New Album Review  Clams Casino&Ryota Nozaki 「Winter Flower Reimagined」


 Claims Casino


クラムス・カジノとして知られるマイケル・ヴォルペはニュージャージ州ナットリー出身のプロデューサー兼ソングライター。ヴォルペは、現在、コロムビアとソニーと契約を結んでいる。彼は、主にプロデューサーとして広い領域で活躍するだけではなく、ヒップホップのDJとしても活動。


これまで、ASAP Rocky,LiiB,Vince Staples,Joji,The Weeknd,Mac Miller,といったアーティストのトラックのエンジニアを担当し、さらにBigの作品のリミックスを手掛けている。ほかにも、KRIT,Wash Out,Lana Del Rayの楽曲のエンジニアを務めている。



Jazztronik(Ryota Nozaki)

 

Jazztronicは、野崎良太が率いる特定のメンバーを固定しない自由なミュージックプロジェクト、コレクティヴである。母親が音楽教師という環境下において、幼少期からピアノを習い始める。


これまで多くの作品をリリースし、国内のみならず、世界でライブやDJ活動を行っている。 クラシック、ジャズ、クラブ・ミュージックにとどまらず幅広い音楽性を掲げて、リスナーを魅了する。これまで、アーティストのプロデュースをはじめ、映画、ドラマ、CMの音楽制作も手掛けている。

 

 

 

 

「Winter Flower Reimagined」Claims Casino Prodauctions  2022





3月11日、クラムス・カジノの自主レーベルからリリースされた「Winter Flower Reimagined」は、彼自身の2021年のオリジナル作品「Winter Flower」のリミックス作品として制作された。

 

オリジナル作は、実験音楽とクラブミュージックの中間点に位置し、クラムス・カジノのキャラクターが色濃く出た作品だった。しかし、今回、新たにリリースされた作品は、リミックス作品とは言い難い独自性、独創性が現れ、アンビエント、クラシック、実験音楽、ニューエイジといったジャンルをクロスオーバーした作風である。これは、アメリカ人と日本人の気風というべきか、オリジナル性が見事に合致した作品と言えるかもしれない。この作品で、野崎良太はマイケル・ウォルペの作品をサンプリングし、琴や尺八といった日本独自の楽器を取り入れています。

 

この作品ではアンビエントの作風を基調としつつ、そこに両者の気質がうまい具合に現れている。グラムスカジノの方はDJとしての個性、野崎良太の実験音楽、電子音楽、そして現代音楽への傾倒がセンスよく合致し、創造性の高い楽曲が生み出されている。特に、野崎良太の今回の作品への参加は、欧米のリスナーから見ると、奇異な、そして、きわめて独特な雰囲気をもらすはずである。この作品には、琴、尺八といった、日本古来の楽器が積極的にサンプリングとして取り入れられ、これらの楽器の音響性が癒やしの質感を与え、ひたすら心地よい空間性を生み出しています。

 

表向きには、「ピアノ・アンビエント」に近い質感を持つ抽象性の高い作風といえ、また、ワープ・レコーズの所属アーティストのようなスタイリッシュさも持ち合わせた作品です。そこに、ジャズ、電子音楽、現代音楽、そのほか、民族音楽としての日本の古来の音楽が見事な融合を果たしています。そして、このリミックス作の最大の魅力と言えるのが、日本らしい感性であります。情緒、わびさび、奥行き、間、こういった日本特有の喜ばしい感性が如実にあらわれている。日本的なものとは何かが現代のミュージックシーンでは次第にわかりづらくなっている昨今、そのことを野崎良太は、十分理解をし、さらに、その得難い感性を究明し、日本人らしい感性を「現代的な感性」として提示し、聞き手に新たな発見をもたらそうとしているのが見事といえるでしょう。「Winter Flower Reimagined」は日本のリスナーにとっても、琴や尺八の素晴らしい、音の響きの再発見をさせてくれると同特に、欧米のリスナーにとっても、武満徹の「November Steps」のような不思議な安らぎ、新鮮な発見をもたらすであろう作品です。

 

83/100

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