New Album Review Parannoul 「White Ceiling/Black Dots Wandering Around」EP

 ・Parannoul 

 

Parannoulは、サウスコリア、ソウルを拠点に活動するソロシューゲイズ/ポストロックミュージシャン。今、韓国だけではなく、世界的にインディーシーンで注目を集めているアーティストだ。

 

詳細プロフィールは公表されておらず、謎に包まれたアーティストで、彼自身はParanoulというプロジェクトについて、「ベッドルームで作曲をしている学生に過ぎない」と説明している。

 

ひとつわかっているのは、Parannoulは、一人の学生であるということ、宅録のミュージシャンであるということ。そして、内省的ではあるが、外側に向けて強いエナジーの放つサウンドを特徴とするインディーロック界の期待の新星であるということ。想像を掻き立てられると言うか、様々な憶測を呼ぶソウルのアーティスト。 そして、デビューから二年という短いキャリアではあるものの、凄まじい才覚の煌めきを感じさせる。

 

パラノウルは、これまでの二年のキャリアで二作のアルバムをリリースしている。2020年に最初のアルバム形式の作品「Let's Walk on the path of a Blue Cat」を、WEB上の視聴サイトBandcampで発表している。

 

 

 

「White Celing/Black Dots Wandering Around」 EP Poclanos  2022

 

 


Tracklisting 

 

1.Escape

2.Someday

3.Soft Bruise

4.White Ceiling-demo

5.Growing Pain

6.Ending Credit


 

サウスコリアのパラノウルの新作EP「White Ceiling/Black Dots Wandering Around」は、2020年から2021年にかけてレコーディングが行われた作品で、昨年フルレングスアルバムとしてリリースされたデビュー作「To See The Next Part Of Dream」に収めきれなかった未発表曲を新たに収録しなおした作品である。音楽サイトのBandcampでは、今年の2月の下旬に配信が開始されていたが、他のSpotifyをはじめとするデジタル形式として3月8日に配信が始まった。

 

今回、新たにパラノウルが発表したEP作品は、デビュー作「To See The Next Part Of Dream」の小さな続編ともいうべきで、タイトルに忠実に述べるなら、「夢のつづき」という形容がふさわしいだろうと思う。今作においてもデビュー作と同様、「Bedroom Shoegaze」が全面展開されている。


一曲目に収録の「Escape」からして、ラフなリミックスが施されていて、ギターの音量にかなり気圧されてしまう。しかし、これはホームレコーディングならではの副産物と言える。また、そこに、日本語のサンプリングがイントロ、曲の中間部に挿入されるのは、ファーストアルバムと同様。何と言っても、ダイナソー・JrのJ・マスシスにも比する強烈な轟音ギター、ムーグシンセを交えたシューゲイザー、ドリーム・ポップサウンドが目くるめくように展開されていく。さらに、パラノウルは内省的なエナジーにより、楽曲の世界観を強固に形作る。そして、ファースト・アルバムにおいて、ホームレコーディングにおいて提示した概念、青春時代のジレンマ、淡いセンチメンタリズムは今作も健在で、デビュー作よりも力強い印象を放っている。

 

三曲目収録の「Soft Bruises」は、デビューアルバムよりもこのアーティストの純粋な感情の発露のごときものが見受けられる。そして、この要素が聞き手に一種の安らぎを与える。パラノウルは、自分の生きている時代、環境とは関係なく、想像力を発揮し、青春期の純粋な感情により彩って見せているのだ。

 

この未発表曲を集めたEP作には、デビュー作では敢えて見せなかった等身大のパラノウルの飾らない姿も垣間見える。そして、そのことが全くこのアーティストを見知らぬものでさえも、何らかの親近感を持たせる。近寄りがたくもあったパラノウルに少しだけ近づけたという気がするのである。

 

今回のEP作では、デビュー作よりラフで荒々しいこのベッドルームミュージシャンの本来の音の迫力を体感できる。パラノウルのサウンドに代表される性急さは過激な印象を与えるが、反面、それはライブサウンドのようなリアルな質感を持ってリスナーの耳に迫ってくるし、苛烈さの中にも奇妙な癒やしが存在する。

 

そして、さらに、パラノウルの音楽が、日本のリスナーにとって、ノスタルジアを感じさせるであろうのは、このアーティストが、平成時代のJ-POPの音楽に憧憬を持っているからに違いあるまい。また、そこに、このアーティストの小山田圭吾のコーネリアスに対する強い親和性が感じられる。このEP作品は、デビュー作よりも、このパラノウルというアーティストの本質を掴むことができるように思える。その点では、単なるレア・トラックスの寄せ集めではなく、純粋なパラノウルの新作の一つとして十分に楽しめるヴォリューム感が込められていると思う。

 

今作はまさに、日本の平成時代の空気感を表現した作品で、Number Girlやsupercarの最初期の作風にも近い「切ない」雰囲気を放っている。もちろん、サウスコリアのパラノウルが提示するのは単なるリバイバルサウンドにあらず、ローファイ、インディーロック、ドリーム・ポップという領域において、清新なサウンドの風味を生み出している。デビュー作「To See The Next Part Of Dream」に比べ、リミックス面での荒削りさが目立つものの、ローファイ感を好む人にとってはコレ以上の音楽は存在しない。未だ完全に洗練されていないことも返って今作の大きな魅力となるに違いない。これぞ、まさに、インディーロックの真髄ともいえるような音楽である。

 


・Featured Track 「Soft Bruises」


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