Weekly Recommendation  グソクムズ 「グソクムズ」

 グソクムズ

 

グソクムズは、東京、吉祥寺を拠点に活動する四人組のシティ・フォークバンドで、2014年に、たなかえいぞを(Vo.Gt)、加藤佑樹(Gt)中心に結成されました。

 

活動当初は、現在とは全く異なるプロジェクト名を冠して、フォークデュオの形態でゆるく活動を行っていたようではありますが、2016年、堀部祐介(Ba)が加入、さらに2018年に中島雄士(Dr)が加入し、現在のバンド体制が整う。グソクムズの音楽的な背景は、往年の日本の名バンド、はっぴいえんど、高田渡、シュガー・ベイブスなどのフォーク音楽にあり、これらのバンドの音楽に強い影響を受けている。


彼らのバンドサウンドは「ネオ風街」と称されるように、細野晴臣直系のフォークサウンドを継承する現代のバンドです。グソクムズは、森は生きている、Predawnの次の世代を行くリバイバル・フォークサウンドを2020年代に推し進めようとしています。

 

またバンドとしてはメディアへの出演経験があり、2020年に雑誌「POPEYE」に掲載されている。同年8月には、TBSラジオにて冠番組「グソクムズのベリハピラジオ」が放送されている。 

 

グソクムズは、これまで自主レーベルから「泡沫の音」をはじめ、二枚のシングルとミニアルバム「グソクムズ系」をリリース。2021年には、電子音楽やポストロック系音楽を中心にリリースするご存知P-VINEと契約を結び、7インチシングル「すべからく通り雨」を発表、タワーレコードをはじめ、東京のインディーズシーンで大きな話題を呼んでいます。

 

グソクムズのサウンドは、ここ十年来の吉祥寺のスタジオペンタ系列のライブハウスのロックバンドの系譜にあり、ゆるく、まったりと、おおらかなオルタナティヴの気風に彩られている。

 

こういった音楽は、ここ十年来、吉祥寺のライブハウスにありふれたものでありながら、誰も彼もが明確な形として昇華しきれないもどかしさを覚えていました。それは、それぞれが、渋谷、下北沢とは異なる吉祥寺独自の音楽を不器用に貪欲に探しもとめていたということでもあるのです。

 

グソクムズのサウンドには、先を行った数多くのミュージシャンの熱い想いが宿っていて、ここ十年来の吉祥寺の数多くのバンドが引き継いできた音楽に対する愛情と気風を感じざるをえません。ここ十年、駅前で複数のライブハウスが協賛して、音楽フェス等を開催し、「音楽の町」として盛り上げようと苦心惨憺を重ねてきた東京吉祥寺が、満を持して日本のミュージックシーンに送り込んだインディー・フォークバンドです。 

 

 

 

 

「グソクムズ」 P-Vine  2021 

 



 

1.街に溶けて

2. すべからく通り雨

3. 迎えのタクシー

4. 駆け出したら夢の中

5.   そんなもんさ

6. 夢が覚めたら

7. 濡らした靴にイカす通り

8.   グッドナイト

9.   朝に染まる  

 

 

 

 

 

 

さて、今週の一枚として紹介させていただくのは、グソクムズのデビューアルバム「グソクムズ」となります。このアルバムはデビュー・アルバムとは思えないほどの完成度の高さ、十年以上メジャーで活動を行ってきたような貫禄を感じさせる作品です。

 

バンドの中心人物の”たなかえいぞを”は、若い時代から両親の影響で、カーペンターズやサイモン&ガーファンクルといった往年のアメリカンフォーク、ポップスを聴いてきたようです。それに加え、日本のシティ・ポップサウンドの源流をなすシュガーベイブス、はっぴいえんど、といったバンドの音楽からの影響を公言しています。

 

日本のシーンには、こういったバンドに影響を受けたミュージシャンが、他にも、スカート、トクマルシューゴをはじめ多く見受けられますが、グソクムズは、それらの日本のインディー・シーンの系譜にあたり、LAのリバイバルムーブメントとは異なる日本独自のリバイバルシーンの台頭を予見するかのような淡いサウンドの魅力によって彩ってみせています。


このアルバムで展開されていく音楽は、誰もが一度くらいはラジオなどを通して聴いたような懐メロ寄りのサウンド。メロディーやコードの構成にせよ、リズムの独特な運び方にせよ、そういったシティポップサウンドを踏襲していることはたしかですが、そこに現代的な要素を加え、おしゃれで洗練されたサウンドに仕上げているのは、ロサンゼルスやニューヨークのリバイバルバンドの動きと通じているような印象を受けます。

 

 

そして、このバンドの最大の魅力というのは、良質なメロディ、強かな演奏力に裏打ちされた、誰が聴いても何となく良さが分かるポピュラー性にあります。それはフロントマンの”たなかえいぞを”の細野晴臣を彷彿とさせる温かく包み込むようなヴォーカルの声質がバンドサウンドに深みをもたらしているからこそ。LAでは、今まさに、日本のシティ・ポップの人気が高まってきているようですが、それに比する、いや、いや、以上の資質をそなえたシティ・フォークサウンドが、今作において味わい深く展開されています。

 

グソクムズのデビューアルバムの中では、先行の7インチ・シングル「すべからく雨の中」「グッドナイト」の出来が際立っているように思われます。


特に、リードトラックの「街に溶けて」のネオアコサウンド風に心惹かれるものがあります。ノスタルジックでありつつ、現代性も失っていない。そして、過去と現代の間で、センチメンタルに揺れ動く切なさ、淡いエモーションが日本語フォークとして体現されていて、近年のJ-POPの中でも、屈指の名曲と言っても良いでしょう。

 

そして、「街に溶けて」のメロウでゆったりした名バラードにこそ、吉祥寺サウンドの本来の魅力が詰め込まれている。それは、先にも述べたとおり、この十年来において、ストリートサウンドとして数々のバンドが真摯に追究してきた音楽性でもあります。

 

かつて、ある吉祥寺のライブハウスの店長が、「吉祥寺のロックバンドの持つ音楽性には、他の町とは異なり、流行に流されない普遍性がある。それは、新宿とも八王子とも異なるんだ。そういった音楽シーンをこの町に作っていきたい」と話していましたが、彼が既に現場のスタッフではなくなった後、その切望が実現したというのは少し寂しくもあります.....。

 

それでも、グソクムズの日本のインディーシーンへの台頭、彼らの素晴らしいデビュー作は、全国区の「吉祥寺サウンド」が完成したことの証明にもなる。今作は、ローファイサウンドの盛んなLAあたりで結構人気の出そうな作品です。いずれにしても、P-Vineの素晴らしい新人発掘力、目の付け所の鋭さには感嘆するよりほかなし。