが最初期のDIYのスタイルに回帰し、完全なインディペンデントな制作を行った作品ということになっています。ところが……、実は、Tortoiseのドラマー、John McEntire(ジョン・マッケンタイア)がロサンゼルスでミックス作業に部分的に関わっているらしい。しかし、それ以外は、プレスリリースに書かれている通りで、ヨ・ラ・テンゴのメンバーがDIYの精神に基づいて制作に取り組んでいます。

 

Yo La Tengo

 新作アルバムの発売以前に先行シングルが三曲公開されました。ポップなコーラスを交えたローファイなロックソング「Fall Out」、そして、ヨ・ラ・テンゴのドラマーであるジョージア・ハプレイの和やかな雰囲気を持つ「Aselentine」までは、いつものようなヨ・ラ・テンゴの作品が来るだろうと予想していました。  


ところが、今週始めの最終プレビュー「Sinatra Drive Breakdown」を聴いた時、正直にいうと、今までの作風とは少し何かが違うと考えた。この新作アルバムが従来のヨ・ラ・テンゴのイメージを強化するのではなく、例えば、Sea And Cakeを彷彿とさせるソフトなロック性の印象を引き継ぎつつも、別の側面でそれを覆すような冒険心に溢れる作品であるように感じたのです。


そして、金曜日に『This Stupid World』の全貌が明らかになった時、その疑いのような奇妙な感覚が確信へと変化した。つまり、明らかにヨ・ラ・テンゴの約40年の中で、VUやソニック・ユースを始めとするNYのオルタナティヴの核心に最も迫り、なおかつ最もヘヴィーでカオティックな作品になったのです。

 

このアルバムはいろいろな解釈が出来るかも知れません。「愚かな世界」と題されたオルタナティヴ・ロックは、客観的な世界を多角的に描き出したとも取れますし、また、それはヨーロッパやアメリカの現代社会に蔓延る分断や歪みをノイズ・ロックという側面から抽象性の高いリアリズムとして表現しているとも解釈出来るわけです。そして、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『White Light / White Heat』の代表曲「Sister Ray」に近い、ローファイとカオスを交えたオープニング・トラック「Sinatra Drive Breakdown」で、バンドは、この混沌とした世界を内省的なノイズという観点から克明に描き出そうとしています。


「Sinatra Drive Breakdown」の中では、ある種、禍々しさのあるアイラ・カプランの警告の言葉も囁かれています。「死への準備をせよ/まだ時間が残されているうちに準備しなさい」と歌い、切迫し、いよいよ転変が近い私たちの世界を抽象的に表現する。そして、その人の手により規定された時間の中に居続けることの耐え難さと、その時間から逃れることの願望について歌われています。

 

待って、無視してほしい、無駄にしてほしい、生き続けてほしい、時計の針から目をそらして」とカプランは歌っているが、ヨ・ラ・テンゴの豊富なキャリアにあって、これほど苛烈で厳しい言葉、また、真実の世界をえぐり出した言葉が紡ぎ出されたことが一度でもあっただろうか? これはまさにヨ・ラ・テンゴはこの差し迫った世界を鋭い視点で捉えていると言えるのです。

 

最も衝撃的だったのは、オープニング曲「Sinatra Drive Breakdown」であるのは間違いありませんが、その他にも、これまでのヨ・ラ・テンゴの作風からは予想できない意外な曲もある。いつもフルレングスの中にあって、ふんわりとした癒やしを持つドラマーのジョージア・ハプレイの歌うフォーク・バラード「Aselestine」は、「Let's Save Tony Orlando's House」、「Today Is The Day」といった彼らの代表曲と並べても遜色のない曲で、聞き手を陶酔の中へと誘うことでしょう。その一方、ジョージア・ハプレイは、これまでにはなかった死の扉にさしかかる友人にさりげなく言及しており、既存の作品の題材とは少し異なるテーマを選び取っている。あまり偉そうなことは言えないものの、これは、多分、ヨ・ラ・テンゴの三者にとっての人生が以前とは変わり、そして、その真摯な眼差しから捉えられる世界が180度変化してしまったことを象徴しているのかもしれません。そう、1993年の世界とも、2000年の世界とも異なり、今日の世界はその起こる出来事の密度や、その出来事の持つ意味がすっかり変貌してしまったのです。

 

もはや、どうすることも出来ない。世界は今も時計の針を少しずつ進め続けており、世界中の人たちは、その現状を静観するよりほかなくなっています。それでも、ヨ・ラ・テンゴはこの世界に直面した際に、どのような態度で臨もうとしているのでしょうか。彼らは決してその愚かしさに絶望しているわけでも、そのことについて揶揄しようとしているわけでもないのです。それは、レコードの中で最も衝撃的で、カオティックなノイズに塗れたタイトル曲「This Stupid World」を聴くと分かるように、この世界に恐れ慄きながらも、その先にかすかに見える希望の光を見据えています。この曲は、ヨ・ラ・テンゴの既存の作風の中で、ニューヨークのアヴァンギャルド・ミュージックの源流に最接近していますが、それはThe Velvet Undergroundの往年の名作群にも引けを取らないばかりか、聞き手の魂を浮上させるエネルギーを持ち合わせているのです。


 

 97/100(Masterpiece)

 

 

Weekend Featured Track  「This Stupid World」

 

©︎Cheryl Dunn

ニュージャージー州、ホーボーケンの40年近いキャリアを誇る伝説的なオルタナティブ・ロックバンド、Yo La Tengo(ヨ・ラ・テンゴ)が、2月10日(金)にマタドールから発売されるアルバム『This Stupid World』の最終プレビューとなる「Sinatra Drive Breakdown」を公開しました。これですべて先行シングルが出揃いました。


ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sister Ray」の系譜に当たるラフでローファイ感満載の新曲は、NYのプロトパンクへの彼らの深い敬愛に満ちており、さらに瞑想的かつ幻惑的な響きを持ち合わせています。先に公開された「Aselestine」「Fallout」に続く作品となります。


また、ヨ・ラ・テンゴは、今年のフジロックでの来日公演を予定しています。フェスティバルに参加する方は、ぜひこの新作アルバムをチェックしてみてください。


 

©︎Chelyl Dunn

Yo La Tengoが、近日発売予定のアルバム『This Stupid World』からのセカンド・シングルとなる新曲「Aselestine」を発表した。リード・シングル「Fallout」に続くこの曲は、Georgia Hubleyがリード・ボーカルを務めています。以下、チェックしてみてください。


バンドにとって16枚目のアルバムとなる『This Stupid World』は、Matador Recordsより2月10日にリリースされる予定です。バンドはその後、このアルバムを引っさげてアメリカとヨーロッパでツアーを行う予定です。。


 

Yo La Tengo©︎ Cheryl Dunn


ニュージャージー州のインディーロックバンド、Yo La Tengoが、通算16作目となるニューアルバム『This Stupid World』のリリースを発表しました。この新作は2月10日にMatadorからリリースされる。


この発表に合わせてファーストシングル「Fallout」が公開されている。下記からミュージックビデオが試聴できる。


Yo La Tengo(カプラン、妻でドラマーのジョージア・ヒューブリー、ベーシストのジェームズ・マクニュー)は、外部プロデューサーを起用するのではなく、自分たちで9曲入りの『This Stupid World』を制作した。これは2020年の『We Have Amnesia Sometimes』に続く作品で、COVID-19パンデミックの初期に録音された5つの長大なインストゥルメンタルトラックで構成されている。


ヨ・ラ・テンゴは、12月16日にニューヨークのバワリー・ボールルームで、サプライズ・ゲストを招いての8夜にわたる恒例のハヌカ・ライヴを開始する予定だ。2月15日〜16日にはシアトルで大規模なワールドツアーを開始し、4月10日のダブリンからヨーロッパに乗り出す。


 

 



Yo La Tengoが、『This Stupid World』のセカンド・シングル「Aselestine」を発表した。リード・シングル「Fallout」に続くこの曲は、Georgia Hubleyがリード・ボーカルを務めている。


バンドにとって16枚目のアルバムとなる『This Stupid World』は、Matador Recordsより2月10日にリリースされる。バンドはその後、このアルバムを引っさげてアメリカとヨーロッパでツアーを行う。





Yo La Tengo(ヨ・ラ・テンゴ)が『This Stupid World』の最終プレビュー「Sinatra Drive Breakdown」を公開した。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sister Ray」の系譜に当たるラフでローファイ感満載の新曲は、NYのプロトパンクへの彼らの深い敬愛に満ち、瞑想的かつ幻惑的な響きを持ち合わせている。先に公開された「Aselestine」「Fallout」に続く作品。


また、ヨ・ラ・テンゴは、今年のフジロックでの来日公演を行い、11月には来日公演を控えている。フェスティバルやライブに参加する方は、ぜひこの新作アルバムをチェックしてみよう。



 Yo La Tengoの新作アルバム『This Stupid World』は2月11日の記事でレビューしています。詳細はこちら

 



Yo La Tengo 『The Stupid World』




Label : Matador Records


Release:2023年2月10日

 


Tracklist:



1. Sinatra Drive Breakdown

2. Fallout

3. Tonight’s Episode

4. Aselestine

5. Until It Happens

6. Apology Letter

7. Brain Capers

8. This Stupid World

9. Miles Away




 

Yo La Tengoはアルバム「I Can Hear the Heart Beating as One Friday」の25周年を記念して、Mr.ショーのBob OdenkirkとDavid Crossが共演したビデオ「Sugarcube」のディレクターズ・カットを新たに公開しました。


オリジナルビデオでは、ヨ・ラ・テンゴのレコード会社社長(Mr.ショーのジョン・アニス役)が、愛するインディーバンドをロックアカデミーに送り、オデンカークとクロスが教師として、ホテルの部屋のゴミ捨ての仕方や「Burning Out vs. Fading Away」についての授業など、ロックバンドになるための知識を伝授しています。

 

 オデン・カーク演じるミスフィッツ/キッスにインスパイアされた先生役は、「フェスにも出ないような小さなバンドのリズムギターを弾くことはできない」と生徒を諭す。新たにアップロードされた「Sugarcube」には、オリジナルのクリップがMTVで流れた時には登場しなかった30秒間の未公開映像が含まれています。

"これを作るのは最高の時間だった! ミスター・ショーの再結成、そしてもちろん素晴らしい歌とシナリオだ」とオデンカークは新しい声明の中でこのビデオについて述べています。"僕たちは即興でこのハードロックなピエロを作った。おそらく僕の'クラウン'での最高傑作だ。そして、この2人が誰だったのか再訪し、本当に深く掘り下げてみたい。ヘアメタル・ゴージャスなんだ!"

さらに、Yo La Tengoは、このビデオについて回想するバンドとDavid Crossの会話も公開しています。
Matador Recordsは、I Can Hear the Heart Beating as Oneの発売記念として、1997年のPeel Sessionとµ-Ziq、My Bloody ValentineのKevin Shields、Tortoiseのメンバーによるトラック「Autumn Sweater」のリミックスを収録したデジタルデラックス版を今週金曜日にリリースします。



yo la tengo


ヨ・ラ・テンゴは、アメリカのニュージャージー州のオルタナティヴ・インディーロック・バンド。さらに細かなジャンル分けでは、ローファイ、ドリームポップというように称されることもあります。

1984年から現在まで、幾度かメンバーチェンジを繰り返しながらかなり長い活動を続けているアーティスト。その活動の長さ、しぶとさから、アメリカンローファイのドンといってもいいかもしれません。

一般的に、ロックバンドというのは、ある影響力の強いひとりふたりの人物を主体として展開されていく表現活動の形態と思われ、バンド内の重要な人物が脱退したりすると、以後の活動を維持するのが困難になることがある。

そこで、フロントマンではない人物が抜けたとたんに、全然別のバンドになってしまったりすることもあります。また、売れた途端に、いきなりそれまでの勢いを失い、一旦、花開いた才覚が急にしぼんでいってしまうような悲しき運命にあるロックバンドも多い。

その点、ヨ・ラ・テンゴだけは、上記の言葉、派手に売れないことにより、今日まで音楽性においてたゆまず成長を続けてきた非常に安定感のあるインディーロックバンドといえるでしょう。

もともとが外向きな音を奏でるバンドではないからか、人が入れ替わっても、音楽性についてはなんら変わりません。

三十七年という長年月に渡り、売れて第一線に出ようと思わず、良い音楽をアンダーグランドでひっそりと作り続けているのが、ヨ・ラ・テンゴというバンドの良さです。

そして、その三十七年という年月で培われた強固なローファイ精神が、噛めば噛むほど味が出てくる深遠な音楽性を強固なものとしているのでしょう。

 

ヨ・ラ・テンゴの音の特徴というのは、いわゆるサーフロックで使われるようなリヴァーブディレイ感満載のギターの音色。そして、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインを思わせるオールドタイプのアナログシンセの使い方、そして、そこに浮遊感のある力の良い具合に抜けたボーカルが器楽風に漂っている。

どことなく彼等の音楽というのはぼんやりしていますが、温かみのある心にじんわりしみる音楽で、聴いていると、穏やかな気分になることができるはず。

やはり長年の功ともいうべきか、音楽性の品の良さと、間口の広さを感じさせます。ごく普通のシンプルなポップ/ロックソングをその音楽性の主体としていますが、サンプラーを使ったエレクトロニカ風の楽曲であったり、また、スムースジャズ風の曲もありと、きわめて多彩な音楽性を感じさせます。

たとえば、ギャラクシー500,シー・アンド・ケイクあたりのいかにも、アメリカンローファイの風味を持ち合わせているのがこのバンドの正体といえ、とくに、このヨ・ラ・テンゴは、非常にメロディーの才覚が他のインディーロック、ローファイ界隈のバンドに比べて抜きん出ているのが強みでしょう。 

 

「And Then  Nothing  Turned Itself Inside-Out」

 

スタジオアルバム「And Then Nothing Turned Itself Inside-Out」は、彼等ヨ・ラ・テンゴの分岐点ともなった作品であり、それから持ち味の甘美なメロディーというのを押し出していくようになります。


それはのちのアルバム「Today Is The Day」によって完全型となりますが、いわゆるあらっぽいローファイの風味から、ポップ色を打ち出したバンドへ移行するさいの橋渡し的な役割を果たしたのがこのアルバムです。

一曲目の「Everyday」では、スロウコア的な少し陰鬱な感じのある楽曲が展開されますが、それは全然暗い気持ちにさせずに、雰囲気たっぷりに、その音の深い世界に聞き手をやさしくいざなうことに成功しています。

また、「Let's Save Today Orlando's House」は、英国のベル・アンド・セバスチャンを彷彿とさせるような清涼感のある名曲です。

このまったりした雰囲気、長調から短調に移調が行われるときの、甘く切ないボーカルのニュアンス、そして、スタジオアルバムでは、マイブラのラブレスで使用されているようなエレクトーンのモジュレーションがとてもいい雰囲気を出している。

まるで、あたたかな水の上にぷかぷかと浮かんでいるかのような感じともいえばいいでしょうか、このなんだかわけもなく心地よい雰囲気というのは、ヨ・ラ・テンゴにしか醸し出し得ない独特な音の質感でしょう。

そして、このアルバムをユニークな風味たらしめているのが、「You Can Have It All」の一曲。

これは少しドゥワップのようなバックコーラスと、その合間に漂う甘く切ないボーカル。そこに引き締まったドラミングが加わり、非常にリズム的に面白いニュアンスを生み出しています。

ブレイクを挟んでから、またこのリズムが再開されたりと遊び心も満載、そこにはホーンが加わったりとゴージャスな雰囲気もあります。スタジオでの長時間のジャムセッションの延長線上に生みだされたかのような曲ですが、神経質にならず、この余白のあるまったりした音楽性がとても良い。

その他にも、「Tears Are in Your Eye」は、オールドスタイルのフォークを踏襲したかのような楽曲、これもサイモン&ガーファンクルのような古き良き時代のアメリカの音楽を思わせていいです。

「Cherry Chapsticks」では、シューゲイザー的な音楽への接近を試みていたり。「Tippo Hippo」では、シカゴ界隈のロックバンドが奏でるようなエレクトーンを使用した渋い音楽にも果敢に挑戦している。

このアルバムのラストを切なく彩っている「Night Falls on Hoboken」も往年のアメリカのフォークを思わせるような名曲。

終盤にかけては壮大な世界観に通じていきます。このアウトロのベースの渋さと、ドラムのサウンドエフェクトの巧緻性が印象的であり、実に壮大なエンドロール的な雰囲気を醸し出しています。