New Album Review The Weeknd 「Dawn FM」

 The Weeknd



ザ・ウィークエンドはカナダ出身、エイベル・マッコネス・テスファイの音楽プロジェクトである。

 

シンガーソングライター兼音楽プロデューサー、フランク・オーシャンやミゲルら共に、コンテンポラリーR&Bの新しいスタイル、「Alternnative R&B」を確立したとされる。

 

エイベル・マッコネス・テスファイは、カナダ、トロント生まれのソウルシンガーである。トロント東部にあるスカバロー地区で育ち、両親はともに、1980年代にエチオピアからカナダに移住した移民である。両親は共働きに出ていたため、エイベル・マッコネス・テスファイは幼少期、祖母に育てられ、英語は話せず、エチオピアの公用語のアムハラ語を話した。その後、両親が離婚した後、祖父母の元に引き取られた。この時代からテスファイは、エチオピア正教会の礼拝に出席するようになった。

 

その後、テスファイは、スカバローにある高校に通ったが、17歳の時に学校をドロップアウトした。

 

この時代、後年になって彼のクリエイティヴ・ディレクターを務めるようになるラ・マー・テイラーと一台のヴァンでトロントのバークデール地区に転居する。家出をした後、テスファイは、ドラッグを売りさばきながら、友人二人とルームシェアを始めるも、その後ルームメイトから家を追い出されたのち、複数の女性の家を転々とする苦しい生活を送った。

 

その後、彼は、アメリカのアパレル会社に勤務を始め、同時にミュージシャンとしての道のりを歩みはじめた。ソングライティングやレコーディングを開始した当初は、他人のために作曲を始めたようだが、レコードの買手がいないときに自分のための作曲を行うようになった。


エイベル・マッコネス・テスファイが用いるステージネーム「The Weeknd」は、このデビュー前の苦しい下積み時代のエピソードに因んでいて、ルームメイトから家を追い出されたのが週末だったことに由来している。「The Weeknd」のスペルに「e」が抜けているのは、当初、カナダ国内に同名のロックバンドが存在したことによる。

 

 

 

 「Dawn FM」 Xo

 

 

 

 

 Scoring

 

 

 


Tracklisting

 

1.Dawn FM

2.Gasoline

3.How I Do I Make You Love Me?

4.Take my Breath

5.Sacrifcei

6.A Tale By Quincy

7.Out of Time

8.Here We Go...Again(feat.Tyler,the Creator)

9.Best Friends

10.Is There Someone Else?

11.Starry Eyes

12.Every Angel is Terrifying

13.Don't Break My Heart

14.I Heard You're Married(feat. Lil Wayne)

15.Less Than Zero

16.Phantom Regret by Jim



2020年3月にリリースされた前作「After Hours」から約二年ぶりとなるザ・ウィークエンドとして五作目のスタジオ・アルバム「Dawn Fm」は今年の1月7日にサプライズリリースされた作品。

 

「Dawn FM」は、1980年代のシンセポップやディスコサウンドに触発された作品で、テスファイの生き生きとしたサウンドの妙味が引き出された快作である。サウンドレコーディングには、タイラー・ザ・クリエイター、リル・ウェイン、その他、クインシー・ジョーンズとジム・キャリー、ワン・オートリックス・ポイントネヴァーと、ヒップホップからR&B、アンビエントと、実に多彩かつ豪華なアーティストが勢揃いした話題作といえる。

 

ここでは、往年のディスコサウンドのグルーヴ、そして、クインシーのブラックミュージックの快活さ、近年トレンドであるシンセ・ポップの鮮やかさ、さらにはヒップホップのフロウの力強さ、これらの要素が合わさることでオルタネイティヴなR&Bの快作が生み出されている。

 

もちろん、ブラック・ミュージックにとどまらず、「Out Of Time」では、日本のアーティスト”亜蘭知子”の「Midnight Pretenders」のサンプリングが用いられていたり、多角的かつ多彩なアプローチを交えた聴き応え満点のフルレングスアルバムである。

 

また、「FM Dawn」は近年のイギリスやアメリカのR&Bリバイバルブームの流れに上手く乗った作風ともいえる。さらに、このアルバムに収録「Sacrifice」にあらわれている通り、グルーブ感満載のシンセサイザーベースの痛快なR&Bは表向きには華やかな印象を持つが、そこに、テスファイの音楽フリークとしての矜持が見て取れるのである。

 

これらのオルタナサウンドには、メインストリームに対する痛烈なアンチテーゼのような概念もほのかに宿っており、そのあたりの迫力が、今作全体に、軽薄さとはかけ離れた渋さのような雰囲気を添えている。つまりこの作品は、キャッチーではあるものの、その中にも抜けさがない強さのようなものが中心にしっかりと据えられているのである。

 

ザ・ウィークエンドは、この新作アルバムについて以下のように暗喩を交えて語っている。以下のテスファイの言葉は、この作品のニュアンスをいかなる評言よりも的確に表現しているに違いない。

 

 

「リスナーが死んだような、そんな作品を是非想像してもらいたい。そして、彼らは煉獄から抜け出せない。トンネルの渋滞から抜け出せない中、出口の明かりを目指すような状態を制作段階で意識していた。

 

そして、その渋滞の中で、彼らは、クルマのラジオを聴いている。ラジオの番組ホストは、あなた達を光へと導き、向こう側に行けるように助けてくれるだろう。だから、これは、祝福してるようにも思えるだろうし、それとは正反対に、全然希望がないと思うかもしれない。そう、それがまさに俺にとっての「The Dawn」なんだ」

 


 




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Dawn FM
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