Album Reviews Ovlov 「Buds」

Ovlov

  

オヴロヴは、コネチカット州にて結成されたインディー・ロックバンド。 ハートレット兄弟を中心として2000年代半ばに結成された。当初、Home Movieのバンドネームで活動を行っていた。

 

結成当初のメンバーラインナップは流動的で、バンドメンバーを入れ替えながら活動を続け、2009年にEP「Crazy Motorcycle Jump」をリリース。アメリカのインディーエモシーンの重要なバンドとして目されるようになる。その後、バンドメンバー内の関係に亀裂が生じ、メンバーチェンジを経ながら、一度はジョン・ハーレットがこのバンドを離脱するものの、オヴロヴに復帰を果たしている。

 

2013年にはNYブルックリンのレーベル、Exploding In Soundと署名し、デビュー・アルバム「Am」を発表。この後、再度ラインナップに変更があり、ジョン・ハートレットがバンドを去っている。 

 

オヴロヴの苛烈なファズ、ディストーションサウンドを打ち出したギターロックサウンドは、1990年代のアメリカのインディーミュージックの直系、Dinasour.Jrの再来と称されることもある。Pavement、Built To Spillといったバンドが比較に出される場合もある。

 

2018年、オヴロヴは二作目のアルバム「TRU」を発表。この作品はピッチフォーク等で取り上げられている。異常なほど歪んだディストーションサウンドは、ローファイ感満載で、甘く切ないパワー・サウンドの雰囲気に彩られている。




「Buds」Exploding In Sound




Tracklisting


1.Baby Shea

2.Eat More

3.Land Of Steve-O

4.The Wishing Well

5. Strokes

6.Cheer Up,Chihiro!

7.Moron Pt.2

8.Feel The Pain

 


11月19日にリリースれた「Buds」は、デビュー作「AM」と同じく、プロデューサー、エンジニア、マイケル・ジョン・トーマスⅢを招いて制作された作品。


1stアルバムの製作時、バンドはトーマスと六ヶ月もの間、デモテープのやり取りを交わし、鮮烈なデビュー・アルバムを苦心して生み出しているが、今作は盟友というバックアップを得たことにより、さらにグレードアップした傑作が誕生したといえるだろうか。

 

特に、NYの流行りのキャプチャードトラック勢と全く異なるアプローチ、ローファイ感満載でありながらも、そのサウンドは80年代から90年代の上記したPavementやDinasour.JRに加え、Superchunkといったアメリカインディーの正統派に堂々位置する作品である。

 

前作の「TRU」に比べると、まるでエフェクター、ビックマフを噛ませたようなディストーションサウンドは薄れ、ポップ寄りのアプローチが図られているという評言もあるものの、しかし、なおこのオヴロヴの苛烈なディストーションサウンド、尖ったサウンドの魅力というのは健在。

 

そして、ブルックリンサウンドとは全然異なる時代の逆行性、あるいは、現代性から完全に背を向けるかのようなタフさがオヴロヴのサウンドの最大の魅力でもある。そこにはおしゃれさというのは感じられない、むしろ、きわめて泥臭く不器用ともいえるサウンドアプローチである。

 

しかし、それでも、このアルバムを聴いておわかりのとおり、このアルバムは奇妙なノスタルジアや、切なさによって彩られているように思える。ディストーションサウンドの果てにうっすらと感じ取れる美麗なエモーションが見て取れ、それがオヴロヴのサウンドを独特なものとしている。

 

そして、それは表向きには激烈な質感もありながら、きわめて人間味のある温かさ、ハートフルな切なさ、また、ほのかな慕情のごとき感慨が明らかに滲んでもいるように感じられる。このあたりの不可解さについては、このスタジオアルバムの中に収録されている一曲「Land of Steve-O」について、オヴロヴのフロントマン、ハートレットが明瞭な回答をコメントで提示している。

 

車の中で、父と馬鹿げた議論をしたあとに、この曲「Land of Steve O」を書いたのです。家にかえってから冷静になるために、ひとりで散歩にいくことにしました。2時間ほどかけて歩いて、警察署の前のベンチに座り込んだんです。

 

この場所は、コネチカットの中心部にある、両親が私を育ててくれた非常に思い入れのある場所でもあります。それから、以前から付き合っていた友人のスティーブ・オーにテキストメッセージを送ったことが曲を書くきっかけとなったんです。

 

 

 

スティーヴ・Oは、ハートレットの幼馴染で、学校の六学年時からの知り合いだったのようである。Papa Roachというバンドを介して、彼ら二人は仲良くなった。小学校のときの思い出。

 

その時の睦まじい友情を思い出して、「Land of Steve O」は生み出されたという。

 

 

また、このスタジオ・アルバム「Buds」には、彼の家族、ハートレットの父親が「Cheer Up Chihiro!」でサックスのソロを演奏していることに加え、ブレイク・リー、エリン・マクグラス、アレックス・ゲーリング(リンゴ・デススター)といったミュージシャンがヴォーカルとして参加している。

 

確かに、この作品「Buds」は売れ線のインディー・ミュージックではないかもしれない。けれども、その音楽性の中には、人情に彩られたハートウォーミングな精神が感じられる快作である。

 

 

 

 


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